(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
工程(3)は、ポリテトラフルオロエチレンの一次粒子が凝集することによりスラリーが形成された後に界面活性剤(B)を添加する工程である請求項1、2又は3記載の製造方法。
工程(3)は、ポリテトラフルオロエチレンの湿潤性粉末が水から分離及び撥水化する直後又は水から分離及び撥水化する直前に界面活性剤(B)を添加する工程である請求項1、2、3、4又は5記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の製造方法は、ポリテトラフルオロエチレン〔PTFE〕、水及び界面活性剤(A)を含む水性分散液を準備する工程(1)を含む。
【0019】
上記PTFEは、フィブリル化性および非溶融二次加工性を有する。上記PTFEは、標準比重〔SSG〕が2.13〜2.23であることが好ましい。上記PTFEは、融点が325〜347℃であることが好ましい。上記融点は、示差走査熱量測定(DSC)の昇温速度を10℃/分として測定した値である。上記PTFEは、平均一次粒子径が0.05〜1μmであることが好ましい。
【0020】
上記PTFEは、テトラフルオロエチレン〔TFE〕のみからなるTFEホモポリマーであってもよいし、TFEと変性モノマーとからなる変性PTFEであってもよい。上記変性モノマーとしては、TFEとの共重合が可能なものであれば特に限定されず、例えば、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕等のパーフルオロオレフィン;クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕等のクロロフルオロオレフィン;トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン〔VDF〕等の水素含有フルオロオレフィン;パーフルオロビニルエーテル;パーフルオロアルキルエチレン:エチレン等が挙げられる。また、用いる変性モノマーは1種であってもよいし、複数種であってもよい。
上記パーフルオロビニルエーテルとしては特に限定されず、例えば、下記一般式(1)
CF
2=CF−ORf(1)
(式中、Rfは、パーフルオロ有機基を表す。)で表されるパーフルオロ不飽和化合物等が挙げられる。本明細書において、上記「パーフルオロ有機基」とは、炭素原子に結合する水素原子が全てフッ素原子に置換されてなる有機基を意味する。上記パーフルオロ有機基は、エーテル酸素を有していてもよい。
上記パーフルオロビニルエーテルとしては、例えば、上記一般式(1)において、Rfが炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基を表すものであるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕が挙げられる。上記パーフルオロアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜5である。
上記PAVEにおけるパーフルオロアルキル基としては、例えば、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられるが、パーフルオロアルキル基がパーフルオロプロピル基であるパープルオロプロピルビニルエーテル〔PPVE〕が好ましい。上記パーフルオロビニルエーテルとしては、更に、上記一般式(1)において、Rfが炭素数4〜9のパーフルオロ(アルコキシアルキル)基であるもの、Rfが下記式:
【0022】
(式中、mは、0又は1〜4の整数を表す。)で表される基であるもの、Rfが下記式:
【0024】
(式中、nは、1〜4の整数を表す。)で表される基であるもの等が挙げられる。
パーフルオロアルキルエチレンとしては特に限定されず、例えば、パーフルオロブチルエチレン(PFBE)、パーフルオロヘキシルエチレン等が挙げられる。
上記変性PTFEにおける変性モノマーとしては、HFP、CTFE、VDF、PPVE、PFBE及びエチレンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。より好ましくは、HFP及びCTFEからなる群より選択される少なくとも1種の単量体である。
【0025】
上記変性PTFEにおいて、上記変性モノマー単位は、全単量体単位の1質量%以下であることが好ましく、0.001〜1質量%であることがより好ましい。本明細書において、上記変性モノマー単位とは、変性PTFEの分子構造の一部分であって変性モノマーに由来する部分を意味し、全単量体単位とは、変性PTFEの分子構造における全ての単量体に由来する部分を意味する。
【0026】
上記界面活性剤(A)としては、アニオン界面活性剤、含フッ素アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、及び、含フッ素ノニオン界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、含フッ素アニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、含フッ素アニオン界面活性剤であることが更に好ましい。上記界面活性剤(A)として、炭素数が7以下、若しくは、6以下の含フッ素界面活性剤(含フッ素アニオン界面活性剤及び含フッ素ノニオン界面活性剤を含む)を用いて重合を行ったPTFEファインパウダーであっても、本発明の製造方法は有効である。
【0027】
上記含フッ素アニオン界面活性剤としては、例えば、カルボン酸系界面活性剤、スルホン酸系界面活性剤等が挙げられる。含フッ素アニオン界面活性剤としては、下記一般式(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)、(vi)又は(vii)で表されるカルボン酸系界面活性剤が好ましい。
【0028】
上記含フッ素アニオン界面活性剤としては、一般式(i):
X−Rf
1COOM
1 (i)
で表されるカルボン酸系界面活性剤が挙げられる。式中、XはH、F、またはClである。Rf
1は炭素数4〜14、好ましくは炭素数5〜7の直鎖または分岐のフルオロアルキレン基であり、例えば、炭素数7の直鎖または分岐のフルオロアルキレン基であり、とりわけ、直鎖または分岐のパーフルオロアルキレン基である。M
1は1価のアルカリ金属、NH
4又はHを表す。
【0029】
一般式(i)で表されるカルボン酸系界面活性剤としては、例えば、C
5F
11COOH、C
6F
13COOH、C
7F
15COOH等やこれらの塩が挙げられる。
【0030】
上記含フッ素アニオン界面活性剤としてはまた、一般式(ii):
X
1(CF
2)
p−O−CX
2X
3−(CF
2)
q−O−CX
4X
5−(CF
2)
r−COOM
1 (ii)
(式中、X
1、X
2、X
3、X
4及びX
5は、同一又は異なって、H、F又はCF
3を表し、M
1は1価のアルカリ金属、NH
4又はHを表し、pは1又は2を表し、qは1又は2を表し、rは0又は1を表す。)で表されるカルボン酸系界面活性剤が挙げられる。一般式(ii)で表されるフルオロエーテルカルボン酸としては、例えば、CF
3OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)COONH
4、CF
3CF
2OCF
2CF
2OCF
2COONH
4、CF
3OCF
2CF
2CF
2OCHFCF
2COONH
4等が挙げられる。
【0031】
上記含フッ素アニオン界面活性剤は、また、一般式(iii):
X−(CF
2)
m−O−(CF(CF
3)CF
2O)
n−CF(CF
3)COOM
1(iii)
で表されるカルボン酸系界面活性剤であってもよい。式中、XはH、F、またはClであり、mは1〜10の整数、例えば5であり、そしてnは0〜5の整数、例えば1である。M
1は1価のアルカリ金属、NH
4又はHを表す。
【0032】
一般式(iii)で表されるカルボン酸系界面活性剤としては、例えば、CF
3−O−CF(CF
3)CF
2O−CF(CF
3)COOH等や、これらの塩が好ましいカルボン酸系界面活性剤として例示される。
【0033】
上記含フッ素アニオン界面活性剤は、一般式(iv):
X−(CF
2)
m−O−(CF(CF
3)CF
2O)
n−CHFCF
2COOM
1(iv)
で表されるカルボン酸系界面活性剤であってもよい。式中、X、m、n及びM
1は上記と同じである。
【0034】
上記含フッ素アニオン界面活性剤は、一般式(v):
X−(CF
2)
m−O−(CF(CF
3)CF
2O)
n−CH
2CF
2COOM
1 (v)
で表されるカルボン酸系界面活性剤であってもよい。式中、X、m、n及びM
1は上記と同じである。
【0035】
上記含フッ素アニオン界面活性剤としてはまた、一般式(vi)
Rf
3OCF
2CF
2O(CF
2)
pCOOM
1 (vi)
(式中、Rf
3は部分または全部フッ素置換されたアルキル基を表し、M
1は1価のアルカリ金属、NH
4又はHを表し、pは1又は2を表す。)で表されるカルボン酸系界面活性剤が挙げられる。Rf
3は、炭素数が1〜3のアルキル基であることが好ましい。一般式(vi)で表されるカルボン酸系界面活性剤としては、例えば、CF
3CF
2OCF
2CF
2OCF
2COONH
4、CF
3CF
2OCF
2CF
2OCF
2COOH等が挙げられる。
【0036】
上記含フッ素アニオン界面活性剤としてはまた、一般式(vii):
Rf
4OCHFCF
2COOM
1 (vii)
(式中、Rf
4は部分または全部フッ素置換された、直鎖の脂肪族基又は1以上の酸素原子が挿入された直鎖の脂肪族基、M
1は1価のアルカリ金属、NH
4又はHを表す。)で表されるフルオロエーテルカルボン酸が挙げられる。Rf
4は、炭素数が1〜3の脂肪族基であることが好ましい。一般式(vii)で表されるカルボン酸系界面活性剤としては、例えば、CF
3OCF
2CF
2CF
2OCHFCF
2COONH
4、CF
3OCF
2CF
2CF
2OCHFCF
2COOH等が挙げられる。
【0037】
すなわち、含フッ素界面活性剤は、一般式(i):
X−Rf
1COOM
1 (i)
(式中、XはH、F、またはClである。Rf
1は炭素数4〜14、好ましくは炭素数5〜7の直鎖または分岐のフルオロアルキレン基である。M
1は1価のアルカリ金属、NH
4又はHを表す。)で表されるカルボン酸系界面活性剤、一般式(ii):
X
1(CF
2)
p−O−CX
2X
3−(CF
2)
q−O−CX
4X
5−(CF
2)
r−COOM
1 (ii)
(式中、X
1、X
2、X
3、X
4及びX
5は、同一又は異なって、H、F又はCF
3を表し、M
1は1価のアルカリ金属、NH
4又はHを表し、pは1又は2を表し、qは1又は2を表し、rは0又は1を表す。)で表されるカルボン酸系界面活性剤、一般式(iii):
X−(CF
2)
m−O−(CF(CF
3)CF
2O)
n−CF(CF
3)COOM
1(iii)
(式中、XはH、F、またはClであり、mは1〜10の整数、nは0〜5の整数である。M
1は1価のアルカリ金属、NH
4又はHを表す。)で表されるカルボン酸系界面活性剤、一般式(iv):
X−(CF
2)
m−O−(CF(CF
3)CF
2O)
n−CHFCF
2COOM
1(iv)
(式中、X、m、n及びM
1は上記と同じである。)で表されるカルボン酸系界面活性剤、一般式(v):
X−(CF
2)
m−O−(CF(CF
3)CF
2O)
n−CH
2CF
2COOM
1 (v)
(式中、X、m、n及びM
1は上記と同じである。)で表されるカルボン酸系界面活性剤、一般式(vi):
Rf
3OCF
2CF
2O(CF
2)
pCOOM
1 (vi)
(式中、Rf
3は部分または全部フッ素置換されたアルキル基を表し、M
1は1価のアルカリ金属、NH
4又はHを表し、pは1又は2を表す。)で表されるカルボン酸系界面活性剤、及び、一般式(vii):
Rf
4OCHFCF
2COOM
1 (vii)
(式中、Rf
4は部分または全部フッ素置換された、直鎖の脂肪族基又は1以上の酸素原子が挿入された直鎖の脂肪族基、M
1は1価のアルカリ金属、NH
4又はHを表す。)で表されるカルボン酸系界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種の含フッ素界面活性剤であることが好ましい。
【0038】
界面活性剤(A)として使用する上記ノニオン界面活性剤としては、フッ素を含有しないノニオン界面活性剤であれば特に限定されず、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル等のエーテル型ノニオン界面活性剤、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドブロック共重合体等のポリオキシエチレン誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等のエステル型ノニオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド等のアミン系ノニオン乳化剤が挙げられる。また、環境面で、アルキルフェノールを構造中に有しないノニオン界面活性剤を好ましく使用することができる。
【0039】
上記水性分散液は、界面活性剤(A)の濃度がPTFEに対して0.001〜10質量%であることが好ましく、0.005〜1質量%であることがより好ましい。
【0040】
工程(1)における水性分散液の準備は、水性分散重合により行うこともできるし、水性分散重合(乳化重合)により得られた水性分散液を、イオン交換処理法、曇点濃縮法、電気濃縮法、限外ろ過法等により処理することによって行うこともできる。
【0041】
上記水性分散重合は、回分操作、半回分操作及び連続操作の何れの操作でも実施でき、公知の重合方法が適用できる。上記水性分散重合において、上述した含フッ素アニオン界面活性剤、変性モノマー、重合開始剤、安定化剤、連鎖移動剤等は、重合反応の間、目的とするPTFEの分子量や特性に応じて連続的に添加することができ、適宜追加することもできる。上記水性分散重合は、一般的に0.5〜50時間行う。
【0042】
上記水性分散重合は、撹拌機が備えられた耐圧反応容器に、水性媒体中、含フッ素アニオン界面活性剤の存在下、撹拌しながら重合開始剤を用いて行われる。上記水性分散重合は、水性媒体と連鎖移動剤とモノマーと、必要に応じて安定化剤等とを仕込み、温度及び圧力を調整した後、重合開始剤を添加することにより開始することができる。
【0043】
上記水性分散重合は、上述の水性媒体中にモノマーを供給しながら行うことができる。上記水性分散重合は、上記モノマーとして、テトラフルオロエチレン〔TFE〕のみを供給するものであってもよいし、TFEに加え、TFEと共重合が可能な上述の変性モノマーとを供給するものであってもよい。
【0044】
上記水性媒体は、脱イオンされた高純度の純水であることが好ましい。
【0045】
上記含フッ素アニオン界面活性剤の重合反応系への仕込みは、種々の方法で行うことができ、例えば、反応開始前に全量を一括して反応系に仕込んでもよく、あるいは粒子径を制御する目的で特公昭44−14466号公報に記載されているような分割仕込みを行うことも可能である。また、重合中の水性分散液の安定性を向上させる点でも、重合中に追加あるいは連続添加することが好ましい。
【0046】
上記含フッ素アニオン界面活性剤の使用量は、その含フッ素アニオン界面活性剤の種類と目標とする一次粒子径にもよるが、一般に反応に用いる水性媒体に対して、0.02〜0.50質量%の範囲から選択することができる。
【0047】
必要に応じて反応系の分散安定化を目的として、安定化剤を添加してもよい。
上記安定化剤としては、実質的に反応に不活性なパラフィンワックス、フッ素系オイル、フッ素系化合物、シリコーンオイル等が好ましく、なかでも、パラフィンワックスが好ましい。
上記パラフィンワックスとしては、反応条件下で液状の炭素数12以上の炭化水素が好ましく、炭素数16以上の炭化水素がより好ましい。また、融点が40〜65℃であるものが好ましく、融点が50〜65℃であるものがより好ましい。
上記パラフィンワックスの使用量は、上記水性媒体の1〜12質量%に相当する量が好ましく、2〜8質量%に相当する量がより好ましい。
【0048】
また、反応中のpHを調整するために緩衝剤として、例えば炭酸アンモニウム、リン酸アンモニウムなどを添加してもよい。
【0049】
上記乳化重合における重合開始剤としては、TFEの重合において従来から使用されているものが使用できる。
上記乳化重合における重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤、レドックス系重合開始剤等が好ましい。
上記重合開始剤の量は、少ないほど、SSGが低いPTFEを得ることができる点で好ましいが、あまりに少ないと重合速度が小さくなり過ぎる傾向があり、あまりに多いと、SSGが高いPTFEが生成する傾向がある。
上記ラジカル重合開始剤としては、例えば、水溶性過酸化物が挙げられ、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、過マンガン酸カリウム等の過マンガン酸塩、ジコハク酸パーオキサイド等の水溶性有機過酸化物等が好ましく、過硫酸アンモニウムがより好ましい。これらは、1種のみ使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記ラジカル重合開始剤の使用量は、重合温度と目標とするSSGに応じて適宜選択することができるが、一般的に使用される水系媒体の質量の1〜100ppmに相当する量が好ましく、1〜20ppmに相当する量がより好ましい。
上記重合開始剤としてラジカル重合開始剤を使用する場合、重合中にラジカル捕捉剤を添加することにより、SSGが低いPTFEを容易に得ることができる。
【0050】
上記ラジカル捕捉剤としては、例えば、非置換フェノール、多価フェノール、芳香族ヒドロキシ化合物、芳香族アミン類、キノン化合物等が挙げられるが、なかでもハイドロキノンが好ましい。
上記ラジカル捕捉剤は、SSGが低いPTFEを得る点で、重合反応に消費される全TFEの50質量%が重合される前に添加することが好ましく、該TFEの30質量%が重合される前に添加することがより好ましい。
上記ラジカル捕捉剤は、一般に使用される水系媒体の質量の0.1〜10ppmに相当する量が好ましい。
【0051】
上記レドックス系重合開始剤としては、過マンガン酸カリウム等の過マンガン酸塩、過硫酸塩、臭素酸塩等の水溶性酸化剤と、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、シュウ酸、塩化第一鉄、ジイミン等の還元剤との組合せが挙げられる。中でも、過マンガン酸カリウムとシュウ酸との組み合わせが好ましい。
上記重合開始剤としてレドックス系重合開始剤を使用する場合、SSGが低く、破断強度が高いPTFEが得ることができる。
上記レドックス系重合開始剤の使用量は、重合温度と目標とするSSGに応じて適宜選択することができるが、一般的に使用される水系媒体の質量の1〜100ppmに相当する量が好ましい。
上記レドックス系重合開始剤は、SSGが低いPTFEを得る点で、上記酸化剤又は還元剤の何れか、好ましくは酸化剤の添加を重合途中で中止することが好ましく、該添加中止時期としては、重合反応に消費される全TFEの50質量%が重合される前が好ましく、該TFEの30質量%が重合される前がより好ましい。
【0052】
上記水性分散重合は、重合中に生じる凝固物の量を減少させるために水性媒体に対して30〜200ppmのジカルボン酸の存在下に行うことが好ましい。上記ジカルボン酸は、重合反応の開始前に添加してもよいし、重合途中に添加してもよい。
上記ジカルボン酸としては、例えば、一般式:HOOCRCOOH(式中、Rは炭素数1〜5のアルキレン基を表す。)で表されるものが好ましく、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸がより好ましく、コハク酸が更に好ましい。
【0053】
成形性や押出圧力、成形物品の透明性や機械的強度を調整する目的として、変性モノマーを用いることもできる。
【0054】
分子量や押出圧力を調整する目的として、必要に応じて連鎖移動剤を添加してもよい。上記連鎖移動剤としては、水素;メタン、エタン、プロパンなどの炭化水素;CH
2CF
2、CH
3Cl、CH
2Cl
2、C
2H
3Cl
2Fなどのハロゲン化炭化水素;メタノール、エタノールなどの水溶性有機化合物などが挙げられる。添加する時期は添加する目的によって異なるが、重合初期に添加しても、重合途中に添加してもよく、また一括、分割、あるいは連続で仕込んでもよい。
【0055】
上記水性分散重合において、重合温度、重合圧力等の重合条件は、特に限定されず、使用するTFEの量、変性モノマーの種類や量、重合開始剤の種類や量、あるいは生産性等に応じて、適宜選択することができる。上記重合温度は、5〜100℃であることが好ましく、50〜90℃であることが更に好ましい。上記重合圧力は、0.1〜3.9MPaであることが好ましい。
【0056】
重合反応は、生成したポリマーラテックスの濃度が20〜45質量%になった時点で攪拌を停止し、系外にモノマーを放出して終了させることができる。
【0057】
本発明の製造方法は、工程(1)で準備した水性分散液を撹拌することにより、前記水性分散液中のポリテトラフルオロエチレンの凝析を開始する工程(2)を含む。当業者であれば、容器の大きさと撹拌翼の形状、邪魔板の構造によって、撹拌回転数を適切に選択することができる。通常、工程(2)における撹拌は水性分散重合における攪拌よりも激しく行う必要があることも当業者に公知である。一般に、水性分散液に激しいせん断を与えると、PTFEの一次粒子が凝集し、スラリー状態を経由して、水中で湿潤性粉末が形成された後、この湿潤粉末が撥水化し、水と分離する。
【0058】
TFEの乳化重合から得られたPTFE水性分散液(一次粒子が水性媒体中に分散)に、強いせん断を与えることにより不安定化された一次粒子が凝集すると同時に、空気を抱き込み、水相から分離することでPTFEファインパウダーが得られる(フッ素樹脂ハンドブック(里川孝臣編)参照。)。水性分散液から一次粒子の凝集体(ファインパウダー)を取り出すと、所謂凝析によって得られたPTFEファインパウダーの比表面積は大きく、フィブリル化特性を有する。一方で、TFEの懸濁重合によって得られた粉末を造粒した粉末は、その比表面積が小さく、フィブリル化特性が乏しい。このように、PTFEの一次粒子が分散した水性分散液を撹拌することにより凝析することと、懸濁重合により得られたPTFE粉末を造粒することとは、撹拌される対象物(原料)も、撹拌により得られるものも異なり、本質的に異なる工程である。
【0059】
工程(1)で準備した水性分散液を10〜20質量%のポリマー濃度になるように水で希釈してもよい。
【0060】
工程(1)において水性分散液を水性分散重合により準備する場合には、工程(1)と工程(2)とを連続して行ってもよい。
【0061】
工程(2)は、凝析剤を添加した後に、または凝析剤を添加したと同時に、撹拌を開始することにより凝析を開始する工程であることも好ましい。凝析剤は、無機酸、無機塩及び水溶性有機化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。無機酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、蓚酸等が挙げられ、無機塩としては、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。水溶性有機化合物としては、メタノール、アセトン、エタノール等が挙げられる。
【0062】
工程(2)において、必要に応じてpHを調整してもよい。工程(2)において、水性分散液の温度を0〜80℃に調整することが好ましく、水性分散液の比重を1.03〜1.20に調整することが好ましい。また、凝析前や凝析中に、着色のための顔料や導電性付与、機械的性質改善のための充填剤を添加することもできる。
【0063】
工程(2)は、工程(1)で準備した上記水性分散液を吐出流型撹拌翼で撹拌することにより、上記水性分散液中のポリテトラフルオロエチレンの凝析を開始する工程(2)であることも好ましい。撹拌回転数は限定されるものではないが、一般的には、50〜1000rpmで行うことができる。
【0064】
吐出流型撹拌翼は、軸流を形成することができ、凝析により撥水化したファインパウダーを容易に水中に巻き込むことができるため、ファインパウダーが壊れにくく、撹拌による槽壁での転動効果が得られやすい。そのため、得られたファインパウダーは圧縮されにくく、ファインパウダーの凝集物は解れやすい、また、形状分布が小さい粉末が得られるものと考えられる。
【0065】
吐出流型撹拌翼としては、例えば、円筒、又は、コーン(円錐の上部を切り取った形状)の内部に、シャフトの回転により流動を誘発させる部位が内包されている撹拌翼が挙げられる。撹拌により流動を誘発させる部位としては、パドル型、アンカー型、リボン型、プロペラ型等の既存の撹拌翼であってもよいし、例えば、円筒、又は、コーンに直接接続された平板であってもよい。上記流動を誘発させる部位、あるいは、平板が直接接続された円筒又はコーンを回転させることにより、円筒又はコーンが存在することで軸流が発生し、撹拌することができる。
また、吐出流型撹拌翼としては、上記に例示した既存の撹拌翼の周囲に案内板または案内円筒が挿入されたものも挙げられる。案内板の形状、枚数は特に限定されない。案内円筒は、円筒型または円錐の上部を切り取った形状(コーン型)が好ましい。上記撹拌翼を回転させることにより、案内板または案内円筒が存在することで軸流が発生し、撹拌することができる。
中でも、吐出流型撹拌翼としては、
図4に示すような、コーン型撹拌翼が好ましい。
【0066】
コーン型撹拌翼としては、上向き型のコーン型撹拌翼、下向き型のコーン型撹拌翼、正面合せ型のコーン型撹拌翼、ディスクソウを有するダブルコーン型撹拌翼等が挙げられる。
図4は、コーン型撹拌翼の一例を示す模式図である。(a)は、上向き型のコーン型撹拌翼、(b)は下向き型のコーン型撹拌翼、(c)は正面合せ型のコーン型撹拌翼、(d)はディスクソウを有するダブルコーン型撹拌翼である。
コーン型撹拌翼としては、下向き型がより好ましい。
【0067】
なお、工程(2)において、吐出流型撹拌翼で撹拌を行う場合、通常、工程(4)で凝析を終了させるまで、吐出流型撹拌翼で撹拌を行う。
【0068】
本発明の製造方法は、工程(2)の後に界面活性剤(B)を添加する工程(3)を含む。
【0069】
上記界面活性剤(B)としては、例えば含フッ素アニオン界面活性剤、含フッ素ノニオン界面活性剤、含フッ素カチオン界面活性剤、含フッ素ベタイン界面活性剤等の含フッ素界面活性剤、炭化水素系ノニオン界面活性剤、炭化水素系アニオン界面活性剤等の炭化水素系界面活性剤等を挙げることができる。
【0070】
含フッ素アニオン界面活性剤としては例えば一般式(1)で表される化合物を挙げることができ、具体的にはCF
3(CF
2)
6COONH
4、CF
3(CF
2)
7COONa、H(CF
2CF
2)
4COONH
4等を例示できる。
【0072】
〔式中R
1はF又はCF
3、R
2はH、F又はCF
3、nは4〜20の整数、mは0又は1〜6の整数、R
3はCOOM又はSO
3M(ここでMはH、NH
4、Na、K又はLi)をそれぞれ示す。〕
【0073】
含フッ素ノニオン界面活性剤としては、例えば一般式(2)で表される化合物を挙げることができる。
【0075】
〔式中R
1、R
2、n及びmは前記に同じ。kは0又は1、R
4はH、CH
3又はOCOCH
3、R
5は(OCH
2CH
2)
pOR
6(ここでpは0又は1〜50の整数、R
6はH、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜26の芳香族基)をそれぞれ示す。〕
【0076】
含フッ素カチオン界面活性剤としては、上記一般式(2)においてR
5が式(3)の基を示す化合物を例示できる。
【0078】
含フッ素ベタイン界面活性剤としては、上記一般式(2)においてR
5が式(4)の基を示す化合物を例示できる。
【0080】
炭化水素系ノニオン界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタンアルキレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノアルキレート等を挙げることができる。
【0081】
また炭化水素系アニオン界面活性剤としては、例えばアルキルカルボン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルホスホン酸塩、アルキルリン酸塩等を挙げることができる。
【0082】
界面活性剤(B)としては、少量添加で効果に寄与できるノニオン界面活性剤が好ましく、炭化水素系ノニオン界面活性剤がより好ましい。
炭化水素系ノニオン界面活性剤は、同濃度の含フッ素アニオン界面活性剤と比較して、得られるPTFEファインパウダーの性状改善効果が高い。また、含フッ素アニオン界面活性剤の中では、同濃度で比較すると、表面張力等で表される界面活性効果が高いものほど、ファインパウダーの性状改善効果が高い。
【0083】
界面活性剤(B)の使用量は、PTFE水性分散液中のポリマー固形分に対し1ppm〜10質量%が好ましい。界面活性剤(B)が少なすぎると取り扱い性に優れたPTFEファインパウダーを得ることができない場合があり、多すぎると界面活性剤(B)がファインパウダー中に残留しやすく着色する場合がある。界面活性剤(B)の使用量の下限は、50ppmであることがより好ましく、上限は10000ppmであることがより好ましい。
【0084】
工程(3)において、界面活性剤(B)は、PTFEの一次粒子が凝集することによりスラリーが形成された後に添加することが好ましい。ファインパウダー内部に界面活性剤が取り込まれると、界面活性剤の添加効果が乏しく、またファインパウダーや成形物品の着色の原因となりやすいが、このタイミングで界面活性剤(B)を添加すると、少量の界面活性剤で本発明の所望の効果を得ることができる。同様の理由で、界面活性剤(B)は、PTFEの湿潤性粉末が形成された後に添加することがより好ましい。また、水から分離及び撥水化する直後又は水から分離及び撥水化する直前に添加することが好ましく、水から分離及び撥水化する直前に添加することが特に好ましい。
【0085】
上記製造方法は、工程(3)の後に凝析を終了させる工程(4)を含む。凝析の終了は撹拌を停止することにより行うことができる。凝析の終了は、スラリーが残留していないこと、また水相が透視できる透明度になっていることが確認できた後に終了させることが好ましい。また、凝析の終了は、水から分離してから(撥水化後)30秒以上、好ましくは1分以上、より好ましくは3分間以上の撹拌を継続してから行うことが好ましい。
【0086】
また、凝析中のトルク変化、サウンドの変化を観察することにより、界面活性剤の添加のタイミング、凝析を終了させるタイミングを把握することが可能である。
【0087】
本発明の製造方法は、PTFEの湿潤粉末を回収する工程(5)を含む。ポリテトラフルオロエチレンの湿潤粉末の回収は、工程(4)で得られたPTFEの凝析粒子、水、及び、界面活性剤(B)の混合物から、PTFEの湿潤粉末をろ別することにより行うことができる。
【0088】
上記製造方法は、工程(4)により得られたPTFEの湿潤粉末を洗浄する工程を含むものであってもよい。洗浄は、上記湿潤粉末に水及び界面活性剤(B)を加え、PTFE粒子が撥水するまで撹拌を継続し、PTFEの湿潤粉末を回収することにより行うことができる。上記の撹拌を30〜90℃で行うと、さらに取り扱い性に優れるPTFEファインパウダーを得ることができる。上記撹拌の温度としては、30〜60℃がより好ましい。
【0089】
本発明の製造方法は、PTFEの湿潤粉末を乾燥させる工程(6)を含む。
【0090】
乾燥は、PTFEの湿潤粉末をあまり流動させない状態で、熱風などの加熱手段を用いて行うことが好ましく、減圧・真空と組み合わせてもよい。乾燥温度は、ポリマーの融点より低い温度であればよいが、通常100〜300℃の範囲が適している。また、乾燥温度は高い方が好ましく、180℃以上300℃未満がより好ましい。
【0091】
乾燥条件がペースト押出性能に影響を与える場合がある。ペースト押出圧力は、乾燥温度が高いほど高くなる傾向がある。また、粉末同士の摩擦、特に高温での摩擦は、ファインパウダーの性質に悪影響を与えやすい。これは、ファインパウダーが小さな剪断力でも簡単にフィブリル化して、元の粒子構造の状態を失い、ペースト押出性能の低下をもたらすためである。
【0092】
本発明の製造方法によれば、以下の物性を有するPTFEファインパウダーを製造することができる。
(1)SSG:2.160〜2.230、平均粒径:300〜800μm、見掛密度:0.40〜0.52g/ml、圧縮性比:1.20以下、振動時間50秒における凝集崩壊度が60%以上であるTFEホモポリマーからなるファインパウダー。PTFEファインパウダーの圧縮性比が1.15以下であることが好ましい。振動時間50秒における凝集崩壊度が70%以上であることが好ましい。
(2)SSG:2.130〜2.160、平均粒径:300〜800μm、見掛密度:0.40〜0.52g/ml、圧縮性比:1.20以下、振動時間50秒における凝集崩壊度:40%以上であるTFEホモポリマーからなるファインパウダー。PTFEファインパウダーの圧縮性比が1.15以下であることが好ましく、1.10以下であることがより好ましい。
(3)SSG:2.140〜2.230、RR(Reduction Ratio)1500/アイソパーG 20.5質量部での押出圧力が80MPa以下、平均粒径:300〜800μm、見掛密度:0.40〜0.52g/ml、圧縮性比:1.20以下、振動時間50秒における凝集崩壊度:70%以上、である変性PTFEからなるファインパウダー。PTFEファインパウダーの押出圧力は、70MPa以下であることが好ましい。圧縮性比が1.15以下であることが好ましい。振動時間50秒における凝集崩壊度が80%以上であることが好ましい。
(4)SSG:2.140〜2.230、RR(Reduction Ratio)1500/アイソパーG 20.5質量部での押出圧力が60MPa以下、平均粒径:300〜800μm、見掛密度:0.40〜0.52g/ml、圧縮性比:1.20以下、振動時間50秒における凝集崩壊度:70%以上である変性PTFEからなるファインパウダー。PTFEファインパウダーの圧縮性比が1.15以下であることが好ましい。振動時間50秒における凝集崩壊度が90%以上であることが好ましい。
本発明の製造方法により得られる(1)〜(4)のPTFEファインパウダーは、平均粒径が300〜800μmであることが好ましい。より好ましくは、400〜700μmである。
本発明の製造方法により得られる(1)〜(4)のPTFEファインパウダーは、見掛密度が0.40〜0.52g/mlであることが好ましく、より好ましくは0.45〜0.52g/mlである。
【0093】
標準比重(SSG)は、ASTM D 4895−89に準拠して測定した値である。
【0094】
上記見掛密度は、JIS K6892に準拠して測定した値である。
【0095】
上記平均粒径は、JIS K6891に準拠して測定した値である。
【0096】
圧縮性比は、下記(1)〜(6)に示す手順に従って、25℃の温度で測定した値である。
(1)SUS製円柱状カップ(内径:50mm(実測値:51.7mm),容量:150ml)の底面に円形(直径50mm)の薬包紙を敷き、さらにカップ内側面にも薬包紙を巻く。
(2)PTFEファインパウダーを10メッシュの篩で篩い、メッシュパス50gを計量した後、上記円柱状カップに入れる。
(3)円柱状カップに入れたPTFEファインパウダーの粉面を平滑に均し、粉面に円形(直径50mm)の薬包紙を乗せる。
(4)粉面に乗せた薬包紙上に錘(直径50mm円柱、重量330g)を乗せ、ホソカワミクロン社製パウダーテスターでタッピング操作を20回行う(タッピング高さ20mm)。
(5)タッピング後、上記円柱状カップからPTFEファインパウダーからなる円柱状ケーキを取り出し、その高さをノギスで測定する。
(6)ケーキの断面積と高さから、ケーキの見掛密度を計算し、下記式(A)により圧縮性比を求める。
(圧縮性比)=(ケーキの見掛密度)/(PTFEファインパウダーの見掛密度)(A)
なお、PTFEファインパウダーの見掛密度は、上述したように、JIS K6892に準拠して測定された値である。
【0097】
振動時間50秒における凝集崩壊度は、下記(1)〜(7)に示す方法により25℃の温度で測定した値である。
(1)SUS製円柱状カップ(内径:50mm(実測値:51.7mm),容量:150ml)の底面に円形(直径50mm)の薬包紙を敷き、さらにカップ内側面にも薬包紙を巻く。
(2)PTFEファインパウダーを10メッシュの篩で篩い、メッシュパス50gを計量した後、上記円柱状カップに入れる。
(3)円柱状カップに入れたPTFEファインパウダーの粉面を平滑に均し、粉面に円形(直径50mm)の薬包紙を乗せる。
(4)粉面に乗せた薬包紙上に錘(直径50mm円柱、重量330g)を乗せ、ホソカワミクロン社製パウダーテスターでタッピング操作を20回行う(タッピング高さ20mm)。
(5)タッピング後、上記円柱状カップからPTFEファインパウダーからなる円柱状ケーキを取り出す。
(6)取り出した円柱状ケーキを8メッシュの篩の上に載せ、ホソカワミクロン社製パウダーテスターで50秒間振動させる(振動メモリ4.5)。
(7)振動によって落下したPTFEファインパウダーの質量を測定し、凝集崩壊度を下記式(B)により求める。
(凝集崩壊度)=(振動により50秒間に篩を通過したPTFEファインパウダーの質量)/(PTFEファインパウダーの全質量)×100(質量%) (B)
【0098】
上記押出圧力は、下記手順に従って測定したものである。
PTFEファインパウダー100gと押出助剤である炭化水素油(商品名アイソパーG、エクソン化学株式会社製)20.5gとをガラス瓶中で混合し、室温(25±2℃)で1時間熟成する。次に、シリンダー(内径25.4mm)付きの押出ダイ(絞り角30°で、下端にオリフィス(オリフィス直径:0.65mm、オリフィス長:2mm)を有する。また、RR=1500である。)に上記混合物を充填し、シリンダーに挿入したピストンに1.2MPaの負荷を加えて1分間保持する。その後、直ちに室温においてラム速度20mm/分で上記混合物をオリフィスから押出し、ロッド状物を得る。押出後半において、圧力が平衡状態になる部分の圧力をシリンダー断面積で除した値を押出圧力とする。
【実施例】
【0099】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0100】
なお、実施例における各データは、下記測定方法で得られたものである。
【0101】
1.二次粒子(ファインパウダー)の平均粒子径
JIS K6891に準拠して測定した。
【0102】
2.見掛密度
JIS K6892に準拠して測定した。
【0103】
3.標準比重(SSG)
ASTM D 4895−89に準拠して測定した。
【0104】
4.圧縮性比
圧縮性比の測定には、ホソカワミクロン社製パウダーテスターを使用した。圧縮性比の測定は、25℃にて行った。圧縮性比の測定の概要を
図1〜3に示す。SUS製円柱状カップ2(内径:50mm(実測値:51.7mm),容量:150ml)の底面に円形(直径50mm)の薬包紙を敷き、さらにカップ内側面にも薬包紙を巻いた。PTFEファインパウダー1を10メッシュの篩で篩い、メッシュパス50gを計量した後、
図1に示すように、円柱状カップ2に入れた。粉面を平滑に均し、粉面にも円形(直径50mm)の薬包紙を乗せた。
図2に示すように、錘3(直径50mm円柱,重量330g)を乗せ、パウダーテスターでタッピング操作を20回行った(タッピング高さ20mm)。タッピング後、
図3に示すように、円柱状カップ2からPTFEファインパウダーからなる円柱状ケーキ4を取り出し、その高さをノギスで測定した。ケーキの断面積と高さから、ケーキの見掛密度を計算した。また、圧縮性比を次式により求めた。
(圧縮性比)=(ケーキの見掛密度)/(ファインパウダーの見掛密度)
圧縮性比は、1に近いほうが好ましく、1に近いほどファインパウダーが凝集しにくく、取り扱い性に優れることを示す。
【0105】
5.凝集崩壊度
凝集崩壊度の測定は、25℃にて行った。予め、振動メモリ5.5で振幅が1mmになるように振動強さを調整した。
図3に示すように、円柱状ケーキ4を8メッシュの篩5の上に載せ、ホソカワミクロン社製パウダーテスターで振動させ(振動メモリ4.5)、5秒毎に振動によって落下したPTFEファインパウダー1の質量を測定し、凝集崩壊度を次式により求めた。
(凝集崩壊度)=(振動により篩を通過したPTFEファインパウダーの質量)/(PTFEファインパウダーの全質量)×100(質量%)
凝集崩壊度は、値が大きいほうが好ましく、値が大きいほどほぐれやすく、取り扱い性に優れることを示す。
【0106】
6.ペースト押出圧力
PTFEファインパウダー50gと押出助剤である炭化水素油(商品名アイソパーG、エクソン化学株式会社製)10.25gとをガラス瓶中で混合し、室温(25±2℃)で1時間熟成する。次に、シリンダー(内径25.4mm)付きの押出ダイ(絞り角30°で、下端にオリフィス(オリフィス直径:0.65mm、オリフィス長:2mm)を有する。また、RR=1500である。)に上記混合物を充填し、シリンダーに挿入したピストンに1.2MPaの負荷を加えて1分間保持する。その後、直ちに室温においてラム速度20mm/分で上記混合物をオリフィスから押出し、ロッド状物を得る。押出後半において、圧力が平衡状態になる部分の圧力をシリンダー断面積で除した値を押出圧力とする。
【0107】
重合例1
ステンレス鋼(SUS316)製アンカー型攪拌翼と温度調節用ジャケットを備え、内容量が6リットルのステンレス鋼(SUS316)製オートクレーブに、脱イオン水3460g、パラフィンワックス100g及びパーフルオロオクタン酸アンモニウム5.25gを仕込み、85℃に加温しながら窒素ガスで3回、TFEガスで2回、系内を置換して酸素を除いた。その後、TFEガスで内圧を0.70MPaにし、250rpmで攪拌し、内温を85℃に保った。
重合槽内の温度が安定した後、脱イオン水20gに過硫酸アンモニウム15mgを溶かした水溶液、及び脱イオン水20gにジコハク酸パーオキサイド260mgを溶かした水溶液をTFEで圧入し、オートクレーブ内圧を0.80MPaにした。反応は、加速的に進行したが、反応温度は85℃、攪拌は250rpmを保った。また、オートクレーブ内圧を常に0.80MPaに保つようにTFEを連続的に供給した。
TFEの消費量が1130gになった時点で攪拌及びTFEの供給を停止し、直ちにオートクレーブ内のガスを常圧まで放出し反応を終了した。
得られたPTFE水性分散液の固形分濃度は24.3質量%であった。また、平均一次粒子径は0.32μm、標準比重(SSG)は2.177であった。
【0108】
実施例1
重合例1で得られたPTFE水性分散液に脱イオン水を加え、比重を1.080g/ml(25℃)に調整した。アンカー型撹拌翼と邪魔板を備えた内容量が17Lのステンレス鋼製凝析槽に、比重調整したPTFE水性分散液8.0Lを加え、液温が22℃になるように温度調節した。調節後直ちに硝酸(60%)6mlを添加すると同時に撹拌速度400rpmで撹拌を開始した。撹拌開始後、水性分散液がスラリー状態を経て、湿潤粉末が形成され、湿潤粉末が水から分離する直前に、非イオン性界面活性剤 K204(日油株式会社製)1%水溶液57gを凝析槽内に添加し、1分間撹拌を継続した。
続いて、湿潤状態のポリマー粉末を濾別し、ポリマー粉末と脱イオン水7.0Lを凝析槽内に仕込み、25℃に調整して、撹拌速度400rpmでポリマー粉末を洗浄する操作を2回繰り返した。洗浄の後、湿潤状態のポリマー粉末を濾別し、155℃の熱風循環式乾燥機内に18時間静置して乾燥させ、PTFEファインパウダーを得た。
得られたPTFEファインパウダーの平均粒子径、見掛密度、圧縮性比、凝集崩壊度を測定した。結果を表1に示す。
【0109】
実施例2〜7
界面活性剤及びその添加量を表1に示すものに変更した他は実施例1と同様にしてPTFEファインパウダーを得た。結果を表1に示す。
【0110】
実施例8〜10
下向き型のコーン型撹拌翼と邪魔板を備えた内容量が17Lのステンレス鋼製凝析槽を使用したこと、洗浄する操作を表2に示すものに変更した他は実施例1と同様にしてPTFEファインパウダーを得た。結果を表2に示す。
【0111】
比較例1
界面活性剤を添加せずに凝析したこと以外は実施例1と同様にしてPTFEファインパウダーを得た。結果を表2に示す。
【0112】
重合例2
国際公開第2007/119829号パンフレットの実施例5に準拠し、重合反応を行い、PTFE水性分散液を得た。
【0113】
得られたPTFE水性分散液の固形分濃度は31.4質量%であった。また、平均一次粒子径は0.36μm、標準比重(SSG)は2.160であった。
【0114】
比較例2
重合例1で得られたPTFE水性分散液の代わりに、重合例2で得られたPTFE水性分散液を用いたこと、凝析時の温度を21℃、乾燥の温度を210℃としたこと以外は、比較例1と同じ方法でPTFEファインパウダーを得た。得られたPTFEファインパウダーの平均粒子径、見掛密度、圧縮性比、凝集崩壊度を測定した。結果を表2に示す。
【0115】
実施例11
重合例1で得られたPTFE水性分散液の代わりに、重合例2で得られたPTFE水性分散液を用いたこと、凝析時の温度を21℃、乾燥の温度を210℃としたこと以外は、実施例8と同じ方法でPTFEファインパウダーを得た。得られたPTFEファインパウダーの平均粒子径、見掛密度、圧縮性比、凝集崩壊度を測定した。結果を表2に示す。
【0116】
重合例3
ステンレス鋼(SUS316)製アンカー型攪拌翼と温度調節用ジャケットを備え、内容量が6リットルのステンレス鋼(SUS316)製オートクレーブに、脱イオン水3600g、パラフィンワックス180g及び(CF
3CF
2−O−CF
2CF
2O−CF
2COONH
4)5.4g、コハク酸0.108g、シュウ酸0.0252gを仕込み、70℃に加温しながら窒素ガスで3回、TFEガスで2回、系内を置換して酸素を除いた。その後、TFEガスで内圧を2.70MPaにし、撹拌しながら内温を70℃に保った。
内容物を攪拌しながら、過マンガン酸カリウム3.5mgを溶解した脱イオン水を一定速度で連続的に添加し、重合槽内の圧力が2.7MPaに一定になるよう、TFEを連続的に供給した。TFE消費量が184gの時点で、(CF
3CF
2−O−CF
2CF
2O−CF
2COONH
4)3.8gを添加、TFEの消費量が900gになった時点で、上記過マンガン酸カリウム3.5mgを溶解した脱イオン水全量を添加した。TFEの消費量が1543gになった時点で、攪拌及びTFEの供給を停止し、直ちにオートクレーブ内のガスを常圧まで放出し反応を終了した。
得られたPTFE水性分散液の固形分濃度は30.6質量%であった。また、平均一次粒子径は0.32μm、標準比重(SSG)は2.153であった。
【0117】
実施例12
重合例1で得られたPTFE水性分散液の代わりに、重合例3で得られたPTFE水性分散液を用いたこと、凝析時の温度を23℃としたこと以外は、実施例11と同じ方法でPTFEファインパウダーを得た。得られたPTFEファインパウダーの平均粒子径、見掛密度、圧縮性比、凝集崩壊度を測定した。結果を表2に示す。
【0118】
重合例4
ステンレス鋼(SUS316)製アンカー型攪拌翼と温度調節用ジャケットを備え、内容量が6リットルのステンレス鋼(SUS316)製オートクレーブに、脱イオン水3600g、パラフィンワックス180g及び(CF
3−O−CF(CF
3)CF
2O−CHFCF
2COONH
4)5.4g、コハク酸0.108g、シュウ酸0.0252gを仕込み、70℃に加温しながら窒素ガスで3回、TFEガスで2回、系内を置換して酸素を除いた。その後、TFEガスで内圧を2.70MPaにし、撹拌しながら内温を70℃に保った。
内容物を攪拌しながら、過マンガン酸カリウム3.5mgを溶解した脱イオン水を一定速度で連続的に添加し、重合槽内の圧力が2.7MPaに一定になるよう、TFEを連続的に供給した。TFE消費量が184gの時点で、(CF
3−O−CF(CF
3)CF
2O−CHFCF
2COONH
4)3.8gを添加、TFEの消費量が900gになった時点で、上記過マンガン酸カリウム3.5mgを溶解した脱イオン水全量を添加した。TFEの消費量が1543gになった時点で、攪拌及びTFEの供給を停止し、直ちにオートクレーブ内のガスを常圧まで放出し反応を終了した。
得られたPTFE水性分散液の固形分濃度は30.4質量%であった。また、平均一次粒子径は0.39μm、標準比重(SSG)は2.154であった。
【0119】
実施例13
重合例3で得られたPTFE水性分散液の代わりに、重合例4で得られたPTFE水性分散液を用いたこと以外は、実施例12と同じ方法でPTFEファインパウダーを得た。得られたPTFEファインパウダーの平均粒子径、見掛密度、圧縮性比、凝集崩壊度を測定した。結果を表3に示す。
【0120】
重合例5
ステンレス鋼(SUS316)製アンカー型攪拌翼と温度調節用ジャケットを備え、内容量が6リットルのステンレス鋼(SUS316)製オートクレーブに、脱イオン水3600g、パラフィンワックス180g及び(CF
3−O−CF(CF
3)CF
2O−CF(CF
3)COONH
4)5.4g、コハク酸0.108g、シュウ酸0.0252gを仕込み、70℃に加温しながら窒素ガスで3回、TFEガスで2回、系内を置換して酸素を除いた。その後、TFEガスで内圧を2.70MPaにし、撹拌しながら内温を70℃に保った。
内容物を攪拌しながら、過マンガン酸カリウム3.5mgを溶解した脱イオン水を一定速度で連続的に添加し、重合槽内の圧力が2.7MPaに一定になるよう、TFEを連続的に供給した。TFEの消費量が900gになった時点で、上記過マンガン酸カリウム3.5mgを溶解した脱イオン水全量を添加した。TFEの消費量が1500gになった時点で、攪拌及びTFEの供給を停止し、直ちにオートクレーブ内のガスを常圧まで放出し反応を終了した。
得られたPTFE水性分散液の固形分濃度は29.5質量%であった。また、平均一次粒子径は0.38μm、標準比重(SSG)は2.149であった。
【0121】
実施例14
重合例3で得られたPTFE水性分散液の代わりに、重合例5で得られたPTFE水性分散液を用いたこと以外は、実施例12と同じ方法でPTFEファインパウダーを得た。得られたPTFEファインパウダーの平均粒子径、見掛密度、圧縮性比、凝集崩壊度を測定した。結果を表3に示す。
【0122】
重合例6
ステンレス鋼(SUS316)製アンカー型攪拌翼と温度調節用ジャケットを備え、内容量が6リットルのステンレス鋼(SUS316)製オートクレーブに、脱イオン水2960g、パラフィンワックス120g及びパーフルオロオクタン酸アンモニウム4.4gを仕込み、85℃に加温しながら窒素ガスで3回、TFEガスで2回、系内を置換して酸素を除いた。その後、TFEガスで内圧を0.70MPaにし、さらにクロロトリフルオロエチレン(CTFE)0.26gを導入し、280rpmで攪拌し、内温を85℃に保った。
重合槽内の温度が安定した後、脱イオン水20gに過硫酸アンモニウム12.3mgを溶かした水溶液、及び脱イオン水20gにジコハク酸パーオキサイド180mgを溶かした水溶液をTFEで圧入し、オートクレーブ内圧を0.78MPaにした。反応は、加速的に進行したが、反応温度は85℃、攪拌は280rpmを保った。また、オートクレーブ内圧を常に0.78MPaに保つようにTFEを連続的に供給した。
TFEの消費量が1300gになった時点で、3.5gのCTFEの液を小さな仕込みタンクからTFEで加圧しながらオートクレーブ内に圧入し、そのまま、TFEを供給して反応を継続した。
TFEの消費量が1430gになった時点で攪拌及びTFEの供給を停止し、直ちにオートクレーブ内のガスを常圧まで放出し反応を終了した。
得られたPTFE水性分散液の固形分濃度は32.2質量%であった。また、平均一次粒子径は0.24μm、標準比重(SSG)は2.177、ポリマー中のCTFE変性量は0.23重量%であった。
【0123】
比較例3
重合例1で得られたPTFE水性分散液の代わりに、重合例6で得られたPTFE水性分散液を用いたこと、凝析時の温度を30℃としたこと、硝酸を添加しなかったこと以外は、比較例1と同じ方法でPTFEファインパウダーを得た。得られたPTFEファインパウダーの平均粒子径、見掛密度、圧縮性比、凝集崩壊度を測定した。結果を表3に示す。
【0124】
実施例15
重合例1で得られたPTFE水性分散液の代わりに、重合例6で得られたPTFE水性分散液を用いたこと、凝析時の温度を30℃としたこと、硝酸を添加しなかったこと、界面活性剤の種類、及び添加量を表3のように変更したこと以外は、実施例1と同じ方法でPTFEファインパウダーを得た。得られたPTFEファインパウダーの平均粒子径、見掛密度、圧縮性比、凝集崩壊度を測定した。結果を表3に示す。
【0125】
実施例16
下向き型のコーン型撹拌翼と邪魔板を備えた内容量が17Lのステンレス鋼製凝析槽を使用したこと、洗浄する操作を表3に示すものに変更した他は、実施例15と同様にしてPTFEファインパウダーを得た。結果を表3に示す。
【0126】
実施例17
洗浄時の温度を40℃に変更したこと以外は、実施例16と同じ方法でPTFEファインパウダーを得た。得られたPTFEファインパウダーの平均粒子径、見掛密度、圧縮性比、凝集崩壊度を測定した。結果を表3に示す。
【0127】
実施例18〜21
界面活性剤及びその添加量を表4に示すものに変更した他は実施例16と同様にしてPTFEファインパウダーを得た。得られたPTFEファインパウダーの平均粒子径、見掛密度、圧縮性比、凝集崩壊度を測定した。結果を表4に示す。
【0128】
【表1】
【0129】
【表2】
【0130】
【表3】
【0131】
【表4】
【0132】
なお、表1〜4中に記載の界面活性剤の詳細は以下の通りである。
K204(日油株式会社製)
ノイゲンTDS−80C(第一工業製薬株式会社製)
プロノン104(日油株式会社製)
ラオールXA−60−50(ライオン株式会社製)