特許第5837266号(P5837266)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5837266全固体電池を用いた揮発性メモリ用バックアップシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5837266
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】全固体電池を用いた揮発性メモリ用バックアップシステム
(51)【国際特許分類】
   G06F 12/16 20060101AFI20151203BHJP
【FI】
   G06F12/16 340Q
【請求項の数】34
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2015-534865(P2015-534865)
(86)(22)【出願日】2015年4月8日
(86)【国際出願番号】JP2015061028
【審査請求日】2015年7月31日
(31)【優先権主張番号】61/989,591
(32)【優先日】2014年5月7日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/025,563
(32)【優先日】2014年7月17日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/048,941
(32)【優先日】2014年9月11日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/081,688
(32)【優先日】2014年11月19日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113365
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 雅晴
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【弁理士】
【氏名又は名称】加島 広基
(72)【発明者】
【氏名】大和田 巌
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 賢信
【審査官】 滝谷 亮一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/093356(WO,A1)
【文献】 特開平11−237934(JP,A)
【文献】 特開2009−86908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 12/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全固体電池を用いた揮発性メモリ用バックアップシステムであって、
揮発性メモリと、
前記揮発性メモリと互いにデータ伝送可能に接続された不揮発性メモリと、
前記揮発性メモリ及び前記不揮発性メモリと接続され、電源異常時に前記揮発性メモリに電流を継続的又は間欠的に供給して前記揮発性メモリ中のデータを保持可能とする全固体電池と、
前記全固体電池と並列に接続され、電源異常時にピーク電流を前記揮発性メモリに間欠的に供給可能な制御手段であって、前記ピーク電流を介して、又は前記ピーク電流及びそれに付随して一時的に増大される前記全固体電池からの電流を介して、前記揮発性メモリ中のデータを分割された量ごとに前記不揮発性メモリに間欠的に転送して前記不揮発性メモリに保存させ、それにより前記揮発性メモリ中のデータを前記不揮発性メモリに徐々に蓄積させる制御手段と、
を備えた、揮発性メモリ用バックアップシステム。
【請求項2】
前記揮発性メモリがDRAMであり、前記不揮発性メモリがフラッシュメモリである、請求項1に記載の揮発性メモリ用バックアップシステム。
【請求項3】
前記制御手段が、前記バックアップシステムが接続される回路、部品及び/又は装置の寄生容量を用いて前記ピーク電流を供給する、請求項1又は2に記載の揮発性メモリ用バックアップシステム。
【請求項4】
前記制御手段がバイパスコンデンサを備えてなり、該バイパスコンデンサから前記ピーク電流が供給される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の揮発性メモリ用バックアップシステム。
【請求項5】
前記ピーク電流及びそれに付随して一時的に増大される前記全固体電池からの電流の総和が一定周期で減衰し、それにより前記揮発性メモリ中のデータの前記不揮発性メモリへの転送が間欠的に休止され、その間、前記揮発性メモリが前記全固体電池から供給される電流を用いて省電力モードで作動する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の揮発性メモリ用バックアップシステム。
【請求項6】
前記揮発性メモリ及び前記不揮発性メモリが少なくとも1枚の基板に実装されてなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の揮発性メモリ用バックアップシステム。
【請求項7】
前記全固体電池が前記基板上又はその近傍に配置される、請求項6に記載の揮発性メモリ用バックアップシステム。
【請求項8】
前記全固体電池が前記揮発性メモリ及び前記不揮発性メモリの近傍に配置される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の揮発性メモリ用バックアップシステム。
【請求項9】
コンピュータ、ラップトップ・コンピュータ、可搬式コンピュータ、ポケットコンピュータ、ワークステーション、スーパーコンピュータ、コンピュータ周辺ハードウェア、及びサーバからなる群から選択される少なくとも一つの装置内に設けられる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の揮発性メモリ用バックアップシステム。
【請求項10】
前記全固体電池が、
一定の方向に配向された複数のリチウム遷移金属酸化物粒子からなる配向多結晶体である正極活物質を有する正極層と、
リチウムイオン伝導材料で構成される固体電解質層と、
負極活物質を有する負極層と、
を備えてなる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の揮発性メモリ用バックアップシステム。
【請求項11】
前記全固体電池は、700Wh/L以上のエネルギー密度を有し、厚みが5mm以下であり、縦及び横の寸法がそれぞれ100mm以下である、請求項10に記載の揮発性メモリ用バックアップシステム。
【請求項12】
前記全固体電池は、600Wh/L以上のエネルギー密度を有し、厚みが2mm以下であり、縦及び横のサイズがそれぞれ50mm以下である、請求項10の揮発性メモリ用バックアップシステム。
【請求項13】
前記全固体電池は、500Wh/L以上のエネルギー密度を有し、厚みが1mm以下であり、縦及び横がそれぞれ50mm以下である、請求項10に記載の揮発性メモリ用バックアップシステム。
【請求項14】
前記全固体電池は、250Wh/L以上のエネルギー密度を有し、厚みが0.5mm以下であり、縦及び横がそれぞれ50mm以下である、請求項10に記載の揮発性メモリ用バックアップシステム。
【請求項15】
前記全固体電池は、100Wh/L以上のエネルギー密度を有し、厚みが0.3mm以下であり、縦及び横がそれぞれ50mm以下である、請求項10に記載の揮発性メモリ用バックアップシステム。
【請求項16】
前記全固体電池は、100〜1,000Wh/Lのエネルギー密度を有し、厚みが0.1〜10mmであり、縦及び横がそれぞれ5〜100mmである、請求項10に記載の揮発性メモリ用バックアップシステム。
【請求項17】
前記全固体電池は、250〜700Wh/Lのエネルギー密度を有し、厚みが0.3〜5mmであり、縦及び横がそれぞれ10〜50mmである、請求項10に記載の揮発性メモリ用バックアップシステム。
【請求項18】
前記正極活物質を構成する前記配向多結晶体が5μm以上の厚さを有する、請求項10〜15のいずれか一項に記載の揮発性メモリ用バックアップシステム。
【請求項19】
前記正極活物質を構成する前記配向多結晶体が10μm以上の厚さを有する、請求項10〜15のいずれか一項に記載の揮発性メモリ用バックアップシステム。
【請求項20】
前記正極活物質を構成する前記配向多結晶体が25μm以上の厚さを有する、請求項10〜15のいずれか一項に記載の揮発性メモリ用バックアップシステム。
【請求項21】
前記一定の方向がリチウムイオンの伝導方向である、請求項10〜20のいずれか一項に記載の揮発性メモリ用バックアップシステム。
【請求項22】
前記一定の方向が前記正極層から前記負極層に向かう方向である、請求項21に記載の揮発性メモリ用バックアップシステム。
【請求項23】
前記正極活物質は、各前記粒子の特定の結晶面が前記正極層から前記負極層に向かう方向に配向されている、請求項10〜22のいずれか一項に記載の揮発性メモリ用バックアップシステム。
【請求項24】
前記正極活物質に含まれる前記粒子が、層状岩塩構造又はスピネル構造を有する、請求項10〜23のいずれか一項に記載の揮発性メモリ用バックアップシステム。
【請求項25】
前記正極活物質に含まれる前記粒子が、層状岩塩構造を有する、請求項10〜24のいずれか一項に記載の揮発性メモリ用バックアップシステム。
【請求項26】
前記正極活物質に含まれる前記粒子が、LiM1O又はLi(M1,M2)O(式中、0.5<x<1.10、M1はNi,Mn及びCoからなる群から選択される少なくとも一種の遷移金属元素、M2はMg,Al,Si,Ca,Ti,V,Cr,Fe,Cu,Zn,Ga,Ge,Sr,Y,Zr,Nb,Mo,Ag,Sn,Sb,Te,Ba及びBiからなる群から選択される少なくとも一種の元素である)で表される組成を有する、請求項10〜25のいずれか一項に記載の揮発性メモリ用バックアップシステム。
【請求項27】
前記組成がLi(M1,M2)Oで表され、M1がNi及びCoであり、M2はMg,Al及びZrからなる群から選択される少なくとも一種である、請求項26に記載の揮発性メモリ用バックアップシステム。
【請求項28】
前記組成がLiM1Oで表され、M1がNi,Mn及びCoであるか、又はM1がCoである、請求項26に記載の揮発性メモリ用バックアップシステム。
【請求項29】
前記正極活物質に含まれる前記粒子が、Li(Ni,Co,Al)O(式中、0.9≦p≦1.3、0.6<x<0.9、0.1<y≦0.3、0≦z≦0.2、x+y+z=1)で表される組成の層状岩塩構造を有し、前記特定の結晶面が(003)面である、請求項23に記載の揮発性メモリ用バックアップシステム。
【請求項30】
前記固体電解質層を構成する前記リチウムイオン伝導材料が、ガーネット系セラミックス材料、窒化物系セラミックス材料、ペロブスカイト系セラミックス材料、リン酸系セラミックス材料、硫化物系セラミックス材料、又は高分子系材料で構成されている、請求項10〜29のいずれか一項に記載の揮発性メモリ用バックアップシステム。
【請求項31】
前記固体電解質層を構成する前記リチウムイオン伝導材料が、ガーネット系セラミックス材料であり、該ガーネット系セラミックス材料が、少なくともLi、La、Zr及びOを含んで構成されるガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造を有する、請求項30に記載の揮発性メモリ用バックアップシステム。
【請求項32】
前記ガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造がNb及び/又はTaをさらに含んで構成される、請求項31に記載の揮発性メモリ用バックアップシステム。
【請求項33】
前記ガーネット系セラミックス材料がAlをさらに含む、請求項31又は32に記載の揮発性メモリ用バックアップシステム。
【請求項34】
前記正極層が、前記正極活物質と、該正極活物質の前記固体電解質層と反対側の端面に形成された正極集電体とを備え、且つ、前記負極層が、前記負極活物質と、該負極活物質の前記固体電解質層と反対側の端面に形成された負極集電体とを備えた、請求項10〜33のいずれか一項に記載の揮発性メモリ用バックアップシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体電池を用いた揮発性メモリ用バックアップシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータやサーバのメインメモリにはDRAM等の揮発性メモリが使用されている。特にDRAMは処理速度が極めて速いため、コンピュータやサーバに近年多用されている。その一方、DRAM等の揮発性メモリは電力供給が途切れると記憶データが失われるとの特性を有するため、基幹システム用のサーバ等には停電や瞬時電圧低下等の電源異常(power failure)に備えて無停電電源装置(UPS)や発電装置(例えばディーゼル発電機)が併設されるのが一般的である。こうした措置を講じておくことで、電源異常時におけるシステム復旧を滞りなく行うことができる。しかしながら、これらの装置はサーバ等の装置全体への電力供給を前提として構成されているため、大掛かりな装置であり、サーバ等の装置と別個の装置として並置されるのが一般的である。また、DRAM用のデータストレージとしてハードディスクを利用されることもあるが、電源復旧時にデータをDRAMに戻すのに長時間(例えば数時間)を要してしまう。
【0003】
これに対して、より小型のバックアップ電源であるスーパーキャパシタを備えたDRAMが市販されている。このスーパーキャパシタ付きDRAMの製品例としては、Viking Technology社のArxCis−NVTMやMicron社のNVDIMMが挙げられる。このようなスーパーキャパシタ付きDRAMは、停電や瞬時電圧低下等の電源異常時にスーパーキャパシタから一時的に供給される電力を利用してDRAMの記憶データを不揮発性メモリ(例えばNAND型フラッシュメモリ)に伝送する機能を有するため、キャパシタからの電力供給が途絶えた後も記憶データを不揮発性メモリ内に保持することができる。そして、電源異常が終了して電力供給が再開された際には、不揮発性メモリ内の記憶データをDRAMに戻すことで、速やかなシステム復旧が可能となる。しかしながら、スーパーキャパシタは(小型とはいえども)それなりには大きいためメモリモジュールに実装することはできず、また、耐熱性にも劣る。また、たとえ1分以内の電源停止であってもDRAM中のデータが消失してしまうため、電源復旧時にはフラッシュメモリからDRAMへデータを戻す時間(例えば数十秒)が必要となってしまう。
【0004】
この点、DRAMとバッテリーを組み合わせたバッテリーバックアップDRAMも提案されている。このバッテリーバックアップDRAMにおいては、電源停止後、(1)DRAMがデータの保持に特化した省電力モード(例えばセルフリフレッシュモード)に切り換わるとともに、(2)DRAM中のデータを保持するための非常用電源(例えばリチウム二次電池)が作動することで、DRAM中のデータを一定時間保持することができる。しかしながら、バッテリーの耐熱温度とエネルギー密度が低いため、メモリモジュールへの実装は難しく、また、バックアップ可能時間を超える電源停止の場合、DRAMのデータが消失するとの問題がある。
【0005】
ところで、近年、パーソナルコンピュータ、携帯電話等のポータブル機器の開発に伴い、その電源としての電池の需要が大幅に拡大している。このような用途に用いられる電池においては、イオンを移動させる媒体として、希釈溶媒に可燃性の有機溶媒を用いた有機溶媒等の液体の電解質(電解液)が従来使用されている。このような電解液を用いた電池においては、電解液の漏液や、発火、爆発等の問題を生ずる可能性がある。このような問題を解消すべく、本質的な安全性確保のために、液体の電解質に代えて固体電解質を使用するとともに、その他の要素の全てを固体で構成した全固体電池の開発が進められている。このような全固体電池は、電解質が固体であることから、発火の心配が少なく、漏液せず、また、腐食による電池性能の劣化等の問題も生じ難い。また、最近では、電池の用途が拡大されることによって、より大容量で小型の電池が要求されてきている。例えば、正極を厚くして容量の向上を試みた全固体電池が挙げられる。特許文献1(米国特許第8431264号明細書)及び特許文献2(特表2009−516359号公報)には、厚さが約4μmより大きく約200μm未満の正極と、厚さ約10μm未満の固体電解質と、厚さ約30μm未満の負極とを有する全固体電池が開示されている。これらの文献に開示される正極は、無配向の正極活物質を用いたものと見受けられる。
【0006】
一方、リチウム複合酸化物の配向焼結体板が提案されている。例えば、特許文献3(特開2012−009193号公報)及び特許文献4(特開2012−009194号公報)には、層状岩塩構造を有し、X線回折における、(104)面による回折強度に対する(003)面による回折強度の比率[003]/[104]が2以下である、リチウム複合酸化物焼結体板が開示されている。また、特許文献5(特許第4745463号公報)には、一般式:Li(Ni,Co,Al)O(式中、0.9≦p≦1.3、0.6<x≦0.9、0.1<y≦0.3、0≦z≦0.2、x+y+z=1)で表され、層状岩塩構造を有する板状粒子が開示されており、(003)面が粒子の板面と交差するように配向されることが記載されている。
【0007】
また、リチウムイオン伝導性を有する固体電解質として、LiLaZr12(以下、LLZという)系の組成を有するガーネット型のセラミックス材料が注目されている。例えば、特許文献6(特開2011−051800号公報)には、LLZの基本元素であるLi,La及びZrに加えてAlを加えることで、緻密性やリチウムイオン伝導率を向上できることが開示されている。特許文献7(特開2011−073962号公報)には、LLZの基本元素であるLi、La及びZrに加えてNb及び/又はTaを加えることで、リチウムイオン伝導率を更に向上できることが開示されている。特許文献8(特開2011−073963号公報)には、Li、La、Zr及びAlを含み、Laに対するLiのモル比を2.0〜2.5とすることで、緻密性を更に向上できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第8431264号明細書
【特許文献2】特表2009−516359号公報
【特許文献3】特開2012−009193号公報
【特許文献4】特開2012−009194号公報
【特許文献5】特許第4745463号公報
【特許文献6】特開2011−051800号公報
【特許文献7】特開2011−073962号公報
【特許文献8】特開2011−073963号公報
【発明の概要】
【0009】
上述したような揮発性メモリ用バックアップ電源として全固体電池を使用しようとした場合、電源異常時にデータ保全を行うべくできるだけ長時間にわたって電力を供給可能であること、それ故、高い容量及び高いエネルギー密度を有することが全固体電池に要求される。この点、本発明者らは、全固体電池において、容量及びエネルギー密度の高い電池性能が得られること、そしてそれらの特性をコンピュータやサーバ等の装置における揮発性メモリ用バックアップ電源の用途において最大限に活かせるとの知見を得ている。その上、本発明者らは、電源異常時に揮発性メモリ中のデータをできるだけ長く保持して電源復旧時における瞬時のデータ復帰を可能とする一方で、電源復旧の予想外の遅延による全固体電池の電池切れに備えて不揮発性メモリにデータを間欠的かつ累積的にコピーしてデータ消失リスクの回避又は最小化を可能とする手法を今般見出した。
【0010】
したがって、本発明の目的は、電源異常時に揮発性メモリ中のデータをできるだけ長く保持して電源復旧時における瞬時のデータ復帰を可能とする一方で、電源復旧の予想外の遅延による全固体電池の電池切れに備えて不揮発性メモリにデータを間欠的かつ累積的にコピーしてデータ消失リスクの回避又は最小化を可能とすることにある。
【0011】
本発明の一態様によれば、全固体電池を用いた揮発性メモリ用バックアップシステムであって、
揮発性メモリと、
前記揮発性メモリと互いにデータ伝送可能に接続された不揮発性メモリと、
前記揮発性メモリ及び前記不揮発性メモリと接続され、電源異常時に前記揮発性メモリに電流を継続的又は間欠的に供給して前記揮発性メモリ中のデータを保持可能とする全固体電池と、
前記全固体電池と並列に接続され、電源異常時にピーク電流を前記揮発性メモリに間欠的に供給可能な制御手段であって、前記ピーク電流を介して、又は前記ピーク電流及びそれに付随して一時的に増大される前記全固体電池からの電流を介して、前記揮発性メモリ中のデータを分割された量ごとに前記不揮発性メモリに間欠的に転送して前記不揮発性メモリに保存させ、それにより前記揮発性メモリ中のデータを前記不揮発性メモリに徐々に蓄積させる制御手段と、
を備えた、揮発性メモリ用バックアップシステムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】各種バックアップ電源における4GB容量メモリモジュールのバックアップ電源出力波形例を示す図である。縦軸は電流を、横軸は時間を示す。(a)はNVDIMMのスーパーキャパシタをバックアップ電源として用いた従来例であり、(b)はバッテリーバックアップDRAMのバッテリーをバックアップ電源として用いた参考例である。(c)は全固体電池とバイパスコンデンサを組み合わせたハイブリッド型バックアップ電源を用いた本発明例である。図中「A」はDRAMからフラッシュメモリにデータをコピーしている状態を示し、「B」はDRAMがセルフリフレッシュモードにてデータを保持している状態を示し、「C」はDRAM中のデータが消失している状態を示す。
図2】本発明に使用可能な全固体電池の一例を示す模式断面図である。
図3】例B1のバックアップシステムにおけるバックアップ電源出力波形である。
図4】例B2のバックアップシステムにおけるバックアップ電源出力波形である。
図5】例C3のバックアップシステムにおける等価回路図である。
図6】例C3のバックアップシステムにおけるバックアップ電源出力波形である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
揮発性メモリ用バックアップシステム
本発明は、全固体電池を用いた揮発性メモリ用バックアップシステムに関する。このバックアップシステムは、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、全固体電池、及び制御手段を備えてなる。揮発性メモリ及び不揮発性メモリは互いにデータ伝送可能に接続されてなる。全固体電池は、揮発性メモリ及び不揮発性メモリと接続され、電源異常時に揮発性メモリに電流を継続的又は間欠的に供給して揮発性メモリ中のデータを保持可能とする。制御手段は、全固体電池と並列に接続され、電源異常時にピーク電流を揮発性メモリに間欠的に供給可能な手段である。この制御手段は、ピーク電流を介して、又はピーク電流及びそれに付随して一時的に増大される全固体電池からの電流を介して、揮発性メモリ中のデータを分割された量ごとに不揮発性メモリに間欠的に転送して不揮発性メモリに保存させ、それにより揮発性メモリ中のデータを不揮発性メモリに徐々に蓄積させる。かかる構成によれば、電源異常時に揮発性メモリ中のデータをできるだけ長く保持して電源復旧時における瞬時のデータ復帰を可能とする一方で、電源復旧の想定外の遅延による全固体電池の出力低下に備えて不揮発性メモリにデータを間欠的かつ累積的にコピーしてデータ消失のリスクを回避又は最小化することができる。なお、揮発性メモリは典型的にはDRAMであり、それ故DRAMを例にとり以下の説明を行うが、その他の揮発性メモリであってもよいのは言うまでもない。また、不揮発性メモリは典型的にはフラッシュメモリ(例えばNAND型フラッシュメモリ)であり、それ故フラッシュメモリを例にとり以下の説明を行うが、その他の不揮発性メモリであってもよいのはいうまでもない。
【0014】
この一連の動作を説明するために、全固体電池と制御手段としてのバイパスコンデンサとを組み合わせた本発明によるハイブリッド型バックアップシステムの電源出力波形例を図1(c)に示す。理解の容易化のため、図1には、前述したNVDIMMのスーパーキャパシタをバックアップ電源として用いた電源出力波形例(a)と、前述したバッテリーバックアップDRAMのバッテリーをバックアップ電源として用いた電源出力波形例(b)も併せて示してある。なお、図1に示される電源出力波形例はいずれも4GB容量メモリモジュールを想定したものであり、縦軸が電流値に対応し、横軸が時間に対応する。図1に示される電流値、時間、波形等の諸条件はいずれも本発明を説明する便宜上例示的に記したものであって、本発明はこれらの諸条件に限定されるべきでないことは言うまでもない。図1(c)に例示される本発明のバックアップシステムの利点は、図1(a)及び(b)に示されるバックアップシステムの電源出力波形と対比することでより良く理解される。したがって、図1に示される電源出力波形を(a)、(b)及び(c)の順に以下に説明するものとする。
【0015】
先ず、図1(a)に示されるNVDIMMのスーパーキャパシタをバックアップ電源として用いた従来例においては、図中「A」と表示される時間内にDRAM中のデータが一度にフラッシュメモリにコピーされる。具体的には、電源停止の発生(これを時間の起算点(0秒)とする)と同時にスーパーキャパシタからピーク電流(図1では7A)が供給されて所定時間内(図1(a)では0〜30秒)に揮発性メモリであるDRAMから不揮発性メモリであるフラッシュメモリにデータが一挙にコピーされる。そして、この所定時間の経過後、DRAM中のデータは消失する(図中「C」を参照)。このデータのコピーが行われる時間は、NVDIMMの電圧がフラッシュメモリにデータ伝送可能な閾値(例えば3.3V)以上の電圧を維持できる時間であり、それを下回るまでにDRAM中の全データのフラッシュメモリへのコピーを完了することが望まれる(そうでない場合にはフラッシュメモリにコピーされなかったDRAM中のデータが消失してしまう)。したがって、大量のデータを一挙にフラッシュメモリにコピーするのに十分な高いピーク電流を供給できるように、容量の大きいスーパーキャパシタが用いられる。しかしながら、前述したように、スーパーキャパシタはそれなりに大きいが故にメモリモジュールに実装することができず、また、耐熱性にも劣る。また、たとえ1分以内の電源停止であってもDRAM中のデータが消失してしまうため、電源復旧時にはフラッシュメモリからDRAMへデータを戻す時間(例えば数十秒)が必要となってしまう。
【0016】
次に、図1(b)に示されるバッテリーバックアップDRAMのバッテリーをバックアップ電源として用いた参考例においては、図中「B」と表示される比較的長い時間内においてDRAM中のデータがそのまま保持される。これは、DRAMがデータの保持に特化した省電力モード(例えばセルフリフレッシュモード)で作動することで、DRAM中のデータの延命が図られるためである。すなわち、バッテリーはDRAM中のデータの延命を図るのに最低限な必要となる低めの電流(例えば11mA)を供給することで、バッテリー切れを遅延させ、その間の電源復旧を待つことになる。しかしながら、耐熱温度とエネルギー密度が低い従来型バッテリーを用いた場合には、メモリモジュールへの実装は難しく、また、バックアップ可能時間を超える電源停止の場合、DRAMのデータが消失するとの問題がある。
【0017】
これに対し、本発明の一態様によるバックアップシステムは、図1(c)に示されるように、全固体電池と制御手段(図示例はバイパスコンデンサを備えてなる)とを組み合わせたハイブリッド型電源を用いたものである。このハイブリッド型電源は、電源停止後、バイパスコンデンサを備えた制御手段によって、間欠的に(すなわち一定周期で)ピーク電流を供給する。このバイパスコンデンサからのピーク電流は図1(a)の場合と同様にDRAMからフラッシュメモリにデータ伝送可能な閾値(例えば3.3V)以上の電圧を与えることを可能とするものであるが、DRAM中のデータをn回(nは2以上の整数であり、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは100以上)に分割してフラッシュメモリにコピーすべく、ピーク電流値を図1(a)のスーパーキャパシタによるピーク電流の1/n(図1では7/n(A))と格段に低く設定することができる。より詳しくは、DRAMからフラッシュメモリにデータをコピーする所要時間を、データのコピーの対象となるDRAMセルの静電容量C、DRAMメモリセルに直列に接続されたフラッシュメモリを含む抵抗成分RからなるCR直列回路の時定数τで表すと、τ=CRと仮定することができる。ここで、τがメモリの仕様で一定に定まるところ、C(DRAMの容量)をn分割すると、Rをn倍することができ、その結果、ピーク電流を1/n倍にすることができる。そして、制御手段(図示例ではバイパスコンデンサを備えてなる)は全固体電池と並列に接続されているため、制御手段からピーク電流の発生に伴い、全固体電池はその固有の電気化学的性質に従い若干のタイムラグを伴って一時的に増大した電流をDRAMに供給する。これはピーク電流の発生に伴い制御手段(特にバイパスコンデンサ)で失われた電荷を補うように全固体電池が機能することで、全固体電池による電流の増大がピーク電流の発生に追随する形で一時的に引き起こされることによるものである。つまり、制御手段が与えるピーク電流が契機となって全固体電池から供給される電流が一時的に増大することで、図中「A」と表示されるDRAM中のデータを分割された量(すなわち1/nの量)ごとにフラッシュメモリにコピーするための時間を十分に確保することができる。換言すれば、制御手段から供給されるピーク電流は瞬時に供給される比較的高い電流であるが故にすぐに減衰してしまうところ、その減衰を補うべく別の比較的高い電流が全固体電池から若干遅れて供給されることになり、図中「A」と表示される時間を図1(a)のようなキャパシタ単独の場合と比べて格段に長くすることができる。こうして、ピーク電流及びそれに付随して一時的に増大される全固体電池からの電流を介して、揮発性メモリ中のデータを分割された量ごとに不揮発性メモリに間欠的に転送して不揮発性メモリに保存させ、それにより揮発性メモリ中のデータを不揮発性メモリに徐々に蓄積させることができる。そして、この動作が揮発性メモリ中の全データの不揮発性メモリへのコピーが完了するまで繰り返される。
【0018】
このとき、図1(c)にて「B」と表示されるように、ピーク電流及びそれに付随して一時的に増大される全固体電池からの電流の総和が一定周期で減衰し、それにより揮発性メモリ中のデータの不揮発性メモリへの転送が間欠的に休止され、その間、揮発性メモリが全固体電池から供給される電流を用いて省電力モードで作動するのが好ましい。そのような省電力モードの典型例としては、DRAMにおける記憶データ保持のためのセルフリフレッシュモード(最小電力でデータの維持のみを行うモード)が挙げられる。こうすることで、全固体電池の電力消費を最小限に抑えつつ、DRAM等の揮発性メモリ中のデータをできるだけ長く保持する(すなわち延命する)ことができる。なお、揮発性メモリ中の全データのコピーが完了した後においても、図1(c)にて「B」と表示されるように、全固体電池からの揮発性メモリへの電流の供給は電源復旧又は電池切れまで継続され、その間、揮発性メモリ中のデータも省電力モードで保持されるのが好ましい。いずれにしても、図1(c)にて「B」と表示される省電力モードにおいては、電源状態を適宜モニターさせておくことで、電源復旧時に不揮発性メモリによるバックアップデータを用いることなく、揮発性メモリ中のデータのみで瞬時にシステム復旧させることができる。
【0019】
このように、全固体電池を用いた揮発性メモリ用バックアップシステムによれば、電源異常時に揮発性メモリ中のデータをできるだけ長く保持して電源復旧時における瞬時のデータ復帰を可能とする一方で、電源復旧の予想外の遅延による全固体電池の電池切れに備えて不揮発性メモリにデータを間欠的かつ累積的にコピーしてデータ消失リスクの回避又は最小化を可能とする。したがって、無停電電源装置(UPS)や発電装置の障害に左右されることなく、重要性の高いデータを揮発性メモリ及び/又は不揮発性メモリで確実に保全することができる。また、不揮発性メモリから揮発性メモリにデータを戻す必要が生じた際であっても、メモリ間でのデータの迅速な伝送によりシステム復旧を秒単位で行うことが可能となり、その結果、長時間(例えば数時間)を要するハードディスクからのデータ復旧が不要となる。しかも、コンピュータ等の装置全体に対してではなく、構成部品である揮発性メモリ(例えばDRAM)及び不揮発性メモリにのみ電力供給すれば足りるため、必要最小限の電力でデータの保全を行うことが可能である。したがって、場合によっては、大掛かりな装置である無停電電源装置(UPS)や発電装置を不要にすることすら可能となる。なお、必要とされる電力供給時間に合わせて複数個の全固体電池を設けてよいことはいうまでもない。
【0020】
上述したとおり、制御手段はバイパスコンデンサを備えてなり、このバイパスコンデンサからピーク電流が供給されるように構成されるのが好ましい。バイパスコンデンサは、全固体電池と比較して、より短時間で高いピーク電流を供給できるとの利点がある。また、バイパスコンデンサはスーパーキャパシタと比べて静電容量が1/nで済むため、揮発性メモリ及び/又は不揮発性メモリを備えた基板(例えばメモリモジュール)又はその近傍に実装することができる。あるいは、制御手段は、バックアップシステムが接続される回路、部品及び/又は装置の寄生容量を用いてピーク電流を供給する構成としてもよく、この場合にはピーク電流は微小となるもののバイパスコンデンサを不要とすることができる。
【0021】
ところで、上述したような揮発性メモリ用バックアップ電源として全固体電池を使用しようとした場合、電源異常時にデータ保全を行うべくできるだけ長時間にわたって電力を供給可能であること、それ故、高い容量及び高いエネルギー密度を有することが全固体電池に要求される。しかしながら、特許文献1及び2に開示されるような無配向の正極活物質を用いた全固体電池にあっては、正極層を厚く形成したとしても、期待したほどの容量及びエネルギー密度の増加が得られないとの問題があった。この点、本発明者らは、配向多結晶体を正極層に用いた全固体電池において、配向多結晶体の厚さを大きくして容量及びエネルギー密度の高い電池性能が得られること、そしてそれらの特性をコンピュータやサーバ等の装置における揮発性メモリ用バックアップ電源の用途において最大限に活かせるとの知見を得ている。したがって、本発明の揮発性メモリ用バックアップシステムにおいては、配向多結晶体を正極活物質として用いた全固体電池の特性、とりわけ小型でエネルギー密度が高く且つ安全性が高いといった利点を最大限に活かすことができる。以下、そのような配向多結晶体を正極活物質として用いた全固体電池について詳述する。
【0022】
図2に、本発明の好ましい態様による全固体電池の一例を模式的に示す。図2に示される全固体電池10は、正極活物質12を有する正極層14と、リチウムイオン伝導材料で構成される固体電解質層16と、負極活物質18を有する負極層20とを備えてなり、固体電解質層16を正極層14と負極層20とで挟み込んだ構成となっている。そして、正極活物質12は、一定の方向に配向された複数のリチウム遷移金属酸化物粒子からなる配向多結晶体である。上述したように、特許文献1及び2に開示される全固体電池にあっては、正極層を厚く形成したとしても、期待したほど容量及びエネルギー密度の増加が得られないとの問題があった。これは、特許文献1及び2では正極層に用いる正極活物質が配向されていないため、厚い正極層の厚さ全体にわたった高効率なリチウムイオンの脱挿入がしづらいためであると考えられる。例えば、厚い正極層の固体電解質から離れた側に存在するリチウムを十分に取り出せないことが起こりうる。この点、正極活物質12は一定の方向に配向された複数のリチウム遷移金属酸化物粒子からなる配向多結晶体であるため、正極活物質を厚く設けても、正極層の厚さ全体にわたった高効率なリチウムイオンの脱挿入がしやすく、厚い正極活物質によってもたらされる容量向上効果を最大限に引き出すことができる。例えば、厚い正極層の固体電解質から離れた側に存在するリチウムも十分に取り出すことができる。かかる容量の向上によって、全固体電池のエネルギー密度をも大いに向上することができる。すなわち、本態様の全固体電池によれば、容量及びエネルギー密度の高い電池性能が得られる。したがって、比較的薄型ないし小型でありながらも、高い容量と高いエネルギー密度を有する安全性が高い全固体電池を実現することができる。
【0023】
例えば、本発明の好ましい態様によれば、全固体電池は、700Wh/L以上のエネルギー密度を有し、厚みが5mm以下であり、縦及び横の寸法がそれぞれ100mm以下であることができる。本発明の別の好ましい態様によれば、全固体電池は、600Wh/L以上のエネルギー密度を有し、厚みが2mm以下であり、縦及び横のサイズがそれぞれ50mm以下である。本発明の更に別の好ましい態様によれば、全固体電池は、500Wh/L以上のエネルギー密度を有し、厚みが1mm以下であり、縦及び横がそれぞれ50mm以下である。本発明の更に別の好ましい態様によれば、全固体電池は、250Wh/L以上のエネルギー密度を有し、厚みが0.5mm以下であり、縦及び横がそれぞれ50mm以下である。本発明の更に別の好ましい態様によれば、100Wh/L以上のエネルギー密度を有し、厚みが0.3mm以下であり、縦及び横がそれぞれ50mm以下である。あるいは、本発明の別の好ましい態様によれば、全固体電池は、100〜1,000Wh/Lのエネルギー密度を有し、厚みが0.1〜10mmであり、縦及び横がそれぞれ5〜100mmであり、より好ましくは、全固体電池は、250〜700Wh/Lのエネルギー密度を有し、厚みが0.3〜5mmであり、縦及び横がそれぞれ10〜50mmである。
【0024】
そして、このような比較的薄型ないし小型でありながらも高容量及び高エネルギー密度を実現可能な全固体電池10は、今まで全固体電池の実際の応用が困難であった又は想定されてこなかった各種の用途において有利に応用可能となる。これは、高容量及び高エネルギー密度(これらは薄型化又は小型化につながる)に加えて、高い安全性(可燃性の電解液を使用しないことによる)、高い耐候性(例えば80℃以上でも作動可能)、長寿命(高温環境下で劣化する電解液を使用しないことによる)といった各種有利な特性が本態様の全固体電池において実現可能なためである。また、そのような単位電池を積層させたスタック構造の全固体電池とすれば高電圧の電池も構成可能である。
【0025】
それらの各種有利な特性を最大限に活かせる有用な用途として、本発明による揮発性メモリ用バックアップシステムが挙げられる。好ましくは、そのような揮発性メモリ用バックアップシステムは、コンピュータ、ラップトップ・コンピュータ、可搬式コンピュータ、ポケットコンピュータ、ワークステーション、スーパーコンピュータ、コンピュータ周辺ハードウェア、及びサーバからなる群から選択される少なくとも一つの装置内に設けられる。ところで、市販されているキャパシタ付きDRAMは、DRAMの実装基板と不揮発性メモリの実装基板の積層体と、キャパシタとが長い電気コードを介して接続された構成となっている。これは、DRAMが作動時に非常に高温(例えば約95℃)に達するため、安全性や信頼性を考慮して、DRAM及び不揮発性メモリからできるだけ遠ざけた低温の位置にキャパシタを配置することが望まれるためである。というのも、電解液を含む液系電池やキャパシタは約95℃近くもの高温に曝されると発火や劣化等の不具合を生じるおそれがあるためである。しかも、液系電池やキャパシタはメモリ実装基板と比較してかなり大きい(特にかなり厚い)ものである上、その配線のために長い電気コードも必要となるため、キャパシタ及び長い電気コードの収納スペースを装置内に余分に確保する必要がある。
【0026】
この点、本態様の全固体電池にあっては、上述したように、高容量及び高エネルギー密度(これらは薄型化又は小型化につながる)に加えて、高い安全性(可燃性の電解液を使用しないことによる)、高い耐候性(例えば80℃以上でも作動可能)、長寿命(高温環境下で劣化する電解液を使用しないことによる)といった各種有利な特性を有する。このため、本態様の全固体電池は、約95℃もの高温に曝されても安全かつ確実に機能できるとともに、薄型化又は小型化にも適しており、その結果、DRAM等のメモリを実装した基板上又はその近傍に(例えば隣接して)配置されることができる。例えば、本態様の全固体電池をDRAM等のメモリのヒートシンクに貼り付けてもよいし、基板上の一部にDRAM等のメモリと重ならないように貼り付けてもよい。これは省スペース化を実現できることは勿論のこと、このように全固体電池がDRAM等のメモリのすぐ近くに存在することで、電源異常時における全固体電池からの電力の供給を、より小さい電力損失で且つより迅速に行うことができ、バックアップ電源としての性能向上に寄与する。したがって、本態様の全固体電池によれば、コンピュータ等の装置において、安全性及び信頼性に優れ、低コストで省スペース化にも適した、極めて有用なバックアップ電源を提供することができる。
【0027】
このように、全固体電池は揮発性メモリ及び不揮発性メモリの近傍に配置されることができる。例えば、揮発性メモリ及び不揮発性メモリが少なくとも1枚の基板に実装されてなるのが好ましく、その場合、この基板上又はその近傍に(例えば隣接して)全固体電池が配置されるのがより好ましい。揮発性メモリと不揮発性メモリはそれぞれ別個の基板に実装され、これらの実装基板を積層して積層基板としてもよいし、揮発性メモリと不揮発性メモリを1枚の基板に実装してもよい。メモリ実装基板は、複数の揮発性メモリ及び/又は複数の不揮発性メモリが配列されたメモリモジュールの形態であるのが特に好ましい。
【0028】
(1)正極活物質
正極活物質12は、一定の方向に配向された複数のリチウム遷移金属酸化物粒子からなる配向多結晶体である。この一定の方向は、リチウムイオンの伝導方向であるのが好ましく、典型的には、正極活物質12は、各粒子の特定の結晶面が正極層14から負極層20に向かう方向に配向された層として構成される。
【0029】
正極活物質12に含まれる粒子は、リチウム遷移金属酸化物で構成される。リチウム遷移金属酸化物は、層状岩塩構造又はスピネル構造を有するのが好ましく、より好ましくは層状岩塩構造を有する。層状岩塩構造は、リチウムイオンの吸蔵により酸化還元電位が低下し、リチウムイオンの脱離により酸化還元電位が上昇する性質があり、好ましく、中でもNiを多く含む組成は特に好ましい。ここで、層状岩塩構造とは、リチウム以外の遷移金属系層とリチウム層とが酸素原子の層を挟んで交互に積層された結晶構造、すなわち、リチウム以外の遷移金属等のイオン層とリチウムイオン層とが酸化物イオンを挟んで交互に積層された結晶構造(典型的にはα−NaFeO型構造:立方晶岩塩型構造の[111]軸方向に遷移金属とリチウムとが規則配列した構造)をいう。層状岩塩構造を有するリチウム−遷移金属系複合酸化物の典型例としては、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル・マンガン酸リチウム、ニッケル・コバルト酸リチウム、コバルト・ニッケル・マンガン酸リチウム、コバルト・マンガン酸リチウム等が挙げられ、これらの材料に、Mg,Al,Si,Ca,Ti,V,Cr,Fe,Cu,Zn,Ga,Ge,Sr,Y,Zr,Nb,Mo,Ag,Sn,Sb,Te,Ba,Bi等の元素が1種以上更に含まれていてもよい。
【0030】
すなわち、リチウム遷移金属酸化物は、LiM1O又はLi(M1,M2)O(式中、0.5<x<1.10、M1はNi,Mn及びCoからなる群から選択される少なくとも一種の遷移金属元素、M2はMg,Al,Si,Ca,Ti,V,Cr,Fe,Cu,Zn,Ga,Ge,Sr,Y,Zr,Nb,Mo,Ag,Sn,Sb,Te,Ba及びBiからなる群から選択される少なくとも一種の元素である)で表される組成を有するのが好ましく、より好ましくはLi(M1,M2)Oで表され、M1がNi及びCoであり、M2はMg,Al及びZrからなる群から選択される少なくとも一種である組成であり、さらに好ましくはLi(M1,M2)Oで表され、M1がNi及びCoであり、M2がAlである。M1及びM2の合計量に占めるNiの割合が原子比で0.6以上であるのが好ましい。このような組成はいずれも層状岩塩構造を採ることができる。なお、M1がNi及びCoであり、M2がAlである、Li(Ni,Co,Al)O系組成のセラミックスはNCAセラミックスと称されることがある。特に好ましいNCAセラミックスは、一般式:Li(Ni,Co,Al)O(式中、0.9≦p≦1.3、0.6<x≦0.9、0.1<y≦0.3、0≦z≦0.2、x+y+z=1)で表され、層状岩塩構造を有するものである。また、LiM1Oで表され、M1がNi,Mn及びCoであるか、又はM1がCoである組成を有するリチウム遷移金属酸化物も好ましい。
【0031】
前述のとおり、正極活物質12は、複数のリチウム遷移金属酸化物粒子からなる配向多結晶体である。リチウム遷移金属酸化物粒子は、厚さが2〜100μm程度の板状に形成された粒子が好ましい。特に、上述の特定の結晶面が(003)面であり、該(003)面が正極層14から負極層20に向かう方向に配向されていることが好ましい。これにより、リチウムイオンの正極活物質12に対する脱挿入の際の抵抗にならず、高入力時(充電時)に、多くのリチウムイオンを放出することができ、高出力時(放電時)に、多くのリチウムイオンを受け入れることができる。(003)面以外の例えば(101)面や(104)面は、正極活物質12の板面に沿うように配向させてもよい。上述の粒子や配向多結晶体の詳細については、特許文献3(特開2012−009193号公報)、特許文献4(特開2012−009194号公報)及び特許文献5(特許第4745463号公報)を参照することができ、これらの文献の開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0032】
前述したとおり、正極活物質12を構成する配向多結晶体は、無配向の多結晶体よりも、厚くするのに適している。配向多結晶体の厚さは、単位面積当りの活物質容量を高くする観点から、5μm以上が好ましく、より好ましくは10μm以上であり、さらに好ましくは25μm以上である。厚さの上限値は特に限定されないが、現実的には500μm以下、より現実的には200μm以下、さらに現実的には100μm以下といえる。
【0033】
正極活物質12はシート状に形成されるのが好ましい。このシート状に形成された正極活物質(以下、正極活物質シートという)の好ましい製造方法については後述する。なお、1枚の正極活物質シートで正極活物質12を構成してもよいし、正極活物質シートを分割して得られた複数個の小片を層状に配列させて正極活物質12を構成してもよい。
【0034】
(2)固体電解質層
固体電解質層16を構成するリチウムイオン伝導材料は、ガーネット系セラミックス材料、窒化物系セラミックス材料、ペロブスカイト系セラミックス材料、リン酸系セラミックス材料、硫化物系セラミックス材料、又は高分子系材料で構成されるのが好ましく、より好ましくは、ガーネット系セラミックス材料、窒化物系セラミックス材料、ペロブスカイト系セラミックス材料、及びリン酸系セラミックス材料からなる群から選択される少なくとも一種である。ガーネット系セラミックス材料の例としては、Li−La−Zr−O系材料(具体的には、LiLaZr12など)、Li−La−Ta−O系材料(具体的には、LiLaTa12など)が挙げられ、特許文献6(特開2011−051800号公報)、特許文献7(特開2011−073962号公報)及び特許文献8(特開2011−073963号公報)に記載されているものも用いることができ、これらの文献の開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。窒化物系セラミックス材料の例としては、LiN。ペロブスカイト系セラミックス材料の例としては、Li−La−Zr−O系材料(具体的には、LiLa1−xTi(0.04≦x≦0.14)など)が挙げられる。リン酸系セラミックス材料の例としては、リン酸リチウム、窒素置換リン酸リチウム(LiPON)、Li−Al−Ti−P−O,Li−Al−Ge−P−O、及びLi−Al−Ti−Si−P−O(具体的には、Li1+x+yAlTi2−xSi3−y12(0≦x≦0.4、0<y≦0.6)など)が挙げられる。
【0035】
特に好ましいリチウムイオン伝導材料は、負極リチウムと直接接触しても反応が起きない点で、ガーネット系セラミックス材料である。とりわけ、Li、La、Zr及びOを含んで構成されるガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造を有する酸化物焼結体が、焼結性に優れて緻密化しやすく、かつ、イオン伝導率も高いことから好ましい。この種の組成のガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造はLLZ結晶構造と呼ばれ、CSD(Cambridge Structural Database)のX線回折ファイルNo.422259(LiLaZr12)に類似のXRDパターンを有する。なお、No.422259と比較すると構成元素が異なり、またセラミックス中のLi濃度などが異なる可能性があるため、回折角度や回折強度比が異なる場合もある。Laに対するLiのモル数の比Li/Laは2.0以上2.5以下であることが好ましく、Laに対するZrのモル比Zr/Laは0.5以上0.67以下であるのが好ましい。このガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造はNb及び/又はTaをさらに含んで構成されるものであってもよい。すなわち、LLZのZrの一部がNb及びTaのいずれか一方又は双方で置換されることにより、置換前に比べて伝導率を向上させることができる。ZrのNb及び/又はTaによる置換量(モル比)は、(Nb+Ta)/Laのモル比が0.03以上0.20以下となる量にすることが好ましい。また、このガーネット系酸化物焼結体はAlをさらに含んでいるのが好ましく、これらの元素は結晶格子に存在してもよいし、結晶格子以外に存在していてもよい。Alの添加量は焼結体の0.01〜1質量%とするのが好ましく、Laに対するAlのモル比Al/Laは、0.008〜0.12であるのが好ましい。このようなLLZ系セラミックスの製造は、特許文献6(特開2011−051800号公報)、特許文献7(特開2011−073962号公報)及び特許文献8(特開2011−073963号公報)に記載されるような公知の手法に従って又はそれを適宜修正することにより行うことができ、これらの文献の開示内容は本明細書に参照により組み込まれる。
【0036】
また、特に好ましい別のリチウムイオン伝導材料として、リン酸系セラミックス材料も挙げられ、中でも窒素置換リン酸リチウム(LiPON)が好ましい。
【0037】
固体電解質層16の寸法は特に限定されないが、厚さは充放電レート特性と機械的強度の観点から、0.0005mm〜0.5mmが好ましく、より好ましくは0.001mm〜0.2mm、さらに好ましくは0.005〜0.1mmである。
【0038】
固体電解質層16の形成方法としては、各種パーティクルジェットコーティング法、固相法、溶液法、気相法、直接接合(ダイレクトボンディング)法を用いることができる。パーティクルジェットコーティング法の例としては、エアロゾルデポジション(AD)法、ガスデポジション(GD)法、パウダージェットデポジション(PJD)法、コールドスプレー(CS)法、溶射法等がある。中でも、エアロゾルデポジション(AD)法は、常温成膜が可能であることから、プロセス中の組成ズレや、正極板との反応による高抵抗層の形成がなく特に好ましい。固相法の例としては、テープ積層法、印刷法等がある。中でも、テープ積層法は固体電解質層16を薄く形成することが可能であり、また、厚さの制御が容易であることから好ましい。溶液法の例としては、水熱合成法、ゾルゲル法、沈殿法、マイクロエマルション法、溶媒蒸発法等がある。これらの方法の中でも、水熱合成法は、低温で結晶性の高い結晶粒を得やすい点で特に好ましい。また、これらの方法を用いて合成した微結晶を、正極上に堆積させてもよいし、正極上に直接析出させてもよい。気相法の例としては、レーザー堆積(PLD)法、スパッタ法、蒸発凝縮(PVD)法、気相反応法(CVD)法、真空蒸着法、分子線エピタキシ(MBE)法等がある。この中でも、レーザー堆積(PLD)法は組成ズレが少なく、比較的結晶性の高い膜を得られやすく特に好ましい。直接接合(ダイレクトボンディング)法は、予め形成した固体電解質層16と正極活物質12の各々の表面を化学的に活性な状態にして、低温で接合する方法である。界面の活性化については、プラズマ等を用いてもよいし、水酸基等の官能基の化学修飾を用いてもよい。
【0039】
(3)負極活物質
負極活物質18は、全固体リチウム電池に使用可能な公知各種の負極活物質であってよい。負極活物質18の好ましい例としては、リチウム金属、リチウム合金、炭素質材料、チタン酸リチウム(LTO)等が挙げられる。好ましくは、負極活物質18は、負極集電体24(銅箔等)の上に、リチウム金属あるいはリチウムと合金化する金属の薄膜を真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法等で形成して、リチウム金属あるいはリチウムと合金化する金属の層を形成することにより作製することができる。
【0040】
(4)集電体
正極層14は、正極活物質12と、該正極活物質12の固体電解質層16と反対側の端面に形成された正極集電体22とを備えるのが好ましい。また、負極層20は、負極活物質18と、該負極活物質18の固体電解質層16と反対側の端面に形成された負極集電体24とを備えるのが好ましい。正極集電体22及び負極集電体24を構成する材料の例としては、白金(Pt)、白金(Pt)/パラジウム(Pd)、金(Au)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ITO(インジウム−錫酸化膜)等が挙げられる。
【0041】
(5)容器
容器26は、単位電池又はそれを複数個直列若しくは並列に積層させたスタックを収容可能な容器であれば特に限定されない。特に、全固体電池10は電解液の漏れの懸念が無いため、容器26は比較的簡素な容器形態を採用可能である。例えば、電子回路に実装するためのチップ形態や、薄く幅広の空間用途のためのラミネートセル形態(例えばアルミニウム(Al)/ポリプロピレン(PP)の複層品)が採用可能である。
【0042】
正極活物質シートの製造方法
正極活物質シートの好ましい製造方法について以下に説明する。
【0043】
(1)原料粒子の準備
原料粒子としては、合成後の組成が層状岩塩構造を有する正極活物質LiMOとなるように、Li、Co、Ni、Mnなどの化合物の粒子を適宜混合したものが用いられる。あるいは、原料粒子として、LiMOの組成からなるもの(合成済みのもの)を用いることができる。
【0044】
あるいは、必要に応じて、リチウム化合物を含まない、Co、Ni、Mnなどの各化合物の粒子を混合した粒子又は(Co,Ni,Mn)Oの組成からなる粒子を用いることができる。この場合、成形体の焼成工程の後、焼成された成形体とリチウム化合物とをさらに反応させることでLiMOが得られる。
【0045】
粒成長を促進する、もしくは焼成中に揮発する分を補償する目的で、リチウム化合物を0.5〜30mol%過剰に入れてもよい。また、粒成長を促進する目的で、酸化ビスマスなどの低融点酸化物、ホウケイ酸ガラスなどの低融点ガラスを0.001〜30wt%添加してもよい。
【0046】
(2)原料粒子の成形工程
原料粒子を、シート状の自立した成形体に成形する。すなわち、「自立した成形体」は、典型的には、それ単体でシート状の成形体の形状を保つことができるものである。なお、それ単体ではシート状の成形体の形状を保つことができないものであっても、何らかの基板上に貼り付けたり成膜したりして焼成前又は焼成後に、この基板から剥離したものも、「自立した成形体」に含まれる。
【0047】
成形体の成形方法としては、例えば、原料粒子を含むスラリーを用いたドクターブレード法が用いられ得る。また、成形体の成形には、熱したドラム上へ原料を含むスラリーを塗布し、乾燥させたものをスクレイパーで掻きとる、ドラムドライヤーが用いられ得る。また、成形体の成形には、熱した円板面へスラリーを塗布し、これを乾燥させてスクレイパーで掻きとる、ディスクドライヤーを用いることもできる。また、スプレードライヤーの条件を適宜設定することで得られる中空の造粒体も、曲率をもったシート状成形体とみることができるので、成形体として好適に用いることができる。さらに、原料粒子を含む坏土を用いた押出成形法も成形体の成形方法として利用可能である。
【0048】
ドクターブレード法を用いる場合、可撓性を有する板(例えばPETフィルムなどの有機ポリマー板など)にスラリーを塗布し、塗布したスラリーを乾燥固化して成形体とし、この成形体と板とを剥離することにより、板状多結晶粒子の焼成前の成形体を作製してもよい。成形前にスラリーや坏土を調製するときには、無機粒子を適当な分散媒に分散させ、バインダーや可塑剤などを適宜加えてもよい。また、スラリーは、粘度が500〜4000cPとなるように調製するのが好ましく、減圧化で脱泡するのが好ましい。
【0049】
(3)成形体の焼成工程
この焼成工程においては、成形工程で得られた成形体は、例えば、成形されたそのままの状態(シート状態)で、セッターに載せて焼成される。あるいは、焼成工程は、シート状の成形体を適宜切断、破砕したものを、鞘に入れて焼成するものであってもよい。
【0050】
原料粒子が合成前の混合粒子である場合は、この焼成工程において、合成、さらには、焼結及び粒成長が生じる。本発明では、成形体がシート状であるため、厚さ方向の粒成長が限られる。このため、成形体の厚さ方向に結晶粒が1個となるまで粒成長した後は、成形体の面内方向にのみ粒成長が進む。このとき、エネルギー的に安定な特定の結晶面がシート表面(板面)に広がる。したがって、特定の結晶面がシート表面(板面)と平行になるように配向した膜状のシート(自立膜)が得られる。
【0051】
原料粒子をLiMOとした場合、リチウムイオンの出入りが良好に行われる結晶面である(101)面や(104)面を、シート表面(板面)に露出するように配向させることができる。一方、原料粒子を、リチウムを含まないもの(例えばスピネル構造のM)とした場合、リチウム化合物と反応させてLiMOとしたときに(104)面となる、(h00)面を、シート表面(板面)に露出するように配向させることができる。
【0052】
焼成温度は、800℃〜1350℃が好ましい。800℃より低温では、粒成長が不十分で、配向度が低くなる。一方、1350℃より高温では、分解・揮発が進んでしまう。焼成時間は、1〜50時間の間とするのが好ましい。1時間より短いと、配向度が低くなる。一方、50時間より長いと、消費エネルギーが大きくなりすぎる。焼成雰囲気は、焼成中に分解が進まないように適宜設定される。リチウムの揮発が進むような場合は、炭酸リチウムなどを同じ鞘内に配置してリチウム雰囲気とすることが好ましい。焼成中に酸素の放出や、さらには還元が進むような場合、酸素分圧の高い雰囲気で焼成することが好ましい。
【0053】
リチウム化合物を含まない原料粒子から、焼成により配向したシート得た場合、これとリチウム化合物(硝酸リチウムや炭酸リチウムなど)を反応させることで、リチウムイオンの出入りが良好に行われる結晶面が板面に露出するように配向した、正極活物質膜が得られる。例えば、配向シート硝酸リチウムを、LiとMとのモル比Li/Mが1以上となるようにふりかけて、熱処理することで、リチウム導入が行われる。ここで、熱処理温度は、600℃〜800℃が好ましい。600℃より低温では、反応が十分に進まない。800℃より高温では、配向性が低下する。
【0054】
(a)LiCoO粒子を用いた正極活物質シート
LiCoO粒子を用いた正極活物質シートは、例えば以下のようにして製造することができる。先ず、CoとBiとを含有したグリーンシートを形成する。このグリーンシートを900〜1300℃の範囲内の温度で所定時間焼成することで、粒子板面方向に(h00)配向した多数の板状のCo粒子からなる、独立した薄膜状のシート(自立膜)を形成する。ここで、「(h00)配向」とは、(h00)面が板面と平行となるように配向したことを示す。なお、この焼成の際に、ビスマスは揮発することでシートから除去され、Coは還元されてCoOに相変態する。ここで、「独立した」シート(自立膜)とは、焼成後に他の支持体から独立して単体で取り扱い可能なシートのことをいう。すなわち、「独立した」シートには、焼成により他の支持体(基板等)に固着されて当該支持体と一体化された(分離不能あるいは分離困難となった)ものは含まれない。このように薄膜(自立膜)状に形成されたグリーンシートにおいては、粒子板面方向すなわち面内方向(厚さ方向と直交する方向)に比べて、厚さ方向に存在する材料の量がきわめて少ない。このため、厚さ方向に複数個の粒子がある初期段階には、ランダムな方向に粒成長する。一方、粒成長が進み厚さ方向の材料が消費されると、粒成長方向は面内の二次元方向に制限される。これにより、面方向への粒成長が確実に促進される。特に、グリーンシートの厚さが100μm程度もしくはそれ以上と比較的厚めであっても粒成長を可能な限り大きく促進したりすることで、面方向への粒成長がより確実に促進される。また、このとき、表面エネルギーの最も低い結晶面をグリーンシートの面内に持つ粒子のみが選択的に面内方向へ扁平状(板状)に粒成長する。その結果、シート焼成により、アスペクト比が大きく、特定の結晶面(ここでは(h00)面)が粒子板面方向に配向したCoOからなる板状結晶粒子が得られる。さらに、温度が下がる過程で、CoOからCoに酸化される。その際に、CoOの配向方位が引き継がれることで、特定の結晶面(ここでは(h00)面)が粒子板面方向に配向したCo板状結晶粒子が得られる。CoOからCoへの酸化の際に、配向度が低下しやすい。これは、CoOとCoの結晶構造及びCo−Oの原子間距離が大きく異なることから、酸化、すなわち、酸素原子が挿入される際に、結晶構造が乱れやすいためである。従って、配向度をなるべく低下しないように適宜条件を選択することが好ましい。例えば、降温速度を小さくすることや、所定の温度で保持することや、酸素分圧を小さくすることが好ましい。そして、このグリーンシートを焼成することで、特定の結晶面が粒子板面方向に配向した薄板状の多数の粒子が、粒界部にて面方向に結合した薄膜(自立膜)が得られる。すなわち、実質的に厚さ方向についての結晶粒子の個数が1個となるような薄膜(自立膜)が形成される。ここで、「実質的に厚さ方向についての結晶粒子の個数が1個」の意義は、面方向に隣り合う結晶粒子の一部分(例えば端部)が厚さ方向に互いに重なり合うことを排除しない。この自立膜は、上述のような薄板状の多数の粒子が隙間なく結合した、緻密なセラミックスシートとなり得る。上述の工程によって得られた、(h00)配向したCoセラミックスシートと、LiCOとを混合して、所定時間加熱することで、Co粒子にリチウムが導入される。これにより、(003)面が正極層14から負極層20の方向に配向し、(104)面が板面に沿って配向した膜状の正極活物質12用のシートが得られる。
【0055】
(b)Li(Ni,Co,Al)O粒子を用いた正極活物質シート
Li(Ni,Co,Al)O粒子を用いた正極活物質シートは、例えば以下のようにして製造することができる。先ず、NiO粉末とCo粉末とAl粉末とを含有するグリーンシートを形成し、このグリーンシートを1000℃〜1400℃の範囲内の温度で、大気雰囲気で所定時間焼成することで、(h00)配向した多数の板状の(Ni,Co,Al)O粒子からなる、独立した膜状のシート(自立膜)が形成される。ここで、助剤としてMnO、ZnO等を添加することにより、粒成長が促進され、結果として板状結晶粒子の(h00)配向性を高めることができる。ここで、「独立した」シートとは、焼成後に他の支持体から独立して単体で取り扱い可能なシートのことをいう。すなわち、「独立した」シートには、焼成により他の支持体(基板等)に固着されて当該支持体と一体化された(分離不能あるいは分離困難となった)ものは含まれない。このように自立膜状に形成されたグリーンシートにおいては、板面方向、すなわち、面内方向(厚さ方向と直交する方向)に比べて、厚さ方向に存在する材料の量がきわめて少ない。このため、厚さ方向に複数個の粒子がある初期段階には、ランダムな方向に粒成長する。一方、粒成長が進み厚さ方向の材料が消費されると、粒成長方向は面内の二次元方向に制限される。これにより、面方向への粒成長が確実に促進される。特に、グリーンシートの厚さが100μm程度もしくはそれ以上と比較的厚めであっても粒成長を可能な限り大きく促進したりすることで、面方向への粒成長がより確実に促進される。すなわち、表面エネルギーの低い面が板面方向、すなわち、面内方向(厚さ方向と直交する方向)と平行な粒子の面方向への粒成長が優先的に促進される。従って、上述のように膜状に形成されたグリーンシートを焼成することで、特定の結晶面が粒子の板面と平行となるように配向した薄板状の多数の粒子が、粒界部にて面方向に結合した自立膜が得られる。すなわち、実質的に厚さ方向についての結晶粒子の個数が1個となるような自立膜が形成される。ここで、「実質的に厚さ方向についての結晶粒子の個数が1個」の意義は、面方向に隣り合う結晶粒子の一部分(例えば端部)が厚さ方向に互いに重なり合うことを排除しない。この自立膜は、上述のような薄板状の多数の粒子が隙間なく結合した、緻密なセラミックスシートとなり得る。上述の工程によって得られた、(h00)配向した(Ni,Co,Al)Oセラミックスシートと、硝酸リチウム(LiNO)とを混合して、所定時間加熱することで、(Ni,Co,Al)O粒子にリチウムが導入される。これにより、(003)面が正極層14から負極層20の方向に配向し、(104)面が板面に沿って配向した膜状の正極活物質12用のLi(Ni0.75Co0.2Al0.05)Oシートが得られる。
【0056】
リチウムイオン伝導材料の製造方法
以下に固体電解質層16を構成するリチウムイオン伝導材料の代表例の一つである、Al添加LLZセラミックス焼結体の好ましい製造方法を説明する。
【0057】
先ず、第1焼成工程にて、Li成分、La成分及びZr成分を含む原料を焼成して、LiとLaとZrと酸素を含むセラミックス合成用の一次焼成粉末を得る。その後、第2焼成工程において、第1焼成工程で得られた一次焼成粉末を焼成して、LiとLaとZrと酸素を含むガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造を有するセラミックスを合成する。これにより、LLZ結晶構造を有し、且つ、アルミニウムを含有してハンドリング可能な焼結性(密度)及び伝導性を備えるセラミックス粉末又は焼結体を容易に得ることができる。
【0058】
(Li成分、La成分及びZr成分)
これらの各種成分は、特に限定されないで、それぞれの金属成分を含む、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩等、各種金属塩を適宜選択して用いることができる。例えば、Li成分としてはLiCO又はLiOHを用い、La成分としてはLa(OH)又はLaを用い、Zr成分としてはZrOを用いることができる。なお、酸素は、通常、これら構成金属元素を含む化合物の一部を構成する元素として含まれている。セラミックス材料を得るための原料は、各Li成分、La成分及びZr成分等から固相反応等によりLLZ結晶構造が得られる程度にLi成分、La成分及びZr成分を含むことができる。Li成分、La成分及びZr成分は、LLZの化学量論組成に従えば、7:3:2あるいは組成比に近似した組成で用いることができる。Li成分の消失を考慮する場合には、Li成分は、LLZにおけるLiの化学量論に基づくモル比相当量よりも約10%増量した量を含み、La成分及びZr成分は、それぞれLLZモル比に相当する量となるように含有することができる。例えば、Li:La:Zrのモル比が7.7:3:2となるように、含有することができる。具体的な化合物を用いた場合のモル比としては、LiCO:La(OH):ZrOのとき、約3.85:約3:約2のモル比となり、LiCO:La:ZrOのとき、約3.85:約1.5:約2のモル比となり、LiOH:La(OH):ZrOのとき、約7.7:約3:約2となり、LiOH:La:ZrOのとき、約7.7:約1.5:約2となる。なお、原料粉末の調製にあたっては、公知のセラミックス粉末の合成における原料粉末調製方法を適宜採用することができる。例えば、ライカイ機等や適当なボールミル等に投入して均一に混合することができる。
【0059】
(第1焼成工程)
第1焼成工程は、少なくともLi成分やLa成分等の熱分解を行い第2焼成工程でLLZ結晶構造を形成しやくするための一次焼成粉末を得る工程である。一次焼成粉末は、LLZ結晶構造をすでに有している場合もある。焼成温度は、好ましくは、850℃以上1150℃以下の温度である。第1焼成工程は、上記温度範囲内において、より低い加熱温度で加熱するステップとより高い加熱温度で加熱するステップとを備えていてもよい。こうした加熱ステップを備えることで、より均一な状態なセラミックス粉末を得ることができ、第2焼成工程によって良質な焼結体を得ることができる。このような複数ステップで第1焼成工程を実施するときには、各焼成ステップ終了後、ライカイ機、ボールミル及び振動ミル等を用いて混練・粉砕することが好ましい。また、粉砕手法は乾式で行うことが望ましい。こうすることで、第2焼成工程により一層均一なLLZ相を得ることができる。第1焼成工程を構成する熱処理ステップは、好ましくは850℃以上950℃以下の熱処理ステップと1075℃以上1150℃以下の熱処理ステップを実施することが好ましい。さらに好ましくは875℃以上925℃以下(約900℃であることがより好ましい)の熱処理ステップと、1100℃以上1150℃以下(約1125℃であることがより好ましい)の熱処理ステップとする。第1焼成工程は、全体で加熱温度として設定した最高温度での加熱時間の合計として10時間以上15時間以下程度とすることが好ましい。第1焼成工程を2つの熱処理ステップで構成する場合には、それぞれ最高温度での加熱時間を5〜6時間程度とすることが好ましい。一方で、出発原料の1つ又は複数の成分を変更することにより、第1焼成工程を短縮化することができる。例えば、LiOHを出発原料に含まれる成分の1つとして用いる場合、LLZ結晶構造を得るには、Li、La及びZrを含むLLZ構成成分を850℃以上950℃以下の熱処理ステップで最高温度での加熱時間を10時間以下にすることができる。これは、出発原料に用いたLiOHが低温で液相を形成するため、より低温で他の成分と反応しやすくなるからである。
【0060】
(第2焼成工程)
第2焼成工程は、第1焼成工程で得られた一次焼成粉末を950℃以上1250℃以下の温度で加熱する工程とすることができる。第2焼成工程によれば、第1焼成工程で得た一次焼成粉末を焼成し、最終的に複合酸化物であるLLZ結晶構造を有するセラミックスを得ることができる。LLZ結晶構造を得るには、例えば、Li、La及びZrを含むLLZ構成成分を1125℃以上1250℃以下の温度で熱処理するようにする。Li原料としてLiCOを用いるときには、1125℃以上1250℃以下で熱処理することが好ましい。1125℃未満であるとLLZの単相が得られにくくLi伝導率が小さく、1250℃を超えると、異相(LaZr等)の形成が見られるようになりLi伝導率が小さく、また結晶成長が著しくなるため、固体電解質としての強度を保つことが難しくなる傾向があるからである。より好ましくは、約1180℃から1230℃である。一方で、出発原料の1つ又は複数の成分を変更することにより、第2焼成工程を低温化することができる。例えば、Li原料としてLiOHを出発原料に用いる場合、LLZ結晶構造を得るには、Li、La及びZrを含むLLZ構成成分を950℃以上1125℃未満の温度でも熱処理することができる。これは、出発原料に用いたLiOHが低温で液相を形成するため、より低温で他の成分と反応しやすくなるからである。第2焼成工程における上記加熱温度での加熱時間は18時間以上50時間以下程度であることが好ましい。時間が18時間よりも短い場合、LLZ系セラミックスの形成が十分ではなく、50時間よりも長い場合、埋め粉を介してセッターと反応しやすくなるほか、結晶成長が著しくサンプルとして強度を保てなくなるからである。好ましくは30時間以上である。第2焼成工程は、一次焼成粉末を周知のプレス手法を用いて加圧成形して所望の三次元形状(例えば、全固体電池の固体電解質として使用可能な形状及びサイズ)を付与した成形体とした上で実施することが好ましい。成形体とすることで固相反応が促進されるほか、焼結体を得ることができる。なお、第2焼成工程後に、第2焼成工程で得られたセラミックス粉末を成形体として、第2焼成工程における加熱温度と同様の温度で焼結工程を別途実施してもよい。第2焼成工程で一次焼成粉末を含む成形体を焼成して焼結させる場合、成形体を同じ粉末内に埋没させるようにして実施することが好ましい。こうすることでLiの損失を抑制して第2焼成工程前後における組成の変化を抑制できる。なお、原料粉末の成形体は、通常、原料粉末を敷き詰めた上に載置した状態で原料粉末内に埋没される。こうすることで、セッターとの反応を抑制することができる。また、必要に応じて成形体を埋め粉の上下からセッターで押さえ込むことにより、焼結体の焼成時の反りを防止することができる。一方で、第2焼成工程においてLi原料としてLiOHを用いる等して低温化した場合、一次焼成粉末の成形体を同じ粉末内に埋没させなくても焼結させることができる。これは、第2焼成工程が低温化したことで、Liの損失が比較的抑制され、またセッターとの反応を抑制することができるからである。
【0061】
以上の焼成工程によれば、LLZ結晶構造を有する固体電解質層16を得ることができる。なお、第1焼成工程及び第2焼成工程のいずれかあるいは双方の工程をアルミニウム(Al)含有化合物の存在下に実施することにより、結晶構造を有し、且つ、アルミニウムを含有する固体電解質層を製造するようにしてもよい。
【実施例】
【0062】
本発明を以下の例によってさらに具体的に説明する。
【0063】
例A1
図2に示される構成の全固体電池10を作製した。正極活物質12として、層状岩塩構造を有し、組成がLi(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O(以下、NCMという)である、(003)面が正極層14から負極層20に向かう方向に配向されている正極活物質シートを作製した。正極活物質シートの厚みは30μmとした。シート状の正極活物質12の上に固体電解質層16を形成した。固体電解質層16を構成するリチウムイオン伝導材料としては、Alが添加されたLiLaZr12(以下、LLZ−Alという)からなるガーネット系の結晶構造を有するセラミックス材料を用いた。固体電解質層16の厚みは10μmとした。負極活物質18は、リチウム金属で構成し、厚みは10μmとした。なお、正極集電体22を厚み10μmのアルミ箔にて構成し、負極集電体24を厚み10μmの銅箔にて構成した。これらの構成要素からなる積層体を単位電池として得た。この単位電池をアルミニウム(Al)/ポリプロピレン(PP)の複層品でラミネート外装した。こうして得られた全固体電池を上面からみたサイズ(縦×横)は20mm×30mmであり、全固体電池の厚みは0.24mmであった。
【0064】
体積エネルギー密度を求めるに際し、上記作製した電池の充放電試験を実施した。1mAの定電流充電に続いて、4.1Vの定電圧充電を実施した後、1mAの定電流放電を電圧が3Vに達するまで実施した。その結果、放電容量(mAh)は20mAhであった。平均放電電圧を3.9Vとして、体積エネルギー密度を下記式(1)にて求めたところ、542Wh/Lであった。
(E×C)/V (1)
(式中、Eは電圧(=3.9V)、Cは容量(mAh)、Vは電池体積(cm)である。)
【0065】
例A2
例A1で得られた単位電池を並列に積層して、容量100mAhの電池を作製した。例A1と同様にしてエネルギー密度を求めたところ、650Wh/Lであった。
【0066】
例A3
例A1で得られた単位電池を並列に積層して、容量300mAhの電池を作製した。例A1と同様にしてエネルギー密度を求めたところ、750Wh/Lであった。
【0067】
例A4
固体電解質層16を構成するリチウムイオン伝導材料をLiPONとし、固体電解質層16の厚みを5μmとし、それ以外の構成は例A1と同様の単位電池を得た。この単位電池を例A1と同様にラミネート外装した。こうして得られた全固体電池を上面からみたサイズ(縦×横)は20mm×30mmであり、全固体電池の厚みは0.24mmであった。得られた全固体電池の体積エネルギー密度を例A1と同様の方法で求めたところ、容量は20mAh、エネルギー密度は542Wh/Lであった。
【0068】
例A5
例A4で得られた単位電池を並列に積層して、容量100mAhの電池を作製した。例A4と同様にしてエネルギー密度を求めたところ、650Wh/Lであった。
【0069】
例A6
例A4で得られた単位電池を並列に積層して、容量300mAhの電池を作製した。例A1と同様にしてエネルギー密度を求めたところ、750Wh/Lであった。
【0070】
結果
例A1〜6で作製された電池のサイズ及び性能をまとめると以下のとおりである。
【表1】
【0071】
表1に示される電池のサイズ及び性能は、コンピュータ等の装置における揮発性メモリ用バックアップ電源を始めとする各種用途に極めて適したものである。参考のため、揮発性メモリ用バックアップ電源等の幾つかの用途において望まれるものと出願人が考える電池のサイズと性能が以下の表2に示される。揮発性メモリーバックアップ電源用途の場合、必要とされる電力供給時間に合わせて、揮発性メモリを実装した基板上又はその近傍に(例えば隣接して)複数個の全固体電池を揮発性メモリと接続して配置することもできる。表2に示される用途を包含する各種用途に本発明の全固体電池は極めて有望であることが分かる。なお、表2には電気自動車のように極めて容量の高い用途も含まれるが、単位電池を並列に積層することにより、そのような高容量を実現することができる。
【表2】
【0072】
例B1
本発明の全固体電池を用いた揮発性メモリ用バックアップシステムをNVDIMM(不揮発性メモリモジュール)用途向けに適用する一例を以下に示す。特に、本例は、DRAM中の全データの転送を30分以内に完了させることを特徴とする例である。本例で前提とするNVDIMMの仕様、DRAMの作動条件、及び全固体電池の仕様は以下のとおりである。
<NVDIMMの前提仕様>
‐ メモリサイズ:4GB
‐ メモリ構成:8チップの4GビットDRAMと、
1チップの32Gビットフラッシュメモリで構成
‐ DIMMボードサイズ:133.35mm×24.00mm(DDR3スタンダード)
<全データを一括でDRAMからフラッシュメモリへのデータ転送(アクティブモード)の作動条件>
‐ 電圧:3.3V
‐ 電流:4A(平均)、7A(ピーク)
‐ 時間:34秒
‐ エネルギー:0.125Wh(=3.3V×4A×34秒/3600)
<DDR3アイドルモードの作動条件>
- DRAM1チップ分の電力:0.55W(電圧:3.3V、電流0.167A)
<DDR3セルフリフレッシュモードの作動条件>
‐ 出力:DRAM8チップ分の37mW(電圧:3.3V、電流0.011A)
‐ 出力:DRAM7チップ分の32mW(電圧:3.3V、電流0.010A)
<全固体電池の仕様>
‐ エネルギー密度:400Wh/L
‐ 電池のサイズ:20mm×85mm×5mm
‐ データ転送に利用可能なCレート:0.25C
【0073】
本例におけるバックアップ電源出力波形を図3に示す。図3に示されるように、本例によるバックアップシステムは、DRAM中のデータのフラッシュメモリへの転送を約25分50秒で完了した後、約82.6時間にわたってDRAMがセルフリフレッシュモードで作動してDRAM中のデータを保持する。したがって、約30分以内という比較的短時間で不揮発性メモリであるフラッシュメモリへのデータのコピーを完了して全固体電池の電池切れに備えるとともに、その後も約82.6時間以上にわたってDRAM内にもデータを保持することができる。その間、データ転送の1ブロック(30秒)ごとに電源復旧の有無を確認するための電源系統モニタリングが1秒間行われ、電源復旧時における瞬時のデータ復帰を可能とする。
【0074】
本例における各種条件の概算値は以下のとおりである。
‐ 電池の利用可能エネルギー:3.4Wh(=400Wh/L×2cm×8.5cm×0.5cm/1000)
‐ 電池からの出力電流:0.257A(=3.4Wh/3.3V×(0.25C/1.0C))
‐ データ転送に要する時間:25分(=(0.125Wh/L)/3.3V/0.09A×60、0.09A=0.257A−0.167A))
‐ データ転送のためのブロック数:50(=25分/30秒、この30秒が1ブロックのデータ転送に要する時間であり、電源系統モニタリング用の時間を確保するため、34秒(DRAMの仕様によるデータ転送時間)よりも短くすべきである。)
‐ 1ブロック当たりの電源系統モニタリング:1秒(この1秒間に電源復旧時の電源からの割り込み信号を受容可能となる)
‐ 合計データ転送時間:25分50秒(=(30秒+1秒)×50=1550秒)
‐ データ転送のための合計エネルギー:0.365Wh(=0.257A×3.3V×1550秒/3600)
‐ データ転送後のセルフリフレッシュ時間:82.6時間(=(3.4Wh−0.365Wh)/0.037W−1550/3600)
【0075】
例B2
本発明の全固体電池を用いた揮発性メモリ用バックアップシステムをNVDIMM(不揮発性メモリモジュール)用途向けに適用する他の一例を以下に示す。特に、本例は、例B1よりも小さいサイズの電池を採用し、DRAMからフラッシュメモリへのデータ転送をより長い時間で行う例である。本例で前提とするNVDIMMの仕様、DRAMの作動条件、及び全固体電池の仕様は以下のとおりである。
<NVDIMMの前提仕様>
‐ メモリサイズ:4GB
‐ メモリ構成: 8チップの4GビットDRAMと、
1チップの32Gビットフラッシュメモリで構成
‐ DIMMボードサイズ:133.35mm×24.00mm(DDR3スタンダード)
<全データを一括でDRAMからフラッシュメモリへのデータ転送(アクティブモード)の作動条件>
‐ 電圧:3.3V
‐ 電流:4A(平均)、7A(ピーク)
‐ 時間:34秒
‐ エネルギー:0.125Wh(=3.3V×4A×34秒/3600)
<DDR3アイドルモードの作動条件>
‐ DRAM1チップ分の電力:0.55W(電圧:3.3V、電流0.167A)
<DDR3セルフリフレッシュモードの作動条件>
‐ 出力:DRAM8チップ分の37mW(電圧:3.3V、電流0.011A)
‐ 出力:DRAM7チップ分の32mW(電圧:3.3V、電流0.010A)
<全固体電池の仕様>
‐ エネルギー密度:400Wh/L
‐ 電池のサイズ:20mm×60mm×5mm
‐ データ転送に利用可能なCレート:0.25C
【0076】
本例におけるバックアップ電源出力波形を図4に示す。図4に示されるように、本例によるバックアップシステムは、DRAM中のデータのフラッシュメモリへの転送を約2.80時間で完了した後、約16.9時間にわたってDRAMがセルフリフレッシュモードで作動してDRAM中のデータを保持する。したがって、比較的小型の全固体電池を用いながらも、約2.80時間で不揮発性メモリであるフラッシュメモリへのデータのコピーを完了して全固体電池の電池切れに備えるとともに、その後も約16.9時間にわたってDRAM内にもデータを保持することができる。その間、データ転送の1ブロック(30秒)ごとに電源復旧の有無を確認するための電源系統モニタリングが1秒間行われ、電源復旧時における瞬時のデータ復帰を可能とする。
【0077】
本例における各種条件の概算値は以下のとおりである。
‐ 電池の利用可能エネルギー:2.4Wh(=400Wh/L×2cm×6cm×0.5cm/1000)
‐ 電池からの出力電流:0.181A(=2.4Wh/3.3V×(0.25C/1.0C))
‐ データ転送に要する時間:2.71時間(=(0.125Wh/L)/3.3V/0.014A、0.014A=0.181A−0.167A)
‐ データ転送のためのブロック数:325(=2.71時間/30秒、この30秒が1ブロックのデータ転送に要する時間であり、電源系統モニタリング用の時間を確保するため、34秒(DRAMの仕様によるデータ転送時間)よりも短くすべきである。)
‐ 1ブロック当たりの電源系統モニタリング:1秒(この1秒間に電源復旧時の電源からの割り込み信号を受容可能となる。)
‐ 合計データ転送時間:2.80時間(=(30秒+1秒)×325)=10075秒)
‐ データ転送のための合計エネルギー:1.67Wh(=0.181A×3.3V×10075秒/3600)
‐ データ転送後のセルフリフレッシュ時間:16.9時間(=(2.4Wh−1.67Wh)/0.037W−2.80)
【0078】
例C1(参考)
全固体電池を揮発性メモリであるDIMM(Dual Inline Memory Module)のパックアップに適用する一例を以下に示す。本例は、不揮発性メモリを組み合わせたバックアップシステムではないが、全固体電池を用いた揮発性メモリ用バックアップシステムの好ましい変形例として以下に参考のために示すものとする。本例で前提とするDIMMの仕様及び全固体電池の仕様は以下のとおりである。
<DIMMの前提仕様>
‐ DDR3 8GB DIMM(Samsung Electronics製、M393B1G70QH0−YH9/K0)
‐ 電圧:1.35V
‐ セルフリフレッシュ電流:0.3A
<全固体電池の仕様>
‐ エネルギー密度:400Wh/L
‐ 電池のサイズ:20mm×60mm×5mm
‐ データ転送に利用可能なCレート:0.25C
【0079】
本例のバックアップシステムは、上記DIMMに上記全固体電池が接続された構成を有し、全固体電池から供給される電流によりDIMMをセルフリフレッシュモードにて作動させるものである。本例における各種条件の概算値は以下のとおりである。
‐ 電池の利用可能エネルギー:2.4Wh(=400Wh/L×2cm×6cm×0.5cm/1000)
‐ 電池からの出力電流:0.444A(=2.4Wh/1.35V×(0.25C/1.0C))(この電流値はセルフリフレッシュモード電流(0.3A)に適用可能である。)
‐ 合計バックアップ時間:5.92時間(=(2.4Wh/(1.35V×0.3A))
【0080】
上記のとおり、本例のバックアップシステムによればDIMM中のデータを5.92時間保持することができる。この点、電源異常の95%が4時間以内に電源復旧するとの統計が知られている。かかる統計に照らせば、合計バックアップ時間が5.92時間である本例のバックアップシステムは、不揮発性メモリを用いない極めて簡素な構成ではありながら、電源異常の殆ど(95%以上)に対処可能であるといえる。
【0081】
例C2(参考)
例C1とは異なる仕様のDIMMを採用したこと以外は、例C1と同様に構成したパックアップシステムの一例を以下に示す。本例で採用するDIMMは、例1で採用するDIMMよりも低消費電力化が図られたものである。本例もまた、不揮発性メモリを組み合わせたバックアップシステムではないが、全固体電池を用いた揮発性メモリ用バックアップシステムの好ましい変形例として以下に参考のために示すものとする。本例で前提とするDIMMの仕様及び全固体電池の仕様は以下のとおりである。
<DIMMの前提仕様>
‐ DDR4 8GB DIMM(Micron製 MTA18ASF1G72PZ−8GB)
‐ 電圧:1.2V
‐ セルフリフレッシュ電流:0.18A
<全固体電池の仕様>
‐ エネルギー密度:400Wh/L
‐ 電池のサイズ:20mm×60mm×2.5mm
‐ データ転送に利用可能なCレート:0.25C
【0082】
本例における各種条件の概算値は以下のとおりである。
‐ 電池の利用可能エネルギー:1.2Wh(=400Wh/L×2cm×6cm×0.25cm/1000)
‐ 電池からの出力電流:0.25A(=1.2Wh/1.2V×(0.25C/1.0C))(この電流値はセルフリフレッシュモード電流(0.18A)に適用可能である。)
‐ 合計バックアップ時間:5.56時間(=(1.2Wh/(1.2V×0.18A))
【0083】
上記のとおり、本例のバックアップシステムによればDIMM中のデータを5.56時間保持することができる。この点、電源異常の95%が4時間以内に電源復旧するとの統計が知られている。かかる統計に照らせば、合計バックアップ時間が5.56時間である本例のバックアップシステムは、不揮発性メモリを用いない極めて簡素な構成ではありながら、電源異常の殆ど(95%以上)に対処可能であるといえる。
【0084】
例C3
本発明の全固体電池を用いた揮発性メモリ用バックアップシステムをNVDIMM(不揮発性メモリモジュール)用途向けに適用する他の一例を以下に示す。特に、本例は、全固体電池をスイッチによりオン・オフ切り替えすることで、全固体電池とバイパスコンデンサとの役割を明確に区別した例である。本例で前提とする、NVDIMMの仕様、DRAMの作動条件、及び全固体電池の仕様は以下のとおりである。
<NVDIMMの前提仕様>
‐ NVDIMM(8GB DDR3)(Netlist製、NV3848HAT17−000NL000)
‐ メモリサイズ:8GB
‐ メモリ構成:18チップの4GビットDDR3 DRAMと、
2チップの32GビットNAND型フラッシュメモリで構成
‐ DIMMボードサイズ:133.35mm×24.00mm(DDR3スタンダード)
<スーパーキャパシタ(※)によるDRAMからフラッシュメモリへのデータ転送の作動条件>
‐ 電圧:5.4V(2.7Vキャパシタの直列接続)
‐ 電流:2.5A
‐ 時間:34秒
‐ エネルギー:0.128Wh(=5.4V×2.5A×34秒/3600)(スーパーキャパシタの場合から算出した値)
※なお、上記は前提条件としてスーパーキャパシタの仕様を仮定したものであって、本例では上記スーパーキャパシタの代わりに全固体電池を使用する。
<DDR3セルフリフレッシュモードの作動条件(18チップによる)>
‐ 電圧:1.35V
‐ 電流:0.3A
<全固体電池の仕様>
‐ エネルギー密度:400Wh/L
‐ 電池のサイズ:20mm×80mm×4mm
‐ データ転送に利用可能なCレート:0.25C
【0085】
<等価回路>
上述した前提条件の下、DRAMからフラッシュメモリへのデータ転送と、セルフリフレッシュモードによるDRAM保存とを組み合わせたハイブリッド作動を実現する等価回路が図5に示される。図5の等価回路図に記される主な符号について以下に説明する。
‐ R:全固体電池からのピーク出力電流を低減するための抵抗(インダクタも利用可能である)
‐ C:DRAMからフラッシュメモリへのデータ転送のための電流を印加するバイパスコンデンサ
‐ Z:DRAM及びフラッシュメモリの等価インピーダンス(可変)(3.7/3.3及び3.7/1.35のDC/DCコンバータを備える)
‐ i:(i)DRAMからフラッシュメモリへのデータ転送の間は、電流が3.6A(電圧は3.7V)(参考:スーパーキャパシタの場合は2.5A(電圧:5.4V))、
(ii)DRAMがセルフリフレッシュモードでありフラッシュメモリにアクセスが無い間は、電流が0.11A(電圧は3.7V)(参考:例C1で使用される8GB DDR3 DIMMの場合には電流0.3A(電圧は1.35V))
【0086】
<電源出力波形>
図5に示される等価回路において前述した前提条件に従い実現される、本例のバックアップ電源出力波形を図6に示す。図6に示されるように、本例によるバックアップシステムは、パイパスコンデンサから供給されるピーク電流が0.1秒間回路に流れてDRAMからフラッシュメモリへ、分割されたデータが転送され、その間、スイッチSWがOFFとされるため、全固体電池からの電流は供給されない。続いて、スイッチSWがONに切り替わり、全固体電池から電流が30秒間回路に流れ、DRAMをセルフリフレッシュモードで作動させてDRAM中のデータを保持しながら、バイパスコンデンサを充電する。そして、この30秒間を経てバイパスコンデンサの充電が完了し、再度、スイッチSWがOFFに切り替わり、上記同様、DRAMからフラッシュメモリへのデータ転送(0.1秒間)、及びその後のセルフリフレッシュモードでの作動(30秒間)が順次交互に繰り返される。
【0087】
本例における各種条件の概算値は以下のとおりである。
(設計パラメータ)
‐ データ転送時間の34秒は340ステップに分割される(34秒=0.1秒×340秒)。
‐ バイパスコンデンサを電池で充電する時間は30秒である。
【0088】
‐ 1ステップに要する電荷:0.36C(=3.6A×0.1秒)
‐ Cの最小静電容量:0.9F(=0.36C/(3.7V−3.3V)
(例えば、村田製作所製EDLC(電気二重層キャパシタ)のサイズは1Fで14mm×30mm×3.7mm)
‐ 抵抗R:8.3Ω(このRの値は以下の式から算出される。
30秒=4×(時定数)(Vの99%が回復する時間)
=4×0.9F×R
‐ iの最大値:0.16A(=(3.7V−3.3V)/8.3Ω+0.11A)
‐ 電池に必要とされる合計エネルギー:1.42Wh(=(0.16A+0.11A)/2)×(30秒/3600)×3.7V×340ステップ
【0089】
(電池の適用)
‐ 電池の利用可能エネルギー:2.56Wh(=400Wh/L×2cm×8cm×0.4cm/1000)(この値は、電池に必要とされる合計エネルギーである1.42Whよりも大きくする必要がある。)
‐ 電池のピーク出力電流:0.173A(=2.56Wh/3.7V×0.25(但し0.25はCレートである。)(この電流値は0.16Aよりも大きくする必要がある。)
‐ 合計データ転送時間:2.8時間(=(0.1秒+30秒)×340ステップ/3600)
‐ データ転送後のDRAM保存時間:2.8時間(電池の残存エネルギーは1.14WH=2.56−1.42Wh、2.8時間=1.14Wh(3.7V×0.11A)、セルフリフレッシュモードが適用される。)
‐ 合計DRAM保存時間:5.6時間(=2.8時間(合計データ転送時間)+2.8時間(データ転送後のDRAM保存時間))
【0090】
上記のとおり、本例のバックアップシステムによれば、DRAM中のデータのフラッシュメモリへの転送を2.8時間で完了した後、2.8時間にわたってDRAMがセルフリフレッシュモードで作動してDRAM中のデータを保持する。したがって、2.8時間で不揮発性メモリであるフラッシュメモリへのデータのコピーを完了して全固体電池の電池切れに備えるとともに、その後も2.8時間にわたってDRAM内にもデータを保持することができる。この点、電源異常の95%が4時間以内に電源復旧するとの統計に照らせば、合計DRAM保存時間が5.6時間である本例のバックアップシステムは、電源異常の殆ど(95%以上)にDRAMレベルで対処可能であるといえる。また、5.6時間経過後においてもフラッシュメモリ中に既にコピーされているデータに基づくシステム復旧が可能である。すなわち電源復旧までの時間に関わらずデータの消失を効果的に回避することができる。
【要約】
全固体電池を用いた揮発性メモリ用バックアップシステムが提供される。このバックアップシステムは、揮発性メモリと、揮発性メモリと互いにデータ伝送可能に接続された不揮発性メモリと、揮発性メモリ及び不揮発性メモリと接続され、電源異常時に揮発性メモリに電流を継続的又は間欠的に供給して揮発性メモリ中のデータを保持可能とする全固体電池と、全固体電池と並列に接続され、電源異常時にピーク電流を揮発性メモリに間欠的に供給可能な制御手段であって、ピーク電流を介して、又はピーク電流及びそれに付随して一時的に増大される全固体電池からの電流を介して、揮発性メモリ中のデータを分割された量ごとに不揮発性メモリに間欠的に転送して不揮発性メモリに保存させ、それにより揮発性メモリ中のデータを不揮発性メモリに徐々に蓄積させる制御手段とを備えてなる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6