(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、和式便器や洋式便器等の水洗式の便器の排水管に異物が詰まった場合、この詰まりを解消するために使用する道具として、通水用カップ(通水用具)が知られている。通水用カップは、一般に、使用者が把持するための柄と、ドーム状のカップ部材とから構成されている。カップ部材は、弾性材料からなり、柄の先端方を向く開口を形成する環状先端部を有する。通水用カップにおいて、排水管の詰まりを解消する場合には、先ず、カップ部材の環状先端部を便器の排水口の周囲に押し付けて密着させ、次いで、上記柄を押し引きすることによってカップ部材を弾性変形させる。ここで、カップ部材の弾性変形によって排水口内に正圧及び負圧が発生し、この圧力が排水口を通じて排水管内に作用するため、この圧力によって詰まりの原因となっている異物が上流あるいは下流方向に移動し、上記詰まりが解消される。
【0003】
特許文献1には、カップ部材として、ドーム状部分の先端に設けられた先細り状の筒部と、ドーム状部分と筒部との間から外側に延出するリング状の鍔と、を備えて構成された通水用カップが開示されている。上記リング状の鍔の延出幅は、全周にわたって均一とされている。このような構成の通水用カップによれば、主に洋式便器において、排水口のサイズが比較的に大きい場合でも、排水口の周囲の内壁面への密着性を高めることが期待できる。
【0004】
近年では、水洗式の洋式便器において、流水時の水の使用量を抑制する節水への取り組みや、流水時の便器の壁面の洗浄力を高める取り組みがなされ、従来とは異なる様々な形状の内壁面を有する便器が開発されている。このような便器に対して上記特許文献1に開示された通水用カップを使用した場合、十分な密着性を得られないことが起こり得た。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、様々なタイプの水洗式の便器等に使用するのに適した通水用具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明によって提供される通水用具は、長手軸線を有する柄と、この柄の先端に取り付けられ、弾性変形可能な加圧部材と、を備えた通水用具であって、上記加圧部材は、上記柄に接続される基端部、上記柄の先端方を向く開口を形成する環状先端部、および上記基端部と上記環状先端部とをつなぐ中間部、を有する本体と、上記環状先端部の外周に所定の最大延出幅をもって延出する鍔と、を有しており、上記鍔は、上記環状先端部の外周からの延出幅が上記環状先端部の周方向において変化する延出幅変化部を有することを特徴としている。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記最大延出幅を有する部分は、上記環状先端部の半周の範囲の一方側に設けられている。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記環状先端部は、円形であり、上記最大延出幅は、上記環状先端部の外径寸法の1/6〜1/2の範囲である。
【0011】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0014】
図1〜
図3は、本発明に係る通水用具の一例を示している。本実施形態の通水用具A1は、長手軸線を有する柄1と、柄1の先端に取付けられた加圧部材2と、を備えている。
【0015】
柄1は、たとえば、合成樹脂製、あるいは軽量な金属製であり、中実または中空の棒状である。
図3に表れているように、柄1の先端には、加圧部材2を取り付けるための雄ネジ1aが形成されている。
【0016】
図1〜
図3に表れているように、加圧部材2は、本体21と、本体21につながる鍔23と、を備えている。加圧部材2は、たとえば天然ゴムなどのゴム材料、あるいは軟質な合成樹脂材料によって一体形成されたものであり、弾性変形可能である。
【0017】
本体21は、基端部211と、中間部212と、環状先端部213とを有する。基端部211は、柄1に接続される部分であり、内周に雌ネジ211aが形成された筒状とされている。雌ネジ211aは、柄1の雄ネジ1aを螺合可能であり、この雌ネジ211aに柄1の雄ネジ1aをねじ込むことにより、加圧部材2が柄1に取り付けられる。中間部212は、基端部211と環状先端部213とをつないでおり、本実施形態ではドーム状とされている。環状先端部213は、円形とされており、この環状先端部213に囲まれた領域によって柄1の先端方を向く開口214が形成されている。本実施形態においては、環状先端部213には、内周側全周に膨出する膨出部215が設けられている。膨出部215の幅寸法w1は、環状先端部213の厚みt1と同程度とされている。環状先端部213の寸法の一例を挙げると、厚みt1が4〜5mm程度、外径寸法d1が150mm程度である。
【0018】
鍔23は、環状先端部213の外周に延出しており、本実施形態では、環状先端部213の外側につながる小環状部231と、小環状部231の外側に張り出す張出部232とを備えて構成されている。小環状部231は、環状先端部213の全周に設けられているが、環状先端部213の外周からの延出幅w2がたとえば8mm程度(環状先端部213の外径寸法d1の1/20程度)と小さくされている。また、小環状部231は、環状先端部213から離れるほどその厚みが小さくされており、小環状部231の下面231aは環状先端部213の径方向に沿う一方、上面231bは上記径方向に対して傾斜している。
【0019】
張出部232は、厚みが均一とされた板状とされており、環状先端部213の周方向における所定範囲に部分的に設けられている。本実施形態では、張出部232は、環状先端部213の略半周の範囲の片側に設けられており、環状先端部213の径方向に沿って延びている。張出部232の厚みt2は、たとえば2mm程度とされる。
【0020】
張出部232は、最大延出幅部233と、最大延出幅部233の両側に位置する延出幅変化部234とを有する。最大延出幅部233は、環状先端部213の外周からの延出幅が最大の部分であり、最大延出幅部233の延出幅w3(本実施形態の場合、環状先端部213の外周から小環状部231を含めた最大延出幅部233の先端までの長さ)は、好ましくは環状先端部213の外径寸法d1の1/6〜1/2とされ、たとえば43mm程度である。
【0021】
延出幅変化部234は、環状先端部213の外周からの延出幅が環状先端部213の周方向において変化する部分であり、最大延出幅部233から遠ざかるにつれて延出幅が減少している。
【0022】
次に、上記構成の通水用具A1の使用方法について説明する。
図4および
図5は、通水用具A1の使用対象となる便器の一例を表す。同図に示される便器P1は、いわゆる節水タイプと称される洋式便器であり、前後方向(
図4における上下方向)の寸法が左右方向の寸法よりも大とされている。便器P1の内壁面40は、凹凸を有する特殊な形状とされており、左右非対称の形状とされている。より具体的には、排水口43の手前左側には、凸部41が形成されており、凸部41の右側は凹部42とされている。便器P1の排水管44には、異物O1が詰まっている。
【0023】
通水用具A1を使用する際には、
図6および
図7に表れているように、排水口43の周囲の内壁面に通水用具A1の環状先端部213を密着させる。ここで、
図6に表れているように、鍔23の張出部232を手前側に向け、張出部232が凸部41および凹部42に重なる姿勢にする。次に、柄1を押し引きすることによって加圧部材2を弾性変形させる。ここで、加圧部材2の弾性変形によって排水口43内に正圧及び負圧が発生し、この圧力が排水口43を通じて排水管44内に作用するため、この圧力によって詰まりの原因となっている異物O1が上流あるいは下流方向に移動し、上記詰まりが解消される。
【0024】
本実施形態の通水用具A1は、延出幅変化部234を有する鍔23を具備しており、延出幅変化部234につながって延出幅が最大となる最大延出幅部233を有する。このため、最大延出幅部233を含む張出部232を便器P1の手前側に向けることにより、凸部41および凹部42を適切に塞ぐことができる。ここで、
図7に表れているように、環状先端部213は凹部42に密着していないが、張出部232によって凹部42を塞ぐことが可能である。これにより、通水用具A1の使用時には、加圧部材2による排水口43の密封性が維持される。
【0025】
鍔23は、最大延出幅部233およびこれにつながる延出幅変化部234を有する。このため、鍔23は、環状先端部213の周方向における延出幅が均一ではなく、張出部232(最大延出幅部233およびこれにつながる延出幅変化部234)は環状先端部213の周方向において部分的に設けられている。便器P1の左右方向の寸法は比較的に小さいので、張出部232が当該左右方向に向かない配置とすることにより、便器P1の内壁面40の左右側に環状先端部213を密着させることができる。
【0026】
本実施形態とは異なり、たとえば、
図8に表れているように、環状先端部213からの延出幅が比較的に大きく、かつ全周にわたって延出幅が均一とされた鍔33が設けられている場合、内壁面40の左右側では、鍔33の逃げ場がないので当該鍔33が変形しやすい。この鍔33の変形によって環状先端部213も変形し、環状先端部213と内壁面40との間に隙間が発生しやすくなる。その結果、排水口43の密封性が低下してしまうのである。
【0027】
図9は、通水用具A1の使用対象となる便器の他の例を表す。同図に示される便器P2は、いわゆる節水タイプと称される洋式便器であり、上部の出水口51に加え、内壁面50の中間にも出水口52が設けられている。
図10および
図11に表れているように、内壁面50は、段差を有する特殊な形状を有しており、この段差部に出水口52が設けられている。便器P2の排水管54には、異物O2が詰まっている。
【0028】
通水用具A1を使用する際には、排水口53の周囲の内壁面に通水用具A1の環状先端部213を密着させる。ここで、通水用具A1は、鍔23の張出部232が出水口52に重なる姿勢にする。次に、柄1を押し引きすることによって加圧部材2を弾性変形させる。ここで、加圧部材2の弾性変形によって排水口53内に正圧及び負圧が発生し、この圧力が排水口53を通じて排水管54内に作用するため、この圧力によって詰まりの原因となっている異物O2が上流あるいは下流方向に移動し、上記詰まりが解消される。
【0029】
本実施形態の通水用具A1は、延出幅変化部234を有する鍔23を具備しており、延出幅変化部234につながって延出幅が最大となる最大延出幅部233を有する。このため、最大延出幅部233を含む張出部232を出水口52に重ねることにより、出水口52を適切に塞ぐことができる。これにより、通水用具A1の使用時には、出水口52を通じて空気が漏れることが回避され、加圧部材2による排水口53の密封性が維持される。
【0030】
鍔23は、最大延出幅部233およびこれにつながる延出幅変化部234を有する。このため、鍔23は、環状先端部213の周方向における延出幅が均一ではなく、張出部232(最大延出幅部233およびこれにつながる延出幅変化部234)は環状先端部213の周方向において部分的に設けられている。便器P2の左右方向の寸法は比較的に小さいので、張出部232が当該左右方向に向かない配置とすることにより、便器P2の内壁面50の左右側に環状先端部213を密着させることができる。
【0031】
なお、詳細な図示説明は省略するが、本実施形態の通水用具A1は、上記した節水タイプの便器以外の洋式便器や和式便器にも使用可能である。最大延出幅部233が部分的に設けられているため、この最大延出幅部233の向きを選択することにより、最大延出幅部233を含む張出部232が便器の内壁面への密着の妨げとなるのを回避することができる。
【0032】
図12〜
図16は、本発明に係る通水用具の他の例を示している。なお、これらの図においては、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付しており、適宜説明を省略する。
【0033】
図12に表された通水用具A2は、鍔23の構成が上記実施形態と異なっている。本実施形態では、鍔23は、分離した2つの張出部232を備えている。張出部232は、最大延出幅部233と、最大延出幅部233の両側に位置する延出幅変化部234とを有する点において、上記実施形態と同様である。一方の張出部232は、環状先端部213の半周の範囲の片側に設けられており、他方の張出部232は、環状先端部213の半周の範囲の他の片側に設けられている。本実施形態の通水用具A2によっても、上記実施形態の通水用具A1に関して上述したのと同様の効果を奏することができる。
【0034】
図13に表された通水用具A3は、鍔23の構成が上記実施形態と異なっている。本実施形態では、張出部232は、環状先端部213の周方向における全周にわたって設けられている。張出部232について、最大延出幅部233と、最大延出幅部233の両側に位置する延出幅変化部234とを有する点において上記実施形態と同様であるが、6つの最大延出幅部233が環状先端部213の周方向に一定間隔で設けられている。本実施形態の通水用具A3によっても、上記実施形態の通水用具A1に関して上述したのと同様の効果を奏することができる。
【0035】
図14〜
図16に表された通水用具A4は、加圧部材2における本体21の構成が上記実施形態と異なっている。本実施形態では、本体21は、円形の平板部の外周に断面略半円形の環状屈曲部がつながる構成とされている。この環状屈曲部の先端が円形の環状先端部213とされており、この環状先端部213に囲まれた領域によって柄1の先端方を向く開口214が形成されている。なお、本実施形態においては、上記実施形態における膨出部215を具備しない。本実施形態の鍔23の構成は、上述した通水用具A1における鍔23の構成と同様である。本実施形態の通水用具A4によっても、上記実施形態の通水用具1に関して上述したのと同様の効果を奏することができる。
【0036】
以上、本発明の具体的な実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の思想から逸脱しない範囲内で種々な変更が可能である。本発明に係る通水用具の各部の具体的な形状や材質、寸法なども、上記実施形態に限定されるものではない。
【0037】
上記実施形態では、本体21は、環状先端部213が円形となるように構成されていたが、本体21および環状先端部213の形状はこれに限定されない。また、鍔23については、上記実施形態における小環状部231を設けない構成としてもよい。
【0038】
上記実施形態においては、便器の排水管に生じた詰まり解消するために通水用具を使用する場合を例に挙げて説明したが、本発明に係る通水用具は、たとえば台所や風呂等の排水管に生じた詰まりを解消するために使用することも可能である。