特許第5839342号(P5839342)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5839342
(24)【登録日】2015年11月20日
(45)【発行日】2016年1月6日
(54)【発明の名称】打込機
(51)【国際特許分類】
   B25C 1/04 20060101AFI20151210BHJP
   B25C 5/13 20060101ALI20151210BHJP
   B25C 7/00 20060101ALI20151210BHJP
【FI】
   B25C1/04
   B25C5/13
   B25C7/00 C
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-63098(P2012-63098)
(22)【出願日】2012年3月21日
(65)【公開番号】特開2013-193166(P2013-193166A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2014年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】日立工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094983
【弁理士】
【氏名又は名称】北澤 一浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095946
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 伸
(74)【代理人】
【識別番号】100099829
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 朗子
(72)【発明者】
【氏名】西田 昌史
【審査官】 大山 健
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0185416(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25C 1/00−7/00
B25F 5/00−5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
該ハウジング内に設けられたシリンダと、
該シリンダ内で上死点と下死点間を往復動可能に設けられたピストンと、を備え、
該ピストンを該上死点から該下死点へ向かう方向へ移動させて該シリンダの軸方向に打撃力を発生させる打込機であって、
該ピストンが該下死点に向かう移動を開始してから遅れて、該ピストンの移動方向とは反対の方向へ移動することで、該ピストンの移動によって該ハウジングに発生する反動を低減するカウンターウェイトを有することを特徴とする打込機。
【請求項2】
ハウジングと、
該ハウジング内に設けられ、圧縮空気を蓄える蓄圧室と、
該ハウジング内に設けられたシリンダと、
該シリンダ内で上死点と下死点間を往復動可能に設けられ、該シリンダ内の空間を該シリンダの一端寄りに位置するピストン上室と該シリンダの他端寄りに位置するピストン下室とに区画するピストンと、を備え、
該ピストン上室に圧縮空気を供給することにより、該ピストンを該上死点から該下死点へ向かう方向へ移動させて該シリンダの軸方向に打撃力を発生させる打込機であって、
該ピストンが該上死点から該下死点へ移動するときに、該ピストン上室に供給された圧縮空気を貯留し、該ピストンを該上死点へ戻すための戻り空気室と、
該戻り空気室の圧力上昇によって該ピストンの移動方向とは反対の方向へ移動することで、該ピストンの移動によって該ハウジングに発生する反動を低減するカウンターウェイトとを有することを特徴とする打込機。
【請求項3】
該カウンターウェイトは、該シリンダを囲む環状であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の打込機。
【請求項4】
該シリンダの周囲には、該シリンダの全周を取り囲むように形成されたサブシリンダ内空間を有し該シリンダの軸方向に延びる略筒状のサブシリンダが設けられ、
該カウンターウェイトは、該シリンダと同軸的な位置関係で該サブシリンダ内空間内に配置され、該サブシリンダ内空間内で該サブシリンダの軸方向に往復動可能に設けられ、該サブシリンダ内空間を該サブシリンダの一端寄りに位置するサブピストン上室と該サブシリンダの他端寄りに位置するサブピストン下室とに区画するサブピストンからなり、
該ピストンを該ピストン上室から該ピストン下室へ向かう方向へ移動させているときには該サブピストン下室と該ピストン上室とが連通可能であり、該ピストンを該ピストン下室から該ピストン上室へ向かう方向へ戻しているときには該サブピストン下室と該ピストン下室とが連通可能であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の打込機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮空気により駆動される打込機に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮空気を動力源として釘やステープラ等の止具を打撃して打ち込む打込機が従来より知られている。このような打込機では、打ち込みを行う前の初期状態となっているときにプッシュレバを被打込材に押し当て、トリガを引くことにより、圧縮空気の圧力に抗してトリガバルブのプランジャが押し上げられ、圧縮空気が貯留されている蓄圧室と、シリンダ内面とピストンとで形成されるピストン上室とを連通させるメインバルブが作動する。このことにより、ピストン上室内に流入した圧縮空気によってピストンを急激に変位させ、止具に対して打撃して止具の打ち込みを行う。ピストンの変位に伴い、ピストン上室内の圧縮空気はシリンダ内から戻り空気室内へ流入し、ピストンを初期状態の位置へ戻すことに用いられる。このような打込機は、例えば、特許第2658721号公報(特許文献1)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2658721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1に記載された打込機では、反動吸収部材が、衝撃シリンダの衝撃ピストンの上室に臨むように配置されて設けられており、反動吸収衝撃は、ピストンの上向きの有効面積より大きくかつ衝撃ピストン上面と相対する下向きの有効面を備えており、衝撃ピストンの作動軸線方向に摺動可能である。衝撃ピストンを圧縮空気圧力で駆動する際に、同じ圧縮空気圧力で衝撃ピストンの断面積より大きい有効面を備えた反動吸収部材を衝撃ピストンと反対方向に駆動させることによって、衝撃ピストンの駆動に関連して発生する反力の全てを、反動吸収部材を反対方向に駆動する際に発生する反力の一部で吸収し、衝撃ピストンの駆動による上反力を弱めている。
【0005】
しかし同公報記載の構成では、衝撃シリンダの上部に反動吸収部材が配置されているため、工具の全高が大きくなる。打込機の全高が大きくなると、釘等の打込み作業時に、例えば柱と柱の間に本体が入らなくなり釘等を所望の位置に打込めなくなるという問題が発生する。
【0006】
また打込機のパワーを上げるには出来るだけ容積の小さなピストン上室に瞬間的に圧縮空気を流入させる必要がある。同公報記載の構成では反動吸収部材が衝撃ピストンよりも大きいため、ピストン上室に大きな空間が存在する構成となる。また圧縮空気のエネルギーが当該反動吸収部材の移動にも使われるため、釘等の打込みパワーが低下してしまうといった問題が生ずる。
【0007】
そこで、本発明は、全高を大きくせずに済み且つ打込みパワーを低下させることなく、打込み時の本体の反動を低減することができる打込機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、ハウジングと、該ハウジング内に設けられたシリンダと、該シリンダ内で上死点と下死点間を往復動可能に設けられたピストンと、を備え、該ピストンを該上死点から該下死点へ向かう方向へ移動させて該シリンダの軸方向に打撃力を発生させる打込機であって、該ピストンが該下死点に向かう移動を開始してから遅れて、該シリンダの軸方向において該ピストンの移動方向とは反対の方向へ移動するカウンターウェイトを有する打込機を提供している。
【0009】
ピストンの移動方向とは反対の方向へ移動可能な環状のカウンターウェイトを有しているため、ピストンがシリンダの一端側から他端側へと下降する反力がフレームやシリンダ等に作用してフレームやシリンダ等が上方へ押されるが、その一方でカウンターウェイトはピストンとは逆の方向に移動させられ、その反力をフレームやシリンダ等に作用させてフレームやシリンダ等を下方へ押すことができる。このため、フレームやシリンダ等に作用する反力を相殺することができ、反動を低減することができる。
【0010】
好ましくは、カウンターウェイトは、該戻り空気室の圧力上昇によって該シリンダの軸方向において該ピストンの移動方向とは反対の方向へ移動する。また、カウンターウェイトは、シリンダを囲む環状であるため、シリンダの周囲のスペースを利用してカウンターウェイトを配置させることができる。このため、ハウジングの外方に別途カウンターウェイトを設ける構成とせずに済み、ハウジングの外方に、カウンターウェイトが設けられた部分が突出することを防止することができる。このため打込機の外形形状をすっきりとした形状とすることができ、カウンターウェイトが設けられた部分が、打込み作業の妨げとなることを防止することができる。また、シリンダの軸方向における打込機の寸法が大きくなることを防止することができる。また、シリンダの周囲はデッドスペースになるため、デッドスペースを有効活用することができる。
【0011】
ここで、上死点から下死点へ向かう方向へ該ピストンを移動させているときに該ピストン上室に供給された圧縮空気を一時的に貯留し、下死点から上死点へ向かう方向へ該ピストンを戻すときに該一時的に貯留した圧縮空気を該ピストン下室へ戻すための戻り空気室を有し、該シリンダの周囲には、該シリンダの全周を取り囲むように形成されたサブシリンダ内空間を有し該シリンダの軸方向に延びる略筒状のサブシリンダが設けられ、該カウンターウェイトは、該シリンダと同軸的な位置関係で該サブシリンダ内空間内に配置され、該サブシリンダ内空間内で該サブシリンダの軸方向に往復動可能に設けられ、該サブシリンダ内空間を該サブシリンダの一端寄りに位置するサブピストン上室と該サブシリンダの他端寄りに位置するサブピストン下室とに区画するサブピストンからなり、該ピストンを上死点から下死点へ向かう方向へ移動させているときには該サブピストン下室と該ピストン上室とが連通可能であり、該ピストンを下死点から上死点へ向かう方向へ戻しているときには該サブピストン下室と該ピストン下室とが連通可能であることが好ましい。
【0012】
該ピストンを上死点から下死点へ向かう方向へ移動させているときには該サブピストン下室と該ピストン上室とが連通可能であり、該ピストンを下死点から上死点へ向かう方向へ戻しているときには該サブピストン下室と該ピストン下室とが連通可能であるため、戻り空気室内に流入した圧縮空気を利用してサブピストンを移動させることができる。このため、サブピストンを動かすためにのみ圧縮空気を使用せずに済み、圧縮空気の消費量を抑えることができる。また、簡単な構成により、シリンダの軸方向においてピストンの移動方向とは反対の方向へ移動可能なカウンターウェイトを構成することができる。
【0013】
該ピストンが該下死点に向かう移動を開始してから遅れて、該シリンダの軸方向において該ピストンの移動方向とは反対の方向へ移動するカウンターウェイトを有するため、止具を被打込み材に打込む際に打込機が受ける反力による反動を効果的に低減することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の打込機によれば、全高を大きくせずに済み且つ打込みパワーを低下させることなく、極力圧縮空気の消費量を抑え、打込み時の本体の反動を低減することができる打込機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態による打込機を示す側方部分断面図。
図2】本発明の実施の形態による打込機においてピストンが上死点に位置している状態を示す正面要部断面図。
図3】本発明の実施の形態による打込機においてピストンの上室に圧縮空気が流入始めた状態を示す正面要部断面図。
図4】本発明の実施の形態による打込機においてピストンが下死点に位置している状態を示す正面要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明による打込機の実施の形態について図1乃至図4を参照しながら説明する。以下の説明では、便宜上図1の上下をそれぞれ打込機1の上下と定義する。また、図1の右側から左側へと向かう方向を前方とし、その反対の方向を後方と定義する。また、図1の紙面の裏側から表側へと向かう方向を左方向とし、その反対の方向を右方向と定義する。
【0017】
図1に示すように、打込機1は圧縮空気により駆動する打込機であり、フレーム10とフレーム10の一方に位置するハンドル10Aとが一体で設けられている。フレーム10とハンドル10Aとはハウジングに相当する。ハンドル10Aには図示せぬエアホースが接続され、図示せぬエアホースを通して圧縮空気をハンドル10A内及びフレーム10内に形成された蓄圧室10aに供給可能である。
【0018】
フレーム10内には円筒状のシリンダ11が設けられており、シリンダ11内には上下に往復摺動可能にピストン12Aが設けられている。ピストン12Aにはドライバブレード12Bが一体に形成され、ドライバブレード12Bの先端部12Cによって図示せぬ止具たる釘を打込み可能である。また、シリンダ11の軸方向における略中央部には逆止弁12Dが備えられており、シリンダ11下部の外部には、ドライバブレード12Bを上死点に復帰させるために圧縮空気を貯める戻り空気室10bが、フレーム10の一部及びシリンダ11の一部により画成されている。圧縮空気は、逆止弁12Dによってシリンダ11内から戻り空気室10bへの一方向にのみ流れることができるように構成されている。またシリンダ11下部には、シリンダ11内と戻り空気室10b内とを常時連通する空気通路11aが形成されている。またシリンダ11下端には、図示せぬ止具打ち込み後のドライバブレード12Bの余剰エネルギーを吸収するためのピストンバンパ11Aが設けられている。
【0019】
戻り空気室10bは、シリンダ11の外周面とフレーム10の内周面とにより囲まれる空間により構成されており、シリンダ11の下端近傍から上端近傍に至るまで延びている。フレーム10及びシリンダ11の一部であって、逆止弁12Dよりも上側に位置する戻り空気室10bの上部を画成している部分はサブシリンダを構成しており、当該戻り空気室10bの上部はサブシリンダ内空間10dをなす。従って、サブシリンダ内空間10dは、その軸方向に長いリング状をなし、換言すれば、径方向に所定の厚みを有する筒状をなしている。
【0020】
サブシリンダ内空間10dをサブシリンダ内空間10dの軸方向に直交する面で切った断面積は、シリンダ11内の空間をシリンダ11の軸方向に直交する面で切った断面積よりもはるかに小さい。このため、サブシリンダ内空間10dの容積を小さく設計することができる。従って、後述のサブピストン11Bを駆動させる空気量を少なくすることができ、ピストン12Aの打込み力低下を最小限とすることができる。
【0021】
サブシリンダ内空間10dにはサブピストン11Bが設けられている。サブピストン11Bは、サブシリンダ内空間10dと同軸的な位置関係をなすリング状をなしており、サブシリンダ内空間10dの軸方向へシリンダ11の外周面及びフレーム10の内周面に対して摺動可能である。サブピストン11Bは、サブシリンダ内空間10dをサブピストン上室10fとサブピストン下室10g(図3等)とに区画する。
【0022】
サブピストン11B上端にはスプリング11Cの下端が当接しており、スプリング11Cの上端は戻り空気室10bの上端を画成する璧部に当接している。スプリング11Cの付勢力は、サブシリンダ内におけるサブピストン11Bの移動を妨げない程度に弱く、打込機1が動作していないときであって外部から力が作用していないときに、サブピストン11Bを下端(下死点)に配置させる程度である。戻り空気室10bの上端を画成する璧部には、サブピストン11Bが上方に移動してきたときにサブピストン11Bが衝突可能であり、当該衝突によりサブピストン11Bの移動の余剰エネルギーを吸収するためのゴム製のサブバンパ11Dが設けられている。サブピストン11Bの重量はピストン12Aの重量と同一であり、80g程度である。サブピストン11Bはカウンターウェイトに相当する。
【0023】
サブピストン11Bの下面にはゴム製のシール部材11Eが固定されている。シール部材11Eは、その径方向にサブピストン11Bの径方向の厚さと同様の幅を有し、その軸方向に所定の厚さを有するリング状をなしている。シール部材11Eは、シリンダ11の外周面及びフレーム10の内周面に常時当接することによりサブピストン上室10fとサブピストン下室10gとをシールする。
【0024】
ハンドル10Aの基部には操作部20が設けられている。操作部20は、作業者の指によって操作されるトリガ21と、トリガ21に回動可能に装着されたアームプレート22と、フレーム10の下端から突き出しアームプレート22近傍まで延びフレーム10の下端に沿って移動可能なプッシュレバー23とを有している。またハンドル10Aの基部でトリガ21に対向する箇所には後述のトリガバルブ部30が設けられている。
【0025】
作業者の指によるトリガ21の引き操作とプッシュレバー23の被打込材への押し当て操作との両方が同時に行われた時に、アームプレート22とトリガ21とにより構成されるリンク機構によって、後述のトリガバルブ部30のプランジャ32が押し上げられるように構成されている。
【0026】
フレーム10の下端には、図示せぬ止具を射出するための射出部13が設けられている。射出部13には、図示せぬ止具たる釘を充填するマガジン41と、マガジン41に装填された図示せぬ止具を順次射出口13aに給送する給送機構42とが接続されている。
【0027】
トリガバルブ部30は、図1に示すように、外方バルブブッシュ30A及び内方バルブ
ブッシュ30Bと、バルブピストン31と、プランジャ32とを有している。外方バルブブッシュ30A及び内方バルブブッシュ30Bは、トリガバルブの外郭をなすトリガバルブ外枠部としてフレーム10に固定されている。
【0028】
バルブピストン31は、外方バルブブッシュ30A内及び内方バルブブッシュ30B内に位置するように設けられており、外方バルブブッシュ30A及び内方バルブブッシュ30Bに対して往復摺動可能である。バルブピストン31は、図面には現れていないがその摺動方向の上端部が蓄圧室10aに面している。また、バルブピストン31の下方には、バルブピストン31の下端部と外方バルブブッシュ30Aとによってトリガバルブ室30aが画成されている。
【0029】
プランジャ32は、バルブピストン31の軸心位置に形成された貫通孔内に配置されており、貫通孔を画成するバルブピストン31に対して往復摺動可能である。プランジャ32の下端部は、トリガバルブ室30a内を貫通しており、バルブブッシュ30Aに形成された貫通孔を貫通しアームプレート22に当接可能である。
【0030】
バルブピストン31とプランジャ32との間にはスプリングが設けられており、バルブピストン31を上方に付勢すると共にプランジャ32を下方に付勢している。
【0031】
プランジャ32と外方バルブブッシュ30Aとの間には蓄圧室10aからトリガバルブ室30aに連通する空気通路30Aaが形成されている。おり、また、プランジャ32とバルブピストン31との間にはトリガバルブ室30aから大気に連通するトリガバルブ制御通路が形成されている。空気通路、トリガバルブ制御通路は、プランジャ32が摺動することにより択一的に連通/遮断される。
【0032】
またトリガバルブ部30は、後述のメインバルブ室10e(図2)より延びる図示せぬメインバルブ制御通路に接続されている。具体的には、バルブピストン31と内方バルブブッシュ30Bとの間であってメインバルブ制御通路の開口部の下方には、メインバルブ制御通路から蓄圧室10aに連通するメインバルブ入気通路が形成されている。また、バルブピストン31と内方バルブブッシュ30Bとの間であってメインバルブ制御通路の開口部の上方には、メインバルブ制御通路から大気に連通する第2空気通路が形成されている。そして、メインバルブ制御通路は、バルブピストン31と内方バルブブッシュ30Bとの間の空間をなすこれらメインバルブ入気通路、第2空気通路に連通可能である。メインバルブ入気通路、第2空気通路は、バルブピストン31が上下摺動することにより択一的に連通/遮断されるように構成されている。
【0033】
バルブピストン31が上死点側に位置している時には、メインバルブ入気通路が開通して蓄圧室10aとメインバルブ制御通路とが連通すると共に、第2空気通路が閉鎖してメインバルブ制御通路と大気とが遮断される。またバルブピストン31が下死点側に位置している時には、メインバルブ入気通路が閉鎖して、メインバルブ制御通路と蓄圧室10aとが遮断されると共に、第2空気通路が開通して、メインバルブ制御通路と大気とが連通する。
【0034】
プランジャ32が下死点側に位置している時には、トリガバルブ制御通路が閉鎖してトリガバルブ室30aと大気とが遮断されると共に、空気通路が開通して蓄圧室10aとトリガバルブ室30aとが連通する。また、プランジャ32が上死点側に位置している時には、トリガバルブ制御通路が開通してトリガバルブ室30aと大気とが連通すると共に、空気通路が閉鎖して蓄圧室10aとトリガバルブ室30aとが遮断される。
【0035】
図2等に示すように、シリンダ11の上端上方にはメインバルブ部50が設けられている。メインバルブ部50は、メインバルブ51と、シリンダ11の上方に固着されたメインバルブラバー52Aと、メインバルブ51を下死点側に付勢するメインバルブスプリング53と、シリンダ11の上方に設置され、ピストン12Aのピストン上室11bの圧縮空気を排気するための空気通路10cをメインバルブ51との当接によって遮断するエキゾーストラバー52Bとを有している。また空気通路10cはフレーム10上部に設けた図示せぬ排気穴を経て大気と連通している。
【0036】
メインバルブ51はフレーム10の一部より形成されるメインバルブ室画成部10D内に収容可能に設けられている。メインバルブ51を収容可能なメインバルブ室画成部10Dの部分はメインバルブ室10eをなし、メインバルブ制御通路に連通する。メインバルブ51の上部には、メインバルブ室10eと空気通路10cとの連通を常時遮断するOリング51Aが設けられている。また、メインバルブ51には、メインバルブ室10eと蓄圧室10aとの連通を常時遮断するOリング51Bが設けられている。Oリング51A、51Bによりメインバルブ室10eは気密性が保たれている。
【0037】
図3図4に示すように、メインバルブ51が上死点側に位置しているときには、メインバルブ51がエキゾーストラバー52Bと接触して空気通路10cを閉鎖しピストン12Aのピストン上室11bと大気とが遮断されると共にピストン上室11bと蓄圧室10aとが連通する。また、図2に示すように、メインバルブ51が下死点側に位置しているときには、メインバルブ51がメインバルブラバー52Aと接触してピストン12Aのピストン上室11bと蓄圧室10aとが遮断されると共に、メインバルブ51はエキゾーストラバー52Bから離間して空気通路10cを開通させ、ピストン上室11bと大気とを連通させる。
【0038】
次に、打込機1による打ち込み動作について説明する。先ず、打込機1に図示せぬエアホースをつなぎ、圧縮空気を蓄圧室10aに蓄積する。スプリングの付勢力によってプランジャ32は下死点に位置している。プランジャ32が下死点に位置することにより空気通路が開通しており、蓄圧室10aとトリガバルブ室30aとが連通している。同時にトリガバルブ制御通路が閉鎖されているため、トリガバルブ室30aと大気との連通は遮断されており、蓄圧室10a内の圧縮空気の一部は空気通路を介してトリガバルブ室30a内に流入し蓄圧室10aと同圧の空気が蓄積されている。
【0039】
このときバルブピストン31は上死点に位置している。バルブピストン31が上死点に位置していることによりメインバルブ入気通路が開通して、蓄圧室10aと、メインバルブ制御通路と、が連通している。同時に第2空気通路が閉鎖されているため、メインバルブ制御通路と大気との連通は遮断されており、蓄圧室10a内の圧縮空気の一部はメインバルブ制御通路に流入し、メインバルブ室10eに蓄圧室10aと同圧の空気が蓄積される。蓄圧室10a内の圧縮空気の一部がメインバルブ室10e内に流入しているため、圧縮空気及びメインバルブスプリング53の付勢力によって、メインバルブ51は下死点に位置している。
【0040】
メインバルブ51が下死点に位置することにより、メインバルブ51がメインバルブラバー52Aと接触し、エキゾーストラバー52Bと僅かに離間して空気通路10cが開通する。よってシリンダ11内のピストン12Aのピストン上室11bと大気とが連通されてピストン上室11bが大気圧となっている。また、ピストン上室11bと蓄圧室10aとの連通は遮断されているため、ピストン上室11bに蓄圧室10aよりの空気が流入することはない。よってピストン12Aは上死点側で停止した状態にある。
【0041】
次に、トリガ21の引き操作およびプッシュレバー23の被打込材への押し当て操作の両方を行い、プランジャ32を上死点に押し上げる。プランジャ32が上死点側に位置することにより、トリガバルブ制御通路が開通する。このことによりトリガバルブ室30aと大気とが連通し、トリガバルブ室30a内は大気圧となる。また空気通路が閉鎖して蓄圧室10aとトリガバルブ室30aとの連通を遮断し、蓄圧室10aからトリガバルブ室30a内への空気の流入が停止する。この結果、トリガバルブ室30a内が大気圧となるため、バルブピストン31の蓄圧室10a側が受ける圧力とトリガバルブ室30a側が受ける圧力に差が生じ、バルブピストン31は下死点へと移動する。
【0042】
バルブピストン31が下死点に位置することにより、メインバルブ入気通路が閉鎖してメインバルブ制御通路と蓄圧室10aとの連通が遮断され、蓄圧室10aからメインバルブ制御通路への空気の流入が停止する。また、第2空気通路が開通してメインバルブ制御通路と大気とが連通される。これによりメインバルブ制御通路内が大気圧となり、メインバルブ制御通路に連なるメインバルブ室10e内も大気圧になる。メインバルブ室10e内が略大気圧になると、メインバルブ51が上死点側に移動する。
【0043】
メインバルブ51が上死点側に移動し始めると、蓄圧室10aとピストン12Aのピストン上室11bが連通するため、メインバルブ51は急激に上死点側に移動し、エキゾーストラバー52Bに当接し、蓄圧室10a及びピストン12Aのピストン上室11bと大気との連通とが遮断される。
【0044】
メインバルブ51が下死点から上死点へと移動することにより蓄圧室10aからのピストン12Aのピストン上室11bに圧縮空気が流入し、ピストン12Aは急激に下死点側に移動し、先端部12Cにより図示せぬ止具を打ち込む。この際、図示せぬ止具からドライバブレード12Bが反力を受け、ピストンピストン上室11b内の圧縮空気を介してフレーム10等を上方へ押し上げる。
【0045】
ピストン12Aの下死点側への移動中に、シリンダ11内のピストン12A下側の空気は、空気通路11aを介して戻り空気室10bに流入する。ピストン12Aが逆止弁12Dを通過すると、ピストン12Aのピストン上室11bの圧縮空気は逆止弁12D及び空気通路11aを通してピストン上室11bから戻り空気室10b内へと流入する。流入した圧縮空気により、スプリング11Cの付勢力に抗してサブピストン11Bが上方へ移動する。このことにより、ピストン12Aの移動に伴い発生する反力と、サブピストン11Bの移動に伴い発生する反力とが相殺し合う。
【0046】
該ピストンが該下死点に向かう移動を開始してから遅れて、該シリンダの軸方向において該ピストンの移動方向とは反対の方向へ移動するカウンターウェイトを有するため、止具を被打込み材に打込む際に打込機が受ける反力による反動を効果的に低減することができる。
【0047】
次に、メインバルブ51が下死点に移動してメインバルブラバー52Aに接触することにより蓄圧室10aとピストン12Aのピストン上室11bとの連通が遮断され、エキゾーストラバー52Bと離間することによりピストン上室11bと大気とが連通する。戻り空気室10bに蓄積された圧縮空気によってピストン12A下側が押圧され、ピストン12Aは急激に上死点側に移動する。これに伴い、サブピストン11Bは下死点へ戻る。ピストン上室11bの空気は、空気通路10cを介して排気穴から大気に放出される。
【0048】
その後、ピストン12Aはピストン下室11c内の圧縮空気で押し上げられ上死点まで復帰する。ピストン12Aの復帰に従い、ピストン下室11cの圧縮空気は膨張し圧力は低くなり、更にピストン12Aのドライバブレード12Bと射出口13aとの隙間から排気されるため低くなる。
【0049】
次に、トリガ21を戻すかプッシュレバー23の被打込材への押し当て操作をやめると、プランジャ32は上端部に作用する蓄圧室10aの圧力とスプリングの押圧力によって下死点側に移動する。プランジャ32が下死点に移動することにより、トリガバルブ制御通路が遮断され、空気通路を介して蓄圧室10aの圧縮空気がトリガバルブ室30aに流入する。
【0050】
トリガバルブ室30aに圧縮空気が流入すると、バルブピストン31の上部端面の面積および下方端面の面積の差により発生する押圧力と、スプリングの付勢力とによって、バルブピストン31は上死点側に移動する。
【0051】
シリンダ11の軸方向においてピストンの移動方向とは反対の方向へ移動可能なサブピストン11Bが設けられているため、ピストン12Aがシリンダ11の一端側から他端側へと下降する反力がフレーム10やシリンダ11等に作用してフレーム10やシリンダ11等が上方へ押されるが、その一方でカウンターウェイトはピストン12Aとは逆の方向に移動させられ、その反力をフレーム10やシリンダ11等に作用させてフレーム10やシリンダ11等を下方へ押すことができる。このため、フレーム10やシリンダ11等に作用する反力を相殺することができ、反動を低減することができる。
【0052】
また、シリンダ11の周囲に環状のカウンターウェイトが環装されている構成としたため、シリンダ11の周囲のスペースを利用してカウンターウェイトを配置させた構成とすることができる。このため、ハウジングたるフレーム10の外方に別途カウンターウェイトを設ける構成とせずに済み、フレーム10の外方に、カウンターウェイトが設けられた部分が突出することを防止することができる。このため打込機の外形形状をすっきりとした形状とすることができ、カウンターウェイトが設けられた部分が、打込み作業の妨げとなることを防止することができる。
【0053】
また、カウンターウェイトたるサブピストン11Bは、シリンダ11に環装されているため、シリンダ11の軸方向における打込機の寸法が大きくなることを防止することができる。また、この位置はデッドスペースになるため、デッドスペースを有効活用することができる。
【0054】
また、戻り空気室10bの一部がサブシリンダ内空間10dをなすため、戻り空気室10b内に流入した圧縮空気を利用してサブピストン11Bを移動させることができる。このため、サブピストン11Bを動かすためにのみ圧縮空気を使用せずに済み、圧縮空気の消費量を抑えることができる。また、簡単な構成により、シリンダ11の軸方向においてピストン12Aの移動方向とは反対の方向へ移動可能なカウンターウェイトを構成することができる。
【0055】
本発明による打込機は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。例えば、サブシリンダやサブピストン11Bの寸法や重量は本実施の形態のものに限定されない。例えば、サブピストン下室10gを画成するサブピストン11Bの下面の面積は、ピストン上室12bを画成するピストン12Aの上面の面積と同一であってもよい。このように構成することにより、圧縮空気を受ける受圧面積を同一とすることができ、容易にシリンダ11の軸方向においてピストン12Aの移動方向とは反対の方向へサブピストン11Bを移動可能とすることができる。
【0056】
また、戻り空気室10bに流入した圧縮空気によりサブピストン11Bを押し上げる構成としたが、サブピストン11Bを押し上げる構成はこの構成に限定されない。
【0057】
上記実施形態は、圧縮空気で駆動する打込機としたが、ピストンが下死点に向かう移動を開始してから遅れて、ピストンの移動方向とは反対の方向へ移動するカウンターウェイト及び電動データを備えた電動式打込機であっても良く、このような電動式打込機であっても止具を打込む際に発生する反力による反動を効果的に低減することができるものである。また、カウンターウェイトをピストンの移動方向と反対の方向に動かす動力源は、電力であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、釘等の打込み時に反動が少ないことが要求される打込機の分野において特に有用である。
【符号の説明】
【0059】
1・・・打込機 10・・・フレーム 10b・・・戻り空気室 11・・・シリンダ 11b・・・ピストン上室 11c・・・ピストン下室 10f・・・サブピストン上室 10g・・・サブピストン下室 11B・・・サブピストン 11C・・・スプリング 12A・・・ピストン
図1
図2
図3
図4