特許第5839230号(P5839230)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5839230
(24)【登録日】2015年11月20日
(45)【発行日】2016年1月6日
(54)【発明の名称】密封装置
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/3204 20160101AFI20151210BHJP
【FI】
   F16J15/32 311P
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-284710(P2011-284710)
(22)【出願日】2011年12月27日
(65)【公開番号】特開2013-133882(P2013-133882A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年11月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107320
【弁理士】
【氏名又は名称】高塚 一郎
(72)【発明者】
【氏名】菊地 健一
【審査官】 杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−043212(JP,A)
【文献】 特開2007−224948(JP,A)
【文献】 特開2010−265949(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/132121(WO,A1)
【文献】 実開平01−106380(JP,U)
【文献】 特開2005−028854(JP,A)
【文献】 特開2011−208683(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0289226(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(1)と、前記ハウジング(1)を貫通して伸びる回転軸(2)との間隙をシールする密封装置であって、前記ハウジング(1)側に保持されたシール部材(3)と、前記回転軸(2)側に保持された金属材製のスリーブ部材(4)と、前記シール部材(3)側に保持された円盤状の保護環(5)とにより構成され、前記スリーブ部材(4)は、前記回転軸(2)の外周面に嵌合される内側円筒部(41)と、前記内側円筒部(41)の軸方向一端から径方向外側に伸びる鍔部(42)とを備え、前記シール部材(3)は、前記ハウジング(1)側に嵌合される筒状部(311)と、前記筒状部(311)の軸方向一端から径方向内側伸びる内側鍔状部(312)と、前記筒状部(311)の軸方向他端から径方向外側伸びる外側鍔状部(313)とより成る金属材製の補強環(31)と、前記内側鍔状部(312)に一体成形されたゴム状弾性材製の前記内側円筒部(41)外周面と密封接触しているラジアルリップ部(32)及び前記鍔部(42)と弾性接触している端面リップ部(34)とより成り、前記保護環(5)は、前記外側鍔状部(313)の径方向端部(3131)によりその径方向外端部(51)がカシメ固定されると共にその径方向内端部(52)が前記鍔部(42)に向かって伸びる筒状折り曲げ部(521)を形成し、前記スリーブ部材(4)の前記鍔部(42)は、前記筒状折り曲げ部(521)の内周面と弾性接触するゴム状弾性材製の第1のダストリップ(421)と、前記保護環(5)の内側側面(53)と弾性接触するゴム状弾性材製の第2のダストリップ(422)と、前記筒状折り曲げ部(521)の先端部(522)と接触可能に対峙する前記鍔部(42)表面に設けたゴム状弾性材製の複数個の環状突起(423)を形成したことを特徴とする密封装置。
【請求項2】
前記筒状折り曲げ部(521)が、前記先端部(522)から前記鍔部(42)に沿って径方向外方に向かって伸びるフランジ部(523)を形成すると共に、前記フランジ部(523)が複数個の前記環状突起(423)と弾性接触していることを特徴とする請求項1記載の密封装置。
【請求項3】
前記先端部(522)は、常に前記環状突起(423)の少なくとも1本と常に接していることを特徴とする請求項1記載の密封装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば泥水等外部(大気側)の環境が厳しい農機、建機等の軸封部に用いられ、外部からの泥水やダストの浸入を防止すると共に、内部シール対象物の漏れを防止する密封装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種密封装置としては、図5に示す構造のものが知られている。(特許文献1)
すなわち、ハウジング100と、このハウジング100を貫通して伸びる回転軸200との間隙をシールする密封装置であって、ハウジング100側に保持されたシール部材300と、回転軸200側に保持された金属材製のスリーブ部材400と、シール部材300側に保持された円盤状の保護環500とにより構成されている。
【0003】
更に、スリーブ部材400は、回転軸200の外周面に嵌合される内側円筒部41と、この内側円筒部41の軸方向一端から径方向外側に伸びる鍔部42とを備えている。
また、シール部材300は、ハウジング100側に嵌合される筒状部311と、この筒状部311の軸方向一端から径方向内側伸びる内側鍔状部312と、筒状部311の軸方向他端から径方向外側伸びる外側鍔状部313とより成る金属材製の補強環31と、内側鍔状部312に一体成形されたゴム状弾性材製の内側円筒部41外周面と密封接触しているラジアルリップ部32及び鍔部42と弾性接触している端面リップ部34とより構成されている。
【0004】
また、保護環500は、外側鍔状部313の径方向端部3131によりその径方向外端部51がカシメ固定されると共にその径方向内端部52が鍔部42に向かって伸びる筒状折り曲げ部521を形成している。
更に、スリーブ部材400の鍔部42は、筒状折り曲げ部521の内周面と弾性接触するゴム状弾性材製の第1のダストリップ421と、保護環5の内側側面53と弾性接触するゴム状弾性材製の第2のダストリップ422と、筒状折り曲げ部521の先端部522と接触する鍔部42表面に設けたゴム状弾性材製の1本の環状突起423が形成されている。
【0005】
この様な構成とする事により、外部からの泥水やダストの浸入を防止するもので有った。
しかし、農機、建機等の軸封部は、構造上ラジアル方向及びスラスト方向の変位が不可避的に発生する。
この為、図6に示す様に、筒状折り曲げ部521の先端部522と1本の環状突起423との接触は容易に離脱して、その密封性能を損なう結果を招来した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−224948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、限られたスペースにおいて、泥水等外部(大気側)の環境が厳しい農機、建機等の軸封部に、長期間用いたとしても、外部からの泥水やダストの浸入を効果的に阻止出来る密封装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明にあっては、ハウジングと、前記ハウジングを貫通して伸びる回転軸との間隙をシールする密封装置であって、前記ハウジング側に保持されたシール部材と、前記回転軸側に保持された金属材製のスリーブ部材と、前記シール部材側に保持された円盤状の保護環とにより構成され、前記スリーブ部材は、前記回転軸の外周面に嵌合される内側円筒部と、前記内側円筒部の軸方向一端から径方向外側に伸びる鍔部とを備え、前記シール部材は、前記ハウジング側に嵌合される筒状部と、前記筒状部の軸方向一端から径方向内側伸びる内側鍔状部と、前記筒状部の軸方向他端から径方向外側伸びる外側鍔状部とより成る金属材製の補強環と、前記内側鍔状部に一体成形されたゴム状弾性材製の前記内側円筒部外周面と密封接触しているラジアルリップ部及び前記鍔部と弾性接触している端面リップ部とより成り、前記保護環は、前記外側鍔状部の径方向端部によりその径方向外端部がカシメ固定されると共にその径方向内端部が前記鍔部に向かって伸びる筒状折り曲げ部を形成し、前記スリーブ部材の前記鍔部は、前記筒状折り曲げ部の内周面と弾性接触するゴム状弾性材製の第1のダストリップと、前記保護環の内側側面と弾性接触するゴム状弾性材製の第2のダストリップと、前記筒状折り曲げ部の先端部と接触可能に対峙する前記鍔部表面に設けたゴム状弾性材製の複数個の環状突起を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、以下に記載されるような効果を奏する。
請求項1記載の発明の密封装置によれば、限られたスペースにおいて、泥水等外部(大気側)の環境が厳しい農機、建機等の軸封部に、長期間用いたとしても、外部からの泥水やダストの浸入を効果的に阻止出来る。
また、請求項2記載の発明の密封装置によれば、複数個の環状突起が常に接している為、より確実に、外部からの泥水やダストの浸入を効果的に阻止出来る。
【0010】
また、請求項3記載の発明の密封装置によれば、ラジアル方向及びスラスト方向の変位が不可避的に発生したとしても、環状突起が保護環を受支えるバンパーの役割を果たす事で、スリーブ部材に対するシール部材及び保護環の位置関係を正しい位置に保ち、リップ締め代の低下、隙間の発生を抑止出来る為、内部からの漏洩や、外部からの泥水やダストの浸入を効果的に阻止出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る密封装置の断面図。
図2図1の部分拡大図。
図3】本発明に係る他の実施態様を図2と同様に示した図。
図4】本発明に係る更なる他の実施態様を図2と同様に示した図。
図5】従来技術に係る密封装置の断面図。
図6図5に示す密封装置が不具合を起こした部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
本発明に係る密封装置は、図1及び図2に示す様に、ハウジング1と、このハウジング1を貫通して伸びる回転軸2との間隙をシールする密封装置であって、ハウジング1側に保持されたシール部材3と、回転軸2側に保持された金属材製のスリーブ部材4と、シール部材3側に保持された円盤状の保護環5とにより構成されている。
【0013】
このスリーブ部材4は、回転軸2の外周面に嵌合される内側円筒部41と、内側円筒部41の軸方向一端から径方向外側に伸びる鍔部42とを備えている。
【0014】
また、シール部材3は、ハウジング1側に嵌合される筒状部311と、筒状部311の軸方向一端から径方向内側伸びる内側鍔状部312と、筒状部311の軸方向他端から径方向外側伸びる外側鍔状部313とより成る金属材製の補強環31と、内側鍔状部312に一体成形されたゴム状弾性材製の内側円筒部41外周面と密封接触しているラジアルリップ部32及び鍔部42と弾性接触している端面リップ部34とより構成されている。
【0015】
更に、保護環5は、外側鍔状部313の径方向端部3131によりその径方向外端部51がカシメ固定されると共にその径方向内端部52が鍔部42に向かって伸びる筒状折り曲げ部521を形成し、スリーブ部材4の鍔部42は、筒状折り曲げ部521の内周面と弾性接触するゴム状弾性材製の第1のダストリップ421と、保護環5の内側側面53と弾性接触するゴム状弾性材製の第2のダストリップ422と、筒状折り曲げ部521の先端部522と接触可能に対峙する鍔部42表面に設けたゴム状弾性材製の複数個の環状突起423とを形成している。
【0016】
この様な構成とする事により、限られたスペースにおいて、泥水等外部(大気側)の環境が厳しい農機、建機等の軸封部に、長期間用いたとしても、外部からの泥水やダストの浸入を効果的に阻止出来る。
【0017】
また、鍔部42表面に設けたゴム状弾性材製の複数個の環状突起423は、先端が先鋭な鋸歯状突起としたが、図3に示す様に、断面が円弧状の環状突起423としても良い。
この様な円弧状の環状突起423とする事により、ラジアル方向及びスラスト方向の変位が不可避的に発生したとしても、環状突起423と先端部522との接触領域の移動を円滑に行う事が出来る。
【0018】
本発明に係る他の実施形態を図4に基づき説明する。
先に説明した実施形態と相違する点は、筒状折り曲げ部521が、先端部522から鍔部42に沿って径方向外方に向かって伸びるフランジ部523を形成すると共に、フランジ部523が複数個の環状突起423と弾性接触している点である。
【0019】
この様な構成とする事により、フランジ部523には、複数個の環状突起423が常に接している為、ラジアル方向及びスラスト方向の変位が不可避的に発生したとしても、環状突起423が保護環5を受支えるバンパーの役割を果たす事で、スリーブ部材4に対するシール部材3及び保護環5の位置関係を正しい位置に保ち、リップ締め代の低下、隙間の発生を抑止出来る為、内部からの漏洩や、外部からの泥水やダストの浸入を効果的に阻止出来る。
【0020】
この様に、先端部522は、ラジアル方向及びスラスト方向の変位が存在しても、常に環状突起423の少なくとも1本と常に接している構成としている為、外部からの泥水やダストの浸入を効果的に阻止出来る。
従って、図1及び図2に示した実施態様においては、複数個の環状突起423間の間隙は、先端部522の径方向の幅よりも小さく設計されている。
【0021】
また、本発明は上述の発明を実施するための最良の形態に限らず本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0022】
大気側が泥水等の厳しい条件で使用される耕耘機、建設機械等の軸封部をシールする密封装置として好適に用いられる。
【符号の説明】
【0023】
1 ハウジング
2 軸
3 シール部材
4 スリーブ部材
5 保護環
31 補強環
32 ラジアルリップ部
34 端面リップ部
41 内側円筒部
42 鍔部
52 径方向内端部
311筒状部
312内側鍔状部
313外側鍔状部
421第1のダストリップ
422第2のダストリップ
423環状突起
521筒状折り曲げ部
522先端部
523フランジ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6