特許第5838104号(P5838104)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5838104
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】液体含浸固形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/02 20060101AFI20151203BHJP
   A61K 8/898 20060101ALI20151203BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20151203BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20151203BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20151203BHJP
【FI】
   A61K8/02
   A61K8/898
   A61K8/19
   A61Q19/10
   A61K8/36
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-35087(P2012-35087)
(22)【出願日】2012年2月21日
(65)【公開番号】特開2013-170144(P2013-170144A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2014年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076532
【弁理士】
【氏名又は名称】羽鳥 修
(74)【代理人】
【識別番号】100101292
【弁理士】
【氏名又は名称】松嶋 善之
(72)【発明者】
【氏名】石川 尚夫
【審査官】 山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−333236(JP,A)
【文献】 特開2007−000707(JP,A)
【文献】 特開2010−059440(JP,A)
【文献】 特開2010−260800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00
C11D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸塩及び有機酸を含む粉体原料を圧縮成形して、液体と反応して炭酸ガスを発生する炭酸ガス発生成分を含む固形物を得る工程と、
液体成分に増粘剤を添加して調製した増粘液体を、前記固形物の上面に付与して、該増粘液体を該固形物に含浸させる工程とを有し、
前記液体成分は、香料、油剤及び色素からなる群から選択される1種以上を含む油性の液体である、液体含浸固形物の製造方法。
【請求項2】
前記固形物は、前記上面及びその近傍を含む上層部が、該上層部以外の該固形物の他の部分に比して密度が低い請求項1記載の液体含浸固形物の製造方法。
【請求項3】
前記固形物の上面に凹部が形成されており、該凹部に前記増粘液体を付与する請求項1又は2記載の液体含浸固形物の製造方法。
【請求項4】
前記増粘液体の前記固形物への付与前又は付与直後に、該増粘液体を加温する請求項1〜3の何れか一項に記載の液体含浸固形物の製造方法。
【請求項5】
前記増粘液体の付与後に、前記固形物の上面を冷却する請求項4記載の液体含浸固形物の製造方法。
【請求項6】
前記増粘剤がポリシリコーン−9である請求項1〜5の何れか一項に記載の液体含浸固形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴用剤等の、液体が含浸された液体含浸固形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固形物に液体を含浸させる技術が多数知られている。例えば、特許文献1には、焼き菓子等の被処理体にチョコレート液等の高粘度の含浸液を含浸させる方法として、タンク内に含浸液を収容して該タンク内を減圧状態とし、該含浸液中に被処理体を没入させた後、該タンク内を再び常圧に戻し、しかる後、該含浸液から該被処理体を引き上げ、該タンク内に加熱空気を供給しながら該被処理体を回転させることにより、該被処理体の表面に付着している余分な該含浸液を吹き飛ばす方法が開示されている。特許文献1に記載の方法によれば、含気泡食品にチョコレート等の高粘度の含浸液を効果的に含浸することができるとされている。
【0003】
液体が含浸された固形物の一例として浴用剤がある。一般に、浴用剤は、炭酸塩と有機酸とを組み合わせた炭酸ガス発生成分を含んでおり、該浴用剤を浴湯に投入し、該炭酸ガス発生成分を水に接触させて両者を反応させることにより炭酸ガスを発生し、それによって血行促進効果等を奏するように構成されているところ、近年、浴用剤の商品価値を高める等の目的で、香料、色素、油剤等の種々の液体成分を浴用剤に含浸させることが行われている。このような、液体が含浸された浴用剤の製造方法として、従来、液体を粉体原料に担持させ、あるいは液体を含む粉体原料を造粒して、液体含浸粉体原料を得、該液体含浸粉体原料を他の粉体原料と混合し、その混合物を成形機(打錠機)により圧縮成形することによって、目的の浴用剤を製造する方法が知られている。しかし、斯かる浴用剤の製造方法では、特に、液体が比較的多量に含浸された液体含浸粉体原料を用いた場合において、圧縮成形時に液体含浸粉体原料から液体が染み出しやすく、そのため成形機に粉体原料が付着し、浴用剤の連続生産ではその付着量が増大していくおそれがあり、生産性の低下等の不都合を招くおそれがあった。
【0004】
このような、液体含浸粉体原料を圧縮成形する従来の浴用剤の製造方法の課題に鑑み、これに代わる別の浴用剤の製造方法として、粉体原料を圧縮成形して固形物を得、該固形物に液体を添加することによってこれを含浸させる方法が考えられる。例えば、特許文献2には、粉体原料を圧縮成形してなる固形物と、液体とを、該液体に対して非透過性の包装体内に密閉封入し、該包装体内で該固形物に該液体を接触させることで、該液体を該固形物に含浸させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−154007号公報
【特許文献2】特開2010−260800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載の方法では、包装体内の固形物の外面の任意の部位に液体が接触し、場合によっては固形物の外面全体に液体が接触し、固形物における液体との接触部位や接触面積を制御することが困難であるところ、固形物に含まれる炭酸ガス発生成分が、該固形物に含浸させる液体に対して溶解性を有している場合には、固形物における液体との接触部位や接触面積如何によっては、製造段階で炭酸ガス発生成分が液体に溶解して炭酸ガスが発生してしまい、結果として浴用剤の保存安定性が低下し、浴用剤として消費者の手元に届くまでに、炭酸ガスの発生に起因する所定の商品特性(血行促進効果等)が低下してしまうという問題がある。
【0007】
従って本発明の課題は、液体と反応してガスを発生するガス発生成分を含む固形物に液体を含浸させて液体含浸固形物を得る場合に、望ましくない液体とガス発生成分との反応が抑制され、所定量の液体を定量性良く固形物に含浸させることができ、高品質で保存安定性に優れる液体含浸固形物を製造し得る、液体含浸固形物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、粉体原料を圧縮成形して、液体と反応してガスを発生するガス発生成分を含む固形物を得る工程と、液体成分に増粘剤を添加して調製した増粘液体を、前記固形物の上面に付与して、該増粘液体を該固形物に含浸させる工程とを有する、液体含浸固形物の製造方法を提供することにより、前記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の液体含浸固形物の製造方法によれば、液体と反応してガスを発生するガス発生成分を含む固形物に液体を含浸させて液体含浸固形物を得るに際し、望ましくない液体とガス発生成分との反応が抑制され、所定量の液体を定量性良く固形物に含浸させることができ、高品質で保存安定性に優れる液体含浸固形物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の液体含浸固形物の製造方法の一実施態様を示す図である。
図2図2は、図1に示す固形物のI―I線断面を模式的に示す断面図である。
図3図3は、実施例1で製造した液体含浸固形物(浴用剤)の個装体の模式図であり、図3(a)は該個装体の平面図、図3(b)は図3(a)のII−II線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の液体含浸固形物の製造方法においては、粉体原料を圧縮成形して所定形状の固形物を得(圧縮成形工程)、液体成分に増粘剤を添加して調製した増粘液体を、該固形物の上面に付与することで該固形物に含浸させ(液体含浸工程)、目的の液体含浸固形物を得る。以下、先ず、固形物及びこれに含浸させる増粘液体について説明する。
【0012】
本発明で用いる固形物は、粉体原料を圧縮成形して製造されたものである。従って、本発明で用いる固形物は、これを構成する粒子間に空隙を有し多孔性である。増粘液体は、主としてこの空隙内に保持される。
【0013】
本発明で用いる固形物の形成材料である粉体原料としては、例えば、有機粉体、無機粉体、金属材料又はこれらの複合体からなる粉体を用いることができる。粉体原料は、一般的な造粒方法、例えば、押出造粒、流動層造粒、転動造粒、乾式造粒等によって造粒したもの、あるいはそれぞれを組み合わせた造粒方法によって造粒したものを用いることができる。また、粉体原料の各成分を混合した後に前記の造粒方法にて造粒しても良い。造粒した後又は混合した後の粉体原料は、篩い分けによって粒径を調整しても良い。一般的な混合・攪拌方法の例としては、ヘンシェルミキサー、リボン型混合機、ナウターミキサー等が挙げられる。粉体を構成する粒子の粒径は、本発明の製造目的物である液体含浸固形物の具体的な用途等に応じて適切な範囲が選択される。液体含浸固形物が浴用剤である場合には、固形物は、粉体原料として、後述するガス発生成分(例えば炭酸塩及び有機酸)を含むことが好ましい。
【0014】
本発明で用いる固形物は、液体と反応してガスを発生するガス発生成分を含む。ガス発生成分は、通常、固形物の形成材料である粉体原料として取り扱われる。本発明の製造目的物である液体含浸固形物が浴用剤である場合には、ガス発生成分としては、液体(水)と反応して炭酸ガスを発生する炭酸ガス発生成分が好ましい。炭酸ガス発生成分の好ましい例示として、炭酸塩と有機酸との組み合わせが挙げられる。炭酸塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カリウム等が挙げられ、これらの炭酸塩は適宜組み合わせて用いることもできる。有機酸としては、例えば、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、アジピン酸、酒石酸、安息香酸、クエン酸、ピロリドンカルボン酸、サリチル酸、マロン酸、マレイン酸等が挙げられ、これらの有機酸は適宜組み合わせて用いることもできる。有機酸としては、水溶性で且つ35℃で固体の酸を用いることが好ましく、具体的には、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、アジピン酸、酒石酸、クエン酸、マロン酸、マレイン酸が挙げられる。
【0015】
本発明の製造目的物である液体含浸固形物が浴用剤である場合には、浴湯中に十分な炭酸ガスを溶解し得る観点から、固形物中において、炭酸塩の含有量(複数種の炭酸塩を組み合わせて用いる場合はそれらの合計含有量)は、好ましくは20〜80質量%、更に好ましくは40〜60質量%であり、有機酸の含有量(複数種の有機酸を組み合わせて用いる場合はそれらの合計含有量)は、好ましくは20〜80質量%、更に好ましくは40〜60質量%である。また、炭酸塩と有機酸との総含有量は、好ましくは60〜98質量%、更に好ましくは70〜98質量%である。
【0016】
本発明で用いる固形物の形成材料である粉体原料は、粉体(炭酸塩及び有機酸)の他に液体成分、例えば結合剤等を含んでいても良い。結合剤としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)等を用いることができる。PEGの分子量は、好ましくは1000〜20000である。
【0017】
本発明で用いる固形物の形状は、本発明の製造目的物である液体含浸固形物の具体的な用途に応じて適切な形状が選択され、例えば、タブレット状、円柱状、円盤状、角柱状、リング状等が挙げられる。本発明では、後述するように、固形物の上面(固形物を、該固形物の製造時における粉体原料の圧縮成形方向を維持したまま、水平面上に載置した場合に、該固形物における最も上方に位置する面)に増粘させた液体を付与してこれを含浸させるところ、固形物の上面に付与された液体が自重により流動して該上面から流れ落ちないようにし、固形物に付与された液体が該固形物に無駄なく含浸されるようにする観点から、固形物の上面は水平面、又は後述する固形物10のように水平面と凹部とから構成されていることが好ましい。
【0018】
また、固形物に含浸させる増粘液体は、液体成分に増粘剤を添加して調製されるものである。換言すれば、本発明では、固形物に含浸させる液体成分に、増粘剤を添加して、該液体成分の粘度を増加させている。このように、固形物に含浸させる液体成分を増粘剤添加により増粘させている理由は、液体成分と固形物に含まれる炭酸ガス発生成分(炭酸塩及び有機酸)との反応を抑制し、保存安定性に優れる液体含浸固形物(浴用剤)を得るためである。即ち、固形物に含まれる炭酸ガス発生成分が、固形物に含浸させる液体成分に対して溶解性を有している場合に、その液体成分を固形物に付与すると、水分が介在しなくとも、液体成分が固形物内を浸透して炭酸ガス発生成分と接触することにより炭酸ガスが発生し、液体含浸固形物(浴用剤)の使用前に、炭酸ガスの発生に起因する所定の商品特性(血行促進効果等)が低下してしまうおそれがあるところ、液体成分を増粘剤添加により増粘させることにより、そうして調製された増粘液体の流動性が低下し、固形物の外面上での増粘液体の移動範囲あるいは固形物内での増粘液体の浸透範囲が制限され、結果として、炭酸ガス発生成分と増粘液体との接触機会が低減し、望ましくない液体成分(増粘液体)とガス発生成分との反応が抑制され、保存安定性に優れる液体含浸固形物(浴用剤)が得られるようになる。
【0019】
特に、本発明においては、後述するように、固形物に含浸させる増粘液体の付与箇所を、固形物の上面に限定しているので、前述した、増粘液体を用いることによる作用効果と相俟って、望ましくない液体成分と炭酸ガス発生成分との反応がより効果的に抑制され、保存安定性に優れる液体含浸固形物(浴用剤)をより確実に得ることができる。また、後述するように、増粘液体(液体成分)は、好ましくは香料、油剤、色素等の機能性物質を含んでいるところ、機能性物質を含む増粘液体を固形物の上面に付与して得られた液体含浸固形物(浴用剤)において、増粘液体は、その粘度の高さ(浸透し難さ)故に、液体含浸固形物の上面及びその近傍に留まっているため、液体含浸固形物(浴用剤)の使用時(浴湯への投入時)には、機能性物質(液体成分)の溶出が迅速に行われ、液体含浸固形物(浴用剤)全体が完全に溶解する前に、機能性物質の溶出が完了するため、機能性物質による作用効果が迅速に発現する。
【0020】
このような、液体成分に増粘剤を添加して調製した増粘液体を用いることによる作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、増粘剤添加後の液体(増粘液体)の粘度ρ2と増粘剤添加前の液体成分の粘度ρ1との比(ρ2/ρ1)は、好ましくは1.1〜23.1、更に好ましくは1.5〜15.4である。増粘液体の粘度ρ2は、増粘液体の固形物への付与方法等に応じて適宜調整すれば良いが、好ましくは7〜150mPa・s、更に好ましくは10〜100mPa・sである。液体の粘度は次のようにして測定される。即ち、ストレス式レオメーター(PHYSICA MCR300型 Paar Physica社製)を使用し、治具としてコーンプレート(直径75mm、コーン角度1°)を用い、一定方向へ応力を加える定常流測定におけるせん断速度を、0.001〜1000S-1の範囲で変化させ、23℃の測定条件下で、各増粘液体の粘度を測定した。
【0021】
本発明で用いる増粘剤としては、例えば、ポリ(N−ホルミルエチレンイミン)オルガノポリシロキサン、ポリ(N−アセチルエチレンイミン)オルガノポリシロキサン、ポリ(N−プロピオニルエチレンイミン)オルガノポリシロキサン等のポリシリコーン−9;ポリエチレングリコール(PEG)6000等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの増粘剤の中でも、特にポリシリコーン−9は、併用する液体成分の増粘安定性に優れ、取り扱いも容易なため、本発明で好ましく用いられる。また、増粘液体中において、増粘剤の含有量は、使用する液体成分の種類や増粘液体の設定粘度等に応じて適宜調整すれば良いが、好ましくは0.9〜19質量%、更に好ましくは4〜17質量%である。
【0022】
ポリシリコーン−9は公知の方法により製造することができる。ポリシリコーン−9の合成例は次の通りである。硫酸ジエチル6.17g(0.04モル)と2−エチル−2−オキサゾリン93.8g(0.947モル)とを脱水した酢酸エチル203gに溶解し、窒素雰囲気下8時間加熱還流し、末端反応性ポリ(N−プロピオニルエチレンイミン)を合成する。こうして合成された末端反応性ポリ(N−プロピオニルエチレンイミン)の数平均分子量をGPCにより測定したところ、2500であった。ここに、側鎖一級アミノプロピル変性ポリジメチルシロキサン(重量平均分子量30000、アミン当量2000)100gの33%酢酸エチル溶液を一括して加え、10時間加熱還流する。反応混合物を減圧濃縮し、最終生成物であるポリシリコーン−9としてのN−プロピオニルエチレンイミン・ジメチルシロキサン共重合体を淡黄色固体(190g、収率95%)として得た。最終生成物のオルガノポリシロキサンセグメントの含有率は50質量%、重量平均分子量は60000であった。溶媒としてメタノールを使用した塩酸による中和滴定の結果、最終生成物には約20モル%のアミノ基が残存していることがわかった。
【0023】
また、増粘剤が添加される液体成分は、常温常圧(25℃、1気圧)で液体である。本発明で用いる液体成分は、本発明の製造目的物である液体含浸固形物に種々の特性(液体含浸固形物の商品価値を高め得る特性)を付与し得る、機能性物質を含むことが好ましい。例えば、液体含浸固形物が浴用剤である場合、機能性物質としては、香料、油剤、色素等が挙げられる。特に、浴用剤(固形物)に香料が含浸されていると、香りによるアロマテラピー効果、リラックス効果等が期待でき、また、油剤が含浸されていると、炭酸ガス発生による血行促進効果の更なる向上や保湿効果が期待でき、また、色素が含浸されていると、浴湯の色の変化による楽しさの付与効果が期待できる。
【0024】
本発明で用いられる液体成分(機能性物質)としては、液体含浸固形物の種類に応じて適切なものが選択され、食品、化粧品、医薬品、工業品等の分野で利用される公知の油性又は水性の液体が用いられ、一般に、油性の液体が用いられる。そのような油性の液体としては特に制限は無く、食品、化粧品、医薬品、工業品等の分野で利用される公知の油性成分を用いることができ、例えば、動植物油脂類、脂肪酸及びそのアルコールとのエステル、炭化水素類、飽和又は不飽和の高級アルコール、ワックス、エッセンシャルオイル、オレオレジン又はレジノイド、着香料、色素及びこれらを酵素的処理(加水分解、エステル交換等)や化学的処理(水素添加、エステル交換等)したもの等が挙げられる。これらの各成分は1種のみを用いても良いし、複数を同時に用いてもよい。液体成分(機能性物質)には、必要に応じ、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤等の界面活性剤、水等含ませることもできる。
【0025】
本発明の製造目的物である液体含浸固形物が浴用剤である場合には、液体成分(機能性物質)として、オクタン酸セチル、イソオクタン酸セチル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソステアリル、アジピン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸イソセチル、イソノナン酸イソトリデシル、オレイン酸デシル、イソステアリン酸コレステロール等の脂肪酸エステル類;大豆油、ヌカ油、ホホバ油、アボガド油、アーモンド油、オリーブ油、カカオ脂、ゴマ油、パーシック油、ヒマシ油、ヤシ油、ミンク油、牛脂、豚脂等の天然油脂、これらの天然油脂を水素添加して得られる硬化油及びミリスチン酸グリセリド、2−エチルヘキサン酸グリセリド等のグリセリド類;流動パラフィン、ワセリン、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、セレシン、スクワラン、スクアレン、ジオクチルシクロヘキサン、ブリスタン等の炭化水素油;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ラノリン酸、イソステアリン酸等の高級脂肪酸類;ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、コレステロール、2−ヘキシルデカノール等の高級アルコール類;ハッカ油、ジャスミン油、ショウ脳油、ヒノキ油、トウヒ油、リュウ油、テレピン油、ケイ皮油、ベルガモット油、ミカン油、ショウブ油、パイン油、ラベンダー油、ベイ油、クローブ油、ヒバ油、バラ油、ユーカリ油、レモン油、タイム油、ペパーミント油、ローズ油、セージ油、メントール、シネオール、オイゲノール、シトラール、シトロネラール、ボルネオール、リナロール、ゲラーオール、カンファー、チモール、スピラントール、ピネン、リモネン、テルペン系化合物等の精油;ブチルフタリド、ペンチルフタリド、オクチルフタリドなどのフタリド誘導体等を用いることができる。
【0026】
また、本発明の製造目的物である液体含浸固形物が浴用剤である場合において、浴用剤(固形物)に液体成分(機能性物質)として香料を含有させる場合、該香料(液体成分)中に炭素数6〜15のアルコール成分が含まれていると、浴用剤を溶解する時に香り立ちが良く、特に「花の香り」を創作する場合に、その香りのフレッシュ感を出すことができ、更に、入浴後の肌への香りの持続性を高める点で効果的である。また、特に、増粘剤としてポリシリコーン−9を用いる場合には、併用する液体成分中に炭素数6〜15のアルコール成分が含まれていることが、ポリシリコーン−9による増粘効果を確実に奏させるようにする上で好ましい。
【0027】
この炭素数6〜15のアルコール成分としては、本出願人の先の出願に係る特開2009−7303号公報に記載のものを用いることができ、特に3−メチル−1−ペンタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、3−オクタノール、2−エチルヘキサノール、2−ノナノール、1−ノナノール、2−ノナノール、1−デカノール、1−ウンデカノール、2−ウンデカノール、1−ドデカノールが好ましく、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合せて用いることができる。炭素数6〜15のアルコール成分は、液体成分(香料)中に30質量%以上含有することが好ましく、特に香り立ち、香りの持続性の点で30〜80質量%含有することが好ましい。
【0028】
次に、本発明の液体含浸固形物の製造方法をその好ましい一実施態様に基づき図面を参照して説明する。図1には、本発明の液体含浸固形物の製造方法の一実施態様が示されている。本実施態様の液体含浸固形物の製造方法は、粉体原料を圧縮成形して所定形状の固形物10を得る工程(圧縮成形工程)と、液体成分に増粘剤を添加して調製した増粘液体を、固形物10の上面10aに付与して、該固形物10に含浸させる工程(液体含浸工程)とを有する。図1は、液体含浸工程において、固形物10の上面10aにノズル50を用いて増粘液体(図示せず)を付与(滴下)する様子を示したものである。
【0029】
前記圧縮成形工程は、公知の粉体原料の圧縮成形法に準じて常法に従って実施することができる。例えば打錠、より具体的には、油圧プレス機、レシプロ打錠機、ロータリー打錠機等を用いた乾式打錠や湿式打錠によって、粉体原料を圧縮成形して所定形状の固形物10を得ることができる。また、本出願人の先の出願に係る特開2007−210985号公報に記載の超音波打錠機を用いて、粉体原料を圧縮成形して所定形状の固形物10を得ることもできる。一般に、打錠機は、上面に鉛直方向の上方側に向けて凹の凹部を有する臼体と、該凹部の上方に上下動可能に取り付けられた上杵とを備え、該凹部内に収容された粉体原料を該上杵で押圧することにより該粉体原料を圧縮成形可能に構成されている。前記臼体の凹部は、鉛直方向に延びる貫通孔が穿設されたテーブルの該貫通孔と、該貫通孔に挿入された下杵の挿入先端とから画成することもできる。
【0030】
本実施態様における固形物10は、図1及び図2に示すように、円柱形状であり、その上面10aは水平面である。固形物10の上面10aには凹部15が形成されている。凹部15は平面視円形状であり、固形物10の上面10aの中央に形成されている。凹部15は、前記液体含浸工程で液体(増粘液体)が付与される部位として利用されるもので、液体付与後は液溜まり部として機能し、凹部15に付与された液体が上面10aから溢れ出る不都合を効果的に防止し、所定量の液体の全量を固形物10に確実に含浸させる(含浸量の定量性を高める)のに有効である。また、主として凹部15の液溜まり部としての機能により、上面10aに液体が付与された固形物10が多少揺れても該液体が上面10aから溢れ出し難いため、付与された液体を固形物10内に含浸させている時間中に該固形物10を移動させる等、固形物10の液体含浸中でのハンドリングが可能となり、増粘液体を用いることで懸念される生産性の低下が効果的に防止される。
【0031】
このような凹部15による作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、凹部15の開口径R(図2参照)と、凹部15が形成されている上面10aの、該開口径Rに沿った長さLとの比(R/L)は、好ましくは0.10〜1.00、更に好ましくは0.15〜0.97である。また、同様の観点から、凹部15の深さD(図2参照)は、好ましくは0.1〜20mm、更に好ましくは1〜15mmである。尚、ここでいう「凹部の深さ」は、凹部において最も深い部分の深さを意味し、本実施態様では凹部15の中央部の深さである。
【0032】
固形物10の密度は、均一であっても良いが、上面10a及びその近傍を含む上層部11(図2参照)が、上層部11以外の固形物10の他の部分(下層部)12に比して密度が低くなっていると、上面10aに付与された液体(増粘液体)が上層部11内を速やかに浸透するようになって該液体の含浸時間が短縮され、増粘液体を用いることで懸念される含浸時間の長期化やそれに起因する生産性の低下を効果的に防止することが可能となるため好ましい。また、固形物の密度が低い程、それを構成している粒子間距離が広くなるので、毛細管現象の原理に基づくと液体の浸透距離(深さ)が短くなり、液体をより浅く固形物に含浸できることになる。このような、固形物10の上層部11の低密度化による作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、上層部11の密度D1と他の部分(下層部)12の密度D2との比(D1/D2)は、好ましくは0.50〜1.00、更に好ましくは0.70〜0.95である。上層部11の密度D1は、好ましくは0.80〜1.60g/cm3、更に好ましくは1.00〜1.50g/cm3であり、他の部分(下層部)12の密度D2は、好ましくは0.90〜1.70g/cm3、更に好ましくは1.00〜1.60g/cm3である。また、低密度化された上層部11の厚みT1(図2参照)と、固形物10の厚みTとの比(T1/T)は、好ましくは0.1〜0.83、更に好ましくは0.15〜0.70である。
【0033】
このような、厚み方向で密度が異なる固形物10は、前記圧縮成形工程において、粉体原料を2段圧縮することにより得られる。例えば、上面に鉛直方向の上方側に向けて凹の凹部を有する臼体と、該凹部の上方に上下動可能に取り付けられた上杵とを備えた、一般的な打錠機を用いて、粉体原料を圧縮成形して固形物10を製造する場合、打錠機の凹部に粉体原料の一部を投入し、該粉体原料の一部を上杵により所定の圧力で圧縮成形して成形物を得た後、該成形物の上に粉体原料の残りを投入し、該成形物及び該粉体原料の残りを一緒に、上杵により先の圧縮成形時の圧力よりも低い圧力で圧縮成形することにより、上層部11が他の部分(下層部)12に比して相対的に低密度の固形物10が得られる。
【0034】
前記液体含浸工程においては、増粘液体は、固形物10の上面10aのみに付与し、固形物10の他の面(側面、下面)には付与しない。増粘液体の付与箇所を上面10aのみに限定することにより、含浸量の定量性が保障され、含浸範囲も狭くなることから、固形物10に含まれる炭酸ガス発生成分と増粘液体との接触機会を効果的に低減することが可能となり、機能性及び保存安定性に優れる液体含浸固形物(浴用剤)が得られるようになる。これに対し、増粘液体を、上面10a以外の固形物10の他の部位に付与した場合には、自重や表面張力の影響により、増粘液体を定量的且つ狭い範囲に含浸することができない。例えば、増粘液体を上面10aとは反対側の下面に付与する場合、その付与方法としては、増粘液体が自重で下方に垂れてしまうのを防止するために、増粘液体を予め容器等に溜めておき、その溜められた増粘液体中に固定物10を浸す方法を採るのが通常であるが、斯かる付与方法では、増粘液体の含浸は毛細管現象のみに頼らざるを得ないため、含浸量の保証ができず、また、固形物10の下面近傍の側面からも増粘液体が含浸されるので、含浸範囲が拡大し、炭酸ガス発生成分と増粘液体との接触機会を効果的に低減できないおそれがある。
【0035】
前記液体含浸工程において、増粘液体の固形物10の上面10aへの付与方法は特に制限されず、増粘液体の粘度や固形物10(上面10a)の形状等に応じて適宜選択可能である。増粘液体の付与方法としては、上面10aに対して増粘液体を噴霧、吐出、滴下する等の種々の方法がある。前2者(噴霧、吐出)は、液体付与面への液体付与時に液体を加圧するのに対し、滴下は、液体付与面への液体付与時に液体を加圧せず、常圧下で液体(液滴)を自由落下させる。何れの液体付与方法においても、固形物10の上面10aに付与された増粘液体が該上面10aから溢れ出さないように、付与量や付与速度等を適宜調整することが、増粘液体の含浸量の定量性を高める点で好ましい。
【0036】
増粘液体の噴霧は、1度の噴霧で広範囲に増粘液体を付与でき、液体付与面(固形物10の上面10a)の形状の制約を受け難く、噴霧装置が比較的安価という利点を有するものの、噴霧された増粘液体が液体付与面から外れてしまうおそれがあり、増粘液体の含浸量の定量性の点で難がある。また、増粘液体の吐出は、インクジェット印刷装置と同様の構成のものを用いて実施することができ、インクジェット印刷装置においては印刷ヘッドを移動させつつノズルから増粘液体を吐出するので、吐出パターンの自由度が大きく、増粘液体の含浸量の定量性にも優れているものの、1つのノズルからの吐出量が微量なため、増粘液体を効率良く吐出するには多数のノズルが必要となり、製造コストの点で難がある。これに対し、増粘液体の滴下は、比較的簡単な装置構成で定量性良く増粘液体を含浸することができ、また、適用可能な増粘液体の粘度範囲が1〜20000mPa・s程度と比較的広いため、本発明で好ましく用いられる。本実施態様では、図1に示すように、固形物10の上面10aの凹部15に、ノズル50より増粘液体(図示せず)を滴下することにより、増粘液体の付与を実施している。このように、増粘液体の滴下を採用する場合には、固形物の上面に凹部を形成し、その凹部に増粘液体の滴下するのが好ましい。
【0037】
固形物10の上面10aに付与された増粘液体は、多孔性の固形物10中に存在する多数の空隙に起因する毛細管現象と該増粘液体の自重とによって、固形物10内を徐々に浸透していき、最終的にその全量が固形物10内に含浸される。但し、増粘液体が浸透し含浸されるのは、その粘度の高さ(浸透し難さ)故に、固形物10の上面10a及びその近傍(上層部11)迄であり、それより下方に位置する固形物10の他の部分(下層部)12には、増粘液体は実質的には浸透せず含浸されない。増粘液体を固形物10の上面10aに付与してからその全量が固形物10内に完全に含浸されるまでは、固形物10は動かさずに静置しておくのが好ましいが、本実施態様においては、上面10aに凹部15が形成されており、凹部15に増粘液体が留まりやすいため、固形物10を多少動かしても増粘液体がこぼれ難く、固形物10のハンドリングが可能である。
【0038】
このように、液体成分(機能性物質)を増粘剤添加により増粘させた増粘液体を用い、これを固形物10の上面10aに付与することは、「固形物10に含まれる炭酸ガス発生成分と増粘液体との接触機会を効果的に低減し、使用前における望ましくない両者の反応が抑制される点」、及び、「固形物10の上面10a及びその近傍に液体成分が局在化することにより、液体含浸固形物(浴用剤)の使用時において、液体成分による作用効果が迅速に発現される点」で有効である反面、液体成分の粘度増加に伴って固形物10内に液体成分が浸透するのに時間がかかり、液体含浸固形物(浴用剤)の生産性が低下することが懸念される。しかし、斯かる懸念は、前述した、「固形物10の上層部11を低密度化する方法」あるいは「固形物10の上面10aに増粘液体付与用の凹部15を形成する方法」の採用によって払拭可能である。
【0039】
また、前記懸念(液体成分の増粘に起因する生産性低下のおそれ)は、「増粘液体の固形物10への付与前又は付与直後に、該増粘液体を加温する方法」の採用によっても払拭可能である。即ち、増粘液体の固形物10への付与前又は付与直後の適切なタイミングで、増粘液体の液温を上昇させ、一時的に増粘液体(液体成分)の粘度を低下させることにより、増粘液体の固形物10内での浸透速度を速め、結果として浸透時間の短縮化、生産性の低下防止を図ることが可能となる。増粘液体を加温する具体的な方法としては、例えば、シーズヒーター、カートリッジヒーター、ブラグヒーター、フランジヒーター等の公知のヒーターを用いた増粘液体の加熱が挙げられる。増粘液体の固形物10への付与直後に該増粘液体を加温する場合は、固形物10ごと加温しても構わない。加温時間、加温温度等の加温条件は、増粘液体や種類や固形物10の構成等に応じて適宜設定すれば良い。
【0040】
増粘液体を加温した場合、加温された増粘液体の付与後に、固形物10の上面10aを冷却することが好ましい。その理由は、加温により増粘液体の粘度が低下したままであると、増粘液体の固形物10内での浸透範囲が広がりすぎる結果、固形物10に含まれる炭酸ガス発生成分と増粘液体との接触機会が増え、液体含浸固形物(浴用剤)の保存安定性の低下を招くおそれがあるためである。固形物10の上面10aを冷却するタイミングは、上面10a上に付与された増粘液体の全量が固形物10内に完全に含浸された後が好ましい。固形物10の上面10aを冷却する具体的な方法としては、例えば、上面10aに低温エアーを吹き付ける方法、あるいは固形物10を、低温に保たれたトンネル内を通過させる方法等が挙げられる。冷却時間、冷却温度等の冷却条件は、増粘液体の粘度が加温前の粘度まで速やか低下するように適宜設定すれば良い。
【0041】
前記圧縮成形工程及び前記液体含浸工程を経て得られた液体含浸固形物は、例えば、浴用剤、化粧品、医薬品、医薬部外品、食品等の分野に用いることができる。
【0042】
本発明の液体含浸固形物の製造方法は、前記実施態様に制限されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更することができる。例えば、固形物10の上面10aに形成する凹部15の平面視形状は、円形状に限定されず、楕円形状、四角形形状等であっても良い。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0044】
〔実施例1〕
粉体原料を圧縮成形して、図1及び図2に示す固形物10と同形状(円柱形状)の固形物を得、該固形物に、液体成分に増粘剤を添加して調製した増粘液体を付与してこれを含浸させ、液体含浸固形物として図3に示す浴用剤20を製造した。尚、図3では、浴用剤20を包装体30内に密封してなる個装体40を示しているところ、この個装体40は、後述する保存安定日数の評価で用いるものである。浴用剤20の具体的な製造方法は下記の通りである。
【0045】
粉体原料として、炭酸水素ナトリウム20%、炭酸ナトリウム20%、フマル酸44.4%、酸化マグネシウム0.5%、デキストリン4%、ポリエチレングリコール(平均分子量6000)10%、香料1%、色素0.1%を含むものを用いた。この粉体原料を、V型混合器((株)徳寿工作所社製のV−5)を用い、30rpmで10分間混合した。混合後の粉体原料20gを、35mmφのスミ角平錠剤用金型及び油圧式手動打錠機(理研精機(株)社製のPCS−700)を用いて圧縮成形した。打錠圧力は280kg/cm2とした。これによって、製造中間体として、図3に示す浴用剤20と同形状・同寸法の多孔性の固形物を得た。得られた固形物の厚みは15.3mm、密度は1.37g/cm3であり、該固形物全体で密度は均一であった。
【0046】
また、液体成分として、アルコール成分約70質量%とその他成分約30質量%とを含むものを用いた。この液体成分の粘度は6.5mPa・sであった。この液体成分に、増粘剤として適量のポリシリコーン−9を添加・攪拌し、粘度24.3mPa・sの液体(増粘液体)を調製した。
【0047】
そして、液体の滴下手段としてスポイトを用い、常温常圧下、0.44gの増粘液体(内訳は、液体成分が0.4g、ポリシリコーン−9が0.04g)を、固形物の上面に形成された凹部に滴下速度0.1g/秒で滴下した。固形物は、滴下された液体の全量が固形物内に完全に浸透するまで(固形物の上面に液体を目視で確認できなくなるまで)静置しておき、上面から液体が溢れ出ないようにした。こうして、液体含浸固形物としての浴用剤20(図3参照)を製造し、これを実施例1のサンプルとした。浴用剤20(固形物)は、図3に示すように、円柱形状で且つその上面には平面視円形状の凹部15Aを有し、直径Lが35.5mm、厚みTが固形物密度1.37g/cm3の場合で15.3mm、凹部15Aの開口径Rが23.5mm、凹部15Aの深さ(図2の符合Dで示す深さに相当する深さ)が5mmであった。
【0048】
また、こうして製造された浴用剤20を、製造後速やかに図3に示すように、1袋の包装体30内に1個密封して個装体40を製造した。包装体30は、可撓性のシート材料からなる筒状体の一方の開口端をヒートシールによって封止してなる、いわゆるピロー包装体であり、該シート材料として、OPET/Al箔/CPP積層フィルム(OPETは延伸ポリエチレンテレフタレート、CPPは無延伸ポリプロピレンである)を用いた。この積層フィルムにおいて、OPETの厚み12μm、Al箔の厚み6μm、CPPの厚み25μmであり、CPPが包装体30における最内層を構成する。個装体40は、図3に示すように、縦W1が54mm、横W2が80mm、シール部31の幅W3が5mm、厚みW4が15.7mmであった。
【0049】
〔実施例2〜6〕
液体成分及び増粘剤の添加量を適宜変更した以外は実施例1と同様にして、液体含浸固形物としての浴用剤及びその個装体を製造し、実施例2〜6のサンプルとした。
【0050】
〔比較例1及び2〕
液体成分に増粘剤を添加せずに該液体成分をそのまま固形物に付与した以外は実施例1と同様にして液体含浸固形物としての浴用剤及びその個装体を製造し、比較例1のサンプルとした。
また、液体成分の添加量を増加した以外は比較例1と同様にして、液体含浸固形物としての浴用剤及びその個装体を製造し、比較例2のサンプルとした。
【0051】
〔評価1〕
実施例1〜6並びに比較例1及び2の製造中間体としての固形物について、液体拡散率を下記方法により評価すると共に、実施例1〜6並びに比較例1及び2で得られた浴用剤(個装体)について保存安定日数を下記方法により評価した。その結果を下記表1に示す。
【0052】
<液体拡散率の評価方法>
実施例1の増粘液体の付与方法と同様の方法により、静置した固形物の上面に液体を付与し、その静置状態を維持したままで液体付与から15日経過後に、固形物の上面中心部を通る任意の直線に沿って該固形物を縦に切断し、厚み方向に沿った切断面をCCDカメラで撮影し、画像処理により2値化して総断面積(V1)に対する発色部面積(V2)の比率(V2/V1)を算出し、その算出値に100を乗じた値を液体拡散率(%)と定義した。尚、固形物には色素が含まれており、液体が通過した空隙及び液体が滞留している空隙は、色素が液体と接触すると発色する現象によって、目視でも明確に色差を確認できるので、2値化は容易である。また、総断面積(V1)及び発色部面積(V2)の算出は、ノギス等で寸法を実測することによっても可能である。また、本評価方法において、液体付与後から15日経過後の液体拡散率を評価対象とした理由は、別途評価した、液体付与後から30日経過後の液体拡散率とほとんど変わらなかったためである。
【0053】
<保存安定日数の評価方法>
製造直後の個装体5袋を、各個装体内の浴用剤の上面が上になるように積み重ねて、高さ78.5mm〔=15.7(厚みW4)×5〕)の積層体を形成し、該積層体を、温度50℃、湿度なりゆきの環境下に放置する。尚、個装体において、浴用剤を包装している包装体は、Al箔がラミネートされた多層ピロー袋であるため、該個装体を多湿な環境下に放置してもその内部に水分が浸入することはない。この放置期間中に、各個装体内の浴用剤中において、付与された液体が拡散して炭酸ガス発生成分と接触すると、個装体内に炭酸ガスが供給されることになり、結果として個装体の厚みが増加することになる。個装体5袋からなる積層体を形成してから該積層体の厚みが90mmとなるまでの日数を数え、該日数から1日を引いた日数を保存安定日数とした。この日数が長いほど、浴用剤の保存安定性に優れ高評価となる。
【0054】
【表1】
【0055】
表1において、液体成分の添加量が0.4gの実施例1〜3内での比較結果、及び液体成分の添加量が0.5gの実施例4〜6内での比較結果、それぞれから明らかなように、同一量の液体成分を固形物に含浸させる場合、増粘剤(ポリシリコーン−9)の添加量が多い程、拡散を抑制する効果が表れて液体拡散率が低下し、保存安定性日数が長くなる。これは、液体成分を増粘する程、固形物に付与された液体成分が炭酸ガス発生成分と接触する機会が減少することを示し、結果として保存安定日数の増加につながっていると解釈できる。また、比較例1と比較例2との比較結果から明らかなように、液体成分を増粘しない場合でも、液体成分の添加量が少ない方(比較例1)が、液体拡散率が低く保存安定日数が長いことから、液体成分の増粘の有無に関わらず、液体拡散率が低い程、浴用剤の保存安定性は良好になると言える。
【0056】
〔実施例7〜9〕
粉体原料を圧縮成形する際の打錠圧力を180kg/cm2に設定して、固形物の密度を1.30g/cm3に低下させた以外は実施例1と同様にして、液体含浸固形物としての浴用剤及びその個装体を製造し、実施例7のサンプルとした。
また、増粘剤の添加量を増加した以外は実施例7と同様にして、液体含浸固形物としての浴用剤及びその個装体を製造し、実施例8及び9のサンプルとした。
【0057】
〔実施例10〜12〕
粉体原料を圧縮成形する際の打錠圧力を470kg/cm2に設定して、固形物の密度を1.44g/cm3に上昇させた以外は実施例1と同様にして、液体含浸固形物としての浴用剤及びその個装体を製造し、実施例10のサンプルとした。
また、増粘剤の添加量を増加した以外は実施例10と同様にして、液体含浸固形物としての浴用剤及びその個装体を製造し、実施例11及び12のサンプルとした。
【0058】
〔評価2〕
実施例7〜12の製造中間体としての固形物について、含浸時間を下記方法により評価した。その結果を下記表2に示す。
【0059】
<含浸時間の測定方法>
静置した固形物の上面に、速度0.1g/秒で液体の滴下を開始し、同時にストップウォッチをオンする。液体の滴下が終了し、その後液体全部が固形物内に含浸されたことを目視で確認し、ストップウォッチをオフして、その間を含浸時間とする。
【0060】
【表2】
【0061】
表2において、固形物の密度が1.30g/cm3の実施例7〜9と固形物の密度が1.44g/cm3の実施例10〜12との比較から明らかなように、密度の異なる複数種の固形物に同量の液体成分を含浸させる場合、固形物の密度が低い方(実施例7〜9)が、含浸時間が短く、増粘液体を用いることで懸念される含浸時間の長期化やそれに起因する生産性の低下を効果的に防止し得ることがわかる。
【0062】
〔参考例〕
実施例1と同様の製造条件の下、打錠圧力のみを適宜変更して、密度の異なる3種類の固形物(図3に示す浴用剤20と同形状・同寸法の多孔性の固形物)を得、各固形物の上面の凹部に、実施例1で用いた所定量の液体成分のみを、スポイトを用いて滴下速度0.1g/秒で滴下し、液体成分を付与してから15日経過後に、前記方法に従って液体拡散率を測定した。液体成分の総添加量は、各固形物につき、0.2gから0.6gまで、0.1g刻みで5パターンとした。その結果を下記表3に示す。
【0063】
【表3】
【0064】
表3から明らかなように、密度の異なる複数種の固形物に同量の液体成分を含浸させる場合、固形物の密度が低い程、液体拡散率が低下し、液体成分が固形物中に拡散し難くなる。これは、前述したように、固形物の密度が低い程、それを構成している粒子間距離が広くなるので、毛細管現象の原理に基づくと液体の浸透距離(深さ)が短くなって、液体拡散率が低下することを示し、液体をより浅く固形物に含浸できることを示す。従って、前述したように、固形物の上面及びその近傍を含む、固形物の上層部の密度を他の部分に比して低くすることによって、液体の移動範囲あるいは固形物内での液体の浸透範囲をより狭く制限し、液体を上層部に留めることが可能となる。
【符号の説明】
【0065】
10 固形物
10a 固形物の上面
11 固形物の上層部(上面及びその近傍)
12 上層部以外の固形物の他の部分(下層部)
15 凹部
20 浴用剤
30 包装体
40 個装体
50 ノズル
図1
図2
図3