(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、フロート弁体を備えた燃料タンク用バルブが記載されている。当該燃料タンク用バルブは、キャニスタに連通する連通口を備えたハウジングと、このハウジング内を昇降するフロート弁体と、フロート弁体の上昇を補助するコイルスプリングと、を含んで構成されている。ハウジングを構成する壁部には、燃料が流出入する開口部と、開口部に対応して形成され壁部から外側に張り出した張出部とが形成されている。張出部の下面は、開口部の孔壁の上面と面一になっている。
【0003】
当該燃料タンク用バルブは、燃料タンク内に注入された燃料が開口部を塞ぐことによって、ハウジング内と燃料タンク内との間に差圧が生じる。これにより開口部からハウジング内に燃料が流れ込み、フロート弁体が上昇して、ハウジングに形成された連通口を閉弁する。開口部の孔壁の上面及び張出部の下面は、燃料の液位を検知する検知面としての役割を果たしている。
【0004】
従来の燃料タンク用バルブでは、張出部を設けることにより、検知面と燃料との接触面積が大きくなっている。これにより、燃料が表面張力によって検知面に付着しやすくなるため、開口部が速やかに閉塞される。よって、ハウジング内への空気の巻き込みを防ぐことができ、フロート弁体の浮力の低下を防ぐことができる。また、張出部を設けて検知面と燃料との接触面積を大きくすることで、検知性を安定させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、従来の燃料タンク用バルブでは、開口部の孔壁の上面及び張出部の下面で構成される検知面で、燃料が満タンであるか否かを検知している。つまり、燃料が貯留されて燃料の液面が平坦になった場合、検知面と燃料の液面とが一致すること、もしくは、極力両者が近づくことが好ましい。
【0007】
しかし、燃料を貯留している最中において、波打った燃料の液面が検知面に近づくと、燃料の液面は、検知面との表面張力によって盛り上がり、波打った燃料の平均液位が検知面に達するよりも前に、開口部を閉塞してしまう。つまり、従来の燃料タンク用バルブであると、波打った燃料の平均液位が、検知面よりも低い位置にあるにも関わらず、張出部を設けている分広い範囲で表面張力が働くことにより、開口部からハウジング内への燃料の流れ込みが起こり、フロート弁体によってハウジングの連通口が閉弁するという問題がある。このような従来の燃料タンク用バルブであると、検知性を安定させることはできるが、予め設定した満タン設定位置と、貯留された燃料の液位とが不一致となる問題がある。
【0008】
本発明はこのような課題を解決するために創作されたものであり、検知性を安定させるとともに、貯留された燃料の液位と予め設定した満タン設定位置とを一致させることができる燃料タンク用バルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題を解決するため、燃料タンクの内部に配設される
とともに筒状の壁部と前記壁部の下端を覆う底部とを含んで構成され、単一の中空部を備えるハウジングと、
前記ハウジングの上端に設けられ、前記燃料タンクの外部に通じる単一の連通口と、前記ハウジングに内蔵され、前記ハウジングの内部における燃料の上昇に
伴って上昇し前記連通口を閉弁するフロート弁体と、を有し、前記ハウジングの壁部には、燃料が流出入する
とともにその上面が満タン設定位置に設定されている開口部と、
前記開口部から上方に所定の距離で離間して形成され前記壁部から外側に張り出した張出部と、が形成されており、
前記開口部の上面及び前記張出部の下面の両方が前記フロート弁体を上昇させるための検知面として構成されていることを特徴とする。
【0010】
かかる構成によれば、張出部を設けているため、開口部周りと燃料との接触面積を大きくすることができる。これにより、検知性を安定させることができる。また、張出部が開口部から上方に所定の距離で離間しているため、検知面の一部は従来よりも高い位置となる。これにより、貯留された燃料の液位と予め設定した満タン設定位置とを一致させることができる。
【0011】
また、
前記張出部は、前記ハウジングの周方向の全体に亘って形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る燃料タンク用バルブによれば、検知性を安定させることができるとともに、貯留された燃料の液位と予め設定した満タン設定位置とを一致させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る燃料タンク用バルブ1は、燃料Gを貯留する燃料タンクTに設置される。燃料タンク用バルブ1の用途は、燃料満タン検知弁、カット弁等が挙げられるが、本実施形態では燃料満タン検知弁として用いる場合を例示する。なお、説明における「上下」、「左右」は
図1の矢印に従う。
【0015】
燃料タンクTは、樹脂製の中空容器であって内部に燃料Gを貯留する。燃料タンク用バルブ1は、燃料タンクTの天井壁部Taに設置されている。燃料タンクTの側壁部Tbには、燃料注入管Pが接続されている。燃料注入管Pから流入した燃料Gは、側壁部Tbに形成された燃料供給口Tcから燃料タンクT内に流入する。
【0016】
図2に示すように、燃料タンク用バルブ1は、ハウジング2と、接続口部材3と、フロート弁体4と、付勢部材5とを含んで構成されている。
【0017】
ハウジング2は、内部にフロート弁体4を収納する筐体である。ハウジング2は、燃料タンクTの開口Tdに挿通され、接続口部材3に取り付けられている。ハウジング2は、ハウジング底部2Aと、ハウジング本体2Bとで構成されている。
【0018】
ハウジング底部2Aは、底部11と、外壁部12と、位置決め部13とで構成されている。底部11は、ハウジング底部2Aの底を構成し、円板状を呈する。底部11には、上下方向に貫通する貫通孔14が形成されている。貫通孔14の個数、大きさ及び形状は特に限定されるものではない。
【0019】
外壁部12は、筒状を呈し底部11の外縁に立設されている。位置決め部13は、柱状を呈し、底部11に立設されている。位置決め部13は、付勢部材5の基端側を位置決めする部材である。
【0020】
ハウジング本体2Bは、壁部15と、開口部16と、張出部17と、係合部18と、連通口19とで主に構成されている。ハウジング本体2Bは、一体形成された樹脂部材である。ハウジング本体2Bの下端には、ハウジング底部2Aが取り付けられている。
【0021】
壁部15は、略円筒状を呈する。壁部15の下側に開口部16が形成されている。開口部16は、側面視長方形を呈し、周方向に延設されている。開口部16は、本実施形態では、周方向に等間隔で4つ形成されている。開口部16の個数、大きさ及び形状は、張出部17の高さ位置やフロート弁体4の昇降タイミング等に応じて適宜設定すればよい。
【0022】
開口部16の孔壁の上面16aの位置は、本実施形態では「満タン設定位置L1」に設定されている。つまり、燃料Gが注入されて所定時間が経過し、燃料Gの液面G1が静止した際、満タン設定位置L1と燃料Gの液面G1とが一致するように設定されている。
【0023】
張出部17は、周方向の全体に亘って、壁部15から外側に張り出している。張出部17の断面形状は長方形になっている。張出部17の下面17aは、開口部16の孔壁の上面16aから上方に距離X分離間している。張出部17は、本実施形態では周方向全体に亘って設けられているが、少なくとも開口部16に対応する位置に設けられていればよい。
【0024】
本実施形態では、開口部16の孔壁の上面16a及び張出部17の下面17aで「検知面」を構成している。つまり、燃料タンクTに注入された燃料Gが、上面16a及び下面17aに付着することにより開口部16が塞がれて、フロート弁体4が上昇するようになっている。
【0025】
係合部18は、接続口部材3の被係合部33と係合する部位である。本実施形態では、係合部18と被係合部33とがワンタッチで係合するようになっている。
【0026】
連通口19は、ハウジング本体2Bの上端において、上下方向に連通する孔である。連通口19は、キャニスタCに連通している。
【0027】
接続口部材3は、ハウジング2の上部に取り付けられるとともに、燃料タンクTに溶着される樹脂部材である。また、接続口部材3は、キャニスタC(
図1参照)に連通する流路を備えた部材である。接続口部材3は、フランジ31と、壁部32と、被係合部33と、接続部34とで主に構成されている。
【0028】
フランジ31は、燃料タンクTの外側に露出する部位である。フランジ31は、略リング状を呈する。フランジ31の外縁から壁部32が垂下している。壁部32の下端は、燃料タンクTに溶着されている。
【0029】
被係合部33は、爪部を有し係合部18と係合する部位である。被係合部33は、先端側が自由端になっており、弾性変形可能になっている。
【0030】
接続部34は、フランジ31の中央から左側に延設されており、連通口19に連通する筒部を備えている。当該筒部は、キャニスタCと連通するチューブが取り付けられる部位である。
【0031】
フロート弁体4は、ハウジング2内を昇降する樹脂製の浮き部材である。フロート弁体4は、大径部41と、小径部42と、段差部43と、上壁44と、当接部45とで構成されている。
【0032】
大径部41は、円筒状を呈する。大径部41の内部には大径中空部41aが形成されている。大径部41の上側には、通気孔41bが形成されている。大径中空部41a内の空気は、通気孔41b、連通口19を通ってキャニスタCに導かれる。小径部42は、大径部41の上側に形成され円筒状を呈する。小径部42は、大径部41よりも小さい外径で形成されている。小径部42の内部には、小経中空部42aが形成されている。
【0033】
段差部43は、大径部41と小径部42とを連結する部位である。段差部43は、大径部41及び小径部42に対して垂直になっている。上壁44は、小径部42の上側を塞ぐ部位である。
【0034】
当接部45は、上壁44の上面に形成されており、フロート弁体4が上昇した際に、連通口19に密接する部位である。
【0035】
付勢部材5は、フロート弁体4の昇降を補助する部材である。付勢部材5は、本実施形態ではコイルスプリングで構成されている。付勢部材5の高さは、大径中空部41aの高さと略同等になっている。付勢部材5の基端側は位置決め部13の基端に固定され、先端側は大径中空部41aと小径中空部42aとの段部に当接している。なお、付勢部材5は、本実施形態ではコイルスプリングとしたが、フロート弁体4の昇降を補助する部材であれば他の部材を用いてもよい。
【0036】
次に、本実施形態に係る燃料タンク用バルブ1の作用について説明する。燃料タンクT内に貯留された燃料Gの液面G1が燃料タンク用バルブ1よりも下方にある場合、フロート弁体4は最下降位置に位置する。これにより、連通口19は、通気状態となるため、燃料Gから発生したベーパーは、貫通孔14、通気孔41b及び連通口19を通ってキャニスタCに導かれる。また、燃料Gから発生したベーパーは、開口部16、連通口19を通ってキャニスタCに導かれる。
【0037】
燃料タンクT内に貯留された燃料Gの液面G1が、開口部16を塞ぐと、ハウジング2の内部と燃料タンクTの内部の差圧によって、開口部16からハウジング2内に燃料Gが流入する。これにより、フロート弁体4が浮上して、フロート弁体4の当接部45が連通口19に当接し閉弁する。このとき、燃料注入管P(
図1参照)内に燃料Gが溜まり、給油ガン(図示省略)に燃料Gが触れてオートストップが作用する。このように、燃料タンク用バルブ1によれば、燃料タンクTへの給油の際等に、燃料タンクTからベーパーを逃がすとともに、燃料Gが燃料タンクTの外部へ流出するのを防ぐことができる。
【0038】
ここで、
図3、
図4を用いて、従来の燃料タンク用バルブ100の作用と、本実施形態に係る燃料タンク用バルブ1の作用とを対比して説明する。
図3は、従来の燃料タンク用バルブの作用を説明するための開口部周りの概略側断面図である。
【0039】
図3に示すように、従来の燃料タンク用バルブ100は、張出部117の位置を除いては本実施形態に係る燃料タンク用バルブ1と同等である。燃料タンク用バルブ100の開口部116の孔壁の上面116aと張出部117の下面117aとは面一になっている。従来の燃料タンク用バルブ100では、上面116a及び下面117aの高さ位置を「満タン設定位置L1」として設定している。
【0040】
従来の燃料タンク用バルブ100において、燃料タンクTに燃料Gを注入すると、燃料Gの液面G1’は徐々に上昇する。このとき、燃料Gは連続的に流入するため、燃料Gの液面G1’は波打ち状態にある。燃料Gの液面は不規則に変化するため正確に図示することは困難であるが、ここでは説明の便宜上、
図3の液面G1’(実線)、液面G2’(点線)、液面G3’(点線)のような波形となるものとする。符号「Gv’」は、液面G1’、液面G2’及び液面G3’の「平均液位」を示している。
【0041】
従来の燃料タンク用バルブ100では、上面116aと面一となる張出部117を設けているため、検知面の面積が大きくなっている。したがって、波打った燃料Gの液面G1’,G2’,G3’のいずれかのピークが検知面に触れれば、燃料Gの液面は、表面張力によって検知面に付着し、平均液位Gv’が検知面に達するよりも前に、速やかに開口部16の周方向(
図3の表裏方向)全体を閉塞する。液面G1が略台形状に描画されている部分は表面張力によって盛り上がった部分である。
【0042】
つまり、従来の燃料タンク用バルブ100であると、張出部17を設けている分広い範囲で表面張力が働くため、燃料の平均液位Gv’が検知面よりも低い位置にあるにも関わらず、フロート弁体4が上昇して閉弁してしまう。燃料の平均液位Gv’は、燃料Gの波立ちが静止した際の液面の位置と概ね同等になる。これにより、予め設定した満タン設定位置L1と、貯留された燃料の液位(平均液位Gv’)とが不一致となっていた。
【0043】
これに対し、
図4の(a)に示すように、本実施形態に係る液面G1では開口部16の上面16aに触れるものの表面張力が起こる範囲が小さく、また、液面G2,G3では開口部16の上面16aには接触しない。したがって、液面G1は開口部16の一部に付着するものの、開口部16の周方向の全体を閉塞するまでには至らない。これにより、連通口19は閉弁されないため、燃料Gの液位は従来よりもさらに上昇する。
【0044】
図4の(b)に示すように、燃料Gの液位が上昇して、液面G2,G3のいずれかのピークが下面17aに触れると、上面16a及び下面17aに連続的に表面張力が働き、開口部16の周方向全体が閉塞される。これにより、開口部16からハウジング2内への燃料Gの流れ込みが起こり、フロート弁体4が上昇して連通口19が閉弁される。
【0045】
このように、開口部16の上面16aのみであると表面張力が起こる範囲が小さく、検知性が不安定となるが、燃料タンク用バルブ1によれば、開口部16の上面16aに加えて、張出部17の下面17aも燃料Gに接触するため、燃料Gとの接触面積を大きくすることができる。これにより、検知性を安定させることができる。
【0046】
また、検知面の一部を構成する張出部17の下面17aが、開口部16の孔壁の上面16aから上方に所定の距離Xで離間しているため、連通口19が閉弁された際の燃料Gの液位は、従来よりも上昇している。したがって、燃料Gの平均液位Gvも、従来の平均液位Gv’よりも上昇させることができる。これにより、波打った燃料Gの平均液位が、予め設定した満タン設定位置L1よりも低い位置にあるにも関わらずフロート弁体4が上昇することを防ぐとともに、貯留された燃料Gの液位(平均液位Gv)と、予め設定した満タン設定位置L1とを一致させることができる。
【0047】
言い換えると、従来の燃料タンク用バルブ100では、検知面と燃料Gとの接触面積を大きくすることで、フロート弁体4が上昇するタイミングのばらつきを抑制することができるが、検知性が大幅に向上した分、予め設定した満タン設定位置L1と、貯留された燃料の液位とが不一致になっていた。そこで、張出部17を開口部16から上方に所定の距離でセットバックすることで、フロート弁体4が上昇するタイミングのばらつきを抑制するとともに、予め設定した満タン設定位置L1と貯留された燃料の液位とを一致させることができる。
【0048】
なお、開口部16と張出部17との距離Xや張出部17の張り出し長さは、満タン設定位置L1と貯留された燃料の液位とが一致若しくは近似するように適宜設定すればよい。
【0049】
また、燃料タンク用バルブ1は、燃料タンクTの天井壁部Taにおいて、燃料タンクTの側壁部Tbに形成された燃料供給口Tcから近い位置に設置されている。燃料供給口Tcから近い位置は、燃料Gの波が大きくなる傾向にあるが、本実施形態の燃料タンク用バルブ1によれば、このように燃料Gの液面G1の波が大きい場所でも効果を発揮することができる。
【0050】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲において、適宜設計変更が可能である。例えば、本実施形態では開口部16の孔壁の上面16aを満タン設定位置に設定したが、必ずしも満タンの位置を検知するものではなく、任意の高さ位置を検知するように設定してもよい。
【0051】
また、本実施形態では、ハウジング2を2つの部材で構成したが、単一の部材又は3つ以上の部材で構成してもよい。また、本実施形態では、ハウジング2の一部が燃料タンクTの外側に配設されるようになっているが、ハウジング2の全部が燃料タンクTの内部に配設される形態であってもよい。また、付勢部材5は省略してもよい。