(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5837851
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ内面への電子部品取付構造
(51)【国際特許分類】
B60C 23/04 20060101AFI20151203BHJP
B60C 19/00 20060101ALI20151203BHJP
【FI】
B60C23/04 H
B60C19/00 B
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-98515(P2012-98515)
(22)【出願日】2012年4月24日
(65)【公開番号】特開2013-226853(P2013-226853A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2015年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】山口 滋
【審査官】
柳元 八大
(56)【参考文献】
【文献】
特表2005−532551(JP,A)
【文献】
特開2007−176479(JP,A)
【文献】
特開2006−021611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 23/04
B60C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面、側面、及び蓋部を有し、前記底面、側面、及び蓋部によって画定された内部空間に電子部品を搭載したケースと、前記ケースと空気入りタイヤ内面との間に配置されたゴム製の支持体と、を備える空気入りタイヤ内面への電子部品取付構造であって、
前記支持体は、空気入りタイヤ内面に取り付け可能な底面と、前記ケースの前記底面を受容可能な形状の台座部が形成された表面と、を有し、
前記支持体は、前記表面に溝を有し、
前記溝は、前記台座部の周囲で連続して円を構成する、
電子部品取付構造。
【請求項2】
前記溝は、前記台座部から所定の距離離れている、請求項1に記載の電子部品取付構造。
【請求項3】
前記ケースは、その側面に突起を有し、前記台座部は、前記突起と係合可能な凹部を有する、請求項1又は2に記載の電子部品取付構造。
【請求項4】
前記ケースの前記底面は、曲面で形成される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子部品取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤ内面への電子部品取付構造に関し、特に、ゴム台座の耐久性を向上させた電子部品取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤ(以下、単にタイヤともいう)の状態をモニタリングするTPMS(タイヤ空気圧監視システム)などの装置が知られている。このような装置では、タイヤの走行時の状態を示すデータを収集するために、センサなどの電子部品をタイヤ内面に装着する。例えば、特許文献1は、モニタリング装置を取り外し可能及び再取り付け可能に保持するゴムパッチを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−198505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タイヤは走行時、路面との接触によって変形を繰り返すため、弾性体であるゴム台座又はパッチも、タイヤの変形に追従して変形を繰り返す。しかしながら、電子部品は衝撃による故障防止のため、硬い樹脂などのケースに収容される。そのため、電子部品のケースは、タイヤの変形に追従しない。つまり、タイヤの変形によるストレスをゴムパッチが全て吸収するため、タイヤ走行が長時間に及ぶと、ゴムパッチに亀裂が入る、又は、電子部品のケースとゴムパッチとの接着面が剥離する等の問題が発生していた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明は、以下の特徴を有する。本発明の第1の特徴は、底面(底面18)、側面(側面19)、及び蓋部(蓋部20)を有し、前記底面、側面、及び蓋部によって画定された内部空間に電子部品を搭載したケース(ケース13)と、前記ケースと空気入りタイヤ内面との間に配置されたゴム製の支持体(ゴムパッチ12)と、を備える空気入りタイヤ内面への電子部品取付構造(電子部品取付構造11)であって、前記支持体は、空気入りタイヤ内面に取り付け可能な底面(底面14)と、前記ケースの前記底面を受容可能な形状の台座部(台座部17)が形成された表面(表面15)と、を有し、前記支持体は、前記表面に溝(溝21)を有することを要旨とする。
【0006】
かかる特徴によれば、支持体の表面に設けられた溝が、タイヤ転動時に発生する変形ストレスを吸収するため、支持体に亀裂や剥離が生じる可能性を低減することができる。
【0007】
本発明の第2の特徴は、第1の特徴に係り、前記溝は、前記台座部から所定の距離離れていることを要旨とする。
【0008】
本発明の第3の特徴は、第1又は2の特徴に係り、前記溝は、前記台座部の周囲で連続して円を構成することを要旨とする。
【0009】
本発明の第4の特徴は、第1〜3のいずれか1つの特徴に係り、前記ケースは、その側面に突起(突起22)を有し、前記台座部は、前記突起と係合可能な凹部(凹部23)を有することを要旨とする。
【0010】
本発明の第5の特徴は、第1〜4のいずれか1つの特徴に係り、前記ケースの前記底面は、曲面で形成されることを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、空気入りタイヤ内面への電子部品取付構造において、ゴム台座の耐久性を向上させるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、従来技術に係る電子部品取付構造の断面図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る電子部品取付構造の平面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す電子部品取付構造の線A−A’における断面図である。
【
図4】
図4は、本発明に係る電子部品取付構造におけるケースの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なのものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることを留意すべきである。従って、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0014】
図1は、従来技術に係る電子部品取付構造の断面図である。電子部品取付構造1は、ゴムパッチ2と、電子部品のケース3とを備える。ゴムパッチ2は、底面4、側面5、及び頂面6を有する。ゴムパッチ2は、底面4でタイヤ内面のインナーライナー(不図示)に接着される。ゴムパッチ2の頂面6には、ケース3を受容可能な形状の台座部7が設けられている。ケース3は、底面8、側面9、及び蓋部10を有し、内部に電子部品(不図示)を搭載する。ケース3の底面8は、ゴムパッチ2の台座部7と相補的な形状であり、ねじ山を設けることによって台座部7に固定することもできる。
【0015】
図2は、本発明に係る電子部品取付構造の平面図である。電子部品取付構造11は、ゴムパッチ12と、樹脂製のケース13とを備える。ゴムパッチ12は、底面14及び表面15を有する。ゴムパッチ12は、任意の接着手段によって、底面14でタイヤ内面のインナーライナー(不図示)に接着される。ゴムパッチ12の表面15には、ケース13を受容可能な形状の台座部17が設けられている。ケース13は、底面18、側面19、及び蓋部20を有し、内部に電子部品(不図示)を搭載する。電子部品は、圧力センサ、温度センサ、アンテナ等の、任意の部品を含むことができ、任意の手段でケース13の内部に搭載することができる。
【0016】
図3は、
図2に示す電子部品取付構造の線A−A’における断面図である。ゴムパッチ12は、概ね円錐台の断面形状で示されている。ただし、ゴムパッチ12は、適用されるタイヤ内面の位置及び形状に応じて、任意の材料及び形状で形成することができる。好適な材料の例として、クロロブチルゴムと天然ゴムの混合物、スチレンブタジエンゴム(SBR)と天然ゴムの混合物がある。典型的には、これらの材料から形成されたゴムパッチは、約150℃の温度に加熱し、この温度で約30分間保持することによって硬化されるが、必要とされる硬度に応じて、時間と温度を変更することもできる。
【0017】
ゴムパッチ12は、表面15に溝21を有する。ゴムパッチ12は、タイヤの回転による変形に追従して変形するが、溝21が、ゴムパッチ12の変形によるストレスを吸収することによって、ケース13を受容した台座部17周辺で最大となるストレスを低減する。その結果、ゴムパッチに亀裂が入る可能性や、台座部17で剥離が生じる可能性を低減することができる。
図3において、溝21は、タイヤ径方向、すなわち底面14に直交する軸と平行に形成されているが、異なる傾斜角度で形成することもできる。なお、溝21の寸法は、幅が2〜4mm、深さがゴムパッチ厚さの50%〜70%の範囲であることが好ましい。溝21の寸法がこれよりも大きいとゴムパッチ12の強度が低下し、これよりも小さいとストレスを十分に吸収できないからである。
【0018】
溝21は、台座部17から所定の距離だけ離れた位置に形成される。上述したように、ゴムパッチ12の変形によるストレスは、ケース13を受容した台座部17に向かって増大する。そのため、台座部17よりも手前に溝21を設けてストレスを吸収することが、センサ13周辺のゴム変形防止に効果的だからである。好ましくは、溝21は、台座部17の周縁から2〜6mm離れた位置に形成される。
【0019】
また、溝21は、台座部17の周囲で連続し、円を構成する。溝21のいずれの部分も、台座部17からの距離が概ね等しくなるように形成されることにより、より高精度にセンサ13周辺のゴム変形を防止することができる。
【0020】
図4は、本発明に係る電子部品取付構造におけるケースの斜視図である。ケース13は、側面18に突起21を有する。突起21は、ゴムパッチ12の台座部17に形成された凹部23(
図3)と、係合可能な形状に形成される。突起21と凹部23との係合により、ケース13をゴムパッチ12と機械的に結合し、離脱を防止することができる。突起21と凹部23との接触面に、例えばホットメルト接着剤を塗布し、その後ゴムパッチ12を加硫することによって、ケース13と完全に接着することもできる。
【0021】
ケース13の底面18は、半球面等の任意の曲面で形成される。これにより、タイヤの変形に対して、底面18と台座部17との接触面がストレスを受けにくくなり、剥離が生じる可能性を低減することができる。
【実施例】
【0022】
次に、本発明の効果を更に明確にするために、本発明の実施例に係る電子部品取付構造及び従来例に係る電子部品取付構造をTB用タイヤ(サイズ11R22.5)に装着し、ドラム試験を実施した。ドラム試験は、各タイヤをドラム試験機に装着して時速60km、荷重3,300kgにて走行し、装着した電子部品取付構造が故障するまでの走行距離を記録した。また、有限要素法(FEM)を用いて、ゴムパッチの最大許容応力についても比較した。ドラム試験結果及びFEM解析結果を、表1に示す。なお、本発明は、これらの例によって何ら限定されるものではない。
【0023】
【表1】
【0024】
表1からわかるように、本発明の実施例に係る電子部品取付構造は、従来例に係る電子部品取付構造と比較して、ストレスに対する強度が向上し、耐用時間も大幅に延びた。つまり、本発明は、ゴムパッチの耐久性が向上したことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0025】
以上のように、本発明は、空気入りタイヤ内面への電子部品取付構造において、ゴム台座の耐久性向上に利用することができる。
【符号の説明】
【0026】
11 電子部品取付構造
12 ゴムパッチ
13 ケース
14 底面
15 表面
17 台座部
18 底面
19 側面
20 蓋部
21 溝
22 突起
23 凹部