特許第5837269号(P5837269)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5837269
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】車載用前照灯
(51)【国際特許分類】
   F21S 8/12 20060101AFI20151203BHJP
【FI】
   F21S8/12 120
   F21S8/12 140
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-537444(P2015-537444)
(86)(22)【出願日】2013年9月17日
(86)【国際出願番号】JP2013075023
(87)【国際公開番号】WO2015040671
(87)【国際公開日】20150326
【審査請求日】2015年8月12日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123434
【弁理士】
【氏名又は名称】田澤 英昭
(74)【代理人】
【識別番号】100101133
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 初音
(74)【代理人】
【識別番号】100199749
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 成
(74)【代理人】
【識別番号】100156351
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 秀央
(74)【代理人】
【識別番号】100188880
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 辰哉
(74)【代理人】
【識別番号】100197767
【弁理士】
【氏名又は名称】辻岡 将昭
(72)【発明者】
【氏名】大澤 孝
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 正人
(72)【発明者】
【氏名】南 史浩
【審査官】 松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−157501(JP,A)
【文献】 特開2003−317515(JP,A)
【文献】 特開2013−152813(JP,A)
【文献】 特開2013−110005(JP,A)
【文献】 特開2012−190551(JP,A)
【文献】 特開2004−241349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源の発する光を投影レンズによって車両の前方に照射するプロジェクタ式の車載用前照灯であって、
発光面の1端辺が直線状に形成されて光軸側に配置され、当発光面の中心を前記光軸からずらして配置された、前記光源を構成するLED(Light Emitting Diode)と、
前記光軸方向に並べて配置され、前記投影レンズを構成する2枚の凸レンズと、
前記LEDと前記投影レンズの間に配置され、透明な材料を用いて形成され、その内面に前記LEDの発する光を反射する反射面を有し、当反射面の前記投影レンズ側の端辺でカットオフラインを形成する配光部材とを備えることを特徴とする車載用前照灯。
【請求項2】
前記2枚の凸レンズが形成する一式の前記投影レンズの前記LED側の焦点は、前記配光部材の前記投影レンズ側の端辺から所定距離内に位置することを特徴とする請求項1記載の車載用前照灯。
【請求項3】
前記配光部材は、
前記LEDの発する光を入射する、前記LED側を向いた入射面と、
当入射した光を前記投影レンズに出射する、前記投影レンズ側を向いた出射面とを有し、
前記入射面および前記出射面のいずれか一方、または双方の面は、前記光軸に直交する面に対して傾斜していることを特徴とする請求項1記載の車載用前照灯。
【請求項4】
前記配光部材の前記入射面は、前記光軸から離れるにつれて前記投影レンズ側へ傾斜していることを特徴とする請求項3記載の車載用前照灯。
【請求項5】
前記配光部材は、前記投影レンズを構成する前記2枚の凸レンズのうち、前記LED側の凸レンズに固定されていることを特徴とする請求項1記載の車載用前照灯。
【請求項6】
前記投影レンズを構成する前記2枚の凸レンズのいずれか一方、または双方は、前記光軸の上側と下側の大きさが異なることを特徴とする請求項1記載の車載用前照灯。
【請求項7】
前記投影レンズを構成する前記2枚の凸レンズのいずれか一方、または双方のレンズ面は、上下方向の曲率と左右方向の曲率が異なることを特徴とする請求項1記載の車載用前照灯。
【請求項8】
前記LEDとは異なる第2のLEDが、前記光軸を挟んだ反対側に設置されていることを特徴とする請求項1記載の車載用前照灯。
【請求項9】
前記投影レンズを構成する前記2枚の凸レンズのいずれか一方、または双方は、非球面レンズであることを特徴とする請求項1記載の車載用前照灯。
【請求項10】
前記投影レンズを構成する前記2枚の凸レンズのいずれか一方、または双方は、フレネルレンズであることを特徴とする請求項1記載の車載用前照灯。
【請求項11】
前記配光部材は、前記反射面の前記投影レンズ側の端辺のうちの走行車線側が下方に傾斜した形状であることを特徴とする請求項1記載の車載用前照灯。
【請求項12】
前記投影レンズと前記配光部材は、同じ種類の樹脂を用いて形成されていることを特徴とする請求項1記載の車載用前照灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、LEDを光源として、当LEDの発する光を車両の前方に投影する投影レンズを備えた車載用前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化を助長する二酸化炭素の排出量を削減する風潮と、発光効率の高い明るいLEDが実現化される昨今の情勢の中において、車載用灯具の光源にも、従来のタングステンフィラメントによる電球に代替して、低電力のLED(発光ダイオード、半導体光源)が普及され始めている。当LEDは、長寿命、かつ、一定の電流を供給する簡単な制御によって安定した明るさを発することができるため、車載用灯具の光源として好適であり、近年の高出力(高光度)化も加勢して、車載用前照灯の光源としても普及し始めている。
【0003】
ところで、車載用前照灯の光学系は、凹面状の反射鏡を使用し、光源の発する光を当反射鏡によって反射して車両の前方に出射するパラボラ式と、凸状の投影レンズを使用し、光源の発する光を当投影レンズによって屈折して車両の前方に出射するプロジェクタ式に分類される。
【0004】
以下に、本願発明に関与するプロジェクタ式の車載用前照灯の構成に関して補足する。
従来のタングステンフィラメントを光源とする構成においては、四方に光を放つ長さ4mmほどのフィラメントの両端には導線が接続され、その上、当フィラメントの外郭にはガラス球が存在するために、光を発する部分の形状、あるいは、光を放射する方向を任意に加工することができない。
【0005】
そこで、回転楕円体状の反射鏡を使用して、当回転楕円体状の反射鏡の一方の焦点に光源となるフィラメントを配置し、他方の焦点にフィラメントの発する光を集めてフィラメントの実像を結像する。当フィラメントの実像の近傍には光源の構造物が存在しないので、任意の光学部材を使用することが可能となり、当フィラメントの実像を通過する光の中の必要な部分を車両の前方に投影することで、車両前方を照らす車載のすれ違い灯用の配光を形成していた。換言すれば、当フィラメントの実像の近傍に遮光板を配置して、不要な光を当遮光板で遮光して、すれ違い灯用として必須な対向車の運転者を照らさない暗部を形成していた。つまり、光源がガラス球に覆われたフィラメントのままでは、すれ違い用の配光を放つ光源として使用することができないので、あえて、回転楕円体状の反射鏡によって、周囲に構造物が存在しないフィラメントの実像を結像し、当フィラメントの実像に対して形状の加工をおこない、投影レンズに導く構成にしていた。
【0006】
しかるに、上記LEDを光源とするプロジェクタ式車載用前照灯に関しては、光を発する部分、即ちLEDの発光面を任意の形状にすることが可能であり、外郭のガラス球がないために、配光を調整する部材をLEDの近傍に配置することも可能である。つまり、LEDを光源とするプロジェクタ式の車載用前照灯に関しては、従来のタングステンフィラメントを使用する光学系および配光技術を踏襲する必要はない。
【0007】
以下に、プロジェクタ式でありながら、従来の回転楕円体状の反射鏡を使用せずに、車両の前方にLEDの発光面を向けて、LEDが発する光を直接投影レンズに入射する構成の車載用前照灯の実施例を示す。
【0008】
特許文献1に係るダイレクトプロジェクション型照明用灯具は、LEDの発する光のうち、広範囲に広がって投影レンズに入射しない光を、LEDの周囲に配置した補助レンズによって回収する構成である。当補助レンズを使用することで光束利用率を向上することができる。
ただし、投影レンズに入射しない光を、当投影レンズを迂回して車両の前方に導く構成であり、投影レンズの開口部より大きな補助レンズを使用するために、灯具の開口部が大きくなり、小形の前照灯あるいは光学部材としては適さない。
【0009】
特許文献2に係る車両用灯具ユニットは、複数のLEDによって構成されるLED光源が発する光の斑(照度ムラ)を緩和するために、投影レンズの後方焦点に光を散乱させる光学面を備え、それぞれのLEDが発する光を、当光学面を透過させて混合し、投影レンズに導く構成である。当レンズ面の散乱によって投影される照射光の光は均一になる。
【0010】
例えば、特許文献2の図1等には、投影レンズ(20)を複数のレンズ(21,22)によって構成し、光源ユニット(30)に最も近いレンズ(21)の面(S1)を、光を散乱させる形状にして、当レンズ面(S1)を投影レンズ(20)の後方焦点と一致させる構成が記載されている。
また例えば、特許文献2の図5および図6等には、投影レンズ(20)と光源ユニット(30)の間に、内側が反射面(31a)となる筒状の導光部材(32)を備え、光源ユニット(30)に最も近いレンズ(21)のレンズ面(S1)を光を散乱させる形状にして、当導光部材(32)の出射口(31c)と、光を散乱させるレンズ面(S1)と、投影レンズ(20)の後方焦点を同一位置に一致させる構成が記載されている。
以上、括弧内の符号は特許文献2のものを援用した。
【0011】
このように、投影レンズの表面を光が散乱する形状にすることで、個々のLEDが発する明るさを均一にすることができるが、特許文献2の構成を車載用のすれ違い灯に使用するならば、散乱面の存在によってすれ違い灯用の上の暗部と下の明部の境界をぼかすこととなるため、はっきりとした上下の明暗が必要なすれ違い灯用には適さない。
【0012】
特許文献3に係る車両用前照灯は、LEDの光軸を挟んで下側に平面の第1の反射面と、上側に曲面の第2の反射面を備え、当第1の反射面の短辺を投影レンズの焦点群に合わせる構成である。
【0013】
例えば、特許文献3の図8等には、第1の反射面(22)と第2の反射面(26)で囲まれる部分が樹脂36で満たされた光学部材(16B)が記載されている。LED光源(12)が発する光を第1と第2の反射面(22,26)によって反射しながら投影レンズ(14)に導くことで、LED光源(12)の利用率を高くすることができ、奥行きが短い薄型の灯具を構成することができる(括弧内の符号は特許文献3のものを援用した)。
【0014】
ただし、第1と第2の反射面には、反射表面処理を施す必要がある。つまり、使用する反射面は鏡面である必要があり、反射鏡を形成するために、例えば反射用金属の蒸着、および当蒸着面の酸化防止処理等の複数の加工が必要となる。従って、部品としての単価が上昇する。また、複数の部品を使用するため、構成が複雑になり、組み立て工数が増大する可能性もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2009−104933号公報
【特許文献2】特開2013−73811号公報
【特許文献3】特開2010−49886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記特許文献1〜3の構成は、上述のように一長一短があり、さらなる改良が望まれるところである。
【0017】
この発明は、このような観点からなされたもので、小形ながら充分な明るさを発することができると共に、簡素かつ安価な車載用前照灯を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この発明の車載用前照灯は、発光面の1端辺が直線状に形成されて光軸側に配置され、当発光面の中心を光軸からずらして配置された、光源を構成するLEDと、光軸方向に並べて配置され、投影レンズを構成する2枚の凸レンズと、LEDと投影レンズの間に配置され、透明な材料を用いて形成され、その内面にLEDの発する光を反射する反射面を有し、当反射面の投影レンズ側の端辺でカットオフラインを形成する配光部材とを備えるものである。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、投影レンズを2枚の凸レンズで構成することで、個々の凸レンズを小径にしてもLEDの発する光を有効に使用することができるため、小形ながら充分な明るさを発することのできる車載用前照灯を実現できる。また、配光部材を透明な材料を用いて形成し、その内面を反射面として使用することで、鏡面加工を施す必要がなく、簡素な構成で安価な車載用前照灯を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】この発明の実施の形態1に係る車載用前照灯の構成例を示す断面図である。
図2】車載用前照灯から車両前方に照射されたすれ違い灯用照射光の様子を示す図である。
図3】実施の形態1に係る車載用前照灯のうちのLED、配光部材、およびLED側凸レンズの構成を示す斜視図である。
図4】実施の形態1に係る車載用前照灯において一式の投影レンズ2の焦点Fの配置例を説明する図である。
図5】実施の形態1に係る車載用前照灯に用いる配光部材の例を示す斜視図である。
図6】実施の形態1に係る車載用前照灯の光学系の変形例を示す側面図である。
図7】実施の形態1に係る車載用前照灯に用いる投影レンズの例を示す三面図である。
図8】実施の形態1に係る車載用前照灯の光学系の変形例を示す側面図である。
図9】実施の形態1に係る車載用前照灯の光学系の変形例を示す側面図である。
図10】この発明の実施の形態2に係る車載用前照灯の光学系の構成例を示す側面図である。
図11】車載用前照灯から車両前方に照射された走行灯用照射光の様子を示す図である。
図12】実施の形態2に係る車載用前照灯の光学系の変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明をより詳細に説明するために、この発明を実施するための形態について、添付の図面に従って説明する。
実施の形態1.
図1に示すように、本実施の形態1に係る車載用前照灯は、すれ違い灯用プロジェクタ式前照灯の一例であり、発光面1aの一端辺が直線状になった直線部1bを光軸側に配置し、当発光面1aの中心を光軸からずらして設置したすれ違い灯用のLED1と、光軸方向に並べて配置された照射側凸レンズ2aとLED側凸レンズ2bで構成される投影レンズ2と、LED1と投影レンズ2の間に配置され、透明な材料を用いて形成され、その内面にLED1の発する光を反射する反射面3aを有し、当反射面3aの投影レンズ側端辺3bが光軸上に配置された配光部材3と、LED1のヒートシンクおよびLED1と投影レンズ2と配光部材3の固定部材を兼用する放熱兼固定部材4と、これらを収容するケース5と、前面レンズ6とを備える。
【0022】
一式の投影レンズ2は、主として、LED側凸レンズ2bがLED1の発する光を集光し、照射側凸レンズ2aが車両の前方に投影する機能を果たす。例えばLED1から上方に向かう光L1aはLED側凸レンズ2bがなければ照射側凸レンズ2aの斜め上方に漏れ、前照灯の照射光として活用されない。一方、LED側凸レンズ2bを設けた場合、LED1から上方に向かう光L1がLED側凸レンズ2bで屈折して照射側凸レンズ2aに入射し、車両の前方へ照射される。よって、LED1の発する光が有効に活用される。
【0023】
従来は1枚だった投影レンズを、図1のように照射側凸レンズ2aとLED側凸レンズ2bの2枚で構成することにより、焦点距離が短くなるため、LED側凸レンズ2bのLED1側を向く面と一式の投影レンズ2のLED1側の焦点Fとを接近させることができ、LED1および配光部材3の近傍にLED側凸レンズ2bを配置することができる。
そのため、投影レンズ2として開口径の小さなレンズを使用しても、広範囲に発するLED1の光の漏洩を減らして、投影レンズ2に効率よく入射させることができる。
【0024】
図2は、車載用前照灯から車両前方に照射されたすれ違い灯用照射光の様子を示しており、照射光が明るい部分を濃く、暗い部分を薄く表現している。
すれ違い灯用の配光には、対向車の運転者を照らさないために、照射光の上側に暗部を設けることが必須であり、上側を暗く、下側(路面側)を明るくする必要がある。照射光の上側暗部と下側明部の境界線がカットオフラインである。
また、カットオフラインの直下、即ち車両の遠方を照らす部位を明るくする必要もある。
【0025】
上記要求を満たすために、LED1と投影レンズ2の間に配光部材3を介在させる。LED1から下方に発して投影レンズ2を経由してカットオフラインの上方に向かう光を、配光部材3の反射面3aによって反射することで、逆にカットオフラインの直下に導く(例えば、図1のL2)。これにより、照射光の上側を暗くすると同時に、下側のカットオフライン直下を明るくして、すれ違い灯用の配光を形成する。
【0026】
なお、当すれ違い灯用のカットオフラインをより鮮明に形成するために、当直線状のカットオフラインに対応するLED1の発光面1aの光軸側端辺を直線状に形成して直線部1bにすることが望ましい。
LED1の発光面1aの端辺を直線状にするために、発光面1aが長方形状のLEDを使用してもよいし、一辺が直線状になるように複数のLEDを並べて使用しても構わない。さらに、LED1として、レーザLED、有機LED等の半導体光源を使用しても構わない。
【0027】
ここで、図3に、LED1、投影レンズ2、および配光部材3の位置関係と、配光部材3の形状例を示す。LED1は、発光面1aを光軸と直交させ、当発光面1aの直線部1bを光軸側にして、発光面1aの中心を光軸からずらして配置する。
配光部材3は、透明な樹脂またはガラス等によって形成され、配光部材3の光軸側には平面状の反射面3aを形成し、当反射面3aの投影レンズ側端辺3bを光軸上に配置する。LED1の発する光が入射する入射面3cと、入射した光をLED側凸レンズ2bへ出射する出射面3dは、光軸に直交する。この構成において、LED1から下方へ発する光のうち、配光部材3の内部の反射面3aに浅い角度で入射する光L3は、全反射される。つまり、配光部材3に鏡面加工を施すことなく、好適な反射面3aを構成することができる。
【0028】
また、図3に示す配光部材3の形状例では、反射面3aの投影レンズ側端辺3bのうち、車両の前方に向かって左側(歩道側)を水平にして水平面3b−1を成し、同右側(対向車線側)を下方に傾斜させて傾斜部3b−2を成す。当投影レンズ側端辺3bの形状によって、図2のように、右側(対向車線側)の明暗境界線を水平にしながら、左側(歩道側)を高い位置まで照らすことのできるすれ違い灯用の配光を形成できる。
当然のことながら、右側通行用の前照灯においては、配光部材3の投影レンズ側端辺3bの形状を左右反転させ、車両の前方に向かって右側(歩道側)を水平面3b−1、同左側(対向車線側)を傾斜部3b−2にする。
【0029】
以上のように、反射面3aの投影レンズ側端辺3bの形状を投影レンズ2によって車両の前方に投影し、照射することで、すれ違い灯用の配光が形成される。
【0030】
さらに、当すれ違い灯用の照射光を、車両の直前から遠方まで一様な配光で照射するために、一式の投影レンズ2の焦点Fの近傍(所定距離以内)に、配光部材3の投影レンズ側端辺3bを配置する。
ここで、図4を参照しながら、一式の投影レンズ2の焦点Fの配置例を説明する。LED側凸レンズ2bのLED1側の面から一式の投影レンズ2の焦点Fまでの距離をA、一式の投影レンズ2の焦点Fから配光部材3の投影レンズ側端辺3bまでの距離をBとする。
【0031】
上記の投影レンズ2の焦点Fと配光部材3の投影レンズ側端辺3bとの位置関係を示す「近傍(所定距離以内)」とは、投影レンズ2の焦点Fに対して、投影レンズ側端辺3bを、投影レンズ2側あるいはLED1側に、距離Aの1/5以内(即ち、B≦A/5)に配置することである。
また、好ましくは、投影レンズ2の焦点Fに対して、投影レンズ側端辺3bを、投影レンズ2側あるいはLED1側に、距離Aの1/10以内(即ち、B≦A/10)に配置することである。
さらに、好ましくは、投影レンズ2の焦点Fに対して、投影レンズ側端辺3bを、投影レンズ2側あるいはLED1側に、距離Aの1/50以内(即ち、B≦A/50)に配置することである。
ただし、図4では投影レンズ2の焦点Fに対して、投影レンズ側端辺3bをLED1側に配置する場合の距離Bのみ示し、投影レンズ側端辺3bを投影レンズ2側に配置する場合の距離は図示していない。
【0032】
焦点Fに対する投影レンズ側端辺3bの設置距離は、照射光の配光の要望に応じて決定すればよい。ちなみに、すれ違い灯用のカットオフラインを形成する配光部材3の投影レンズ側端辺3bを、一式の投影レンズ2の焦点Fに近づけて設置した場合、車両前方の遠方で照射光のカットオフラインが鮮明になる一方、車両に近いところでは照射光のカットオフラインがぼやける。配光部材3の投影レンズ側端辺3bを、一式の投影レンズ2の焦点FからLED1側に離して設置した場合、車両前方の近いところで照射光のカットオフラインが鮮明になる一方、車両前方の遠方で照射光のカットオフラインがぼやける。
【0033】
なお、配光部材3は、光軸側に反射面3aとなる平面を形成可能な形状であれば、図3に示す以外の形状であっても構わない。配光部材3の変形例として、図5(a)〜図5(f)を示す。
図5(a)の配光部材3−1は、直方体状であって、下部の長方形平面を反射面3aとする。下部の反射面3aの投影レンズ側端辺3bによって、すれ違い灯用のカットオフラインを形成する。当配光部材3−1の投影レンズ側端辺3bにより形成されるカットオフラインは、歩道側と対向車線側で同じ高さの直線状になる。
【0034】
図5(b)の配光部材3−2は、図5(a)に示した配光部材3−1の入射面3cと出射面3dを、光軸に直交する面に対して傾斜させた形状である。入射面3cと出射面3dは、光軸から離れるにつれて不図示の投影レンズ2側に傾斜している。このように、光軸から離れた配光部材3−2の上部を投影レンズ2側に傾けることによって、LED1が発する光を入射面3cと出射面3dで屈折させて光軸側に導くことができ、LED1の発光面1aの直線部1bを光軸に接して配置する必要がなくなる。
換言すれば、LED1の発光面1aの直線部1bを光軸から離して配置することができる。
【0035】
図5(c)の配光部材3−3は、図5(b)に示した配光部材3−2の反射面3aの右側(対向車線側)の端辺を、図3の配光部材3と同様に、下方に傾斜させて傾斜部3b−2を形成したものである。
【0036】
図5(d)の配光部材3−4は、図5(a)に示した配光部材3−1の出射面3dを曲面状にし、投影レンズ側端辺3bを円弧状にしたものである。投影レンズ2の収差によって、投影レンズ2を通過する光が平行光になる焦点に順ずる線(焦点群)が、光軸に対して直角な直線にならず円弧状になるときに、同じ円弧状の投影レンズ側端辺3bを形成した配光部材3−4を使用する。当投影レンズ側端辺3bの形状によって、車両の中央から左右方向の広範囲のカットオフラインを鮮明にして、上下の明暗部を形成することができる。
【0037】
図5(e)の配光部材3−5は、図5(d)に示した配光部材3−4の入射面3cと出射面3dを、図5(b)と同様に、光軸に直交する面に対して傾斜させた形状である。
【0038】
図5(f)の配光部材3−6は、図5(e)に示した配光部材3−5の反射面3aの右側(対向車線側)の端辺を、図3の配光部材3と同様に、下方に傾斜させて傾斜部3b−2を形成したものである。
【0039】
なお、図5(b)、図5(c)、図5(e)、図5(f)では、入射面3cと出射面3dの双方を投影レンズ2側に傾斜させたが、いずれか一方のみ傾斜させても構わない。
【0040】
ここで、図6に、図5(c)の配光部材3−3を使用した光学系の構成例を示す。配光部材3−3がLED1の発する光を屈折させて光軸側に導くので、LED1の発光面1aの直線部1bを光軸から離して配置することができる。
当LED1の直線部1bと光軸の離間間隔dを大きく取る必要があるときは、配光部材3−3の傾斜角度θを大きくするか、配光部材3−3の厚さtを厚くして、LED1が発する光を光軸側に大きく屈折させて、見かけ上のLED1の直線部1bを光軸に近付ける。
【0041】
また、図6の構成例では、LED1の発する熱を放熱するための放熱フィン4aを放熱兼固定部材4に設けている。この放熱フィン4aをケース5の外へ露出させて、放熱性の向上を図ってもよい。
【0042】
さらに、図6の構成例では、照射側凸レンズ2aとLED側凸レンズ2bと配光部材3−3を同じ材料(例えば、アクリル樹脂)で構成すると共に、LED側凸レンズ2bと配光部材3−3を一体にして成型している。
LED側凸レンズ2bと配光部材3−3を一体にして成型すれば、両者は互いに固定される。また、LED側凸レンズ2bと配光部材3−3を、同じ材料を用いて同一工程で作製できるため、相互の位置精度が高く、かつ、低コストの部材が実現できる。さらに、配光部材3−3の入射面3cと出射面3dを傾斜させる構成は、LED側凸レンズ2bと配光部材3−3を一体に成型する金型の抜き勾配を確保するのにも好都合である。
【0043】
この図6において、投影レンズ2の光軸より下方には、配光部材3−3の反射面3aに遮られてLED1の発する光が届かない部位C1,C2が存在する。当光が届かない部位C1,C2の凸レンズは無用であり、削除しても光学的には問題がない。従って、当光が届かない部位C1,C2を削除してもよい。
【0044】
ここで、図7に、照射側凸レンズ2aまたはLED側凸レンズ2bとして使用可能な凸レンズの例を示す。図7(a)の三面図に示す凸レンズは、標準的な、一方が凸面で他方が平面の凸レンズである。当凸レンズを照射側凸レンズ2aまたはLED側凸レンズ2bとして使用することで、凸レンズの上下方向の屈折によりカットオフラインの上下の明暗を生成し、凸レンズの左右方向の屈折により前照灯の照射光を左右に広げ、傾斜部3b−2により形成される斜めのカットオフラインを生成する。
なお、図7(a)の標準的な凸レンズは、LED1の発した光を中央(光軸側)に集中させるために、特に、LED側凸レンズ2bとして使用するのに適している。
【0045】
図7(b)の凸レンズは、図7(a)に示した標準的な凸レンズのうち、図6で説明した光が届かない部位C1,C2(即ち、光軸下側の一部)を削除して、光軸の下側D2を同上側D1より小さくした形状である。当凸レンズを、図8のように照射側凸レンズ2a−1、LED側凸レンズ2b−1として使用可能である。これにより、車載用前照灯を上下方向に小形化できる。
【0046】
車載用前照灯においては、必ずしも図7(a)のように照射側凸レンズ2aまたはLED側凸レンズ2bとして使用する凸レンズの上下と左右の屈折量を同等にする必要はなく、例えば、図7(c)のような楕円状の凸レンズ、図7(d)のような半円柱状の凸レンズであってもよい。
レンズ面の曲率が大きければ、通過光が当レンズ面で大きく屈折して、焦点距離の短い凸レンズが形成される。逆に、レンズ面の曲率が小さければ、通過光の屈折量が小さいため、焦点距離の長い凸レンズが形成される。
【0047】
図7(c)のように、上下方向の曲率が左右方向の曲率より大きい楕円状の凸レンズを照射側凸レンズ2a−2として使用することで、上下の明暗を鮮明にしながら、左右の広範囲に光を照射することができる。よって、例えば歩道の奥の方の歩行者、および対向車線の路肩を照らすことができ、より好ましい前照灯用の配光を形成できる。
【0048】
図7(d)のように、上下方向にだけ凸レンズの効果を有した半円柱状の凸レンズを照射側凸レンズ2a−3として使用した場合には、上下方向においては図7(c)のように歩道側の高い位置まで照らす傾斜した配光の形成はできないが、左右方向においては図7(c)よりさらに広範囲を照らす前照灯用の配光を形成できる。
【0049】
なお、図7(c)に楕円状の凸レンズを示したが、当楕円形状はレンズ面の上下方向の曲率と左右方向の曲率が異なることを説明するために示したもので、図7(b)のように不要な部分を削除しても問題なく、上下方向の曲率と左右方向の曲率が異なるレンズ面を有したものであればその外形にこだわる必要はない。
同様に、図7(a)の標準的な凸レンズについても、外形が例えば四角形でも問題はなく、円形である必要はない。
【0050】
また、図7(c)の楕円状の凸レンズ、および図7(d)の半円柱状の凸レンズは、短手方向を円弧状に湾曲させた形状にしたが、長手方向を円弧状に湾曲させた形状にしても構わない。さらに、表面に小さな凹凸を形成して、照射光をぼかすことも可能である。
【0051】
また、凸レンズとしては、凸面が球面のタイプと、非球面のタイプがあり、どちらのタイプの凸レンズでも、照射側凸レンズ2aおよびLED側凸レンズ2bとして使用可能である。さらに、凸レンズとしては、表裏両面共に凸面、一方が凸面で他方が平面(例えば、図7(a))、一方が凸面で他方が凹面等のタイプがあり、いずれのタイプの凸レンズでも、照射側凸レンズ2aおよびLED側凸レンズ2bとして使用可能である。
【0052】
さらに、照射側凸レンズ2aまたはLED側凸レンズ2bとして、フレネルレンズも使用可能である。
図9に、LED側凸レンズ2b−4としてフレネルレンズを使用した光学系の構成例を示す。LED側凸レンズ2b−4をフレネルレンズにすることで、凸レンズの中央の厚肉部を薄くすることができ、軽量化および部品単価を下げることができる。
当フレネルレンズを照射側凸レンズ2aとして使用した場合には、車載用前照灯を正面から見たときに当フレネルレンズの同心円状のリングが前面レンズ6から透けて見えてデザイン的にそぐわないこともあるが、LED側凸レンズ2b−4として使用した場合には当リングが前面レンズ6から透けて見えないため、車両外観デザインに影響を及ぼすことはない。
【0053】
以上より、実施の形態1によれば、車載用前照灯は、発光面1aの1端辺が直線部1bとして形成されて光軸側に配置され、当発光面1aの中心を光軸からずらして配置されたLED1と、光軸方向に並べて配置されて投影レンズ2を構成する照射側凸レンズ2aおよびLED側凸レンズ2bと、LED1と投影レンズ2の間に配置され、透明な材料を用いて形成され、その内面にLED1の発する光を反射する反射面3aを有し、当反射面3aの投影レンズ側端辺3bでカットオフラインを形成する配光部材3とを備える構成にした。
このように、投影レンズ2を照射側凸レンズ2aとLED側凸レンズ2bで構成することで焦点距離が短くなり、投影レンズ2とLED1を接近させて配置することができるようになり、投影レンズ2に開口径の小さな凸レンズを使用してもLED1の発する光を効率よく投影レンズ2へ入射させることができる。従って、小形ながら充分な明るさを発することのできる車載用前照灯を実現できる。さらには、低電力のLED1を使用することができ、消費電力が少ないことで放熱兼固定部材4の放熱部材を小形にできるので、車載用前照灯の小形化につながる。
また、配光部材3を透明な材料を用いて形成し、その内面を反射面3aとして使用することで、先立って説明した特許文献3のような鏡面処理が不要となり、簡素な構成で安価な車載用前照灯を実現できる。
【0054】
また、実施の形態1によれば、照射側凸レンズ2aとLED側凸レンズ2bが形成する一式の投影レンズ2の焦点Fを、配光部材3の投影レンズ側端辺3bから所定距離以内に配置するようにしたので、適切な配光の車載用前照灯を実現できる。
【0055】
また、実施の形態1によれば、図5に示したように、配光部材3−2,3−3,3−5,3−6は、LED1の発する光を入射する、LED1側を向いた入射面3cと、当入射した光を投影レンズ2に出射する、投影レンズ2側を向いた出射面3dとを有し、入射面3cおよび出射面3dのいずれか一方、または双方の面が、光軸に直交する面に対して傾斜している構成にした。より詳しくは、少なくとも入射面3dが、光軸から離れるにつれて投影レンズ2側へ傾斜している構成にした。
このため、光軸から離れた位置に配置されたLED1が発する光を、入射面3cおよび出射面3dのいずれか一方、または双方の面で屈折させて光軸側に導くことができる。よって、カットオフラインの直下近傍に、LED1が光りを明るく発する発光方向を向けることができ、当カットオフラインの直下が明るいすれ違い灯用照射光を発する車載用前照灯が実現できる。
【0056】
また、実施の形態1によれば、図6に示したように、配光部材3−3がLED側凸レンズ2bに固定されている構成にした。また、配光部材3−3とLED側凸レンズ2bを、同じ種類の樹脂を用いて形成するようにした。このため、LED側凸レンズ2bと配光部材3−3を同じ材料を用いて同一工程で作製でき、相互の位置精度が高く、かつ、低コストの部材が実現できる。
なお、配光部材3−3に限らず、他の形状の配光部材についても同様にLED側凸レンズ2bに固定可能である。
【0057】
また、実施の形態1によれば、図8に示したように、照射側凸レンズ2a−1およびLED側凸レンズ2b−1のいずれか一方、または双方の、LED1の発する光が届かない部位C1,C2(図6)を削除して、光軸の上側と下側の大きさが異なる構成にした。このため、小形の車載用前照灯を実現できる。
【0058】
また、実施の形態1によれば、図7に示したように、照射側凸レンズ2a−2,2a−3およびLED側凸レンズ2b−2,2b−3のいずれか一方、または双方のレンズ面は、上下方向の曲率と左右方向の曲率が異なる構成にした。このように、レンズ面の曲率を変え、投影レンズ2の上下方向と左右方向の屈折量を変えることで、より好ましい配光の車載用前照灯を実現できる。
【0059】
また、実施の形態1によれば、照射側凸レンズ2aおよびLED側凸レンズ2bのいずれか一方、または双方に、非球面レンズを使用してもよい。このように、任意の光学特性のレンズを使用することによって、適切な配光の車載用前照灯を実現できる。
【0060】
また、実施の形態1によれば、照射側凸レンズ2aおよびLED側凸レンズ2bのいずれか一方、または双方に、フレネルレンズを使用してもよい。これにより、凸レンズを薄型化および軽量化でき、部品単価を下げることができる。
【0061】
また、実施の形態1によれば、図3および図5に示したように、配光部材3,3−3,3−6を、反射面3aの投影レンズ側端辺3bのうちの走行車線側が下方に傾斜した形状に構成した。このため、車両前方に照射された照射光が、歩道側を高い位置まで照らしながら、対向車を運転する運転者を眩惑しない(運転者の目の位置を照らさない)配光の、すれ違い灯用前照灯を実現できる。
【0062】
実施の形態2.
図10は、本実施の形態2に係る車載用前照灯の光学系の構成例を示す図である。本実施の形態2では、光軸の上側にすれ違い灯用のLED1を配置すると共に、当光軸の下側に上部照射用の第2のLED11を配置する。より詳しくは、すれ違い灯用のLED1の発光面1aの下側の直線部1bを光軸から離間間隔dだけ離して配置し、上部照射用のLED11の発光面11aの上側の直線部11bを光軸に揃えて配置している。
これらLED1,11、照射側凸レンズ2a、LED側凸レンズ2b、および配光部材3−3は、図1に示した放熱兼固定部材4に固定され、ケース5および前面レンズ6の内部に収容されて車載用前照灯を成す。
なお、図10において、図1図9と同一または相当の部分については同一の符号を付し説明を省略する。
【0063】
図11は、すれ違い灯用のLED1と上部照射用のLED11を同時に点灯したときに、車両前方に照射された走行灯用照射光の様子を示しており、照射光が明るい部分を濃く、暗い部分を薄く表現している。
光軸の上側に配置したすれ違い灯用のLED1によってカットオフラインの下部を照らし、光軸の下側に配置した上部照射用のLED11によって当カットオフラインの上部を照らすことで、走行灯用の配光を形成できる。上部照射用のLED11を消灯し、LED1のみ点灯すれば図2に示したすれ違い灯に切り換えることができる。
【0064】
なお、離間間隔dは、すれ違い灯用のLED1にさらに上部照射用のLED11を付加する場合、これらLED1,11の端辺には接続用の電極等があってLED1の発光面1aとLED11の発光面11aを連接できないために、やむなく設けられた隙間である。離間間隔dがあっても、上記実施の形態1で説明したように、図5の配光部材3−1,3−3,3−5,3−6を使用することによりLED1の発する光を屈折させて光軸側に導くことができるので、離間間隔dを光学的に相殺して直線部1bを光軸上に配置したことと等価になる。従って、走行灯用の照射光には、LED1,11の離間間隔dに対応する暗部が発生することなく、好ましい照射光を得ることができる。
【0065】
図10では配光部材3−3を光軸の上側に配置したが、反対に光軸の下側に配置しても構わない。
ここで、図12に光学系の変形例を示す。図12では、すれ違い灯用のLED1の発光面1aの下側の直線部1bを光軸に揃えて配置し、上部照射用のLED11の発光面11aの上側の直線部11bを光軸から離間間隔dだけ離して配置している。そして、光軸の下側に、光軸から離れるにつれて投影レンズ2側に傾斜した形状の配光部材3−7を配置して、離間間隔dを光学的に相殺し、上部照射用のLED11の直線部11bを等価的に光軸上に配置する。これにより、すれ違い灯用のLED1と上部照射用のLED11を同時に点灯した際、走行灯用の照射光に離間間隔dに対応する暗部が発生することなく、好ましい照射光を得ることができる。なお、配光部材3−7の反射面3aの内部側は上部照射用のLED11が発する光を反射する一方、反射面3aの外部側はすれ違い灯用のLED1が発する光を反射する。
【0066】
図10のようにすれ違い灯用のLED1の発した光が配光部材3−3を通過する場合には、配光部材3−3の屈折率により見かけ上LED1と投影レンズ2との距離が近くなり、LED1の発する光が効率よくLED側凸レンズ2bに導かれ、車両前方に明るい光が照射される。一方、図12のようにLED1の発した光が配光部材3−7を通過しない場合は、LED1と反射面3aの投影レンズ側端辺3bとが近くならないために、LED1の発光斑の影響が緩和され、鮮明なカットオフラインが照射される。従って、照射光の配光の要望に応じて、図10図12の構成を選択すればよい。
【0067】
以上より、実施の形態2によれば、車載用前照灯は、すれ違い灯用のLED1とは異なる第2の上部照射用のLED11を、光軸を挟んだ反対側に設置してカットオフラインの上側を照らす構成にした。このため、LED1のみ点灯することですれ違い灯用の配光射出し、上下双方のLED1,11を同時に点灯することで走行灯用の配光を出射でき、すれ違い灯と走行灯を切り換えて点灯できる(すれ違い灯と走行灯を兼用できる)車載用前照灯を実現できる。
【0068】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上のように、この発明に係る車載用前照灯は、2枚の凸レンズと、カットオフラインを形成する透明な配光部材とを用いて、LEDの発する光を効率よく車両前方に投影するようにしたので、すれ違い灯用の前照灯などに用いるのに適している。
【符号の説明】
【0070】
1,11 LED、1a,11a 発光面、1b,11b 直線部、2 投影レンズ、2a,2a−1〜2a−3 照射側凸レンズ、2b,2b−1〜2b−4 LED側凸レンズ、3,3−1〜3−7 配光部材、3a 反射面、3b 投影レンズ側端辺、3b−1 水平部、3b−2 傾斜部、3c 入射面、3d 出射面、4 放熱兼固定部材、4a 放熱フィン、5 ケース、6 前面レンズ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12