特許第5839214号(P5839214)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5839214
(24)【登録日】2015年11月20日
(45)【発行日】2016年1月6日
(54)【発明の名称】刈込機
(51)【国際特許分類】
   A01G 3/04 20060101AFI20151210BHJP
   A01D 34/13 20060101ALI20151210BHJP
【FI】
   A01G3/04 501H
   A01G3/04 501J
   A01D34/13 C
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2010-128827(P2010-128827)
(22)【出願日】2010年6月4日
(65)【公開番号】特開2011-250772(P2011-250772A)
(43)【公開日】2011年12月15日
【審査請求日】2013年4月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】日立工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094983
【弁理士】
【氏名又は名称】北澤 一浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095946
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 伸
(74)【代理人】
【識別番号】100099829
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 朗子
(74)【代理人】
【識別番号】100135356
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】小野瀬 美代次
(72)【発明者】
【氏名】能登 恵子
(72)【発明者】
【氏名】佐川 幸治
(72)【発明者】
【氏名】根内 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友一
【審査官】 居島 一仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−317182(JP,A)
【文献】 特開昭61−247490(JP,A)
【文献】 特開2005−341885(JP,A)
【文献】 実公平01−017249(JP,Y2)
【文献】 欧州特許出願公開第01969919(EP,A1)
【文献】 特開昭57−102111(JP,A)
【文献】 米国特許第7603781(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0066325(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 3/00−3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
該ハウジング内に収容されているモータと、
該モータの回転運動を往復運動に変換する回転運動伝達機構と、
該ハウジングから延出し、少なくとも一方が該回転運動伝達機構を介して該モータにより往復駆動される一対の上刃及び下刃と、
該モータが運転状態から停止状態に入るときは、該上刃及び下刃を所定の位置関係で停止させる制御手段と、を有し、
該上刃及び下刃には往復駆動方向に沿って複数の切刃が形成され、
該上刃の該複数の切刃は、第1上刃を備え、
該下刃の該複数の切刃は、第1下刃と、該第1下刃と隣接する第2下刃と、を備え、
該モータが運転状態にあるときには、該第1上刃と該第1下刃とが重なる状態と、該第1上刃と該第2下刃とが重なる状態と、を繰り返し、
該上刃及び下刃の所定の位置関係は、該第1上刃が該第1下刃と該第2下刃の間に位置し、該第1上刃の全長の半分より先端側に該第1下刃及び該第2下刃が重ならない状態であることを特徴とする刈込機。
【請求項2】
該モータの電流値を検出するモータ電流検出器を有し、
該制御手段は、該モータ及び該モータ電流検出器に接続され、該モータが運転状態から停止状態に入るときは、該モータ電流検出器の検出した電流が所定値以下となった時の該モータの回転位置で該モータを停止させることを特徴とする請求項1に記載の刈込機。
【請求項3】
該制御手段に記憶される該上刃及び下刃の所定の位置関係を補正可能な補正手段を有することを特徴とする請求項2に記載の刈込機。
【請求項4】
該モータへの電力の供給及び遮断を選択的に切替えるトリガをさらに有し、該モータが無負荷状態で該トリガを所定時間引いた際、該制御手段は該モータの電流値の下限電流値を記憶し、該モータが運転状態から停止状態に入るときは、該下限電流値の位置で該モータを停止させることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の刈込機。
【請求項5】
該制御手段と接続され点灯と消灯とを選択的に切替可能な報知手段をさらに有し、該制御手段が該モータの電流値の該下限電流値を記憶した時、該報知手段が点灯することを特徴とする請求項4に記載の刈込機。
【請求項6】
該モータ電流検出器が検出した電流値が設定値を超えたとき、該制御手段は該モータの回転を停止させることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の刈込機。
【請求項7】
該回転運動伝達機構を微動させる微動手段を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の刈込機。
【請求項8】
該ハウジングから一端部が突出するとともに他端部が該回転運動伝達機構と係合可能かつ該一端部の操作により該回転運動伝達機構を動作可能とする微調整機構とを有することを特徴とする請求項7に記載の刈込機。
【請求項9】
該モータはブラシレスモータであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の刈込機。
【請求項10】
ハウジングと、
該ハウジング内に収容されているモータと、
該モータの回転運動を往復運動に変換する回転運動伝達機構と、
該ハウジングから延出し、少なくとも一方が該回転運動伝達機構を介して該モータにより往復駆動される一対の上刃及び下刃と、
該モータが運転状態から停止状態に入るときは、該上刃及び下刃を所定の位置関係で停止させる制御手段と、
該モータの電流値を検出するモータ電流検出器と、を有し、
該制御手段は、該モータ及び該モータ電流検出器に接続され、該モータが運転状態から停止状態に入るときは、該モータ電流検出器の検出した電流が所定値以下となった時の該モータの回転位置で該モータを停止させることを特徴とする刈込機。
【請求項11】
ハウジングと、
該ハウジング内に収容されているモータと、
該モータの回転運動を往復運動に変換する回転運動伝達機構と、
該ハウジングから延出し、少なくとも一方が該回転運動伝達機構を介して該モータにより往復駆動される一対の上刃及び下刃と、
該モータが運転状態から停止状態に入るときは、該上刃及び下刃を所定の位置関係で停止させる制御手段と、
該回転運動伝達機構を微動させる微動手段と、を有し、
該下刃は、第1下刃と、該第1下刃と隣接する第2下刃と、を備え、
該モータが運転状態にあるときには、該上刃と該第1下刃とが重なる状態と、該上刃と該第2下刃とが重なる状態と、を繰り返し、
該上刃及び該下刃の所定の位置関係は、該上刃が該第1下刃と該第2下刃との間に位置し、該上刃の全長の半分より先端側に該第1下刃及び該第2下刃が重ならない状態であることを特徴とする刈込機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈込機に関し特に樹木の剪定や刈込をする刈込機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の刈込機301は、図12に示すようにハウジング302と、上刃341と下刃342とから成るブレード304と、回転運動伝達機構305と、モータ306と、トリガ334と、電池333とから構成される。トリガ334を引くことにより電池333からモータ306に電力が供給されてその回転力が回転運動伝達機構305に伝達しブレード304を往復運動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−282557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の刈込機301ではブレード304が往復運動している途中でトリガ334を離すと、そのタイミングによっては上刃341と下刃342とが重なった状態で停止してしまうことがあった。この状態では上刃341と下刃342の刃の裏面が互いに接しているため、上刃及び下刃の裏面に付着した樹液やヤニなどの汚れを除去することができない。上刃341及び下刃342の裏面を露出させるためには、再度トリガ334を引いて上刃341及び下刃342の位置を微調整する必要があった。しかし、再度トリガ334を僅かに動作させたとしても刃の移動速度が速いため上刃341及び下刃342の位置を微調整することは難しく、またモータ306の慣性などの影響で再び上刃341と下刃342とが重なってしまい思った通りの位置で上刃341と下刃342とを停止させることができなかった。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑み、モータ停止時に上刃と下刃とが重なることを防止するとともに上刃と下刃との位置関係を微調整することができる刈込機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の刈込機はハウジングと、該ハウジング内に収容されているモータと、該モータの回転運動を往復運動に変換する回転運動伝達機構と、該ハウジングから延出し、少なくとも一方が該回転運動伝達機構を介して該モータにより往復駆動される一対の上刃及び下刃と、該モータが運転状態から停止状態に入るときは、該上刃及び下刃を所定の位置関係で停止させる制御手段と、を有し、該上刃及び下刃には往復駆動方向に沿って複数の切刃が形成され、該上刃及び下刃には往復駆動方向に沿って複数の切刃が形成され、該上刃の該複数の切刃は、第1上刃を備え、該下刃の該複数の切刃は、第1下刃と、該第1下刃と隣接する第2下刃と、を備え、該モータが運転状態にあるときには、該第1上刃と該第1下刃とが重なる状態と、該第1上刃と該第2下刃とが重なる状態と、を繰り返し、該上刃及び下刃の所定の位置関係は、該第1上刃が該第1下刃と該第2下刃の間に位置し、該第1上刃の全長の半分より先端側に該第1下刃及び該第2下刃が重ならない状態であることを特徴としている。
【0007】
また、該上刃及び下刃の所定の位置関係は、該上刃の刃丈の全長の半分より先端側に該下刃が重らない状態であることが好ましい。
【0008】
また、該モータの電流値を検出するモータ電流検出器を有し、該制御手段は、該モータ及び該モータ電流検出器に接続され、該モータが運転状態から停止状態に入るときは、該モータ電流検出器の検出した電流が所定値以下となった時の該モータの回転位置で該モータを停止させることが好ましい。
【0009】
このような構成によると、モータの電流値が所定値以下の位置でモータが停止するため、上刃と下刃との間の抵抗が少ない位置においてモータが停止することになる。抵抗が少ない位置とは上刃と下刃との重なりが少ない位置であって、この位置では上刃の裏面と下刃の裏面とが互いに露出した状態となる。これにより、上刃及び下刃の裏面の清掃を容易に行うことができる。また、上刃と下刃とが互いに重ならない状態で停止するため、停止時に上刃と下刃との間に異物が噛み込むことを防止することができる。
【0010】
また、該制御手段に記憶される該上刃及び下刃の所定の位置関係を補正可能な補正手段を有することが好ましい。
【0011】
また、刈込機は該モータへの電力の供給及び遮断を選択的に切替えるトリガをさらに有し、該モータが無負荷状態で該トリガを所定時間引いた際、該制御手段は該モータの電流値の下限電流値を記憶し、該モータが運転状態から停止状態に入るときは、該下限電流値の時のモータの回転位置で該モータを停止させることが好ましい。
【0012】
このような構成によると、電源投入時にトリガを所定時間被引くことで自動的にモータの電流値が所定値の時のモータの回転位置を記憶する。これにより、たとえ刈込機の分解・修理等を行ってモータの位置と上刃及び下刃の位置関係がずれたとしても、上刃と下刃とが互いに重ならない位置を再度把握するとともに、その位置でモータを停止させることができる。これにより、上刃及び下刃の裏面の清掃を容易に行うことができる。
【0013】
また、刈込機は該制御手段と接続され点灯と消灯とを選択的に切替可能な報知手段をさらに有し、該制御手段が該モータの電流値の該下限電流値を記憶した時、該報知手段が点灯することが好ましい。
【0014】
このような構成によると、制御手段が所定値を記憶したとき、報知手段が点灯する。これにより、作業者は、モータの回転位置が新たに設定されて、モータの位置と上刃及び下刃の位置関係のずれが解消され、上刃と下刃が互いに重ならない位置で停止することを確認することができる。
【0015】
また、該モータはブラシレスモータであることが好ましい。
【0016】
このような構成によると、モータにブラシレスモータを用いることにより、モータの高寿命化を図ることができる。また、逆転や正転において細かい位置調整が容易となる。
【0017】
また、該モータ電流検出器が検出した電流値が設定値を超えたとき、該制御手段は該モータの回転を停止させることが好ましい。
【0018】
このような構成によると、過電流によるモータの焼損を防止することができる。
【0019】
また、回転運動伝達機構を微動させる微動手段を有することが好ましい。
【0020】
また、該ハウジングから一端部が突出するとともに他端部が該回転運動伝達機構と係合可能かつ該一端部の操作により該回転運動伝達機構を動作可能とする微調整機構を有することが好ましい。本発明の別の観点によると、刈込機は、ハウジングと、該ハウジング内に収容されているモータと、該モータの回転運動を往復運動に変換する回転運動伝達機構と、該ハウジングから延出し、少なくとも一方が該回転運動伝達機構を介して該モータにより往復駆動される一対の上刃及び下刃と、該モータが運転状態から停止状態に入るときは、該上刃及び下刃を所定の位置関係で停止させる制御手段と、該モータの電流値を検出するモータ電流検出器と、を有し、該制御手段は、該モータ及び該モータ電流検出器に接続され、該モータが運転状態から停止状態に入るときは、該モータ電流検出器の検出した電流が所定値以下となった時の該モータの回転位置で該モータを停止させることを特徴とする。また、本発明の別の観点によると、刈込機は、ハウジングと、該ハウジング内に収容されているモータと、該モータの回転運動を往復運動に変換する回転運動伝達機構と、該ハウジングから延出し、少なくとも一方が該回転運動伝達機構を介して該モータにより往復駆動される一対の上刃及び下刃と、該モータが運転状態から停止状態に入るときは、該上刃及び下刃を所定の位置関係で停止させる制御手段と、該回転運動伝達機構を微動させる微動手段と、を有し、該下刃は、第1下刃と、該第1下刃と隣接する第2下刃と、を備え、該モータが運転状態にあるときには、該上刃と該第1下刃とが重なる状態と、該上刃と該第2下刃とが重なる状態と、を繰り返し、該上刃及び該下刃の所定の位置関係は、該上刃が該第1下刃と該第2下刃との間に位置し、該上刃の全長の半分より先端側に該第1下刃及び該第2下刃が重ならない状態であることを特徴としている
【0021】
このような構成によると、微調整機構の他端部は他の部材を介すことなく直接回転運動伝達機構の歯車と係合しているため、部品点数を減らすとともに製造コストを削減することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の刈込機によれば、上刃と下刃とが重なることを防止するとともに上刃と下刃との位置関係を微調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る刈込機を示す側面断面図。
図2】本発明の第1の実施の形態に係るモータと、制御基板と、回転運動伝達機構とブレードの関係を示す斜視図。
図3】本発明の第1の実施の形態に係る上刃と下刃が重なった状態を示す斜視図。
図4】本発明の第1の実施の形態に係るブレードの動作状態を示す図。
図5】本発明の第1の実施の形態に係る微調整機構の動作状態を示す図。
図6】本発明の第1の実施の形態に係る微調整機構の動作状態を上方から見た図。
図7】本発明の第1の実施の形態に係る制御回路の構成を示す構成図。
図8】本発明の第1の実施の形態に係る無負荷状態での電流センサの電流値を模式的に示すグラフ。
図9】本発明の第1の実施の形態に係る動作を示すフローチャート。
図10】本発明の第2の実施の形態に係る刈込機を示す側面断面図。
図11】本発明の第2の実施の形態に係る動作を示すフローチャート。
図12】従来の刈込機を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の刈込機の第1の実施の形態を図1から図9を参照して説明する。図1に示す刈込機1はハウジング2と、ブレード4と、回転運動伝達機構5と、モータ6とにより構成される。回転運動伝達機構5からモータ6に向かう方向を上方向とし、逆を下方向として定義する。また、ブレード4がハウジング2から延出している方向を右方向とし、逆を左方向として定義する。
【0025】
ハウジング2は回転運動伝達機構5及びモータ6が収容されている本体部21と、本体部21上部から左方向に延出しているハンドル部3とにより構成される。後述の第2ハンドル部32が延出している基部にスライド溝2aが形成されている。スライド溝2aからは、後述の微調整機構56の一部が突出している。図6(b)に示すように、スライド溝2aは後述第1ギヤ51の中心から見たスライド溝2aの位置の接線方向を長軸とする略長方形状である。
【0026】
モータ6は出力軸6Aを有し、出力軸6Aが下方に延出するように本体部21内に配置されている。出力軸6Aには出力ギヤ61が同軸的に固定されている。
【0027】
回転運動伝達機構5は第1ギヤ51と、第1回転軸52と、第2ギヤ53と、偏芯カム54と、第2回転軸55と、を有する。図1及び図2に示すように第1ギヤ51は、出力ギヤ61と噛合している第1歯面51Aと、第1歯面51Aよりも小径で第1歯面51Aの下側に形成される第2歯面51Bと、第1歯面51Aの上面の周縁部に複数形成され微調整機構56と係合可能であって上方に突出する複数の突起51Cとを有する(図2)。第1ギヤ51は、その軸芯に挿入孔51aが形成され、挿入孔51aには第1回転軸52が挿通されている。
【0028】
第1回転軸52はハウジング2に回転可能に支承されている。第2ギヤ53は、第2歯面51Bと噛合するとともに、その軸芯に挿入孔53aが形成され、挿入孔53aには第2回転軸55が挿通されている。第2回転軸55はハウジング2に回転可能に支承されている。第2ギヤ53の下面には、後述の係合突起54Cが挿入される図示せぬ孔が形成されている。
【0029】
偏芯カム54は図2に示すように第2ギヤ53の図示せぬ孔に挿入される2本の係合突起54Cと、軸方向上部に形成された第1偏芯カム54Aと、第1偏芯カム54Aの下部に第1偏芯カム54Aよりも小径であって第1偏芯カム54Aの中心とは異なる位置に中心が存在する第2偏芯カム54Bとを有する。係合突起54Cは第2ギヤ53の上面から上方に2本突出しており、第2ギヤ53の下面に形成された図示せぬ孔との係合により、第2ギヤ53と偏芯カム54とは同一に回転する。
【0030】
図5及び図6に示すように、ハウジング2に形成されたスライド溝2aからその一部が突出するように微調整機構56が設けられており、微調整機構56の上部にはつまみ部56Aが設けられ、下部に突起51Cと係合可能な係合孔56aが形成されている。微調整機構56はバネ56Bによって係合孔56aに対して上方に付勢されており、図5に示すように微調整機構56の動きはスライド溝2aによって規制されている。つまみ部56Aを押下することで、微調整機構56がバネ56Bの付勢力に抗して下方に移動し、図5(b)に示すように係合孔56aと第1ギヤ51上の突起51Cとが係合する。この状態で図5(c)に示すスライド溝2aの端部まで微調整機構56をスライドさせると第1ギヤ51が円周方向に微量動作し、後述の上刃41及び下刃42が微量動作する。ここでいう微量とは、後述の上刃41と下刃42とが図4(a)に示す状態から図4(b)に示す状態になるまでの動作量をいう。
【0031】
図3に示すようにブレード4は略扇形形状の円周部に複数の鋸状の刃を有し外部に露出する表面とその裏側の裏面とから構成される上刃41と、上刃41と裏面が摺接するように位置し上刃41と略同一形状の下刃42とから構成される。鋸状の刃の先端部からその基部に亘って刃が形成されており、その長さを刃丈とする。上刃41と下刃42の刃丈は略同一である。上刃41と下刃42とは、係止部材43によってその係止部材43の位置を中心に互いに回動可能に係止されている。上刃41には孔41aが形成されていて、第1偏芯カム54Aが回転可能に挿入される。同様に下刃42にも孔42aが形成されていて、第2偏芯カム54Bが回転可能に挿入される。図4(a)〜(c)に示すように、偏芯カム54が孔41a及び42a内に挿入された状態で回転することにより、上刃41を下刃42とは反対方向に摺動させ、下刃42を上刃41の裏面上を上刃41とは反対方向に摺動させる。具体的には、図4の(a)の位置(上刃41と下刃42の大部分が重なった位置)から偏芯カム54が回転することによって図4(b)の位置(上刃41と下刃42の裏面が完全に露出した位置)に移動する。さらに、偏芯カム54が回転することによって図4(c)の位置(上刃41と下刃42の大部分が重なった位置)に移動する。この動作を繰り返すことにより、上刃41と下刃42とが往復運動する。
【0032】
図1に示すようにハンドル部3はハウジング2と一体に形成されており、本体部21の上部から左方向外方に延出している第1ハンドル部31と、本体部21の下部から左方向外方に延出している第2ハンドル部32とにより構成される。第1ハンドル部31は、その左端内部にモータ6への電源を供給する電池33が着脱自在に装着され、本体部21から延出している基部下側に電池33からモータ2への電源の供給を選択的に切替るトリガ34が設けられている。トリガ34はスイッチ34Aと電気的に接続されている。第1ハンドル部31のトリガ34に隣接する位置には、オンロックスイッチ38が配置される。トリガ34を引いた状態でオンロックスイッチ38を押すことにより、トリガ34を引いた状態を保持することができる。
【0033】
第2ハンドル部32は、その左端内部に制御基板35が設けられ、その右端部であって微調整機構56と隣接する位置に報知灯37が設けられている。制御基板35はスイッチ34A、モータ6、及び電池33と電気的に接続されている。報知灯37は後述する補正機能設定が完了した時に、所定時間点灯するように構成されている。
【0034】
次に、図7を参照しながら刈込機1の制御回路について説明する。
【0035】
図7に示すように、モータ6はインナーロータ型で、一対のN極およびS極を含む永久磁石(マグネット)を埋め込んで構成された回転子(マグネットロータ)6bと、該マグネットロータ6bの回転位置を検出するために60°毎に配置された3つの回転位置検出素子(ホールIC)7a、7b、7cと、回転位置検出素子7a、7b、7cからの位置検出信号に基づいて電気角120°の電流の通電区間に制御されるスター結線された固定子6cの3相巻線U、V、Wからなる電機子巻線6dとから構成される。
【0036】
FET回路部8は、3相ブリッジ形式に接続された6個のFET(以下、「トランジスタ」という。)Q1〜Q6から構成される。ブリッジ接続された6個のトランジスタQ1〜Q6の各ゲートは制御信号出力回路71に接続され、また、6個のトランジスタQ1〜Q6のソースまたはドレインはスター結線された電機子巻線U、VおよびWに接続される。これによって、6個のトランジスタQ1〜Q6は、制御信号出力回路71から入力されたスイッチング素子駆動信号によってスイッチング動作を行い、FET回路部8に印加される電池33の直流電圧を電機子巻線U、V、Wへ供給する。
【0037】
制御回路部7は、制御信号出力回路71、演算部72,電流検出回路73,スイッチ操作検出回路74、印加電圧設定回路75,回転方向設定回路76,回転子位置検出回路77,及び回転数検出回路78によって構成されている。演算部72は、図示されていないが、処理プログラムとデータに基づいて駆動信号を出力するためのCPU、後述するフローチャートに相当するプログラムや制御データを記憶するためのROM、データを一時記憶するためのRAM、タイマ等を含むマイコンによって構成される。電流検出回路73はモータ6に流れている電流を検出するための回路であり、検出電流は演算部72に入力される。
【0038】
スイッチ操作検出回路74は、トリガ34の操作を検出する回路である。印加電圧設定回路75は、トリガ34の引き量に応答してモータ6の印加電圧、すなわちPWM信号のデューティ比を設定するための回路である。回転方向設定回路76は、モータ6の正逆切替レバー79による正方向回転または逆方向回転の操作を検出してモータ6の回転方向を設定するための回路である。回転子位置検出回路77は、3つの回転位置検出素子7a、7b、7cの出力信号に基づいて回転子6bと固定子6cの電機子巻線U、V、Wとの関係位置を検出するための回路である。回転数検出回路78は、単位時間内にカウントされる回転子位置検出回路77からの検出信号の数に基づいてモータ回転数を検出する回路である。
【0039】
制御信号出力回路71は、演算部72からの出力に基づいて電源側トランジスタQ1〜Q6にPWM信号を供給する。PWM信号のパルス幅の制御によって各電機子巻線U、V、Wへ供給する電力を調整して設定した回転方向へのモータ6の回転数を制御することができる。報知灯37及びオンロックスイッチ38は演算部72と電気的に接続されている。
【0040】
制御回路部7は、回転子位置検出回路77にてモータ6の回転位置を検出して制御信号出力回路71でFET駆動回路8に所定電圧での駆動信号を出力することによりモータ6を所定の位置で停止させる事ができる。本実施の形態では、電流検出回路73の電流値が後述の所定値C以下であるときの位置を演算部72が記憶し、その位置でモータ6を停止させる。その位置を完全停止位置とする。
【0041】
図8(a)に動作時の上刃41と下刃42との位置関係を表すグラフを示し、図8(b)に図8(a)の位置のときの電流値を表すグラフを示す。ここで、電流検出回路73が検出する電流は無負荷の状態(樹木の切断等を行っていない状態)では、図8(b)に示すような波状の波形になる。位置Aでは電流値がもっとも低く図4(b)に示すような上刃41と下刃42のそれぞれの刃の裏面が完全に露出した状態であり、位置Bでは電流値がもっとも高く図4(a)、(c)に示すような上刃41と下刃42とが大部分重なった状態となる。本実施の形態では、モータ6を停止させるときの所定値をC以下とする。電流値がCのときの完全停止位置は、上刃41の刃丈の全長の半分より先端側で下刃42と重ならない状態である。尚、本実施の形態では、モータ6の出力軸6Aから偏心カム54の間に回転運動伝達機構5を備え、モータ6の回転数を減速して偏心カム54に伝達しているため、電流検出回路73が検出する電流の位相と、モータ6の出力軸6Aの回転数とは一致しない。そのため、ブレード4を交換等した場合には、出力軸6Aの回転位置と電流値との関係が変化する可能性があり、補正機能設定により後述する補正を行うよう設定されている。また、補正機能設定が働くのは、電池33が装着された場合の後、最初にトリガ34がONされた場合(初回トリガON)としている。
【0042】
次に刈込機1の動作について説明する。トリガ34を引くことによってモータ6に電力を供給する。これによって出力軸6A及び出力ギヤ61が回転しこれに噛合する第1ギヤ61が回転する。第1ギヤ61は第2ギヤ63と噛合しているため、第2ギヤ63および同軸上の偏芯カム54も回転する。この状態を連続運転状態とする。偏芯カム54の回転によって上刃51と下刃52が往復運動することで、上刃41と下刃42とで被刈込物を挟み込むことにより樹木や芝等を切断する。
【0043】
本実施の形態では図9に示すフローで刈込作業時の制御回路部7を動作させる。電池33が装着された場合、電池33からの電力供給を受けて制御回路部7が動作を開始し、芝刈機1は待機状態に入る(電源ON)。待機状態では、トリガをON(引く)されることによりモータ回転が開始される(S1:YES、S2)。そしてS3で補正が必要であると判断された場合(初回トリガON)、補正機能設定が開始される(S4〜S11)。補正機能設定とは、モータ6を停止させるときのブレード4の位置として所定値C以下の位置であることを記憶するためのものである。
【0044】
補正機能設定では、まずS4によって記憶している完全停止位置のリセットが行われ、S5によってタイマのカウントが開始される(起動電流の影響を抑制して検出を行うため、例えば、3〜4sec)。補正機能設定は、モータ6が駆動している状態で、図7に示す電流検出回路73が検出する電流において、図8(b)に示す電流の立ち上り位置A1を検出し、対応するモータ6の回転位置を記憶する(S6、S7)。次に、前回電流立ち上がり位置の記憶がされているか否かを判断する(S8)。図8(b)に示すように、A1は1回目の電流立ち上がり位置であることから、前回電流立ち上がり位置は記憶されていない(S8:NO)。タイマが所定時間経過していない場合(S11:NO)、再度、電流の立ち上り位置A2を検出し(S6:YES)、対応するモータ6の回転位置を記憶する(S7)。このとき、前回電流の立ち上り位置はA1として記憶されているため(S8:YES)、演算部72はA1とA2の周期間のモータの回転数を計算すると共に、A1から所定回転後のA3、A4に対応するモータ6の回転位置を記憶する(S9)。尚、A3、A4は何れも電流値が所定値C以下の位置である。制御回路部7が完全停止位置を記憶すると、報知灯37が点灯し、補正機能設定が完了したことを作業者に放置する(S10)。タイマが所定時間経過するまで、S6からS11までの処理を繰り返し、タイマが所定時間を経過すると実用運転状態(S12以降)に入る。
【0045】
実用運転状態では、作業者は実際に樹木や芝等の切断を行っている状態であり、演算部72は電流検出回路73からの電流値が予め設定された値を超えているか(過電流)、つまりモータ6が負荷トルクの上限を超えるか否かを判断する(S12)。モータ6の負荷トルクが上限を超えなければ、(S12:YES)、モータ6の回転は継続され、作業者は継続して実用運転を行うことが可能となる。トリガ34をOFFすることにより(S13:OFF)、モータ6はS9で記憶された完全停止位置で停止する(S14、S15)。S14では、制御回路部7は、回転子位置検出回路77からの検出信号に基づいて、モータ6がA3の位置にあることを確認すると、制御信号出力回路71はブレーキ制御を開始し、A4の位置で確実に停止させる。
【0046】
もし、モータ6が負荷トルクの上限を超えた場合には(S12:NO)、強制遮断が開始され、モータ6が停止する(S15)。たとえ、オンロックスイッチ38が押下されトリガ34がON状態で保持されていても、オンロックスイッチ38が解除されてトリガ34がOFFになったと判断することで、モータ6の回転が停止する。尚、モータ6は、強制遮断後、トリガ34を引いた状態が実際に解除されたことを確認した後でなければ、トリガ34引き続けていても、回転が開始することはない。トリガ34を引いた状態を解除すると、待機状態に入り、S1の処理に戻る。
【0047】
上述のような構成によると、モータ6の電流値が所定値C以下の位置でモータ6が停止するため、上刃41と下刃42との間の抵抗が少ない位置においてモータ6が停止することになる。抵抗が少ない位置とは上刃41と下刃42との重なりが少ない位置であって、この位置では上刃41の裏面と下刃42の裏面とが互いに露出した状態となる。これにより、上刃41及び下刃42の裏面の清掃を容易に行うことができる。また、上刃41と下刃42とが互いに重ならない状態で停止するため、停止時に上刃41と下刃42との間に異物が噛み込むことを防止することができる。
【0048】
また、上述のような構成によると、完全停止位置であるA4の以前の位置A3からブレーキ制御を開始することで、確実に所定の停止位置でブレードを停止させることが可能となる。
【0049】
また上述のような構成によると、電流センサ72が検出した電流値が負荷トルクの上限を超えたとき(S12:NO)、制御回路部7はモータ6の回転を停止させるため過電流によるモータ6の焼損を防止することができる。
【0050】
また、上述のような構成によると、たとえオンロックスイッチ38が押下された状態であってもモータ6の電流値が設定値を超えたときにはオンロックスイッチ38が解除されモータが停止する。これにより、オンロックスイッチ38が押下されている時の過電流によるモータ6の焼損を防止することができる。
【0051】
また、上述のような構成によると、回転運動伝達機構5を微動させることで、上刃41と下刃42とを所定量動作させることができる。これにより、たとえ上刃41と下刃42とが重なった状態で停止してしまった場合であっても、所定量上刃41と下刃42とを動作させることで、上刃41と下刃42とを互いにずらしてそれぞれの裏面を露出させることが可能になり、上刃41及び下刃42の裏面に付着した異物の清掃を容易に行うことができる。
【0052】
また、上述のような構成によると、電源投入時に補正機能設定が開始されるため、トリガ34を所定時間引くことで自動的にモータ6の電流値が所定値の時のモータ6の回転位置を記憶する。これにより、たとえ刈込機1の分解・修理等を行ってモータ6の位置と上刃41及び下刃42の位置関係がずれたとしても、上刃41と下刃42とが互いに重ならない完全停止位置を再度把握するとともに、その位置でモータ6を停止させることができる。これにより、上刃41及び下刃42の裏面の清掃を容易に行うことができる。
【0053】
また、上述のような構成によると、制御回路部7がモータ6の完全停止位置を記憶したとき、報知灯37が点灯する。これにより、作業者は完全停止位置が新たに記憶されたため、モータ6の位置と上刃41及び下刃42の位置関係のずれが解消されて、上刃41と下刃42とが互いに重ならない位置で停止することを確認することができる。
【0054】
また、上述のような構成によると、モータ6にブラシレスモータを用いることにより、モータ6の高寿命化を図ることができる。
【0055】
また、上述のような構成によると、たとえ過電流等により上刃41と下刃42とが重なった状態で停止したとしても微調整機構56を動作することによって上刃41と下刃42をずらすことができる。これにより、上刃41及び下刃42の裏面の清掃を容易に行うことができる。また、上刃41及び下刃42を微調整するためにモータ6を使用しないため、たとえ電源が供給されていない状態であっても上刃41及び下刃42の位置を調整することができる。
【0056】
また、上述のような構成によると、微調整機構56の他端部は他の部材を介すことなく直接回転運動伝達機構5の第1ギヤ51と係合しているため、部品点数を減らすとともに製造コストを削減することができる。また、微調整機構56が減速機の途中に配設されていることから、少ない力で上刃41及び下刃42の微調整を行うことができる。
【0057】
次に本発明の第2の実施の形態による刈込機201を図10及び11を参照しながら説明する。同一の構成によるものは同一の番号を付して説明を省略する。
【0058】
刈込機201では、第2ハンドル部32はその左端内部に制御基板235と、その左端外部に制御基板235と電気的に接続された微動スイッチ236を有する。微動スイッチ236を押下することにより、モータ6を微量、所定方向に回転させる。この状態を微動運転とする。ここでいう微量とは、例えば上刃41及び下刃42が図4(a)に示す状態から図4(b)に示す状態になるまでの量をいう。微動運転時のモータ6の回転方向は、連続運転時のモータ6の回転方向と逆になるように構成される。
【0059】
微動スイッチ236が押下されたことにより、モータ6を所定方向に回転させる信号を制御回路部7に出力する。この信号を受けた制御回路部7は演算部72の演算によってモータ6を微量所定方向に回転させる信号をFET駆動回路部8に出力し、モータ6が微量所定方向に回転する。ここでいう所定方向とは、正逆切替レバー79によって設定されている方向と逆の方向である。
【0060】
次に刈込機201の動作について図11を参照しながら説明する。S1乃至S15までは第1の実施の形態と同様である。刈込機201では、電源がONされてから、トリガがONされるS1までの待機状態、又は実用運転中にモータ6の負荷トルクが上限を超え、強制遮断されたS15の状態(S12:NO)から、再び待機状態に戻り、S1の処理を繰り返す状態において、微動スイッチ236の処理が追加されている(S201、S202)。上述の待機状態で、微動スイッチ236をON(押下)することで(S201:YES)、モータ6を連続運転状態とは逆方向に一定角度回転させる(S202)。これにより、上刃41及び下刃42は連続運転状態とは逆方向に微動する。微動スイッチ236がOFF(押下されない)の場合には(S201:NO)、待機状態に戻る。微動運転後にトリガ34を引くことで再び実用運転を行うことができる(S201:YES)。また、さらに微動運転を行いたい場合には、トリガを引くことなく(S1:NO)微動スイッチ236をONすることで(S201:YES)再び微動運転を行うことができる。
【0061】
上述のような構成によると、モータ6の回転制御という簡易な構造によって回転運動伝達機構5を微動させ、上刃41と下刃42とを互いにずらしてそれぞれの裏面を露出させることが可能になり、上刃41及び下刃42の裏面に付着した異物の清掃を容易に行うことができる。
【0062】
また、上述のような構成によると、上刃41と下刃42との間に異物が噛み込んだ場合、微動スイッチ236を押下することでモータ6が連続運転と逆の方向に微量回転し、異物がさらに噛み込むことを防止するとともに、上刃41及び下刃42に負荷をかけることなく容易に異物を除去することができる。
【0063】
本発明の刈込機については、上述の実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
【0064】
たとえば、本発明では電池を装着することにより電源を供給したが、電源コードにより電源を供給してもよい。その場合は、図1におけるS1は電源コードが接続されているか否かを判断して補正機能設定が開始される。また、電源スイッチを別途設けてこれがONとなったときに補正機能設定が開始されてもよい。また、別途補正機能設定のためのスイッチを設けて、このスイッチが押下されたときに補正機能設定が開始されるとしてもよい。
【0065】
本発明では、図4(b)に示す上刃の裏側と下刃の裏側が完全に露出した状態となる下限電流のときのモータの回転位置を完全停止位置としたが、上刃と下刃とが刃丈の半分以上重ならない位置であればよく、その完全停止位置を所定値C以下のどの位置に設定してもよい。
【0066】
本発明では微調整機構及び微動スイッチにより上刃及び下刃が動作する量を図4(a)から図4(b)になるまでの動作量としたが、動作量はさらに少なくてもよい。これにより、詳細に上刃及び下刃の位置を調整することができる。
【0067】
本発明では、偏心カムにより上刃及び下刃が両方駆動する構成としたが、上刃もしくは下刃の何れか一方を駆動させ、対応する上刃もしくは下刃を本体に固定する所謂片刃駆動のものであってもよい。また、刈込機は、上刃と下刃とが左右方向に往復駆動され摺り合わせにより切断を行う方式について説明したが、前後方向に延出した基部の幅方向両端縁に沿って複数の切刃が形成され、前後方向に往復駆動されることで上刃と下刃とが摺り合わされる所謂ヘッジトリマのような形態であってもよい。さらに、本発明では微調整機構及び微動スイッチにより上刃と下刃とを微動させたが、上述の片刃駆動の刈込機については、上刃もしくは下刃の何れか一方を微動させてもよい。
【0068】
本発明では補正機能設定が完了した時に報知灯が所定時間点灯するとしたが、電源ONにより報知灯が所定時間点灯し、その点灯している間にトリガを所定時間ONした場合にのみ補正機能設定を開始するとしても良い。これにより、必要なときのみ補正機能設定を開始することができる。
【0069】
本発明ではモータの負荷トルクが上限を超えたときはモータが停止し微動スイッチを押下したときのみ微動運転を行うが、モータの負荷トルクが上限をこえたときはモータが停止し自動的に微動運転を行うようにしてもよい。またこのときの微動運転は正回転であっても逆回転であってもよい。
【0070】
本発明ではモータの電流値が所定値以下の時のモータの回転位置を記憶したが、モータの電流値を記憶するとしてもよい。そうすることにより、分解等によってたとえモータの位置と上刃及び下刃との位置関係が変わったとしても電流値と上刃及び下刃との位置関係は変わらないことから、補正機能設定を行う必要がなくなる。
【0071】
本発明では、モータの負荷トルクが上限を超えた場合には強制的にモータの回転を停止させたが、たとえ強制的にモータの回転を停止させるとするとしてもモータを完全停止位置で停止させる構成にしても良い。
【0072】
また、本発明の刈込機は、連続運転の停止時は完全停止位置に停止させる制御回路と、上刃及び下刃の微動を可能にする微調整機構又は微調整スイッチの両方を備えていたが、いずれか一方のみを刈込機に備えてもよい。
【0073】
また、本発明では、電流の立ち上りの位置から完全停止位置を検出する構成としたが、図8(b)の下段に示した電流の立下りの位置B1、B2を検出して、周期間のモータ回転数を測定し、立下り位置から停止位置B4の回転数になる前にブレーキ制御を開始するようにしてもよい。
【0074】
また、モータ6の完全停止位置の設定においては、モータ6の電流から停止位置を検出する構成としたが、偏心カムなどにリミットスイッチ等設けることにより、ブレード4の位置を検出するようにしても良い。このような例では、補正スイッチ(停止位置補正)を別途設け、補正スイッチを押しながらモータを始動したときに停止位置補正がされるようにすることで、モータ6の回転開始位置からリミットスイッチのON/OFFの回転数を計測して完全停止位置の補正を行うことができると共に、任意のタイミングで補正を行うことが可能となる。
【0075】
また、モータ6の完全停止位置の設定において、演算部72の停止位置の設定を変更せず、第1の実施形態で示した微調整機構56の操作時に、モータ6と回転運動伝達機構5との接続を解除するようにしても良い。このような例では、モータ6が完全停止位置で停止された後に微調整機構56を操作してブレードが重ならない位置関係にすることで、結果的に完全停止位置を補正することが可能となる。また、第2の実施形態のように微動スイッチ236を有している場合に、例えば補正スイッチを別途設け、補正スイッチを押しながらモータ6を微動運転させることで、完全停止位置を補正可能としても良い。
【0076】
本発明では微調整機構及び微動スイッチにより上刃と下刃とを微動させたが、上刃と下刃の少なくとも一方を微動させるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0077】
2:ハウジング、 6:モータ、 4:ブレード、 5:回転運動伝達機構、 7,207:制御回路、 34:トリガ、 37:報知灯、 41:上刃、 42:下刃、 51:第1ギヤ、 53:第2ギヤ、 54:偏芯カム、 56:微調整機構、 72:電流センサ 236:微動スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12