(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献1に係る従来技術は、ハードギヤボーニング加工において適用可能な技術であるため、例えば、螺旋状の研削歯を有する歯車研削工具を加工する場合には適用することができない。
【0009】
また、特許文献2に係る従来技術では、通常、加工歯面を構成する砥粒はダイヤモンドで構成されているため、該加工歯面の形状を歯幅方向に連続的に変化させることは容易でない。
【0010】
本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、製品歯車の目標形状とは異なる形状を有する加工歯車を用いて、目標形状の製品歯車を形成可能な螺旋状の研削歯を有する歯車研削工具を簡単に形成することができ、これによって、コストの低廉化を図ることができる歯車研削工具の加工方法及び歯車研削工具加工システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[1] 本発明に係る歯車研削工具の加工方法は、螺旋状の研削歯を有するワーク工具を加工歯車にて加工することにより歯車研削工具を形成する歯車研削工具の加工方法であって、ワーク歯車を前記歯車研削工具にて研削することにより形成される製品歯車の目標形状とは異なる形状を有する前記加工歯車と前記ワーク工具とを第1噛合位置に噛み合わせる噛合工程と、前記ワーク工具と前記加工歯車とを該ワーク工具の回転軸線方向に沿って相対変位させて前記第1噛合位置から第2噛合位置に変更することにより、前記ワーク工具と前記加工歯車との作用線の位置をずらす変位工程と、前記変位工程の後に、前記ワーク工具と前記加工歯車とを回転駆動させることにより、該ワーク工具を加工して前記歯車研削工具に形成する形成工程と、を行うことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る歯車研削工具の加工方法によれば、ワーク工具と加工歯車とを該ワーク工具の回転軸線方向に沿って相対変位させて第1噛合位置から第2噛合位置に変更することにより、前記ワーク工具と前記加工歯車との作用線の位置をずらした上で、該ワーク工具を加工して歯車研削工具を形成している。これにより、製品歯車(半製品歯車)の目標形状とは異なる形状を有する加工歯車を用いて目標形状の製品歯車を形成可能な螺旋状の研削歯を有する歯車研削工具を簡単に形成することができる。すなわち、製品歯車の目標形状と1対1に対応した形状を有する加工歯車を製造しなくても、目標形状の製品歯車を形成可能な歯車研削工具を形成することができる。よって、コストの低廉化を図ることができる。
【0013】
[2] 上記の歯車研削工具の加工方法において、前記ワーク工具の回転軸線と前記加工歯車の回転軸線とが近接離間する方向に該ワーク工具と該加工歯車とを相対変位させて前記第2噛合位置の作用線を前記第1噛合位置の作用線上に位置させる噛合位置調節工程を前記変位工程と前記形成工程との間に行ってもよい。
【0014】
このような加工方法によれば、ワーク工具の回転軸線と加工歯車の回転軸線とが近接離間する方向に該ワーク工具と該加工歯車とを相対変位させて第2噛合位置の作用線を第1噛合位置の作用線上に位置させているので、該ワーク工具と該加工歯車とを確実に噛み合わせることができる。
【0015】
[3] 上記の歯車研削工具の加工方法において、前記製品歯車の目標形状と前記加工歯車の形状との差異に基づいて前記変位工程における相対変位量を算出する算出工程をさらに行ってもよい。
【0016】
このような加工方法によれば、製品歯車の目標形状と加工歯車の形状との差異に基づいて変位工程における相対変位量を算出しているので、目標形状の製品歯車を形成可能な歯車研削工具を確実に形成することができる。
【0017】
[4] 上記の歯車研削工具の加工方法において、前記加工歯車の形状が標準歯車の形状に対応すると共に前記製品歯車の目標形状が転位歯車の形状に対応しており、前記算出工程は、前記転位歯車の転位量に基づいて前記変位工程における相対変位量を算出してもよい。
【0018】
このような加工方法によれば、標準歯車の形状に対応した形状の加工歯車を用いて転位歯車を形成可能な歯車研削工具を好適に形成することができる。
【0019】
[5] 上記の歯車研削工具の加工方法において、前記算出工程は、前記製品歯車の歯先修正開始位置の目標位置に対する前記加工歯車の歯先修正開始位置の誤差量に基づいて前記変位工程における前記相対変位量を算出してもよい。
【0020】
このような加工方法によれば、製品歯車の歯先修正開始位置の目標位置と加工歯車の歯先修正開始位置との間に誤差が生じている場合であっても、目標とする歯先形状を備えた製品歯車を形成可能な歯車研削工具を好適に形成することができる。
【0021】
[6] 本発明に係る歯車研削工具の加工方法は、螺旋状の研削歯を有するワーク工具を加工歯車にて加工することにより歯車研削工具を形成する歯車研削工具の加工方法であって、ワーク歯車を前記歯車研削工具にて研削することにより形成される製品歯車の目標形状とは異なる形状を有する前記加工歯車の形状に対応した形状のワーク歯車を研削する際の該ワーク歯車と前記歯車研削工具との噛合位置に相当する前記加工歯車と前記ワーク工具との第1噛合位置に対する、前記製品歯車の前記目標形状に対応した形状の前記ワーク歯車を研削する際の該ワーク歯車と前記歯車研削工具との噛合位置に相当する前記加工歯車と前記ワーク工具との第2噛合位置を算出する算出工程と、前記算出工程にて算出された前記第2噛合位置に前記加工歯車と前記ワーク工具とを噛み合わせる噛合工程と、
前記噛合工程の後に、前記加工歯車と前記ワーク工具とを回転駆動させることにより、該ワーク工具を加工して前記歯車研削工具に形成する形成工程と、を行うことを特徴とする。
【0022】
本発明に係る歯車研削工具の加工方法によれば、加工歯車とワーク工具との第2噛合位置を算出し、算出された前記第2噛合位置に前記加工歯車と前記ワーク工具とを噛み合わせた後、該ワーク工具を加工して歯車研削工具を形成している。よって、製品歯車の目標形状とは異なる形状を有する加工歯車を用いて、目標形状の製品歯車を形成可能な歯車研削工具を簡単に形成することができ、これによって、コストの低廉化を図ることができる。
【0023】
[7] 本発明に係る歯車研削工具加工システムは、螺旋状の研削歯を有するワーク工具を加工歯車にて加工することにより歯車研削工具を形成するための歯車研削工具加工システムであって、ワーク歯車を前記歯車研削工具にて研削することにより形成される製品歯車の目標形状とは異なる形状を有する前記加工歯車と前記ワーク工具とを第1噛合位置に噛み合わせた状態で該ワーク工具の回転軸線方向に沿って相対変位させて前記第1噛合位置から第2噛合位置に変更することにより、前記ワーク工具と前記加工歯車との作用線の位置をずらす変位機構と、前記製品歯車の目標形状と前記加工歯車の形状との差異に基づいて前記加工歯車と前記ワーク工具との相対変位量を算出する算出手段と、を備えることを特徴とする。
【0024】
本発明に係る歯車研削工具加工システムによれば、製品歯車の目標形状と加工歯車の形状との差異に基づいて前記ワーク工具と前記加工歯車との該ワーク工具の回転軸線方向に沿った相対変位量を算出することができるので、前記製品歯車の目標形状とは異なる形状を有する前記加工歯車を用いて目標形状の製品歯車を形成可能な螺旋状の研削歯を有する歯車研削工具を簡単且つ確実に形成することができる。すなわち、製品歯車の目標形状と1対1に対応した形状を有する加工歯車を製造しなくても、目標形状の製品歯車を形成可能な歯車研削工具を形成することができる。よって、コストの低廉化を図ることができる。
【0025】
[8] 上記の歯車研削工具加工システムにおいて、前記加工歯車の形状が標準歯車の形状に対応すると共に前記製品歯車の目標形状が転位歯車の形状に対応しており、前記算出手段は、前記転位歯車の転位量に基づいて前記加工歯車と前記ワーク工具との相対変位量を算出してもよい。
【0026】
このようなシステムによれば、標準歯車の形状に対応した形状の加工歯車を用いて転位歯車を形成可能な歯車研削工具を好適に形成することができる。
【0027】
[9] 上記の歯車研削工具加工システムにおいて、前記算出手段は、前記製品歯車の歯先修正開始位置の目標位置に対する前記加工歯車の歯先修正開始位置の誤差量に基づいて前記加工歯車と前記ワーク工具との相対変位量を算出してもよい。
【0028】
このようなシステムによれば、製品歯車の歯先修正開始位置の目標位置と加工歯車の歯先修正開始位置との間に誤差が生じている場合であっても、目標とする歯先形状を備えた製品歯車を形成可能な歯車研削工具を好適に形成することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、ワーク工具と加工歯車とを第2噛合位置に噛み合わせた後、該ワーク工具を加工して歯車研削工具を形成することができる。よって、製品歯車の目標形状とは異なる形状を有する加工歯車を用いて、目標形状の製品歯車を形成可能な螺旋状の研削歯を有する歯車研削工具を簡単に形成することができ、これによって、コストの低廉化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る歯車研削工具の加工方法について、それを実施するための歯車研削工具加工システムとの関係で好適な実施形態を例示して添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0032】
(第1実施形態)
先ず、第1実施形態に係る歯車研削工具60の加工方法及び歯車研削工具加工システム10Aについて説明する。本実施形態に係る歯車研削工具加工システム(以下、工具加工システムと称することがある。)10Aは、標準歯車の形状に対応した形状を有する加工歯車18を用いてワーク工具Wを加工して転位歯車(製品歯車又は半製品歯車)62を形成可能な歯車研削工具60を形成するためのシステムである。
【0033】
先ず、ワーク工具Wについて説明する。ワーク工具Wは、螺旋状の研削歯200を備えており、研削歯200には、該研削歯200の上面に設けられた第1研削面202と、該研削歯200の下面に設けられた第2研削面204とが形成されている(
図2及び
図4参照)。第1研削面202と第2研削面204の各々は、研削歯200の母材に単層のCBN(立方晶窒化硼素)等で構成された砥粒をニッケルメッキ層等のバインダを介して電着することにより形成されている。
【0034】
図1及び
図2に示すように、工具加工システム10Aは、ベッド12と、ベッド12の上面に配設された第1機構14と第2機構16を有する変位機構13と、第1機構14に装着された加工歯車18と、ベッド12に隣接して配設された制御部20とを備える。
【0035】
第1機構14は、加工歯車18の回転軸線と直交する方向(矢印A方向)に進退可能な状態でベッド12の上面に設けられた切込テーブル22と、切込テーブル22を矢印A方向に進退させる切込モータ24と、加工歯車18の回転軸線方向(矢印B方向)に移動可能な状態で切込テーブル22に設けられたトラバーステーブル26と、トラバーステーブル26を矢印B方向に移動させるトラバースモータ28とを有する。
【0036】
また、第1機構14は、加工歯車18を着脱可能なテールストック30と、減速機構32を介して加工歯車18を正逆両方向に回転させる第1回転モータ34と、加工歯車18の回転角度に対応した信号(パルス信号)を出力する第1エンコーダ36とをさらに有する。
【0037】
テールストック30には、ワーク工具Wと加工歯車18との接触を検出する接触検出部38が設けられている。接触検出部38としては、ワーク工具Wと加工歯車18の接触時に生じる弾性波(接触音)Pを検出するAEセンサが用いられる。AEセンサは、接触方式又は非接触方式のいずれの方式であっても構わない。
【0038】
第2機構16は、ベッド12の上面に立設されたコラム40と、コラム40のうち第1機構14に指向する側面に沿って(矢印C方向に)旋回可能な状態で該コラム40に設けられた旋回テーブル42と、旋回テーブル42を矢印C方向に移動させる図示しない旋回モータと、ワーク工具Wの回転軸線方向(矢印D方向、シフト方向)に移動可能な状態で旋回テーブル42に設けられたシフトテーブル44と、シフトテーブル44を矢印D方向に移動させるシフトモータ46とを有する。
【0039】
また、第2機構16は、シフトテーブル44に固定された状態でワーク工具Wを回転自在に支持する工具支持部48と、ワーク工具Wを回転させる第2回転モータ50と、ワーク工具Wの回転角度に対応した信号(パルス信号)を出力する第2エンコーダ52とをさらに有する。
【0040】
加工歯車18は、例えば、はすば歯車(ヘリカルギヤ)として構成されており、標準歯車の形状に対応した形状を有している。加工歯車18を構成する加工歯54には、ワーク工具Wの第2研削面204を加工するための左加工歯面56Lと、ワーク工具Wの第1研削面202を加工するための右加工歯面56Rとが設けられている(
図6参照)。
【0041】
左加工歯面56Lと右加工歯面56Rの各々は、加工歯54の母材にダイヤモンド等で構成された砥粒をニッケルメッキ層等のバインダを介して電着することにより形成されている。
【0042】
制御部20は、図示しない旋回モータを制御して旋回テーブル42を矢印C方向に旋回させる。また、
図2に示すように、制御部20は、制御部本体100と複数のサーボアンプ102a〜102eとを有する。制御部本体100は、切込モータ制御部104、トラバースモータ制御部106、シフトモータ制御部108、コントローラ110、及びシフト量算出部(算出手段)112を含む。
【0043】
切込モータ制御部104は、サーボアンプ102aを介して切込モータ24を制御して切込テーブル22を矢印A方向に進退させ、トラバースモータ制御部106は、サーボアンプ102bを介してトラバースモータ28を制御してトラバーステーブル26を矢印B方向に移動させ、シフトモータ制御部108は、サーボアンプ102eを介してシフトモータ46を制御してシフトテーブル44を矢印D方向に移動させる。
【0044】
コントローラ110は、第1エンコーダ36及び第2エンコーダ52からの各々の出力信号に基づいて、サーボアンプ102cを介して第1回転モータ34を制御すると共にサーボアンプ102dを介して第2回転モータ50を制御することにより、加工歯車18とワーク工具Wとを同期回転(回転駆動)させる。
【0045】
シフト量算出部112は、図示しないワーク歯車を歯車研削工具60にて研削することにより形成される転位歯車62(
図5参照)の転位量Aを算出する。ここで、歯車研削工具60は、ワーク工具Wを加工歯車18にて加工することにより形成される。
【0046】
また、シフト量算出部112は、転位量Aに基づいてシフト量D1を算出する。ここで、シフト量D1は、加工歯車18とワーク工具Wとの噛合位置を第1噛合位置(第3噛合位置)から第2噛合位置(第4噛合位置)に変更するのに必要なワーク工具Wの回転軸線方向に沿った該加工歯車18とワーク工具Wとの相対変位量を意味する。
【0047】
本実施形態において、第1噛合位置は、標準歯車の形状に対応した形状を有するワーク歯車を研削する際の該ワーク歯車の右歯面と歯車研削工具60の第1研削面との噛合位置に相当する加工歯車18の右加工歯面56Rとワーク工具Wの第1研削面202との噛合位置である。
【0048】
第2噛合位置は、転位歯車62の形状に対応した形状を有するワーク歯車を研削する際の該ワーク歯車の右歯面と歯車研削工具60の第1研削面との噛合位置に相当する加工歯車18の右加工歯面56Rとワーク工具Wの第1研削面202との噛合位置である。
【0049】
第3噛合位置は、標準歯車の形状に対応した形状を有するワーク歯車を研削する際の該ワーク歯車の左歯面と歯車研削工具60の第2研削面との噛合位置に相当する加工歯車18の左加工歯面56Lとワーク工具Wの第2研削面204との噛合位置である。
【0050】
第4噛合位置は、転位歯車62の形状に対応した形状を有するワーク歯車を研削する際の該ワーク歯車の左歯面と歯車研削工具60の第2研削面との噛合位置に相当する加工歯車18の左加工歯面56Lとワーク工具Wの第2研削面204との噛合位置である。
【0051】
ところで、例えば、自動車のマイナーチェンジによって、トランスミッションのギヤ比を変更する場合、モジュールや圧力角を同一にした転位歯車が必要になることがある。
【0052】
このような場合、転位歯車研削用の歯車研削工具を形成しなければならない。しかしながら、一般的に、歯車研削工具を加工するための加工歯車は、製品歯車の目標形状に対応した形状を有しているため、転位歯車研削用の歯車研削工具を形成するためには、転位歯車の形状に対応した形状の専用の加工歯車を製造する必要があった。
【0053】
しかしながら、本実施形態に係る工具加工システム10Aでは、マイナーチェンジ前の標準歯車の形状に対応した形状を有する加工歯車18を用いて転位歯車研削用の歯車研削工具60を形成することが可能となっている。
【0054】
次に、前記工具加工システム10Aを用いた歯車研削工具60の加工方法について説明する。なお、本実施形態では、転位歯車62として正転位歯車(プラス転位歯車)を用いた例について説明するが、転位歯車62として負転位歯車(マイナス転位歯車)を用いることも勿論可能である。また、正転位歯車と負転位歯車のいずれの場合であっても、以下に示す基本的な手順は同様であるため、負転位歯車を用いた例の説明については省略する。
【0055】
先ず、シフト量算出部112は、シフト量D1を算出する(
図3のステップS1:算出工程)。すなわち、シフト量D1は、転位量をA、歯車研削工具60の進み角をθ、ワーク工具Wの歯直角圧力角をαnとした場合、次の(1)式で算出される(
図4参照)。
D1=Acosθ/tanαn …(1)
【0056】
転位量Aは、標準歯車の転位係数をx
1、転位歯車62の転位係数をx
2、ギヤモジュールをMn、ワーク工具Wの加工前後における加工歯車18の寸法変化量をLとした場合、次の(2)式で算出される。
A=(x
2−x
1)×Mn+L …(2)
なお、加工歯車18の寸法変化量Lは、例えば、加工歯車18の加工歯54(砥粒)の磨耗量を測定することにより容易に取得することができる。
【0057】
また、転位係数xは、歯数をZ、歯直角圧力角をαn、軸直角圧力角をαs、インボリュートをinvφ、ピン径をdp、歯直角モジュールをmnとした場合、次の(3)式で算出される(
図5参照)。
x=Z/(2tanαn){invφ−dp/(mn×Z×cosαn)+π/(2Z)−invαs} …(3)
【0058】
上記(3)式のinvφは、インボリュート関数表から求めることができる。また、invφの角度φは、次の(4)式で算出される。
φ=cos
-1(cosφ) …(4)
【0059】
上記(4)式のcosφは、オーバーピン径をdm、ねじれ角をβ0とした場合、次の(5A)式又は(5B)式で算出される。
偶数歯:cosφ=(dm−dp)/(Z×Mn×cosαs)×cosβ0 …(5A)
奇数歯:cosφ=(dm−dp)/(Z×Mn×cosαs)×cosβ0/cos(90°/Z) …(5B)
【0060】
続いて、加工歯車18をテールストック30に装着する(ステップS2)。そして、制御部20は、各種モータ24、28、34、46、50を駆動制御してワーク工具Wと加工歯車18とを第1噛合位置に噛み合わせる(ステップS3:噛合工程、
図6において二点鎖線で示したワーク工具Wと加工歯車18を参照)。このとき、加工歯車18の右加工歯面56Rとワーク工具Wの第1研削面202との法線(作用線)が第1作用線N1に位置する。
【0061】
次に、シフトモータ制御部108は、シフトモータ46を駆動制御してワーク工具Wをシフト量D1だけ一方の側(下方)に移動させる(ステップS4:変位工程)。
【0062】
そうすると、右加工歯面56Rと第1研削面202との接点(作用点)P1R〜P4Rがワーク工具Wの外側に向けて移動するため、ワーク工具Wと加工歯車18との噛合位置が第1噛合位置から第2噛合位置に変更されることとなる(
図6において実線で示したワーク工具Wと加工歯車18を参照)。これにより、右加工歯面56Rと第1研削面202との法線は第2作用線N2になる。
【0063】
その後、切込モータ制御部104は、切込モータ24を駆動制御して加工歯車18の回転軸線とワーク工具Wの回転軸線とが近接する方向に加工歯車18を転位量Aだけ前進させる(ステップS5:噛合位置調節工程、
図7参照)。なお、転位量Aは、シフト量算出部112にて算出した値を用いればよい。
【0064】
加工歯車18を転位量Aだけ前進させると、第2作用線N2が第1作用線N1上に位置することとなる。これにより、右加工歯面56Rと第1研削面202とを確実に噛み合わせることができる。
【0065】
続いて、コントローラ110は、第1回転モータ34と第2回転モータ50とを同期回転させることにより、ワーク工具Wの第1研削面202を加工する(ステップS6:形成工程)。そして、切込モータ制御部104は、切込モータ24を駆動制御して加工歯車18を後退させる(ステップS7)。具体的には、
図7に示す二点鎖線の位置まで加工歯車18を後退させる。
【0066】
次いで、シフトモータ制御部108は、シフトモータ46を駆動制御してワーク工具Wを他方の側(上方)に移動させて、ワーク工具Wと加工歯車18とを第3噛合位置に噛み合わせる(ステップS8、
図8において二点鎖線で示したワーク工具Wと加工歯車18を参照)。このとき、加工歯車18の左加工歯面56Lとワーク工具Wの第2研削面204との法線が第3作用線N3に位置する。
【0067】
そして、シフトモータ制御部108は、シフトモータ46を駆動制御してワーク工具Wをシフト量D1だけ上方に移動させる(ステップS9)。そうすると、左加工歯面56Lと第2研削面204との接点(作用点)P1L〜P4Lがワーク工具Wの外側に向けて移動するため、ワーク工具Wと加工歯車18との噛合位置が第3噛合位置から第4噛合位置に変更されることとなる(
図8において実線で示したワーク工具Wと加工歯車18を参照)。これにより、左加工歯面56Lと第2研削面204との法線は第4作用線N4になる。
【0068】
その後、切込モータ制御部104は、切込モータ24を駆動制御して加工歯車18の回転軸線とワーク工具Wの回転軸線とが近接する方向に加工歯車18を転位量Aだけ前進させる(ステップS10、
図9参照)。そうすると、第4作用線N4が第3作用線N3上に位置することとなる。これにより、左加工歯面56Lと第2研削面204とを確実に噛み合わせることができる。
【0069】
続いて、コントローラ110は、第1回転モータ34と第2回転モータ50とを同期回転させることにより、ワーク工具Wの第2研削面204を加工する(ステップS11)。これにより、歯車研削工具60が形成されるに至る。その後、切込モータ制御部104は、切込モータ24を駆動制御して加工歯車18を後退させる(ステップS12)。この段階で今回のフローチャートが終了する。
【0070】
本実施形態によれば、ワーク工具Wと加工歯車18とをワーク工具Wの回転軸線方向に沿って相対変位させて第1噛合位置から第2噛合位置に変更することにより、ワーク工具Wと加工歯車18の作用線の位置を第1作用線N1から第2作用線N2にずらした上で、ワーク工具Wの第1研削面202を加工している。
【0071】
そして、ワーク工具Wと加工歯車18とをワーク工具Wの回転軸線方向に沿って相対変位させて第3噛合位置から第4噛合位置に変更することにより、ワーク工具Wと加工歯車18の作用線の位置を第3作用線N3から第4作用線N4にずらした上で、ワーク工具Wの第2研削面204を加工して歯車研削工具60を形成している。
【0072】
これにより、標準歯車の形状に対応した形状を有する加工歯車18を用いて転位歯車(正転位歯車)62を形成可能な歯車研削工具60を形成することができる。よって、単一の加工歯車18を用いて、複数種類の歯車研削工具を形成することができる。
【0073】
言い換えれば、本実施形態では、転位歯車62の形状とは異なる形状(標準歯車と同一の形状)を有する加工歯車18を用いて転位歯車62を形成可能な螺旋状の研削歯200を有する歯車研削工具60を簡単に形成するとことができる。すなわち、転位歯車62と1対1に対応した形状を有する加工歯車18を製造しなくても、転位歯車62を形成可能な歯車研削工具60を形成することができる。よって、コストの低廉化を図ることができる。
【0074】
本実施形態では、転位歯車62の形状と加工歯車18の形状との差異(転位歯車62の転位量A)に基づいてシフト量D1を算出しているので、転位歯車62(目標形状の製品歯車)を形成可能な歯車研削工具60を確実に形成することができる。
【0075】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る歯車研削工具70の加工方法及び歯車研削工具加工システム10Bについて説明する。なお、第2実施形態に係る歯車研削工具加工システム(以下、工具加工システムと称することがある)10Bにおいて、第1実施形態に係る工具加工システム10Aと同一又は同様な機能及び効果を奏する要素には同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0076】
本実施形態に係る工具加工システム10Bは、製品歯車の歯先修正開始位置の目標位置P0とは異なる歯先修正開始位置Pa(Pb)を備えた加工歯車18を用いてワーク工具Wを加工して目標とする歯先形状を備えた製品歯車を形成可能な歯車研削工具70を形成するためのシステムである。
【0077】
先ず、本実施形態に係る加工歯車18の歯先修正開始位置について
図10を参照しながら説明する。
図10において、線分L0は、目標とする製品歯車の歯先形状を概念的に示したものであり、線分Laと線分Lbは、加工歯車18の歯先形状を概念的に示したものである。
【0078】
図10から諒解されるように、本実施形態では、加工歯車18の歯先修正開始位置Pa、Pbが製品歯車の歯先修正開始位置の目標位置P0からずれている。
【0079】
そのため、加工歯車18の歯先修正開始位置Paが目標位置P0よりも歯元側にずれている線分Laの歯先修正量Saは、線分L0の歯先修正量S0よりも大きく、加工歯車18の歯先修正開始位置Pbが目標位置P0よりも歯先側にずれている線分Lbの歯先修正量Sbは、歯先修正量S0よりも小さくなる。
【0080】
また、本実施形態に係る工具加工システム10Bは、
図11に示すように、シフト量算出部(算出手段)114の構成が上述したシフト量算出部112の構成と異なっている。具体的には、シフト量算出部114は、製品歯車の歯先修正開始位置の目標位置P0に対する加工歯車18の歯先修正開始位置Pa(Pb)の誤差量Bに基づいてシフト量D2を算出する。
【0081】
ここで、シフト量D2は、加工歯車18とワーク工具Wとの噛合位置を第1噛合位置(第3噛合位置)から第2噛合位置(第4噛合位置)に変更するのに必要なワーク工具Wの回転軸線方向に沿った該加工歯車18とワーク工具Wとの相対変位量を意味する。
【0082】
本実施形態において、第1噛合位置は、加工歯車18の歯先形状に対応した歯先形状を備えた製品歯車を形成する際のワーク歯車と歯車研削工具70との噛合位置に相当する加工歯車18の右加工歯面56Rとワーク工具Wの第1研削面202との噛合位置である。
【0083】
第2噛合位置は、目標とする歯先形状を備えた製品歯車を形成する際のワーク歯車と歯車研削工具70との噛合位置に相当する加工歯車18の右加工歯面56Rとワーク工具Wの第1研削面202の噛合位置である。
【0084】
第3噛合位置は、加工歯車18の歯先形状に対応した歯先形状を備えた製品歯車を形成する際のワーク歯車と歯車研削工具70との噛合位置に相当する加工歯車18の左加工歯面56Lとワーク工具Wの第2研削面204との噛合位置である。
【0085】
第4噛合位置は、目標とする歯先形状を備えた製品歯車を形成する際のワーク歯車と歯車研削工具70との噛合位置に相当する加工歯車18の左加工歯面56Lとワーク工具Wの第2研削面204の噛合位置である。
【0086】
次に、前記工具加工システム10Bを用いた歯車研削工具70の加工方法について説明する。なお、本実施形態に係る歯車研削工具70の加工方法は、
図3に示すフローチャートに従って行われるため、重複する内容の詳細な説明については省略する。
【0087】
また、本実施形態では、加工歯車18の歯先修正開始位置Paが製品歯車の歯先修正開始位置の目標位置P0に対して歯元側にずれている場合の歯車研削工具70の加工方法について説明するが、加工歯車18の歯先修正開始位置Pbが目標位置P0に対して歯先側にずれている場合の歯車研削工具70の加工方法についても基本的な手順は同様である。
【0088】
本実施形態のステップS1では、シフト量算出部114がシフト量D2を算出する(算出工程、
図3参照)。すなわち、シフト量D2は、製品歯車の歯先修正開始位置の目標位置P0と加工歯車18の歯先修正開始位置Paとの誤差量をB、軸直角圧力角をαs、ねじれ角をβ0とした場合、次の(6)式で算出される(
図12〜
図14参照)。
D2=B/sinαs/tanαs/cosβ0 …(6)
【0089】
ここで、上記(6)式において、B/sinαsは加工歯車18の歯直方向に沿った誤差量Cを意味し、C/tanαsは、軸直角方向のシフト量D0を意味する。また、
図13において、線分Lcは、加工歯車18の基礎円を示している。
【0090】
加工歯車18の歯先修正開始位置Paは、加工歯車18の歯先形状を実際にプローブ等で測定することにより取得することができる。また、加工歯車18とワーク工具Wとを第1噛合位置(第3噛合位置)に噛み合わせた状態で第1研削面(第3研削面)を加工して歯車研削工具を形成し、該歯車研削工具にてワーク歯車を研削して形成された製品歯車の実際の歯先形状をプローブ等で測定することにより取得しても構わない。
【0091】
続いて、加工歯車18をテールストック30に装着し(ステップS2)、ワーク工具Wと加工歯車18とを第1噛合位置に噛み合わせる(ステップS3:噛合工程)。このとき、加工歯車18の右加工歯面56Rとワーク工具Wの第1研削面202との法線(作用線)が第1作用線N1に位置する。
【0092】
次に、ワーク工具Wをシフト量D2だけ下方に移動させて、ワーク工具Wと加工歯車18とを第2噛合位置に噛み合わせる(ステップS4:変位工程、
図6参照)。これにより、右加工歯面56Rと第1研削面202との法線は第2作用線N2になる。
【0093】
その後、加工歯車18を誤差量Cだけ前進させて第2作用線N2を第1作用線N1上に位置させ(ステップS5:噛合位置調整工程)、加工歯車18とワーク工具Wとを同期回転させることにより第1研削面202を加工する(ステップS6:形成工程)。
【0094】
次いで、加工歯車18を後退させて(ステップS7)、ワーク工具Wと加工歯車18とを第3噛合位置に噛み合わせる(ステップS8)。このとき、加工歯車18の左加工歯面56Lとワーク工具Wの第2研削面204との法線が第3作用線N3に位置する。
【0095】
そして、ワーク工具Wをシフト量D2だけ上方に移動させて、ワーク工具Wと加工歯車18とを第4噛合位置に噛み合わせる(ステップS9、
図8参照)。これにより、左加工歯面56Lと第2研削面204との法線は第4作用線N4になる。
【0096】
その後、加工歯車18を誤差量Cだけ前進させて第4作用線N4を第3作用線N3上に位置させて(ステップS10)、加工歯車18とワーク工具Wとを同期回転させることにより第2研削面204を加工する(ステップS11)。これにより、歯車研削工具70が形成されるに至る。その後、加工歯車18を後退させる(ステップS12)。この段階で今回のフローチャートが終了する。
【0097】
本実施形態によれば、製品歯車の歯先修正開始位置の目標位置P0と加工歯車18の歯先修正開始位置Paとの間に誤差が生じている場合であっても、目標とする歯先形状を備えた製品歯車を形成可能な歯車研削工具70を好適に形成することができる。
【0098】
本発明は、上述した実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは当然可能である。
【0099】
例えば、上述した実施形態において、ステップS5及びステップS10の工程を省略しても構わない。この場合であっても、製品歯車の目標形状とは異なる加工歯車18を用いて目標形状の製品歯車を形成可能な螺旋状の研削歯200を有する歯車研削工具60、70を形成することができる。
【0100】
また、上述した実施形態では、加工歯車18とワーク工具Wとを第1噛合位置(第3噛合位置)に噛み合わせた後、第2噛合位置(第4噛合位置)に相対変位させた上で該ワーク工具Wを加工して歯車研削工具60、70を形成しているが、加工歯車18とワーク工具Wとを第1噛合位置(第3噛合位置)に噛み合わせることなく第2噛合位置(第4噛合位置)に直接噛み合わせて該ワーク工具Wを加工して歯車研削工具60、70を形成してもよい。
【0101】
この場合、シフト量算出部112、114にて算出されたシフト量D1、D2に基づいて加工歯車18とワーク工具Wとの前記第2噛合位置及び前記第4噛合位置を制御部20により算出し、その算出された噛合位置に噛み合わされるように各種モータ24、28、34、46、50を駆動制御して加工歯車18とワーク工具Wとの相対位置が調整される。このような方法を用いた場合でも上述した実施形態と同様の効果を奏することができる。