(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5839275
(24)【登録日】2015年11月20日
(45)【発行日】2016年1月6日
(54)【発明の名称】内燃機関の排気浄化装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/08 20060101AFI20151210BHJP
F01N 3/20 20060101ALI20151210BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20151210BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20151210BHJP
【FI】
F01N3/08 B
F01N3/20 F
F01N3/24 L
F01N3/24 N
B01D53/94 222
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-272218(P2011-272218)
(22)【出願日】2011年12月13日
(65)【公開番号】特開2013-124552(P2013-124552A)
(43)【公開日】2013年6月24日
【審査請求日】2014年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】恒川 希代香
(72)【発明者】
【氏名】岡田 公二郎
(72)【発明者】
【氏名】木村 洋之
(72)【発明者】
【氏名】松田 征二
(72)【発明者】
【氏名】守本 健児
(72)【発明者】
【氏名】磯部 雄輔
【審査官】
今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−264222(JP,A)
【文献】
特開平02−152523(JP,A)
【文献】
特開平06−226044(JP,A)
【文献】
特開平5−71331(JP,A)
【文献】
特表2004−511711(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/02−3/38
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路にNOX選択還元触媒が設けられ、該NOX選択還元触媒の上流側排気通路に供給した還元剤溶液を分解してNH3を生成し、前記NOX選択還元触媒の触媒作用の元で排気中のNOXをNH3と反応させて無害化する内燃機関の排気浄化装置において、
前記NOX選択還元触媒の下流側排気通路に設けられた還流ガス取得口から、前記NOX選択還元触媒を迂回して、該NOX選択還元触媒の上流側排気通路に設けられた還流ガス供給口に通ずる排気還流通路と、
前記NOX選択還元触媒の下流側排気通路と前記排気還流通路との間を開閉する還流制御弁と、
前記還流制御弁の開閉を制御する制御手段と、
前記還元剤溶液の分解に伴って形成されるデポジットの堆積量を推定するデポジット堆積量推定手段と、
前記堆積したデポジットを加熱して昇華させるデポジット昇華手段と、を備え、
前記デポジット堆積量推定手段によって推定されたデポジット堆積量が閾値を上回った場合には、前記デポジット昇華手段によって前記堆積したデポジットを加熱して昇華させるとともに、前記制御手段によって還流制御弁を開弁状態に切り替えて、前記デポジットが昇華することで生成されたNH3を排気ガスとともに前記排気還流通路を介して前記NOX選択還元触媒の上流側排気通路に還流させることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
前記還元剤溶液を供給する還元剤供給装置が前記NOX選択還元触媒の上流に設けられ、
前記還流ガス供給口は、前記還元剤供給装置よりも上流に位置することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
前記排気還流通路において前記還流ガス取得口から導流された排気ガスが前記還流ガス供給口に向かって流れるように整流する整流手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
前記NOX選択還元触媒の上流側排気通路には、NOX選択還元触媒の上流側排気通路に還元剤溶液を供給する還元剤供給装置が配置されており、
前記デポジット昇華手段は、少なくとも前記還元剤供給装置と前記NOX選択還元触媒との間の部分を加熱するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項5】
前記デポジット昇華手段は、前記デポジット堆積量推定手段によって推定されたデポジット堆積量に応じて、デポジットを加熱する時間が設定されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記デポジット昇華手段がデポジットの昇華に必要な温度になるまで加熱した後に前記還流制御弁を開弁状態に切り替えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気通路にNO
X選択還元触媒が設けられ、該NO
X選択還元触媒の上流側排気通路に供給した還元剤溶液を分解してNH
3を生成し、前記NO
X選択還元触媒の触媒作用の元で排気ガス中のNO
XをNH
3と反応させて無害化する内燃機関の排気浄化装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンの排気ガス浄化方法として、尿素水溶液を用いたSCR(Selective Catalytic Reduction)システムが実用化されている。SCRシステムは、排気ガスに還元剤として尿素水溶液を噴射し、尿素水溶液中の尿素を排気ガスの保有熱を用いてアンモニア(NH
3)に分解する。
【0003】
このアンモニアへの分解過程は、次の3段階からなる。各ステップの反応に必要な温度は、排気の保有熱を利用する。
第1ステップ:CO(NH
2)
2aq(尿素水溶液)→CO(NH
2)
2(固体尿素)
<水の蒸発による固体尿素の生成;反応必要温度100℃以上>
第2ステップ:CO(NH
2)
2(固体尿素)→HNCO(イソシアン酸)+NH
3
<固体尿素の熱分解;反応必要温度130〜200℃>
第3ステップ:HNCO+H
2O→NH
3+CO
2
<イソシアン酸の加水分解;反応必要温度200℃以上>
【0004】
そして、SCRシステムでは、尿素水溶液噴射部の下流側にNO
X選択還元触媒(以下、「SCR触媒」と呼ぶ場合がある)が配設されており、排気ガス中に含まれるNO
XをSCR触媒に吸着し、アンモニアと還元反応させ、窒素と水に分解することで、NO
Xの排出濃度を低減している。
NO
X+NH
3=NO
2+H
2O
【0005】
ところで、尿素の分解過程において、反応温度が低い場合には、シアヌール酸を主成分とするデポジットが生成することが知られている。このデポジットは、排気通路内やNO
X選択還元触媒上に堆積し、排気ガスの圧力損失の上昇や、SCR触媒での反応効率の低下要因となる。
【0006】
特許文献1には、SCR触媒を所定温度で加熱することで、デポジットを除去する方法が開示されている。この特許文献1の方法では、燃料噴射タイミングの遅角、EGRの増大、吸気スロットルの絞りなど、公知の各種早期昇温制御方法のほか、DPF再生制御時の排気の保有熱、およびSCR触媒用ヒータなどによってSCR触媒の加熱を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−274952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の方法は、加熱温度が低く、且つヒータで加熱される範囲がSCR触媒だけであるなど、十分な効果が得られないものであった。また、SCR触媒の配置位置はエンジンから遠く、SCR触媒に到達するまでに排気ガスの温度は大きく低下するため、早期昇温制御を行っても、SCR触媒の温度を上昇させることは容易ではないとの問題があった。また、早期昇温制御を行うと、燃費と排気ガス性状の悪化を招来する恐れがあるほか、エンジンの燃焼安定性が損なわれる場合があるとの問題があった。さらには、デポジットの昇華により生成したアンモニアが外部に排出されるアンモニアスリップが生ずるとの問題があった。
【0009】
本発明は上述したような従来技術の課題に鑑みなされた発明であって、尿素の分解過程において生成して堆積したデポジットを確実に除去することができ、デポジットの昇華により生成したアンモニアが外部に排出されるのを防止し、さらには、生成されたアンモニアを効率的に利用することができる排気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る内燃機関の排気浄化装置は上記課題を解決するために、内燃機関の排気通路にNO
X選択還元触媒が設けられ、該NO
X選択還元触媒の上流側排気通路に供給した還元剤溶液を分解してNH
3を生成し、前記NO
X選択還元触媒の触媒作用の元で排気中のNO
XをNH
3と反応させて無害化する内燃機関の排気浄化装置において、前記NO
X選択還元触媒の下流側排気通路に設けられた還流ガス取得口から、前記NO
X選択還元触媒を迂回して、該NO
X選択還元触媒の上流側排気通路に設けられた還流ガス供給口に通ずる排気還流通路と、前記NO
X選択還元触媒の下流側排気通路と前記排気還流通路との間を開閉する還流制御弁と、前記還流制御弁の開閉を制御する制御手段と、前記還元剤溶液の分解に伴って形成されるデポジットの堆積量を推定するデポジット堆積量推定手段と、前記堆積したデポジットを加熱して昇華させるデポジット昇華手段と、を備え、前記デポジット堆積量推定手段によって推定されたデポジット堆積量が閾値を上回った場合には、前記デポジット昇華手段によって前記堆積したデポジットを加熱して昇華させるとともに、前記制御手段によって還流制御弁を開弁状態に切り替えることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、デポジット堆積量推定手段によってデポジット堆積量を推定し、推定されたデポジット堆積量が閾値を上回った場合には、デポジット昇華手段によって堆積したデポジットを加熱して昇華させる。また、制御手段によって還流制御弁を開弁状態に切り替え、NO
X選択還元触媒の上流側及び下流側排気通路における圧力差を利用して、デポジットが昇華することで生成されたNH
3を、排気還流通路を介してNO
X選択還元触媒の上流側に還流させる。これにより、デポジットの昇華によって生成されたNH
3が外部に排出されるのを防止するとともに、生成されたNH
3をNO
X選択還元触媒におけるNO
Xの還元に再度利用することができる。
【0012】
上記発明において、前記排気還流通路において前記還流ガス取得口から導流された排気ガスが前記還流ガス供給口に向かって流れるように整流する整流手段を備えることが望ましい。NO
X選択還元触媒の上流側及び下流側排気通路における圧力差は、排気通路を流れる排気ガスの脈動によって変動するため、条件によってはNO
X選択還元触媒の上流側が下流側に比べて圧力が高くなる場合がある。本発明では、上述したような整流手段を備えることによって、還流する排気ガスを還流ガス取得口から還流ガス供給口に向かって確実に導流することができるようになっている。
【0013】
上記発明における整流手段としては、例えば、排気還流通路を流れる還流ガスの逆流を防止する逆止弁、還流ガス取得口より下流側排気通路に設けられ、該排気通路における排気ガスの流量を調整することによって、NO
X選択触媒の下流側排気通路における排気ガス圧力を制御する圧力制御弁、および排気還流通路において還流ガス取得口から導流された排気ガスを還流ガス供給口に向かって圧送する圧送ポンプ、のいずれか一つまたはこれらの組み合わせによって構成される。
【0014】
また、上記発明において、前記NO
X選択還元触媒の上流側排気通路には、NO
X選択還元触媒の上流側排気通路に還元剤溶液を供給する還元剤供給装置が配置されており、前記デポジット昇華手段は、少なくとも前記還元剤供給装置と前記NO
X選択還元触媒との間の部分を加熱するように構成されていることが望ましい。尿素の分解過程において生成されるデポジットは、還元剤供給装置とNO
X選択還元触媒との間の部分に最も堆積し易いことから、本発明をこのように構成することによって、デポジットの昇華を効率的に行うことができる。
【0015】
また、上記発明において、前記デポジット昇華手段は、前記デポジット堆積量推定手段によって推定されたデポジット堆積量に応じて、デポジットを加熱する時間が設定されるように構成されていることが望ましい。このような本発明によれば、堆積したデポジットの昇華に必要な時間だけ加熱するため、無駄に加熱することなく効率的にデポジットを昇華させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、堆積したデポジットを加熱して昇華させるデポジット昇華手段と、デポジットの昇華によって生成したアンモニアをSCR触媒の上流側排気通路に還流する排気還流通路とを備えているため、尿素の分解過程において生成して堆積したデポジットを確実に除去することができるとともに、デポジットの昇華により生成したアンモニアが外部に排出されるのを防止し、さらには、デポジットの昇華によって生成されたアンモニアを効率的に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の排気浄化装置を備えたディーゼルエンジンを示した全体構成図である。
【
図2】本発明の排気浄化装置における制御フローを示したフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0019】
本発明装置を車載用ディーゼルエンジン10に適用した一実施形態を
図1に基づいて説明する。
図1において、車載用ディーゼルエンジン10のシリンダブロック12の上部にはシリンダヘッド14が設けられ、シリンダヘッド14には吸気管16及び排気通路18が接続されている。排気通路18は、過給機20の排気タービン20aに接続され、該排気タービン20aの下流側には、酸化触媒24およびDPF装置26が設けられている。排気タービン20aと酸化触媒24との間の排気通路18には酸素濃度センサー22が設けられている。また、酸化触媒24の入口側、DPF装置26の入口側および出口側の排気通路18には、通過する排気ガスeの温度を検出する排気温センサー33、35、37が配置されている。
【0020】
排気タービン20aからDPF装置26までの間の排気通路18は、上下方向に配置された垂直部18aとなっており、垂直部18aの下流側では、曲折部18cを経てほぼ水平方向に配置された水平部18bとなっている。水平部18bには、SCR触媒36(NOX選択還元触媒)が内蔵された触媒コンバータ34が設けられており、該触媒コンバータ34の上流側には、尿素水溶液を排気通路18に供給する尿素水供給装置32(還元剤供給装置)が設けられている。尿素水供給装置32により排気ガスeに噴射された尿素水溶液中の尿素は、排気ガスeが所定以上の温度である場合には、アンモニア(NH
3)に分解される。そして、ここで生成されたアンモニアは、下流側のSCR触媒36に吸着されたNO
Xと反応し、窒素と水に分解される。一方、尿素の分解過程において反応温度が低い場合には、シアヌール酸を主成分としたデポジットが生成する。
【0021】
また、触媒コンバータ34の上流側排気通路18には、通過する排気ガスeのNO
X濃度を検出するNO
Xセンサー30、および通過する排気ガスeの温度を検出する排気温センサー31が設けられている。また、触媒コンバータ34の下流側排気通路18には、触媒コンバータ34通過後の排気ガス中に含まれるNO
X濃度を検出するNO
Xセンサー38が設けられており、該NO
Xセンサー38の下流側には、後述する圧力制御弁40が設けられている。
【0022】
また触媒コンバータ34は、電熱ヒータ57(デポジット昇華手段)によって覆われている。上述したデポジットは、尿素水供給装置32下流側の排気通路18やSCR触媒36上に堆積し、排気ガスの圧力損失の上昇や、SCR触媒36での反応効率の低下要因となる。このため本発明では、電熱ヒータ57によって堆積したデポジットを加熱して昇華させることで、排気通路18やSCR触媒36上に堆積したデポジットを除去するように構成している。
【0023】
上述したデポジットは、尿素水供給装置32とSCR触媒36との間の部分に最も堆積し易い。このため、本発明の電熱ヒータ57は、少なくとも尿素水供給装置32とSCR触媒36との間の部分を加熱するように構成されているとよい。また、電熱ヒータ57の加熱温度は、デポジットの昇華温度以上、且つSCR触媒の耐熱温度以下となるように制御されるのが好ましく、具体的には450℃以上、700℃以下に制御されるのが好ましい。
【0024】
また、排気通路18の触媒コンバータ34より下流側には、還流ガス取得口42が設けられている。そして、排気還流通路44によって、触媒コンバータ34を迂回して、尿素水供給装置32の上流に設けられた還流ガス供給口46に通じている。また、還流ガス取得口42付近の排気還流通路44には、触媒コンバータ34の下流側排気通路18と、排気還流通路44との間を開閉する還流制御弁48が設けられている。
【0025】
排気還流通路44は、還流ガス取得口42と還流ガス供給口46との間の圧力差に応じて、還流ガス取得口42から排気還流通路44に排気ガスeを導流し、触媒コンバータ34上流側の排気通路18に還流させるようになっている。排気還流通路44には、還流ガス取得口42から導流された排気ガスeが、還流ガス供給口46に向かって流れるように整流する整流手段が設けられており、該整流手段によって、還流する排気ガスeの流れが制御されるようになっている。本発明では、当該整流手段として、以下に説明する逆止弁50、圧力制御弁40及び圧送ポンプ52が備えられている。
【0026】
逆止弁50は、排気還流通路44の還流ガス供給口46付近に設けられており、触媒コンバータ34の上流側排気通路18を流れる排気ガスeが、還流ガス供給口46が
導流されて逆流することを防止している。還流ガス取得口42と還流ガス供給口46との間の圧力差は、排気通路18を流れる排気ガスeの脈動によって随時変動している。そのため、条件によっては触媒コンバータ34の上流側が下流側に比べて圧力が高くなる場合があり、排気還流通路44を流れる還流ガスが還流ガス供給口46から還流ガス取得口42に向かって逆流することがありえる。本実施形態では、整流手段として逆止弁50を備えることによって、このような逆流を防止できる。
【0027】
圧力制御弁40は、排気通路18の還流ガス取得口42より下流側に設けられ、弁開度を調節することで、触媒コンバータ34下流側の排気通路18を通過する排気ガスeの圧力を制御する。そしてこれにより、還流ガス取得口42と還流ガス供給口46との間の圧力差を変化させて、排気還流通路44へ導流される排気ガスeの導流量を制御している。
【0028】
圧送ポンプ52は、例えば排気還流通路44の中流付近に設けられ、還流ガス取得口42から導流された排気ガスeを還流ガス供給口46に向かって圧送する。これにより、還流ガス取得口42から導流された排気ガスeを圧送ポンプ52によって圧送することができるので、より確実且つ精度良く排気ガスeの導流量を制御することができる。
【0029】
制御装置56は、中央処理装置(CPU)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、およびI/Oインターフェイスなどからなるマイクロコンピュータで構成されている。上述した各センサー類からの各種信号は、I/Oインターフェイスを介してCPUに入力される。そして、CPUでは、ROMに記憶されている制御プログラムに従って、各種制御を実行する。そしてこれにより、上述した圧力制御弁40および還流制御弁48の開閉制御、圧送ポンプ52の起動および吐出流量等の制御が行われるようになっている。
【0030】
また、
図1に示したように、本発明のデポジット堆積量推定手段58は、制御装置56によって構成されている。デポジット堆積量推定手段58では、排気温センサー31で検出された排気温度、および尿素水供給装置32から噴射された尿素量を基にして、予めROMに記憶されているデポジット堆積量推定マップから、デポジット堆積量が算出されるようになっている。また、制御装置56では、電熱ヒータ57でデポジットを加熱して昇華する場合において、デポジット堆積量推定手段58によって推定された量のデポジットが昇華をするのに要する必要加熱時間(ta)が算出されるようになっている。
【0031】
次に、このようにして構成される本発明の内燃機関の排気浄化装置の制御フローについて、
図2を基に説明する。
図2に示したように、本発明の排気浄化装置において制御が開始されると(S11)、先ず、上述したデポジット堆積量推定手段58によって、デポジット堆積量が推定される(S12)とともに、制御装置56において、上述した必要加熱時間(ta)が算出される(S13)。そして、推定されたデポジット堆積量が閾値を上回っている場合(S14においてYes)は、電熱ヒータ57がONされる(S15)。
【0032】
そして、排気温センサー31で検出された排気温度(T)がデポジットの昇華に必要な温度(450℃以上)になるまで電熱ヒータ57で加熱された後(S16)、還流制御弁48が開弁されて排気還流通路44による排気ガスeの還流制御が開始される(S17)。この際、必要に応じて、上述した整流手段(圧力制御弁40および圧送ポンプ52)を制御し、排気還流通路44において還流ガス取得口42から導流された排気ガスeが還流ガス供給口46に向かって流れるように整流することが好ましい。またこの際、上述した還流制御弁48および圧力制御弁40の開度を調節することで、排気還流通路44によって還流される排気ガスeの流量を制御することも可能である。
【0033】
還流制御が開始されると(S17)、制御装置56において加熱時間(t)のカウントを開始する(S18)。そして、加熱時間(t)が必要加熱時間(ta)に達するまで電熱ヒータ57による加熱が継続され(S19)、排気通路18やSCR触媒36上に堆積しているデポジットを昇華する。そして、加熱時間(t)が必要加熱時間(ta)に達すると、堆積しているデポジットが全て昇華したものと判断して、電熱ヒータ57がOFFにされ(S20)、還流制御弁48が閉弁して還流制御が終了し(S21)、本発明の排気浄化装置における制御が終了する(S22)。
【0034】
このように、本発明の内燃機関の排気浄化装置によれば、デポジット堆積量推定手段58によってデポジット堆積量を推定し、推定されたデポジット堆積量が閾値を上回った場合には、電熱ヒータ57(デポジット昇華手段)によって堆積したデポジットを加熱して昇華させる。また、制御手段(制御装置56)によって還流制御弁48を開弁状態に切り替え、SCR触媒36(NO
X選択還元触媒)の上流側及び下流側の排気通路18における圧力差を利用して、デポジットが昇華することで生成されたNH
3を排気還流通路44を介してSCR触媒36の上流側に還流させる。これにより、デポジットの昇華によって生成されたNH
3が外部に排出されるのを防止するとともに、生成されたNH
3をSCR触媒36におけるNO
Xの還元に再度利用することができる。
【0035】
また、上述したように、排気還流通路44において還流ガス取得口42から導流された排気ガスeが、還流ガス供給口46に向かって流れるように整流する整流手段(逆止弁50、圧送ポンプ52、および圧力制御弁40)を備えているため、還流ガス取得口42から導流された排気ガスeを還流ガス供給口46に向かって確実に整流することができる。なお、本発明において上述した整流手段は、逆止弁50、圧送ポンプ52、および圧力制御弁40のいずれか一つまたはこれらの組み合わせによって構成することができる。
【0036】
また、上述したように、推定されたデポジット堆積量に応じて、電熱ヒータ57の加熱時間(ta)を算出し、設定すれば、堆積したデポジットの昇華に必要な時間だけ電熱ヒータ57で加熱するため、無駄に加熱することなく効率的にデポジットを昇華させることができる。
【0037】
以上説明したように、本発明に係る内燃機関の排気浄化装置によれば、堆積したデポジットを加熱して昇華させるデポジット昇華手段
57と、デポジットの昇華によって生成したアンモニアをSCR触媒36の上流側の排気通路18に還流する排気還流通路44とを備えているため、尿素の分解過程において生成して堆積したデポジットを確実に除去することができるとともに、デポジットの昇華により生成したアンモニアが外部に排出されるのを防止し、さらには、デポジットの昇華によって生成されたアンモニアを効率的に利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、内燃機関の排気通路にNO
X選択還元触媒が設けられ、該NO
X選択還元触媒の上流側排気通路に供給した還元剤溶液を分解してNH
3を生成し、前記NO
X選択還元触媒の触媒作用の元で排気ガス中のNO
XをNH
3と反応させて無害化する内燃機関の排気浄化装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0039】
10 車載用ディーゼルエンジン
12 シリンダブロック
14 シリンダヘッド
16 吸気管
18 排気通路
20 過給機
22 酸素濃度センサー
24 酸化触媒
26 DPF装置
30、38 NO
Xセンサー
31、33、35、37 排気温センサー
32 尿素水供給装置(還元剤供給装置)
34 触媒コンバータ、
36 SCR触媒(NO
X選択還元触媒)
40 圧力制御弁(整流手段)
42 還流ガス取得口
44 排気還流通路
46 還流ガス供給口
48 還流制御弁
50 逆止弁(整流手段)
52 圧送ポンプ(整流手段)
56 制御装置(制御手段)
57 電熱ヒータ(デポジット昇華手段)
58 デポジット堆積量推定手段