(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
吸収式冷凍サイクルを行う吸収式冷凍装置(12)の蒸発器(24)で蒸発した冷媒と、溶液冷却器(35)で冷却された高濃度の吸収溶液とが供給されて、冷媒が吸収溶液に吸収される行程を行う吸収器であって、
略鉛直方向に沿って配置されるとともに互いに離間した複数の棒材(111)を有する吸収部(110)と、上記棒材(111)の上方に配置された吸収溶液供給部(120)と、上記冷媒を上記棒材(111)に向かって供給する冷媒供給部(130)と、を備えていることを特徴とする吸収式冷凍装置(12)の吸収器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、パンチングメタルをコルゲート状に折り曲げて積層する構造では、吸収部が構造的に大型になってしまうため、吸収器の軽量化が困難で製造コストも高いという問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みて創案されたものであり、その目的は、吸収式冷凍装置の吸収器を小型化し、軽量化や低コスト化も可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、吸収式冷凍サイクルを行う吸収式冷凍装置(12)の蒸発器(24)で蒸発した冷媒と
、溶液冷却器(35)で冷却された高濃度の吸収溶液とが供給されて、冷媒が吸収溶液に吸収される行程を行う吸収器を前提としている。
【0009】
そして、この吸収式冷凍装置(12)の吸収器は、略鉛直方向に沿って配置されるとともに互いに離間した複数の棒材(111)を有する吸収部(110)と、上記棒材(111)の上方に配置された吸収溶液供給部(120)と、上記冷媒を上記棒材(111)に向かって供給する冷媒供給部(130)と、を備えていることを特徴としている。
【0010】
この第1の発明では、吸収溶液供給部(120)から吸収部(110)に供給された吸収溶液が上記棒材(111)を伝って流下するときに、蒸発器(24)からの冷媒が該棒材(111)に向かって供給される。そして、冷媒蒸気が吸収溶液に吸収され、吸収溶液は濃溶液から稀溶液に変化する。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、上記吸収溶液供給部(120)は、吸収溶液を上記棒材(111)の上方から散布する散布機構(121)を備えていることを特徴としている。
【0012】
この第2の発明では、散布機構(121)から散布された吸収溶液が吸収部(110)の棒材(111)を伝って流下する際に、冷媒蒸気が吸収溶液に吸収される。
【0013】
第3の発明は、第1または第1の発明において、上記吸収部(110)と上記蒸発器(24)が一体的に構成されるとともに、該吸収部(110)と蒸発器(24)の間に、吸収溶液が蒸発器(24)へ向かって飛散するのを防止する飛散防止機構(150)を備えていることを特徴としている。
【0014】
この第3の発明では、蒸発器(24)から吸収器へは冷媒蒸気が供給することが可能である一方、吸収器から蒸発器(24)への吸収溶液の飛散が防止される。
【0015】
第4の発明は、第1から第3のいずれか1つの発明において、上記複数の棒材(111)は、全体が円筒状の集合体として配置される一方、外周部よりも中心部の棒材(111)の配置密度が大きいことを特徴としている。
【0016】
この第4の発明では、吸収部(110)の外周部では冷媒蒸気の密度が高く、吸収部(110)の中心部では冷媒蒸気の密度が低いのに対して、中心部の密度の低い冷媒蒸気が配置密度の高い棒材(111)により効率よく処理される。
【0017】
第5の発明は、第1から第4の発明のいずれか1つにおいて、上記蒸発器(24)がコイル式蒸発器(24)であり、上記吸収部(110)の棒材(111)が該コイル式蒸発器(24)の内側に配置されていることを特徴としている。
【0018】
この第5の発明では、コイル式の蒸発器(24)からの冷媒が、その内側に配置された吸収部(110)の棒材(111)により処理される。
【0019】
第6の発明は、第1から第4の発明のいずれか1つにおいて、上記蒸発器(24)がプレート式蒸発器(24)であり、上記吸収部(110)の棒材(111)が該プレート式蒸発器(24)の周囲に配置されていることを特徴としている。
【0020】
この第6の発明では、プレート式蒸発器(24)からの冷媒が、その周囲に配置された吸収部(110)の棒材(111)により処理される。
【0021】
第7の発明は、第1から第6のいずれか1つの発明において、上記吸収部(110)の棒材(111)は、径方向の中心部に空間(111a)が形成されている中空の棒材(111)により構成されていることを特徴としている。
【0022】
この第7の発明では、棒材(111)に中空の材料を用いることにより、棒材(111)一本当たりの質量が小さくなる。
【0023】
第8の発明は、第1から第7の発明のいずれか1つにおいて、上記吸収部(110)の棒材(111)には、親水性を高める親水処理(111b,111c)が施されていることを特徴としている。
【0024】
この第8の発明では、棒材(111)における吸収溶液の濡れ性が向上する。
【0025】
第9の発明は、圧縮機構(14)と膨張機構(17)と熱源側熱交換器(15)と利用側熱交換器(16)とが接続されて蒸気圧縮式冷凍サイクルを行う冷媒回路(13)と、太陽熱及び排熱の少なくとも一方を熱源にして吸収式冷凍サイクルを行うとともに、上記冷媒回路(13)が熱源側熱交換器(15)を放熱器として利用側熱交換器(16)を蒸発器とする冷却動作を行うときに、上記熱源側熱交換器(15)から膨張機構(17)へ向かって流れる冷媒を冷却する吸収式冷凍装置(12)とを備えた冷凍システムを前提としている。そして、上記吸収式冷凍装置(12)の有する吸収器が、請求項1から8のいずれか1つに記載の吸収器であることを特徴としている。
【0026】
この第9の発明では、蒸気圧縮式冷凍サイクルを行う冷媒回路(13)と吸収式冷凍サイクルを行う吸収式冷凍装置(12)を備えた冷凍システムにおいて、冷媒回路(13)が熱源側熱交換器(15)を放熱器として利用側熱交換器(16)を蒸発器とする冷却動作を行うときに、熱源側熱交換器(15)から膨張機構(17)へ向かって流れる冷媒が冷却され、システムを効率よく運転できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、略鉛直方向に沿って配置されるとともに互いに離間した複数の棒材(111)により吸収部(110)を構成しており、吸収部(110)の単位容積当たりの棒材(111)の表面積を大きくできる。したがって、吸収器の能力を低下させずに維持しながら、棒材(111)の容積を小さくすることができる。その結果、吸収器の軽量化や低コスト化も可能となる。
【0028】
上記第2の発明によれば、吸収溶液を上記棒材(111)の上方から散布する散布機構(121)を吸収溶液供給部(120)に設けているので、棒材(111)の表面全体に吸収溶液が均等に供給される。したがって、吸収溶液で冷媒蒸気を効率よく吸収することができるので、同じ大きさであれば能力を高くすることができるし、同じ能力であれば吸収部(110)を小型化できる。
【0029】
上記第3の発明によれば、吸収部(110)と蒸発器(24)の間に飛散防止機構(150)を設けることで蒸発器(24)と吸収器を一体的に形成することができ、溶液の飛散による冷媒汚染を防止できる。また、吸収器と蒸発器(24)を一体化することにより吸収式冷凍装置(12)の小型化を図ることも可能となる。
【0030】
上記第4の発明によれば、複数の棒材(111)を、全体が円筒状の集合体として配置する一方、外周部よりも中心部の棒材(111)の配置密度が大きくなるようにしているので、中心部の密度の低い冷媒蒸気を効率よく処理することができる。したがって、吸収器の能力を高めることが可能となる。
【0031】
上記第5の発明によれば、吸収部(110)の棒材(111)を該コイル式蒸発器(24)の内側に配置することにより、吸収器と蒸発器(24)の配置関係を最適化することができ、その小型化を図ることが可能となる。
【0032】
上記第6の発明によれば、吸収部(110)の棒材(111)をプレート式蒸発器(24)の周囲に配置することにより、吸収器と蒸発器(24)の配置関係を最適化することができ、その小型化を図ることが可能となる。
【0033】
上記第7の発明によれば、棒材(111)に中空の材料を用いることにより、棒材(111)一本当たりの質量を小さくすることができるので、吸収部(110)の全体の質量も小さくすることができる。
【0034】
上記第8の発明によれば、吸収部(110)の棒材(111)に親水処理(111b,111c)を施すことにより、棒材(111)における吸収溶液の濡れ性が向上する。その結果、吸収溶液への冷媒蒸気の吸収行程をより効率よく行うことができる。
【0035】
上記第9の発明によれば、蒸気圧縮式冷凍サイクルを行う冷媒回路(13)と吸収式冷凍サイクルを行う吸収式冷凍装置(12)を備えた冷凍システムにおいて、冷媒回路(13)が熱源側熱交換器(15)を放熱器として利用側熱交換器(16)を蒸発器とする冷却動作を行うときに、熱源側熱交換器(15)から膨張機構(17)へ向かって流れる冷媒が効率よく冷却される。また、吸収器に上記棒材(111)を用いることにより、吸収器を小型化することが可能になり、ひいては吸収式冷凍装置(12)を小型化できる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0038】
本実施形態は、本発明に係る冷凍システム(10)により構成されたヒートポンプユニット(10)を備えた空調システム(100)である。このヒートポンプユニット(10)は、本発明に係る冷凍システム(10)の一例であり、室外に設置される。
【0039】
−空調システムの全体構成−
本実施形態の空調システム(100)では、ヒートポンプユニット(10)が、
図1に示すように、第1冷凍装置(11)と第2冷凍装置(12)とを備えている。また、この空調システム(100)は、ヒートポンプユニット(10)に加えて、利用側回路(46)と熱源側回路(47)と太陽熱集熱装置(40)とを備えている。なお、以下では、第1冷凍装置(11)の冷媒を第1冷媒とし、第2冷凍装置(12)の冷媒を第2冷媒とする。
【0040】
第1冷凍装置(11)は、圧縮機(圧縮機構)(14)と膨張弁(膨張機構)(17)と熱源側熱交換器(15)と利用側熱交換器(16)とが接続されて、蒸気圧縮式冷凍サイクルを行う冷媒回路(13)を備えている。冷媒回路(13)は、熱源側熱交換器(15)が放熱器として動作して利用側熱交換器(16)が蒸発器として動作する冷房動作(冷却動作)と、利用側熱交換器(16)が放熱器として動作して熱源側熱交換器(15)が蒸発器として動作する暖房動作(加熱動作)とを切り換え可能に構成されている。第1冷凍装置(11)についての詳細は後述する。
【0041】
第2冷凍装置(12)は、太陽熱を熱源にして吸収式冷凍サイクルを行う吸収側回路(70)を備えている。第2冷凍装置(12)は、冷房動作中の冷媒回路(13)において熱源側熱交換器(15)から膨張弁(17)へ向かって流れる第1冷媒を冷却する。第2冷凍装置(12)についての詳細は後述する。
【0042】
利用側回路(46)は、熱媒体として水が充填された回路である。利用側回路(46)は、第1冷凍装置(11)の利用側熱交換器(16)に接続されている。利用側回路(46)は、利用側熱交換器(16)で温度調節された水が流れる。また、利用側回路(46)には、複数台(
図1では2台)のファンコイルユニット(44a,44b)が互いに並列に接続され、複数台(
図1では2台)の床暖房ユニット(45a,45b)(温水パネル)が互いに並列に接続されている。また、利用側回路(46)には、利用側ポンプ(49)と三方切換弁(48)と冷房用電磁弁(50a,50b)と暖房用電磁弁(51a,51b)とが設けられている。
【0043】
三方切換弁(48)は、利用側熱交換器(16)で温度調節された水をファンコイルユニット(44a,44b)へ供給する第1状態(
図1に実線で示す状態)と、利用側熱交換器(16)で温度調節された水を床暖房ユニット(45a,45b)へ供給する第2状態(
図1に破線で示す状態)との切り換えを行う。三方切換弁(48)は、空調システム(100)が冷房運転を行う場合に第1状態に設定され、空調システム(100)が暖房運転を行う場合に第2状態に設定される。
【0044】
冷房用電磁弁(50a,50b)は、各ファンコイルユニット(44a,44b)の上流にそれぞれ設けられている。各冷房用電磁弁(50a,50b)は、ファンコイルユニット(44a,44b)の上流の流路を開閉する。一方、暖房用電磁弁(51a,51b)は、各床暖房ユニット(45a,45b)の上流にそれぞれ設けられている。各暖房用電磁弁(51a,51b)は、床暖房ユニット(45a,45b)の上流の流路を開閉する。
【0045】
熱源側回路(47)は、熱媒体として水が充填された回路である。熱源側回路(47)には、集熱タンク(41)と熱源側ポンプ(39)とが設けられている。熱源側ポンプ(39)の運転が行われると、集熱タンク(41)の上層部の温水が第2冷凍装置(12)の再生器(31)へ供給され、該再生器(31)を通過した温水が集熱タンク(41)の下層部に戻る。
【0046】
太陽熱集熱装置(40)は、太陽熱を利用して集熱タンク(41)の水を加熱するための装置である。太陽熱集熱装置(40)は、太陽熱集熱パネル(61)と集熱ポンプ(60)を備えている。集熱ポンプ(60)の運転が行われると、集熱タンク(41)の底部から流出した水が、太陽熱集熱パネル(61)を通過する際に加熱される。そして、太陽熱集熱パネル(61)で加熱された水が、集熱タンク(41)へ戻る。その結果、集熱タンク(41)に蓄えられる温熱量が増加する。
【0047】
−第1冷凍装置の構成−
第1冷凍装置(11)は、上述したように、冷媒回路(13)を備えている。冷媒回路(13)には、第1冷媒として二酸化炭素が充填されている。冷媒回路(13)では、冷凍サイクルの高圧圧力が二酸化炭素の臨界圧力以上となる超臨界冷凍サイクルが行われる。冷媒回路(13)には、圧縮機(14)と熱源側熱交換器(15)と利用側熱交換器(16)と膨張弁(17)と四方切換弁(18)とが接続されている。圧縮機(14)は圧縮機構を構成し、膨張弁(17)は膨張機構を構成している。
【0048】
圧縮機(14)は、容積型の流体機械(例えば、ロータリ式流体機械)をモータにより駆動して流体を圧縮するように構成されている。圧縮機(14)のモータには、インバータを介して電力が供給される。圧縮機(14)の運転周波数(ひいては、圧縮機構の運転容量)は、インバータの出力周波数を変化させることによって調節される。圧縮機(14)の吐出側は、四方切換弁(18)の第1ポート(P1)に接続されている。圧縮機(14)の吸入側は、アキュームレータ(19)を介して、四方切換弁(18)の第2ポート(P2)に接続されている。
【0049】
熱源側熱交換器(15)は、空冷式の熱交換器(例えば、クロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器)により構成されている。熱源側熱交換器(15)では、室外ファン(27)により供給される室外空気と第1冷媒との間で熱交換が行われる。室外ファン(27)の送風量は、複数段階に調節可能になっている。熱源側熱交換器(15)の一端は、四方切換弁(18)の第3ポート(P3)に接続されている。熱源側熱交換器(15)の他端は、膨張弁(17)に接続されている。
【0050】
利用側熱交換器(16)は、水冷式の熱交換器(例えば、プレート式の熱交換器)により構成されている。利用側熱交換器(16)は、冷媒回路(13)に接続された第1管路(16a)と、接続回路(20)に接続された第2管路(16b)とを備えている。接続回路(20)は、閉鎖弁(28,29)を介して、利用側回路(46)に接続されている。利用側熱交換器(16)では、第1管路(16a)の第1冷媒と第2管路(16b)の水との間で熱交換が行われる。利用側熱交換器(16)の第1管路(16a)の一端は、四方切換弁(18)の第4ポート(P4)に接続されている。第1管路(16a)の他端は、膨張弁(17)に接続されている。
【0051】
膨張弁(17)は、開度可変の電動膨張弁により構成されている。また、四方切換弁(18)は、第1ポート(P1)と第3ポート(P3)が互いに連通して第2ポート(P2)と第4ポート(P4)が互いに連通する第1状態(
図1に実線で示す状態)と、第1ポート(P1)と第4ポート(P4)が互いに連通して第2ポート(P2)と第3ポート(P3)が互いに連通する第2状態(
図1に破線で示す状態)とに切り換え可能に構成されている。
【0052】
熱源側熱交換器(15)と膨張弁(17)との間には、互いに並列に接続された冷房用流路(21)と暖房用流路(22)と補助流路(23)とが設けられている。冷房用流路(21)は、冷媒回路(13)が冷房動作を行う際に第1冷媒が流れる流路である。冷房用流路(21)には、第2冷凍装置(12)の蒸発器(24)が接続されている。暖房用流路(22)は、冷媒回路(13)が暖房動作を行う際に第1冷媒が流れる流路である。暖房用流路(22)には、熱源側熱交換器(15)から膨張弁(17)へ向かう第1冷媒の流れを禁止する逆止弁(26)が接続されている。補助流路(23)は、暖房運転時に熱源側熱交換器(15)に付着した氷を融かすデフロスト運転を行う際に第1冷媒が流れる流路である。補助流路(23)には、補助電磁弁(25)が接続されている。この補助電磁弁(25)は、デフロスト運転の際だけ開状態に設定される。
【0053】
冷媒回路(13)には、高圧センサ(55)と第1温度センサ(56)と第2温度センサ(57)とが設けられている。高圧センサ(55)は、圧縮機(14)から吐出された高圧の第1冷媒の圧力を計測する。第1温度センサ(56)は、熱源側熱交換器(15)と膨張弁(17)との間を流れる第1冷媒の温度を計測する。第2温度センサ(57)は、利用側熱交換器(16)と膨張弁(17)との間を流れる第1冷媒の温度を計測する。
【0054】
また、接続回路(20)には、入口温度センサ(52)と出口温度センサ(53)とが設けられている。入口温度センサ(52)は、利用側熱交換器(16)に流入する水の温度を計測する。出口温度センサ(53)は、利用側熱交換器(16)を通過した水の温度を計測する。
【0055】
−第2冷凍装置の構成−
第2冷凍装置(12)は、吸収式冷凍サイクルを行う単効用の吸収式冷凍装置である。なお、第2冷凍装置(12)は、二重効用の吸収式冷凍装置であってもよい。この第2冷凍装置は、上記冷媒回路(13)が熱源側熱交換器(15)を放熱器として利用側熱交換器(16)を蒸発器とする冷却動作を行うときに、上記熱源側熱交換器(15)から膨張機構(17)へ向かって流れる冷媒を冷却するように構成されている。
【0056】
第2冷凍装置(12)は、上述したように、吸収側回路(70)を備えている。吸収側回路(70)には、
図1に示すように、吸収器(30)と再生器(31)と凝縮器(32)と蒸発器(24)と溶液ポンプ(33)と溶液熱交換器(34)と溶液冷却器(35)と冷媒タンク(36)と吸収式電磁弁(37)と三方弁(38)とが接続されている。なお、本実施形態では、吸収溶液(吸収剤)として臭化リチウム水溶液が用いられ、第2冷媒として水が用いられている。
【0057】
吸収器(30)は、第2冷凍装置(12)の蒸発器(24)で蒸発した冷媒と高濃度の吸収溶液とが供給されて、冷媒が吸収溶液に吸収される行程が行われるものである。この吸収器(30)は、概略構造を
図2の斜視図に示しているように、略鉛直方向に沿って配置されるとともに互いに離間した複数の棒材(111)を有する吸収部(110)を有している。
【0058】
上記複数の棒材(111)は、全体が円筒状の集合体になるように配置されている。上記吸収部(110)は、吸収部の平面図である
図3に示すように、例えば1本の棒材(111)を中心とする複数の同心円上に、所定のピッチで複数の棒材(111)を配置することにより構成されている。
【0059】
上記吸収器(30)は、上記棒材(111)の上方に配置された吸収溶液供給部(120)と、上記冷媒を上記棒材(111)に向かって供給するための冷媒供給部(130)とを備えている。また、吸収溶液供給部(120)は、吸収溶液を上記棒材の上方から散布する散布機構(121)を備えている。
【0060】
図4は、吸収器(30)の概略構造図である。この図に示すように、複数の棒材(111)は、上端部が上部保持部材(112)に保持されるとともに、その下端部が下部保持部材(113)に保持されている。上部保持部材(112)と下部保持部材(113)は、例えばボルト・ナットのような締結部材(114)を用いて締結することにより一体化されている。
【0061】
上部保持部材(113)と下部保持部材(114)の間には、高濃度の吸収溶液を各棒材(111)に流すために上記散布機構(121)が設けられている。この散布機構は、各棒材が挿通する挿通孔(115a)を有する溶液導入部材(115)を有している。上記挿通孔(115a)は、上記棒材(111)の直径よりも若干大きな内径を有している。また、溶液導入部材(115)と下部保持部材(113)の間には、蒸発器(24)から冷媒蒸気を導入するための冷媒供給部(130)が形成されている。散布機構(121)から導入された高濃度の吸収溶液(濃溶液)は、棒材(111)を伝って下方へ流れ落ちるときに冷媒蒸気を吸収し、低濃度の吸収溶液(稀溶液)になって下部保持部材(113)から吸収器(30)の外へ流出する。
【0062】
上記吸収器(30)は、
図5に示すように、蒸発器(24)と一体に形成されている。具体的には、吸収器のケーシングと蒸発器のケーシングが1つのケーシング(140)により構成され、このケーシングの中に吸収器の構成要素と蒸発器の構成要素が配置されている。このケーシング(140)の中に配置されている吸収部(110)と蒸発器(24)の間には、吸収溶液が蒸発器へ向かって飛散するのを防止する飛散防止機構(150)が設けられている。飛散防止機構(150)としては、例えばメッシュ状の仕切板を用いることができる。
【0063】
再生器(31)は、温水が流れる熱交換器(31a)の表面に吸収溶液を散布することにより吸収溶液を加熱するように構成されている。再生器(31)では、吸収溶液から第2冷媒が分離される。なお、再生器(31)の熱交換器(31a)は、閉鎖弁(62,63)が設けられた配管を介して、熱源側回路(47)に接続されている。熱源側ポンプ(39)の運転が行われると、集熱タンク(41)から流出した温水が熱交換器(31a)の内部を流れる。
【0064】
溶液ポンプ(33)は、運転容量が固定のポンプである。溶液ポンプ(33)の吸入側は、吸収器(30)の底部に接続されている。溶液ポンプ(33)の吐出側は、三方弁(38)の第1ポート(P1)に接続されている。なお、溶液ポンプ(33)は、運転容量を変更可能なポンプであってもよい。
【0065】
溶液熱交換器(34)は、プレート式の熱交換器により構成されている。溶液熱交換器(34)は、再生器(31)に向かう吸収溶液が流れる低温側管路(34a)と、再生器(31)から流出した吸収溶液が流れる高温側管路(34b)とを備えている。低温側管路(34a)の一端は、三方弁(38)の第2ポート(P2)に接続され、低温側管路(34a)の他端は、再生器(31)の頂部に接続されている。また、高温側管路(34b)の一端は、再生器(31)の底部に接続され、高温側管路(34b)の他端は、溶液ポンプ(33)の吸入側に接続されている。溶液熱交換器(34)では、低温側管路(34a)の吸収溶液と高温側管路(34b)の吸収溶液との間で熱交換が行われ、再生器(31)に向かう吸収溶液が、再生器(31)から流出した吸収溶液により加熱される。
【0066】
溶液冷却器(35)は、空冷式の熱交換器(例えば、クロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器)により構成されている。溶液冷却器(35)の一端は、三方弁(38)の第3ポート(P3)に接続されている。溶液冷却器(35)の他端は、吸収器(30)の頂部に接続されている。
【0067】
三方弁(38)は、溶液ポンプ(33)が吐出した吸入溶液を再生器(31)と溶液冷却器(35)とに分配する。三方弁(38)は、溶液冷却器(35)に分配される吸収溶液の流量が、再生器(31)に分配される吸収溶液の流量の例えば8倍になるように調整されている。
【0068】
凝縮器(32)は、空冷式の熱交換器(例えば、クロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器)により構成されている。凝縮器(32)の一端は、再生器(31)の頂部に接続されている。凝縮器(32)の他端は、冷媒タンク(36)の頂部に接続されている。
【0069】
冷媒タンク(36)は、液冷媒を溜めるための密閉容器である。冷媒タンク(36)の底部には、蒸発器(24)に延びる冷媒配管が接続されている。この冷媒配管には、上記吸収式電磁弁(37)が設けられている。
【0070】
上記蒸発器(24)は、冷媒タンク(36)の底部から流出した液冷媒(第2冷媒)を、コイル式やプレート式の熱交換器(24a)の内部を流れる被冷却流体と熱交換させて蒸発させるように構成されている。熱交換器(24a)は、冷房用流路(21)に接続されている。熱交換器(24a)の内部には、被冷却流体として冷媒回路(13)の第1冷媒が流れる。蒸発器(24)では、プレート式の熱交換器(24a)の表面に吸収側回路(70)の第2冷媒(液冷媒)が散布され、その液冷媒の蒸発熱により、冷媒回路(13)の第1冷媒が冷却される。
【0071】
本実施形態では、
図6に示すように、第1冷凍装置(11)の熱源側熱交換器(15)と第2冷凍装置(12)の凝縮器(32)及び溶液冷却器(35)とが、一体化されて、熱交換ユニット(43)を構成している。熱交換ユニット(43)は、全体としてパネル状に形成されている。また、熱交換ユニット(43)では、凝縮器(32)、溶液冷却器(35)及び熱源側熱交換器(15)が、送風機を構成する1つの室外ファン(27)を共用している。凝縮器(32)、溶液冷却器(35)及び熱源側熱交換器(15)には、同じ室外ファン(27)が送る空気がそれぞれ供給される。本実施形態では、これらの構成により、ヒートポンプユニット(10)のコンパクト化が図られている。
【0072】
また、熱交換ユニット(43)では、上側から順番に、凝縮器(32)、溶液冷却器(35)及び熱源側熱交換器(15)が配置されている。ここで、第2冷凍装置(12)では、凝縮器(32)における第2冷媒の凝縮圧力と蒸発器(24)における第2冷媒の蒸発圧力との差圧により、凝縮器(32)から蒸発器(24)へ第2冷媒が流れる。しかし、この差圧は、蒸気圧縮冷凍サイクルでの高圧と低圧との差に比べてかなり小さい。このため、凝縮器(32)の出口よりも蒸発器(24)の入口の方が高い位置に設けられている場合には、凝縮器(32)の出口と蒸発器(24)の入口とのヘッド差により、凝縮器(32)から蒸発器(24)へ第2冷媒を送ることが困難になる。これに対して、本実施形態の熱交換ユニット(43)では、凝縮器(32)が最も上側に配置されている。このため、蒸発器(24)を設置できる高さの範囲が広く、ヒートポンプユニット(10)内の設計の自由度が大きくなる。従って、ヒートポンプユニット(10)のコンパクト化をさらに図ることができる。
【0073】
また、凝縮器(32)は、複数枚のフィン(85)のそれぞれに複数の伝熱管(86)を貫通させることにより構成されている。凝縮器(32)では、1本の真っ直ぐな伝熱管(86)により、第2冷媒が流れる冷媒流通路が構成されている。冷媒流通路は、1m以下に設計されている。各伝熱管(86)の一端は、第1のヘッダ(87)に接続され、各伝熱管(86)の他端は、第2のヘッダ(88)に接続されている。
【0074】
溶液冷却器(35)は、複数枚のフィン(89)のそれぞれに複数のU字伝熱管(90)を貫通させることにより構成されている。溶液冷却器(35)では、1本のU字伝熱管(90)により、吸収溶液が流れる溶液流通路が構成されている。各U字伝熱管(90)の一端は、ヘッダ(91)に接続され、各U字伝熱管(90)の他端は、分流器(92)に接続されている。
【0075】
熱源側熱交換器(15)は、溶液冷却器(35)と同様に、複数枚のフィン(93)のそれぞれに複数のU字伝熱管(94)を貫通させることにより構成されている。熱源側熱交換器(15)では、1本のU字伝熱管(94)により、第1冷媒が流れる冷媒流通路が構成されている。各U字伝熱管(94)の一端は、ヘッダ(95)に接続され、各U字伝熱管(94)の他端は、分流器(96)に接続されている。
【0076】
熱交換ユニット(43)では、凝縮器(32)のフィン(85)と溶液冷却器(35)のフィン(89)と熱源側熱交換器(15)のフィン(93)とが、共通の金属プレートにより構成されている。つまり、金属プレートの上部が、凝縮器(32)のフィン(85)を構成し、金属プレートの中央部が、溶液冷却器(35)のフィン(89)を構成し、金属プレートの下部が、熱源側熱交換器(15)のフィン(93)を構成している。なお、凝縮器(32)のフィン(85)と溶液冷却器(35)のフィン(89)と熱源側熱交換器(15)のフィン(93)とを、別々の金属プレートにより構成し、これらのフィン(85,89,93)を溶接等により一体化してもよい。
【0077】
また、本実施形態では、凝縮器(32)だけが、各伝熱管(86)の両端にヘッダ(87,88)を設ける両ヘッダ構造を採用している。また、凝縮器(32)の各冷媒流通路が、真っ直ぐな伝熱管(86)により構成されている。このため、凝縮器(32)の各冷媒流通路で生じる圧力損失が比較的小さくなる。凝縮器(32)の各冷媒流通路の長さは、溶液冷却器(35)の各溶液流通路の長さの半分以下であると共に、熱源側熱交換器(15)の各冷媒流通路の長さの半分以下である。
【0078】
なお、凝縮器(32)の各冷媒流通路の長さがさらに短くなるように、
図7に示すように、凝縮器(32)を、複数の熱交換器(32a,32b)に分割してもよい。複数の熱交換器(32a,32b)は、再生器(31)と冷媒タンク(36)とを接続する冷媒配管において、互いに並列に接続される。
図3では、凝縮器(32)が、第1の熱交換器(32a)と第2の熱交換器(32b)とに分割されている。
【0079】
−空調システムの運転動作−
本実施形態の空調システム(100)の運転動作について説明する。なお、本実施形態では、ヒートポンプユニット(10)が、商用電源に加えて、太陽光発電(又は太陽熱発電)を行う発電装置(図示省略)に接続されている。空調システム(100)の運転中は、この発電装置で得られた電力が、圧縮機(14)、室外ファン(27)及び溶液ポンプ(33)等の電力を消費する機器へ供給される。
【0080】
<冷房運転>
空調システム(100)が冷房運転を行う場合について説明する。この場合、ヒートポンプユニット(10)では、第1冷凍装置(11)の運転が常に行われる。一方、第2冷凍装置(12)の運転は、利用側熱交換器(16)において必要となる冷却能力である必要冷却能力に応じて行われる。また、利用側回路(46)では、利用側ポンプ(49)の運転が行われ、三方切換弁(48)が第1状態に設定され、冷房用電磁弁(50a,50b)が開状態に設定され、暖房用電磁弁(51a,51b)が閉状態に設定される。また、熱源側回路(47)では、第2冷凍装置(12)の運転中だけ、熱源側ポンプ(39)の運転が行われる。各ファンコイルユニット(44a,44b)では、ファンの運転が行われる。以下では、第2冷凍装置(12)の運転動作について説明し、続いて第1冷凍装置(11)の運転動作について説明する。
【0081】
具体的に、吸収器(30)において、蒸発器(24)で蒸発した第2冷媒が吸収溶液に吸収される。第2冷媒を吸収した吸収溶液は、溶液ポンプ(33)によって加圧されて、その一部が溶液冷却器(35)へ供給され、残りが溶液熱交換器(34)へ供給される。
【0082】
溶液冷却器(35)では、室外ファン(27)により供給された室外空気により、吸収溶液が冷却される。溶液冷却器(35)で冷却された吸収溶液は、吸収器(30)へ戻って散布される。
【0083】
一方、溶液熱交換器(34)では、溶液ポンプ(33)により供給された吸収溶液が、再生器(31)の底部から流出した吸収溶液により加熱される。溶液熱交換器(34)で加熱された吸収溶液は、再生器(31)において、熱交換器(31a)を流れる温水により加熱される。その結果、第2冷媒が気化して吸収溶液から分離される。再生器(31)内の吸収溶液は、その底部から流出し、溶液熱交換器(34)で冷却された後に、溶液ポンプ(33)の上流において、吸収器(30)から流出した吸収溶液と合流する。
【0084】
再生器(31)内のガス冷媒(第2冷媒)は、凝縮器(32)において、室外ファン(27)により供給された室外空気に放熱して凝縮する。凝縮器(32)で凝縮した液冷媒(第2冷媒)は、冷媒タンク(36)を通過した後に、蒸発器(24)に至るまでに細管により減圧されて、蒸発器(24)に流入する。
【0085】
蒸発器(24)では、液冷媒(第2冷媒)が熱交換器(24a)の表面に散布される。蒸発器(24)では、熱交換器(24a)の表面を流れる吸収側回路(70)の液冷媒(第2冷媒)と、熱交換器(24a)の内部を流れる冷媒回路(13)の第1冷媒との間で熱交換が行われる。その結果、熱交換器(24a)の表面の液冷媒(第2冷媒)が蒸発し、熱交換器(24a)内の第1冷媒が冷却される。蒸発器(24)で蒸発した第2冷媒(水蒸気)は、吸収器(30)において吸収溶液に吸収される。なお、蒸発器(24)で蒸発しなかった第2冷媒(水)は、蒸発器(24)の底部に落下して、吸収器(30)の底部に設けられている液溜まり(30b)に流れ込む。
【0086】
第1冷凍装置(11)の運転は、圧縮機(14)及び室外ファン(27)がそれぞれ起動されると開始される。四方切換弁(18)は第1状態(
図1に実線で示す状態)に設定される。また、補助電磁弁(25)が閉鎖される。冷媒回路(13)では、熱源側熱交換器(15)が放熱器として動作して利用側熱交換器(16)が蒸発器として動作する冷房動作が行われる。なお、利用側熱交換器(16)の第2管路(16b)には、利用側ポンプ(49)により、各ファンコイルユニット(44a,44b)を通過した水が供給される。
【0087】
具体的に、圧縮機(14)では、利用側熱交換器(16)で蒸発した第1冷媒が圧縮される。圧縮機(14)では、第1冷媒がその臨界圧力よりも高い圧力に圧縮される。圧縮機(14)で圧縮された第1冷媒は、熱源側熱交換器(15)において、室外ファン(27)により供給された室外空気に放熱して冷却される。熱源側熱交換器(15)で冷却された第1冷媒は、第2冷凍装置(12)が運転中であれば、第2冷凍装置(12)の蒸発器(24)においてさらに冷却される。
【0088】
第2冷凍装置(12)の蒸発器(24)を通過した第1冷媒は、膨張弁(17)で減圧された後に、利用側熱交換器(16)に流入する。利用側熱交換器(16)では、第1冷媒と利用側回路(46)の冷水との間で熱交換が行われ、第1冷媒が加熱されて蒸発し、利用側回路(46)の冷水が冷却される。利用側熱交換器(16)で蒸発した第1冷媒は、圧縮機(14)に吸入されて再び圧縮される。
【0089】
なお、本実施形態では、第2冷凍装置(12)を停止させて圧縮機(14)だけを運転させている状態の利用側冷却能力を「第1冷凍装置(11)の冷却能力」と定義すると、冷房の定格条件では、第1冷凍装置(11)の冷却能力の最小値が例えば1kWとなり、第1冷凍装置(11)の冷却能力の最大値(定格冷却能力)が例えば2kWとなる。また、冷房の定格条件では、第2冷凍装置(12)の冷却能力の最大値(定格冷却能力)が例えば6kWとなる。
【0090】
<暖房運転>
空調システム(100)が暖房運転を行う場合について説明する。この場合、ヒートポンプユニット(10)では、第1冷凍装置(11)の運転が常に行われ、第2冷凍装置(12)が常に停止される。また、利用側回路(46)では、利用側ポンプ(49)の運転が行われ、三方切換弁(48)が第2状態に設定され、暖房用電磁弁(51a,51b)が開状態に設定され、冷房用電磁弁(50a,50b)が閉状態に設定される。また、熱源側回路(47)では、熱源側ポンプ(39)が停止される。
【0091】
第1冷凍装置(11)の運転は、圧縮機(14)及び室外ファン(27)がそれぞれ起動されると開始される。四方切換弁(18)は第2状態(
図1に破線で示す状態)に設定される。また、補助電磁弁(25)が閉鎖される。冷媒回路(13)では、利用側熱交換器(16)が放熱器として動作して熱源側熱交換器(15)が蒸発器として動作する暖房動作が行われる。なお、利用側熱交換器(16)の第2管路(16b)には、利用側ポンプ(49)により、各床暖房ユニット(45a,45b)を通過した水が供給される。
【0092】
具体的に、圧縮機(14)では、熱源側熱交換器(15)で蒸発した第1冷媒が圧縮される。圧縮機(14)では、第1冷媒がその臨界圧力よりも高い圧力に圧縮される。圧縮機(14)で圧縮された第1冷媒は、利用側熱交換器(16)に流入する。利用側熱交換器(16)では、第1冷媒が冷却され、利用側回路(46)の冷水が加熱される。利用側熱交換器(16)で冷却された第1冷媒は、膨張弁(17)で減圧された後に、熱源側熱交換器(15)において室外空気から吸熱して蒸発する。熱源側熱交換器(15)で蒸発した第1冷媒は、圧縮機(14)に吸入されて再び圧縮される。
【0093】
−実施形態の効果−
本実施形態では、複数の棒材(111)を全体が円筒状になるように密に配置して吸収部(110)を構成したことにより、吸収器(30)を従来よりも小型化することができ、ひいては吸収器(30)の軽量化と低コスト化を実現することができる。
【0094】
以下に、吸収器を小型化できる理由を、
図8〜
図10を参照して説明する。まず、ここでは、従来の吸収器として、
図8に示すようにパンチングメタル(211)をコルゲート状に折り曲げて形成した複数の板金部材を重ねたものを吸収部(210)とする吸収器(210)を比較対象とする。
【0095】
本実施形態の吸収器(30)は、上述したように、複数の棒材(111)を垂直方向縦向きで高密度に配置し、棒材(111)に上方から吸収溶液を散布するとともに側方から冷媒蒸気を供給して、高濃度の吸収溶液に冷媒蒸気を吸収させるものである。本実施形態の吸収器(30)が
図8の吸収器と同じ性能の冷凍能力を発揮するのに必要な容積を求める。
【0096】
(1)モデル式と物質伝達率
図9(A)は、吸収溶液(LiBr)が棒材に沿って上方から下方へ流れ落ちるときに冷媒蒸気(H
2O)を吸収して、温度と質量流束と濃度が変化する状態を示している。このとき、冷媒吸収量dMは、物質伝達率をβ(4×10
−5m/sと仮定する)、気液の接触面積をA、対数溶液濃度差をΔXとすると、
図9(B)に示すように、
モデル式 dM=β・A・ΔX ・・・(I)
により求められる。
【0097】
(2)容積の計算結果
図10には、吸収器(30)の容積を上記モデル式を使って求めた結果を示している。
図10は、縦軸が無次元化されたワイヤ径(棒材の直径)、横軸が無次元化されたワイヤ本数(棒材の本数)であり、それぞれの組み合わせに対する吸収器(30)の吸収部(散布部=充填材)(110)の従来のものに対する容積割合を表した分布図である。計算結果によると、
図8に示した比較例の吸収器(200)の容積に対して、実施形態の吸収器では容積を約30%に抑えることができ、大幅に小型化できることが分かる。
【0098】
(3)効果のまとめ
以上説明したように、本実施形態では、吸収器を従来よりも小型化することができ、軽量化と低コスト化を実現することができる。上記複数の棒材(111)を用いたことにより、吸収器(30)における吸収部(110)の単位容積単位容積当たりの気液接触面積を大きくすることができるためである。
【0099】
また、ワイヤ径、ワイヤ本数、及びワイヤ長さは、十分な冷却能力を得ることができる範囲で適宜設定すればよく、そうすれば吸収器(30)を小型化することが可能である。
【0100】
−実施形態の変形例−
上記実施形態は、構成を以下のように変更してもよい。
【0101】
(変形例1)
図11は、棒材の配置を
図3の例とは異なるようにした変形例を示している。この変形例1においては、上記複数の棒材(111)は、全体が円筒状の集合体として配置される一方、外周部よりも中心部の棒材の配置密度が大きく設定されている。つまり、棒材(111)は、冷媒蒸気の密度が内側ほど薄くなるのに対応して中心部では密に配置される一方、外周部では中心部と比較して疎に配置されている。
【0102】
このように構成すると、吸収溶液への冷媒蒸気の吸収行程をより効率よく行うことができる。
【0103】
(変形例2)
図12は、吸収器(30)と蒸発器(24)を一体化する構成に関する変形例を示している。この変形例2では、上記蒸発器(24)がコイル式蒸発器であり、コイルの内部を第1冷媒が流れ、その周囲に第2冷媒が供給されることにより、第1冷媒が冷却されるとともに第2冷媒が第1冷媒から吸熱して蒸発する。上記吸収部(110)の棒材(111)は該コイル式蒸発器のコイルの内側に配置されている。
【0104】
図12に示しているのは吸収器(30)と蒸発器(24)を一体化する構成を概略的に示したものであるが、吸収器(30)と蒸発器(24)は具体的には
図13に示すように構成できる。ケーシング(140)は、円筒状で上端と下端が閉塞されている。ケーシング(140)には、該ケーシング(140)とほぼ同一中心上に円筒状の仕切板(151)が配置されている。ケーシング(140)内には、仕切板(151)の内側の空間に吸収器(30)の構成要素が配置され、仕切板(151)の外側空間に蒸発器(24)の構成要素が配置されている。この仕切板(151)は、例えばメッシュ状に形成されたものであり、蒸発器(24)の冷媒蒸気が吸収器(30)側へは流れる一方、吸収器(30)側の吸収溶液は蒸発器(24)側の空間へ飛散しにくくなっている。つまり、この仕切板(151)により飛散防止機構(150)が構成されている。
【0105】
上記仕切板(151)の内側空間には、上述した複数の棒材(111)を有する吸収部(110)と、散布機構(121)を備えた吸収溶液供給部(120)と、蒸発器から冷媒蒸気を通過させる冷媒供給部(130)とが設けられている。上述したように上記仕切板(151)はメッシュ状に形成されていて、
図13(B)に示すように多数の冷媒流通孔(152)を有し、この冷媒流通孔(152)が冷媒供給部(130)になっている。また、散布機構(121)は上記溶液導入部材(115)を有している。溶液導入部材(115)はトレイ状に形成され、各棒材(111)が上下方向に貫通する挿通孔(115a)を有している。また、この溶液導入部材(115)の上方には、ケーシング(140)の上端面を貫通する溶液入口管(141)が設けられている。
【0106】
上記仕切板(151)の外側空間には、コイル状に巻かれた蒸発器(24)の伝熱管(24a)が吸収部(110)の棒材(111)を取り囲むように配置されている。伝熱管(24a)の上方には、冷媒散布機構(135)が設けられている。冷媒散布機構(135)は、液冷媒を貯留する冷媒溜まり(136a)を上面に有する環状部材(136)により構成され、この環状部材(136)には冷媒溜まり(136a)から液冷媒を蒸発器(24)の伝熱管(24a)に滴下させるための滴下孔(136b)が形成されている。上記環状部材(136)に設けられている冷媒溜まりの上方には冷媒入口管(137)が設けられている。
【0107】
なお、
図1,
図5に示すように、このケーシングの下端部には吸収器に導入されずに残った液冷媒を導出するための液溜まり(30b)が形成されている(
図13では図示省略)。
【0108】
以上のように蒸発器(34)と吸収器(30)を一体化して構成すると、1つのケーシング(140)内に吸収部(110)と蒸発器(24)を効率よく配置することができ、吸収器(30)と蒸発器(24)を一体化する構成において小型化を実現できる。
【0109】
(変形例3)
図14は、吸収器(30)と蒸発器(24)を一体化する構成に関する変形例を示している。この変形例3では、上記蒸発器(24)がプレート式熱交換器により構成された蒸発器であり、上記吸収部(110)の棒材(111)が該蒸発器(24)の周囲に配置されている。この変形例においても、吸収器(30)と蒸発器(24)は1つのケーシング(図示せず)の内部に収納される。
【0110】
このように構成しても、1つのケーシング(140)内に吸収部(110)と蒸発器(24)を効率よく配置することができ、吸収器(30)と蒸発器(24)を一体化する構成において小型化を実現できる。
【0111】
(変形例4)
図15は、吸収部(110)の棒材(111)の構成を変更した例を示している。この変形例4では、上記吸収部(110)の棒材(111)は、径方向の中心部に空間(111a)が形成されている中空の棒材により構成されている。
【0112】
このように構成すると、吸収部(110)をさらに軽量化することが可能となる。
【0113】
(変形例5)
図16は、吸収部(110)の棒材(111)の構成を変更した別の例を示している。この変形例5では、上記吸収部(110)の棒材(111)には、親水性を高める親水処理が施されている。
【0114】
親水処理としては、
図16(A)〜(D)に示すように、棒材(111)の表面に溝(111b)を形成したり、
図16(E)に示すように、棒材の方面を粗くしたりすることができる。
図16(A)は棒材の長手方向に軸方向の溝(111b)を形成した例、
図16(B)は周方向の溝(111b)を形成した例、
図16(C)と
図16(D)は螺旋状の溝(111b)をそれぞれ一方向及び二方向に形成した例である。また、
図16(E)は、棒材(111)の表面を粗くする例として、多数の微細な孔(111c)を有する多孔質の材料(111c)で棒材(111)を形成した例を示している。
【0115】
このように構成すると、棒材(111)の親水性が向上するので、吸収溶液への冷媒蒸気の吸収行程をより効率よく行うことができる。
【0116】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0117】
例えば、上記実施形態について、第2冷凍装置(12)の再生器(31)の熱交換器(31a)に供給する水を、太陽熱集熱装置(40)ではなく、燃料電池(例えば、固体酸化物燃料電池(SOFC))の排熱により加熱してもよいし、エンジンの排熱により加熱してもよい。
【0118】
また、上記実施形態では、過冷却した濃溶液を供給して蒸発器に吸収させる過冷却式の吸収器(30)に本発明を適用した例を説明したが、供給される溶液が過冷却をしていないタイプの吸収器であっても本発明を適用することは可能であり、それにより吸収器を小型軽量化することができる。
【0119】
さらに、本発明を適用する吸収式冷凍装置は、蒸気圧縮式冷凍装置と組み合わせて使用する吸収式冷凍装置でなくてもよく、単体で吸収式サイクルを行う吸収式冷凍装置であってもよい。
【0120】
また、上記実施形態では吸収部(110)の棒材(111)を真っ直ぐな棒状の部材により構成しているが、曲がった棒材を用いてもよい。
【0121】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。