特許第5837492号(P5837492)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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  • 特許5837492-情報記録媒体用ガラス基板 図000011
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5837492
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】情報記録媒体用ガラス基板
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/087 20060101AFI20151203BHJP
   C03C 3/091 20060101ALI20151203BHJP
   C03C 3/093 20060101ALI20151203BHJP
   G11B 5/73 20060101ALI20151203BHJP
【FI】
   C03C3/087
   C03C3/091
   C03C3/093
   G11B5/73
【請求項の数】7
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2012-522449(P2012-522449)
(86)(22)【出願日】2011年6月21日
(86)【国際出願番号】JP2011003548
(87)【国際公開番号】WO2012001914
(87)【国際公開日】20120105
【審査請求日】2014年6月16日
(31)【優先権主張番号】特願2010-148571(P2010-148571)
(32)【優先日】2010年6月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100111453
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 智
(74)【代理人】
【識別番号】100162765
【弁理士】
【氏名又は名称】宇佐美 綾
(74)【代理人】
【識別番号】100174827
【弁理士】
【氏名又は名称】治下 正志
(72)【発明者】
【氏名】河合 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】梶田 大士
(72)【発明者】
【氏名】大垣 昭男
(72)【発明者】
【氏名】森 登史晴
【審査官】 増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4337821(JP,B2)
【文献】 国際公開第2009/116278(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00 − 14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%表示で、
SiO:52〜67%
Al:8〜20%
:0〜6%(ただし、0を含む)
(ただし、FMO=SiO+Al+B=70〜85%)
LiO:0.5〜4%
NaO:1〜8%
O:0〜5%(ただし、0を含む)
(ただし、R2O=LiO+NaO+KO=5〜15%)
MgO:2〜9%
CaO:0.1〜5%
BaO:0〜3%(ただし、0を含む)
SrO:0〜3%(ただし、0を含む)
ZnO:0〜5%(ただし、0を含む)
(ただし、MgO+CaO+BaO+SrO+ZnO=5〜15%)
:0〜4%(ただし、0を含む)
La:0〜4%(ただし、0を含む)
Gd:0〜4%(ただし、0を含む)
CeO:0〜4%(ただし、0を含む)
TiO:1〜7%
HfO:0〜2%(ただし、0を含む)
ZrO:0〜5%(ただし、0を含む)
Nb:0.2〜5%
Ta:0〜5%(ただし、0を含む)
の各ガラス成分を有し、かつ、
LiO/R2O:0.05〜0.35 ・・・(1)
LiO/FMO:0.005〜0.035・・・(2)
LiO/(MgO+ZnO):2未満・・・(3)
Nb/SiO:0.01〜0.075・・・(4)
の前記(1)〜(4)の組成関係式を満たし、
アンチモン及びスズを含まないこと
を特徴とする情報記録媒体用ガラス基板。
【請求項2】
ヤング率Eが82GPa以上かつ90GPa未満であり、
比重をρとする場合に、比弾性率E/ρが31以上であり、
ビッカース硬度Hvが550〜650であり、
加工洗浄した前記情報記録媒体用ガラス基板を、150℃で30時間保持する加速試験後におけるLi抽出量Aが2.5インチディスクあたり6ppb以下であり、
加工洗浄した前記情報記録媒体用ガラス基板を50mlの超純水に浸漬したものを、80℃で24時間保持する溶出試験におけるSi溶出量が2.5インチディスクあたり300ppb未満であること
を特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体用ガラス基板。
【請求項3】
ガラス転移点Tgが550℃以上650℃未満であること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の情報記録媒体用ガラス基板。
【請求項4】
25〜100℃での熱膨張係数αが45×10−7〜75×10−7/℃であること
を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の情報記録媒体用ガラス基板。
【請求項5】
主表面における応力状態が略均質であること
を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の情報記録媒体用ガラス基板。
【請求項6】
熱伝導率βが1〜1.8W/(mK)であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の情報記録媒体用ガラス基板。
【請求項7】
LiO:0.8〜3.5%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の情報記録媒体用ガラス基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報を記録する記録媒体の基板として使用される情報記録媒体用ガラス基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば磁気、光および光磁気等を利用することによって、情報を情報記録媒体に記録する情報記録装置が知られており、代表的には、ハードディスクドライブ(HDD)がある。このハードディスクドライブは、基板上に記録層を形成した磁気ディスクに磁気ヘッドによって磁気的に情報を記録する装置である。前記基板には、一般に、アルミニウム基板とガラス基板とが知られているが、ノート型パーソナルコンピュータ、車載機器、ゲーム機器等の益々強度信頼性が必要な用途での使用機会が拡大し、表面硬度が高く、表面の平滑性に優れ、表面の欠陥が少ないことから、特にガラス基板が多く用いられるようになってきている。このハードディスクドライブは、磁気ディスクに対し磁気ヘッドを浮上させて磁気ディスクに情報を記録するものであるが、近年、記録密度の向上を図るため、磁気ヘッドの浮上量の低減が要請されている。
【0003】
そこで、近年、情報を情報記録媒体に読み書きする際に、磁気ヘッドにおける記録再生動作を行うヘッド素子のみを前記情報記録媒体に近接させることによっていわゆるABS面(air bearing surface、空気ベアリング面)と前記情報記録媒体間の距離を低減する動的浮上量制御技術(dynamic flying height 制御技術、DFH制御技術)が研究、開発されており、例えば、特許文献1および非特許文献1に開示されている。この特許文献1および非特許文献1に開示のDFH制御技術は、磁気ヘッドにヒータを組み込んで情報を磁気ディスクに読み書きする際に前記ヒータに電力を供給することによって、磁気ヘッドの磁気ディスクに対向するABS面を隆起させ、磁気ヘッドと磁気ディスクとの間の距離を低減するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−198307号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「マイクロ熱アクチュエータによる磁気ヘッドスライダ浮上量の制御技術とその新展開」日本機械学会誌、2008.6、vol.111,No.1075,P541
【発明の概要】
【0006】
本発明は、情報記録媒体の長期に亘る信頼性をより向上させることができる情報記録媒体用ガラス基板を提供することを目的とする。
【0007】
すなわち、本発明の情報記録媒体用ガラス基板は、重量%表示で、
SiO:52〜67%
Al:8〜20%
:0〜6%(ただし、0を含む)
(ただし、FMO=SiO+Al+B=70〜85%)
LiO:0.5〜4%
NaO:1〜8%
O:0〜5%(ただし、0を含む)
(ただし、R2O=LiO+NaO+KO=5〜15%)
MgO:2〜9%
CaO:0.1〜5%
BaO:0〜3%(ただし、0を含む)
SrO:0〜3%(ただし、0を含む)
ZnO:0〜5%(ただし、0を含む)
(ただし、MgO+CaO+BaO+SrO+ZnO=5〜15%)
:0〜4%(ただし、0を含む)
La:0〜4%(ただし、0を含む)
Gd:0〜4%(ただし、0を含む)
CeO:0〜4%(ただし、0を含む)
TiO:1〜7%
HfO:0〜2%(ただし、0を含む)
ZrO:0〜5%(ただし、0を含む)
Nb:0.2〜5%
Ta:0〜5%(ただし、0を含む)
の各ガラス成分を有し、かつ、
LiO/R2O:0.05〜0.35 ・・・(1)
LiO/FMO:0.005〜0.035・・・(2)
LiO/(MgO+ZnO):2未満 ・・・(3)
Nb/SiO:0.01〜0.075 ・・・(4)
の前記(1)〜(4)の組成関係式を満たすことを特徴とする。
【0008】
上記並びにその他の本発明の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な記載と添付図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の情報記録媒体用ガラス基板を用いた磁気記録媒体の一例である磁気ディスクを示す一部断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
このようなDFH制御技術では、記録ヘッドと情報記録媒体との間における潤滑および保護の役目を果たしていたABS面よりも記録ヘッドの先端が情報記録媒体表面に近接するため、前記ABS面で緩和されていた情報記録媒体表面における微小な欠陥や比較的なだらかな異常突起による接触消耗が当初設定よりも過度となり、その結果、長期に亘る信頼性において、例えば記録層が剥がれたり信号が検出することができなかったり等の情報記録媒体の信号エラーが急激に増大する事態が生じてきている。
【0011】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、情報記録媒体の長期に亘る信頼性をより向上させることができる情報記録媒体用ガラス基板を提供することである。
【0012】
本発明者は、種々の調査および検討した結果、記録層の表面に、例えば長さ約10〜2000nm程度であって高さ約1〜10nm程度の非常に微小かつ薄い反応析出物の発生が確認され、前記析出物は、ガラス由来のアルカリ成分がトリガーとなって、情報記録媒体の表層の雰囲気ガス成分、保護成分および潤滑成分と複合的に反応したものであることが突き止られ、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。
【0013】
以下、本発明の好ましい実施の形態並びに実施例について説明する。しかしながら、本発明は、以下に説明する実施形態や実施例の製造方法に限られているわけではない。
【0014】
<情報記録媒体用ガラス基板>
本実施形態における情報記録媒体用ガラス基板は、酸化物基準の重量%表示で、
SiO:52〜67%
Al:8〜20%
:0〜6%(ただし、0を含む)
(ただし、FMO=SiO+Al+B=70〜85%)
LiO:0.5〜4%
NaO:1〜8%
O:0〜5%(ただし、0を含む)
(ただし、R2O=LiO+NaO+KO=5〜15%)
MgO:2〜9%
CaO:0.1〜5%
BaO:0〜3%(ただし、0を含む)
SrO:0〜3%(ただし、0を含む)
ZnO:0〜5%(ただし、0を含む)
(ただし、MgO+CaO+BaO+SrO+ZnO=5〜15%)
:0〜4%(ただし、0を含む)
La:0〜4%(ただし、0を含む)
Gd:0〜4%(ただし、0を含む)
CeO:0〜4%(ただし、0を含む)
TiO:1〜7%
HfO:0〜2%(ただし、0を含む)
ZrO:0〜5%(ただし、0を含む)
Nb:0.2〜5%
Ta:0〜5%(ただし、0を含む)
の各ガラス成分を有し、かつ、
LiO/R2O:0.05〜0.35 ・・・(1)
LiO/FMO:0.005〜0.035・・・(2)
LiO/(MgO+ZnO):0.2〜2.00・・・(3)
Nb/SiO:0.010〜0.075・・・(4)
の前記(1)〜(4)の組成関係式を満たすものである。
【0015】
すなわち、本実施形態における情報記録媒体用ガラス基板は、組成xの重量%をw(x)と表した場合に、酸化物基準の重量%表示で、52≦w(SiO)≦67%の酸化シリコン(SiO)、8≦w(Al)≦20%の酸化アルミニウム(Al)、含有する場合に0<w(B)≦6%の酸化ホウ素(B)、0.5≦w(LiO)≦4%の酸化リチウム(LiO)、1≦w(NaO)≦8%の酸化ナトリウム(NaO)、含有する場合に0<w(KO)≦5%の酸化カリウム(KO)、2≦w(MgO)≦9%の酸化マグネシウム(MgO)、0.1≦w(CaO)≦5%の酸化カルシウム(CaO)、含有する場合に0<w(BaO)≦3%の酸化バリウム(BaO)、含有する場合に0<w(SrO)≦3%の酸化ストロンチウム(SrO)、含有する場合に0<w(ZnO)≦5%の酸化亜鉛(ZnO)、含有する場合に0<w(Y)≦4%の酸化イットリウム(Y)、含有する場合に0<w(La)≦4%の酸化ランタン(La)、含有する場合に0<w(Gd)≦4%の酸化ガドリニウム(Gd)、含有する場合に0<w(CeO)≦4%の酸化セリウム(CeO)、1≦w(TiO)≦7%の酸化チタン(TiO)、含有する場合に0<w(HfO)≦2%の酸化ハフニウム(HfO)、含有する場合に0<w(ZrO)≦5%の酸化ジルコニウム(ZrO)、0.2≦w(Nb)≦5%の酸化ニオブ、および、含有する場合に0<w(Ta)≦5%の酸化タンタルの各ガラス成分を有し、ただし、FMO=SiO+Al+Bは、70≦w(FMO)≦85%であり、R2O=LiO+NaO+KOは、5≦w(R2O)≦15%であり、そして、5≦w(MgO+CaO+BaO+SrO+ZnO)≦15%であり、さらに、前記(1)〜(4)の組成関係式を満たすものである。
【0016】
ここで、本出願書類においては、ガラス組成に関し特に断らない限り「%」表示は「重量%」を示すものとする。また、便宜上、上記組成中、SiO、Al、Bを「骨格成分」といい、LiO、NaO、KOを「アルカリ成分」といい、MgO、CaO、BaO、SrO、ZnOを「2価金属成分」というものとする。
【0017】
本発明者の検討によれば、情報記録媒体の記録層の表面に、例えば長さ約10〜2000nm程度であって高さ約1〜10nm程度の非常に微小かつ薄い反応析出物は、ガラス由来のアルカリ成分がトリガーとなって、情報記録媒体の表層の雰囲気ガス成分、保護成分および潤滑成分と複合的に反応したものであるとの知見が得られ、中でもLiOが最も大きく影響していると推定された。そこで、LiOの組成を前記範囲に調整し、かつ、前記(1)〜(4)の組成関係式を満足することによって、Liを中心としたイオン化エネルギーが低くイオン化し易く、さらにイオン半径の小さいために、ガラス構造中でも容易に移動するアルカリ元素の挙動を制御することができ、結果的に、情報記録媒体表面でのLiを中心とした、雰囲気ガス成分、保護成分および潤滑成分等の周辺成分との反応生成物の発生およびその成長を抑制乃至は防止することが可能となる。この結果、本実施形態の情報記録媒体用ガラス基板は、記録再生の際における情報記録媒体の長期に亘る信頼性をより向上させることができる。
【0018】
特に、本実施形態の情報記録媒体用ガラス基板は、前記非常に微小かつ薄い反応析出物の発生を抑制することができるので、長期に亘り平滑性および平坦性により優れているから、前記DFH制御技術を用いた情報記録装置に組み付けられる情報記録媒体のガラス基板として好適である。
【0019】
そして、本実施形態の情報記録媒体用ガラス基板は、例えば、ハードディスクドライブ用ガラス基板(磁気ディスク用ガラス基板)に要求される、主要特性を達成するために充分な組成構成の範囲も有しており、さらに、ガラス生産性も高く、ハードディスクドライブ用ガラス基板に要求される低コスト化も達成することができる。
【0020】
さらに、含有成分に、フッ素および塩素等のハロゲン元素や、酸化硫黄(SO)等の有害ガス成分や、砒素、アンチモン、鉛、スズおよびカドミウム等の有害元素を含んでいないため、環境にやさしい環境対応型ガラスでもある。
【0021】
以下、本実施形態の情報記録媒体用ガラス基板の各成分についてさらに詳述する。
【0022】
<骨格成分>
本実施形態の情報記録媒体用ガラス基板は、骨格成分として、52≦w(SiO)≦67%の酸化シリコン(SiO)、8≦w(Al)≦20%の酸化アルミニウム(Al)、含有する場合に0<w(B)≦6%の酸化ホウ素(B)を有し、かつ、SiOとAlとBとの合計量w(FMO)が70≦w(FMO)≦85%であることを要する。なお、本出願書類において「SiO+Al+B=70〜85%」との表記は、SiOとAlとBとの合計量が70〜85%であることを示す(以下、同様の表記において同意とする)。
【0023】
SiOは、ガラスの骨格(マトリックス)を形成する成分である。その含有量が52%未満では、ガラスの構造が不安定となり化学的耐久性が劣化するとともに、溶融時の粘性特性が悪くなり成形性に支障を来す。一方含有量が67%を超えると、溶融性が悪くなり生産性が低下するとともに、十分な剛性が得られなくなる。そこで含有量を52〜67%の範囲とした。より好ましい範囲は、54〜66%であり、さらに好ましい範囲は、58〜64%である。
【0024】
Alもガラスの骨格を形成する成分であり、ガラスの耐久性向上や強度および表面硬度の向上に資するものである。それゆえ、その含有量が8%未満では、情報記録媒体用ガラス基板としてその耐久性および強度が充分ではなく、好ましくない。一方、その含有量が20%を越えると、ガラスの失透傾向が強まり、安定したガラス形成が困難であり、好ましくない。より好ましい範囲は、10〜18%であり、さらに好ましい範囲は、12〜16%である。
【0025】
は、溶融性を改善し生産性を向上させるとともに、ガラスの骨格中に入りガラス構造を安定化させ、化学的耐久性を向上させる効果を奏する。しかしながら、Bは、溶融時に揮発しやすく、ガラス成分比率が不安定になりやすい。また、強度を低下させるため硬度が低くなり、ガラス基板に傷が入りやすくなるとともに、破壊靭性値が小さくなり、基板が破損しやすい傾向を示す。このため、Bの含有量は、6%以下にする必要があり、好ましくは、5%以下であり、さらに好ましくは、3%以下である。また、Bを含まない組成とすること可能である。上記において、Bの含有量0〜6%における0%とは、Bを含まない態様を含み得ることを意味する。なお、本出願書類のガラス組成における「0%」の表記は、これと同意であり、その成分を含まない態様を含み得ることを意味する(以下、同様の表記において同意とする)。
【0026】
そして、SiOとAlとBとの合計量w(FMO)が70〜85%であることを要する。これは、ガラスの構造を安定化させるためである。この合計量が70%未満では、ガラス構造が不安定化し、また85%を超えると、溶融時の粘性特性が悪化し生産性が低下する。より好ましい合計量は、72〜83%の範囲であり、さらに好ましい範囲は、74〜81%である。
【0027】
<アルカリ成分>
本実施形態の情報記録媒体用ガラス基板は、アルカリ成分として、0.5≦w(LiO)≦4%の酸化リチウム(LiO)、1≦w(NaO)≦8%の酸化ナトリウム(NaO)、含有する場合に0<w(KO)≦5%の酸化カリウム(KO)を有し、かつ、LiOとNaOとKOとの合計量w(R2O)が8〜21%であることを要する。
【0028】
LiOは、アルカリ金属元素の中でも特異な性質を有しており、ガラスの溶解性を改善する作用を有しつつ、ガラスの構造におけるイオン充填率を向上させることでヤング率を大きく向上させる効果を有している。その含有量が0.5%未満では、溶解性の改善およびヤング率の向上に対して充分な効果を発揮させることができず、4%を越えると、上述したように、情報記録媒体の記録層の表面に非常に微小かつ薄い反応析出物のトリガーとなって、好ましくない。より好ましい範囲は、0.8〜3.5%であり、さらに好ましい範囲は、1.0〜3.0%である。
【0029】
NaOは、ガラスの溶融温度を低下させる作用を有し、線膨張係数を増大させる効果を奏する。その含有量が1%未満では充分に溶融温度を低下させることができず、8%を超えると、その溶出量が増大し記録層に悪影響を及ぼす。より好ましい範囲は、1.5〜7.0%であり、さらに好ましい範囲は、2.0〜6.5%である。
【0030】
Oは、上記NaOと同様の作用効果を有し、その含有量が5%を越えない範囲で、溶融性改善目的で添加することができる。より好ましい範囲は、0.1〜4.0%であり、さらに好ましい範囲は、0.3〜3.5%である。
【0031】
また、LiOとNaOとKOとの合計量w(R2O)が5〜15%であることを要する。その含有量が8%未満では充分に溶融温度を低下させることができず、21%を超えると、その溶出量が増大し記録層に悪影響を及ぼす。より好ましい範囲は、6〜12%であり、さらに好ましい範囲は、7〜10%である。
【0032】
<2価金属成分>
本実施形態の情報記録媒体用ガラス基板は、2価金属成分として、2≦w(MgO)≦9%の酸化マグネシウム(MgO)、0.1≦w(CaO)≦5%の酸化カルシウム(CaO)、含有する場合に0<w(BaO)≦3%の酸化バリウム(BaO)、含有する場合に0<w(SrO)≦3%の酸化ストロンチウム(SrO)、含有する場合に0<w(ZnO)≦5%の酸化亜鉛(ZnO)を有し、かつ、MgOとCaOとBaOとSrOとZnOとの合計量w(MgO+CaO+BaO+SrO+ZnO)が5〜15%であることを要する。
【0033】
MgOは、剛性を上げるとともに溶融性を改善する効果を奏する。また、イオン化傾向が高くかつイオン半径がLiのイオン半径と近いことから、Mg2+イオンは、Liイオンと非常によく似た挙動を有し、ガラス中に共存した場合、相互に挙動を制限し合い安定化する効果も持つ。その含有量が2%未満では剛性の向上、溶融性の改善およびLiイオン拡散の制限に対し充分な効果が奏されない。他方、含有量が9%を超えるとガラス構造が不安定となり、溶融生産性が低下するとともに化学的耐久性が低下する。より好ましい範囲は、2.5〜7.5%であり、さらに好ましい範囲は、2.8〜7.0%である。
【0034】
CaOは、熱膨張係数および剛性を上げるとともに溶融性を改善する効果を奏する。その含有量が0.1%未満では熱膨張係数と剛性の向上および溶融性の改善に対し充分な効果が奏されない。他方、含有量が5%を超えると、ガラス構造が不安定となり溶融生産性が低下するとともに化学的耐久性が低下する。より好ましい範囲は、0.3〜4.0%であり、さらに好ましい範囲は、0.5〜3.5%である。
【0035】
BaO、SrO、ZnOは、それぞれ主として溶融性を向上させる作用を奏するが、多量に含有するとガラス構造を不安定化させる。このため、その含有量は、BaOおよびSrOが各々3%以下とすることを要するとともに、ZnOが5%以下とすることを要し、より好ましい範囲は、BaOおよびSrOが2.5%以下であり、さらに好ましい範囲は、2.0%以下である。これらを含まない組成とすることも可能である。ZnOは、溶融性を改善する効果を奏するとともに、イオン半径がLiイオンと近いことから。ガラス構造において近い架橋配置を取るため、Liイオンの拡散を抑制する働きを持つ。ただし、過剰に含有するとガラス骨格自体が不安定となり、化学的耐久性が低下する。このため、ZnOは、5%以下であることを要し、より好ましくは4%以下、さらに好ましくは3.5%以下である。
【0036】
そして、MgOとCaOとBaOとSrOとZnOとの合計量w(MgO+CaO+BaO+SrO+ZnO)が5〜15%であることを要する。この合計量が5%未満では剛性を上げると共に溶融性を改善する効果が充分ではなく、他方15%を越えるとガラス構造が不安定となり溶融生産性が低下するとともに化学的耐久性が低下するからである。より好ましい範囲は、6〜14%であり、さらに好ましい範囲は、7〜12%である。
【0037】
<修飾酸化物成分>
TiOは,剛性を上げるとともに溶融性を改善する効果を奏する。その添加量が1%未満では充分な剛性の向上および溶融性の改善に対し充分な効果を奏しない。他方、含有量が7%を超えると、ガラスの失透傾向が非常に強くなり、安定した溶融成形ができなくなる。より好ましい範囲は、1.2〜6.5%であり、さらに好ましい範囲は、1.5〜6.0%である。
【0038】
Nbは、溶融性を改善するとともに少量の添加により、ガラス骨格構造を強固にし、化学的な耐久性を向上させる効果を奏する。その添加量が0.2%未満では充分な添加効果を奏しない。他方、含有量が5%を超えると、ガラス骨格自体に取り込まれる量が過剰となり、骨格構造に柔軟性がなくなり、かえって化学的耐久性を悪化させてしまう。より好ましい範囲は、0.3〜4.0%であり、さらに好ましい範囲は、0.5〜3.5%である。
【0039】
<任意成分>
本実施形態の情報記録媒体用ガラス基板は、その他の任意成分として、含有する場合に0<w(Y)≦4%の酸化イットリウム(Y)、含有する場合に0<w(La)≦4%の酸化ランタン(La)、含有する場合に0<w(Gd)≦4%の酸化ガドリニウム(Gd)、含有する場合に0<w(CeO)≦4%の酸化セリウム(CeO)、含有する場合に0<w(HfO)≦2%の酸化ハフニウム(HfO)、含有する場合に0<w(ZrO)≦5%の酸化ジルコニウム(ZrO)、および、含有する場合に0<w(Ta)≦5%の酸化タンタルを含むことができる。
【0040】
これらの任意成分は、主としてガラスの構造を堅固にし、剛性を向上させる効果を奏する。これらの任意成分は、各単独であるいは2種以上のものを使用することができるが、2種以上のものを使用する場合は、特に限定はされないがその合計量を5.4%以下とすることが好ましい。5.4%を超えると過度にガラス構造が緻密化し、過剰な剛性の向上による加工性の低下し、加工量不足による表面品質の劣化が顕著となり、磁性膜を作製した際の充分な電磁変換特性が発揮できなくなる。なお、CeOおよびSbは、ガラス溶融時において脱泡または消泡の効果を奏するため、上記の含有量の範囲内で含有することが好ましい。
【0041】
<その他添加成分>
また、必要に応じて、一般的なケイ酸塩ガラスの添加成分として周知の他の酸化物成分を適量含有させることも可能である。
【0042】
<組成関係式>
そして、本実施形態の情報記録媒体用ガラス基板は、上記組成の下、さらに、前記(1)〜(4)の組成関係式を満足することを要する。上記組成の下、さらに、前記(1)〜(4)の組成関係式を満足することで、上述したように、Liを中心としたイオン化傾向エネルギーが低くてガラス構造中でも容易にイオン化するアルカリ元素の挙動を制御することができ、結果的に、情報記録媒体表面でのLiを中心とした、イオン化エネルギーが低くイオン化し易く、さらにイオン半径が小さくい為にガラス構造中でも容易に移動するアルカリ元素の挙動を抑制することができ、雰囲気ガス成分、保護成分および潤滑成分等の周辺成分との反応生成物の発生およびその成長を抑制乃至は防止することが可能となる。この結果、本実施形態の情報記録媒体用ガラス基板は、記録再生の際における情報記録媒体の長期に亘る信頼性をより向上させることができる。
【0043】
すなわち、LiO/ROが0.05未満では、混合アルカリ効果による化学的な構造安定化が発揮されず充分な化学耐久性の向上が得られなくなって好ましくない。一方、LiO/ROが0.35を越えると、アルカリ元素総量に対するLi量が過剰となり、アルカリイオン同士の拡散抑制効果が発現し難くなり、Li拡散量が増加してしまい、好ましくない。
【0044】
LiO/FMOが0.005未満では、ガラス骨格に対するLi量が不充分となり、ガラス構造のイオン充填密度が充分に上がらず、高いヤング率が得られ難くなり好ましくない。一方、LiO/FMOが0.035を超えてしまうと、ガラスネットワークに取り込まれ安定化するLi以外の不飽和状態のLiイオンの存在が過剰となり、Liの拡散が急激に増大してしまうため、好ましくない。
【0045】
LiO/(MgO+ZnO)が2.00を超えるとイオン半径効果に依存したLi拡散の抑制効果が充分に発現できなくなり、Li溶出量が増大し、好ましくない。
【0046】
Nb/SiOが0.01未満では、SiOのネットワーク結合を充分に強化することができないため、好ましくない。一方、Nb/SiOが0.10を越えるとSiOの結合が過度に強固になってしまい、化学的な柔軟性がなくなってしまい、構造が不安定となり好ましくない。
【0047】
なお、本実施形態の情報記録媒体用ガラス基板において、好ましくは、ヤング率Eが82GPa以上であり、比重をρとする場合に、比弾性率E/ρが31以上であり、ビッカース硬度Hvが550〜650であり、所定の加速試験後におけるLi抽出量Aが2.5インチディスクあたり6ppb以下であり、所定の溶出試験におけるSi溶出量Sが2.5インチディスクあたり300ppb未満である。
【0048】
ヤング率Eが82GPa未満であると、情報記録媒体用ガラス基板を用いた情報記録媒体を情報記録装置に組み付けて駆動した場合における耐衝撃性が低下してしまい、好ましくない。
【0049】
比弾性率E/ρが31未満であると、フラッタリング特性が低下するとともに、非駆動時の耐衝撃性が低下し、好ましくない。
【0050】
ビッカース硬度Hvが550未満であると、情報記録媒体用ガラス基板の表面にキズが入り易くなって好ましくなく、また、ビッカーズ硬度Hvが650を越えると、硬くなりすぎて研磨加工の加工効率が低下し、コスト高となって好ましくない。
【0051】
所定の加速試験後におけるLi抽出量Aが2.5インチディスクあたり6ppbを越えると、Li成分が多量に拡散して信頼性が低下してしまい、好ましくない。ここで、前記所定の加速度試験は、加工洗浄した清浄な2.5インチディスクサンプルを150℃に維持したクリーンオーブン内で30時間保持する試験操作である。また、2.5インチディスクあたりの2.5インチディスクは、本出願書類において、外径65mm、内径20mmおよび厚さ0.635mmのディスクをいう。
【0052】
所定の溶出試験におけるSi溶出量Sが2.5インチディスクあたり300ppbを越えると、加工速度が不安定となり、形状品質が大きく変動してしまい、好ましくない。ここで、前記所定の溶出試験は、加工洗浄した清浄な2.5インチディスクサンプルをテフロン(登録商標)樹脂製の密閉容器内で50mlの超純水に浸漬した後、80℃に維持した恒温槽で24時間保持し溶出処理した後、ディスクを取り出す実験操作である。
【0053】
また、本実施形態の情報記録媒体用ガラス基板において、好ましくは、ガラス転移点Tgが550℃以上650℃未満である。
【0054】
情報記録媒体用ガラス基板における加熱によるアルカリイオンの内部拡散は、一般に、ガラス自体のガラス転移点Tgに依存しており、ガラス転移点Tgの温度が高いほど、その拡散速度は、遅くなり、イオンの移動が抑制される。このため、情報記録媒体の長期に亘る信頼性をより向上させる観点から、ガラス転移点は、550℃以上が好ましい。一方、過度にガラス転移点Tgを高くすると、製造過程における成形性が著しく低下してしまい、この観点から、ガラス転移点は、650℃以下が好ましい。
【0055】
また、本実施形態の情報記録媒体用ガラス基板において、好ましくは、熱膨張係数αが45×10−7〜75×10−7/℃である。
【0056】
熱膨張係数αが比較的小さいと、雰囲気の温度変化によるガラス構造の変質が少なく、ガラス内部における歪みの発生によるイオンの拡散が起こり難くなる。一方、過度に低くなると、情報記録媒体を情報記録装置に組み付ける際の締結部材との親和性が保てなくなり、部材による歪みの発生が起こり、かえって特性が低下してしまう。このような観点から熱膨張係数αは、上記45×10−7〜75×10−7/℃が好ましい。
【0057】
また、本実施形態の情報記録媒体用ガラス基板において、好ましくは、主表面における応力状態が略均質である。すなわち、情報記録媒体用ガラス基板は、いわゆる化学強化層を備えず、その表面に圧縮応力層が存在しないことが好ましい。
【0058】
圧縮応力が存在すると、情報記録媒体用ガラス基板における微視的なガラス構造においても、歪みによる拡散状態の変化が生じてしまい、前記信頼性の向上の効果が減殺されてしまって、好ましくない。
【0059】
ここで、化学強化とは、情報記録媒体用ガラス基板に含まれるナトリウムイオンやカリウムイオンなどの1価の金属イオンを、これらに対してイオン半径がより大きな1価の金属イオンに置き換える処理をいう。この処理は、公知の常套手段、例えば、情報記録媒体用ガラス基板を200〜400℃においてイオン半径がより大きな1価の金属イオンを含む処理液に浸漬することにより実施することができる。化学強化層は、この化学強化の処理によって情報記録媒体用ガラス基板に形成される層である。この化学強化の処理により、情報記録媒体用ガラス基板の機械的強度が向上するという効果が奏される。
【0060】
また、本実施形態の情報記録媒体用ガラス基板において、好ましくは、熱伝導率βが1〜1.8W/(mK)である。
【0061】
熱伝導率βが1未満であると、情報記録媒体用ガラス基板に記録層をスパッタリング法によって形成する場合に、スパッタ中に発生した膜表面の熱エネルギーが情報記録媒体用ガラス基板内部に充分に行き渡らず、情報記録媒体用ガラス基板と前記膜との界面部分に熱が集中し、その結果、情報記録媒体用ガラス基板中におけるLi成分の拡散速度が向上し、ガラス構造における抑制効果が緩和されてしまって好ましくない。一方、熱伝導率βが1.8を越えると、前記膜から情報記録媒体用ガラス基板へ過剰に熱が奪われてしまい、前記膜の成長に寄与する熱エネルギーが不充分となって、前記膜、ひいては記録層の特性(例えば磁気特性)が劣化してしまい、好ましくない。
【0062】
また、本実施形態の情報記録媒体用ガラス基板において、好ましくは、pHが2〜4の範囲で保持された水溶液中でのゼータ電位量ζが−10〜10mVである。
【0063】
情報記録媒体用ガラス基板を製造する際における最終加工工程において、情報記録媒体用ガラス基板の表面のゼータ電位ζを−10〜10mVの特定の範囲に維持することによって、加工の際におけるLiを中心としたアルカリ元素の過度の流出を抑制することができ、前記信頼性の高い情報記録媒体用ガラス基板が得られる。
【0064】
また、本実施形態の情報記録媒体用ガラス基板において、好ましくは、液相温度TLが1350℃以下であり、前記液相温度における粘性γが0.5〜10ポアズである。
【0065】
液相温度が1350℃を越えると、情報記録媒体用ガラス基板の製造が困難となる場合がある。このため、液相温度は、1340℃以下とすることが好ましく、1300℃以下とすることがより好ましい。一方、液相温度の下限値は、特に限定されないが、ガラスを安定化させる成分を適当量含有している、あるいは化学的耐久性がある程度保たれているという観点から1050℃以上とすることが好ましい。
【0066】
また、液相温度における粘性が0.5ポアズ未満であると、情報記録媒体用ガラス基板を成形する際に適度なガラス滴とすることが困難となり情報記録媒体用ガラス基板の成形に支障をきたす場合がある。また、10ポアズを超えると、情報記録媒体用ガラス基板を成形する際にガラスが適度に流動せず、情報記録媒体用ガラス基板の成形に支障をきたす場合がある。このため、液相温度における粘性は、好ましくは0.6〜9.8ポアズであり、より好ましくは1.0〜9.0ポアズである。
【0067】
ここで、液相温度TLは、次のような手順により測定することができる。例えば、測定試料を、電気炉を用いて1550℃で2時間溶解処理した棒状のガラス融体を温度傾斜勾配炉内で10時間保持し、急冷した後ガラスを分析し、失透現象が発生しない下限値の温度値を傾斜勾配温度から読み取り、液相温度TLとした。
【0068】
また、TLにおける粘性は、次のような手順により測定することができる。例えば、撹拌式粘性測定機(商品名:TVB-20H型粘度計、アドバンテスト社製)を用いて、溶融したガラスの粘性を測定し、液相温度TLにおける粘性(logη)を測定した。
【0069】
<製造方法>
本実施形態の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法は、特に限定はなく従来公知の製造方法を用いることができる。例えば、情報記録媒体用ガラス基板を構成する各成分の原料として各々相当する酸化物、炭酸塩、硝酸塩、水酸化物等が使用され、所望の割合に秤量され、粉末で充分に混合して調合原料とされる。この調合原料が、例えば1300〜1550℃に加熱された電気炉中の白金坩堝等に投入され、溶融清澄後、撹拌均質化して予め加熱された鋳型に鋳込まれ、徐冷してガラスブロックとされる。
【0070】
次に、ガラス転移点付近の温度で1〜3時間保持された後に、徐冷して歪み取りが行われる。そして、この得られたガラスブロックは、円盤形状にスライスされて、内周および外周を同心円としてコアドリルを用いて切り出される。あるいは、溶融ガラスをプレス成形して円盤状に成形される。
【0071】
そして、このようにして得られた円盤状のガラス基板は、さらにその両面を粗研磨および研磨された後、水、酸、アルカリの少なくとも1つの液で洗浄されて最終的な情報記録媒体用ガラス基板とされる。なお、上記過程において、両面を粗研磨および研磨を行った後に、硝酸カリウム(50wt%)と硝酸ナトリウム(50wt%)の混合溶液に浸漬させることにより化学強化を行ない、その後、化学強化層を除去してもよい。
【0072】
本実施形態の情報記録媒体用ガラス基板は、円盤状の形状を有することが好ましく、これにより例えばハードディスクドライブに組み付けられる情報記録媒体のガラス基板として適したものとなる。なお、円盤状の形状とする場合、その大きさは特に限定されず、例えば、3.5インチ、2.5インチ、1.8インチ、あるいはそれ以下の小径ディスクとすることもでき、またその厚みは2mm、1mm、0.63mm、あるいはそれ以下といった薄型とすることもできる。
【0073】
<磁気記録媒体>
次に、本実施形態の情報記録媒体用ガラス基板を用いた磁気記録媒体について説明する。
【0074】
図1は、実施形態の情報記録媒体用ガラス基板を用いた磁気記録媒体の一例である磁気ディスクを示す一部断面斜視図である。この磁気ディスクDは、円形の情報記録媒体用ガラス基板101の表面に形成された磁性膜102を備えている。磁性膜102の形成には、公知の常套手段による形成方法が用いられる。例えば、磁性粒子を分散させた熱硬化性樹脂を情報記録媒体用ガラス基板101上にスピンコートすることによって磁性膜102を形成する形成方法(スピンコート法)や、情報記録媒体用ガラス基板101上にスパッタリングによって磁性膜102を形成する形成方法(スパッタリング法)や、情報記録媒体用ガラス基板101上に無電解めっきによって磁性膜102を形成する形成方法(無電解めっき法)等が挙げられる。磁性膜102の膜厚は、スピンコート法による場合では、約0.3μm〜1.2μm程度であり、スパッタリング法による場合では、約0.04μm〜0.08μm程度であり、無電解めっき法による場合では、約0.05μm〜0.1μm程度である。薄膜化および高密度化の観点から、スパッタリング法による膜形成が好ましく、また、無電解めっき法による膜形成が好ましい。
【0075】
磁性膜102に用いる磁性材料は、公知の任意の材料を用いることができ、特に限定されない。磁性材料は、例えば、高い保持力を得るために結晶異方性の高いCoを基本とし、残留磁束密度を調整する目的でNiやCrを加えたCo系合金等が好ましい。より具体的には、Coを主成分とするCoPt、CoCr、CoNi、CoNiCr、CoCrTa、CoPtCr、CoNiPt、CoNiCrPt、CoNiCrTa、CoCrPtTa、CoCrPtB、CoCrPtSiO等が挙げられる。磁性膜102は、ノイズの低減を図るために、非磁性膜(例えば、Cr、CrMo、CrV等)で分割された多層構成(例えば、CoPtCr/CrMo/CoPtCr、CoCrPtTa/CrMo/CoCrPtTa等)であってもよい。磁性膜102に用いる磁性材料は、上記磁性材料の他、フェライト系や鉄−希土類系であってもよく、また、SiO、BN等からなる非磁性膜中にFe、Co、FeCo、CoNiPt等の磁性粒子を分散した構造のグラニュラー等であってもよい。また、磁性膜102への記録には、内面型および垂直型のいずれかの記録形式が用いられてよい。
【0076】
また、磁気ヘッドの滑りをよくするために、磁性膜102の表面には、潤滑剤が薄くコーティングされてもよい。潤滑剤として、例えば液体潤滑剤であるパーフロロポリエーテル(PFPE)をフレオン系などの溶媒で希釈したものが挙げられる。
【0077】
さらに必要により磁性膜102に対し下地層や保護層が設けられてもよい。磁気ディスクDにおける下地層は、磁性膜102に応じて適宜に選択される。下地層の材料として、例えば、Cr、Mo、Ta、Ti、W、V、B、Al、Ni等の非磁性金属から選ばれる少なくとも一種以上の材料が挙げられる。例えば、Coを主成分とする磁性膜102の場合には、下地層の材料は、磁気特性向上等の観点からCr単体やCr合金であることが好ましい。また、下地層は、単層とは限らず、同一または異種の層を積層した複数層構造であってもよい。
【0078】
このような複数層構造の下地層は、例えば、Cr/Cr、Cr/CrMo、Cr/CrV、NiAl/Cr、NiAl/CrMo、NiAl/CrV等の多層下地層が挙げられる。磁性膜102の摩耗や腐食を防止する保護層として、例えば、Cr層、Cr合金層、カーボン層、水素化カーボン層、ジルコニア層、シリカ層等が挙げられる。これら保護層は、下地層および磁性膜102と共にインライン型スパッタ装置で連続して形成することができる。また、これら保護層は、単層としてもよく、あるいは、同一または異種の層からなる複数層構成であってもよい。
【0079】
なお、上記保護層上に、あるいは、上記保護層に代えて、他の保護層が形成されてもよい。例えば、上記保護層に代えて、Cr層の上にSiO層が形成されてもよい。このようなSiO層は、Cr層の上にテトラアルコキシシランをアルコール系の溶媒で希釈した中に、コロイダルシリカ微粒子を分散して塗布し、さらに焼成することによって形成される。
【0080】
このような本実施形態における情報記録媒体用ガラス基板101を基体とした磁気記録媒体は、情報記録媒体用ガラス基板101が上述した組成により形成されるので、情報の記録再生を長期に亘り高い信頼性で行うことができる。
【0081】
なお、上述では、本実施形態における情報記録媒体用ガラス基板101を磁気記録媒体に用いた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、本実施形態における情報記録媒体用ガラス基板101は、光磁気ディスクや光ディスク等にも用いることが可能である。
【0082】
(実施例および比較例)
次に、第1〜第40実施例および第A〜第F比較例について説明する。表1〜表のガラス組成となるように、所定量の原料粉末を白金るつぼに秤量して入れ、混合した後、電気炉中で1550℃で溶解した。原料が充分に溶解したのち、白金製の撹拌羽をガラス融液に挿入し、1時間撹拌した。その後、撹拌羽を取り出し、30分間静置した後、治具に融液を流しこむことによってガラスブロックを得た。その後、各ガラスのガラス転移点付近でガラスブロックを2時間保持した後、徐冷して歪取りを行なった。得られたガラスブロックを厚み約1.5mmの2.5インチの円盤形状にスライスし、内周、外周を同心円としてカッターを用いて切り出した。そして、両面を粗研磨および研磨を行ない、その後洗浄を行なうことにより実施例および比較例の情報記録媒体用ガラス基板を作製した。この作製した情報記録媒体用ガラス基板について下記物性評価を行なった。その結果も表1〜表に示す。
【0083】
<加速度試験後のLi溶出量A>
加工洗浄した清浄な2.5インチディスクサンプルを150℃に維持したクリーンオーブン内で30時間保持する加速試験を実施した後、清浄な環境下でガラスディスクを超純水30ml中に浸漬し、常温で30分間保持した後、抽出液からディスクを取り出し、抽出操作を行った処理液をICP質量分析装置(商品名:Agilent 7700s アジレントテクノロジー社製)により分析し、ディスク1枚あたりのLi溶出量Aを算出した。
【0084】
<溶出試験後のSi溶出量S>
加工洗浄した清浄な2.5インチディスクサンプルをテフロン樹脂製(テフロンは登録商標)の密閉容器内で50mlの超純水に浸漬した後、80℃に維持した恒温槽で24時間保持し溶出処理した、溶出液をICP発光分光分析装置(商品名:SPS7800、セイコーインスツルメンツ社製)により分析処理操作を行い、ディスク一枚あたりのSi溶出量Sを算出した。
【0085】
<ガラス転移点Tg>
示差熱測定装置(商品名:EXSTAR6000、セイコーインスツルメンツ社製)を用いて、室温〜900℃の温度範囲を10℃/minの昇温速度で、粉末状に調整したガラス試料を加熱し測定することにより、ガラス転移点を測定した。
【0086】
<ヤング率Eおよび比弾性率E/ρ>
JIS R 1602ファインセラミックスの弾性試験方法の動的弾性率試験方法に準じて、自由共振式弾性率測定装置(商品名:JE-RT、日本テクノプラス社製)を用いて、ガラスブロックから80×20×2mmの試験片を作成し、ヤング率Eを測定した。一方、アルキメデス法により、比重ρを測定した。そして、これらの測定値から、比弾性率E/ρを算出した。
【0087】
<ビッカース硬度Hv>
ビッカース硬度試験機(商品名:HM-112、アカシ社製)を用いて、大気中で荷重100g、負荷時間15secの条件下にて、ビッカース硬度Hvを測定した。
【0088】
<熱膨張係数α>
示差膨張測定装置(商品名:EXSTAR6000、セイコーインスツルメンツ社製)を用いて、荷重:5g、温度範囲:25〜100℃、昇温速度:5℃/minの条件で測定することにより、熱膨張係数αを測定した。なお、表1〜5において、表1〜5中の数値αに10−7を乗じた数値が測定値である。
【0089】
<熱伝導率β>
レーザーフラッシュ法を用いて、測定試料の片面にパルスレーザーを照射し、裏面の温度変化を測定することにより、熱伝導率を測定した。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
【表3】
【0093】
【表4】
【0094】
【表5】
【0095】
【表6】
【0096】
【表7】
【0097】
【表8】
【0098】
【表9】
【0099】
表1〜表から分かるように、第1〜第40実施例では、そのLi溶出量Aは、15ppb/(2.5インチディスク)以下、より正確には13.1ppb/(2.5インチディスク)以下であり、その情報記録媒体の信号エラーは、100カウント以下、より正確には、89カウント以下であった。より好ましくは、そのLi溶出量Aが、6ppb/(2.5インチディスク)以下である。特に、そのLi溶出量Aが、4.6ppb/(2.5インチディスク)以下では、その情報記録媒体の信号エラーが、28カウント以下であり、より優れていた。一方、第A〜第F比較例では、そのLi溶出量Aは、16.0ppb/(2.5インチディスク)以上であり、その情報記録媒体の信号エラーは、128カウント以上であった。
【0100】
また、ガラス転移点(ガラス転移温度)Tgは、第1〜第40実施例では、550℃〜650℃の範囲、より正確には563℃〜631℃の範囲であったが、第A〜第F比較例では、510℃以下であった。したがって、ガラス転移点Tgが550℃以上であれば、情報記録媒体用ガラス基板内部におけるアルカリイオンの拡散が抑制されていることが分かる。
【0101】
そして、このようなLi溶出量Aが抑制されアルカリイオンの拡散が抑制された第1〜第40実施例では、Si溶出量Sは、少なくとも20〜300ppb/(2.5インチディスク)の範囲、より正確には21〜289ppb/(2.5インチディスク)の範囲にあり、ヤング率Eは、82〜88の範囲、より正確には82.0〜87.9の範囲にあり、比弾性率E/ρは、少なくとも31以上、より正確には32.4以上であり、ビッカース硬度Hvは、少なくとも550〜650の範囲、より正確には589〜632の範囲であり、25℃から100℃までにおける熱膨張係数αは、少なくとも45×10−7〜75×10−7/℃の範囲にあり、より正確には67.2×10−7/℃以下であり、熱伝導率βは、少なくとも1.0〜1.8W/(mK)の範囲、より正確には1.05〜1.25W/(mK)の範囲であった。
【0102】
以上、要するに、本発明にかかる情報記録媒体用ガラス基板は、本発明に係る要件を満足している結果、情報記録媒体の長期に亘る信頼性をより向上させることができることは明らかである。
【0103】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【0104】
本明細書は、上記のように様々な態様の技術を開示しているが、そのうち主な技術を以下に纏める。
【0105】
本発明は、情報記録媒体用ガラス基板であって、重量%表示で、
SiO:52〜67%
Al:8〜20%
:0〜6%(ただし、0を含む)
(ただし、FMO=SiO+Al+B=70〜85%)
LiO:0.5〜4%
NaO:1〜8%
O:0〜5%(ただし、0を含む)
(ただし、R2O=LiO+NaO+KO=5〜15%)
MgO:2〜9%
CaO:0.1〜5%
BaO:0〜3%(ただし、0を含む)
SrO:0〜3%(ただし、0を含む)
ZnO:0〜5%(ただし、0を含む)
(ただし、MgO+CaO+BaO+SrO+ZnO=5〜15%)
:0〜4%(ただし、0を含む)
La:0〜4%(ただし、0を含む)
Gd:0〜4%(ただし、0を含む)
CeO:0〜4%(ただし、0を含む)
TiO:1〜7%
HfO:0〜2%(ただし、0を含む)
ZrO:0〜5%(ただし、0を含む)
Nb:0.2〜5%
Ta:0〜5%(ただし、0を含む)
の各ガラス成分を有し、かつ、
LiO/R2O:0.05〜0.35 ・・・(1)
LiO/FMO:0.005〜0.035・・・(2)
LiO/(MgO+ZnO):2未満 ・・・(3)
Nb/SiO:0.01〜0.075 ・・・(4)
の前記(1)〜(4)の組成関係式を満たすことを特徴とする。
【0106】
また、他の一態様では、上述の情報記録媒体用ガラス基板において、耐衝撃性の向上および信頼性の向上を図る観点から、好ましくは、ヤング率Eが82GPa以上かつ90GPa未満であり、比重をρとする場合に、比弾性率E/ρが31以上であり、ビッカース硬度Hvが550〜650であり、所定の加速試験後におけるLi抽出量Aが2.5インチディスクあたり6ppb以下であり、所定の溶出試験におけるSi溶出量が2.5インチディスクあたり300ppb未満である。
【0107】
また、他の一態様では、これら上述の情報記録媒体用ガラス基板において、信頼性の向上および生産性の低下防止を図る観点から、好ましくは、ガラス転移点Tgが550℃以上650℃未満である。
【0108】
また、他の一態様では、これら上述の情報記録媒体用ガラス基板において、信頼性の向上を図る観点から、好ましくは、熱膨張係数αが45×10−7〜75×10−7/℃である。
【0109】
また、他の一態様では、これら上述の情報記録媒体用ガラス基板において、信頼性の向上を図る観点から、好ましくは、主表面における応力状態が略均質である。
【0110】
また、他の一態様では、これら上述の情報記録媒体用ガラス基板において、記録層の特性劣化の防止を図る観点から、好ましくは、熱伝導率βが1〜1.8W/(mK)である。
【0111】
この出願は、2010年6月30日に出願された日本国特許出願特願2010−148571を基礎とするものであり、その内容は、本願に含まれるものである。
【0112】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
図1