特許第5837300号(P5837300)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5837300単一放射線ビームによる脆性材料のスコアリングおよび分離方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5837300
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】単一放射線ビームによる脆性材料のスコアリングおよび分離方法および装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 33/09 20060101AFI20151203BHJP
   B28D 5/00 20060101ALI20151203BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20151203BHJP
【FI】
   C03B33/09
   B28D5/00 Z
   G02F1/13 101
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-508394(P2010-508394)
(86)(22)【出願日】2008年5月13日
(65)【公表番号】特表2010-527319(P2010-527319A)
(43)【公表日】2010年8月12日
(86)【国際出願番号】US2008006083
(87)【国際公開番号】WO2008140818
(87)【国際公開日】20081120
【審査請求日】2011年5月12日
【審判番号】不服2014-18863(P2014-18863/J1)
【審判請求日】2014年9月22日
(31)【優先権主張番号】11/803,428
(32)【優先日】2007年5月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】アブラモフ,アナトリ エイ
(72)【発明者】
【氏名】スゥン,ヤーウェイ
【合議体】
【審判長】 河原 英雄
【審判官】 真々田 忠博
【審判官】 大橋 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−534132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 23/00-35/26, 40/00-40/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脆性材料を分離する方法であって、
脆性材料の板を提供するステップと、
前記板の上に細長い放射ゾーンを形成するステップと、
前記板の上に前記放射ゾーンと交差する冷却ゾーンを形成することにより、前記放射ゾーンに先行部分と冷却ゾーンからなるスコアリング部分、および、後続部分からなる分離部分を形成するステップと、
前記板と前記交差する放射ゾーンおよび冷却ゾーンとの間に相対移動をもたらすことにより、前記板に対しスコアリングを施しかつ前記板を分離するステップとを含み、
前記スコアリングを施しかつ前記板を分離するステップは、
(1)前記板を前記放射ゾーンの先行部分を介して加熱し、前記板の当該加熱された箇所を冷却ゾーンを介して急冷し、前記板の一部厚みまで延在する開口クラックを形成し、
(2)前記急冷された箇所を、前記放射ゾーンの後続部分を介して再加熱し、前記開口クラックを前記板の厚み全体にわたって延在させることにより、当該再加熱後のいかなる操作もなしに、前記脆性材料の板を完全に分離する
ものであることを特徴とする、方法。
【請求項2】
細長い放射ゾーンを形成する前記ステップが、前記板にレーザビームを照射するステップを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スコアリング部分および前記分離部分の長さが異なることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
冷却ゾーンを形成する前記ステップが、前記板の上に冷却流体を衝突させるステップを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記脆性材料がガラスまたはガラスセラミックであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記スコアリング部分および前記分離部分の長さが等しいことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
脆性材料に対しスコアリングを施しかつ前記脆性材料を分離する装置であって、
レーザ源と、
前記レーザ源が放出するレーザビームを細長いビームになるように変形し、前記細長いビームを前記脆性材料の表面上に向け、それにより、前記材料の上に放射ゾーンを形成する、少なくとも1つの光学系と、
冷却剤流を前記脆性材料の前記表面に衝突するように向けるノズルであって、前記衝突する冷却剤が、前記放射ゾーンの移動方向に対して前記放射ゾーンの先行部分と後続部分との間で前記放射ゾーンと交差する、ノズルと、
前記脆性材料と前記交差する放射ゾーンおよび衝突する冷却剤との相対移動をもたらすことにより、前記放射ゾーンおよび衝突する冷却剤の一回通過の間に前記脆性材料にスコアリングを施しかつ前記脆性材料を分離する、移送装置と、
を具備し、
前記移送装置は、
(1)前記板を前記放射ゾーンの先行部分を介して加熱し、前記板の当該加熱された箇所を冷却ゾーンを介して急冷し、前記板の一部厚みまで延在する開口クラックを形成し、
(2)前記急冷された箇所を、前記放射ゾーンの後続部分を介して再加熱し、前記開口クラックを前記板の厚み全体にわたって延在させることにより、当該再加熱後のいかなる操作もなしに、前記脆性材料の板を完全に分離する
ように構成されることを特徴とする、装置。
【請求項8】
前記冷却剤が、前記放射ゾーンの中心点に衝突することを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記冷却剤が、前記放射ゾーンの一方の端部よりももう一方の端部の近くに衝突することを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記レーザビームの一部をマスクするマスクをさらに具備することを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2007年5月15日に出願され、「Method and Apparatus for Scoring and Separating a Brittle Material with a Single Beam of Radiation」と題する米国特許出願第11/803428号に関連し、その開示内容は参照により本明細書に援用される。
【技術分野】
【0002】
本発明は、脆弱材料を分離する方法および装置に関し、特に、単一放射線ビームのみを用いてガラス基板に対しスコアリング(刻み目形成)および分離の両方を行う方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ガラス板は、従来、機械的手段によって割断または分離される。機械的手段により、ガラスは、所定経路に沿ってスコアリングが施され(刻み目が形成され)、その後、板の一方または両方の部分に機械的曲げ力が加えられることにより板が分離される。スコアリングステップ中、板の厚さ全体の一部のみに伸びるメディアン(開口(vent))クラックが形成される。
【0004】
別の従来の方法では、板に初期亀裂を形成する。そして、その亀裂にレーザを向けることにより、ガラスを加熱し、亀裂を所定経路に沿って伸長させる。Kondratenkoによる特許文献1には、ビームスポットが短い楕円形状を有しスポットの最長軸が20mm未満であるプロセスが記載されている。報告されているスコアリング速度は低く、ガラスタイプに応じて約10mm/秒〜120mm/秒の間の範囲で変化した。Allaireらによる特許文献2は、最長軸が40mmを超える、著しく長い楕円形スポットを教示している。Hoekstraらによる特許文献3は、スコアリング速度を上昇させるために、スコアリングビームに先立って複数のレーザビームを用いることを開示している。特許文献4には、スコアリング速度を上昇させるためにいくつかのビームを用いることに基づく同様の手法が教示されている。
【0005】
分離ステップでは、上述したように開口クラックに加えられる曲げモーメントにより、またはレーザにより刻線を加熱して引張応力を生成することにより、開口クラックを深くしていた。たとえば、特許文献5には、スコアリングビームの後方を進む円形または楕円形状の第2レーザビームを用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,692,284号明細書
【特許文献2】米国特許第5,776,220号明細書
【特許文献3】米国特許第6,211,488号明細書
【特許文献4】米国特許第6,800,831号明細書
【特許文献5】米国特許第6,541,730号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した技法は、概して、スコアリング機能および分離機能の両方を達成するためにいくつかのステップおよび/またはレーザビームを必要とする。こうした複数ステップ、複数ビーム方法では、費用が加算し、スコアリングおよび分離プロセスの光学的実装が複雑になる。必要なのは、複数の放射線源からの複数のビームによる複雑さが追加されることなく、単一ステップで脆性材料(たとえばガラス基板)に対しスコアリングおよび分離を行う非接触方法である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明により、放射線ビームの一回通過での、かつ単一放射源のみを用いる、脆性材料の板のスコアリングおよび分離が可能になる。
【0009】
本発明の一実施形態によれば、脆性材料の板を提供するステップと、板の上に細長い放射ゾーンを形成するステップと、板の上に放射ゾーンと交差する冷却ゾーンを形成することにより、放射ゾーンのスコアリング部分および分離部分を形成するステップと、板と交差する放射ゾーンおよび冷却ゾーンとの間に相対移動をもたらすことにより、板にスコアリングを施しかつ板を分離するステップと、を含む、脆性材料の板を分離する方法が開示されている。有利には、脆性材料の板に対し、脆性材料の表面上の放射ゾーンおよび冷却ゾーンの一回通過で、スコアリングおよび分離が行われ、放射ゾーンおよび冷却ゾーンは、スコアリングおよび分離中に一定の空間的関係を有することが好ましい。脆性材料はガラス板または基板であることが好ましい。
【0010】
別の実施形態では、脆性材料の板を提供するステップと、板の表面に細長いレーザビームを照射することにより、板の上に細長い放射ゾーンを形成するステップと、板上に放射ゾーンの部分的に重なる冷却ゾーンを形成するステップと、脆性材料の板と部分的に重なる放射ゾーンおよび冷却ゾーンとの相対移動をもたらすことにより、板にスコアリングを施しかつ板を分離するステップとを含む、脆性材料を分離する方法が記載されている。
【0011】
さらに別の実施形態では、脆性材料にスコアリングを施しかつ脆性材料を分離する装置は、レーザ源と、レーザ源が放出するレーザビームを細長いビームになるように変形し、細長いビームを脆性材料の表面上に向け、それにより、材料の上に単一放射ゾーンを形成する、少なくとも1つの光学系と、冷却剤流を脆性材料の表面に衝突するように向けるノズルであって、衝突する冷却剤が、放射ゾーンの移動方向に対して放射ゾーンの先行部分と後続部分とをもたらすように放射ゾーンと交差する、ノズルと、脆性材料と交差する放射ゾーンおよび衝突する冷却剤との相対移動をもたらすことにより、放射ゾーンおよび衝突する冷却剤の一回通過の間に脆性材料に対しスコアリングを施しかつ脆性材料を分離する、移送装置と、を備える。
【0012】
本発明を実施することにより、ガラス板等の脆性材料を分離するために必要な器具の複雑性を低減し、スコアリング/分離ビームの一回通過でスコアリング機能を分離機能と結合することにより、脆性材料を分離するために必要な時間を低減し、スコアリング機能の分離機能との正確な位置合せ(すなわち、ビームのスコアリング部分とビームの分離部分との位置合せ)を提供することにより、スコアリングおよび分離プロセスの有効性を向上させ、材料の機械的スコアリングの必要と発生する固有のチッピングとをなくすことにより、分離された材料の縁の品質を向上させることができる。
【0013】
本発明の実施形態を、脆性材料の板を個々に割断するようにオフラインで用いてもよく、またはガラス板を作製する製造工程におけるようにオンラインで用いてもよい。たとえば、本発明の実施形態を、移動するガラスのリボンから個々のガラス板を取り除く(分離する)ために、フュージョンダウンドローガラス板プロセス等のダウンドローガラス形成工程の一部として導入することができ、それにより現行の機械的スコアリング工程および破断工程に置き換わることができる。
【0014】
上述した概略説明および以下の詳細な説明はともに、本発明の実施形態を提示し、請求項に記載されている発明の性質および特徴を理解するための概要および枠組みを提供するように意図されている、ということが理解されるべきである。添付図面は、本発明がさらに理解されるように含まれており、本明細書に組み込まれかつその一部を構成している。図面は、本発明の例示的な実施形態を図示し、説明とともに、本発明の原理および動作を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態によるガラス板またはガラス基板を分離する装置の概略図である。
図2】レーザが放出するレーザビームがガラス基板の表面に入射する時に、レーザが基板の表面上に形成する、「放射ゾーン」の平面図である。
図3図1の、レーザビームがガラス基板の表面に入射する領域の拡大斜視図である。
図4A】冷却剤の噴流が入射レーザビームの一部と重なり、放射ゾーンが略二分される実施形態を示す。
図4B】冷却剤の噴流が入射レーザビームの一部と重なり、ビームの前縁が後縁より短い実施形態を示す。
図5A】開口クラックがいかにレーザ放射ゾーンの先行部分によりガラス基板内を部分的にのみ伝播されるかを示す、ガラス基板の断面図を示す。
図5B】開口クラックがいかに放射ゾーンの後続部分によりガラスの厚さ全体にわたって伝播されるかを示す、ガラス基板の断面図を示す。
図6】衝突する冷却剤によって生成される冷却ゾーンによって分離される2つの細長い放射ゾーンをもたらすために、単一レーザビームがマスクされる、本発明による別の実施形態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の詳細な説明では、限定ではなく説明の目的で、所定の詳細を開示している実施形態例を、本発明が完全に理解されるために示している。しかしながら、本開示の利益を得る当業者には、本発明を、本明細書において開示する所定の詳細から逸脱する他の実施形態で実施してもよい、ということが明らかとなろう。さらに、本発明の説明を不明瞭にしないように、周知の装置、方法および材料の説明は省略している場合もある。最後に、該当する場合は、同様の参照数字は同様の要素を指す。
【0017】
図1を参照すると、本発明の一実施形態による脆性材料を割断する装置10が示されている。脆性材料は、たとえば、ガラス品、セラミック品またはガラスセラミック品であり得る。さらなる説明の目的で、以下、ガラス基板、および特に液晶ディスプレイの製造に用いられるのに好適なガラス板を想定しそれについて説明する。しかしながら、本発明は、他の製品のスコアリングおよび分離にも適用可能であることが留意されるべきである。
【0018】
装置10は、ガラス基板(ガラス板)に放射線を照射する光送達システム12と、冷却剤ノズル16、冷却剤源18、および冷却剤をノズル16に搬送するために必要な関連する配管20を備えた、冷却流体吐出システムとを備えている。光送達システム12は、放射線源22、円形偏光子24、ビームエキスパンダ26およびビーム整形系28を備えている。
【0019】
光送達システム12はさらに、ミラー34、36および38等、放射線源22からの放射線のビーム32の方向を変える光学素子を有していてもよい。放射源22は、ビームがガラス基板上に入射する位置においてガラス基板を加熱するのに好適な波長および出力を有するレーザビームを放出するレーザであることが好ましい。一実施形態では、レーザ22は、10.6μmの波長でかつ100ワット以上の出力で動作するCOレーザである。
【0020】
レーザ22が放出するレーザビーム32は、通常、断面(すなわち、ビームの長手方向軸に対して直角なビームの断面)が実質的に円形である。光送達システム12は、ビームがガラス基板14上に入射する時に著しく細長い形状を有するようにレーザビーム32を変形させるように動作可能であり、それにより基板上に細長い痕跡(footprint)すなわち「放射ゾーン」40がもたらされる。放射ゾーンの境界は、ビーム強度がそのピーク値の1/eまで低減した点として確定される。ビーム32は円形偏光子24を通過し、その後、ビームエキスパンダ26を通過することによって拡大される。その後、拡大したレーザビームはビーム整形系28を通過して、基板の表面に細長い放射ゾーン40をもたらすビームを形成する。ビーム整形系28は、たとえば、1つまたは複数の円柱レンズを備えていてもよい。しかしながら、レーザ22が放出するビームを基板14上に細長い放射ゾーンをもたらすように整形することができるいかなる光学素子を用いてもよい、ということが理解されるべきである。図2に放射ゾーン40の概略図を示す。放射ゾーン40の長軸は、短軸44より実質的に長いことが好ましい。実施形態によっては、たとえば、長軸42は、短軸44の少なくとも約10倍の長さである。好ましい実施形態によっては、放射ゾーン40の長軸42は、長さが少なくとも約100mmであるが、少なくとも約200mmかまたはさらには300mmより長くてもよく、短軸44は、通常約2mm未満であり、1.5mm程度かまたはそれより短いかまたはさらには1mmであってもよい。しかしながら、放射ゾーン40の長さおよび幅は、所望のスコアリング/分離速度(ビーム並進速度)、ガラス板の厚さ、レーザ出力等によって決まり、放射ゾーンの長さおよび幅を必要に応じて変更してもよい。
【0021】
図3に最もよく示すように、冷却剤ノズル16は、冷却流体の噴流46をガラス基板14の表面47に吐出する。実施形態によっては、ノズル16は、内径がおよそ数100マイクロメートル(たとえば200μm〜300μm)であり、ガラスの表面において直径が通常約300μm〜400μmである実質的に平行な冷却剤の噴流を放出する。しかしながら、放射ゾーン40と同様に、ノズル16の直径および冷却剤噴流46の実質的な直径を、特定のプロセス条件に対する必要に応じて変更してもよい。実施形態によっては、冷却剤が直接衝突するガラス基板の領域(冷却ゾーン)は、直径が放射ゾーンの短軸より短いことが好ましい。しかしながら、他の実施形態によっては、冷却ゾーンの直径は、速度、ガラス厚さ、レーザ出力等のプロセス条件に基づいて、放射ゾーン40の短軸より大きくてもよい。実際には、冷却剤噴流の(断面)形状は、円形以外であってもよく、たとえば、冷却ゾーンがガラス板の表面に円形スポットではなく線を形成するように扇形であってもよい。線形状の冷却ゾーンを、たとえば放射ゾーン40の長軸に対して垂直に向けてもよい。他の形状も有益であり得る。
【0022】
冷却剤噴流46は水を含むことが好ましいが、ガラス基板の表面47を汚損するかまたは破損することのない任意の好適な冷却流体であってもよい。本発明によれば、冷却流体噴流46は、ガラス基板14の表面に吐出され、それにより、放射ゾーン40と交差するかまたはその一部に重なる冷却ゾーン52を形成し、放射ゾーンを2つの部分、すなわち冷却ゾーンの前方の先行部分48および冷却ゾーンの後方の後続部分50に有効に分離する。ここで、先行部分および後続部分はともに、矢印54によって示すビームが進む方向に対するものであり、先行部分および後続部分は、冷却ゾーン52によって分離されている。「冷却ゾーンの前方」という用語は、図4Aおよび図4Bにおいて、破線に添付された矢印によって示すように、冷却ゾーン52の左側に接する破線の前方を意味する。同様に、「冷却ゾーンの後方」は、図4Aおよび図4Bにおいて、破線に添付された矢印によって示すように、冷却ゾーン52の右側に接する破線の後方すなわち右側を指す。冷却ゾーン52は、スコアリングおよび/または分離プロセスを最適化する必要に応じて、図4Aに示すように、放射ゾーンの中心点またはその近くにおいて放射ゾーン40と重なってもよく、または、図4Bに示すように、放射ゾーン40の一方の端部よりももう一方の端部の方に近くてもよい。
【0023】
基板14に対しスコアリングおよび分離を行うために、装置10はさらに、ガラス基板14と基板に入射するビーム32(すなわち放射ゾーン40)との相対移動をもたらす手段を備えることができる。これを、基板14をビーム32に対して移動させることにより、またはビーム32(したがって放射ゾーン40)を基板に対して移動させることにより、達成することができる。大きい基板、たとえば数平方メートルを超える基板47の面積に対応する寸法を有する基板の場合、ビームの移動が好ましい可能性がある。これは特に、非常に大きい薄板の場合に当てはまる。たとえば、光ディスプレイの製造に用いられる基板は、厚さが1mm未満、多くの場合約0.7mm未満である可能性があり、10平方メートルを超える場合がある。こうした非常に薄いガラスの大きい板を移動させることは実際的でない可能性がある。板を移動させることが実際的でない場合、xyリニアステージまたはガントリシステム等、好適なステージに光送達システム12を取り付けてもよく、それにより、ビーム32および冷却剤46をガラス基板14にわたって横断させることができる。放射ゾーン40および冷却ゾーン52は、それらの関係が実質的に一定であり続けるように同時に移動することが留意されるべきである。光送達システム12が大きすぎる場合、この手法でさえも実際的でない可能性がある。別法として、スコアリングおよび分離プロセス中、光学部品の多くおよびガラス基板14を固定して維持し、レーザビーム32を「浮動ヘッド(flying head)」に向けてもよく、浮動ヘッドは、レーザビーム32をガラス基板14上に向けるように、ガラス基板14に対してかつそれと実質的に平行に並進する。たとえば、浮動ヘッド56は、ビーム整形系28およびミラー38を備えていてもよい。この場合、浮動ヘッドのみが、ビームの方向を変えビームを基板にわたって横断させるように移動すればよい。板または光送達システム12または浮動ヘッド56のみを移動させる方法は、本技術分野において周知であり、これ以上は説明しない。
【0024】
放射ゾーン40は、基板14の表面47にわたって横断する際、ガラス基板14を加熱する。冷却剤噴流46を放射ゾーン40と交差するように表面47上に衝突させることにより、一部に重なる冷却ゾーン52をもたらすことによって、放射ゾーン40が2つの部分48および50に有効に分離される。図4Aに示すように、放射ゾーン40が矢印54に示す方向に横断する際、放射ゾーン40の先行部分48がスコアリング機能を行い、放射ゾーン40の後続部分50が分離機能を行う。放射ゾーン40の先行部分48がスコアリング経路59(図3)に沿って基板を横断する際、基板は加熱される。冷却剤噴流46が基板の加熱部分を(冷却ゾーン52を介して)迅速に冷却する、すなわち急冷することにより、図5Aに示すように、基板の入射面47(レーザビーム32が入射する面)からガラス板14の本体内の一部の深さまで延在する開口クラック60が形成される。すなわち、開口クラック60は、基板の厚さにわたって部分的にのみ横断する。そして、放射ゾーンの先行部分の直後に続く放射ゾーンの後続部分50が基板の急冷部分を再加熱し、図5Bに示すように開口クラックが基板の厚さ全体に延在し、それにより、基板が線59(図3)に沿って分離される。
【0025】
分離速度(たとえば、基板の表面上のビームの横断速度)を、たとえば、放射ゾーン40に対して、冷却剤噴流46が基板14上に入射する箇所52の位置を変えることによって制御することができる。たとえば、冷却ゾーン52を、スコアリングおよび/または分離を最適化するように、放射ゾーン40の任意の特定の端部により近くにまたはそこからより遠くに配置する(すなわち、中心から外れるように配置する)ことができる。
【0026】
本発明による図6に示す別の実施形態では、レーザビーム32の一部をマスクしてもよく、それにより、単一ビームから2つの同一線上の細長い放射ゾーン64、66が形成される。同一線上とは、各放射ゾーンの長(最長)軸が単一線上にあることを意味する。ビーム32のマスキングを、たとえばビーム32の経路に適当な形状の障害物(マスク(図示せず))を配置することによって達成することができる。そして、冷却剤噴流46をガラス基板14上に向けることにより、放射ゾーン64、66間のビーム32のマスクされた部分68内に冷却ゾーン52をもたらすことができる。先の実施形態と同様に、マスク領域の配置、およびその後のマスク部分内の冷却ゾーン52の配置を用いて、ビームおよび冷却剤によってもたらされる熱勾配と、続く初期スコアリング開口クラックの深さとを制御することができる。先の実施形態のように、ビーム32および冷却剤噴流46は、放射ゾーン(複数可)と冷却ゾーンとの相対移動が起こらないように同時に移動する。
【0027】
本発明の上述した実施形態、特に任意の「好ましい」実施形態は単に、単に本発明の原理が明確に理解されるために示した実施態様のあり得る例であることが強調されるべきである。本発明の精神および原理から実質的に逸脱することなく、本発明の上述した実施形態に対し多くの変形および変更があり得る。こうした変更および変形はすべて、本明細書において本開示および本発明の範囲内に含まれ、以下の特許請求の範囲によって保護されるように意図されている。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6