(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1内型の前記第1当接面が、前記第1内型の内周面から外周面側に向かうにつれて前記第1内型の他端側の端面に向かって傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の型打鍛造型。
前記外型は、前記第1内型の前記第1当接面より前記一端側に、前記第2内型側に向かって突出する突出部を有するとともに、該突出部と前記第1当接面とで前記第2内型を固定していることを特徴とする請求項2に記載の型打鍛造型。
前記第1内型の前記一端側の端面は、前記第1凹みより前記第1内型の外周面側に離間した部位に第2凹みを有しており、前記第1凹みと前記第2凹みとの間に前記第2内型と接する第2当接面を有するとともに、前記第2凹みと対応する部位で空隙を介して前記第2内型の端面と対向していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の型打鍛造型。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態の
型打鍛造型の一例について説明する。
【0010】
図1において、(a)は本実施形態の
型打鍛造型の一例を示す概略縦断面図で、(b)は、(a)のA−A’線における概略横断面図である。
【0011】
この
型打鍛造型1aは、円筒状の外型2と、外型2の内側に嵌合され、一端側が被加工材の導入部31とされ、かつ内周面32が被加工材を成型するための成型部6とされた円筒状の内型3とを備えている。内型3の一端側とは、
図1(a),
図2,
図4(a),
図5(a),
図6(a)においては、内型3の上端側である。また、内型3の内周面32は、第2内型3bの内周面32bと第1内型3aの内周面32aとから構成される。言い換えると、内型3には、上下方向に貫通する円柱状の空洞が形成されており、導入部31に位置する空洞は第1内型3aと第2内型3bの下端面側における空洞より拡幅されている。
【0012】
さらに、内型3は、金属製の第1内型3aと、第1内型3aに対し一端側に位置するセラミックス製の第2内型3bとを有し、第1内型3aの一端側の端面(上端面)には、内周面32aより離間した部位に第1凹み4を有している。この第1凹み4は
図1(b)に示すように、第1内型3aの上端面に、内周面32aを形成する円形状の空洞と同心円状に形成されている。また、第1内型3aの一端側の端面は、第1凹み4よりも内周面32a側で第2内型3bと接する第1当接面10を有するとともに、第1凹み4と対応する部位で空隙を介して第2内型3bの下端面と対向している。
【0013】
なお、
図1(b)に示すように、
型打鍛造型1aでは第1凹み4は環状に設けられており、言い換えれば、第1内型3aにおいて、当接面10を有する部位が環状に、第1内型3bの下端面に向かって突出している。以下では、この部位を第1凸状部5という。
【0014】
図2は、
型打鍛造型1
aを用いた鍛造方法を示す模式図で、(a)は
型打鍛造型1aに被加工材35を導入した状態の概略縦断面図であり、(b)は導入した被加工材35を押圧型9で加圧して鍛造している状態を示す概略縦断面図である。
【0015】
本実施形態の
型打鍛造型1aを用いた
型打鍛造方法は、まず
図2(a)に示すように、
型打鍛造型1aの導入部31に、例えば、金属からなる被加工材35を導入して、
図2(b)に示すように押圧型9を用いて、被加工材35を押圧型9で叩いて圧力を加えることで目的の形に被加工材35を成型加工するものである。なお、導入部31に導入される金属からなる被加工材35は、金属の種類や仕上がりの寸法精度等にあわせて温度を適宜設定して加熱し、粘度を調整すればよい。
【0016】
本実施形態の
型打鍛造型1aは、
型打鍛造時において、第1凹み4による第1内型3aと第2内型3bとの間の空隙が第1内型3aの変形の逃げ場となり、第1内型3aと第2内型3bとの界面に生じる反発力が緩和されやすいため、セラミックス製の第2内型3bに亀裂,破損が生じにくく、長期にわたって使用することができる。また、第1内型3aの第1凸状部5が変形することで、
型打鍛造時に第2内型3bにかかる応力をより効率よく分散させることができるため、セラミックス製の第2内型3bに生じる亀裂,破損をより抑制でき、より長期にわたって
型打鍛造型1aを使用できる。
【0017】
また、
図1においては、第1金型3aと第2金型3bの外径が同じである円筒状について説明したが、本発明の範囲を逸脱しない程度に、第1金型3aと第2金型3bの大きさを用途にあわせてそれぞれ適宜変更してもよく、また円筒状ではなく四角筒状等であってもよい。さらに第1金型3aと第2金型3bは、円柱状の空洞ではなく、四角柱状の空洞が形成されてもよい。
【0018】
なお、使用して変形した第1凸状部5は、研磨することで再利用できるほか、例えば、研削等により除去して、新たに第1凹み4を設けたり、新たに第1凸状部5と同形状の金属部材を作製して溶接等により第1内型3aに接合したりすることで容易に再利用することができる。
【0019】
ここで、第1凹み4は、第1凸状部5の上端面からの深さd、言い換えると、第2内型3bの下端面からの深さdが、第2内型3bの高さHの0.5%以上5%以下、幅wが、第
2内型3bの最大壁幅Wの50%以上90%以下となるように形成することが好ましい。なお、幅wは、第1凸状部5の外周面と第1内型3aの外周面との距離で表される。また、最大壁幅Wは第2内型3bの内周面32bから、第2内型3bの外周面までの距離のうち最も長い距離で表わされる。
【0020】
第1凹み4の大きさが上記範囲内であれば、
型打鍛造時において、第1内型3aと第2内型3bとの界面に生じる反発力をより効率的に緩和しやすいため、セラミックス製の第2内型3bに亀裂,破損がより生じにくく、より長期にわたって使用できる。
【0021】
図3(a)(b)は、第1内型3aの一端側の端面における第1凹み4の他の一例を示す概略横断面図である。
【0022】
図3(a)は、第1内型3aの一端側の端面に、内周面32より離間した部位に第1凸状部を囲むように第1凹み4が複数、
図3(a)では4つ形成されている。なお、第1内型3aの一端側の端面において、隣り合う第1凹み4の間には、第2内型3bの下端面に向かって突出した第1凸状部5’が形成され、この第1凸状部5’の高さは第1凸状部5の高さと同一とされている。
【0023】
また、
図3(b)は、
図3(a)と同様に、第1内型3aの一端側の端面において、内周面32aより離間した部位に第1凹み4が4つ形成されており、隣り合う第1凹み4の間の第1凸状部5’の幅が外周面に向かうにしたがって大きくなっている。
なお、第1凹み4は3つ以下、5つ以上でもよい。
【0024】
図3(a)(b)に示すように、第1内型3aの一端側の端面において、内周面32より離間した部位に第1凹み4が複数形成されていると、第1内型3aの第1凸状部5’と第2内型3bとが当接し、第1内型3aと第2内型3bとの当接面積を増加させることで、当接面の単位面積あたりにかかる応力を低減させることが可能となるため、
型打鍛造時において、第2内型3bにかかる応力を第1内型3aにより効率よく分散させることができ、セラミックス製の第2内型3bに亀裂,破損が生じにくく、より長期にわたって使用できるとともに、第1凸状部5の変形量を小さくできる。
【0025】
また、第1内型3aの一端側の端面において、内周面32aより離間した部位に第1凹み4が複数形成されるとともに、隣り合う第1凹み4の間の第1凸状部5’の幅が外周面に向かうにしたがって大きくなり、言い換えると第1凸状部5’の幅が外型2に近いほど広くなるため、第2内型3bをより安定して支持することが可能となり、
型打鍛造時において、第2内型3bにかかる応力を第1内型3aにさらに効率よく分散させることができ、
セラミックス製の第2内型3bに亀裂,破損が生じにくく、さらに長期にわたって使用できる。
【0026】
図4において、(a)は本実施形態の
型打鍛造型の他の例を示す概略縦断面図で、
図4(b)は、(a)のB−B’線における概略横断面図である。
【0027】
図4に示す
型打鍛造型1bは、第1内型3aの第1当接面10が、内型3の内周面32から外周面側に向かうにつれて第1内型3aの他端側の端面14に向かって傾斜している。
【0028】
型打鍛造型1bをこのような構造とする場合には、第1内型3aと第2内型3bとの当接面積を大きくすることができることから、
型打鍛造時に第2内型3bにかかる応力を、第1凸状部5に効率よく分散させることができる。それにより、セラミックス製の第2内型3bに生じる亀裂,破損をさらに抑制でき、より長期にわたって鍛造型1bを使用できる。
【0029】
なお、第1内型3aの傾斜面10と第1内型3aの軸線Lに垂直な面とのなす角をθとするとθが15°〜60°であると、特に、
型打鍛造時に第2内型3bにかかる応力を、効率よく分散させることができる。
【0030】
なお、第1内型3aの第1当接面10は、第1内型3aと第2内型3bとの当接面積を大きくするという点から、第1内型3bの内周面32bから外周面側に向かうにつれて第2内型3bの一端側の端面に向かって傾斜していても構わないが、
型打鍛造時において、第1内型3aおよび第2内型3bの外周方向に応力が生じやすいことから、上述した
型打鍛造型1bの構成とする方が、
型打鍛造時に第2内型3bにかかる応力を、より効率よく分散させることができる。
【0031】
図5において、(a)は本実施形態の
型打鍛造型のさらに他の例を示す概略縦断面図で、(b)は、(a)のC−C’線における概略横断面図である。
【0032】
図5に示す
型打鍛造型1cは、外型2は、第1内型3aの第1当接面10より一端側に、第2内型3b側に向かって突出する突出部7を有するとともに、突出部7と第1当接面10とで第2内型3bを固定している。また、突出部7は外型2の一端側(上端側)の端部において環状に形成されている。なお、
図5(b)に示すように、突出部7の第2内型3bとの当接面は平面であるが、曲面であっても構わない。
【0033】
型打鍛造型1cは、このような構造とした場合には、外型2の突出部7と、第1内型3aの当接面10とで、第2内型3bが外型2により強固に固定されることから、第2内型3bに繰り返し応力が生じても、第2内型3bの外型2との当接面が摩耗されにくくなる。それにより、セラミックス製の第2内型3bに生じる亀裂,破損をさらに抑制でき、より長期にわたって
型打鍛造型1cを使用できる。
【0034】
また、突出部7は、外型2の内周面から内側に向かうにつれて外型2の一端側(上端側)の端面に向かって傾斜する傾斜面17を有している、言い換えれば、傾斜面17が当接面10と対向するように形成されていることが好ましく、突出部7が傾斜面17を有すると、外型2の突出部7の傾斜面17と、第1内型3aの当接面10とで、第2内型3bが外型2にさらに強固に固定されることから、第2内型3bに繰り返し応力が生じても、第2内型3bの外型2との当接面がさらに摩耗されにくくなる。また、被加工材の一部が第1内型3aと第2内型3bとの隙間に入り込みにくく、加工品にバリが生じにくくなる。
【0035】
なお、外型2の傾斜面17と第1内型3aの軸線Lに垂直な面とのなす角をθ’とすると
θ’が15°〜60°であれば、特に、外型2の傾斜面17と、第1内型の傾斜面10とで、第2内型3bがより強固に固定されて、第2内型3bの外型2との当接面が摩耗されにくくなる。また、角度θ、θ’は前記範囲内であれば、それぞれ値が異なっていても構わない。
【0036】
図6において、(a)は本実施形態の
型打鍛造型のさらに他の例を示す概略縦断面図で、(b)は、(a)のD−D’線における概略横断面図である。
【0037】
図6に示す
型打鍛造型1dでは、
図1に示した
型打鍛造型1aに対して、第1内型3aの一端側の端面には、第1凹み4より第1内型3aの外周面側に離間した部位にさらに同心円状の第2凹み4’を有している。また、第1凹み4と第2凹み4’との間に第2内型3bと接する第2当接面10’を有しており、第2凹み4’と対応する部位は空隙を介して第2内型3bの端面と対向している。言い換えれば、内周面32に連続して環状の第1凸状部5が形成され、この第1凸状部5の外周側に環状の第1凹み4が形成され、この第1凹み4を囲むように環状の第2凸状部8が形成され、この第2凸状部8を囲むように環状の第2凹み4’が形成されている。
【0038】
このような構造であれば、第1内型3aと第2内型3bとの当接面(第1当接面10,第2当接面10’)の面積を増加させることができ、当接面の単位面積あたりにかかる応力を低減させることが可能となるため、第2内型3bにかかる応力を第1内型3aにより効率よく分散させることができ、セラミックス製の第2内型3bに亀裂,破損が生じにくく、より長期にわたって使用できるとともに、第1凸状部5の変形量を小さくできる。
【0039】
なお、第2凹み4’は、第2凸状部8を複数個に分別するよう第1凹み4と接続してもよい。この場合、複数個の第2凸状部8は、第1凸状部5を基準にしてそれぞれが対称の位置に配置されていると、鍛造時に第2内型3bにかかる応力をより均一に分散しやすくなるため、セラミックス製の第2内型3bに生じる亀裂,破損をさらに抑制でき、より長期にわたって
型打鍛造型1dを使用できる。
【0040】
ここで、第1凹み4および第2凹み4’は、深さdが、それぞれ第2内型3bの高さHの0.5%以上5%以下、第1凹み4および第2凹み4’の幅w,w’の和が、第2内型3
bの最大壁幅Wの50%以上90%以下となるように形成することが好ましい。なお、幅w’は、第2凸状部8の外周面と第1内型3aの外周面との距離で表される。
【0041】
また、本実施形態の
型打鍛造型1a〜1dにおいて、第1内型3aおよび第2内型3bは、第2内型3bの内周面32bの表面積が第1内型3aの内周面32aの表面積より大きくなるよう形成することが好ましい。言い換えると、第2内型3bの上下方向の厚みが、第1内型3aの厚みより厚くするとよい。
【0042】
このような構造であれば、被加工材と、金属よりも耐摩耗性に優れるセラミックス製の第2内型3bとの当接面積を増加でき、
型打鍛造型の摩耗による劣化を低減できるため、より長期にわたって使用できる。
【0043】
また、
型打鍛造型1a〜1dの第2内型3bに用いられるセラミックスとしては、アルミナ(Al
2O
3),ジルコニア(ZrO
2)などの酸化物セラミックスや、窒化珪素(Si
3N
4),炭化珪素(SiC)などの非酸化物セラミックスなどが適用可能であるが、特には、高硬度であり優れた耐摩耗性を有する窒化珪素(Si
3N
4)を用いるのがよい。
【0044】
また、外型2および第1内型3aに用いられる金属としては、ダイス鋼(SKD,SKT)を用いることが好ましく、特に第1内型3aとして、熱処理などにより酸化被膜が形
成された金属を用いると、第1内型3aの表面に錆が発生するのを抑制することができるので好ましい。
【0045】
次に、本実施形態の
型打鍛造型1a〜1dの製造方法の一例を説明する。
【0046】
まず、金属製の外型2と第1内型3aを製造する。ダイス鋼のインゴットから、外型2と第1内型3aの元となる金属塊を切り出し、これに万能研削盤などの金属加工機を用いて加工を施し、所定の内径,外径,高さを有する外型2と第1内型3aとを製造する。特に、外型2に第1内型3aを挿入できるように、外型2の内周面と、第1内型3aの外周面とには、例えば、室温で0.1〜0.5%のしめ代を設けて、バフ研磨などの仕上げ加工を施しておく。
【0047】
なお、第1凹み4,第2凹み4’,第1凸状部5の傾斜または外型2の傾斜等は、万能研削盤などの金属加工機を用いて形成すればよい。
【0048】
次に、第2内型3bを、セラミックスとして窒化珪素質焼結体を用いて形成する場合の製造方法を説明する。
【0049】
平均粒径が0.5〜10μmの市販の窒化珪素1次原料と、所定量の焼結助剤,バインダ,
溶媒とを混合してスラリーとした後、噴霧乾燥装置(スプレードライヤー)を用いて噴霧造粒して2次原料を得る。そして、この2次原料を用いて静水圧プレス成形法(ラバープレス)により、円筒状の成形体を成形する。その後、この成形体に所定形状となるように切削加工を施し、還元雰囲気炉中で1800〜2100℃の温度で焼成し、必要に応じて研削加工を施し、外型2との当接面を研磨加工して、内周面が成型部6とされた窒化珪素質焼結体からなる第2内型3bを得ることができる。
【0050】
また、第2内型3bの外周面と、外型2の内周面とには、例えば、0.5〜1%のしめ代
を設けるように加工を施すのがよい。しめ代がこの範囲であれば、
型打鍛造時の加熱により金属製の外型2が熱膨張した場合に、第2内型3bに緩みが生じにくく、かつ圧入時に第2内型3bに多大な応力がかかっても、第2内型3bの一部に亀裂や破損が生じにくい。
【0051】
そして、作製した外型2に第1内型3aおよび第2内型3bを嵌合させることによって
型打鍛造型1a〜1dとすることができる。
【実施例1】
【0053】
図1に示す
型打鍛造型1aを製造した。まず、ダイス鋼のインゴットから、外型2および第2内型3bとなる金属塊をそれぞれ切り出した。
【0054】
次に、切り出した金属塊を用いて万能研削盤を用いて加工を施し、外径φ200mm,内
径φ150mm,高さ200mmである円筒状の外型2を作製した。また、同様に、切り出した金属塊を用いて、外径がφ150mm,高さが100mm,成型部6の径がφ30mmとなるようにして円筒状の第1内型3aを作製し、第1内型3aの片側端面を研削加工して、外径がφ50mm,内径がφ30mm,高さ1mmの環状の第1凸状部5となるように深さdが1mmの環状の第1凹み4を形成した。なお、第1内型3aの外径のしめ代は0.3%とした。
【0055】
次に、第2内型3bを製造するために、純度87%の窒化珪素1次原料粉末を準備し、この窒化珪素1次原料粉末100質量%に対し、焼結助剤を13.5質量%、バインダを1質量%
、分散剤を0.3質量%、溶媒を100質量%加えてスラリーとした後、噴霧造粒装置(スプレードライヤー)にて造粒して2次原料粉末を作製した。そして、この2次原料粉末を用いて静水圧プレス成形法により円柱状の成形体を成形した。その後、この成形体に切削加工を施し、還元雰囲気炉中で1900°の最高温度で焼成し、得られた焼結体に研削加工を施して、高さHが100mm、外径がφ150mmであり、導入側の端面を上面とした時、上面側の成型部6の内径がφ80mm,下面側の成型部6の内径がφ30mm,上面側の成型部6と下面側の成型部6との間に傾斜角度60°の傾斜を有する第2内型3bを作製した。なお、第2内型3bの外径のしめ代は0.5%とした。
【0056】
その後、作製した外型2に、第1内型3aおよび第2内型3bをそれぞれ嵌合して
型打鍛造型1aを得た。
【0057】
また、比較例として、第1内型3aに第1凹み4を設けない以外は、上記と同様の製造方法にて製造して従来の
型打鍛造型を得た。
【0058】
次に、
型打鍛造型1aと、金属製の第1内型3aに第1凹み4を設けていない比較例の
型打鍛造型との2種類の
型打鍛造型を同型の
型打鍛造装置にそれぞれ取り付け、被加工材を加圧して、シャフトを成型する試験を実施した。試験は30日間(1日20時間)連続成形を実施し、各
型打鍛造型の内型の緩みや、亀裂,破損がないか確認した。
【0059】
その結果、第1凹み4を設けていない比較例の
型打鍛造型については、10日間の連続成型で破損を生じ、途中で試験を中断せざるを得なかった。破損した
型打鍛造型の亀裂を辿ると、第2内型3bの第1内型3aとの接触部の一部に生じた亀裂が破壊源であることがわかった。
【0060】
これに対し、第1凹み4を設けた
型打鍛造型1aは、30日間の連続成型においても亀裂,破損が生じることはなく、安定して鍛造品を得ることができた。また、試験後の
型打鍛造型1aを中央から研削加工により割断し、第1内型3aと第2内型3bの接触部の状態を確認すると、第1内型3aの第1凸状部5の端部に少し変形は見られたものの亀裂などの発生は見られず、より長期にわたって使用できることがわかった。
【実施例2】
【0061】
次に、
図4に示す
型打鍛造型1bを製造した。まず、外型2は実施例1と同様の製造方法にて製造した。
【0062】
第1内型3aについては、被加工材の導入側の端面を上面とした時、第1凸状部5の、第2内型32bとの第1当接面10となる上面を、万能研削盤による加工で、内周面32aから外周面側に向かうにつれて第1内型3aの他端側の端面14に向かって角度(θ)が30°で傾斜する傾斜面とした以外は実施例1と同様の方法により製造した。
【0063】
また、第2内型3bは、第1凸状部5の第1当接面10に対応する面が、内周面32aから外周面側に向かうにつれて第1内型3aの他端側の端面14に向かって角度が30°で傾斜する傾斜面とした以外は実施例1と同様の方法により製造した。
【0064】
そして、作製した外型2に、第1内型3aおよび第2内型3bをそれぞれ嵌合して
型打鍛造型1bを得た。
【0065】
次に、
型打鍛造型1bを実施例1と同様の
型打鍛造装置に取り付け、被加工材を加圧して、車軸の一部となる自動車部品を成型する試験を実施した。試験を実施例1と同様に30日間実施したところ、破損を生じることがなく安定して鍛造品を得ることができた。また
、試験後の
型打鍛造型1aを中央から研削加工により割断し、第2内型3bと第1内型3aの接触部の状態を確認したところ、第1凸状部5は、同様の試験後の
型打鍛造型1aに比べて変形がより小さかった。
したがって、第2内型3bにかかる応力を第1内型3aにより効率よく分散させることができ、第2内型3bに亀裂,破損が生じにくく、かつ、第1凸状部5の変形量を小さくでき、より長期にわたって使用できることがわかった。
【実施例3】
【0066】
次に、
図5に示す
型打鍛造型1cを製造した。まず、外型2の一端側の端部となる部位に、万能研削盤により傾斜面17を有する環状の突出部7を形成する以外は実施例1と同様の製造方法にて外型2を製造した。なお、外型2において、突出部7を設けた部分の内径はφ144mmで、傾斜面17の傾斜角度(θ’)は60°とした。
【0067】
また第1内型3aを、切削加工により第1凸状部5の第2内型3bとの第1当接面10となる面を外型2の傾斜面17と平行に傾斜するように切削加工で加工した以外は実施例2と同様の製造方法により作製した。
【0068】
また第2内型3bを、外型2の傾斜面17と対応する部位に、切削加工により傾斜面17と平行に傾斜する傾斜面を形成するほか、第1凸状部5の第1当接面10と対応する面を外型2の傾斜面17と平行に傾斜するよう加工した以外は実施例1と同様の製造方法により作製した。
【0069】
そして、作製した外型2に、第1内型3aおよび第2内型3bをそれぞれ嵌合して
型打鍛造型1cを得た。
【0070】
次に、
型打鍛造型1cを実施例1と同様の
型打鍛造装置に取り付け、被加工材を加圧して、車軸の一部となる自動車部品を成型する試験を実施した。試験は60日間(1日20時間)連続成形を実施し、1日の各
型打鍛造型の内型に亀裂,破損がないか確認し亀裂や破損が生じた日を記録した。
【0071】
また、比較のために、
型打鍛造型1a,1bについても同様の試験を実施した。
【0072】
その結果、
型打鍛造型1aは43日間、
型打鍛造型1bは53日間、第1内型3aに亀裂や破損が生じなかった。また、
型打鍛造型1cは60日間、亀裂や破損が生じなかった。また、試験後の
型打鍛造型1a,1b,1cの第2内型3bにおいて、外型2の、第2内型3bとの当接面を確認したところ、
型打鍛造型1cの第2内型3bは
型打鍛造型1a,1bの第2内型3bに比べて摩耗が小さいことがわかった。なお、摩耗の程度は、試験前の第2内型3bの外周の長さと試験後の第2内型3bの外周の長さとを比べることで確認した。
【0073】
したがって、傾斜面17と第1内型3aの第1当接面10とで、第2内型3bが強固に固定されていることから、外型2の第2内型3bとの当接面が摩耗されにくく、セラミックス製の第2内型3bに生じる亀裂,破損をさらに抑制でき、より長期にわたって
型打鍛造型1cを使用できることがわかった。
【実施例4】
【0074】
次に、
図6に示す
型打鍛造型1dを製造した。まず、実施例1と同様の第1凸状部5と、第1凸状部5から外側に25mm離れた位置に、高さ1mm,幅5mmの環状の第2凸状部8が形成されるよう、第1凹み4,第2凹み4’を設ける以外は実施例1と同様の製造方法により第1内型3aを製造した。
【0075】
また、実施例1と同様の製造方法により外型2および第2内型3bを製造した。
【0076】
そして、外型2に第1内型3aおよび第2内型3bをそれぞれ嵌合して
型打鍛造型1dを得た。
【0077】
次に、
型打鍛造型1dを実施例1と同様の
型打鍛造装置に取り付け、被加工材を加圧して、車軸の一部となる自動車部品を成型する試験を実施した。なお試験は45日間実施した。
【0078】
その結果、
型打鍛造型1dは破損を生じることがなく、安定して鍛造品を得ることができた。また、試験後の
型打鍛造型1aを中央から研削加工により割断し、第1内型3aと第2内型3bの当接面の状態を確認したところ、
型打鍛造型1dの第1凸状部5は、実施例1の
型打鍛造型1aの第1凸状部5に比べて変形が小さく、より長期にわたって使用できることがわかった。