【実施例】
【0017】
<具体的構成>
図1は、本発明の一実施形態である車載装置の構成を示すブロック図である。
図1に基づいて、本発明の車載装置を説明する。
【0018】
車載装置1とは、車両に搭載され、トラック、バス、タクシー等の車両の位置情報や運行状況を把握できる道路運送車両の保安基準に基づく運行記録計(デジタルタコグラフ)やテレマティクス等を指す。本発明の実施形態では、テレマティクスを一例として詳述する。なお、テレマティクスとは、通信(テレコミニュケーション)と情報処理(インフォマティクス)を組み合わせた車両向けの次世代情報提供サービスである。
【0019】
車載装置1は、制御部2、GPSモジュール3、通信モジュール4、記録部5、表示部6、速度インターフェース(以後、I/Fと略称する)7、回転I/F8、等を備えている。
【0020】
制御部2は、CPU21・RAM22・ROM23を含み、車載装置1全体のシステムを統括し、プログラムの実行・データの入出力・演算・制御等を行う。
GPSモジュール3は、GPSアンテナ31と接続され、GPS(全地球測位システム)衛星からのGPS信号をGPSアンテナ31で受信して、車両の位置、即ち、経度・緯度で表される位置情報に変換する。
通信モジュール4は、通信アンテナ41と接続され、車載装置1で取得された各種情報データを電波に変換する。変換された電波は、通信アンテナ41を介し、電気通信回線(例えば、インターネット回線・衛星通信回線・携帯電話回線・移動体通信網・パケット通信網、等)を利用して、運行管理者の所属する管理センター内の管理コンピュータ10に送信される。また、通信モジュール4は、カーナビゲーションシステム等に送られてくる信号を通信アンテナ41で受信して、車両の配信情報に変換する役目もある。
【0021】
記録部5は、メモリカード等の不揮発性メモリが着脱自在に挿入でき、車載装置1で取得された各種情報データを記録する。メモリカードには、車両の位置情報を取得するタイミングである「所定時間」および「所定距離」が設定として記録されている。所定時間および所定距離のどちらか一方を用いて位置情報を取得してもよいし、両方を用いて位置情報を取得してもよい。以下、所定時間および所定距離を纏めて「所定間隔」と定義する。
メモリカード等は、運行完了後、運行管理者に手渡し、運行管理者は車両の運行解析を行うことができる。
表示部6は、液晶表示パネルや有機ELパネル等のディスプレイであり、車載装置1の動作表示や車両の位置情報を地図と共に表示する。速度I/F7は、車両の速度センサ71と接続され、速度センサ71からのパルス信号を制御部2に送るために仲介する。
制御部2では、車速速度や走行距離を算出する。
回転I/F8は、エンジン回転センサ81と接続され、エンジン回転センサ81からの信号を制御部2に送るために仲介する。
更に、車載装置1には、上述の他、車両電源90と接続されている電源部91、車両の各種センサ92と接続されているデジタル5ch入力I/F93、外部機器94と接続されている外部I/F95、等も備えられている。
【0022】
車載装置1は、GPSモジュール3を介して、所定間隔毎に車両の位置情報を取得する。所定間隔とは、所定の時間毎または所定の走行距離毎を指す。得られた位置情報を、通信アンテナ41を介して管理コンピュータ10に送信するが、送信データには、車両の運行状況を示す速度履歴・エンジン回転履歴・燃料消費量履歴・等も付随しており、送信データの容量による通信負荷を生じてしまう。
また、最近では、飲酒運転防止のためのドライバーのアルコール濃度測定データやエコ運転のための車両の詳細な運行環境データも追加されており、通信の負荷低減は避けられない。そこで本発明の車載装置1では、次のようにして位置情報データの容量を低減することにより、通信の負荷低減を図っている。
【0023】
<データ容量の削減処理ステップ>
図2は車載装置に於ける位置情報の取得処理方法の一例を示すフローチャートである。
図2に基づきGPSモジュール3から得られた位置情報の処理について説明する。
【0024】
車載装置1および位置情報処理プログラムは、イグニッションONにより作動する。
【0025】
ステップS1[位置情報記録設定]:
ステップS1で、車載装置1は、所定間隔(所定時間または所定走行距離)による位置情報を記録する設定がなされているか否かを判定し、記録設定状態であればステップS2に進み、記録設定状態でなければ処理を終了する。
【0026】
ステップS2[記録開始]:
ステップS2では、制御部2からの指令を受け、GPSモジュール3からの車両の位置情報取得を開始する。
【0027】
ステップS3[所定間隔判定]:
ステップS3では、所定間隔である「所定時間」又は「所定走行距離」に達したかを、制御部2で判定する。
所定間隔に達した場合は、ステップS4に進み、所定間隔に達していない場合は、元のステップS3に戻り、ステップS3の処理判定がYesとなるまでこの判定処理が繰り返される。
【0028】
ステップS4[位置情報地点判定]:
ステップS4では、取得された位置情報が、規定地点であるか否かを制御部2で判定する。ここで「規定地点」とは、運行管理上、車両が立ち寄るのに必要な地点で、例えば、得意先の会社や事務所、配送センター、客待ちの駅、休憩に必要なドライブインやレストラン、ガソリンスタンド、等、である。規定地点は、位置情報(経度・緯度)と判別記号(例えば、A100は会社Aの本店、A101は会社Aの支店1、A102は会社Aの支店2、・・・。B100は鉄道会社B、B101は鉄道B線の駅1、B102は鉄道B線の駅2、・・・)と地点名や住所等と共に、サブテーブルとして記録部(メモリカード)5に記憶されており、使用時に記録部5から読み出されて制御部2に記憶される。
取得された位置情報とサブテーブルとをステップS4で比較し、比較された位置情報が規定地点の位置情報と一致した場合は規定地点と判断する。規定地点と判断されれば、ステップS51に進み、規定地点でなければ、ステップS41に分岐する。
【0029】
ステップS51[規定地点]:
ステップS51では、規定地点として判断した場合は、規定地点の処理をするため、ステップ61へ進む。
【0030】
ステップS61[判別記号のみ記録]:
ステップS61では、規定地点の判別記号(例えば、A100、A101、A102、B100、B101、B102、・・・)のみを記録することとし、これによりデータ量の多い本来の位置情報の記録を回避する。
【0031】
ステップS41[前回同地点判定]:
規定地点でないと判断されてステップS4から分岐したステップS41では、「前回と同地点であるかどうか」を判定する。
「所定間隔」が「所定時間」の場合は、車両が停止している場合か車両が渋滞に巻き込まれている場合がこれに該当する。
「所定間隔」が「所定走行距離」の場合は稀なケースであるが、往復経路走行のような所定距離走行した後に前回と同じ地点に戻っている可能性があり、このような場合がこれに該当する。
「前回と同地点である」と判断されればステップS52に進み、「前回と同地点でないる」と判断されれば、ステップS53に分岐する。
【0032】
ステップS52[前回同地点]:
ステップS52では、前回同地点として判断した場合は、「前回同地点」処理をするため、ステップ62へ進む。
【0033】
ステップS62[前回同地点処理は1ビットのみの記録]:
ステップS62では、既に取得された前回と同地点であるため、緯度・経度の位置情報は前回のものを用いればよいので位置情報の記録を省略して、前回同地点であることを示す識別子である数字「0」(1ビット)と1ビットだけ使って記録することとしている。これによりデータ量の多い本来の位置情報の記録を回避する。
なお、印刷又は表示する場合に、「0」信号を、例えば、「前回と同じ位置である」と出力するようプログラムされていると良い。
【0034】
ステップS41で「前回と同地点でない」と判断された場合は、ステップS53に進み、ステップ53で「新地点」処理がなされる。
【0035】
ステップS53[新地点]:
ステップS53では、規定位置にも前回同地点にも該当しない新地点であるので、ここでようやく従来方法と同じように経度・緯度による位置情報を記録する。
【0036】
ステップS7[記録終了判定]:
ステップS7で記録終了するか否かを判定する。
記録終了する場合は、ステップS8に進み、記録終了しいない場合は、ステップS3にジャンプする。
【0037】
ステップS8[データ送信]:
ステップS8では、このようにして得られた車両の運行状況を示すデータ容量の削減された位置情報を通信アンテナ41(
図1)を介して管理コンピュータ10(
図1)に送信する。
【0038】
図3は、車載装置に記録される位置情報の内容の一例を示す表である。
図3に基づき、車載装置で得られた位置情報の記録方法について説明する。
【0039】
<取得データの一例>
図3に示された表は、データベースのテーブルの一例を示している。テーブルは制御部2や記録部(メモリカード)5に登録されている。
1列目はデータのオートナンバー、
2列目はGPSモジュール3から取得される車両の位置情報を示す緯度(X)・経度(Y)、
3列目は位置情報が取得された取得時刻、
4列目はn−1データの位置情報比較で通常は識別子である数字の「1」、前回と同地点であれば「0」、
5列目は規定地点の判別で、規定地点であれば予め登録されている判別記号、前回同地点であればその地点と同じ番号、新地点であれば新規連番、
6列目は送信するための地点データが、それぞれ入力され、記録される。
【0040】
例えば、1行目を車両の出庫後最初の位置情報取得時刻とする。位置情報(X1、Y1)は、新地点の為(ステップS43に相当)、判定は「1」、判別記号は「X01」の連番、地点データは(X1、Y1)である。
2行目は、2回目の位置情報取得時刻とする。位置情報(X2、Y2)で、新地点(ステップS43に相当)のため、判定は「1」、判別記号は「X02」の連番、地点データは(X2、Y2)である。
3行目は、3回目の位置情報取得時刻とする。位置情報(X2、Y2)である。車両が同地点に駐車等しているので、前回と同地点(ステップS42に相当)のため、判定は「0」、判別記号は「X02」の連番、地点データは「0」である。そして、車両が駐車中等では、車両が移動しないためこれが繰り返される。
【0041】
5行目は、5回目の位置情報取得時刻とする。位置情報(X3、Y3)で、規定地点(ステップS8に相当)である。判定は「1」、判別記号は予め登録されている規定地点の判別記号(例えばA102)である。地点データは「A102」である。
【0042】
以上のように所定間隔毎に、取得された位置情報は、判定されて地点データとして変換される。変換された地点データは、経度・緯度からなる位置情報よりも容量が少なくて済み、管理コンピュータ10に送信するデータ容量が低減される。さらに、前回と同じ場合は、1ビットで処理することで、さらにデータ容量が削減できる。従って、データ容量が減った分、通信回数を増やすことができ、車両の運行管理がタイムリーに行われ、エコ運転、安全運転指導が向上する。また、通信負荷低減は、運行状況データをより詳細にすることができ、運行管理の解析の質も向上する。
【0043】
<本発明のまとめ>
本発明の車載装置1においては、制御部2には、GPSモジュール3とGPSアンテナ31と車両の各種センサ71、81、92とが、接続され、各種センサ71、81、92で車両の車速速度やエンジン回転数等の車両の運行状況データを取得し、所定間隔毎にGPSモジュール3で変換される車両の位置情報を取得し、車両の位置情報を基に、位置情報で得られる地点を制御部2で判別する。そして、予め登録された地点には、規定地点の判別記号を制御部2に記録し、前回立ち寄った同地点には同地点を示す識別子で制御部2に記録し、新地点にのみ従来方法による位置情報を制御部2に記録する。
更に、各記録されたデータと各取得されたデータを記録する記録部5を備えていることを特徴としている。
【0044】
この構成により、GPSアンテナ31とGPSモジュール3により取得された位置情報(経度・緯度)を取捨選択して、運行管理上必要な規定地点や過去の同一地点を位置情報両よりも軽い情報量に変換して全体のデータ容量を低減して記録部5に記録することができる。
【0045】
また、本発明の車載装置1においては、位置情報を、判別記号と識別子に変換し、他の位置情報と運行状況データと共に管理センター等にある管理コンピュータ10に送信するための通信モジュール4と通信アンテナ41を備えていることを特徴としている。
この構成により、データ容量が軽くなって変換された位置情報を通信として利用するため、送信の負荷が低減できる。また、受信側の管理コンピュータ10では、容量の少ない分、処理能力が向上し、より優れた運行管理が可能となる。
【0046】
そして、本発明の車載装置1においては、識別子は、「0」または「1」等の数字であるので、識別子が1ビット単位になり、特に前回と同一地点位置情報のデータ容量が極めて小さくできる。
【0047】
本発明の車載装置に於ける位置情報取得方法においては、制御部2には、GPSモジュール3とGPSアンテナ31と車両の各種センサ71、81、92とが、接続され、所定間隔毎にGPSモジュール3で変換される車両の位置情報を取得するステップと、車両の位置情報を基に、位置情報で得られる地点を制御部2で判別するステップと、運行管理上必要な規定地点を登録されてあるサブテーブルとを比較し、比較された位置情報が規定地点と合致された場合は、規定地点の判別記号を制御部2に記録するステップと、から成ることを特徴としている。
【0048】
この方法により、運行管理上、決められた経路や決められた場所等に車両が移動する回数が増えてくるため、車載装置1を使用する毎に規定地点が増加する。従って、必然的に位置情報が判別記号として記録されるデータ量が増加し、その分位置情報の容量が低減する。
【0049】
また、本発明の車載装置に於ける位置情報取得方法においては、位置情報が規定地点でない場合には、前回と同一地点かどうかを判定し、同一地点の場合には同一地点であることを示す簡単な1ビットの識別子で制御部2に記録し、規定地点又は同一地点でない新地点の場合には、従来通り位置情報を記録している。この方法により、同一地点に駐車や、同一地点に立ち寄ることが多い場合は、位置情報のデータ容量を大幅に低減できる。
【0050】
そして、本発明の車載装置に於ける位置情報取得方法においては、車載装置1に備えられた通信モジュール4と通信アンテナ41を介して、判別記号と識別子とを含む位置情報を取得されている運行状況データと共に管理センター等にある管理コンピュータ10に送信するステップと、から成ることを特徴としている。この方法により、容量が軽くなって変換された位置情報を通信として利用するため、送信の負荷が低減できる。また、受信側の管理コンピュータ10では、容量の少ない分、処理能力が向上し、より優れた運行管理が可能となる。
【0051】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0052】
図3において、本発明の車載装置1で取得される位置情報等の記録方法について述べたが、データを記録する方法はこれに限定されない。
【0053】
所定間隔を、所定時間または所定走行距離としたが、必要に応じて両方を併用しても良い。
【0054】
ステップS42で、前回同地点は、識別子である数字「0」と記録すると述べたが、「1」でも良く、識別子の選択は任意である。
【0055】
車両が所定間隔に達した時、位置情報を取得することを述べたが、位置情報を例えば1秒毎に取得時間と合わせて記録し、所定間隔毎にそれらの位置情報をグループ化して記録しても良い。
【0056】
以上では、車載装置1で、イグニッションON/OFFまたは運行開始/終了スイッチを監視することで、車両の運行開始/終了を判別し、取得され記録された運行経路等の運行状況データや位置情報データを運行終了時にまとめて管理コンピュータに送信しているが、所定間隔が複数回経過した時点で、一度、纏めてこれらの運行状況データや位置情報データを管理コンピュータに送信して、再度、運行状況データや位置情報データを取得開始するように、フローを繰り返すようにしても良い。