(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記搬送方向において前記第2の搬送ローラの上流側に配置され、前記第2の搬送ローラを前記搬送方向に揺動させるためのローラを更に備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の記録装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
図1は、本発明の記録装置の一実施形態であるインクジェット記録装置10の内部構成を示す斜視図である。
図1では、記録媒体に画像を記録する画像形成部914(
図15参照)の構成を中心に示している。画像形成部914は、記録ヘッド14と、プラテン15と、主搬送ローラ対16と、排紙ローラ17と、キャリッジ18等によって構成される。インクジェット記録装置10では、後述する搬送装置より搬送された記録媒体が、U字形に湾曲した搬送路を通過してプラテン15に搬送される。その後、記録ヘッド14がプラテン15の上方からインクを吐出して記録媒体に画像を記録する。このとき、記録ヘッド14は、キャリッジ18が記録媒体の進行方向と直交する方向に移動しているときにインクを吐出する。画像が形成された記録媒体は、排紙トレイ13に排出される。
【0011】
図2は、
図1に示す記録装置に搭載された搬送装置の構成を示す断面図である。
図2に示す搬送装置11は、給紙部19と、反転搬送部20と、を有する。まず、給紙部19について説明する。
【0012】
図2に示すように、給紙部19には、互いに積層された複数枚の記録媒体Pを収容可能な給紙トレイ101が設けられている。給紙トレイ101において、各記録媒体Pの側面は、不図示の側面ガイドによって揃えられている。給紙トレイ101に対して記録媒体Pの進行方向Dの前方には、記録媒体Pを1枚ずつに分離するための傾斜面部材102が配置されている。給紙トレイ101の上方には、給紙機構100が配置されている。給紙機構100は、給紙アーム104を備えている。給紙アーム104は、回転軸105を中心に回転することによって、給紙トレイ101に積載された記録媒体Pの積載高さに応じた回転が可能である。給紙アーム104の先端には、最上層の記録媒体Pを前進させる給紙ローラ106が取り付けられている。給紙ローラ106は、回転軸105、給紙アイドラギア107を介して伝達された動力で駆動する。最上層の記録媒体Pには、給紙ローラ106が当接している。給紙ローラ106が駆動すると、給紙ローラ106と記録媒体Pの摩擦力により、記録媒体Pが進行方向Dに送り出される。その後、記録媒体Pは傾斜面部材102を通過する時に1枚ずつに分離されて反転搬送部20に搬送される。
【0013】
以下、傾斜面部材102について詳しく説明する。
【0014】
図3は、
図2に示す搬送装置に設けられた傾斜面部材の斜視図である。
図4は、
図3に示す傾斜面部材102の断面図である。傾斜面部材102は、最上層の記録媒体Pを分離しやすくするために、進行方向Dに対して鈍角に傾斜した斜面102aを備えている。斜面102aには、斜面102aに沿って記録媒体Pを搬送する時の搬送抵抗を低減させるための傾斜面ガイド部材110が設けられている。傾斜面ガイド部材110において、記録媒体Pに接触する表面は、摩擦係数の小さい材料を平坦に加工した形状となっている。傾斜面部材102の斜面102aには、2つの開口部が形成されている。一方の開口部からは、突き当て部材103が突出し、他方の開口部からは分離部材111が突出するように構成されている。以下、突き当て部材103および分離部材111について説明する。
【0015】
まず、突き当て部材103について説明する。
図5は、
図2に示す搬送装置11に設けられた突き当て部材103の断面図である。
図5(a)は、突き当て部材103が記録媒体Pの先端部に当接する位置に保持された状態を示す。
図5(b)は、突き当て部材103が、記録媒体Pの先端部から離れて傾斜面ガイド部材110に対して引っ込んだ位置に保持された状態を示す。突き当て部材103は、傾斜面部材102の斜面102aの下側(麓側)に設けられた回転軸119に取り付けられている。突き当て部材103の表面は、複数の曲面を有する段形状に形成されている。そのため、給紙トレイ101に収納された各記録媒体Pの先端部の位置を揃えるために、突き当て部材103が勢いよく各記録媒体Pに当接した場合でも記録媒体Pに与えるダメージを低減できる。突き当て部材103の裏面は、カム部材112に押圧されている。カム部材112は、傾斜面部材102の内部に設けられた回転軸(不図示)に取り付けられている。突き当て部材103は、傾斜面部材102に取り付けられたバネ部材113に引っ張られ
図5(b)に示す状態に保持されている。カム部材112の回転軸に伝達された動力によりカム部材112が
図5(b)で見て反時計回りに回転すると、突き当て部材103の表面が記録媒体Pの進行方向Dに対して略直角になった位置でストッパにより止まる(
図5(a)参照)。カム部材112が
図5(a)で見て時計回りに回転すると、突き当て部材103が傾斜面ガイド部材110に対して引っ込んだ(隠れた)位置でストッパにより止まり、
図5(b)に示す状態に戻る。
【0016】
次に、分離部材111について説明する。
図6は、
図2に示す搬送装置11から分離部材111の周辺を抜き出して示した斜視図である。
図7は、
図6に示す分離部材111の断面図である。
図8は、
図6、7に示す分離部材111の構成をより詳細に示した図である。
図8(a)は、
図6から分離部材111を抜き出して示した斜視図である。
図8(b)は、
図8(a)に示す分離部材111の断面図である。分離部材111は、記録媒体Pに当接し、傾斜面部材102の斜面102aにほぼ平行な突起面111aを有する。突起面111aには、複数の突起が突起面111aの傾斜方向に沿って配列されている。分離部材111は、突起面111aの反対側からリンク機構120によって支持されている。
【0017】
リンク機構120は、分離部材111を、突出位置から退避位置まで移動可能に構成されている。突出位置は、突起面111aの突起が傾斜面部材102の斜面102aに対して突出し、搬送時の最上層の記録媒体が当接する位置である。退避位置は、突起面111aの突起が傾斜面部材102の斜面102aに対して引っ込んだ(隠れた)位置である。以下、リンク機構120の構成について説明する。
【0018】
本実施形態において、リンク機構120は、一対のリンク部材114、115を有する。リンク部材114、115は、互いの中心部Cで交差するように連結されている。リンク部材114の一端は、勘合穴K1を介して分離部材111に回転可能に取り付けられている。分離部材111において、リンク部材114の一端よりも低い位置には、リンク部材115の一端が取り付けられている。リンク部材115の一端には勘合穴が形成され、この勘合穴は、分離部材111に形成されたけ長穴111cに沿って、進行方向Dに交差する方向にスライド軸K2に勘合されている。本実施形態では、リンク部材114の一端とリンク部材115の一端とを結ぶ直線G1(
図7参照)が進行方向Dと略直角となるように構成されている。したがって、本実施形態では、スライド軸K2は、進行方向Dに直交する向き(
図7矢印E参照)にスライド可動である。
【0019】
リンク部材114の他端には勘合穴が形成されている。この勘合穴は、リンク部材115の一端と同じ方向にスライドするスライド軸S2に勘合している。傾斜面部材102において、リンク部材114の他端よりも高い位置には、リンク部材115の他端が、勘合穴S1を介して回転可能に取り付けられている。本実施形態では、リンク部材114の他端とリンク部材115の他端とを結ぶ直線G2は、進行方向Dと略直角となるように構成されている。したがって、スライド軸S2は、スライド軸K2と同様に、
図7に示す矢印Eの方向にスライド可能である。本実施形態では、リンク部材114の両端から中心部Cまでの距離は、リンク部材115の両端から中心部Cまでの距離に等しい。すなわち、勘合穴K1から中心部Cまでの距離とスライド軸K2から中心部Cまでの距離と、勘合穴S1から中心部Cまでの距離と、スライド軸S2から中心部Cまでの距離とは、互いに等しい(
図7参照)。
【0020】
分離部材111の突起面111aの反対側には、バネ部材116が取り付けられている。バネ部材116は、分離部材111を押圧することによって、分離部材111を上述した突出位置に保持している。バネ部材116の押圧力は、記録媒体Pの当接力と反対方向に作用する。
【0021】
給紙部19において、分離部材111が突出位置で記録媒体Pの当接時に受けた当接力がバネ部材116の押圧力よりも大きい場合、スライド軸S2およびスライド軸K2は、同時に図中矢印E(
図7参照)スライドする。その結果、リンク部材114の一端とリンク部材115の他端115の一端が互いに離れ、かつリンク部材114の他端とリンク部材115が互いに離れるようにリンク部材114、115は変形する。その変形により、分離部材111は、上述した退避位置に向かって移動して傾斜面部材102の中に隠れる。この分離部材111の移動動作は、給紙トレイ101における記録媒体Pの積載高さに関係なく同様となる。
【0022】
次に、反転搬送部20の構成について説明する。
図9は、搬送装置11の反転搬送部20の構成を示した断面図である。反転搬送部20は、インナーガイドユニット201と、アウターガイドユニット202で構成される。まず、インナーガイドユニット201について説明する。
図10は、インナーガイドユニット201の斜視図である。
【0023】
インナーガイドユニット201は、記録媒体を通過させる湾曲した内部空間を備えた搬送路200の内側ガイドを構成するインナーガイド204と、インナーガイド204に取り付けられた搬送ローラユニット203で構成される。以下、搬送ローラユニット203について説明する。
図11は、搬送ローラユニット203の分解斜視図である。
【0024】
搬送ローラユニット203は、記録媒体を搬送方向に搬送する搬送ローラ207と、搬送ローラ207および駆動伝達手段を抱える搬送アーム208と、駆動伝達の役割を担う搬送シャフト209と、クラッチ210と、で構成される。搬送ローラ207の外周部は、ゴム等の高摩擦部材で形成され、搬送アーム208に支持されている。搬送ローラ207よりも記録媒体の搬送方向の上流側には、搬送ローラ207を搬送方向に揺動させるためのローラ224(
図9参照)が設けられている。搬送ローラ207は、ローラ224の外周部に沿って公転することによって搬送方向に揺動するスイングアーム式のローラである。
【0025】
搬送アーム208は、搬送アーム208に一体に形成された軸を、インナーガイド204の穴Xa、Xb(
図10参照)で支持させることで揺動可能に構成されている。搬送アーム208の支点は、記録媒体と搬送ローラ207の接触点に対して、記録媒体の搬送方向の上流側に設定されている。搬送シャフト209の一端側は、搬送アーム208の軸と同軸になるように穴Xbで支持され、他端側はクラッチ210を介してインナーガイド204に支持されている。搬送シャフト209は、駆動源(不図示)に接続されている搬送入力ギア213と一体となって
回転する。搬送アーム208は、インナーガイド204に形成された回転規制部に係合することにより、所定の範囲で回転可能に構成されている。クラッチ210には、連結部材230、係合部材231を介して出力ギア211が固定されている。連結部材230には凹状の溝232が形成されており、溝232に係合部材231が係合している。係合部材231と出力ギア211の間にはクラッチバネ214が取り付けられている。クラッチバネ214の一端をインナーガイドユニット201の駆動フレーム(不図示)に固定することで、一方向のみの回転が可能になっている。
【0026】
搬送入力ギア213が回転するとクラッチバネ214が緩み、搬送シャフト209が回転可能になる。その結果、搬送ローラギア212とともに搬送ローラ207が
図9で見て反時計回りに回転して記録媒体搬送方向に回転させる。搬送入力ギア213が停止した状態で搬送ローラ207を反時計回りに回転させると、クラッチ210の作用により搬送シャフト209からの駆動伝達が遮断されるため、クラッチバネ214が緩み、搬送ローラ207は低トルクで回転する。搬送入力ギア213が停止した状態で搬送ローラ207を時計回りに回転させようとすると、クラッチ210の作用により搬送シャフト209に動力が伝達されるが、クラッチバネ214は閉まるため、搬送ローラ207は回転不能になる。
【0027】
次に、アウターガイドユニット202について説明する。
図12は、アウターガイドユニット202の断面図である。アウターガイドユニット202は、搬送路200の外側ガイドを構成するアウターガイド205と、搬送ピンチローラユニット206とで構成される。以下、搬送ピンチローラユニット206について説明する。
【0028】
搬送ピンチローラユニット206は、搬送ローラ207と協働して記録媒体を搬送する搬送ピンチローラ215と、搬送ピンチローラ215を回転可能に取り付けた搬送ピンチローラホルダ216とで構成される。搬送ピンチローラホルダ216は、ピンチローラホルダ216に一体に形成された軸を、アウターガイド205に形成された穴で支持させることで揺動可能に構成されている。搬送ピンチローラホルダ216の裏面側には、搬送ピンチローラバネ217が設けられている。搬送ピンチローラバネ217は、搬送ピンチローラホルダ216を介して搬送ピンチローラ215を搬送ローラ207側へ押圧している。搬送ピンチローラホルダ216の位置は、アウターガイド205に設けられた回転規制部Zにより規制されている。
【0029】
搬送ピンチローラ215および搬送ピンチローラホルダ216は、搬送ローラ207の当接力X(
図12参照)が、当接力Xと反対方向に作用する搬送ピンチローラバネ217の弾性力Y(
図12参照)を超えるまで静止している。当接力X(
図12参照)がバネ力Yを超えると搬送ピンチローラホルダ216および搬送ピンチローラ215は、
図12では反時計回りに回転して退避する。
【0030】
搬送ローラユニット203において、搬送アーム208には、予圧バネ218が取り付けられている(
図11参照)。予圧バネ218によって搬送ローラ207は、搬送ピンチローラ215に当接した状態で静止している。搬送アーム208は、記録媒体の搬送抵抗に応じてさらに搬送力が上がる方向に支点を有している。搬送抵抗のない(記録媒体が搬送されていない)待機状態における搬送ローラ207の当接力は、予圧バネ218の力でのみである。記録媒体の搬送が始まると、記録媒体の搬送抵抗が上がるとそれに応じて搬送ローラ207の当接力が大きくなる。その当接力が、搬送ピンチローラバネ217の弾性力Yを超えると、搬送ピンチローラ215が退避し始める。
【0031】
上述したインナーガイド204において、搬送路200の湾曲の内側には、補助ガイド部材220が設けられている。
図13は、補助ガイド部材220の斜視図である。
図14は、補助ガイド部材220の断面図である。
【0032】
補助ガイド部材220は、搬送方向に交差する方向に延びた2つの軸220a、220bを備えている。軸220aは、インナーガイド204に形成された穴Yaで支持されている。一方、軸220bは、インナーガイド204に形成された穴Ybで支持されている。補助ガイド部材220は、軸220a、220bを中心に回転可能にインナーガイド204に取り付けられている。軸220bの外周面には、ねじりコイルバネである補助ガイドバネ部材221が取り付けられている。補助ガイドバネ221の一端は、補助ガイド部材220に取り付けられている。補助ガイドバネ221の他端は、インナーガイド204に取り付けられている。補助ガイドバネ221は、補助ガイド部材220を、搬送方向の反対方向側に付勢する。補助ガイド部材220の下端部には突起(不図示)が設けられ、この突起とインナーガイド204との接触箇所がストッパとなり、補助ガイドバネ221の付勢力を受ける。そのため、記録媒体が搬送されていないとき、補助ガイド部材220は、インナーガイド204に対して直立したような姿勢に保持される。
【0033】
図15は、
図1に示すインクジェット記録装置10の電気的な制御構成を示したブロック図である。制御部901には、制御部901に信号を送るPC(Personal Computer)902もしくは、装置本体に装備された操作パネル903が接続されている。制御部901は、PC902または操作パネル903から所定の信号が入力されたとき、または制御部901内部のタイマーの計測時間が所定の時間を経過したときに画像形成動作を開始する。制御部901は、搬送モータ905に電力を供給するようモータドライバ904に指令を出す。搬送モータ905には、主駆動伝達機構906が接続されている。搬送モータ905は、主駆動伝達機構906を介して、主搬送ローラ対16を駆動する。主搬送ローラ対16には、搬送駆動伝達機構908が接続されている。主搬送ローラ対16の駆動に伴って搬送駆動伝達機構908は、搬送ローラ207を駆動する。
【0034】
また、制御部901は、画像形成部モータ913に対して電力を供給するよう画像形成部モータドライバ912に指令を出す。画像形成部モータ913には、画像形成部914が接続されている。画像形成部914および上述した搬送駆動伝達機構908には、給紙駆動伝達機構910が接続されている。給紙駆動伝達機構910は、画像形成部914のキャリッジ18の位置に応じて、搬送駆動伝達機構908から給紙機構500への動力の伝達および動力の非伝達を選択的に切り替える。その結果、給紙機構500と搬送ローラ207の同期駆動/非同期駆動を行うことが可能となる。
【0035】
上記の各モータの回転状態や負荷状態、記録媒体Pの搬送状態は、インクジェット記録装置10の各所に設けられた、センサ群915を構成する各センサによって検知される。センサ群915の検知情報は、制御部901に送られる。制御部901は、PC902または操作パネル903から入力される信号と、センサ群915から入力される検知情報に基づいて各モータを制御する。
【0036】
図16は、本実施形態のインクジェット記録装置の動作手順を示すフローチャートである。制御部901にPC902から画像形成を開始する旨の信号が入力されると、給紙動作が開始する(ステップS1)。具体的には、制御部901がモータドライバ904に上述した指令を送って搬送モータ905を駆動させ、給紙ローラ106、搬送ローラ207を順時回転させる。
【0037】
給紙動作が開始した後、制御部901は、記録媒体Pの搬送量が一定量に達したか否か判断する(ステップS2)。一定量は、記録媒体Pの先端部が主搬送ローラ対16に到達するのに最低限必要な搬送量である。そして、制御部901は、センサ群915の一つであるセンサ222が、所定の時間が経過するまでに記録媒体Pの主搬送ローラ対16への到達を検知したか否か判断する(ステップS3)。記録媒体Pの到達が検知されないと、制御部901は、操作パネル903に給紙エラー表示を行わせることによって(ステップS11)、ユーザーに記録媒体Pの再給紙を促す。制御部901が、操作パネル903に設けられたエラー解除キーを通じて再給紙を受け付けると(ステップS12)、ステップS1の動作に戻る。
【0038】
ステップS3において、センサ222が、記録媒体Pの先端部が主搬送ローラ対16に差し掛かったことを検知すると、制御部901は、斜行矯正動作を行わせる(ステップS4、5)。斜行矯正動作を行った後、制御部901は、主搬送ローラ対16と画像形成部914に、画像形成動作を行わせる(ステップS6〜ステップS8)。画像形成動作が終了すると(ステップS9)、制御部901は、記録媒体Pを排出する排出動作を行わせる(ステップS10)。
【0039】
以下、主搬送ローラ対16の一方である主搬送ローラ223による搬送動作および斜行矯正動作の内容について詳しく説明する。
【0040】
図17〜
図19は、搬送動作時および斜行矯正動作時における記録媒体Pの位置及び状態を示した断面図である。本実施形態では、搬送動作における主搬送ローラ223に対する、給紙ローラ106、搬送ローラ207、排紙ローラ17の速度比は下記のように設定されている。
【0041】
主搬送ローラ:給紙ローラ:搬送ローラ:排紙ローラ=1:0.65:0.65:1
まず、給紙ローラ106、搬送ローラ207、および主搬送ローラ223が、記録媒体Pを搬送方向に搬送させる方向に回転することで、給紙動作が開始される。このときの主搬送ローラ223の回転方向を以下第1の方向と称する。
【0042】
給紙トレイ101に記録面を下にして積載された記録媒体Pは、給紙ローラ106と傾斜面部材102などによって最上層の記録媒体Pが分離される。分離された最上層の記録媒体Pは、給紙ローラ106によって、傾斜面部材102を通過し、搬送ローラ207に搬送される。
【0043】
記録媒体Pが搬送ローラ207に到達すると、記録媒体Pは、給紙ローラ106と搬送ローラ207によってさらに搬送方向の下流に搬送される。搬送ローラ207を通過してからの記録媒体Pの搬送量が所定量に達すると、記録媒体Pは、給紙ローラ106から離れ、搬送ローラ207のみに搬送される。その後、記録媒体Pが搬送路200を通過すると、センサ222が記録媒体Pの先端部を検出する。その後、記録媒体Pの先端部の検出位置からの記録媒体Pの搬送量が所定量に達すると搬送ローラ207が停止する。この所定量は、普通紙や写真用紙など記録媒体Pの種類に応じて異なる。本実施形態では、記録媒体Pの先端部が主搬送ローラ223に対して普通紙は6.5mm、写真用紙は4mm搬送方向の下流側に位置するように所定量が設定されている。
【0044】
記録媒体Pは、搬送ローラ207の回転により、補助ガイド部材220に支持され、搬送ガイド部材108に沿って主搬送ローラ223まで搬送される(
図17参照)。本実施形態では、主搬送ローラ223が搬送ローラ207よりも1.5倍程度速い速度で回転する。そのため、記録媒体Pが主搬送ローラ223に搬送され始めると、搬送ガイド部材108の外側に接触していた記録媒体Pは、インナーガイド204側に引き寄せられる(
図18参照)。
【0045】
次に、主搬送ローラ223が第1の方向と反対の第2の方向に回転し始めると、記録媒体Pの先端部は、主搬送ローラ対16を構成する主搬送ローラ223と従動ローラのニップ部の上流側まで戻される。搬送ローラ207は停止しているので、搬送路200の内部空間に記録媒体Pのループが発生する(
図19参照)。その結果、記録媒体Pの先端部の一辺が主搬送ローラ対16の主搬送ローラ223と従動ローラのニップ部の上流側のニップ部に近接した位置で主搬送ローラ223と従動ローラの双方に押し付けられ、搬送方向に直交するように記録媒体Pの向きが矯正される。ループが搬送ガイド部材108に当接すると、記録媒体Pの剛性により記録媒体Pの先端部を主搬送ローラ対16のニップ部へ押し込む力が増すので、効率的に斜行矯正を行うことができる。記録媒体Pが斜行している場合、記録媒体Pのループはねじれた形状になっている。
【0046】
次に、主搬送ローラ223が第1の方向に回転し始めると、主搬送ローラ223と搬送ローラ207には速度差があるため、記録媒体Pの中腹に発生したループは、次第に解消されていく。さらに、主搬送ローラ223と搬送ローラ207の間で記録媒体Pに張力が発生すると、搬送ローラ207は、記録媒体Pを介して主搬送ローラ223の速度で回転させられる。その結果、搬送ローラ207から見た記録媒体Pの搬送抵抗がなくなり、搬送ローラ207の記録媒体Pへの当接力が予圧バネ218のみとなる。よって、記録媒体Pを押し付ける荷重が小さいため、記録媒体Pのねじれたループは、その反力で解消される。
【0047】
図20は、補助ガイド部材220の動作を説明するための断面図である。
【0048】
主搬送ローラ223が斜行矯正動作を行っているとき(第2の方向に回転しているとき)、補助ガイド部材220は、鉛直方向Rの力を記録媒体Pから受ける(
図20(a)参照)。斜行矯正動作後に主搬送ローラ223が搬送動作を行うと(第1の方向に回転すると)、補助ガイド部材220は、搬送方向Fの力を記録媒体Pから受ける(
図20(a)参照)。補助ガイド部材220は、上述したように軸220a、220bを中心に回転するように構成されている。そのため、軸220a、220bの回りに働くモーメントを考えると、R方向の力よりもF方向の力のほうが大きい。これにより、搬送動作時の補助ガイド部材220は、搬送方向側に傾倒する(
図20(b)参照)。このとき、補助ガイド部材220は、上述した回転構成なので記録媒体Pと接していても搬送抵抗が小さい。
【0049】
上述したように補助ガイド部材220を動作させるためには、記録媒体Pを補助ガイド部材220に接触させなければならないが、下記の関係を満たすことによって記録媒体Pが補助ガイド部材220に接触する確実性を高めることが可能となる。
【0050】
e×B>D
上記の速度比eは、搬送動作時における主搬送ローラ223と搬送ローラ207の速度比を示す。上記の搬送距離Bは、斜行矯正動作時に、記録媒体Pを搬送方向と反対方向に搬送する搬送距離を示す。上記の最短距離Dは、アウターガイド205から補助ガイド部材220の上端部までの最短距離を示す。
【0051】
本実施形態によれば、斜行矯正動作時には、補助ガイド部材220が搬送路200を狭めるように機能する。そのため、記録媒体Pのループを確実にアウターガイド205に当接させて斜行矯正動作を安定させることが可能となる。一方、搬送動作時には、補助ガイド部材220が、搬送路200を広げるように機能するので搬送抵抗の低減が可能となる。搬送動作時に補助ガイド部材220は記録媒体Pが接しているが、上述した回転構成により搬送抵抗は小さいものとなる。したがって、搬送抵抗の低減と安定した斜行矯正動作を両立することが可能となる。
【0052】
(実施形態2)
本発明の実施形態2の記録装置について説明する。以下、上述した実施形態1のインクジェット記録装置10と異なる点を中心に説明する。本実施形態では、搬送装置11の補助ガイド部材220が実施形態1と異なる。
図21は、本発明の実施形態2の記録装置に設けられた搬送装置11の断面図である。本実施形態の搬送装置11において、補助ガイド部材220は、インナーガイド204に取り付けられた平板状の弾性部材である。本実施形態では、補助ガイド部材220は、厚み0.12mm、幅23mm、長さ10.5mmのポリエステルフィルムの平板を2枚貼り合わせた構造である。
【0053】
図22は、補助ガイド部材220の動作を説明するための断面図である。
【0054】
主搬送ローラ223が斜行矯正動作を行っているとき、補助ガイド部材220は、インナーガイド204に対して直立したような姿勢となっている。斜行矯正動作後、主搬送ローラが搬送動作を行うと、補助ガイド部材220は、
図22に示すように、記録媒体Pから受けた力によって搬送方向側に撓むように変形する。これにより、補助ガイド部材220は、斜行矯正動作時に比べ搬送方向側に傾倒した状態になる。
【0055】
本実施形態では、実施形態1と同様に、補助ガイド部材220が、斜行矯正動作時に搬送路200を狭めるように機能し、搬送動作時に搬送路200を広げるように機能する。よって、搬送抵抗の低減と安定した斜行矯正動作を両立することが可能となる。
【0056】
さらに、本実施形態では、補助ガイド部材220の駆動構成を実施形態1に比べ簡易になるのでコストダウンを図ることが可能となる。
【0057】
上記各実施形態では記録媒体を主搬送ローラ対16で搬送方向に搬送した後に主搬送ローラ223を逆回転することによって斜行矯正動作を行っていた。本発明はこれ以外の斜行矯正動作にも適用可能である。他の斜行矯正動作として次のやり方がある。搬送ローラ207によって記録媒体Pを搬送し、停止中の主搬送ローラ対16の主搬送ローラ223と従動ローラのニップ部の上流側のニップ部に近接した位置で記録媒体Pの先端を主搬送ローラ223と従動ローラの双方に当接させる。さらに搬送ローラ207によって記録媒体Pを搬送して搬送ローラ207と主搬送ローラ対16の間でループを形成すると記録媒体Pの先端は主搬送ローラ223と従動ローラの双方に押し付けられ、先端の一辺は主搬送ローラ223の母線方向に向きが整えられる。このような方法で斜行を矯正してもよい。またこのとき、主搬送ローラ223を搬送方向とは逆方向に回転させていても同様に斜行矯正動作が可能である。