(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明を実施するための実施形態について、図面を参照して説明する。尚、各図において同一箇所については同一の符号を付す。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、一実施形態に係る結像素子アレイを用いた画像形成装置の構成図である。
図1において、画像形成装置10は、例えば複合機であるMFP(Multi-Function Peripherals)や、プリンタ、複写機等である。以下の説明ではMFPを例に説明する。
【0011】
MFP10の本体11の上部には透明ガラスの原稿台12があり、原稿台12上には自動原稿搬送部(ADF)13を開閉自在に設けている。また本体11の上部には操作パネル14を設けている。操作パネル14は、各種のキーとタッチパネル式の表示部を有している。
【0012】
本体11内のADF13の下部には、読取装置であるスキャナ部15を設けている。スキャナ部15は、ADF13によって送られる原稿または原稿台上に置かれた原稿を読み取って画像データを生成するもので、密着型イメージセンサ16(以下、単にイメージセンサと呼ぶ)を備えている。イメージセンサ16は、主走査方向(
図1では奥行方向)に配置されている。
【0013】
イメージセンサ16は、原稿台12に載置された原稿の画像を読み取る場合は原稿台12に沿って移動しながら原稿画像を1ライン分ずつ読み取る。これを原稿サイズ全体にわたって実行し1ページ分の原稿の読み取りを行う。またADF13によって送られる原稿の画像を読み取る場合、イメージセンサ16は、固定位置(図示の位置)にある。
【0014】
さらに本体11内の中央部にはプリンタ部17を有し、本体11の下部には、各種サイズの用紙を収容する複数のカセット18を備えている。プリンタ部17は、感光体ドラムと、感光体ドラムを露光する光走査装置を有する。光走査装置は発光素子であるLEDを含む走査ヘッド19を有し、走査ヘッド19からの光線によって感光体を走査して画像を生成する。
【0015】
プリンタ部17は、スキャナ部15で読み取った画像データや、PC(Personal Computer)などで作成された画像データを処理して記録媒体である用紙に画像を形成する。プリンタ部17は、例えばタンデム方式によるカラーレーザプリンタであり、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像形成部20Y,20M,20C,20Kを含む。
【0016】
画像形成部20Y,20M,20C,20Kは、中間転写ベルト21の下側に、上流から下流側に沿って並列に配置している。また、走査ヘッド19も画像形成部20Y,20M,20C,20Kに対応して複数の走査ヘッド19Y,19M,19C,19Kを有している。
【0017】
図2は、画像形成部20Y,20M,20C,20Kのうち、画像形成部20Kを拡大して示す構成図である。なお、以下の説明において各画像形成部20Y,20M,20C,20Kは同じ構成であるため、画像形成部20Kを代表に説明する。
【0018】
図2に示すように、画像形成部20Kは、像担持体である感光体ドラム22Kを有する。感光体ドラム22Kの周囲には、回転方向tに沿って帯電チャージャ23K、現像器24K、1次転写ローラ25K、クリーナ26K、ブレード27K等を配置している。感光体ドラム22Kの露光位置には、走査ヘッド19Kから光を照射し、感光体ドラム22K上に静電潜像を担持する。
【0019】
画像形成部20Kの帯電チャージャ23Kは、感光体ドラム22Kの表面を一様に全面帯電する。現像器24Kは、現像バイアスが印加される現像ローラ24aによりブラックのトナー及びキャリアを含む二成分現像剤を感光体ドラム22Kに供給し、感光体ドラム22K上にトナー像を形成する。クリーナ26Kは、ブレード27Kを用いて感光体ドラム22K表面の残留トナーを除去する。
【0020】
また
図1に示すように、画像形成部20Y〜20Kの上部には、現像器24Y〜24Kにトナーを供給するトナーカートリッジ28を設けている。トナーカートリッジ28は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナーカートリッジ(28Y〜28K)を含む。
【0021】
中間転写ベルト21は、駆動ローラ31及び従動ローラ32に張架され循環的に移動する。また中間転写ベルト21は感光体ドラム22Y〜22Kに対向して接触している。
図2に示すように、中間転写ベルト21の感光体ドラム22Kに対向する位置には、1次転写ローラ25Kにより1次転写電圧が印加され、感光体ドラム22K上のトナー像を中間転写ベルト21に1次転写する。
【0022】
中間転写ベルト21を張架する駆動ローラ31には、2次転写ローラ33を対向して配置している。駆動ローラ31と2次転写ローラ33間を用紙Sが通過する際に、2次転写ローラ33により2次転写電圧が用紙Sに印加される。そして中間転写ベルト21上のトナー像を用紙Sに2次転写する。中間転写ベルト21の従動ローラ32付近には、ベルトクリーナ34を設けている。
【0023】
また
図1で示すように、給紙カセット18から2次転写ローラ33に至る間には、給紙カセット18内から取り出した用紙Sを搬送する搬送ローラ35を設けている。さらに2次転写ローラ33の下流には定着器36を設けている。また定着器36の下流には搬送ローラ37を設けている。搬送ローラ37は用紙Sを排紙部38に排出する。さらに、定着器36の下流には、反転搬送路39を設けている。反転搬送路39は、用紙Sを反転させて2次転写ローラ33の方向に導くもので、両面印刷を行う際に使用する。
【0024】
次に
図2を参照して光走査装置の走査ヘッド19Kの構成を説明する。走査ヘッド19Kは、感光体ドラム22Kと対向し、感光体ドラム22Kを露光する。感光体ドラム22Kは、予め設定した回転速度で回転し、表面に電荷を蓄えることができ、走査ヘッド19Kからの光を感光体ドラム22Kに照射して露光し、感光体ドラム22Kの表面に静電潜像を形成する。
【0025】
走査ヘッド19Kは、結像素子アレイ50を有し、結像素子アレイ50は保持部材41に支持されている。また保持部材41の底部には支持体42を有し、支持体42には、発光素子であるLED素子43を配置している。LED素子43は主走査方向に直線状に等間隔で設けている。また、支持体42にはLED素子43の発光を制御するドライバICを含む基板(図示せず)を配置している。結像素子アレイ50の詳細な構成については後述する。
【0026】
ドライブICは制御部を構成し、スキャナ部15で読み取った画像データや、PCなどで作成された画像データに基づいて走査ヘッド19Kの制御信号を発生し、制御信号に従って所定の光量でLED素子を発光させる。そして、LED素子43から出射した光線は、結像素子アレイ50に入射し、結像素子アレイ50を通過して感光体ドラム22K上に結像し、像を感光体ドラム22K上に形成する。また走査ヘッド19Kの上部(出射側)にはカバーガラス44を取り付けている。
【0027】
図3は、スキャナ部15(読取装置)のイメージセンサ16の構成を示す説明図である。イメージセンサ16は、原稿台12上に載置された原稿の画像、またはADF13によって給紙された原稿の画像を、操作パネル14の操作に従って読み取る。イメージセンサ16は、主走査方向に配置された1次元のセンサであり、筐体45を有する。
【0028】
筐体45は基板46上に配置され、筐体45の原稿台12側の上面には、原稿の方向に光を照射する2つのLEDライン照明装置47,48を主走査方向(図の奥行方向)に延びるように設けている。LEDライン照明装置47,48は、LEDと導光体を備える。なお、光源はLEDに限定されず、蛍光管、キセノン管、冷陰極管又は有機EL等であってもよい。
【0029】
筐体45上部のLEDライン照明装置47と48の間には、結像素子アレイ50が支持され、筐体45の底部にある基板46には、CCDやCMOSなどで構成されるセンサ49が実装されている。また筐体45の上部にはスリット51を有する遮光体52を取り付けている。
【0030】
LEDライン照明装置47,48は原稿台12上の原稿の画像読み取り位置を照射し、画像読み取り位置で反射した光は、スリット51を介して結像素子アレイ50に入射する。結像素子アレイ50は、正立等倍レンズとして機能する。結像素子アレイ50に入射した光は、結像素子アレイ50の出射面から出射され、センサ49上に結像する。すなわち照明装置47,48が照射した光のうちの原稿での反射光が結像素子アレイ50の中を透過する。結像した光は、センサ49によって電気信号に変換され、電気信号は、基板46のメモリ部(図示せず)に転送される。
【0031】
以下、結像素子アレイ50の構成について詳しく説明する。
図4は、第1の実施形態に係る結像素子アレイ50を示す斜視図である。光の入射方向を矢印Aで示し、光の出射方向を矢印Bで示す。
【0032】
結像素子アレイ50は、入射面であるレンズ面61と、出射面であるレンズ面62と、レンズ面61から入射した光を複数回(
図4の例では2回)反射して出射レンズ面62に反射する反射面63,64と、を有する結像素子60を複数個備えている。以下、反射面をミラー面と呼ぶ。
【0033】
複数個の結像素子60(結像素子群)で構成する結像素子アレイ50は、
図4に示すように、それぞれの結像素子60を入射面同士及び出射面同士が互いに隣接するように、主走査方向に配列したものである。また、複数個の結像素子60は、樹脂またはガラスにて一体に形成されている。尚、以下の説明では、結像素子アレイ50を単にアレイ50と呼ぶこともある。
【0034】
図4において、レンズ面61は、主走査方向に対して垂直な方向に非対称なレンズ面(入射面)であり、レンズ面62は、主走査方向と垂直な方向に非対称なレンズ面(出射面)である。以下、レンズ面61を入射レンズ面、レンズ面62を出射レンズ面と呼ぶこともある。
【0035】
図5は、1セットの結像素子60の構成を概略的に示す斜視図である。結像素子60は、入射レンズ面61、ミラー面63,64及び出射レンズ面62を含む。尚、
図5では、レンズ面61、ミラー面63,64及びレンズ面62を分離して示しているが、これは各結像素子60の構成を分かりやすく示すためであり、実際にはガラス又は樹脂で一体に成形されている。入射光X(
図5では光路の中心光線のみを示す)は、レンズ面61に入る。
【0036】
また、
図5に示すように、ミラー面63は、光の入射方向から見て外方に突出した凸部65の頂部に反射面が形成されている。また凸部65は、高さ方向にテーパを付けている。
【0037】
図6は、1セットの結像素子60を複数並べた状態を示す斜視図である。合わせて光線の経路を示し、1セット内で集光される光線が結像に寄与する。1セットの結像素子60の入射レンズ面61に入射した光線が、他のセットの結像素子に入射して結像面に達する光線を迷光と呼ぶ。迷光は、結像性能を劣化させる光線となる。尚、
図5、
図6において、主走査方向は「主」、副走査方向は「副」の矢印で示している。尚、以降の図においても、「主」で示す矢印は主走査方向を表し、「副」で示す矢印は副走査方向を表す。
【0038】
結像素子アレイ50に入射した光Xは、主走査方向と垂直な方向に非対称なレンズ面61に入り、主走査方向及び副走査方向両方に収束して、そのうちの結像に寄与する光線は、ミラー面63に入射する。ミラー面63は、外方に突出した凸部65の頂部に形成されており、反転像を形成する面近傍に配置される。またミラー面63は、ミラー面63に入射した全ての光線を反射して、そのうちの結像に寄与する光線がミラー面64に全反射条件を満たす入射角で入射するような角度で配置される。ミラー面64は、主走査方向と垂直な方向に非対称である。
【0039】
ミラー面64に入射した全ての光線は、ミラー面64で反射されて、主走査方向と垂直な方向に非対称な出射レンズ面62(光線出射面)に導かれ、レンズ面62によって再度結像され、等倍正立像を像面に形成する。像面は、センサ49や、感光体ドラム22に相当する。
【0040】
図5、
図6からもわかるように、アレイ50は、入射光線を順次反射してレンズ面62へ導くミラー面63と、入射光線を次のミラー面以外へ導くか、最終的に像面に入射しない部分へ導くか、或いはアレイ50の遮光部へ導く部分が主走査方向に交互に並んでいる。
【0041】
即ち、ミラー面63,64で反射した光以外の光がレンズ面62に進行するのを阻止する面(進行阻止面)をミラー面63の両サイドに設けている。
図5、
図6では、ミラー面63の両側の凸部65が進行阻止面となる。
【0042】
図7は、物体面71と像面72の間に設けた結像素子アレイ50の光線Xの経路を示す図である。物体面71とアレイ50の間には、迷光を防ぐためのスリット73を配置している。物体面71(LED43又は原稿台12の原稿載置面)からの光は、スリット73を通って絞られ、アレイ50のレンズ面61に入射し、ミラー面63,64でそれぞれ反射し、レンズ面62から出射し、像面72(感光体ドラム22又はセンサ49)に結像する。
【0043】
図8〜
図12は、各レンズ面及び各ミラー面での光線の進行状態を示す説明図である。
図8〜
図12において、矢印Aは光線Xの進行方向を示している。
【0044】
図8(a)は、レンズ面61への光線Xの入射方向を示している。(b)は、レンズ面61を副走査方向から見た図であり、(c)は、レンズ面61を光線Xの入射方向から見た図であり、(d)はレンズ面61を主走査方向から見た図である。レンズ面61は、主走査方向と垂直な方向に非対称なレンズ面(入射面)を構成し、(c)の一点鎖線Cは隣の結像素子との境界を示し、境界がレンズの縁となっている。したがって、遮光される入射光を極力減らして、光学効率を上げている。
【0045】
図8(b)、(d)に示すように、光線Xは、主走査方向、副走査方向の両方に対して収束光となり、所定の物体高の物点から出た光線を1セットの結像素子60の中に収めて、結像に寄与する光量を増やす役割を持っている。またレンズ面61の形状を、主走査方向と垂直な方向に非対称にすることで、ミラー面に斜めに光線が入射することにより発生する様々な収差を打ち消している。
【0046】
図9(a)は、ミラー面63への光線Xの入射方向を示している。(b)は、ミラー面63を副走査方向から見た図であり、(c)は、光の入射方向からミラー面63を見た図であり、(d)は、ミラー面63を主走査方向から見た図である。
【0047】
ミラー面63は、次のミラー面64に光線を導く。またミラー面63は、外方に突出する凸部65の頂部に形成されている。凸部65の壁面によって、主走査方向に対して所定の角度以上の光線を遮光する。また(c)の一点鎖線Cは隣の結像素子60との境界面を示し、ミラー面63と境界面Cまでの間は前述した進行阻止面となっており、この領域に入射した光線を最終的に遮光部に導くか、センサ面や感光体ドラム等の像面以外の場所に導く。
【0048】
図10(a)は、ミラー面64への光線Xの入射方向を示している。(b)は、ミラー面64を副走査方向から見た図であり、(c)は、光の入射方向からミラー面64を見た図であり、(d)はミラー面64を主走査方向から見た図である。
【0049】
主走査方向と垂直な方向に非対称なミラー面64は、次の同じセット内の
出射レンズ面
62に光線を導く面である。
図10(c)の一点鎖線Cは、隣の結像素子60のミラー面64との境界面(ミラー縁)を示し、隣接するミラー面64同士は接している。これにより、遮光される入射光を極力減らして、光学効率を上げている。
【0050】
また
図10(d)で示すように、中間の反転像面は、ミラー面64の近傍に形成される。これにより、角度を持った曲率を持つ面での様々な収差の発生を抑えつつ、光線の主走査方向へ進む方向を、出射側レンズ62を通るように作用することができる。
【0051】
図10(d)をみてわかるように、ミラーが光線に作用する光路進行方向の位置は、ミラー面64に入射する直前では、光線の左側と右側で異なり、左側では、反転像を形成する中間の像面により近い光路上流側で作用し、右側では、反転像を形成する中間の像面からより遠い光路の下流側でミラー面が作用する。
【0052】
集光位置の光線の左右(ミラー面64で反射された後では上下)でのずれを少なくするために、
図10(d)の左の部分でのパワーの絶対値は相対的に大きく、右の部分では、上の部分に比べてパワーの絶対値を相対的に小さくしている。このため、このミラー面64を主走査方向と垂直な方向には非対称な形状としている。
【0053】
図11は、ミラー面64の変形例を示す。
図11のミラー面64は、主走査方向と垂直な方向に非対称であり、物体面や、物体高の広い範囲で迷光がでないようにする必要がある際に、遮光性能を上げるために、
図10のミラー面64の代わりに配置するものである。
【0054】
図11(c)に示すように、ミラー面64と隣の結像素子60との境界面Cまでの間は前述した進行阻止面となっている。この進行阻止面は、
図11(d)の一点鎖線で示すように、ミラー面64とは異なる位置や異なる角度を持つ面であり、この領域に入射した光線を最終的に遮光部に導くか、センサ面や感光体ドラム等の像面以外の場所に導く形状となっている。
【0055】
図12(a)は、出射レンズ面62への光線Xの入射方向を示している。(b)は、出射レンズ面62を副走査方向から見た図であり、(c)は、出射レンズ面62を光線Xの入射方向から見た図であり、(d)は出射レンズ面62を主走査方向から見た図である。
【0056】
図12(c)の一点鎖線Cは隣の結像素子60の出射レンズ面62との境界面を示し、出射レンズ面62は、隣の結像素子との境界がレンズの縁となっている。(b)、(d)に示すように、光線は、主走査方向、副走査方向の両方に対し、収束光となり、センサ49や感光体ドラム22等の像面で結像するようになっている。レンズ面62の形状を、主走査方向と垂直な方向に非対称にすることで、前段のミラー面に斜めに光線が入射することにより発生する様々な収差を打ち消している。
【0057】
次にミラー面63における凸部65の壁の作用について説明する。
図13はミラー面63を拡大して示す斜視図であり、
図14はミラー面63の断面図である。
【0058】
ミラー面63は、凸部65の頂部に形成しており、光線Xがミラー面63に入射し、ミラー面63で反射して出射する。一方、凸部65の壁面は、主走査方向角度θの絶対値の大きな光線を遮光する作用を有する。
図13において、主走査方向の入射角が所定の角度の光線X(実線)は、ミラー面63によって全反射し、次の光学面(レンズ面64)に向かう。一方、主走査方向の入射角θの絶対値の大きな光線X1(一点鎖線)は、凸部65に向かい凸部65の壁面にぶつかって反射し、最終的には像面(センサ49、或いは感光体ドラム22)の外の領域へ導かれる。
【0059】
図14に示すように、主走査方向の入射角θの絶対値の最大値は、ミラー面63へつながる入口の主走査方向の幅をW、入口からミラー面63までの距離をLとしたとき、θは、下記式により決まる。
【0060】
tan|θ|≦W/2/L
したがって、上記式をもとに凸部65の壁面の形状を決定することにより、迷光が像面に結像するのを防ぐことができる。また凸部65の壁面及び隣り合う壁面間に、遮光膜を形成するとよい。遮光膜としては、例えば遮光用のインク65’を塗布する。遮光用のインク65’を塗布することにより、凸部65の壁面に達した光を吸収することができる。
【0061】
尚、
図14において、ミラー面63の並び方向の幅(ミラー幅)をW0で示し、レンズアレイ50のピッチをPで示している。
【0062】
図15は、凸部65の有無による迷光の発生状況を示す説明図である。
図15(a)は、凸部65が無い場合、即ちL=0の場合にミラー面63から出射される光線の様子を示す。
図15(a)において、ミラー面63に入射した光は、ミラー面63によって反射され、結像光(結像に使われる光)となる。この結像光では、ある程度の範囲(矢印Dで示す範囲)の迷光はカットできるが、幅広い領域全域では迷光をカットできない。
【0063】
図15(b)は、矢印Dで示す範囲外の(a)の迷光部分Eを拡大して示す図であり、矢印Dで示す範囲外で発生している迷光X2では、各ミラー面に入射する光、或いは各ミラー面から出射する光の主走査方向の角度の絶対値θが、結像光として使われる光線よりも大きいことがわかる。すなわち、光路中の少なくとも1か所で、結像光として使われる光の主走査方向角度の絶対値よりも大きな主走査方向角度絶対値を持つ光線を遮光すれば、迷光を全領域で無くすことができる。
【0064】
図15(c)は、凸部65を設けた場合にミラー面63から出射される光線の様子を示す図である。
図15(c)から分かるように、凸部65を設けることにより、迷光が無くなっていることを確認できる。
【0065】
図16(a)は、アレイ50の光路を主走査方向から見た図であり、
図16(b)は、アレイ50の光路を副走査方向から見た図である。
図16(a)から分かるように、主走査方向に関しては、物体面71からの光束は、スリット73を通ってレンズ面61に入射し、アレイ50の中間(S)付近で一度、反転像を形成し、その反転像を再度反転することにより像面72に正立像を形成する。また、
図16(b)から分かるように、副走査方向に関しては、複数セットの結像素子60を通った光が像面72で一点に集光される。
【0066】
以上述べた第1の実施形態では、凸部65を有するミラー面63を入射レンズ面61の直後に設けることにより、入射レンズ61のみを通った光線の主走査方向における光線の角度は、物体点からの主走査方向の距離が大きくなれば、単調に増加するため、全ての迷光に対応させる部品形状を単純にすることができ、金型の形状を単純化できることである。
【0067】
また、使わない光線を光路の上流側で遮光するため、下流側のミラー部間の遮光用部分の形状も単純化できる。ただし、ミラー面63よりも下流側で迷光を発生させてしまうと角度の大きな迷光を全て遮光することが難しくなるため、ミラー面64の縁部では、ギザキザの面がなくシャープな形状とすることが必要となる。
【0068】
図17は、第1の実施形態におけるミラー面63の迷光特性を示す図である。
図17の横軸は、
図14に示したミラー面63の入口の主走査方向の幅WをレンズアレイのピッチPで割った値(ピッチ比:W/P)である。また縦軸は、ミラー面63の入口からミラー面63までの距離Lをミラー幅W0で割った値(アスペクト比:L/W0)を示す。遮光用の壁部65’は、5度の抜き勾配を持つものとして計算をしている。
【0069】
光線がミラー面63の入口の主走査方向の幅(入口幅:W)を基準とした場合には、L/W=L/(W0+L×tan(5)*2)、
≒L/W0−tan(5)*2=L/W0−0.175
となる。
【0070】
図17では、アスペクト比(L/W0)とピッチ比(W/P)を段階的に変えた複数のアレイのサンプルについて迷光の有無を確認した図である。アスペクト比(L/W0)が1以上では迷光が発生せず、1以下では迷光が発生することが確認された。
図17では、迷光の出ない範囲だけを示し、アスペクト比(L/W0)を1.0から0.2ずつ変え、ピッチ比(W/P)を0.1ずつ変えたときに迷光が発生しなかったアレイの数をプロットしている。
【0071】
図17において、×は、迷光が出ないアレイを示し、例えば、アスペクト比が1.0でピッチ幅が0.1のときに迷光が出なかったアレイの数は2つだけであるが、アスペクト比が大きく、ピッチ比が0.25〜0.35のとき迷光が出なかったアレイの数は増加している。
【0072】
また
図17において、□は光学効率0.07%以上、△は光学効率0.08%以上、○は光学効率0.09%以上をそれぞれ満たし、かつ迷光が出なかったサンプルの数をプロットしたものである。光学効率は、ある一点から均一な強度分布の光が扇状に放射されたときに、その何パーセントが像面に達したかを示すものであり、パーセントが高いほど光学効率が良い。例えば光学効率0.09%を満たすことを条件としたときは、
図17の点線で示す範囲にあるものであれば良好な迷光特性が得られた。
【0073】
図17で示すように、アスペクト比(L/W0)が1よりも小さい場合(もしくは、溝部深さLを入口幅Wで割った値が0.825よりも小さい場合)には、迷光がでてしまう結果となった。即ち、溝部深さLの方が、ミラー幅W0よりも大きいことが、迷光をなくすために必要であることが分かる。
【0074】
金型の加工面から言うと、アスペクト比(L/W0)が小さい方が加工しやすい。またピッチ比(W/P)が0.25から0.35の間の値であるときが、迷光が無く、しかも光学効率が良い条件であることが分かる。
【0075】
次に第1の実施形態の変形例に係る結像素子アレイを、
図18を参照して説明する。
図18の結像素子アレイ50は、入射レンズ面61から入射した光を複数回(2回)反射して出射レンズ面62に導くものであり、ミラー面63とミラー面64の位置を入れ替えたものである。
【0076】
図18(a)は、結像素子アレイ50の構成図である。結像素子アレイ50は、入射面であるレンズ面61と、出射面であるレンズ面62と、入射レンズ面61から入射した光を2回反射して出射レンズ面62に反射するミラー面64,63を有する結像素子60を複数個備えている。
図18(b)は1つの結像素子60を示す。
【0077】
図18では、出射レンズ面62の前に、外方に突出した凸部65を有する平面状のミラー面63を配置している。結像素子アレイ50に入射した光Xは、レンズ面61(入射面)に入り、主走査方向及び副走査方向両方に収束して、そのうちの結像に寄与する光線は、ミラー面64に入射する。ミラー面64に入射した全ての光線は反射されて、そのうちの結像に寄与する光線は、ミラー面63に入射する。さらにミラー面63に入射した全ての光線は反射されて、そのうちの結像に寄与する光線は、レンズ面62(出射面)に導かれ、レンズ面62によって再度結像され、等倍正立像を像面に形成する。
【0078】
図19は、
図18におけるミラー面63の迷光特性を示す図である。
図19において、横軸は、
図14に示したミラー面63の入口幅WをレンズアレイのピッチPで割った値(ピッチ比:W/P)である。また縦軸は、ミラー面63の入口からミラー面63までの距離Lをミラー幅W0で割った値(アスペクト:L/W0)を示す。
【0079】
図19において、×は、迷光が出ないアレイを示し、□は光学効率0.08%以上、△は光学効率0.09%以上をそれぞれ満たし、かつ迷光が出なかったサンプルの数をプロットしたものである。
【0080】
図19においても、アスペクト比(L/W0)が1よりも小さい場合(もしくは溝部深さLを入口幅Wで割った値が0.825よりも小さい場合)には、迷光がでてしまう結果となった。即ち、溝部深さLの方がミラー幅W0よりも大きいことが、迷光をなくすために必要であることが分かる。
【0081】
金型の加工面から言うと、アスペクト比(L/W0)が小さい方が加工しやすく、ピッチ比(W/P)が0.25から0.43の間の値であるときが、迷光が無く、しかも光学効率が良い条件であることが分かる。例えば光学効率0.09%を満たすことを条件としたときは、
図19の点線で示す範囲にあるものであれば良好な迷光特性が得られた。
【0082】
(第2の実施形態)
次に第2の実施形態に係る結像素子アレイについて説明する。第2の実施形態の結像素子アレイ50は、入射レンズ面61から入射した光を複数回(3回)反射して出射レンズ面62に導くものである。
【0083】
図20(a)は、第2の実施形態に係る結像素子アレイ50の構成図であり、入射面であるレンズ面61と、出射面であるレンズ面62と、入射レンズ面61から入射した光を3回反射して出射レンズ面62に反射するミラー面63,64,66を有する結像素子60を複数個備えている。
図20(b)は1つの結像素子60を示す。
【0084】
ミラー面63は、入射側のレンズ面61の次段の位置にあり、外方に突出した凸部65の頂部に形成された平面ミラーである。結像素子アレイ50に入射した光Xは、レンズ面61(入射面)に入り、主走査方向及び副走査方向両方に収束して、そのうちの結像に寄与する光線は、ミラー面63に入射する。
【0085】
ミラー面63に入射した全ての光線は反射されて、そのうちの結像に寄与する光線は、ミラー面64に入射する。ミラー面64は、隣の結像素子60のミラー面64と境界面(ミラー縁)が接している。
【0086】
ミラー面64に入射した全ての光線は反射されて、ミラー面66に入射する。ミラー面66に入射した全ての光線は反射されて、そのうちの結像に寄与する光線は、レンズ面62(出射面)に導かれ、レンズ面62によって再度結像され、等倍正立像を像面に形成する。第2の実施形態においても、ミラー面63は、溝部深さLの方が、ミラー幅W0よりも大きくなっている。
【0087】
尚、
図20の結像素子アレイ50の変形例として、出射レンズ面62の前段にミラー面63を配置し、入射側のレンズ面61の次の位置にミラー面66を配置するようにしても良い。
【0088】
また入射レンズ面61から入射した光を3回以上(例えば4回)反射して出射レンズ面62に導くように、入射レンズ面61と出射レンズ面62の間に複数のミラー面を配するようにしてもよい。この場合も、ミラー面の少なくとも1つは、外方に突出した凸部の頂部に形成された平面ミラーとし、溝部深さLの方が、ミラー幅W0よりも大きくしたものであればよい。
【0089】
また、全ての実施形態で、要求される仕様によっては、ミラー面のいくつかは、主走査方向と垂直な方向にも対称な形状や平面とすることができる。また、いくつかのミラー面の間は、進行阻止面を設けず、ミラー同志が接している形であってもよい。
【0090】
実施の形態の中で、同一名称のものは同じ符号をつけて説明を行ったが、符号が同じものは形状も同じであることを必ずしも意味していない。例えば、
図6の入射レンズ面と
図20の入射レンズ面は、双方とも符号61を付したが、形状は異なっている。同様に、
図6のミラー面64と
図18のミラー面64は、それぞれ同じ符号を付しているが形状は異なっている。
【0091】
以上説明した実施形態の結像素子アレイによれば、ミラー面63の溝部深さLの方がミラー幅W0よりも大きい構成にすることにより、迷光の無い、正立等倍光学系を提供することができる。したがつて、画像形成装置に適用することで品位の高い画像を形成することができる。また1つの成形品のみでアレイを形成するため、レンズ、ミラーの相対位置ずれを抑えることができる。さらに、遮光のための凸部のアスペクト比(L/W0)が小さいため、成形や金型作製がしやすく、低コストと成形サイクルタイムの短縮を実現することができる。
【0092】
また第1の実施形態では、レンズ面が2面、ミラー面が2面で済むため、結像特性に与える影響が大きいミラー面数が少なく、しかもパワーを持った面では光束の径が小さくなっており、光束の径が大きいところのミラーは、パワーを持っていない構成にしているため、ミラー面の位置、角度ずれに対する許容値も大きく製造し易い。
【0093】
本実施の形態では、MFPを画像形成装置として説明をしたがこれには限定されない。画像形成装置をスキャナ単体の画像読取装置に適応した場合や、電子写真プリンタ単体の光走査装置に適応した場合も、本実施の形態の画像形成装置の範疇に包含される。
【0094】
尚、本発明のいくつかの実施形態を述べたが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。