(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態(実施例)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略する。また、本発明は、ここで取り上げた複数の実施形態(実施例)の個々に限定されることはなく、適宜組み合わせてもよい。
【0010】
図1に、本発明の実施形態に係る構造体1の断面図を示す。構造体1は、第1部材(膜)2と、その第1部材2に対向する第2部材3と、第1部材2と第2部材3の間に設けられ、第1部材2と第2部材3とを接着するガラス層4とを有している。ガラス層4は、基材となるガラス部4aと、そのガラス部4aに分散しているセラミックス粒子4bと金属粒子4cを有している。
【0011】
図2に、ガラス部4a(ガラス層4)の示差熱分析(DTA)で得られるDTA曲線の1例を示す。この例の示差熱分析では、まず、ガラス部4aの一部をジェットミルで平均粒径が3μm以下になるまで粉砕し、粉末にした。そして、その粉末を用いて5℃/分の昇温速度で昇温する示差熱分析を行なっている。これにより、
図2に示すようなDTA曲線を取得している。このDTA曲線から、転移点T
g、屈伏点M
g、軟化点T
s及び結晶化温度T
cryを決定(測定)することができる。なお、標準サンプルとしてアルミナ(Al
2O
3)粉末を用いた。
図2に示すように、転移点(ガラス転移点)T
gは、第1吸熱ピークの開始温度とし、接線法により求めることができる。屈伏点M
gは、その第1吸熱ピークのピーク温度とし、接線法により求めることができる。軟化点T
sは、第2吸熱ピークのピーク温度とし、接線法により求めることができる。結晶化温度T
cryは、結晶化による発熱ピークの開始温度とし、接線法により求めることができる。
【0012】
また、ガラス部4a(ガラス層4)の特性温度(転移点T
g、屈伏点M
g、軟化点T
s)は、粘度により定義され、転移点T
g、屈伏点M
g、及び軟化点T
sは、粘度がそれぞれ10
13.3poise、10
11.0poise及び10
7.65poiseになる温度と言われている。結晶化温度T
cryは、ガラス部4a(ガラス層4)が結晶化を開始する温度である。ガラス部4a(ガラス層4)を、構造体1の使用時のガラス層4の温度T
xで軟化流動させずに接着力を確保するためには、軟化点T
sが構造体1の使用時のガラス層4の温度T
xより高ければよい。そして、熱的な残留歪を緩和するために、転移点T
gは、構造体1の使用時のガラス層4の温度T
xより低くなっている。構造体1の使用時のガラス層4の温度T
xは、転移点T
g以上であり、かつ、軟化点T
s以下である許容温度範囲内に入っている(T
g≦T
x≦T
s)。これによれば、常温より高い温度での使用により、内部に熱ひずみが生じても、その熱ひずみを緩和することができる。そして、熱ひずみによる第1部材2と第2部材3の接着面剥離や、第1部材2や第2部材3の破壊を抑制することができる。また、熱ひずみの緩和により、疲労破壊を抑制し、長期間の使用を可能にしている。
【0013】
図1に示す第1部材2は、ガラス層4の上に成膜された膜であってもよい。膜である第1部材2は、スパッタリング法や、蒸着法や、めっき法や、塗布法等の成膜法を用いて成膜することができる。なお、第1部材2がガラス層4の形成の後に形成されても、第1部材2とガラス層4の形成後の状態、さらには、構造体1の使用時のそれらの状態、及び使用後の状態は、第1部材2にガラス層4が接着している状態であると考えることができる。第1部材2と第2部材3は、ガラス層4によって接着されているとともに、第1部材2とガラス層4と第2部材3とは、3層の積層構造を構成している。
【0014】
また、
図1に示すように、ガラス層4に、セラミックス粒子4bや金属粒子4cを分散させることにより、ガラス層4の見かけの熱膨張係数を、増減させることができる。すなわち、ガラス層4のガラス部4aの正味の熱膨張係数に対して、それより大きい熱膨張係数を持つセラミックス粒子4bや金属粒子4cを入れれば、ガラス層4の見かけの熱膨張係数を大きくすることができる。逆に、ガラス部4aの正味の熱膨張係数より小さい熱膨張係数を持つセラミックス粒子4bや金属粒子4cを入れれば、ガラス層4の見かけの熱膨張係数を小さくすることができる。そして、転移点T
gより低い温度帯において、ガラス層4の見かけの熱膨張係数は、第1部材2と第2部材3の熱膨張係数の間の値に調整されている。これによれば、転移点T
gより低い温度帯においても、第1部材2と第2部材3を直接接合する場合と比べ、第1部材2と第2部材3に発生する熱ひずみを小さくすることができる。また、ガラス層4に、セラミックス粒子4bや金属粒子4cを分散させることにより、ガラス層4の見かけの熱膨張係数だけでなく、ガラス層4の見かけの熱伝導率や、見かけの電気伝導率を、制御することができる。
【0015】
セラミックス粒子(セラミックスフィラー)4bとしては、特に、ガラス層4の見かけの熱膨張係数を低下させるために、低熱膨張係数のセラミックス粉末(粒子)が用いられる。低熱膨張係数のセラミックス粒子4bとして、例えば、リン酸タングステン酸ジルコニウム(Zr
2(WO
4)(PO
4)
2)や、LiAlSiO
4等が用いられる。ただ、使用される環境やガラス部4aとの反応を考慮して、ガラス層4の見かけの熱膨張係数を低下させることができれば、どのセラミックス粒子4bを選定してもよい。なお、セラミックス粒子4bの寸法は、添加されるガラス層4の厚さよりも小さくなっている。
【0016】
金属粒子(金属フィラー)4cは、特に、ガラス層4の見かけの熱伝導性や電気伝導性を上昇させるために用いられる。金属粒子4cの材料としては、例えば、Au、Ag、Cu等が用いられる。ただ、使用される環境やガラス部4aとの反応を考慮して、ガラス層4の見かけの熱伝導性や電気伝導性を上昇させることができれば、どの金属粒子4cを選定してもよい。なお、金属粒子4cの寸法は、添加されるガラス層4の厚さよりも小さくなっている。また、金属粒子4cの添加によって、熱伝導性(熱伝導率)と電気伝導性(電気伝導率)だけでなく、ガラス層4の見かけの熱膨張係数も変化する。このため、熱伝導率と電気伝導率と熱膨張係数の中から複数の特性値を所望の値に設定するためには、セラミックス粒子4bと金属粒子4cの両方をガラス層4に添加している。ただ、セラミックス粒子4bと金属粒子4cを、ガラス層4に多く添加しすぎると、ガラス層4の第1部材2と第2部材3に対する接着力が低下する。このため、それらの添加量は、要求される熱膨張係数、熱伝導率、電気伝導率とともに考慮して設計される。
【0017】
また、ガラス層4のガラス部4aの材料については、接着する第1部材2と第2部材3の材料と、構造体1の使用温度に応じて決まる構造体1の使用時のガラス層4の温度とによって、適切なガラス材が選定される。適切な選定により、接着する第1部材2と第2部材3の双方の材料に対するぬれ性と接着性が確保され、構造体1の使用温度(構造体1の使用時のガラス層4の温度)において、熱ひずみを緩和することができる。
【0018】
そして、ガラス層4のガラス部4aの材料として用いることができるガラス(ガラス材)の例を、表2に示す。表2に示すガラスの転移点T
gには、ガラス毎に設定・調整可能な温度として転移点T
gがとり得る範囲が示されている。例えば、ガラス部4aの材料に、PbO−B
2O
3系ガラス材を用いれば、このガラスの成分等の調整により、250〜350℃の範囲内で転移点T
gを、設定・調整することができる。これにより、表2に示したような複数種類のガラスの中から、ガラス部4aの材料を選択することで、転移点T
gを、例えば、最大の略850℃の高い温度から最小の略150℃の低い温度までの所望の温度に、設定・調整できる。
【0019】
そして、具体的に、ガラス層4のガラス部4aの材料(ガラス)としては、
PbO−B
2O
3系ガラス材や、
Bi
2O
3−B
2O
3系ガラス材や、
Na
2O−BaO−SiO
2系ガラス材や、
Al
2O
3−B
2O
3−SiO
2系ガラス材や、
Na
2O−Al
2O
3−B
2O
3−SiO
2系ガラス材や、
Na
2O−Al
2O
3−B
2O
3−ZnO−SiO
2系ガラス材や、
PbO−ZnO−B
2O
3系ガラス材や、
PbO−Al
2O
3−SiO
2系ガラス材や、
PbO−B
2O
3−Al
2O
3−SiO
2系ガラス材や、
PbO−ZnO−B
2O
3−SiO
2系ガラス材や、
ZnO−B
2O
3−SiO
2系ガラス材や、
V
2O
5−P
2O
5−Sb
2O
3−BaO系ガラス材や、
V
2O
5−P
2O
5−BaO−MnO−Fe
2O
3−WO
3−Na
2O−K
2O系ガラス材や、
V
2O
5−P
2O
5−TeO
2−Fe
2O
3系ガラス材や、
V
2O
5−P
2O
5−BaO−TeO
2−Fe
2O
3−WO
3系ガラス材や、
V
2O
5−P
2O
5−BaO−TeO
2−Fe
2O
3−WO
3−K
2O系ガラス材や、
V
2O
5−TeO
2−Ag
2O系ガラス材を用いることができる。
【0020】
これらのガラス材では、転移点T
gが、略150℃〜略850℃という温度範囲内に存在し、ガラス材の転移点として比較的低い温度に設定・調整できるので、その転移点T
gを、構造体1の使用温度(構造体1の使用時のガラス層4の温度)より低くすることができる。表2には、ガラス材毎に転移点T
gの範囲を示す。構造体1の使用温度よりも転移点T
gが低く、第1部材2と第2部材3の被接着材料との接着力が強いガラス材を、ガラス層4のガラス部4aの材料に選定している。これらのガラス材では、第1部材2と第2部材3の被接着材料によって、接着力が異なっており、ガラス部4aのガラス材と、第1部材2と第2部材3の被接着材料の組合せにより、高い接着力を得ることができる。
【0021】
例えば、PbO−B
2O
3系ガラス材は、アルミナ、窒化アルミニウム(AlN)、ムライト、シリコン(Si)等の被接着材料に対して、高い接着力を発揮することができる。
【0022】
Bi
2O
3−B
2O
3系ガラス材は、窒化アルミニウム、ムライト、シリコン等の被接着材料に対して、高い接着力を発揮することができる。
【0023】
Na
2O−Al
2O
3−B
2O
3−ZnO−SiO
2系ガラス材は、アルミナ、窒化珪素(SiN)等の被接着材料に対して、高い接着力を発揮することができる。
【0024】
PbO−ZnO−B
2O
3−SiO
2系ガラス材は、炭化珪素(SiC)等の被接着材料に対して、高い接着力を発揮することができる。
【0025】
V
2O
5−P
2O
5−Sb
2O
3−BaO系ガラス材と、
V
2O
5−P
2O
5−BaO−MnO−Fe
2O
3−WO
3−Na
2O−K
2O系ガラス材と、
V
2O
5−P
2O
5−TeO
2−Fe
2O
3系ガラス材と、
V
2O
5−P
2O
5−BaO−TeO
2−Fe
2O
3−WO
3系ガラス材と、
V
2O
5−P
2O
5−BaO−TeO
2−Fe
2O
3−WO
3−K
2O系ガラス材とは、アルミナ、シリコン、炭化珪素等の被接着材料に対して、高い接着力を発揮することができる。
【0026】
図1に示すように、構造体1は、第1部材2と第2部材3をガラス層4で接着させた構造であり、第1部材2と第2部材3に異なる材料を用いれば、異なる材料が互いにガラス層4を介して接着した構造体を提供することができる。第1部材2と第2部材3の材料としては、アルミナ、窒化珪素、炭化珪素等のセラミックスや、ガラスや、シリコン等の半導体や、モリブデン、タングステン、銅、アルミ、鉄鋼材料、チタン、ジルコニウム、ステンレス鋼等の金属および合金を用いることができる。また、Al-SiCといった金属/セラミックス複合材料や、SiC/SiC複合材といったセラミックスファイバ/セラミックスマトリックス複合材料も、第1部材2と第2部材3の材料にすることができる。表1に、種々の材料の熱膨張係数の例を示す。金属と合金の熱膨張係数は幅広く分布している。アルミニウム、黄銅、銅、金、オーステナイト系ステンレス鋼は、高い熱膨張係数を示す。一方、タングステン、モリブデン、ジルコニウムは、低い熱膨張係数を示す。表1中では、シリコンやダイヤモンドが、最も熱膨張係数の低いグループに入っている。アルミナ、炭化珪素、窒化アルミニウム、窒化珪素(ケイ素)等のセラミックスでは、熱膨張係数は、3.5〜8.5×10
-6/Kの範囲に入っている。
【0027】
第1部材2と第2部材3に、熱膨張係数が異なる異種の材料を用いる場合を考える。第1部材2と第2部材3が、ガラス層4で接着される。第1部材2と第2部材3の熱膨張係数差を△αとし、常温から構造体1の使用温度までの温度変化を△Tとすると、界面には、式△ε=△α・△Tで求まる熱ひずみ△εが生じる。例えば、第1部材2と第2部材3の材料を、アルミナと銅とすると、熱膨張係数差△αは約10×10
-6/Kであり、温度変化△Tを100Kとすると、1×10
-3の熱ひずみ△εが生じる。しかし、ガラス層4のガラス部4aの転移点(ガラス転移点)T
gは、構造体1の使用温度(構造体1の使用時のガラス層4の温度)より低く設定している。そのことによって、昇温過程では発生した熱ひずみ△εは転移点T
gを超えるとガラスの塑性流動により消滅する。使用温度が転移点T
gよりも高いために第1部材2と第2部材3同士は厳密には固定されないが、ガラス層4の接着力により剥離することはない。ガラス層4は、第1部材2と第2部材3に引き剥がす力が生じないように流動性する。逆に、冷却過程では転移点T
g以下に冷却されると熱ひずみ△εを生じる。具体的に、構造体1を使用状態から停止状態にすると、温度変化△Tは、転移点T
gから常温までとなり、その温度変化△Tに応じた冷却過程での熱ひずみ△εが生じる。ただ、この冷却過程での熱ひずみ△εは停止状態のときだけに生じる限定的なものである。また、転移点T
gを低く設定しているので、冷却過程での熱ひずみ△εも小さくなっている。そして、この冷却過程での熱ひずみ△εを緩和するために、ガラス層4の見かけの熱膨張係数を、第1部材2と第2部材3の双方の材料の熱膨張係数の間の値に設定している。
【0028】
なお、第1部材2と第2部材3に、同一の材料を用いてもよい。第1部材2と第2部材3とで熱膨張係数が等しいので、一見すると熱ひずみ△εが生じないと考えられるが、使用時に構造体1に温度勾配が発生している場合や、第1部材2と第2部材3の接着面が平面でない曲面の場合等には、熱ひずみ△εが生じる。
【0029】
使用時に構造体1に温度勾配が発生している場合は、構造体1の使用温度と、構造体1の使用時の第1部材2の温度と、構造体1の使用時の第2部材3の温度と、構造体1の使用時のガラス層4の温度とが、互いに異なっていると考えられる。このため、第1部材2と第2部材3においては温度差が生じ、熱ひずみ△εが生じる。また、構造体1の使用温度と、構造体1の使用時のガラス層4の温度においても、温度差が生じている。生じている熱ひずみ△εを緩和するためには、構造体1の使用温度ではなく、構造体1の使用時のガラス層4の温度が、転移点T
gを超えるようにガラス部4aのガラス材を選定する必要がある。なお、一般的な構造体1においては、温度勾配はないか、あっても小さいので、構造体1の使用時のガラス層4の温度は、構造体1の使用温度と略等しいと考えることができる。また、第1部材2と第2部材3の接着面が平面でない場合にも、熱ひずみ△εが生じるので、その熱ひずみ△εを、ガラス層4によって緩和することができる。
【0030】
次に、構造体1の製造方法について説明する。まず、構造体1の使用温度に対して転移点T
gが低く、第1部材2と第2部材3の被接着材料に対して接着力の高いガラス材を選定する。
【0031】
次に、選定したガラス材(ガラス部4a)を製造する。ガラス材の製造では、まず、その所定の組成となるようにガラス原料を調合する。そして、調合したガラス原料を、混合して、溶融し、除冷もしくは放冷することで、ガラス材のかたまりが形成される。次に、このガラス材を粉砕して、ガラス材の粉末を作製する。
【0032】
次に、ガラス層4の見かけの熱膨張係数、熱伝導率、電気伝導率が、所定の値になるように、セラミックス粒子(セラミックスフィラー)4bや金属粒子(金属フィラー)4cの配合量を設計して計量する。ガラス材の粉末に、計量したセラミックス粒子4bと金属粒子4cを配合する。この配合物に有機物と混合して、ガラスペーストを作製する。
【0033】
次に、このガラスペーストを、第1部材2と第2部材3のどちらか一方、例えば、第2部材3の表面に塗布する。塗布の方法としては、スクリーン印刷法、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、スピンコーティング法等の方法を用いることができる。この塗布膜を乾燥させ、有機物を塗布膜から除去する。
【0034】
次に、塗布膜を焼成し、ガラス材の粉末を軟化点T
s以上に昇温し軟化させて一体化(バルク化)し、ガラス層4が完成する。また、この焼成により、ガラス層4は、ガラスペーストを塗布した第2部材3に接着する。
【0035】
次に、もう一方の被接着材料である第1部材2を形成する。この第1部材2の形成方法には、2通りの形成方法を用いることができる。
【0036】
まず、1つ目の形成方法は、第1部材2をガラス層4上に置いて、ガラス層4の厚さを考慮して押し付けた状態で、ガラス層4の温度を軟化点T
s以上の温度に上げて接着するものである。例えば、電子素子モジュール等の構造体1において、それぞれ別工程で作製した配線基板(基板)と電子素子(素子)を接着する場合に、この形成方法が用いられる。以上で、構造体1を完成させることができる。
【0037】
もう1つの形成方法は、ガラス層4上に成膜プロセスによって第1部材2を形成するものである。例えば、第1部材2として、コーティング層や回路層(配線層)を形成する場合に、成膜プロセスが用いられる。成膜プロセスとしては、スパッタリング法、蒸着法、電気めっき法、無電解めっき法、ペースト塗布・焼成による塗布法等の成膜プロセスを用いることができる。以上で、構造体1を完成させることができる。
【0038】
次に、複数の実施例によって、この構造体1が組み込まれた各種の製品について説明する。
【実施例1】
【0039】
図3に、本発明の実施例1に係る電子素子モジュール101の断面図を示す。実施例1では、構造体1が組み込まれた製品の例として、電子素子モジュール101を説明する。そして、
図3には、電子素子モジュール101の例として、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)モジュールを示している。電子素子モジュール101は、放熱基板31bと、積層基板(31a、21b、34、35)と、電子素子21aとを有している。放熱基板31bは、Cuや、Moや、Al-SiC複合材料等の材料で作製されている。放熱基板31bの上には、絶縁性の端子台51と52が固定されている。端子台51の上部には、主電極57が引き出され固定されている。端子台52の上部には、制御電極53が引き出され固定されている。主電極57は、配線基板35とリード線55とを介して、電子素子21aに接続している。制御電極53は、リード線54を介して、電子素子21aに接続している。電子素子21a等は、封止材56によって封止されている。電子素子21a(第1部材2)は、ガラス層41a(4)によって、配線基板31a(第2部材3)に接着している。これより、本発明の実施形態で説明した構造体1が、電子素子21a(第1部材2)とガラス層41a(4)と配線基板31a(第2部材3)の積層構造によって実現していると考えられる。電子素子21a(第1部材2)とガラス層41a(4)と配線基板31a(第2部材3)の積層構造は、電子素子モジュール101における小構造体11(構造体1)になっている。
【0040】
配線基板31aと35は、絶縁基板34の上に設けられている。絶縁基板34の下には配線基板21bが設けられている。これら配線基板31a、35と、絶縁基板34と、配線基板21bとで、3層の積層基板(31a、21b、34、35)が構成されている。配線基板21b(第1部材2)は、ガラス層41b(4)によって、放熱基板31b(第2部材3)に接着している。これより、本発明の実施形態で説明した構造体1が、配線基板21b(第1部材2)とガラス層41b(4)と放熱基板31b(第2部材3)の積層構造によって実現していると考えられる。配線基板21b(第1部材2)とガラス層41b(4)と放熱基板31b(第2部材3)の積層構造は、電子素子モジュール101における大構造体12(構造体1)になっている。配線基板21b(第1部材2)とガラス層41b(4)と放熱基板31b(第2部材3)の積層構造は、電子素子21aを支持し支持部材としても機能している。
【0041】
電子素子モジュール101では、電子素子21aや配線基板31a、21b、35の発熱により、使用温度が例えば略200℃程度となることから、小構造体11(構造体1)と大構造体12(構造体1)の使用温度も例えば略200℃程度になっていると考えられる。さらに、電子素子モジュール101の使用時のガラス層41a、41b(4)の温度も、例えば略200℃程度になっていると考えられる。そこで、ガラス層41a、41b(4)のガラス部4aのガラス材としては、転移点(ガラス転移点)T
gが使用温度の略200℃より低い略150℃程度になるV
2O
5−TeO
2−Ag
2O系ガラス材(表2のV
2O
5−TeO
2−Ag
2O系の欄を参照)を採用している。
【0042】
また、ガラス層41a、41b(4)には、Ag製の金属粒子4cと、セラミックス粒子4bを分散させている。これにより、ガラス層41a、41b(4)の見かけの熱伝導率を25W/mK以上に設定している。また、電気抵抗が0.1 mΩ/cm
2以下となるように、金属粒子4cの添加量による見かけの電気抵抗率と、ガラス層41a、41b(4)の厚さを、調整している。また、金属粒子4cとセラミックス粒子4bの添加量により、熱膨張係数を、電子素子21aと配線基板31aの間の値になり、かつ、配線基板21bと放熱基板31bの間の値になるように設定している。この結果、電子素子21aを作動させるのに必要な電気伝導性と放熱性を維持し、熱サイクルによる接着部の破壊を抑制することができる。
【0043】
なお、電子素子21aであれば、IGBTに限らず、使用時には必ず発熱する。そして、発熱する電子素子21aであれば、例えば、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ、トランジスタ、LSIチップにも、実施例1は適用でき、同様な効果を得ることができる。特に、高出力の発光ダイオードは、高出力化に伴う稼働時温度(使用温度)の上昇のため、発光ダイオード(電子素子21a)と基板の接着部において大きな熱ひずみが生じ、その接着部が疲労破壊しやすくなっていると考えられが、その接着部に、前記ガラス層41a(4)を用いることにより、接着部の破壊を抑制することができる。なお、発光ダイオード(電子素子21a)の熱膨張係数を考慮して、前記ガラス層41a(4)の見かけの熱膨張係数が、発光ダイオード(電子素子21a)と基板の熱膨張係数の間の値になるように、セラミックス粒子4bと金属粒子4cの添加量の微調整を行っている。
【実施例2】
【0044】
図4に、本発明の実施例2に係る熱交換器102の断面図を示す。実施例2では、構造体1が組み込まれた製品の例として、熱交換器102を説明する。そして、
図4には、熱交換器102の例として、多管円筒形の熱交換器を示している。熱交換器102は、両端に開口63と64を有する円筒形状の胴61を有している。また、胴61の側壁のも2つの開口65と66が形成されている。胴61の内部は、2枚の管板62によって両側から閉じられている。閉じられた胴61の内部には、複数本の伝熱管13が設けられている。伝熱管13は、一方の管板62からもう一方の管板62まで達し、それぞれの管板62を貫通している。
【0045】
熱交換器102では、燃焼ガスや、高温蒸気や、高温の液体等の高温の流体67が、開口63から流入する。流体67は、伝熱管13の内側を通過しながら、伝熱管13を加熱し、自らは放熱する。そして、流体67は開口64から流出する。一方、熱媒体となる水等の流体68が、開口65から流入する。流体68は、伝熱管13の外側を、かつ、胴61の内側を通過しながら、伝熱管13から熱を奪い、昇温する。そして、流体68は開口66から流出する。このように、熱交換器102によれば、温度が互いに異なる流体(第1流体)68と流体(第2流体)67を伝熱管13(構造体1)で隔てたまま流すことができる。そして、伝熱管13を介して、流体67の熱を流体68へ移動させることができる。そして、伝熱管13(構造体1)に、本発明の実施形態で説明した構造体1の構造が実現している。
【0046】
図5に、本発明の実施例2に係る熱交換器102に用いられる伝熱管13(構造体1)の断面斜視図を示す。伝熱管13(構造体1)は、筒形状の外管22(第1部材2)と、外管22(第1部材2)の内側に設けられる筒形状の内管32(第2部材3)と、外管22(第1部材2)の内壁と内管32(第2部材3)の外壁とを接着するガラス層42(4)とを有している。これより、本発明の実施形態で説明した構造体1が、外管22(第1部材2)とガラス層42(4)と内管32(第2部材3)の積層構造によって実現していると考えられる。この積層構造からなる伝熱管13(構造体1)は、本発明の実施形態で説明した構造体1を実現している。
【0047】
外管22(第1部材2)は、ガラス層42(4)に対して、熱媒体となる水等の流体(第1流体)68の側に配置されており、熱媒体となる水等の流体(第1流体)68に対する耐食性を有していればよい。
【0048】
一方、内管32(第2部材3)は、ガラス層42(4)に対して、燃焼ガスや、高温蒸気や、高温の液体等の高温かつ腐食性の高い流体(第2流体)67の側に配置されており、高耐食の合金管や、セラミックス管や、高耐食の合金もしくはセラミックスのコーティング層を、内管32(第2部材3)に用いる必要がある。
【0049】
熱交換器102の使用時には、伝熱管13(構造体1)では、内管32(第2部材3)から外管22(第1部材2)へ、熱を定常的に伝導しているので、伝熱管13(構造体1)には、温度勾配が生じていると考えられる。このため、流体(第1流体)68と流体(第2流体)67の温度等から、熱交換器102(伝熱管13、構造体1)の使用時のガラス層42(4)の温度を推定した。この使用時のガラス層42(4)の温度よりも、転移点T
g、の低いガラス材を、ガラス層42(4)のガラス部4aの材料に採用している。具体的には、燃焼ガス温度(流体(第2流体)67の温度)が、略500℃の場合は、使用時のガラス層42(4)の温度を、略500℃と推定した。そして、転移点(ガラス転移点)T
gが、その略500℃以下となる、例えば、
Na
2O−BaO−SiO
2系ガラス材や、
Al
2O
3−B
2O
3−SiO
2系ガラス材や、
Na
2O−Al
2O
3−B
2O
3−SiO
2系ガラス材や、
PbO−B
2O
3−Al
2O
3−SiO
2系ガラス材(表2の各該当欄を参照)からガラス材を選定している。
【0050】
また、伝熱管13に用いられるガラス層42(4)としては、熱を伝導しやすいように、熱伝導率が高いことが要求される。そこで、ガラス層42(4)には、金属粒子4cとセラミックス粒子4bを分散させ、熱伝導率が22W/mK以上になるように設定している。また、金属粒子4cとセラミックス粒子4bの添加量を調整して、ガラス層42(4)の見かけの熱膨張係数を、内管32(第2部材3)と外管22(第1部材2)の熱膨張係数の間の値に設定している。なお、内管32(第2部材3)と外管22(第1部材2)とが管形状である場合は、熱膨張によって、内管32(第2部材3)の外径は大きくなり、外管22(第1部材2)の内径は小さくなる場合がある。このとき、ガラス層42(4)はその体積が小さくなるように圧縮される。このような場合は、ガラス層42(4)の見かけの熱膨張係数を、内管32(第2部材3)と外管22(第1部材2)の熱膨張係数より小さくなるように設定してもよい。
【0051】
また、伝熱管13は次のように製造している。まず、内管32を基材として用意している。次に、内管32の外周面に、本発明の実施形態で説明したように作製したガラスペーストを、塗布している。次に、本発明の実施形態で説明したのと同様に、塗布膜を乾燥させ、塗布膜を焼成している。焼成では、選定したガラス材の軟化点T
s以上に昇温し、ガラス層42を形成している。ガラス層42は、その厚さが、設計された内管32と外管22の間隙に相当する厚さになるように形成している。
【0052】
次に、外管22の温度を上げて外管22を拡管した状態で、外管22に、ガラス層42付きの内管32を挿入している。挿入したまま、ガラス層42を、選定したガラス材の軟化点T
s以上の温度に昇温し、外管22にガラス層42を接着させている。最後に、ガラス層42(伝熱管13)を除冷し、外管22とガラス層42と内管32の3層構造の伝熱管13を完成させている。
【0053】
また、伝熱管13は次のように製造してもよい。まず、外管22を基材として用意した。次に、外管22の内周面に、本発明の実施形態で説明したように作製したガラスペーストを、塗布している。そして、前記と同様に、ガラス層42を形成している。次に、スパッタリング法、蒸着法、電気めっき法、無電解めっき法またはペースト塗布・焼成法等の成膜プロセスを用いることで、ガラス層42上に、耐食合金またはセラミックスのコーティング層を、内管32として形成している。以上により、外管22とガラス層42と内管32の3層構造の伝熱管13を完成させている。
【0054】
実施例2では、伝熱管13を3層構造としているが、従来の1層構造では、耐食性の高い金属材料で伝熱管13が作られている。しかし、金属材料では、耐食性に限界があり、定期的に検査しながら交換して運用されている。そこで、伝熱管13には、構造材として優れる金属材料と、耐食性に優れるセラミックス等の機能材料を、接着し、両方の特性を備えた構造体1が有用であると考えられる。また、実施例2の伝熱管13(構造体1)では、2つの材料を接着したことによる熱ひずみを緩和することができるので、接着面の剥離等を抑制することができる。
【0055】
実施例2では、伝熱管13を用いる多管円筒形の熱交換器102を例に説明したが、伝熱管13が中空板となったプレート式熱交換器でも、構造体1を適用できる。すなわち、中空板の内面側と外面側に第1部材2と第2部材3を使用し、それらをガラス層4で接着すればよい。また、実施例2では、熱交換器102について説明したが、熱を伝導する伝熱部材(伝熱管13)や高温の物を収納したり流したりする容器又は管を有する復水器等の装置や発電機等のプラントにも使用できる。
【実施例3】
【0056】
図6に、本発明の実施例3に係る燃料集合体103の一部を透視した斜視図を示す。また、
図7に、本発明の実施例3に係る燃料棒104の一部を透視した斜視図を示す。実施例3では、構造体1が組み込まれた製品の例として、原子炉に使用される燃料集合体103と、その燃料集合体103に組み込まれる燃料棒104を説明する。そして、
図6には、燃料集合体103の例として、軽水炉、特に、沸騰水型原子炉(BWR)に用いられる燃料集合体を示している。また、
図7には、燃料棒104の例として、軽水炉、特に、沸騰水型原子炉(BWR)に用いられる燃料棒を示している。なお、軽水炉の加圧水型原子炉(PWR)の燃料集合体と燃料棒も、構成は、沸騰水型原子炉(BWR)に似ており、構造体1が組み込まれる箇所も同じであるので、記載を省略する。
【0057】
図6に示すように、燃料集合体103は、複数本の燃料棒104と、燃料棒104の上端部を支持する上部タイプレート71と、燃料棒104の下端部を支持する下部タイプレート72と、複数本の燃料棒104の側面を覆うチャンネルボックス73とを有している。燃料集合体103には、複数本の燃料棒104が垂直方向に平行に並べられて収納されている。
【0058】
図7に示すように、燃料棒104は、管形状の被覆管14(構造体1)と、被覆管14の下端を封止し下部タイプレート72に係止する下部端栓78と、被覆管14の上端を封止し上部タイプレート71に係止する上部端栓77と、被覆管14内に封入される複数個のペレット74と、ペレット74を押圧するプレナムスプリング76とを有している。なお、プレナムスプリング76が配置されている閉空間はプレナム75と呼ばれ、被覆管14内の圧力を緩衝する機能を有している。
【0059】
原子炉(軽水炉)の運転(使用)時には、ペレット74が発熱し、高温になる。ペレット74は、被覆管14(構造体1)を加熱する。軽水炉では、被覆管14(燃料棒104)の周囲に水(軽水)の液体か気体(水蒸気)が存在している。沸騰水型原子炉(BWR)では、燃料棒104の周囲に、高圧・高温の水(液相)もしくは、水(液相)に水蒸気(気相)が混じった、いわゆる二相状態の高圧・高温の水(気液二相)が存在している。加圧水型原子炉(PWR)では、燃料棒104の周囲に、高圧・高温の水(液体)が存在している。すなわち、被覆管14が、その周囲の水を加熱し、高圧・高温にしている。原子炉では、この高圧・高温の水を用いてタービンを回し発電している。なお、被覆管14の長さは略4mであり、直径は略10mmであり、管壁の厚さは略1mmである。
【0060】
図8に、本発明の実施例3に係る燃料棒104に用いられる被覆管14(構造体1)の断面斜視図を示す。被覆管14(構造体1)は、筒形状の外管23(セラミックス製管、第1部材2)と、外管23の内側に設けられる筒形状の内管33(金属製管、第2部材3)と、外管23の内壁と内管33の外壁とを接着するガラス層43(4)と、外管23の外側に設けられβ−SiC等からなる耐環境遮断コーティング層79とを有している。これより、本発明の実施形態で説明した構造体1が、外管23(第1部材2)とガラス層43(4)と内管33(第2部材3)の積層構造によって実現していると考えられる。この積層構造からなる被覆管14(構造体1)は、本発明の実施形態で説明した構造体1を実現している。外管23は、SiC/SiC複合材料等を用いたセラミックス製管からなっている。内管33は、金属製管もしくは金属層からなっている。
【0061】
原子炉(軽水炉)の運転(使用)時、すなわち、被覆管14(構造体1)の使用時には、被覆管14(構造体1)では、内管33から外管23へ、熱を定常的に伝導しているので、被覆管14には、温度勾配が生じていると考えられる。このため、燃料棒104の温度とその周囲の水の温度等から、被覆管14(構造体1)の使用時のガラス層43(4)の温度を推定した。この使用時のガラス層43(4)の温度よりも、転移点T
g、の低いガラス材を、ガラス層43(4)のガラス部4aの材料に採用している。具体的には、燃料棒104の使用温度は290〜350℃の範囲内であることから、使用時のガラス層43(4)の温度を、290〜350℃の範囲内であると推定した。そして、転移点(ガラス転移点)T
gが、その範囲以下になり得る
V
2O
5−P
2O
5−BaO−TeO
2−Fe
2O
3−WO
3系ガラス材や、
V
2O
5−P
2O
5−BaO−TeO
2−Fe
2O
3−WO
3−K
2O系ガラス材や、
V
2O
5−P
2O
5−TeO
2−Fe
2O
3系ガラス材(表2の各該当欄を参照)からガラス材を選定した。
【0062】
また、被覆管14に用いられるガラス層43(4)としては、熱を伝導しやすいように、熱伝導率が高いことが要求される。そこで、ガラス層43(4)には、Ag、Cuといった金属粒子4cとセラミックス粒子4bを分散させ、熱伝導率が10W/mK以上になるように設定している。また、金属粒子4cとセラミックス粒子4bの添加量を調整して、ガラス層42(4)の見かけの熱膨張係数を、内管33(第2部材3)と外管23(第1部材2)の熱膨張係数の間の値に設定している。なお、内管32(第2部材3)と外管22(第1部材2)とが管形状である場合は、熱膨張によって、内管33(第2部材3)の外径は大きくなり、外管23(第1部材2)の内径は小さくなる場合がある。このとき、ガラス層43(4)はその体積が小さくなるように圧縮される。このような場合は、ガラス層43(4)の見かけの熱膨張係数を、内管33(第2部材3)と外管23(第1部材2)の熱膨張係数より小さくなるように設定してもよい。
【0063】
また、被覆管14は次のように製造している。まず、外管23を基材として用意している。次に、外管23の内周面に、本発明の実施形態で説明したように作製したガラスペーストを、塗布している。次に、本発明の実施形態で説明したのと同様に、塗布膜を乾燥させ、塗布膜を焼成している。焼成では、選定したガラス材の軟化点T
s以上に昇温し、ガラス層43を形成している。ガラス層43の厚さは、10〜100μmであり、外管23と内管33の熱膨張差を考慮して設定している。ガラス層43の厚さは、外管23に対して内管33の熱膨張係数が大きい場合、温度が高くなるとそれらの間隙が小さくなることから、ガラス層43の厚さはその収縮分を考慮した厚さに設定される。また、添加するセラミックス粒子4bおよび金属粒子4cの寸法がその収縮の障害にならないように設定している。
【0064】
次に、外管23の温度を上げて外管23を拡管した状態で、ガラス層43付きの外管23に、内管33を挿入している。挿入したまま、ガラス層43を、選定したガラス材の軟化点T
s以上の温度に昇温し、内管33の外周面にガラス層43を接着させた。最後に、ガラス層43(被覆管14)を除冷し、外管23とガラス層43と内管33の3層構造の被覆管14を完成させている。なお、内管33として、Cu、Ni、Zr等からなる、もしくは、それらの少なくとも一つを含んだ合金からなる金属層を、ガラス層43上に蒸着法やめっき法といった成膜プロセスを用いて形成してもよい。この場合、金属層の厚さは、30〜200μmとしている。
【0065】
実施例3では、被覆管14を3層構造としているが、従来の1層構造では、耐食性の高いZr合金製の被覆管14が作られている。しかし、Zr合金材料では、耐食性に限界があり、定期的に検査しながら交換して運用される。そこで、被覆管14には、構造材として優れる金属材料と、耐食性に優れるセラミックス等の機能材料を、接着し、両方の特性を備えた構造体1が有用であると考えられる。また、実施例3の被覆管14(構造体1)では、2つの材料を接着したことによる熱ひずみを緩和することができるので、停止時と運転時の温度差による熱ひずみに起因する接着面の剥離等を抑制することができる。
【0066】
なお、本発明は、前記した実施形態と実施例1〜3に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態と実施例1〜3は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態(実施例)の構成の一部を他の実施形態(実施例)の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施形態(実施例)の構成に他の実施形態(実施例)の構成を加えることも可能である。また、各実施形態(実施例)の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】