特許第5839400号(P5839400)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5839400
(24)【登録日】2015年11月20日
(45)【発行日】2016年1月6日
(54)【発明の名称】サイレントチェーン
(51)【国際特許分類】
   F16G 13/06 20060101AFI20151210BHJP
【FI】
   F16G13/06 E
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-176349(P2012-176349)
(22)【出願日】2012年8月8日
(65)【公開番号】特開2014-35020(P2014-35020A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2015年6月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(74)【代理人】
【識別番号】100111372
【弁理士】
【氏名又は名称】津野 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100112298
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100168538
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 来
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 健雄
(72)【発明者】
【氏名】戸原 隆
【審査官】 稲垣 彰彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−70954(JP,A)
【文献】 米国特許第5345753(US,A)
【文献】 実開平7−10586(JP,U)
【文献】 特開2010−139075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G 13/00−15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のガイド列と、複数の非ガイド列と、それぞれが長手方向で隣り合う前記ガイド列および前記非ガイド列を屈曲可能に連結する複数のロッカピンとを備え、前記ガイド列が、1対のガイドプレートと幅方向で前記1対のガイドプレートの間に配置されている1以上の第1プレートとから構成され、前記非ガイド列が、幅方向で前記1対のガイドプレートの間に配置されている複数の第2プレートから構成され、前記ロッカピンが、前記各ガイドプレートのガイドピン孔、前記各第1プレートの第1ピン孔および前記各第2プレートの第2ピン孔に挿入されている長ピンと、前記第1ピン孔および前記第2ピン孔に挿入されていると共に前記長ピンよりも長さが短い短ピンとから構成され、前記長ピンおよび前記短ピンが、前記ガイド列毎のすべての前記第1プレートおよび前記非ガイド列毎のすべての前記第2プレートを幅方向に貫通しているサイレントチェーンにおいて、
前記1対のガイドプレートである第1,第2ガイドプレートと幅方向でそれぞれ隣り合う1対の前記第2プレートである第1,第2隣接プレートには、第1,第2当接部がそれぞれ設けられ、
前記短ピンには、幅方向での第1方向に向かって前記第1当接部と当接可能な第1ストッパと、前記第1方向とは反対方向の第2方向に向かって前記第2当接部と当接可能な第2ストッパとが設けられ、
前記第1ストッパおよび前記第1当接部の当接により、前記短ピンの前記第1端面が、前記第1隣接プレートの前記第2ピン孔内に位置することが防止され、前記第2ストッパおよび前記第2当接部の当接により、前記短ピンの前記第2端面が、前記第2隣接プレートの前記第2ピン孔内に位置することが防止されることを特徴とするサイレントチェーン。
【請求項2】
前記短ピンの長さが、前記第1ストッパおよび前記第1当接部が当接している第1当接状態で前記第2ストッパが前記第1方向に向かって前記第2ガイドプレートに当接しているときに、前記短ピンおよび前記第1隣接プレートと前記第1ガイドプレートとの間に幅方向での隙間が形成され、かつ、前記第2ストッパおよび前記第2当接部が当接している第2当接状態で前記第1ストッパが前記第2方向に向かって前記第1ガイドプレートに当接しているときに、前記短ピンおよび前記第2隣接プレートと前記第2ガイドプレートとの間に幅方向での隙間が形成される長さに設定されていることを特徴とする請求項1に記載のサイレントチェーン。
【請求項3】
前記第1ガイドプレートには、前記第1ストッパの全体を収容可能な第1凹部が設けられ、
前記第2ガイドプレートには、前記第2ストッパの全体を収容可能な第2凹部が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のサイレントチェーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長手方向で隣り合うガイド列および非ガイド列が、長ピンおよび短ピンから構成されるロッカピンにより屈曲可能に連結されているサイレントチェーンに関する。
サイレントチェーンは、チェーン伝動装置に備えられ、該チェーン伝動装置は、例えば自動車用の動力装置に使用される。
【背景技術】
【0002】
従来、ガイド列および非ガイド列を屈曲可能に連結するロッカピンを備えるサイレントチェーンにおいて、ロッカピンは、長ピンおよび短ピンから構成される。
図9を参照すると、サイレントチェーン500において、ロッカピン504の長ピン540は、1対のガイドプレート511,512のガイドピン孔513に抜け止めされた状態で保持されていると共に、複数の第1プレート520の第1ピン孔523および複数の第2プレート530の第2ピン孔533に挿入されている。ロッカピン504の短ピン550は、第1ピン孔523および第2ピン孔533に挿入されている。
【0003】
ところで、通常、組立後のサイレントチェーン500には、組立歪みを除去する目的で、サイレントチェーン500の走行時に発生する張力よりも大きく設定された大きさの引張荷重であるプルーフ荷重が、チェーン長手方向に加えられる。このプルーフ荷重が加えられたことで張力が発生しているサイレントチェーン500において、第1,第2プレート520,530に対してチェーン幅方向に相対的に移動可能である短ピン550は、その端部551,552の端面553,554がガイドプレート511,512と隣り合う第2プレート530である隣接プレート531,532の第2ピン孔533である隣接ピン孔533A,533B内に位置する状態になっていることがある。
例えば、図5に示されるように、端面553が隣接ピン孔533A内に位置する場合に、隣接ピン孔533A内では、短ピン550と、長ピン540および隣接ピン孔533Aの壁面538との接触領域の、チェーン幅方向での幅が小さいことに起因して、端面553を有する端部551と、長ピン540および壁面538との間の接触圧が過大になり、端部551において、端面553付近の部位Pには、該接触圧により過度の応力集中が発生する。このとき、短ピン550において、端部551に発生する過度の応力集中に起因して、サイレントチェーン500の強度を低下させる原因となるクラックが生じることがある。
また、同様の応力集中は、走行中のサイレントチェーン500においても、その張力の増大時に発生することがある。
【0004】
そこで、チェーン幅方向で1対のガイドプレートと隣り合う隣接プレートのピン孔内において、短ピンと、長ピンおよび前記ピン孔の壁面との接触領域の、チェーン幅方向での幅を大きくするために、短ピンが各隣接プレートを常に貫通している状態を実現する技術が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−320619号公報(段落0047〜0059、図4〜13)
【特許文献2】実開平7−10586号公報(実用新案登録請求の範囲、図1図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ガイド列の第1プレートおよび非ガイド列の第2プレートと短ピンとの、チェーン幅方向での相対移動を考慮したとき、短ピンが常に隣接プレートを貫通している状態を確実に維持するためには、短ピンの長さが長くなる傾向がある。このため、サイレントチェーンの重量が増大するという問題、そして、サイレントチェーンがチェーン幅方向で大型化するという問題があった。
【0007】
本発明は、前述の課題を解決するものであり、本発明の目的は、長ピンおよび短ピンから構成されるロッカピンにおける短ピンでの過度の応力集中の発生を防止しながら、短ピンの短縮化により、軽量化され、かつ幅方向で小型化されるサイレントチェーンを提供することである。
本発明の他の目的は、さらに、幅方向での小型化を実現しながら、短ピンに設けられるストッパの破損が防止されるサイレントチェーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、複数のガイド列と、複数の非ガイド列と、それぞれが長手方向で隣り合う前記ガイド列および前記非ガイド列を屈曲可能に連結する複数のロッカピンとを備え、前記ガイド列が、1対のガイドプレートと幅方向で前記1対のガイドプレートの間に配置されている1以上の第1プレートとから構成され、前記非ガイド列が、幅方向で前記1対のガイドプレートの間に配置されている複数の第2プレートから構成され、前記ロッカピンが、前記各ガイドプレートのガイドピン孔、前記各第1プレートの第1ピン孔および前記各第2プレートの第2ピン孔に挿入されている長ピンと、前記第1ピン孔および前記第2ピン孔に挿入されていると共に前記長ピンよりも長さが短い短ピンとから構成され、前記長ピンおよび前記短ピンが、前記ガイド列毎のすべての前記第1プレートおよび前記非ガイド列毎のすべての前記第2プレートを幅方向に貫通しているサイレントチェーンにおいて、前記1対のガイドプレートである第1,第2ガイドプレートと幅方向でそれぞれ隣り合う1対の前記第2プレートである第1,第2隣接プレートには、第1,第2当接部がそれぞれ設けられ、前記短ピンには、幅方向での第1方向に向かって前記第1当接部と当接可能な第1ストッパと、前記第1方向とは反対方向の第2方向に向かって前記第2当接部と当接可能な第2ストッパとが設けられ、前記第1ストッパおよび前記第1当接部の当接により、前記短ピンの前記第1端面が、前記第1隣接プレートの前記第2ピン孔内に位置することが防止され、前記第2ストッパおよび前記第2当接部の当接により、前記短ピンの前記第2端面が、前記第2隣接プレートの前記第2ピン孔内に位置することが防止されることにより、前述の課題を解決したものである。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の構成に加えて、前記短ピンの長さが、前記第1ストッパおよび前記第1当接部が当接している第1当接状態で前記第2ストッパが前記第1方向に向かって前記第2ガイドプレートに当接しているときに、前記短ピンおよび前記第1隣接プレートと前記第1ガイドプレートとの間に幅方向での隙間が形成され、かつ、前記第2ストッパおよび前記第2当接部が当接している第2当接状態で前記第1ストッパが前記第2方向に向かって前記第1ガイドプレートに当接しているときに、前記短ピンおよび前記第2隣接プレートと前記第2ガイドプレートとの間に幅方向での隙間が形成される長さに設定されていることにより、前述の課題を解決したものである。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に係る発明の構成に加えて、前記第1ガイドプレートには、前記第1ストッパの全体を収容可能な第1凹部が設けられ、前記第2ガイドプレートには、前記第2ストッパの全体を収容可能な第2凹部が設けられていることにより、前述の課題を解決したものである。
【0011】
本発明に関連して、長手方向はチェーン長手方向であり、幅方向はチェーン幅方向であり、高さ方向はチェーン高さ方向である。そして、高さ方向は、直線状態にあるサイレントチェーンを基準としたときに、長手方向および幅方向に直交する方向である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のサイレントチェーンは、複数のガイド列と、複数の非ガイド列と、それぞれが長手方向で隣り合うガイド列および非ガイド列を屈曲可能に連結する複数のロッカピンとを備え、ガイド列が、1対のガイドプレートと幅方向で1対のガイドプレートの間に配置されている1以上の第1プレートとから構成され、非ガイド列が、幅方向で1対のガイドプレートの間に配置されている複数の第2プレートから構成され、ロッカピンが、各ガイドプレートのガイドピン孔、各第1プレートの第1ピン孔および各第2プレートの第2ピン孔に挿入されている長ピンと、第1ピン孔および第2ピン孔に挿入されていると共に長ピンよりも長さが短い短ピンとから構成され、長ピンおよび短ピンが、ガイド列毎のすべての第1プレートおよび非ガイド列毎のすべての第2プレートを幅方向に貫通していることにより、各ロッカピンの短ピンは、各非ガイド列において幅方向で1対のガイドプレートと隣り合う1対の第2プレートである第1,第2隣接プレートを、その第2ピン孔を貫通している状態で支持する。このため、サイレントチェーンに張力が発生しているときに、短ピンの第1,第2端部での過度の応力集中の発生を防止することができるので、短ピンの耐久性を向上させることができ、また、組立後のサイレントチェーンに加えられるプルーフ荷重を増大させて、第1,第2プレートでの残留圧縮応力を大きくすることができるので、サイレントチェーンの弾性伸びを減少させて、歯飛び防止効果を向上させることができるばかりでなく、以下のような本発明に特有の効果を奏する。
【0013】
すなわち、請求項1に係る本発明のサイレントチェーンによれば、1対のガイドプレートである第1,第2ガイドプレートと幅方向でそれぞれ隣り合う1対の第2プレートである第1,第2隣接プレートには、第1,第2当接部がそれぞれ設けられ、短ピンには、幅方向での第1方向に向かって第1当接部と当接可能な第1ストッパと、第1方向とは反対方向の第2方向に向かって第2当接部と当接可能な第2ストッパとが設けられ、第1ストッパおよび第1当接部の当接により、短ピンの第1端面が、第1隣接プレートの第2ピン孔内に位置することが防止され、第2ストッパおよび第2当接部の当接により、短ピンの第2端面が、第2隣接プレートの第2ピン孔内に位置することが防止されることにより、短ピンの長さ自体とは無関係に、短ピンの第1,第2ストッパと、第1,第2隣接プレートの第1,第2当接部とが当接状態になることで、短ピンの第1,第2端面が第1,第2隣接プレートの第2ピン孔内にそれぞれ位置しないように、例えば短ピンが第1,第2隣接プレートの第2ピン孔をそれぞれ常時貫通しているように設定できる。このため、短ピンの長さを、第1,第2ストッパが設けられる範囲で短縮できるので、短ピンの短縮化により、サイレントチェーンを軽量化することができ、またサイレントチェーンを幅方向で小型化することができる。
【0014】
請求項2に係る本発明のサイレントチェーンによれば、請求項1に係る発明が奏する効果に加えて、短ピンの長さが、第1ストッパおよび第1当接部が当接している第1当接状態で第2ストッパが第1方向に向かって第2ガイドプレートに当接しているときに、短ピンおよび第1隣接プレートと第1ガイドプレートとの間に幅方向での隙間が形成され、かつ、第2ストッパおよび第2当接部が当接している第2当接状態で第1ストッパが前記第2方向に向かって第1ガイドプレートに当接しているときに、短ピンおよび第2隣接プレートと第2ガイドプレートとの間に幅方向での隙間が形成される長さに設定されていることにより、第1当接状態で第2ストッパが第2ガイドプレートに当接しているとき、および、第2当接状態で第1ストッパが第1ガイドプレートに当接しているときに、短ピンと第1ガイドプレートとの間および短ピンと第2ガイドプレートとの間に、それぞれ幅方向での隙間が形成される分、短ピンが幅方向で短くなり、かつ該短縮化により短ピンが軽量化されるので、サイレントチェーンを、幅方向で小型化すること、および、軽量化することができる。
また、第1当接状態および第2当接状態において、幅方向での前記隙間が形成されるので、第1,第2ストッパにより、第1ガイドプレートと第1隣接プレートとの接触および第2ガイドプレートと第2隣接プレートとの接触が抑制されて、該接触に起因する第1,第2ガイドプレートおよび第1,第2隣接プレートでの摩耗および摩擦抵抗を低減することができる。
【0015】
さらに、幅方向での短ピンの移動量は、第1,第2ガイドプレートに当接可能な第1,第2ストッパにより規定されるので、第1ストッパと第1ガイドプレートとが当接しているときに(または、第2ストッパと第2ガイドプレートとが当接しているときに)、第1隣接プレート(第2隣接プレート)が第2方向(第1方向)に移動して第1ストッパ(第2ストッパ)に当接したとしても、第1ストッパ(第2ストッパ)は当接している第1ガイドプレート(第2ガイドプレート)に支持されるので、第1ストッパ(第2ストッパ)の破損(例えば、折曲がり)を、第1ストッパ(第2ストッパ)の剛性を高めることなく防止することができる。しかも、第1,第2ストッパの剛性を高めることが不要になる分、短ピンを軽量化することができる。
【0016】
請求項3に係る本発明のサイレントチェーンによれば、請求項1または請求項2に係る発明が奏する効果に加えて、第1ガイドプレートには、第1ストッパの全体を収容可能な第1凹部が設けられ、第2ガイドプレートには、第2ストッパの全体を収容可能な第2凹部が設けられていることにより、第1,第2ストッパは、第1,第2凹部にそれぞれ収容されるので、サイレントチェーンが幅方向で小型化されるうえ、第1,第2ストッパが第1,第2凹部に収容されている状態では、短ピンの端面が第1,第2ガイドプレートの内部にそれぞれ位置するので、チェーンに発生する張力に付勢された短ピンにより長ピンに発生する剪断力を低減することができて、長ピンの耐久性を向上させることができる。
さらに、各ストッパの全体が凹部に収容されるので、サイレントチェーンを幅方向で一層小型化することができる。しかも、第1ストッパの全体が第1凹部内に位置するときには(または、第2ストッパの全体が第2凹部内に位置するときには)、第1隣接プレート(第2隣接プレート)が短ピンに対して第2方向(第1方向)に移動したとしても、該第1隣接プレート(第2隣接プレート)が第1ガイドプレート(第2ガイドプレート)と当接することにより、第1隣接プレート(第2隣接プレート)と第1ストッパ(第2ストッパ)との当接が回避されるため、第1,第2ストッパの破損を、第1,第2ストッパの剛性を高めることなく防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施例を示し、サイレントチェーンの要部側面図であり、一部が図2のI−I線断面図。
図2図1のIIa矢視図であり、一部が図1のIIb−IIb線断面図。
図3図2の要部拡大図。
図4】本発明の第2実施例を示し、図3に相当する図。
図5】本発明の第3実施例を示し、図3でのピン孔付近の断面図に相当する図。
図6図5のVI−VI線断面図。
図7】本発明の第4実施例を示し、図3でのピン孔付近の断面図に相当する図。
図8図7のVIII−VIII線断面図。
図9】従来技術のサイレントサイレントチェーンを示し、図3に相当する図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のサイレントチェーンは、複数のガイド列と、複数の非ガイド列と、それぞれが長手方向で隣り合うガイド列および非ガイド列を屈曲可能に連結する複数のロッカピンとを備え、ガイド列が、1対のガイドプレートと幅方向で1対のガイドプレートの間に配置されている1以上の第1プレートとから構成され、非ガイド列が、幅方向で1対のガイドプレートの間に配置されている複数の第2プレートから構成され、ロッカピンが、各ガイドプレートのガイドピン孔、各第1プレートの第1ピン孔および各第2プレートの第2ピン孔に挿入されている長ピンと、第1ピン孔および第2ピン孔に挿入されていると共に長ピンよりも長さが短い短ピンとから構成され、長ピンおよび短ピンが、ガイド列毎のすべての第1プレートおよび非ガイド列毎のすべての第2プレートを幅方向に貫通しており、1対のガイドプレートである第1,第2ガイドプレートと幅方向でそれぞれ隣り合う1対の第2プレートである第1,第2隣接プレートには、第1,第2当接部がそれぞれ設けられ、短ピンには、幅方向での第1方向に向かって第1当接部と当接可能な第1ストッパと、第1方向とは反対方向の第2方向に向かって第2当接部と当接可能な第2ストッパとが設けられ、第1ストッパおよび第1当接部の当接により、短ピンの第1端面が、第1隣接プレートの第2ピン孔内に位置することが防止され、第2ストッパおよび第2当接部の当接により、短ピンの第2端面が、第2隣接プレートの第2ピン孔内に位置することが防止されることで、長ピンおよび短ピンから構成されるロッカピンにおける短ピンでの過度の応力集中の発生を防止しながら、短ピンの短縮化により、軽量化され、かつ幅方向で小型化されるものであれば、その具体的な態様はいかなるものであっても構わない。
【0019】
例えば、本発明のサイレントチェーンを備えるチェーン伝動装置が使用される機械には、自動車用の動力装置(すなわち、エンジンおよび動力伝達装置を備える装置)、産業機械または搬送装置などが含まれる。前記エンジンは、内燃機関または内燃機関以外のもの(例えば、電動モータ)である。
【実施例】
【0020】
以下、本発明の実施例を図1図8を参照して説明する。
図1図3は、第1実施例を説明するための図である。
図1を参照すると、第1実施例において、サイレントチェーン100(以下、「チェーン100」という。)は、無端のチェーンであり、チェーン伝動装置に備えられる。該チェーン伝動装置は、自動車に搭載される動力装置に使用される。
前記チェーン伝動装置は、チェーン100のほかに、該チェーン100が掛け渡される複数のスプロケットから構成されるスプロケット装置を備える。前記複数のスプロケットの少なくとも1つは、チェーン駆動装置としての前記動力装置のエンジンにより回転駆動される駆動スプロケットである。
【0021】
図1図2を参照すると、チェーン100は、複数のガイド列101と、複数の非ガイド列103と、複数のロッカピン104とを備える。長手方向で隣り合うガイド列101および非ガイド列103は、ロッカピン104により屈曲可能に連結されて、長手方向に交互に連鎖している。
【0022】
各ガイド列101は、1対のガイドプレートである第1,第2ガイドプレート111,112と、幅方向で両ガイドプレート111,112の間に配置される1以上の、本実施例では複数の第1プレート120とから構成される。各ガイドプレート111,112には、長手方向で離隔する1対のガイドピン孔113が設けられる。また、各第1プレート120には、長手方向で離隔する1対の第1ピン孔123と、前記スプロケットと噛合可能な1対の歯124とが設けられる。
各非ガイド列103は、幅方向で両ガイドプレート111,112の間に配置される複数の第2プレート130から構成される。各第2プレート130には、長手方向で離隔する1対の第2ピン孔133と、前記スプロケットと噛合可能な1対の歯134とが設けられる。各第2プレート130は、長手方向での両側で隣接する1対のガイド列101に亘って、かつ幅方向で第1プレート120と交互に配列されている。
各歯124,134は、チェーン100における前記スプロケットとの噛合部である。
【0023】
ロッカピン104は、長ピン140と、幅方向での長さが長ピン140の長さよりも短い短ピン150とから構成される。長ピン140は、第1ピン孔123および第2ピン孔133に、各プレート120,130に対して幅方向に移動可能に挿入され、ガイドピン孔113に、その両端部141,142において、ガイドプレート111,112に対して回止めおよび抜止め(例えば、圧入)が施された状態で挿入されて保持されている。
短ピン150は、第1ピン孔123および第2ピン孔133のみに、第1,第2プレート120,130に対して幅方向に移動可能に挿入されている。図1に示されるように、短ピン150の外周面157(図2も参照)は、第2ピン孔133の孔壁面133wに着座する背面157aと、長ピン140の外周面147の転動面147bと接触しつつ転動可能な転動面157bと、短ピン150の転動時に第1ピン孔123の孔壁面132w(図2参照)に摺接する1対の摺動面157cとを有する。
そして、各ロッカピン104の長ピン140および短ピン150は、ガイド列101および非ガイド列103を連結している状態で、ガイド列101毎のすべての第1プレート120および非ガイド列103毎のすべての第2プレート130を、常に幅方向に貫通している状態にある。
【0024】
図3を主に参照し、適宜図1図2を参照すると、幅方向で第1,第2ガイドプレート111,112とそれぞれ隣り合う1対の第2プレート130である第1,第2隣接プレート131,132には、第1,第2当接部135,136がそれぞれ設けられる。第1,第2当接部135,136は、それぞれ、第1,第2ガイドプレート111,112の側面111a,112aと幅方向で対向する第1,第2隣接プレート131,132の側面131a,132aの一部であり、いずれも第2ピン孔133である第1,第2隣接ピン孔133A,133Bを囲んでいる開口縁部である。
【0025】
短ピン150は、幅方向での両端部である第1,第2端部151,152を有する。第1,第2端部151,152は、短ピン150の両端面である第1,第2端面153,154をそれぞれ有する。
第1,第2端部151,152には、第1,第2端部151,152を塑性変形させる(例えば、かしめる)ことにより形成された塑性変形部としての部により、それぞれ構成される第1,第2ストッパ155,156が、例えば短ピン150との一体成形により、短ピン150と一体に設けられる。第1ストッパ155は、短ピン150が第1隣接プレート131に対して幅方向での第1方向に相対的に移動するときに該第1方向に向かって第1当接部135と当接可能である。第2ストッパ156は、短ピン150が第2隣接プレート132に対して第1方向とは反対方向の第2方向に相対的に移動するときに該第2方向に向かって第2当接部136と当接可能である。
【0026】
第1,第2ストッパ155,156は、短ピン150の外周面157の、第1,第2端面153,154にそれぞれ連なる部位158,159(図1図2も参照)の一部において、該外周面157から幅方向に直交する方向に突出している、より具体的には、背面157aと同じ周方向位置において、径方向、かつ長手方向で、背面157aから第2ピン孔133の外方に突出している突部である。
このため、第1,第2ストッパ155,156は、第1,第2隣接プレート131,132とそれぞれ当接することにより、該隣接プレート131,132の、幅方向に直交する平面に対する幅方向への傾斜を抑制するので、隣接プレート131,132の該傾斜に起因するプレート111,131;112,132;120,130同士の接触が抑制されて、該接触に起因するプレート111,112,120,130での摩耗および摩擦抵抗を低減することができる。
なお、周方向および径方向は、それぞれ、幅方向に平行で各ピン孔123,133内を貫通する1つの直線(例えば、第2ピン孔133の円弧状部分の曲率中心を通る直線)を中心とする周方向および径方向である。
【0027】
ロッカピン104がすべての第1,第2ピン孔123,133に挿入される際には、幅方向に積層されたすべての第1,第2プレート120,130の第1,第2ピン孔123,133に対して、先ず、短ピン150が挿入されて、第1,第2ストッパ155,156が第1,第2隣接ピン孔133A,133Bをそれぞれ貫通している状態に保持され、次いで、長ピン140が挿入される。
【0028】
第1,第2ストッパ155,156は、幅方向で第1,第2隣接プレート131,132と対向していて第1,第2当接部135,136と当接可能な第1,第2当接面155a,156aと、幅方向で第1,第2ガイドプレート111,112と対向していて当接可能な第1,第2対向面155b,156bとを、それぞれ有する。
第1,第2当接面155a,156aは、幅方向で第1,第2端面153,154よりも第1,第2隣接プレート131,132寄りにそれぞれ位置する。第1,第2対向面155b,156bは、幅方向で第1,第2端面153,154とそれぞれ同じ位置にあり、第1,第2端面153,154とそれぞれ同一平面上にある。
【0029】
第1ストッパ155および第1当接部135が、図3に実線で示されるように、幅方向で当接している第1当接状態にあるときに、第1端面153は、その全体で、第1隣接ピン孔133Aが開口している側面131aから第2方向に突出しており、第2端面154は、その全体で、第2隣接ピン孔133Bが開口している側面132aから第1方向に突出している。このため、短ピン150が第1隣接プレート131に対して第1方向に相対的に移動するときに、第1端面153が第1隣接ピン孔133A内に位置することが防止される。
【0030】
同様に、第2ストッパ156および第2当接部136が、図3に二点鎖線で示されるように、幅方向で当接している第2当接状態にあるときに、第2端面154は、その全体で、側面132aから第1方向で突出しており、第1端面153は、その全体で、側面131aから第2方向に突出している。このため、短ピン150が第2隣接プレート132に対して第2方向に相対的に移動するときに、第2端面154が第2隣接ピン孔133B内に位置することが防止される。
【0031】
また、第1当接状態(または、第2当接状態)において、第2ストッパ156の当接面156a(第1ストッパ155の当接面155a)と第2隣接プレート132の側面132a(第1隣接プレート131の側面131a)との間には幅方向での隙間が形成されているので、第2ストッパ156(第1ストッパ155)は、第2当接部136(第1当接部135)と非当接状態にあって、第2当接部136(第1当接部135)から幅方向で離隔している一方で、第2対向面156b(第1対向面155b)にて第2ガイドプレート112の側面112a(第1ガイドプレート11の第1側面111a)と当接状態にある。
このように、第1ストッパ155および第1当接部135が当接していない第1非当接状態と、第2ストッパ156および第2当接部136が当接していない第2非当接状態とのそれぞれにおいて、短ピン150の両端面153,154が、第1,第2隣接ガイドプレート111,112に向かって第1,第2隣接ピン孔133A,133Bから幅方向にそれぞれ突出している。
【0032】
さらに、短ピン150の長さは、第1当接状態において、第2ストッパ156が第1方向に向かって第2ガイドプレート112に当接してるときに、短ピン150の第1端面153および第1隣接プレート131の側面131aと、第1ガイドプレート111の側面111aとの間に幅方向での隙間が形成され、かつ、第2当接状態において、第1ストッパ155が第2方向に向かって第1ガイドプレート111に当接しているときに、短ピン150の第2端面154および第2隣接プレート132の側面132aと、第2ガイドプレート112の側面112aとの間に幅方向での隙間が形成される長さに設定されている。
そして、第1当接状態で第1ストッパ155が第1ガイドプレート111に当接しているときに、第1隣接プレート131と第1ガイドプレート111との間に幅方向での隙間が形成され、および、第2当接状態で第2ストッパ156が第2ガイドプレート112に当接しているときに、第2隣接プレート132と第2ガイドプレート112との間に幅方向での隙間が形成される。
【0033】
次に、前述のように構成された実施例の作用および効果について説明する。
チェーン100において、長手方向で隣り合うガイド列101および非ガイド列103を屈曲可能に連結しているロッカピン104を構成する長ピン140および短ピン150は、ガイド列101毎のすべての第1プレート120および非ガイド列103毎のすべての第2プレート130を幅方向に貫通している。
これにより、各ロッカピン104の短ピン150は、各非ガイド列103において幅方向で1対のガイドプレート111,112と隣り合う1対の第2プレートである第1,第2隣接プレート131,132を、その第2ピン孔133を貫通している状態で支持する。このため、チェーン100に張力が発生しているときに、短ピン150の第1,第2端部151,152での過度の応力集中の発生を防止することができるので、短ピン150の耐久性を向上させることができ、また、組立後のチェーン100に加えられるプルーフ荷重を増大させて、第1,第2プレート130での残留圧縮応力を大きくすることができるので、チェーン100の弾性伸びを減少させて、歯飛び防止効果を向上させることができる。
【0034】
第1,第2隣接プレート131,132には、第1,第2当接部135,136がそれぞれ設けられ、短ピン150には、第1方向で第1当接部135と当接可能な第1ストッパ155と、第2方向で第2当接部136と当接可能な第2ストッパ156とが設けられ、第1ストッパ155および第1当接部135の当接により、第1端面153が、第1隣接プレート131の第1隣接ピン孔133A内に位置することが防止され、第2ストッパ156および第2当接部136の当接により、第2端面154が、第2隣接プレート132の第2隣接ピン孔133B内に位置することが防止される。
【0035】
これにより、短ピン150の長さ自体とは無関係に、短ピン150の第1,第2ストッパ155,156と、第1,第2隣接プレート131,132の第1,第2当接部135,136とが当接状態になることで、第1,第2端面153,154が第1,第2隣接プレート131,132の第1,第2隣接ピン孔133A,133B内にそれぞれ位置しないように、本実施例では、短ピン150が第1,第2隣接ピン孔133A,133Bをそれぞれ常時貫通しているように設定できる。このため、短ピン150の長さを、第1,第2ストッパ155,156が設けられる範囲で短縮できるので、短ピン150の短縮化により、チェーン100を軽量化することができ、またチェーン100を幅方向で小型化することができる。
【0036】
短ピン150の長さは、第1当接状態で第2ストッパ156が第2ガイドプレート112の側面112aに幅方向で当接しているときに、短ピン150および第1隣接プレート131と第1ガイドプレート111との間に幅方向での隙間が形成され、かつ、第2当接状態で第1ストッパ155が第1ガイドプレート111の側面111aに幅方向で当接しているときに、短ピン150および第2隣接プレート132と第2ガイドプレート112との間に幅方向での隙間が形成される長さに設定されている。
【0037】
これにより、第1当接状態で第2ストッパ156が第2ガイドプレート112に当接しているとき、および、第2当接状態で第1ストッパ155が第1ガイドプレート111に当接しているときに、短ピン150と第2ガイドプレート112との間および短ピン150と第1ガイドプレート111との間に、それぞれ幅方向での隙間が形成される分、短ピン150が幅方向で短くなり、かつ該短縮化により短ピン150が軽量化されるので、チェーン100を、幅方向で小型化すること、および、軽量化することができる。
【0038】
さらに、第1当接状態において、第2ストッパ156が第2ガイドプレート112に当接しているとき、および、第1ストッパ155が第1ガイドプレート111に当接しているときのいずれのときにも、第1隣接プレート131と第1ガイドプレート111との間に幅方向での隙間が形成され、そして、第2当接状態において、第1ストッパ155が第1ガイドプレート111に当接しているとき、および、第2ストッパ156が第2ガイドプレート112に当接しているときのいずれのときにも、第2隣接プレート132と第2ガイドプレート112との間に幅方向での隙間が形成される。このため、第1,第2ストッパ155,156により、第1ガイドプレート111と第1隣接プレート131との接触および第2ガイドプレート112と第2隣接プレート132との接触が抑制されて、該接触に起因する第1,第2ガイドプレート111,112および第1,第2隣接プレート131,132での摩耗および摩擦抵抗を低減することができる。
【0039】
さらに、幅方向での短ピン150の移動量は、第1,第2ガイドプレート111,112に当接可能な第1,第2ストッパ155,156により規定されるので、第1ストッパ155と第1ガイドプレート111とが当接しているときに(または、第2ストッパ156と第2ガイドプレート112とが当接しているときに)、第1隣接プレート131(第2隣接プレート132)が第2方向(第1方向)に移動して第1ストッパ155(第2ストッパ156)に当接したとしても、短ピン150の外周面157から突出している突部である第1ストッパ155(第2ストッパ156)は当接している第1ガイドプレート111(第2ガイドプレート112)に支持されるので、第1ストッパ155(第2ストッパ156)の破損(例えば、折曲がり)を、第1,第2ストッパ155,156の剛性を高めることなく(例えば、剛性を高めるための大型化による重量増を招来することなく)、防止することができる。
しかも、第1,第2ストッパ155,156の剛性を高めることが不要になる分、第1,第2ストッパ155,156が設けられた短ピン150を軽量化することができる。
【0040】
次に、図4図8を参照して、本発明の第2〜第4実施例を説明する。第2実施例は、第1実施例とは、第1,第2ガイドプレート111,112の形状が部分的に異なり、第3,第4実施例は、第1実施例とは、第1,第2ストッパ155,156に相当する第1,第2ストッパ355,356;455,456の形状が部分的に異なり、その他は基本的に同一の構成を有するものである。そのため、同一の部分についての説明は省略または簡略化し、異なる点を中心に説明する。なお、第1,第2ガイドプレート111,112または第1,第2ストッパ355,356;455,456を含めて、第1実施例の部材・部分等と同一の部材・部分等または対応する部材・部分等については、基本的に第1実施例における符号と同一の符号が使用されている。
【0041】
図4を参照すると、第2実施例におけるサイレントチェーン200(以下、「チェーン200」という。)の第1,第2ガイドプレート111,112は、第1,第2ストッパ155,156をそれぞれ収容可能な第1,第2凹部255,256を有する。
第1当接状態(第2当接状態)において、第2ストッパ156(第1ストッパ155)は、その全体で、第2端部152(第1端部151)における幅方向での第2ストッパ156(第1ストッパ155)の形成範囲に対応する部位159(部位158)と共に、第2対向面156b(第1対向面155b)および第2端面154(第1端面153)が第2凹部256の底面256a(第1凹部255の底面255a)と当接した状態で、第2凹部256(第1凹部255)にそれぞれ収容される。
さらに、第1,第2凹部255,256の幅方向深さは、それぞれ第1,第2ストッパ155,156の幅方向厚さよりも大きいので、各ストッパ155,156の全体は、第1当接状態(第2当接状態)において、ストッパ156(ストッパ155)が幅方向で第2ガイドプレート112(第1ガイドプレート111)と当接していないときにも、第2凹部256(第1凹部255)内に位置する。
【0042】
この第2実施例によれば、第1実施例と共通または相当する構造により奏される作用および効果に加えて、次の作用および効果が奏される。
第1ガイドプレート111には、第1ストッパ155の全体を収容可能な第1凹部255が設けられ、第2ガイドプレート112には、第2ストッパ156の全体を収容可能な第2凹部256が設けられている。
これにより、第1,第2ストッパ155,156は、第1,第2凹部255,256にそれぞれ収容されるので、チェーン200が幅方向で小型化されるうえ、第1,第2ストッパ155,156が第1,第2凹部255,256に収容されている状態では、短ピン150の端面153,154が第1,第2ガイドプレート111,112の内部にそれぞれ位置するので、チェーン200に発生する張力に付勢された短ピン150により長ピン140に発生する剪断力を低減することができて、長ピン140の耐久性を向上させることができる。
さらに、各ストッパ155,156の全体が凹部255,256に収容されるので、チェーン200を幅方向で一層小型化することができる。しかも、第1ストッパ155の全体が第1凹部255内に位置するときには(または、第2ストッパ156の全体が第2凹部256内に位置するときには)、第1隣接プレート131(第2隣接プレート132)が短ピン150に対して第2方向(第1方向)に移動したとしても、第1隣接プレート131の側面131a(第2隣接プレート132の側面132a)が第1ガイドプレート111の側面111a(第2ガイドプレート112の側面112a)と当接することにより、第1隣接プレート131(第2隣接プレート132)と第1ストッパ155(第2ストッパ156)との当接が回避される。このため、第1,第2ストッパ155,156の破損を、第1,第2ストッパ155,156の剛性を高めることなく防止することができる。
【0043】
図5図6を参照すると、第3実施例でのサイレントチェーン300(以下、「チェーン300」という。)において、第1,第2ストッパ355,356は、短ピン150の両端部151,152のそれぞれで、周方向で離隔する位置、かつ高さ方向で離隔する位置で、外表面157の1対の摺動面157cと同じ周方向位置において、径方向で各摺動面157cから第2ピン孔133の外方に突出して設けられた複数の、ここでは1対の突部である第1,第2ストッパ部分355A,355B;356A,356Bにより、それぞれ構成される。各ストッパ部分355A,355B,356A,356Bは、第1実施例の第1,第2ストッパ155,156と同様に、いずれもかしめ部である。
【0044】
この第3実施例によれば、第1,第2ストッパ355,356が第1実施例の第1,第2ストッパ155,156と同様の作用をなすことにより第1実施例が奏する作用および効果に加えて、次の作用および効果が奏される。
チェーン300において、各ストッパ355;356が、高さ方向で離隔する1対のストッパ部分355A,355B;356A,356Bを有することにより、第1,第2ストッパ355,356は、高さ方向で離隔している2箇所で第1,第2隣接プレート131,132にそれぞれ当接するので、該隣接プレート131,132の、幅方向に直交する平面に対する幅方向への傾斜、特に、第1実施例に比べて、長手方向に平行な直線回りの傾斜を抑制する効果が向上する。このため、隣接プレート131,132の傾斜に起因するプレート111,131;112,132;120,130同士の接触が抑制されて、該接触に起因するプレート111,112,120,130での摩耗および摩擦抵抗を低減することができる。
【0045】
図7図8を参照すると、第4実施例でのサイレントチェーン400(以下、「チェーン400」という。)において、第1,第2ストッパ455,456は、短ピン150の両端部151,152のそれぞれで、外表面157の転動面157bと同じ周方向位置を除いて、1対の摺動面157cおよび背面157aと同じ周方向位置において、周方向で両摺動面157cおよび背面157aに亘り連続して、径方向で各摺動面157cおよび背面157aから第2ピン孔133の外方に突出して設けられた部分円環状の突部により構成される。
各ストッパ455,456は、第1実施例の第1,第2ストッパ155,156と同様に、いずれもかしめ部であり、第2ピン孔133の、高さ方向での最大孔径以上の高さ方向範囲に亘って形成されている。
【0046】
この第4実施例によれば、第1,第2ストッパ455,456が第1実施例の第1,第2ストッパ155,156と同様の作用をなすことにより第1実施例が奏する作用および効果に加えて、次の作用および効果が奏される。
チェーン400において、各ストッパ455,456が1対の摺動面157cおよび背面157aに亘る範囲に形成されていることにより、第1,第2ストッパ455,456は、高さ方向および長手方向で、1対の摺動面157cから背面157aに亘る範囲において第1,第2隣接プレート131,132にそれぞれ当接するので、該隣接プレート131,132の、幅方向に直交する平面に対する幅方向への傾斜、特に、第1実施例に比べて、長手方向に平行な直線回りの傾斜、および、高さ方向に平行な直線回りの傾斜を抑制する効果が向上する。このため、隣接プレート131,132の該傾斜に起因するプレート111,131;112,132;120,130同士の接触が抑制されて、該接触に起因するプレート111,112,120,130での摩耗および摩擦抵抗を低減することができる。
【0047】
以下、前述した実施例の一部の構成を変更した実施例について、変更した構成に関して説明する。
第1当接状態(または、第2当接状態)において、第1隣接プレート131の側面131a(第2隣接プレート132の側面132a)に、第1ストッパ(第2ストッパ)が収容される凹部が設けられて、第1当接状態(第2当接状態)において、端面153(端面154)が側面131a(側面132a)と同一平面上に位置するものであってもよい。この場合に、第1当接状態(第2当接状態)において、端面153(端面154)が側面131a(側面132a)よりも幅方向に突出しないので、その分、短ピン150の長さを短くすることができる。
対向面155b,156bは、それぞれ端面153,154よりも隣接プレート131,132寄りに位置していてもよい。
第1当接状態(または、第2当接状態)において、短ピン150の第2端面154(第1端面153)および第2ストッパ156(第1ストッパ155)と、側面112a(側面111a)との間に、幅方向での隙間が形成されていてもよい。
短ピン150の長さは、第1端面153および第1ストッパ155の少なくとも一方と側面111aとの接触、および、第2端面154および第2ストッパ156の少なくとも一方と側面112aとの接触が、同時に生じる長さに設定されていてもよい。
第1,第2ストッパ155,156;355,356;455,456の少なくとも一方は、かしめ以外の形成手段により形成されてもよく、または、短ピン150とは別個の部材から構成され、短ピン150に結合されてもよい。
第2実施例に関連して、第1,第2ストッパ155,156の一部が、端部151,152の一部と共に、幅方向で、第1,第2凹部255,256にそれぞれ収容されてもよい。
第3,第4実施例に関連して、第2実施例およびその変形例での第1,第2ストッパ155,156と同様に、各第1ストッパ355,455は、その全体またはその一部で、第1ガイドプレート111に設けられた凹部に収容され、各第2ストッパ356,456は、その全体またはその一部で、第2ガイドプレート112に設けられた凹部に収容されてもよい。この場合に、第1,第2ストッパ355,356;455,456が大きいほど、前記凹部も大きくなるので、各ガイドプレート111,112を軽量化することができる。
【符号の説明】
【0048】
100,200,300,400・・・サイレントチェーン
101・・・ガイド列
103・・・非ガイド列
104・・・ロッカピン
111,112・・・ガイドプレート
113・・・ガイドピン孔
120・・・第1プレート
123・・・第1ピン孔
130・・・第2プレート
131,132・・・隣接プレート
133・・・第2ピン孔
133A,133B・・・隣接ピン孔
135,136・・・当接部
140・・・長ピン
150・・・短ピン
151,152・・・端部
153,154・・・端面
155,156,355,356,455,456・・・ストッパ
255,256・・・凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9