(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記攪拌手段は、ルーローの多角形の形状の回転部材からなり、当該回転部材は、前記繰り出しベルトによる硬貨の繰り出し動作が行われる際に回転するようになっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の硬貨繰り出し装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1乃至
図7は、本実施の形態に係る硬貨繰り出し装置およびこの硬貨繰り出し装置を備えた硬貨釣銭機を示す図である。
【0019】
まず、本実施の形態による硬貨釣銭機の構成について
図1および
図2を用いて説明する。
図1等に示すような硬貨釣銭機10は、例えば、店舗のレジにおいてPOSレジスタと通信して硬貨の入金や出金を行うようになっている。
【0020】
図1に示すように、硬貨釣銭機10は、前面を開口した筐体12と、この筐体12の前面から引出可能な本体ユニット14とを備えている。筐体12から前方に突出する本体ユニット14の前部上面には、硬貨を投入するための硬貨投入口16が形成されている。また、筐体12から前方に突出する本体ユニット14の前部上面には、操作用や設定用のボタン(キー)18、およびタッチパネル等の操作表示部20がそれぞれ設けられている。また、本体ユニット14の前面の右側下部に出金トレイ22が設けられており、この出金トレイ22の上面に、機内から払い出される硬貨が硬貨放出口24を介して放出される硬貨出金口26が形成されている。
【0021】
図2に示すように、硬貨釣銭機10の本体ユニット14には、硬貨投入口16に投入された硬貨を一枚ずつ繰り出すための繰出機構30が設けられている。この繰出機構30には、硬貨投入口16の下方に設けられ当該硬貨投入口16に投入された硬貨を受け入れる受入部32と、この受入部32の底面を構成する搬送ベルト34とが設けられている。搬送ベルト34は無端状の平ベルトからなり、
図2における右側から左側に向けた硬貨繰出方向に硬貨を搬送するようになっている。搬送ベルト34上での通路幅は、処理されるべき硬貨のうちの最大径硬貨よりも大きく最小径硬貨の二枚分よりも小さい寸法に規制されている。また、搬送ベルト34の搬送方向における受入部32の下流側の箇所には逆転ローラ36が設けられている。この逆転ローラ36は搬送ベルト34とわずかな隙間を隔てて当該搬送ベルト34の上方に設けられており、逆転ローラ36と搬送ベルト34との間の隙間の大きさは、硬貨一枚分の通過を許容するような大きさとなっている。この逆転ローラ36は、搬送ベルト34の硬貨繰出方向に対して逆方向に回転し、硬貨繰出方向(
図2における左方向)へ繰り出されようとする搬送ベルト34上の硬貨を1層1列状態に整列させるようになっている。
【0022】
また、硬貨釣銭機10の本体ユニット14には、搬送ベルト34から受け渡された硬貨を一枚ずつ搬送する搬送機構40が設けられている。この搬送機構40は、複数のプーリ42に張架された無端状の突起付きベルト等の搬送ベルト44からなり、この搬送ベルト44には、硬貨に係合してこの係合された硬貨を搬送する突起部(図示せず)が等間隔で複数設けられている。搬送ベルト34の硬貨繰出方向における逆転ローラ36の下流側にはガイド部材38が設けられており、搬送ベルト34により繰り出された硬貨はガイド部材38により搬送機構40に受け渡されるようになっている。搬送ベルト34から搬送機構40に受け渡された硬貨は、識別通路46、排除通路50、中間通路54、分類通路56を順に通るよう、搬送ベルト44により搬送される。識別通路46には識別部48が設けられており、この識別部48により硬貨の材質、径等が検出されて硬貨の金種や真偽等が識別されるようになっている。また、排除通路50にはリジェクト部52が設けられており、識別部48での識別の結果、リジェクト硬貨と識別されたリジェクト硬貨がこのリジェクト部52により排除されるようになっている。リジェクト部52により排除された硬貨は、後述する搬送ベルト78により搬送され、硬貨放出口24を介して硬貨出金口26に返却されるようになっている。
【0023】
また、硬貨釣銭機10の本体ユニット14には、硬貨を金種別に収納する複数の硬貨収納繰り出し機構60が設けられている。各硬貨収納繰り出し機構60の構成の詳細については後述する。そして、分類通路56には、搬送ベルト44により搬送される硬貨を金種別に分類して各硬貨収納繰り出し機構60に収納させる複数の分類部58が設けられている。
図2に示すように、各分類部58は各硬貨収納繰り出し機構60に対応して設けられている。各分類部58には、分類通路56から硬貨が落下する分類孔58aが形成されており、搬送方向最下流側の分類孔58aを除く各分類孔58aには分類ゲート58bが設けられている。各分類ゲート58bは対応する分類孔58aを選択的に開くようになっており、分類ゲート58bが分類孔58aを開いたときに、搬送ベルト44により搬送される硬貨がこの分類孔58aから落下して硬貨収納繰り出し機構60に収納されるようになっている。分類通路56において各分類部58の搬送方向上流側には、分類ゲート58bの開閉タイミングを取ったり各硬貨収納繰り出し機構60への硬貨の分類を確認したりするために、搬送ベルト44により搬送される硬貨を検出する硬貨検出センサ58cがそれぞれ設けられている。
【0024】
また、硬貨釣銭機10の本体ユニット14には、各硬貨収納繰り出し機構60から繰り出された硬貨を搬送する搬送機構76が設けられている。この搬送機構76は搬送ベルト78からなり、この搬送ベルト78により各硬貨収納繰り出し機構60から繰り出された硬貨が
図2における下方向に搬送されて硬貨放出口24を介して硬貨出金口26に送られるようになっている。
【0025】
次に、硬貨釣銭機10の本体ユニット14に設けられた各硬貨収納繰り出し機構60の構成の詳細について
図3および
図4を用いて説明する。
図3は、
図2における硬貨釣銭機10の硬貨収納繰り出し機構60の内部構成を詳細に示す平面図で、上部の部材を省略したものであり、
図4は、
図3に示す硬貨収納繰り出し機構60の側面図である。
【0026】
図3に示すように、硬貨を金種別に収納する複数の硬貨収納繰り出し機構60が並列に設けられている。より詳細には、
図3において上から順に1円硬貨、5円硬貨、10円硬貨、50円硬貨、100円硬貨、500円硬貨をそれぞれ収納する6つの硬貨収納繰り出し機構60が設けられている。各硬貨収納繰り出し機構60には、複数の硬貨をランダム状態で収納する収納部62が設けられており、各収納部62の底面には無端状の繰り出しベルト64が配設されている。
図4に示すように、各収納部62において繰り出しベルト64の上方には、硬貨を収納する硬貨収納空間62aが形成されている。また、
図4に示すように、各収納部62の硬貨収納空間62aの側面には開口63が設けられており、各収納部62の硬貨収納空間62aに収納された硬貨は繰り出しベルト64によりこの開口63から収納部62の外方(
図3における右方向)へ繰り出されるようになっている。
図4に示すように、繰り出しベルト64は駆動プーリ65等の複数のプーリに張架されており、この繰り出しベルト64は駆動プーリ65により駆動されて
図4の矢印方向に循環移動するようになっている。繰り出しベルト64により収納部62から繰り出された硬貨は、搬送機構76の搬送ベルト78上に送られるようになっている。
【0027】
本実施の形態においては、繰り出しベルト64は伸縮性を殆ど有さないタイミングベルトから構成されている。
図5に示すように、タイミングベルトからなる繰り出しベルト64の内側には櫛歯部材64aが設けられている。また、駆動プーリ65の外周面にも繰り出しベルト64の櫛歯部材64aと噛み合うような櫛歯部材(図示せず)が形成されている。駆動プーリ65の外周面に形成された櫛歯部材と繰り出しベルト64の櫛歯部材64aとが噛み合うことにより、駆動プーリ65による駆動力が繰り出しベルト64に確実に伝達されるようになっている。
【0028】
また、
図4に示すように、各収納部62の側面に形成された開口63を塞ぐよう、繰り出しベルト64の上方には逆転ローラ66が設けられている。この逆転ローラ66と繰り出しベルト64との間には、硬貨一枚分の通過を許容する隙間が形成されている。逆転ローラ66は、繰り出しベルト64による硬貨の搬送方向に対して逆方向(
図4における矢印方向)に回転し、硬貨繰出方向(
図3および
図4における右方向)へ繰り出されようとする繰り出しベルト64上の硬貨を1層1列状態に整列させるようになっている。
【0029】
また、
図3に示すように、各硬貨収納繰り出し機構60において、繰り出しベルト64の搬送方向における逆転ローラ66の下流側にはガイド部材68が設けられている。このガイド部材68は繰り出しベルト64の上方に設けられており、このガイド部材68と繰り出しベルト64との間の隙間は硬貨の厚さよりも小さくなっている。このため、逆転ローラ66と繰り出しベルト64との間の隙間を通過した繰り出しベルト64上の硬貨は、
図3において上下方向に隣り合う一対のガイド部材68の間の領域を通過して搬送機構76に送られるようになっている。なお、
図3に示すように、上下方向に隣り合う一対のガイド部材68の間の領域の大きさは、各硬貨収納繰り出し機構60に収納されるべき金種の硬貨の直径の大きさに適合するよう、互いに異なるようになっている。
【0030】
また、
図3および
図4に示すように、各硬貨収納繰り出し機構60において、繰り出しベルト64の搬送方向における逆転ローラ66の下流側にはストッパ用ソレノイド70が設けられている。
図4に示すように、各ストッパ用ソレノイド70は、下方に伸びるプランジャ部分70aを有しており、このプランジャ部分70aは繰り出しベルト64に向かって進退するようになっている。
図4に示すようにプランジャ部分70aが繰り出しベルト64に向かって伸びているときには、逆転ローラ66と繰り出しベルト64との間の隙間を通過した繰り出しベルト64上の硬貨は、ストッパ用ソレノイド70により停止させられて搬送機構76に送られないようになっている。一方、
図4に示すような位置からプランジャ部分70aが繰り出しベルト64から上方に退避したときには、このプランジャ部分70aにより停止させられた硬貨が搬送機構76に送られることとなる。
【0031】
また、
図4に示すように、各硬貨収納繰り出し機構60において、繰り出しベルト64の搬送方向における逆転ローラ66の下流側には硬貨検出部72が設けられている。この硬貨検出部72は発光部分72aと受光部分72bとから構成され、発光部分72aから発せられた光が受光部分72bにより受けられるようになっている。また、
図3に示すように、各硬貨収納繰り出し機構60には、発光部分72aから発せられた光が通過するためのセンサ孔72cが設けられている。逆転ローラ66と繰り出しベルト64との間の隙間を通過した硬貨が繰り出しベルト64により搬送機構76に送られる際に、硬貨検出部72の発光部分72aから発せられた光がこの硬貨により遮られて受光部分72bに届かなくなり、このことにより硬貨検出部72は硬貨収納繰り出し機構60から搬送機構76に硬貨が送られたことを検出する。
【0032】
各硬貨収納繰り出し機構60において、ストッパ用ソレノイド70を励磁/解除することにより、当該硬貨収納繰り出し機構60から硬貨を繰り出すか繰り出さないかを制御するようになっている。また、硬貨検出部72により、各硬貨収納繰り出し機構60から繰り出された硬貨の枚数を計数するようになっている。これらの動作をそれぞれの硬貨収納繰り出し機構60で行うことにより、必要な金種の硬貨を、必要な枚数ずつ各硬貨収納繰り出し機構60から繰り出すことができる。
【0033】
本実施の形態では、前述のように、各硬貨収納繰り出し機構60から硬貨を繰り出して搬送機構76に送る際には、繰り出しベルト64は
図4における時計回りの方向に循環移動し、逆転ローラ66は
図4における時計回りの方向に回転する。このことにより、各硬貨収納繰り出し機構60の収納部62に収納された硬貨は、繰り出しベルト64と逆転ローラ66との間の隙間を通過することにより、一枚ずつ収納部62から繰り出されることとなる。
【0034】
本実施の形態では、
図4に示すように、繰り出しベルト64の内側に、ルーローの三角形の形状の回転部材80が攪拌手段として設けられている。ここで、ルーローの三角形とは、正三角形の各辺を膨らませたような形をした定幅図形のことをいい、このようなルーローの三角形は、正三角形の各頂点を中心に半径がその正三角形の一辺となる円弧で結ぶことにより形成することができる。また、ルーローの三角形の形状の回転部材80は、繰り出しベルト64による硬貨の繰り出し動作が行われる際に、繰り出しベルト64の内面に接触して連れ回りするので、軸80aを中心として
図4における時計回りの方向(
図4における矢印方向)に回転するようになっている。なお、軸80aの中心は、ルーローの三角形の形状の回転部材80の中心からずれた位置に設けられるようになっている。そして、回転部材80が軸80aを中心として回転すると、この回転部材80は、繰り出しベルト64における硬貨収納空間62aに面する部分を上下動させるようになっている。このことにより、繰り出しベルト64上の硬貨が攪拌され、硬貨収納繰り出し機構60において硬貨を効率良く収納したり繰り出したりすることができるようになる。
【0035】
ルーローの三角形の形状の回転部材80により繰り出しベルト64上の硬貨を攪拌する動作について
図6を用いてより詳細に説明する。
図6は、
図4に示す硬貨収納繰り出し機構60において、繰り出しベルト64の内側に設けられた回転部材80により繰り出しベルト64における硬貨収納空間62aに面する部分を上下動させる動作を示す図である。
【0036】
前述したように、ルーローの三角形の形状の回転部材80は軸80aを中心として時計回りの方向に回転するようになっているが、
図6(a)に示すように、回転部材80の頂点80pが真上の方向を向いているときには、繰り出しベルト64における回転部材80の上方の部分(すなわち、硬貨収納空間62aに面する部分)が回転部材80により上方に押され、この部分は突出量Aだけ上方に突出するようになる。その後、回転部材80が軸80aを中心として90°回転すると、
図6(b)に示すように、この回転部材80の頂点80pは右方向を向くようになる。この際に、繰り出しベルト64における回転部材80の上方の部分(すなわち、硬貨収納空間62aに面する部分)および下方の部分(すなわち、硬貨収納空間62aに面しない部分)の両方が回転部材80によりそれぞれ上方、下方に押された状態となる。この際に、繰り出しベルト64における回転部材80の上方の部分は突出量B1だけ上方に突出し、繰り出しベルト64における回転部材80の下方の部分は突出量B2だけ下方に突出する。その後、回転部材80が軸80aを中心として更に90°回転すると、
図6(c)に示すように、この回転部材80の頂点80pは真下の方向を向くようになる。この際に、繰り出しベルト64における回転部材80の上方の部分は回転部材80により上方に押圧されなくなり、代わりに、繰り出しベルト64における回転部材80の下方の部分が回転部材80により突出量Cだけ下方に押された状態となる。
【0037】
本実施の形態では、
図6(a)〜(c)に示すように、回転部材80は、繰り出しベルト64における硬貨収納空間62aに面する部分、および繰り出しベルト64における硬貨収納空間62aに面しない部分のそれぞれを交互に外側へ押圧するようになる。そして、回転部材80がルーローの三角形の形状から構成されていることにより、繰り出しベルト64における硬貨収納空間62aに面する部分が回転部材80により上方に押圧されたときの突出量、および繰り出しベルト64における硬貨収納空間62aに面しない部分が回転部材80により下方に押圧されたときの突出量の和が常に略一定になる。すなわち、
図6において、突出量A=突出量B1+突出量B2=突出量Cという関係式が成り立つようになる。このため、繰り出しベルト64が伸縮性を殆ど有さない場合であっても、この繰り出しベルト64にかかる張力は変化しないようになる。
【0038】
なお、繰り出しベルト64の内側に設けられる回転部材80としては、ルーローの三角形の形状のものに限定されることはない。回転部材80として、ルーローの五角形や七角形等、ルーローの任意の多角形(より厳密には任意の正奇数角形)のものを用いてもよい。ここで、ルーローの多角形とは、正多角形の各辺を膨らませたような形をした定幅図形のことをいい、このようなルーローの多角形は、正多角形の各頂点を中心に半径がその正多角形の一辺となる円弧で結ぶことにより形成することができる。また、繰り出しベルト64の内側に設けられる回転部材80として、ルーローの多角形以外の形状のものを用いてもよい。
【0039】
図7に、
図4に示す硬貨収納繰り出し機構60における繰り出しベルト64等の構成を示す斜視図を示す。
図7において、硬貨収納繰り出し機構60aには1円硬貨、硬貨収納繰り出し機構60bには5円硬貨、硬貨収納繰り出し機構60cには10円硬貨、硬貨収納繰り出し機構60dには50円硬貨、硬貨収納繰り出し機構60eには100円硬貨、硬貨収納繰り出し機構60fには500円硬貨がそれぞれ収納されるようになっている。ここで、10円硬貨、100円硬貨、500円硬貨は他の金種の硬貨と比べて硬貨釣銭機10に収納される量が概して多くなるため、これらの金種の硬貨に対応する硬貨収納繰り出し機構60c、60e、60fの繰り出しベルト64の幅は、他の金種の硬貨収納繰り出し機構60a、60b、60dの繰り出しベルト64の幅よりも大きくなっている。そして、各硬貨収納繰り出し機構に設けられる回転部材80の数は、繰り出しベルト64の幅の大きさに応じて決められるようになっている。より具体的には、10円硬貨、100円硬貨、500円硬貨に対応する硬貨収納繰り出し機構60c、60e、60fにはそれぞれ2つの回転部材80が並列に設けられているのに対し、1円硬貨、5円硬貨、50円硬貨に対応する硬貨収納繰り出し機構60a、60b、60dにはそれぞれ1つの回転部材80が設けられるようになる。
【0040】
各硬貨収納繰り出し機構60a〜60fに設けられる回転部材80は、6つの金種について均等に60°ずつ位相がずれるようになっている。より詳細には、硬貨収納繰り出し機構60aに設けられた回転部材80と硬貨収納繰り出し機構60bに設けられた回転部材80との間では位相が60°ずれており、硬貨収納繰り出し機構60bに設けられた回転部材80と硬貨収納繰り出し機構60cに設けられた各回転部材80との間でも位相が60°ずれている。このように、隣り合う2つの硬貨収納繰り出し機構60について、これらの硬貨収納繰り出し機構60に設けられた回転部材80の位相が60°ずれるようになっている。
【0041】
また、
図7に示すように、複数の硬貨収納繰り出し機構60a〜60fに設けられた各駆動プーリ65も一本の軸65aにより枢支され、この軸65aに設けられた駆動モータ(図示せず)が当該軸65aを回転させることにより複数の硬貨収納繰り出し機構60a〜60fに設けられた各駆動プーリ65が一体的に回転するようになっている。
【0042】
本実施の形態においては、繰り出しベルト64、駆動プーリ65、逆転ローラ66、ストッパ用ソレノイド70、回転部材80等により硬貨繰り出し装置が構成されている。
【0043】
本実施の形態による上述のような硬貨繰り出し装置に対する比較例として、従来の硬貨処理機において、繰り出しベルト64の内側に設けられた偏心ローラにより繰り出しベルトにおける硬貨収納空間に面する部分を上下動させる動作を
図8に示す。従来の硬貨処理機では、無端状の繰り出しベルト64の内側には偏心ローラ81が設けられており、この偏心ローラ81は、繰り出しベルト64による硬貨の繰り出し動作が行われる際に軸81aを中心として
図8における時計回りの方向(
図8における矢印方向)に連続的に回転するようになっている。そして、偏心ローラ81が回転すると、この偏心ローラ81は繰り出しベルト64における硬貨収納空間62aに面する部分(すなわち、
図8において繰り出しベルト64における偏心ローラ81の上方の部分)を上下動させ、繰り出しベルト64上の硬貨を攪拌するようになる。
【0044】
より詳細には、偏心ローラ81の頂点81pが真上の方向を向いているときには、
図8(a)に示すように、繰り出しベルト64における偏心ローラ81の上方の部分(すなわち、硬貨収納空間62aに面する部分)が偏心ローラ81により上方に押され、この部分は突出量Dだけ上方に突出するようになる。その後、偏心ローラ81が軸81aを中心として90°回転すると、
図8(b)に示すように、この偏心ローラ81の頂点81pは右方向を向くようになる。この際に、繰り出しベルト64は回転部材80により外側に押圧されなくなる。その後、偏心ローラ81が軸81aを中心として更に90°回転すると、
図8(c)に示すように、この偏心ローラ81の頂点81pは真下の方向を向くようになる。この際に、繰り出しベルト64における偏心ローラ81の下方の部分が偏心ローラ81により突出量Eだけ下方に押されるようになる。
【0045】
このように、
図8に示すような比較例に係る硬貨処理機では、偏心ローラ81が連続的に回転する際に、当該偏心ローラ81によって繰り出しベルト64が外側に押圧されたり押圧されなかったりするようになる。このため、偏心ローラ81の回転に伴って、繰り出しベルト64にかかる張力が大きくなったり小さくなったりする。より詳細には、
図8(a)(c)に示すように、偏心ローラ81が繰り出しベルト64を外側に押圧する際にはこの繰り出しベルト64における偏心ローラ81により押圧された箇所の突出量が大きくなりこの繰り出しベルト64にかかる張力も大きくなる。一方、
図8(b)に示すように、偏心ローラ81が繰り出しベルト64を外側に押圧しない際にはこの繰り出しベルト64の突出量が0となりこの繰り出しベルト64にかかる張力も小さくなる。このように、
図8に示すような比較例に係る硬貨処理機では、繰り出しベルト64にかかる張力が変化することで、繰り出しベルト64に負荷が繰り返しかかり、繰り出しベルト64が早く劣化するおそれがある。また、繰り出しベルト64にかかる張力が大きく変動する場合には、この繰り出しベルト64にかかる張力が最大となるときに合わせて当該繰り出しベルト64が張架されるプーリ等の位置決めが行われるため、繰り出しベルト64にかかる張力が小さくなったときには繰り出しベルト64が緩んでしまい、繰り出しベルト64の内側に設けられた櫛歯部材64a(
図5参照)が駆動プーリ65の外周面に設けられた櫛歯部材(図示せず)に対して歯飛びしてしまう等の様々なトラブルが発生するおそれがある。
【0046】
以上のように本実施の形態の硬貨繰り出し装置によれば、繰り出しベルト64の内側には攪拌手段として例えばルーローの三角形の回転部材80が設けられており、この回転部材80は、繰り出しベルト64にかかる張力が変化しないよう、当該繰り出しベルト64における少なくとも硬貨収納空間62aに面する部分を上下動させることにより繰り出しベルト64上の硬貨を攪拌させるようになっている。このような硬貨繰り出し装置によれば、回転部材80により繰り出しベルト64における硬貨収納空間62aに面する部分を上下動させても当該繰り出しベルト64にかかる張力が変化しないので、回転部材80により繰り出しベルト64にかかる負荷変動を軽減することができ、繰り出しベルト64の劣化を抑制することができる。
【0047】
また、本実施の形態の硬貨繰り出し装置においては、繰り出しベルト64は伸縮性を殆ど有さないようなタイミングベルトから構成されている。なお、本実施の形態では、繰り出しベルト64は伸縮性を殆ど有さないようなタイミングベルトに限定されることはない。繰り出しベルト64として、伸縮性を有する材料から形成されたベルト、具体的には例えばヒラベルトを用いてもよい。
【0048】
繰り出しベルト64として伸縮性を有するヒラベルトを用いた場合でも、回転部材80が例えばルーローの三角形の形状から構成されていることにより、繰り出しベルト64における硬貨収納空間62aに面する部分が回転部材80により上方に押圧されたときの突出量、および繰り出しベルト64における硬貨収納空間62aに面しない部分が回転部材80により下方に押圧されたときの突出量の和が常に略一定になり、このことにより、回転部材80が連続的に回転した場合でも繰り出しベルト64の周長は変化しなくなる。この場合でも、
図8に示すような従来の硬貨処理機を用いることにより繰り出しベルト64が周期的に伸縮を繰り返すような場合と比較して、繰り出しベルト64の劣化を抑制することができる。
【0049】
また、本実施の形態の硬貨繰り出し装置においては、
図6に示すように、攪拌手段としてのルーローの三角形の回転部材80は、繰り出しベルト64による硬貨の繰り出し動作が行われる際に回転するようになっており、この回転部材80は、繰り出しベルト64における硬貨収納空間62aに面する部分(具体的には、繰り出しベルト64における回転部材80の上方の部分)、および繰り出しベルト64における硬貨収納空間62aに面しない部分(具体的には、繰り出しベルト64における回転部材80の下方の部分)のそれぞれを外側へ押圧するようになっている。また、この際に、繰り出しベルト64における硬貨収納空間62aに面する部分が回転部材80に押圧されたときの突出量、および繰り出しベルト64における硬貨収納空間62aに面しない部分が回転部材80に押圧されたときの突出量の和が常に略一定になる(すなわち、
図6において突出量A=突出量B1+突出量B2=突出量Cという関係式が成り立つようになる)。なお、回転部材80は、繰り出しベルト64の内面に接触して連れ回りするものに限定されることはない。代わりに、回転部材80の軸80aを
図4における時計回りまたは反時計回りの方向に回転させる駆動モータが、駆動プーリ65の軸65aを回転させる駆動モータとは別個に設けられていてもよい。
【0050】
本実施の形態による硬貨繰り出し装置およびこの硬貨繰り出し装置を備えた硬貨釣銭機10は、上記の態様に限定されるものではなく、様々の変更を加えることができる。
【0051】
例えば、繰り出しベルト64における少なくとも硬貨収納空間62aに面する部分を上下動させることにより繰り出しベルト64上の硬貨を攪拌する攪拌手段として、様々な構成のものを用いることができる。具体的には、例えば、
図9および
図10に示すように、繰り出しベルト64の内側に設けられる攪拌手段90として、一対のローラ90a、90bが連結部材90cにより上下に連結されたものを用いてもよい。
【0052】
図9および
図10に示すような攪拌手段90において、各ローラ90a、90bは連結部材90cに対して回転自在となっている。そして、上方のローラ90aは、繰り出しベルト64における硬貨収納空間62aに面する部分を上方に押圧することができるようになっており、下方のローラ90bは、繰り出しベルト64における硬貨収納空間62aに面しない部分を下方に押圧することができるようになっている。そして、これらの一対のローラ90a、90bは上下方向に一体的に往復運動を行うようになっている。この際に、
図9(a)に示すように一対のローラ90a、90bが上方位置に位置しているときには、上方のローラ90aが繰り出しベルト64における硬貨収納空間62aに面する部分を突出量Aで上方に押圧する。また、
図9(b)に示すように一対のローラ90a、90bが上方位置から下方に移動すると、上方のローラ90aが繰り出しベルト64における硬貨収納空間62aに面する部分を上方に押圧したときの突出量B1が減少するとともに、下方のローラ90bが繰り出しベルト64における硬貨収納空間62aに面しない部分を下方に押圧したときの突出量B2が増加する。その後、
図9(c)に示すように一対のローラ90a、90bが下方位置に到達すると、下方のローラ90bが繰り出しベルト64における硬貨収納空間62aに面しない部分を突出量Cで下方に押圧する。このように、一対のローラ90a、90bが一体的に上下方向に往復運動することにより、繰り出しベルト64における硬貨収納空間62aに面する部分を上下動させることができるようになる。また、この際に、繰り出しベルト64における硬貨収納空間62aに面する部分が上方のローラ90aにより上方に押圧されたときの突出量、および繰り出しベルト64における硬貨収納空間62aに面しない部分が下方のローラ90bにより下方に押圧されたときの突出量の和が常に略一定になる。すなわち、
図9において、突出量A=突出量B1+突出量B2=突出量Cという関係式が成り立つようになる。このため、繰り出しベルト64が伸縮性を殆ど有さない場合であっても、この繰り出しベルト64にかかる張力は変化しないようになる。
【0053】
一対のローラ90a、90bを一体的に上下方向に往復運動させる機構について
図10を用いて説明する。
図10に示すように、一対のローラ90a、90bを接続する連結部材90cの近傍には、左右方向に往復移動するスライドブロック90dが設けられている。このスライドブロック90dは図示しないカム等により駆動プーリ65の軸65aに接続されており、この軸65aが回転することによりスライドブロック90dは左右方向に往復移動するようになっている。また、スライドブロック90dには細長い穴90eが形成されており、連結部材90cにはこの細長い穴90eに挿入されるピン部材90fが設けられている。そして、このピン部材90fは細長い穴90eに沿って案内されるようになっている。このことにより、スライドブロック90dが左右方向に往復移動すると、ピン部材90fは細長い穴90eに沿って移動することにより、この細長い穴90eが左右方向に対して傾斜した箇所において連結部材90cは上下方向に往復移動するようになる。このようにして、繰り出しベルト64が駆動されると一対のローラ90a、90bも上下方向に往復移動するようになる。
【0054】
図11に、繰り出しベルト64上の硬貨を攪拌する攪拌手段の更に他の構成を示す。
図11に示すような攪拌手段94は、互いに離間した2つのカム部材94a、94bから構成されており、各カム部材94a、94bにはそれぞれ回転軸94c、94dが取り付けられている。また、これらの2つの回転軸94c、94dには駆動ベルト94eが張架されており、この駆動ベルト94eは図示しない駆動部により駆動されるようになっている。
図11に示すように、各カム部材94a、94bはそれぞれ2個の突出部分を有しており、各カム部材94a、94bにおける一対の突出部分は他のカム部材の一対の突出部分に対して位相が90°ずれるよう配置されている。
【0055】
図11に示すような攪拌手段94において、一方のカム部材94aは、繰り出しベルト64における硬貨収納空間62aに面する部分を上方に押圧することができるようになっており、他方のカム部材94bは、繰り出しベルト64における硬貨収納空間62aに面しない部分を下方に押圧することができるようになっている。そして、図示しない駆動部により駆動ベルト94eが駆動されることにより、各回転軸94c、94dを介して各カム部材94a、94bが同じ方向に連続的に回転するようになる。この際に、
図11(a)に示すような状態では、上方のカム部材94aが繰り出しベルト64における硬貨収納空間62aに面する部分を上方に押圧する。また、
図11(b)に示すような状態では、一方のカム部材94aは繰り出しベルト64における硬貨収納空間62aに面する部分を上方に押圧しなくなるとともに、他方のカム部材94bが繰り出しベルト64における硬貨収納空間62aに面しない部分を下方に押圧するようになる。このように、各カム部材94a、94bがそれぞれ同じ方向に連続的に回転することにより、繰り出しベルト64における硬貨収納空間62aに面する部分を上下動させることができるようになる。また、この際に、繰り出しベルト64における硬貨収納空間62aに面する部分が一方のカム部材94aにより上方に押圧されたときの突出量、および繰り出しベルト64における硬貨収納空間62aに面しない部分が他方のカム部材94bにより下方に押圧されたときの突出量の和が常に略一定になる。このため、繰り出しベルト64が伸縮性を殆ど有さない場合であっても、この繰り出しベルト64にかかる張力は変化しないようになる。
【0056】
図12に、繰り出しベルト64上の硬貨を攪拌する攪拌手段の更に他の構成を示す。
図12に示すような攪拌手段96は、繰り出しベルト64の内側に設けられた2つのローラ96a、96bから構成されている。一方のローラ96aは、繰り出しベルト64における硬貨収納空間62aに面する部分の近傍に設けられている。一方、他方のローラ96bには、繰り出しベルト64の左端部分が張架されるようになっている。ここで、一方のローラ96aは上下方向に往復移動するようになっており、他方のローラ96bは左右方向に往復移動するようになっている。
図12に示すような攪拌手段96においては、これらの一対のローラ96a、96bは連動して移動するようになっている。すなわち、
図12(a)に示すような状態から一方のローラ96aが上方向に移動すると、他方のローラ96bは右方向に移動するようになっている。また、一方のローラ96aが上方向に移動するとともに他方のローラ96bが右方向に移動した後、
図12(a)に示すような状態から一方のローラ96aが下方向に移動すると、他方のローラ96bは左方向に移動するようになっている。
【0057】
図12に示すような攪拌手段96において、一方のローラ96aは、繰り出しベルト64における硬貨収納空間62aに面する部分を上方に押圧することができるようになっている。すなわち、
図12(a)に示すような状態から一方のローラ96aが上方向に移動すると、
図12(b)に示すように当該ローラ96aが繰り出しベルト64における硬貨収納空間62aに面する部分を上方に押圧する。また、この際に、他方のローラ96bが右方向に移動することにより、繰り出しベルト64が伸縮性を殆ど有さない場合であっても、この繰り出しベルト64にかかる張力は変化しないようになる。
【0058】
また、本発明による硬貨処理機は、
図1乃至
図3に示すような構成のものに限定されることはない。他の硬貨処理機として、搬送ベルト78からなる搬送機構76が設けられておらず、繰り出しベルト64により各硬貨収納繰り出し機構60から繰り出された硬貨は、シュート部材等を介して自重により硬貨出金口26に案内されるようになっていてもよい。すなわち、本発明による硬貨処理機における、「硬貨収納繰り出し機構60から繰り出された硬貨を、硬貨取出部(硬貨出金口26)に案内する案内手段」としては、
図2等に示すような搬送ベルト78からなる搬送機構76の他に、自重により硬貨を案内するシュート部材等を用いてもよい。
【0059】
また、本発明による硬貨処理機として、
図1乃至
図3に示すような複数の金種に対応するよう硬貨収納繰り出し機構60が複数設けられたものに限定されることはなく、硬貨収納繰り出し機構60が1つのみ設けられた硬貨処理機を用いてもよい。このような硬貨処理機は、単一金種の硬貨やメダル等を払い出すことができるような払出機に適用することができる。
【0060】
また、回転部材80等の攪拌手段の駆動を、繰り出しベルト64の回転と連動させる必要はなく、繰り出しベルト64の回転とは無関係に攪拌手段を間欠的に駆動させてもよい。