(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御ユニットは、前記パーキングブレーキが作動されていない時間が予め設定された非作動時間を経過しているか否かを計測する非作動時間計測部をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の運搬車両のパーキングブレーキ制御装置。
前記停止判断部は、走行中の前記車体を停止させるために用いるサービスブレーキの作動スイッチが前記サービスブレーキを作動させる側のオン状態に入力されているか否かを認識する作動スイッチ認識部を含むことを特徴とする請求項2に記載の運搬車両のパーキングブレーキ制御装置。
前記停止判断部は、走行中の前記車体を停止させるために用いるサービスブレーキを作動させるための圧油の圧力値が実際に前記車体を停止させることができる有効値以上であるか否かを計測する油圧圧力計測部を含むことを特徴とする請求項3に記載の運搬車両のパーキングブレーキ制御装置。
前記停止判断部は、前記車体が停止されている状態が予め設定された継続時間を経過しているか否かを計測する継続時間計測部を含むことを特徴とする請求項4に記載の運搬車両のパーキングブレーキ制御装置。
【背景技術】
【0002】
運搬車両、例えば鉱山機械として用いられるダンプトラックには、坂道等で車体の停止を維持するためにネガティブコントロール式のパーキングブレーキが備わっている。このパーキングブレーキは、スプールタイプのソレノイドバルブを操作して、油圧によりブレーキキャリパを用いてブレーキを作動又は解除させるというものである。ネガティブコントロール式であるが故、車体停止中にパーキングブレーキは作動していて、車体走行中は常にパーキングブレーキは解除される。一般に、鉱山機械は長時間(大体8時間〜12時間)連続して稼働しているため、この間パーキングブレーキは作動されていない。
【0003】
圧油にはごみが混入されている場合があるため、長時間スプールが移動しないと、スプールとこのスプールを摺動可能に覆う弁本体との間にごみが溜まってしまう(シルティング現象)。このシルティング現象は、スプールが弁本体に固着されることを招き、パーキングブレーキの作動を妨げる要因となる。このごみは、作業時に空気中のものが侵入することで圧油中に存在する。特に、鉱山機械は劣悪な環境で使用されることが多く、作業時における油圧回路内へごみが侵入しやすい。
【0004】
このようなソレノイドバルブの固着を防止するものが特許文献1に記載されている。しかしながら、特許文献1に記載されているブレーキ制御装置は、ABS(Anti-lock Braking System)を前提としたものであり、その制御が働く場面として車体が時速40Kmで走行していることを想定している。しかしながら、鉱山機械において、走行中にソレノイドバルブを消磁させてパーキングブレーキを作動させると、ブレーキ自体が破損する原因となる。また、特許文献1では騒音を抑制することも考慮しているが、鉱山機械においては、騒音は問題とはならない。したがって、鉱山機械に特有のシルティング現象防止のための技術が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、鉱山機械に最も適するようにシルティング現象を防止することができ、特にパーキングブレーキの破損を招くことを確実に防止できる運搬車両のパーキングブレーキ制御装置である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明では、車輪の回転が停止した状態を維持するためのネガティブコントロール式のパーキングブレーキを備えた車体に取付けられ、前記ソレノイドバルブを励磁又は消磁させて前記パーキングブレーキを解除又は作動させるためのスプールの移動を制御するための制御ユニットを備えた運搬車両のパーキングブレーキ制御装置において、前記制御ユニットは、前記車体が走行を停止しているか否かを判断する停止判断部と、該停止判断部にて前記車体が停止していると判断したときに前記パーキングブレーキを作動させる作動命令部と、該作動命令部により前記パーキングブレーキの作動が開始されてから予め設定した設定時間経過後に前記パーキングブレーキを解除する解除命令部とを有することを特徴とする運搬車両のパーキングブレーキ制御装置を提供する。
【0008】
好ましくは、前記制御ユニットは、前記パーキングブレーキが作動されていない時間が予め設定された非作動時間を経過しているか否かを計測する非作動時間計測部をさらに有する。
好ましくは、前記停止判断部は、前記車体の走行速度を計測する速度計測部を含む。
【0009】
好ましくは、前記停止判断部は、走行中の前記車体を停止させるために用いるサービスブレーキの作動スイッチが前記サービスブレーキを作動させる側のオン状態に入力されているか否かを認識する作動スイッチ認識部を含む。
好ましくは、前記停止判断部は、走行中の前記車体を停止させるために用いるサービスブレーキを作動させるための圧油の圧力値が実際に前記車体を停止させることができる有効値以上であるか否かを計測する油圧圧力計測部を含む。
【0010】
好ましくは、前記停止判断部は、前記車体が停止されている状態が予め設定された継続時間を経過しているか否かを計測する継続時間計測部を含む。
好ましくは、前記作動命令部は、該作動命令部にて前記パーキングブレーキが作動された場合に、前記パーキングブレーキの作動と連動して点灯する表示灯の点灯を防止するための点灯防止部を含む。
【0011】
また、前記停止判断部により前記車体が停止しているか否かを判断する停止判断工程と、該停止判断工程にて前記車体が停止していると判断したときに、前記作動命令部により前記パーキングブレーキを作動させる作動命令工程と、該作動命令工程にて前記パーキングブレーキが作動された後、予め設定した設定時間経過後に前記パーキングブレーキを解除する解除命令工程とを備えたことを特徴とする運搬車両のパーキングブレーキ制御方法も提案する。
好ましくは、上述した制御方法において、前記停止判断工程の前に、前記非作動時間計測部により前記非作動時間を計測する非作動時間計測工程をさらに備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、作動命令部にてパーキングブレーキを作動させる際、停止判断部にて車体が走行を停止しているか否かを判断するため、走行中にパーキングブレーキが作動することを確実に防止することができ、パーキングブレーキの破損を防止することができる。また、車体が停止しているときにパーキングブレーキを作動させることによってスプールを移動させ、スプールとこのスプールを摺動可能に覆う弁本体との間に溜まったごみを確実に除去することができる。すなわち、シルティング現象を防止してスプールが弁本体に固着されることを防止することができる。また、作動命令部にて作動したパーキングブレーキは設定時間経過後に解除命令部によって自動的に解除されるので、オペレータが解除操作をする必要がない。このように、車体が停止している時を見計らってパーキングブレーキを自動的に作動及び解除する制御ユニットを備えることで、長時間連続して稼働している鉱山機械としての運搬車両に適したシルティング現象の防止を図ることができる。
【0013】
また、パーキングブレーキを作動するに際し、非作動時間計測部を用いることにより、頻繁にパーキングブレーキが作動されてしまうことを防止できる。これにより、ソレノイドバルブの寿命が縮むことを防止できる。したがって、シルティング現象の防止に必要且つ最低限なパーキングブレーキの作動を実現でき、パーキングブレーキを形成する部品の消耗を防止できる。
【0014】
また、車体の停止を判断するに際し、速度計測部を用いることにより、直接的に車体の停止状態を認識できるので、車体の停止に関する判断を確実なものとすることができる。
また、車体の停止を判断するに際し、作動スイッチ認識部を用いることにより、車体を停止させるというオペレータの意志を確認することができるので、車体の停止に関する判断を確実なものとすることができる。
【0015】
また、車体の停止を判断するに際し、油圧圧力計測部を用いることにより、実際にサービスブレーキを用いて車体が停止されているかを認識できるので、車体の停止に関する判断を確実なものとすることができる。
また、パーキングブレーキを作動するに際し、継続時間計測部を用いることにより、車体が停止している状態が予め設定した継続時間を経過している場合、すなわち確実に車体が停止していることを認識することができる。このため、一瞬車体が停止してその後すぐに車体が走行した場合等に作動命令部によってパーキングブレーキが作動することを防止することができ、パーキングブレーキの破損をさらに確実に防止することができる。
【0016】
また、パーキングブレーキを作動するに際し、点灯防止部を用いることにより、パーキングブレーキが作動していることを表示する表示灯の点灯を防止するので、シルティング現象防止のためのパーキングブレーキの作動を外部から認識されることはない。したがって、オペレータに作業以外の余計な情報を与えることはないので、作業の妨げになることはない。
【0017】
また、提案する制御方法によれば、停止判断工程を行って車体の停止を判断し、その後作動命令工程を行ってパーキングブレーキを作動させ、その後解除命令工程を行って設定時間経過後にパーキングブレーキを解除する。このため、車体が停止している時を見計らってパーキングブレーキを自動的に作動及び解除できるので、長時間連続して稼働している鉱山機械としての運搬車両に適したシルティング現象の防止を図ることができる
【0018】
また、停止判断工程の前に、非作動時間計測工程を行うので、頻繁にパーキングブレーキが作動されてしまうことを防止できる。これにより、ソレノイドバルブの寿命が縮むことを防止できる。したがって、シルティング現象の防止に必要且つ最低限なパーキングブレーキの作動を実現でき、パーキングブレーキを形成する部品の消耗を防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示すように、鉱山機械として用いられている例えばダンプトラック1は、車体2を備えている。車体2の後部には、ベッセル9が備わっている。ベッセル9は、例えば砕石物等を一時的に収容するための荷台である。車体2には車輪3としての前輪3a及び後輪3bが備わっている。また、車体2の前部には、運転室としてのキャブ4が備わっている。オペレータはこのキャブ4に搭乗してダンプトラック1を操作する。キャブ4の前方にはデッキ5が備わり、さらにその前方にはラダー6が備わっている。オペレータは、ラダー6からデッキ5を通ってキャブ4に搭乗する。本発明に係る運搬車両のパーキングブレーキ制御装置は、このような鉱山機械に用いられるものである。
【0021】
図2に示すように、上述した車体2にはエンジン7及び発電機8が備わっている。エンジン7からの出力は発電機8に送られ、発電機8で発電が行われる。発電機8にはポンプ10が接続されていて、このポンプ10は発電機8による電力で駆動される。ポンプ10は、車体2に備わるブレーキ系統の圧油を流動させるためのものである。圧油は、車体2に備わるオイルタンク18内に収容されている。ポンプ10はその上流側でオイルタンク18と吸い込み流路19を介して接続されていて、その下流側で第1及び第2のスプール20、21のそれぞれと送り出し流路22を介して接続されている。送り出し流路22は第1及び第2のスプール20、21のそれぞれと接続するために途中で分岐している。第1及び第2のスプール20、21には、それぞれ第1及び第2のソレノイドバルブ24、25が備わっている。したがって、第1及び第2のソレノイドバルブ24、25はスプールタイプといえる。なお、第1及び第2のスプール20、21は、図示しない弁本体内を摺動する。
【0022】
一方で、車体2には、上述したように車輪3としての前輪3aと後輪3bがそれぞれ左右に備わっている。後輪3bのそれぞれには第1のディスクロータ11と第2のディスクロータ12が備わっている。これらロータ11、12は、後輪3bとともに回転するものである。第1のディスクロータ11には第1のブレーキキャリパ13が、第2のディスクロータ12には第2のブレーキキャリパ14がそれぞれ取付けられている。これらブレーキキャリパ13、14は、後輪3bの回転を許容又は制動させるためのものである。
【0023】
具体的には、第1のディスクロータ11と第1のブレーキキャリパ13でサービスブレーキ16が形成され、第2のディスクロータ12と第2のブレーキキャリパ14でパーキングブレーキ17が形成されている。さらに詳述すれば、後輪3bには走行モータ15が取付けられていて、後輪3bはこの走行モータ15の回転出力を受けてそれぞれ回転する。上述した第2のディスクロータ12は、このモータ15の出力軸(後輪3bに対して反対側に延びている軸)に取付けられている。すなわち、ロータ12は走行モータ15を介して後輪3bに取付けられている。上述した第1のスプール20は左右のサービスブレーキ16にそれぞれ第1の流路26を介して接続され、第2のスプール21は左右のパーキングブレーキ17にそれぞれ第2の流路27を介して接続されている。また、上述したキャブ4には、サービスブレーキ16を作動させるための第1の作動スイッチ23及びパーキングブレーキ17を作動させるための第2の作動スイッチ28が備わっている。
【0024】
サービスブレーキ16は、走行中の車体2を停止させるために用いられるものである。オペレータが第1の作動スイッチ23をオンにすると、ポンプ10が駆動すると同時に、第1のソレノイドバルブ24が励磁され、第1のスプール20が移動する(
図2の矢印A方向)。これにより、送り出し流路22と第1の流路26が第1のスプール20を介して連通する。オイルタンク18内の圧油は、吸い込み流路19から吸い込まれ(
図2の矢印C)、ポンプ10を介して送り出し流路22を通り(
図2の矢印D)、さらに第1のスプール20を介して第1の流路26に送り出される(
図2の矢印E)。これにより、第1のブレーキキャリパ13で第1のディスクロータ11を制動させ、結果として車輪3bを制動させる。具体的には、第1のブレーキキャリパ13内のピストン(不図示)を用いて第1のディスクロータ11を制動させている。したがって、このサービスブレーキ16を作動させ続けると走行中の車体2は停止する。オペレータが第1の作動スイッチ23をオフにすると、ポンプ10が停止し、第1のソレノイドバルブ24が消磁されて第1のスプール20が元の位置に戻り(
図2で示す状態)、圧油は第1の戻り流路29を通ってオイルタンク18内に戻される。この状態では、サービスブレーキ16が解除されているので後輪3bの回転は許容されている。
【0025】
一方、パーキングブレーキ17は車輪3の回転が停止した状態を維持するためのいわゆるネガティブコントロール式である。したがって、サービスブレーキ16の場合とは逆に、圧油が第2のブレーキキャリパ14に供給されるとパーキングブレーキ17は解除される。オペレータが第2の作動スイッチ28を解除側に入力すると、ポンプ10が駆動すると同時に、第2のソレノイドバルブ25が励磁され、第2のスプール21が移動する(
図2の矢印B方向)。これにより、送り出し流路22と第2の流路27が第2のスプール21を介して連通する。オイルタンク18内の圧油は、吸い込み流路19から吸い込まれ(
図2の矢印C)、ポンプ10を介して送り出し流路22を通り(
図2の矢印D)、さらに第2のスプール21を介して第2の流路27に送り出される(
図2の矢印F)。これにより、第2のブレーキキャリパ14は第2のディスクロータ12を解放し、走行モータ15による後輪3bの回転が許容される。具体的には、第2のブレーキキャリパ14内のばね(不図示)を用いて第2のディスクロータ12の制動を解除させている。オペレータが第2の作動スイッチ28を作動側に入力すると、ポンプ10が停止し、第2のソレノイドバルブ25が消磁されて第2のスプール21が元の位置に戻り(
図2で示す状態)、圧油は第2の戻り流路30を通ってオイルタンク18内に戻される。この状態では、パーキングブレーキが作動されているので、後輪3bは制動されている。
【0026】
上述したように、シルティング現象は、スプールと弁本体との隙間にごみが溜まることで生じる。スプールを移動させれば、このごみは圧油とともに流れていくため、シルティング現象は問題とならない。ダンプトラック1のような鉱山機械の場合、サービスブレーキ16についてはオペレータが作業時に使用するため、第1のスプール20でのシルティング現象は発生しない。しかしながら、パーキングブレーキ17は作業時に滅多に使用されないため、第2のスプール21ではシルティング現象が発生する。本発明は、この第2のスプール21でのシルティング現象を防止することを目的としている。
【0027】
この目的を達成するために、本発明では、運搬車両のパーキングブレーキ制御装置31を提供する。この制御装置31は、車体2に取付けられている。この制御装置31には、上述したパーキングブレーキ17を作動させるタイミングを制御するための制御ユニット32が備わっている。この制御ユニット32は、停止判断部33と、作動命令部34と、解除命令部35とを有している。停止判断部33は、車体2が走行を停止しているか否かを判断するものである。作動命令部34は、停止判断部33にて車体2が停止していると判断したときに第2のソレノイドバルブ25を消磁させてパーキングブレーキ17を作動させるものである(
図2の矢印O)。また、解除命令部35は、作動命令部34によりパーキングブレーキ17の作動が開始されてから予め設定した設定時間(後述する設定時間G)の経過後に第2のソレノイドバルブ25を励磁させてパーキングブレーキ17を解除するためのものである。
【0028】
このように、作動命令部34にてパーキングブレーキ17を作動させる際、停止判断部33にて車体2が走行を停止しているか否かを判断するため、走行中にパーキングブレーキ17が作動することを確実に防止することができ、パーキングブレーキ17の破損を防止することができる。また、車体2が停止しているときにパーキングブレーキ17を作動させることによって第2のスプール25を移動させ、第2のスプール25と弁本体(不図示)との間に溜まったごみを確実に除去することができる。すなわち、シルティング現象を防止して第2のスプール25が弁本体に固着されることを防止することができる。また、作動命令部34にて作動したパーキングブレーキ17は設定時間G(
図3参照)の経過後に解除命令部35によって自動的に解除されるので、オペレータが解除操作をする必要がない。このように、車体2が停止している時を見計らってパーキングブレーキ17を自動的に作動及び解除する制御ユニット32を備えることで、長時間連続して稼働している鉱山機械としての運搬車両に適したシルティング現象の防止を図ることができる。また、設定時間Gは、例えば第2のソレノイドバルブ25の性能に応じて適宜変更可能である。すなわち、第2のソレノイドバルブ25が応答し、これに応じて第2のスプール21を移動させることができるのに必要な時間を確保できる程度でよい。一般的には、設定時間Gは2秒程度である。
【0029】
制御ユニット32は、さらに非作動時間計測部36を有している。この非作動時間計測部36は、パーキングブレーキ17が作動されていない時間が予め設定された非作動時間H(
図3参照)を経過しているか否かを計測するためのものである。このように、パーキングブレーキ17を作動するに際し、非作動時間計測部36を用いることにより、ある程度の間隔をおいてパーキングブレーキ17を作動させることになるので、頻繁にパーキングブレーキ17が作動されてしまうことを防止できる。したがって、シルティング現象の防止に必要且つ最低限なパーキングブレーキ17の作動を実現でき、パーキングブレーキ17を形成する部品の消耗を防止できる。時間Hは、例えば10分である。
【0030】
上述した停止判断部33は、車体2の走行速度を計測する速度計測部37を含んでいる。この走行速度は、走行モータ15に搭載されている速度センサ(不図示)を用いて認識する。すなわち、速度計測部37には速度センサからの情報(走行モータ15の回転数等)が入力され(
図2の矢印I)、速度計測部37は左右の後輪3bにそれぞれ備わる走行モータ15について走行速度を算出し、これを平均化して車体2の走行速度として算出する。このように、車体2の停止を判断するに際し、速度計測部37を用いることにより、直接的に車体2の停止状態を認識できるので、車体2の停止に関する判断を確実なものとすることができる。なお、車体2が停止と判断するに際して、走行速度が0km/hであるときとしてもよいし、車体2が振動で動いたり、センサの誤差範囲を許容することを考慮して、0.5km/h程度の速度を停止と判断するようにしてもよい。また、走行速度は他の方法で取得してもよい。
【0031】
さらに、停止判断部33は、作動スイッチ認識部38を含んでいる。この作動スイッチ認識部38は、走行中の車体2を停止させるために用いるサービスブレーキ16の第1の作動スイッチ23がサービスブレーキ17を作動させる側のオン状態に入力されているか否かを認識するものである。このように、車体2の停止を判断するに際し、作動スイッチ認識部38を用いることにより、車体2を停止させるというオペレータの意志を確認することができるので、車体2の停止に関する判断を確実なものとすることができる。なお、オペレータが第1の作動スイッチ23をオンにしてサービスブレーキ16を作動させると、その情報は第1の作動スイッチ23から制御装置31の作動スイッチ認識部38に送られ(
図2の矢印K)、さらに実際にサービスブレーキ16を作動させるように第1のソレノイドバルブ24に送られる(
図2の矢印L)。
【0032】
さらに、停止判断部33は、油圧圧力計測部39を含んでいる。この油圧圧力計測部39は、走行中の車体2を停止させるために用いるサービスブレーキ16を作動させるための圧油の圧力値が実際に車体2を停止させることができる有効値以上であるか否かを計測するものである。具体的には、サービスブレーキ16の圧力値は、第1の流路26と連通する流路に備わる圧力センサ41で計測される。圧力センサ41からの情報は、油圧圧力計測部39に送られる(
図2の矢印M)。このように、車体2の停止を判断するに際し、油圧圧力計測部39を用いることにより、実際にサービスブレーキ16を用いて車体2が停止されているかを認識できるので、車体2の停止に関する判断を確実なものとすることができる。なお、有効値は、鉱山機械の種類に応じて適宜選択可能である。ダンプトラック1であれば、例えば12MPa程度である。また、上記作動スイッチ認識部38と組み合わせて使用すれば、圧力センサ41に誤作動があってサービスブレーキ16が作動されていない場合に作動されていると認識されても、オペレータの意志によりサービスブレーキ16が作動されているか否かを知ることができるので、制御を確実なものとすることができる。
【0033】
さらに、停止判断部33は、車体2が停止されている状態が予め設定された継続時間Nを経過しているか否かを計測する継続時間計測部40を含んでいる。このように、パーキングブレーキ17を作動するに際し、継続時間計測部40を用いることにより、車体2が停止している状態が予め設定した継続時間Nを経過している場合、すなわち確実に車体2が停止していることを認識することができる。このため、一瞬車体2が停止してその後すぐに車体2が走行した場合等に作動命令部34によってパーキングブレーキ17が作動することを防止することができ、パーキングブレーキ17の破損をさらに確実に防止することができる。
【0034】
一方、作動命令部34は、点灯防止部42を含んでいる。この点灯防止部42は、作動命令部34にてパーキングブレーキ17が作動された場合に、パーキングブレーキ17の作動と連動して点灯する表示灯43の点灯を防止するためのものである。すなわち、キャブ4には、パーキングブレーキ17が作動していることを示す表示灯43が備わっている。オペレータは、この表示灯43をみてパーキングブレーキ17の作動又は解除を認識している。しかし、作動命令部34によってパーキングブレーキ17が作動した場合には、表示灯43を点灯させないことにしている。具体的には、表示灯43を消灯したままとする制御信号を送る(
図2の矢印P)。このように、パーキングブレーキ17を作動するに際し、点灯防止部42を用いることにより、パーキングブレーキ17が作動していることを表示する表示灯43の点灯を防止するので、シルティング現象防止のためのパーキングブレーキ17の作動を外部から認識されることはない。したがって、オペレータに作業以外の余計な情報を与えることはないので、作業の妨げになることはない。
【0035】
制御装置31を用いてパーキングブレーキ17を作動及び解除するタイミングを
図3を参照して説明する。開始時間T0において、車体2はパーキングブレーキ17を使用して停止している。すなわち、パーキングブレーキ17のスイッチである第2の作動スイッチ28は作動側にあり、走行速度は0km/hであり(ここでは停止状態を0km/hとしている)、サービスブレーキ16のスイッチである第1の作動スイッチ23はオンであり、サービスブレーキ16の圧力値は有効値以上である。したがって、パーキングブレーキ17は作動状態であり、表示灯43はオペレータの操作によりパーキングブレーキ17が作動している状態であるので点灯している状態である。
【0036】
ここで、時間T1においてオペレータが車体2を走行させたとする。したがって、第2の作動スイッチ28は解除側に入力されてパーキングブレーキ17は解除され、第1の作動スイッチ23はオフにされてサービスブレーキ16の圧力値は徐々に下がり始める。この時間T1から、非作動時間計測部36はパーキングブレーキ17が作動されていない時間、すなわち非作動時間Hの経過の有無を計測する。そして、徐々に車体2の走行速度が上昇し、一定速度で走行中、時間T2においてオペレータがサービスブレーキ16を作動させたとする。そうすると第1の作動スイッチ23はオンにされ、サービスブレーキ16の圧力値は徐々に上昇していき、走行速度が徐々に下降する。
【0037】
そして、時間T3において車体2が停止したとする。したがって、時間T3では、走行速度が0km/hであり、サービスブレーキ16の圧力値も有効値以上である。また、第1の作動スイッチ23はオンのままである。したがって、速度計測部37、作動スイッチ認識部38、油圧圧力計測部39の情報をもとに、停止判断部33は車体2が停止していると判断する。停止判断部33は、さらに上述した非作動時間計測部36からの情報も取り入れ、この停止状態が非作動時間Hを経過しているか否かを判断する。ここで、時間T4で非作動時間Hが時間T1から経過したとする。このとき、停止判断部33は、さらに継続時間計測部40からの情報も取り入れ得る。時間T4ではまだ継続時間Nは時間T3から経過していない。時間T5になって継続時間Nが経過すると、停止判断部33は車体2が確実に停止していると判断し、作動命令部34にその旨を出力する。作動命令部34は、時間T5にてパーキングブレーキ17を作動させる。これにより、第2のスプール21と弁本体との間のごみが流れ、シルティング現象を防止できる。このとき、点灯防止部42により表示灯43は点灯しない。
【0038】
そして、時間T5から設定時間Gが経過して時間T6になると、解除命令部35がパーキングブレーキ17を解除する。この後、さらに車体2の停止状態が続き、時間T6から再び非作動時間H及び継続時間Nが経過して時間T7になったとする。このとき、再び作動命令部34がパーキングブレーキ17を作動させ、設定時間Gが経過後に解除命令部35がパーキングブレーキ17を解除する。さらに時間T7から非作動時間Hが経過して時間T8になったとき、車体2を走行させない状態で、オペレータが第1の作動スイッチ23をオフにしていて、これによりサービスブレーキ16の圧力値が有効値を下回っていたとする。この場合は、速度計測部37の情報では停止状態だが、作動スイッチ認識部38及び油圧圧力計測部39の情報が停止状態ではないため、停止判断部33は車体2が停止していると判断しない。その後、時間T9にて再び第1の作動スイッチ23がオンにされ、サービスブレーキ16の圧力値が有効値を上回ったとする。そうすると、この時点から継続時間Nが経過する時間T10まで時間T9の状態が継続していれば、作動命令部34がパーキングブレーキ17を作動させる。
【0039】
そして、時間T11にてオペレータが第2の作動スイッチ28を作動側に入力すると(
図2の矢印J)、パーキングブレーキ17が作動される。この場合は、オペレータの意志でパーキングブレーキ17が作動されているので、表示灯43は点灯する。
【0040】
次に、運搬車両のパーキングブレーキ制御方法について説明する。この方法は、上述した制御装置31を用いて行われる。
【0041】
まず、制御ユニット32が有する非作動時間計測部36にて、パーキングブレーキ17が作動されていない時間が予め設定された非作動時間Hを経過しているか否かを計測する(ステップS1)。この時間Hを計測することで、頻繁にパーキングブレーキ17が作動されてしまうことを防止できる。時間Hが経過していない場合はステップS1をやり直す。時間Hが経過していたら、次に、停止判断部33にて、車体2が停止しているか否かを判断する。この判断は、速度計測部37により実際の車体2の速度を計測し(ステップS2)、作動スイッチ認識部38にてサービスブレーキ16の作動スイッチ23がオペレータによりオンにされているかを認識し(ステップS3)、油圧圧力計測部39にてサービスブレーキの油圧が有効値以上であるかを計測して行われる(ステップS4)。さらに、これらステップS2〜ステップS4の条件を満たしていたら、その状態で継続時間Nが経過しているか否かを計測する(ステップS5)。停止判断部33は、これらステップS2〜S5を満たしていれば、車体2は確実に停止していると判断する。なお、ステップS2〜ステップS5までの条件を満たしていない場合は、ステップS2に戻る。また、ステップS2〜S4は少なくとも一つのステップのみを満たしていればステップS5に進むようにしてもよい。
【0042】
ステップS2〜ステップS5を満たし、車体2が停止していると判断されたら、作動命令部34がパーキングブレーキ17を作動させる(ステップS6)。このように、車体2が停止しているときにパーキングブレーキ17を作動させることによって第2のスプール25を移動させ、第2のスプール25と弁本体(不図示)との間に溜まったごみを確実に除去することができる。すなわち、シルティング現象を防止して第2のスプール25が弁本体に固着されることを防止することができる。そして、点灯防止部42により表示灯43の点灯が防止される(ステップS7)。すなわち、パーキングブレーキ17が作動していることを示す表示ランプは消灯のままの状態を維持される。そして、解除命令部35は、設定時間Gが経過しているか否かを計測する(ステップS8)。設定時間Gが経過していない場合は、ステップS8をやり直す。設定時間Gが経過している場合は、解除命令部35はパーキングブレーキ17を解除する(ステップS9)。これにより、作動命令部34にて作動したパーキングブレーキ17は設定時間Gの経過後に解除命令部35によって自動的に解除されるので、オペレータが解除操作をする必要がない。
【0043】
以上のような方法により、車体2が停止している時を見計らってパーキングブレーキ17を自動的に作動及び解除できるので、長時間連続して稼働している鉱山機械としての運搬車両に適したシルティング現象の防止を図ることができる。