【実施例】
【0038】
以下、実施例に基づいて、本発明に係る蓋材の実施形態についてさらに具体的に説明する。
<
参考例1>
まず、コーティング層を形成するワニスの処方について説明する。
【0039】
<ニトロセルロースワニスの調整>
平均重合度が50であるニトロセルロース(旭化成(株)製)30部を、酢酸エチル30部とイソプロピルアルコール40部に混合溶解させて、固形分30%の試験用ニトロセルロースワニス1を得た。
【0040】
<ポリアミドワニスの調整>
軟化点が105℃〜111℃であるポリアミド樹脂(レオマイドS−2110PL 花王(株)製)30部をトルエン50部、イソプロピルアルコール20部に混合溶解させて、固形分30%の試験用ポリアミドワニス2を得た。
【0041】
<ポリウレタンワニスの調整>
撹拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四ツ口フラスコにアジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールから得られる数平均分子量2000のポリエステルジオール315.34部とイソホロンジイソシアネート63.08部および酢酸エチル60.0部を仕込み、窒素気流下に90℃で6時間反応させた。次いでイソホロンジアミン20.83部、アセトアミド0.75部、酢酸エチル440.0部、イソプロピルアルコール 210.0部を添加し、固形分40%の試験用ポリウレタン樹脂ワニス3を得た。
上述の処方で得られた試験用ニトロセルロースワニス1、試験用ポリアミドワニス2、試験用ポリウレタン樹脂ワニス3およびポリエチレンワックス(軟化点104℃)を、表1(A)に示す調合条件で混合し
てワニスA〜Eを得た。
【0042】
次に、積層体の加工方法を説明する。PETフィルム(東洋紡績社製:E5200(厚さ12μm、両面コロナ処理))の片面に、ワニスAをグラビア印刷加工により0.6g/m
2塗布した後、非コーティング面とアルミニウム箔(住友アルミニウム社製:軟質アルミニウム箔(厚さ9μm))をドライラミネート接着剤にて貼り合わせた。次に、この得られた積層体のPETコーティング面と紙(王子製紙社製:片面アート紙(グラビアアート坪量84.9g/m
2))とをLDPE(住友化学社製:L2340E(厚さ20μm))の押出ラミネートによって積層して積層体を得た。押出時のダイ下温度は320℃とした。その後、積層体のアルミニウム箔面にシーラント層として接着性樹脂(三井デュポン社製:EMAAN1108C(厚さ10μm))とイージーピールシーラント層(三井デュポン社製:VN503(厚さ10μm))とを共押出ラミネート法によって積層し、上シート/下シート積層体を得た。
【0043】
この得られた積層体のシーラント面の側から
図3に示した形状の排出孔用ハーフカットとプルタブ用ハーフカットを形成した。シーラント層側からは、剥離開始線と排出孔用ハーフカットを、中間層のLDPE層に到達する深さの切込み線として形成した。一方、紙面側からは、部分剥離用ハーフカットをPETフィルムに到達する深さの切込み線として形成した。なお、排出孔の幅は6mmで、長さは6mmとした。
【0044】
<実施例
1>
PETフィルムの片面に、ワニスAに代えてワニスBを用い、塗布量0.8g/m
2の
コーティング層を設けた以外は
参考例1と同様にして、蓋材を作成した。
【0045】
<
参考例
2>
PETフィルムの片面に、ワニスAに代えてワニスCを用い、塗布量1.5g/m
2のコーティング層を設けた以外は
参考例1と同様にして、蓋材を作成した。
【0046】
<
参考例
3>
PETフィルムの片面に、ワニスAを用い、コーティング層の塗布量を2.5g/m
2とした以外は
参考例1と同様にして、蓋材を作成した。
【0047】
<比較例1>
PETフィルムの片面に、ワニスAに代えてワニスDを用い、コーティング層を設けた以外は
参考例1と同様にして、蓋材を作成した。
【0048】
<比較例2>
PETフィルムの片面に、ワニスAに代えてワニスEを用い、コーティング層を設けた以外は
参考例1と同様にして、蓋材を作成した。
以上の実施例および
参考例ならびに比較例に関わる蓋材の製造条件をまとめて表1(B)に示す。
【0049】
以上の各条件の下で製造された蓋材を発泡ポリスチレン樹脂製のカップのフランジにヒートシールして容器として完成させた。この後、排出用プルタブを持ち上げ、排出領域の上シートを剥離除去して常態剥離評価を行った。また、容器の開口部の一部から熱湯を標線まで注ぎ、開口部を再封止して3分間保持した後に排出領域の上シートを剥離除去する湯上剥離評価を行った。このときの剥離適性について結果を表1(C)に示す。
【表1】
【0050】
剥離性の評価結果の基準について:評価結果の○×は以下に示した剥離性能の総合評価であり、剥離がうまくい
って排出孔の脱落が
なかった場合に○、
剥離がうまくいかず排出項の脱落があった場合に×の2つの表示で評価結果を示した。
紙切れ:剥離を行ったときに紙切れが生じなかった場合及び紙切れを生じた場合の2つの区分で評価した。
孔残り:排出孔を成す下シートの部分が剥離に伴って上シートに付随して排出孔が開く場合及び付随せずに残る(排出孔がきっちりと開かない)場合という2つの区分で評価した。
孔落ち:排出孔を成す下シートの部分が剥離に伴って上シートから落下した場合及び落下せずに付随した(排出孔がきっちりと開いた)場合の2つの区分で評価した。
【0051】
表1の結果から、上述の実施例
および参考例に示す構成を有する蓋材は、剥離領域の剥離性が良好であり、孔落ち、孔残りもなく、安定した性能を発揮することが分かる。
したがって、本実施形態の排出孔の構成を採用すれば、前述した実施形態及びその変形形態で得られた利点に加え、従来知られた特許文献1、特許文献2に記載された構成のものとは異なり、本発明に独自の優れた作用効果を発揮することができる。これを以下に述べる。
【0052】
すなわち、全面剥離可能な積層構成を採用することにより、加工時の見当精度を軽減しているものであり、これにより製品品質を大幅に改善できるものである。
【0053】
また、本実施形態では、上シートと下シートが剥離可能に積層された接着界面において
、一方の側が二軸延伸フィルムであり、他の側がポリオレフィン系の接着性樹脂である。このため、適度な剥離性を安定して発揮させることが容易になる。これは、被着容器との熱接着を行う際、剥離界面が接着性樹脂同士の界面であると、熱による接着強度への影響が大きいが、二軸延伸フィルムと接着性樹脂の界面においては二軸延伸フィルム層の熱安定性により接着強度が保たれ、安定した剥離適性を発揮できる。
【0054】
さらに、接着界面に剥離強度を高めるためのコーティング層を含む場合、湯上シートを部分的に剥離するときの剥離の重さを最適に且つ容易に設計することができる。また、コーティング層を形成するワニスが、ニトロセルロース樹
脂をバインダーとして含有し、その成分比が重量換算で10%〜70%であることにより、接着適性と、注湯後の剥離適性において、加温時および剥離界面に蒸気が介在したときの剥離強度の低減を回避することができる。
【0055】
また、本実施形態によれば、下シートにアルミニウム箔を含むので、以下のような様々な利点もある。つまり、蓋材のガスバリア性及び遮光性が向上し、内容物の保存性が高まる。また、剥離領域の上シートを部分的に剥離するときに、排出孔用ハーフカットの内部の下シートに上シートから分離される方向に発生する弾性反発力を低減できる。また、注湯口を開口する際に必要な開口保持性を付与できる。さらに、一旦開封して湯を注いだ後に、開封部分を再封止するときのデッドホールド性も良好である。
【0056】
以上のように本実施形態によれば、全面剥離可能な積層構成の蓋材において、排出孔用ハーフカットが規定する排出孔の形状によらず、上シートの剥離時に、そのハーフカットの内側の下シート部分を確実に上シートに随伴させ、安定した剥離強度で剥離除去して排出孔を出現させることができる。この結果、排出孔の形状として、剥離しやすい丸型、横長トラック型以外の形状を採用することが可能であり、それにより、排湯速度の改善、デザイン面における自由度の向上などの利点が得られる。
【0057】
従って本発明により、生産上適度な剥離強度及び良好な剥離外観を有する、湯切付即席食品容器蓋材を得ることが出来、長期保存下でもその剥離性は劣化せず、湯切付即席食品容器蓋材として、優れた実用上の効果を発揮する。