(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5839448
(24)【登録日】2015年11月20日
(45)【発行日】2016年1月6日
(54)【発明の名称】額縁シールおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A47G 1/17 20060101AFI20151210BHJP
【FI】
A47G1/17
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-135130(P2011-135130)
(22)【出願日】2011年6月17日
(65)【公開番号】特開2013-389(P2013-389A)
(43)【公開日】2013年1月7日
【審査請求日】2014年4月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】509102731
【氏名又は名称】株式会社ユニバースパッケージ
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100112900
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 路子
(74)【代理人】
【識別番号】100136995
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 千織
(74)【代理人】
【識別番号】100150935
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 孝哉
(72)【発明者】
【氏名】小栗 千春
【審査官】
横溝 顕範
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3130284(JP,U)
【文献】
実開昭61−194374(JP,U)
【文献】
特開2009−280745(JP,A)
【文献】
特開2010−242014(JP,A)
【文献】
特開2007−021837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 1/14−17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
写真等を壁面に貼着してディスプレーするのに使用し、離型層、接着層および本体層からなる透明積層体を原反として製造され、前記接着層が、壁面を損傷させずに剥がし可能な接着剤からなる額縁シールであって、
該額縁シールは、額縁本体と、該額縁本体の外周部に裏側刻設線で区画された前記離型層で形成される台紙とで構成され、
前記額縁本体は、使用時接着層が露出する枠部と、該枠部に囲繞され、離型層、接着層および本体層からなる写真等保持部とを備え、また、
前記台紙は、前記枠部の外周側が離型層のみからなるマージン部と、該マージン部の離型層が前記枠部側へ延設されて、該枠部の前記接着層を使用直前まで被覆保護する保護部と、を備えており、更に、
前記額縁本体の枠部における一箇所以上に、前記額縁本体の剥がし用タブを備え、
該剥がし用タブが、枠部の外周縁が部分的に貫通切断されて切れ込み部とされるとともに、その内側に指でつまみ可能なタブ部を形成可能に離型層のみ非貫通切断されることにより、形成されている、
ことを特徴とする額縁シール。
【請求項2】
前記枠部が多角環状とされ、前記剥がし用タブを枠部のコーナ部に備えていることを特徴とする請求項1記載の額縁シール。
【請求項3】
前記枠部の内周縁の一箇所以上に、写真等の仮接着部を備え、
該仮接着部は、枠部の貼着部の接着層を、前記写真等保持部側へ面状に部分突出させて、又は、前記枠部に沿って連続線状的または非連続線状的に突出させて、形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の額縁シール。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の額縁シールを製造する方法であって、
前記透明積層体からなる原反を繰り出して、前記離型層のみ非貫通切断する裏側刻設線形成工程、前記本体層および前記接着層を非貫通切断する表側刻設線形成工程、及び、巻き取りにより前記枠部外側の本体層および接着層を除去する不要部除去工程を経て製造することを特徴とする額縁シールの製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の額縁シールを製造する方法であって、
前記裏側刻設線形成工程において、前記枠部の内周縁に沿う離型層剥離用の刻設線とともに前記剥がし用タブの非貫通の刻設線を形成し、また、
前記表側刻設線形成工程において、前記不要部除去のための刻設線とともに、前記剥がし用タブの貫通刻設線を形成し、
該貫通刻設線の形成は、前記貫通刻設線の形成部位に、貫通切断用の切断刃を受け可能に前記離型層の厚みに略等しい厚みのスペーサを配して行なうことを特徴とする額縁シールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、額縁シールに関する。詳しくは、写真、ポストカード、さらには、標語等の文字情報記載シート等(以下、「写真」等)を室内壁面に貼り付けてディスプレーするのに使用し、離型層(剥離層)、接着層(粘着層)および本体層からなる透明積層体を原反(素材)として製造される額縁シールおよびその製造方法に係る発明である。
【背景技術】
【0002】
従来、写真等を室内壁面に貼り付けるには、画鋲や両面テープで貼り付けていた。そのような場合、写真等を損傷するとともに、壁面自体も損傷するという問題点が発生する。
【0003】
また、写真等は、装飾効果を付与させて、貼り付けることが望ましい。
【0004】
このため、上記の問題点が解決できるとともに、装飾効果を付与できる写真等の貼り付け手段の出現が要望されていた。
【0005】
しかし、本発明者は、そのような要望に簡便に応えることのできる、貼り付け手段は、寡聞にして知らない。事実、特許電子図書館(IPDL)における公報テキスト検索において、検索式=「A47G1/17」and「額or縁飾り」and「積層体」and「シールor粘着」and「透明」で検索の結果、ヒット件数0件であった。
【0006】
本発明の特許性に影響を与えるものではないが、本発明の額縁シールの製造方法に関連する先行技術文献として、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−242014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記にかんがみて、写真等および壁面自体を損傷させずに貼り付けることのでき、しかも、写真等に装飾効果を付与できる額縁シールおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意開発に努力をした結果、下記構成の額縁シールに想到した。
【0010】
写真等を壁面に貼着してディスプレーするのに使用し、離型
層、接着層および本体層からなる透明積層体を原
反として製造され、前記接着層が、壁面を損傷させずに剥がし可能な接着
剤からなる額縁シールであって、
該額縁シールは、額縁本体と
、該額縁本体の外周部に裏側刻設線で区画された前記離型層で形成される台紙とで構成され、
前記額縁本体は、使用時接着層が露出する枠
部と、該枠部に囲繞され、離型層、接着層および本体層からなる写真等保持部とを備え、また、
前記台紙は、前記枠部の外周側が離型層のみからなるマージン部と、該マージン部の離型層が前記枠部側へ延設されて、該枠部の前記接着層を使用直前まで被覆保護する保護部と、を備えていることを特徴とする。
【0011】
上記構成の額縁シールの製造は、下記方法で行なうことが望ましい。
【0012】
前記離型層、接着層および本体層からなるロール原反を繰り出して、前記離型層のみ非貫通切断する裏側刻設線形成工程、前記本体層および前記接着層を非貫通切断する表側刻設線形成工程、及び、巻き取りにより前記縁飾り部外側の本体層および接着層を除去する不要部除去工程を経て製造することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態を示す額縁シールの使用前斜視図である。
【
図2】
図1の額縁シールの離型層を剥離した使用直前の2−2線部位断面図である。
【
図3】
図1の額縁シールの製造方法の一例を示す工程図(各工程の刻設型又は切断型の平面図を付記してある。)。
【
図4】(1)、(2)はそれぞれ裏側刻設線形成工程およびピース分断線形成工程における平面図および断面図である。
【
図5】本発明の額縁シールの使用態様説明図である。
【
図6】(1)、(2)は、本発明の額縁シールの製造に使用できる枚葉原反の各例を示す裏向き斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0015】
ここでは、
図1に示す、額縁本体の縁飾り部(枠部)が矩形環状のものを例に採り説明する。縁飾り部の形状は、他の多角形(ひし形、三角形、六角形)環状、さらには、楕円環状、円環状等任意である。
【0016】
本発明の額縁シールは、写真等を壁面に貼着してディスプレーするのに使用し、離型層(剥離層)a、接着層(粘着層)bおよび本体層cからなる透明積層体を原反(素材)として、製造されるものである(
図3参照)。
【0017】
ここで、離型層aは離型処理された透明プラスチックで、本体層cは透明プラスチックでそれぞれ形成される。上記透明プラスチックは、ポリエステル(PET)やポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル(PVC)等の軟質プラスチックを使用可能である。
【0018】
これらの内で、本体層cは、印刷層15aを形成する場合、印刷性に優れているPVCやPET等の極性プラスチックが望ましい。
【0019】
また、接着層bは、壁面を損傷せずに剥がし可能な接着剤(粘着剤)で形成する。具体的には、そのような特性を満足させる各種市販品・特注品を使用可能である。
【0020】
上記各層の厚みも、特に限定されず、選択材料により異なるが、例えば、本体層c及び離型層aは20〜500μm、望ましくは30〜100μmの範囲から適宜選択し、接着層bは10〜50μmの範囲から適宜選択する。
【0021】
本実施形態の額縁シールは、基本的には、額縁本体11と額縁本体11と、
額縁本体11の外周部に裏側刻設線C1で区画された離型層aで形成される台紙13とで構成されている。
【0022】
額縁本体11は、使用時、接着層bが露出する縁飾り部(枠部)15と、該縁飾り部15に囲繞され、離型層a、接着層bおよび本体層cからなる写真等保持部19と、を備えている。本実施形態では、本体層cの上面を印刷(印刷層15a)して縁飾り部(枠部)15としてある。
【0023】
該縁飾り部15は、上記印刷に限らず、蒸着、箔押し、塗装、染色等によって形成してもよく、さらには裏面側や中間部にインサート形成してもよい。さらには、縁飾り部を装飾処理していない単なる「枠部」としてもよい。
【0024】
ここで、縁飾り部15の外周縁に沿って、表面ハーフ抜き(本体層cおよび接着層bの切断)により表側刻設線C3が形成されて、不要部である本体層cおよび接着層bが除去されている。また、縁飾り部15の内周縁に沿って、裏面ハーフ抜き(離型層aの切断)により裏側刻設線C1が形成されて、縁飾り部15の裏面側が剥離可能とされている。
【0025】
他方、台紙13は、縁飾り部15の外周側が離型層aのみからなるマージン部21と、該マージン部21の離型層aが縁飾り部15側へ延設されて、縁飾り部15の接着層bを使用直前まで保護する保護部23とを備えている。
【0026】
ここで、マージン部21は前記表側刻設線C3により区画形成され、保護部23は前記裏側刻設線C1により区画形成される。
【0027】
本実施形態では、さらに、縁飾り部15における少なくとも一箇所(図例では対角位置にある角部に二箇所)、額縁本体11の剥がし用タブ25を備えている。剥がし用タブ25を指でつまんで、額縁本体11を台紙13から剥がすことができる。このため、額縁本体に指紋をつけたり、また、指を接着層bで汚したりすることがない。ここでは、
図5に示す如く、額縁シールを横長にして使用する場合を想定している。縦長にして使用する場合は、対角位置は逆方向となるが、限定されるものではない。
【0028】
図例では剥がし用タブ25は略三角形状で、下記のようにして形成されている。表側刻設線C3が部分的にフルカット(貫通切断)された貫通表側刻設線C3´と、副裏側刻設線C1´とで区画形成されている。この剥がし用タブ25の形状は分割円状であってもよい。
【0029】
さらに、縁飾り部15の内周縁の一箇所以上(図例では各辺に一つずつ4箇所)に、写真等の仮止め部27を備えている。
【0030】
仮止め部27は、縁飾り部15裏面の貼着部17の接着層bを、写真等保持部19側へ面状に部分突出させて形成したものである。仮止め部27の平面形状は、図例では半円状であるが、三角形状や四角形状さらには台形状であってもよい。また、仮止め部27は図例の如く辺上でなく四隅に形成してもよく、さらには、縁飾り部15(貼着部17)内縁に沿って線状に連続突出させて形成してもよい。
【0031】
次に、上記額縁シールの製造方法の一例について説明する。
【0032】
離型層a、接着層bおよび本体層cからなる原反(既製品を使用可能)31を繰り出しロール(図示せず)から繰り出し順送りを行ない、下記、(1)裏側刻設線形成(裏側ハーフ抜き)工程、(2)表側刻設線形成(表側ハーフ抜き)工程、(3)不要部除去工程、および(4)裁断工程を経て製造する(
図3〜4参照)。
【0033】
(1)裏側刻設線形成工程:
裏側刻設線(裏側ハーフ抜き)C1、C1´を形成する工程である。部分的に半円状の内側突出部35aを2回回転対称位置に備えた変形四角形刃35および変形四角形刃35の対角線位置外側に一対の斜設刃36備えた裏側刻設型37に対して上押し型39で原反31を押圧することにより、本体層c及び接着層bを残すように離型層aのみを切断する(
図4(1))。なお、原反の両側の裏側刻設線C1は、ロータリー刃で形成してもよい。
【0034】
(2)表側刻設工程:
表側刻設線C3(貫通表側刻設線C3´を含む。)を形成する工程である。下受け型41で原反31を支持しながら、四角形刃43を備えた表側刻設型45を下降させて、本体層cおよび接着層bを、離型層aを残すようにして切断する(
図4(2))。
【0035】
この際、裏側刻設線C1の四角形内で、斜設線である前記副裏側刻設線C1´と交差する裏側刻設線C1の対角線上の角部位置に離型層aの厚みに略等しい厚みのスペーサ47を配設しておく。このスペーサ47の配設態様は、例えば、ステンレス製ピースを両面テープ等で貼着することにより行なう(特許文献1の要約等参照)。こうして、表側刻設線C3の対角線上の二箇所角部で貫通表側刻設線C3´が形成され、切れ込み部25aが形成される。
【0036】
(3)不要部除去工程:
縁飾り部15の外側を離型層aを残して表側不要部49(本体層cおよび接着層b)を巻き取りロール50で巻き取って除去する工程である。マージン部21の表側刻設線C3四角形外側における離型層a上側の本体層cを接着層bとともに剥がしてマージン部21を離型層aのみとする。この不要部除去工程により額縁シールの刻設不良の検査を兼ねることができる。
【0037】
(4)裁断工程
続いて、裁断機60で、四角形の額縁シールを一枚ずつに又は複数枚ずつ、裁断して、額縁シール又は額縁シール組を連続的に製造する。なお、複数枚ずつを組にするときは、額縁シール相互間は、切断用ミシン目等形成しておく。
【0038】
また、本発明の額縁シールは、上記実施形態に限られず、各請求項に記載された範囲内において各種態様に及ぶものである。
【0039】
額縁シールの大きさは、通常、写真を想定した場合は、キャビネ版とするが、B5版やA4版の大きさのものも飾れるような大きさのものにすることも勿論可能である。
【0040】
次に、上記の如く製造した額縁シールの使用態様について説明する(
図5参照)。
【0041】
(1)剥がし用タブ25の切れ込み25aに指を差込み、額縁本体11を台紙13から剥がす。このとき、剥がし用タブ25は裏面にも離型層aが残っているため、指に接着剤が付着するようなことはない。
【0042】
(2)額縁本体11を裏返し、写真等保持部19の上に写真Pが中心にくるように載せる。このとき、写真等保持部19の稜線に沿って、複数個所に接着層bが離型層aで覆われていない仮止め部27(図例では4箇所)が存在する。
【0043】
(3)仮止め部27を写真Pの上から押えた後、剥がし用タブ25を指で持って、壁面の必要な箇所に、掌等又は綺麗なシートを用いて、壁面に押えつける。当然、壁面は予めホコリや油分を除去しておく。すると、縁飾り部15の裏面は接着層bとなっているため、所要部位に貼り付けができる。こうして、写真等に装飾効果を付与して貼り付け可能となる。
【0044】
また、接着層bは、はがし可能で再貼り付け可能な特性を有する接着剤で形成されているため、適宜、壁面から剥がして、別部位に貼り付け可能である。
【0045】
この際、壁面を傷つけることなく、また、大切な写真等も損傷することない。
【0046】
上記では、生産性の見地から、原反としてロール原反を例に採るが、枚葉原反を一枚ずつ手送り乃至機械送りしてもよい。
【0047】
例えば、
図6(1)に示すような、離型層aを剥離可能に、直線状の裏側刻設線C2を両側部に形成して、さらには、前後端部に形成された枚葉原反32を好適に使用できる(図例では両側部のみ)。また、同じく、前後端を内側へ斜設ないし湾曲させた裏側刻設線C2´を、両側部に形成した枚葉原反32´も好適に使用できる。この枚葉原反32´は、斜設部を形成することにより離型層aを剥がし易くなる。
【0048】
また、以上の説明で、離型層を剥離するための、裏側刻設線は直線ないし曲線(湾曲線)で構成されるもとしたものを例に採ったが、該裏側刻設線は、ジグザグ線(例えば、正弦波状、三角歯状、矩形波状、等)とすることもできる。裏側に指の引っ掛かり部を形成でき離型層を剥がしやすくなることが期待できる。
【符号の説明】
【0049】
11 額縁本体
13 台紙
15 枠部(縁飾り部)
19 写真等保持部
21 マージン部
25 剥がし用タブ
a 離型層(剥離層)
b 接着層(粘着層)
c 本体層
C1 裏側刻設線
C1´ 副裏側刻設線
C3 表側刻設線
C3´ 貫通表側刻設線