特許第5839697号(P5839697)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5839697
(24)【登録日】2015年11月20日
(45)【発行日】2016年1月6日
(54)【発明の名称】運行管理システム
(51)【国際特許分類】
   B60L 13/00 20060101AFI20151210BHJP
   B60K 6/46 20071001ALI20151210BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20151210BHJP
   B60W 20/00 20160101ALI20151210BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20151210BHJP
   B60L 11/12 20060101ALI20151210BHJP
【FI】
   B60L13/00 D
   B60K6/46
   B60K6/20 310
   B60K6/20 320
   B60L11/12
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-101370(P2012-101370)
(22)【出願日】2012年4月26日
(65)【公開番号】特開2013-230039(P2013-230039A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2014年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊池 輝
(72)【発明者】
【氏名】安田 知彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆之
(72)【発明者】
【氏名】小林 啓之
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 真二郎
【審査官】 久保田 創
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−254150(JP,A)
【文献】 特開2006−296182(JP,A)
【文献】 特開2008−024206(JP,A)
【文献】 特開2004−312953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K6/20−6/547
B60L1/00−3/12
7/00−13/00
15/00−15/42
B60W10/00−10/02
10/06−10/10
10/18
10/26−20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電所又は変電所から架線に供給される電力で走行するトロリーモード、及びディーゼルエンジンにより駆動した発電機により得られた電力で走行するディーゼルモードの2つの走行モードを備えた電気駆動車両の運行を管理する運行管理システムであって、
前記発電所と前記変電所の少なくとも一方から送信される電力の供給余裕度に関する第1データ、前記電気駆動車両から送信される走行位置に関する第2データ、及び前記電気駆動車両から送信される走行モードに関する第3データを受信するデータ受信手段と、
前記第1データに基づいて、現在の前記供給余裕度を検出する供給余裕度検出手段と、
前記第2データに基づいて、現在の前記電気駆動車両の走行位置を検出する走行位置検出手段と、
前記第3データに基づいて、現在の前記電気駆動車両の走行モードを検出する走行モード検出手段と、
前記供給余裕度検出手段、前記走行位置検出手段、及び前記走行モード検出手段による検出結果に基づいて、前記電気駆動車両の次の前記走行モードを決定する走行モード決定手段と、
前記走行モード決定手段が決定した前記走行モードを、前記電気駆動車両に指示する走行モード指示手段と、
を備え、
前記走行位置が前記架線のエリア内であって、前記走行モードを同じくする前記電気駆動車両が複数台存在する場合には、前記走行モード指示手段は、前記走行位置検出手段によって検出された前記走行位置に基づいて、前記複数台の前記電気駆動車両のうち先頭あるいは最後尾を走行している車両から順に、前記走行モードを切り替えるよう指示するこ
を特徴とする運行管理システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記供給余裕度検出手段が検出した前記供給余裕度が所定値以上の場合であって、前記走行位置検出手段が検出した前記電気駆動車両の走行位置が前記架線のエリア内であり、さらに、前記走行位置が前記架線のエリア内にある前記電気駆動車両について前記走行モード検出手段が検出した前記走行モードが前記ディーゼルモードである場合には、前記走行モード決定手段は、前記走行位置が前記架線のエリア内であって、前記走行モードが前記ディーゼルモードである前記電気駆動車両の次の前記走行モードを前記トロリーモードに決定し、前記走行モード指示手段は、その電気駆動車両に対して前記走行モードを前記トロリーモードへ切り替えるよう指示し、
前記走行位置が前記架線のエリア内であって、前記走行モードが前記ディーゼルモードである前記電気駆動車両が複数台存在する場合には、前記走行モード指示手段は、前記走行位置検出手段によって検出された前記走行位置に基づいて、前記複数台の前記電気駆動車両のうち先頭を走行している車両から順に、前記走行モードを前記トロリーモードへ切り替えるよう指示することを特徴とする運行管理システム。
【請求項3】
請求項1において、
前記供給余裕度検出手段が検出した前記供給余裕度が所定値未満の場合であって、前記走行位置検出手段が検出した前記電気駆動車両の走行位置が前記架線のエリア内であり、さらに、前記走行位置が前記架線のエリア内にある前記電気駆動車両について前記走行モード検出手段が検出した前記走行モードが前記トロリーモードである場合には、前記走行モード決定手段は、前記走行位置が前記架線のエリア内であって、前記走行モードが前記トロリーモードである前記電気駆動車両の次の前記走行モードを前記ディーゼルモードに決定し、前記走行モード指示手段は、その電気駆動車両に対して前記走行モードを前記ディーゼルモードへ切り替えるよう指示し、
前記走行位置が前記架線のエリア内であって、前記走行モードが前記トロリーモードである前記電気駆動車両が複数台存在する場合には、前記走行モード指示手段は、前記走行位置検出手段によって検出された前記走行位置に基づいて、前記複数台の前記電気駆動車両のうち最後尾を走行している車両から順に、前記走行モードを前記ディーゼルモードへ切り替えるよう指示することを特徴とする運行管理システム。
【請求項4】
請求項1において、
前記供給余裕度検出手段が検出した前記供給余裕度が所定値未満の場合であって、前記走行位置検出手段が検出した前記電気駆動車両の走行位置が前記架線のエリア内に進入する位置である場合には、前記走行モード決定手段は、前記走行位置が前記架線のエリア内に進入する位置にある前記電気駆動車両の次の前記走行モードを前記ディーゼルモードに決定し、前記走行モード指示手段は、その電気駆動車両に対して前記走行モードを前記ディーゼルモードにするよう指示することを特徴とする運行管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架線から供給される電力を用いた走行とエンジン出力による走行とに切り替え可能な電気駆動車両の運行管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
トロリーバスに代表されるように、架線のあるエリアでは架線から供給された電力を用いて走行し、架線のないエリアでは内燃機関の駆動力により走行する集電式の電気駆動車両が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
一方、鉱山でショベルが採掘した鉱物を運搬するダンプトラックにもこのような集電式のダンプトラックが用いられる。この種のダンプトラック(電気駆動車両)は、架線のあるエリアでは架線から供給される電力を用いて電動機を駆動することで走行し、架線のないエリアではエンジン(例えば、ディーゼルエンジン)で発電機を駆動し、その発電機が発電する電力を用いて電動機を駆動することで走行する。以下では、架線から供給される電力を用いて走行するモードをトロリーモード、エンジンで発電機を駆動し、発電機が発電する電力を用いて走行するモードをディーゼルモードと呼ぶことにする。一般に、トロリーモードはディーゼルモードに比べて電動機に供給する電力が大きい為、走行速度が高く、運搬量を増大することができる。また、トロリーモードはエンジンの出力を必要としないのでディーゼルモードに比べて低燃費である。鉱山においては、走行するエリアに応じてトロリーモードとディーゼルモードを切り替えながらこのようなダンプトラックが複数台走行している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−254150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このようなダンプトラックが複数台走行する場合、架線のあるエリアをダンプトラックが出入りして、架線に接続するダンプトラックの台数が変化することで架線に要求される電力は大きく変動する。もし、ダンプトラックが架線に多数接続し架線の電力供給能力以上の電力を架線に要求すると、架線に電力を供給する発電所(Power Station)及び/又は変電所(Substation)がトリップするなどの問題が発生する。また、ダンプトラックが架線に少数しか接続していなくても、発電所及び/又は変電所の電力供給能力が何らかの要因で低下すると同様の問題が発生する。このような発電所及び/又は変電所のトリップが発生すると、ダンプトラックの稼働率が低下し、鉱物の運搬量が低下する。鉱物の運搬量が低下すると鉱山の利益も低下するため、このようなダンプトラックの稼働率低下を防止することが大切である。
【0006】
一方で、鉱物の運搬量を増大する為にはできるだけトロリーモードで走行する方が望ましい。また、トロリーモードで走行する方が燃費の観点からも望ましい。しかし、トロリーモードで走行するダンプトラックの台数が多くなると発電所及び/又は変電所がトリップするリスクが高くなる。
【0007】
本発明の第1の目的は、発電所及び/又は変電所がトリップして、架線への電力の供給が停止するような事態を未然に防ぐことにある。さらに、本発明の第2の目的は、ダンプトラックの稼働率の低下を抑制すると共に、ダンプトラックの運搬量の増大及び低燃費化を図ることにある。また、本発明の第3の目的は、トロリーモードで走行するダンプトラックの台数を可能な限り多くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る運行管理システムは、発電所又は変電所から架線に供給される電力で走行するトロリーモード、及びディーゼルエンジンにより駆動した発電機により得られた電力で走行するディーゼルモードの2つの走行モードを備えた電気駆動車両の運行を管理する運行管理システムであって、前記発電所と前記変電所の少なくとも一方から送信される電力の供給余裕度に関する第1データ、前記電気駆動車両から送信される走行位置に関する第2データ、及び前記電気駆動車両から送信される走行モードに関する第3データを受信するデータ受信手段と、前記第1データに基づいて、現在の前記供給余裕度を検出する供給余裕度検出手段と、前記第2データに基づいて、現在の前記電気駆動車両の走行位置を検出する走行位置検出手段と、前記第3データに基づいて、現在の前記電気駆動車両の走行モードを検出する走行モード検出手段と、前記供給余裕度検出手段、前記走行位置検出手段、及び前記走行モード検出手段による検出結果に基づいて、前記電気駆動車両の次の前記走行モードを決定する走行モード決定手段と、前記走行モード決定手段が決定した前記走行モードを、前記電気駆動車両に指示する走行モード指示手段と、を備え、前記走行位置が前記架線のエリア内であって、前記走行モードを同じくする前記電気駆動車両が複数台存在する場合には、前記走行モード指示手段は、前記走行位置検出手段によって検出された前記走行位置に基づいて、前記複数台の前記電気駆動車両のうち先頭あるいは最後尾を走行している車両から順に、前記走行モードを切り替えるよう指示することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、電力の供給余裕度と、電気駆動車両の走行位置及び走行モードとに基づいて電気駆動車両の運行を管理するので、発電所及び/又は変電所が供給し得る電力を超えて電気駆動車両をトロリーモードで運転することはない。よって、発電所や変電所がいきなりトリップして、架線に電力が供給できなくなるといった不測の事態はなくなる。また、本発明によれば、発電所や変電所のトリップを防止できるので、電気駆動車両の稼動率が急激に低下することはなくなるうえ、電気駆動車両の運搬量の増大を図ることができる。さらに、本発明は、電力の供給余裕度と、電気駆動車両の走行位置及び走行モードとによって、電気駆動車両の次の走行モードをトロリーモードまたはディーゼルモードへ決定する構成であるため、電気駆動車両の低燃費化を図ることができるうえ、トロリーモードで走行する電気駆動車両の台数を可能な限り多くすることができる。
【0010】
また、本発明に係る運行管理システムは、以下の構成を備えているのが好ましい。
【0011】
前記走行位置検出手段が検出した前記電気駆動車両の走行位置が前記架線のエリア外である場合には、前記走行モード決定手段は、前記走行位置が前記架線のエリア外にある前記電気駆動車両の次の前記走行モードを前記ディーゼルモードに決定し、前記走行モード指示手段は、その電気駆動車両に対して前記走行モードを前記ディーゼルモードにするよう指示する。
【0012】
前記供給余裕度検出手段が検出した前記供給余裕度が所定値未満の場合であって、前記走行位置検出手段が検出した前記電気駆動車両の走行位置が前記架線のエリア内に進入する位置である場合には、前記走行モード決定手段は、前記走行位置が前記架線のエリア内に進入する位置にある前記電気駆動車両の次の前記走行モードを前記ディーゼルモードに決定し、前記走行モード指示手段は、その電気駆動車両に対して前記走行モードを前記ディーゼルモードにするよう指示する。このようにすると、発電所や変電所のトリップをより確実に防止できる。
【0013】
前記供給余裕度検出手段が検出した前記供給余裕度が所定値以上の場合であって、前記走行位置検出手段が検出した前記電気駆動車両の走行位置が前記架線のエリア内であり、さらに、前記走行位置が前記架線のエリア内にある前記電気駆動車両について前記走行モード検出手段が検出した前記走行モードが前記ディーゼルモードである場合には、前記走行モード決定手段は、前記走行位置が前記架線のエリア内であって、前記走行モードが前記ディーゼルモードである前記電気駆動車両の次の前記走行モードを前記トロリーモードに決定し、前記走行モード指示手段は、その電気駆動車両に対して前記走行モードを前記トロリーモードへ切り替えるよう指示する。このようにすると、電気駆動車両の更なる低燃費化を図ることができるうえ、トロリーモードで走行する電気駆動車両の台数を可能な限り多くすることができる。
【0014】
また、この場合、前記走行位置が前記架線のエリア内であって、前記走行モードが前記ディーゼルモードである前記電気駆動車両が複数台存在する場合には、前記走行モード指示手段は、前記走行位置検出手段によって検出された前記走行位置に基づいて、前記複数台の前記電気駆動車両のうち先頭を走行している車両から順に、前記走行モードを前記トロリーモードへ切り替えるよう指示する構成にすると更に好ましい。電気駆動車両は、ディーゼルモードで走行するよりトロリーモードで走行する方が高速であるため、先頭より後ろを走行している電気駆動車両の走行モードを先にトロリーモードに切り替えてしまうと、先頭をディーゼルモードで走行している電気駆動車両が、トロリーモードに切り替わった後ろの電気駆動車両の走行を妨げてしまうからである。
【0015】
前記供給余裕度検出手段が検出した前記供給余裕度が所定値未満の場合であって、前記走行位置検出手段が検出した前記電気駆動車両の走行位置が前記架線のエリア内であり、さらに、前記走行位置が前記架線のエリア内にある前記電気駆動車両について前記走行モード検出手段が検出した前記走行モードが前記トロリーモードである場合には、前記走行モード決定手段は、前記走行位置が前記架線のエリア内であって、前記走行モードが前記トロリーモードである前記電気駆動車両の次の前記走行モードを前記ディーゼルモードに決定し、前記走行モード指示手段は、その電気駆動車両に対して前記走行モードを前記ディーゼルモードへ切り替えるよう指示する。このようにすると、発電所や変電所のトリップをより確実に防止できる。
【0016】
また、この場合、前記走行位置が前記架線のエリア内であって、前記走行モードが前記トロリーモードである前記電気駆動車両が複数台存在する場合には、前記走行モード指示手段は、前記走行位置検出手段によって検出された前記走行位置に基づいて、前記複数台の前記電気駆動車両のうち最後尾を走行している車両から順に、前記走行モードを前記ディーゼルモードへ切り替えるよう指示する構成にすると更に好ましい。最後尾より前を走行している電気駆動車両の走行モードを先にディーゼルモードに切り替えると、ディーゼルモードに切り替わった電気駆動車両が、トロリーモードで走行する後ろの電気駆動車両の走行を妨げてしまうからである。
【0017】
また、上記目的を達成するために、好ましい運行管理システムは、発電所又は変電所から架線に供給される電力で電動機を駆動して走行するトロリーモード、及びエンジンの出力で前記電動機を駆動して走行するディーゼルモードの2つの走行モードを備えた電気駆動車両の運行を管理する運行管理システムであって、前記発電所と前記変電所の少なくと
も一方から送信される電力の供給余裕度に関する第1データ、及び前記電気駆動車両から送信される走行位置に関する第2データを受信するデータ受信手段と、前記第1データに基づいて、現在の前記供給余裕度を検出する供給余裕度検出手段と、前記第2データに基づいて、現在の前記電気駆動車両の走行位置を検出する走行位置検出手段と、前記走行位置検出手段による検出結果に基づいて、前記電気駆動車両の次の前記走行モードを決定する走行モード決定手段と、前記走行モード決定手段が決定した前記走行モードを前記電気駆動車両に指示する走行モード指示手段と、前記供給余裕度検出手段及び前記走行位置検出手段による検出結果に基づいて、前記電動機への出力指令を決定する電動機出力決定手段と、前記電動機出力決定手段が決定した出力指令を前記電気駆動車両に指示する電動機出力指示手段と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、電力の供給余裕度と、電気駆動車両の走行位置とに基づいて電気駆動車両の運行を管理するので、発電所及び/又は変電所が供給し得る電力を超えて電気駆動車両をトロリーモードで運転することはない。よって、発電所や変電所がいきなりトリップして、架線に電力が供給できなくなるといった不測の事態はなくなる。また、この構成によれば、発電所や変電所のトリップを防止できるので、電気駆動車両の稼動率が急激に低下することはなくなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、発電所及び/又は変電所のトリップを防止し、電気駆動車両の稼働率の低下を抑制すると同時に、可能な限りトロリーモードで走行する電気駆動車両の台数を多くすることができる。したがって、電気駆動車両の運搬量の増大及び低燃費化を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明を適用した電気駆動車両の一例であるダンプトラックの構成図。
図2】本発明を適用した鉱山の全体構成図。
図3】本発明の第1実施例に係る運行管理システムの構成図。
図4】第1実施例に係る運行管理システムが実行するメイン処理の手順を示すフローチャート。
図5図4に示すダンプトラック運行処理の手順を示すフローチャート。
図6】第1実施例に係る運行管理システムによってダンプトラックの運行を管理した場合の一例。
図7】本発明の第2実施例に係る運行管理システムの構成図。
図8】第2実施例に係る運行管理システムが実行するダンプトラック運行処理の手順を示すフローチャート。
図9】第2実施例に係る運行管理システムによってダンプトラックの運行を管理した場合の一例。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る運行管理システムの実施例について図面を参照しながら説明する。本実施例では、電気駆動車両の一例であるダンプトラックの運行を管理するシステムについて説明する。そこで、まず、ダンプトラックの構成及び走行動作について、図1を用いて説明する。
【0022】
図1はダンプトラックの構成図である。本実施例で適用されるダンプトラックは、図1に示すように、ディーゼルエンジン1と、発電機2と、整流器3と、インバータ4,5と、電動機6,7と、減速ギア8,9と、車輪10,11と、チョッパ12と、回生用抵抗器13と、パンタグラフ15と、電磁接触器16と、リアクトル17と、を備えている。
【0023】
このダンプトラックは、ディーゼルモードとトロリーモードの2つの走行モードで走行することができる。そこで、まず、ダンプトラックがディーゼルモードで走行する時の動作を説明する。ディーゼルモードでは、ディーゼルエンジン1が発電機2を駆動し、発電機2は三相交流電力を出力する。整流器3は発電機2の出力する三相交流電力を整流して直流電力に変換して、インバータ4及びインバータ5に直流電力を供給する。インバータ4は整流器3から供給される直流電力を可変周波数の交流電力に変換し、それを電動機6に供給することで電動機6を駆動する。インバータ5は整流器3から供給される直流電力を可変周波数の交流電力に変換し、それを電動機7に供給することで電動機7を駆動する。電動機6は減速ギア8を介して車輪10に接続されており、電動機6がインバータ4に駆動されることで車輪10が回転する。電動機7は減速ギア9を介して車輪11に接続されており、電動機7がインバータ5に駆動されることで車輪11が回転する。車輪10はダンプトラックの車体左側に、車輪11はダンプトラックの車体右側に設置されており、車輪10及び車輪11が回転することでダンプトラックは加速する。
【0024】
一方、ダンプトラックが減速する時は、電動機6及び電動機7は発電機として動作することで、ダンプトラックの運動エネルギーを電気エネルギーとしてインバータ4及びインバータ5の直流回路に電力を回生する。この時発生する回生電力を処理するために、インバータ4及びインバータ5の直流回路にはチョッパ12を介して回生用抵抗器13を接続している。インバータ4及びインバータ5の直流回路の直流電圧が規定値を超えた場合にはチョッパ12を動作させることで、回生用抵抗器13にて回生電力を消費する。
【0025】
次に、トロリーモードで走行する時の動作を説明する。架線14はパンタグラフ15、電磁接触器16、リアクトル17を介してインバータ4及びインバータ5の直流回路に接続される。電磁接触器16をONすることで架線14側からインバータ4及びインバータ5に直流電力が供給される。インバータ4は架線14側から供給される直流電力を可変周波数の交流電力に変換し、それを電動機6に供給することで電動機6を駆動する。インバータ5は架線14側から供給される直流電力を可変周波数の交流電力に変換し、それを電動機7に供給することで電動機7を駆動する。ディーゼルモードと同様に、電動機6がインバータ4に駆動され、電動機7がインバータ5に駆動されることで車輪10及び車輪11が回転し、ダンプトラックは加速する。
【0026】
一方、ダンプトラックが減速する時は、ディーゼルモードと同様に電動機6及び電動機7は発電機として動作することで、ダンプトラックの運動エネルギーを電気エネルギーとしてインバータ4及びインバータ5の直流回路に電力を回生する。インバータ4及びインバータ5の直流回路の直流電圧が規定値を超えた場合にはチョッパ12を動作させることで、回生用抵抗器13にて回生電力を消費する。
【0027】
以上のように、ディーゼルモードにおいてはディーゼルエンジン1で発電機2を駆動し、その発電機2が発電する電力を用いて電動機6,7を駆動することでダンプトラックは走行し、トロリーモードにおいては架線14から供給される電力を用いて電動機6,7を駆動することでダンプトラックは走行する。
【0028】
図2は鉱山全体の構成図を示す。発電所20は変電所31及び負荷32に交流電力を供給する。変電所31は供給された交流電力をトランスで降圧し、整流器で整流して架線14に直流電力を供給する。鉱山の運行管理を行う管理局18は無線等の通信ネットワーク網19を介して、変電所31に交流電力を供給する発電所20、架線14に直流電力を供給する変電所31、及びダンプトラック21a,21b,21c,21d,21eと通信を行う。なお、ここではダンプトラックは5台としているが、何台でも構わない。発電所20及び変電所31は架線14へ電力を供給する余裕度をそれぞれ検出し、供給余裕度として通信ネットワーク網19を介して管理局18へ伝達する。ここで、供給余裕度は、発電所20及び変電所31がそれぞれ電力を更にどのぐらい供給可能であるかを表す指標である。
【0029】
発電所20の供給余裕度は、発電所20の定格出力に対して、発電所20が変電所31へ更に供給できる電力の割合を表す。発電所20の定格出力をW1、発電所20の現在の出力をW2とすると、発電所20の供給余裕度(%)=(1−W2/W1)×100で求めることができる。例えば、発電所20が定格出力の90%の電力を出力している場合は、供給余裕度は10%となる。また、何らかの要因により発電所20が定格運転をすることが困難となり例えば最大で定格出力の50%しか出力できない場合に、発電所20が定格出力の40%の電力を出力している場合も供給余裕度は10%となる。
【0030】
変電所31の供給余裕度は、変電所31の定格出力に対して、変電所31が架線14へ更に供給できる電力の割合を表す。変電所31の定格出力をW3、変電所31の現在の出力をW4とすると、変電所31の供給余裕度(%)=(1−W4/W3)×100で求めることができる。例えば、変電所31が定格出力の90%の電力を出力している場合は、供給余裕度は10%となる。あるいは、変電所31の供給余裕度は、変電所31が電流を更にどのぐらい供給可能であるかを表す指標であっても良い。この場合、変電所31の定格電流をI3、変電所31の現在の電流をI4とすると、変電所31の供給余裕度(%)=(1−I4/I3)×100で求めることができる。例えば、変電所31が定格電流の90%の電流を出力している場合は、供給余裕度は10%となる。
【0031】
なお、変電所31が電力を更にどのぐらい供給可能であるかを表す指標と、電流を更にどのぐらい供給可能であるかを表す指標を比較して、その値の小さい方を変電所31の供給余裕度としても良い。例えば、変電所31が定格出力の90%の電力を出力し、定格電流の95%の電流を出力している場合は、供給余裕度は5%となる。一方、変電所31が定格出力の90%の電力を出力し、定格電流の85%の電流を出力している場合は、供給余裕度は10%となる。
【0032】
ダンプトラック21a,21b,21c,21d,21eはそれぞれGPS受信機を備え、各ダンプトラックの走行位置を計測し、計測した走行位置を、通信ネットワーク網19を介して管理局18へ伝達する。また、ダンプトラック21a,21b,21c,21d,21eはそれぞれ各ダンプトラックの現在の走行モードすなわち現在ディーゼルモードで走行中であるかトロリーモードで走行中であるかを、通信ネットワーク網19を介して管理局18へ伝達する。
【0033】
管理局18は、発電所20の供給余裕度、変電所31の供給余裕度、並びにダンプトラック21a,21b,21c,21d,21eの走行位置及び走行モードから、各ダンプトラックの次の走行モード指令を決定し、通信ネットワーク網19を介してダンプトラック21a,21b,21c,21d,21eに走行モード指令を伝達する。ダンプトラック21a,21b,21c,21d,21eは伝達された走行モード指令が現在の走行モードと異なる場合は走行モード指令に従って走行モードを切り替える。
【0034】
図3は、第1実施例に係る運行管理システムの構成を示す。図3に示すように、第1実施例に係る運行管理システムは、データ受信機(データ受信手段)22、車両位置検出器(走行位置検出手段)23、走行モード検出器(走行モード検出手段)24、供給余裕度検出器(供給余裕度検出手段)25、走行モード指令演算器(走行モード決定手段)26、及びデータ送信機(走行モード指示手段)27を備えている。この運行管理システムは、管理局18に設置されており、管理局18に通信ネットワーク網19を介して発電所20、変電所31、ダンプトラック21a〜21eから送信される各種データを受信すると共に、それらの受信データに基づいてダンプトラック21a〜21eの運行を管理している。以下、管理局18がどのようにしてダンプトラックの運行を管理しているかについて、詳細に説明する。
【0035】
データ受信機22は通信ネットワーク網19を介して発電所20及び変電所31の供給余裕度に関する第1データ、各ダンプトラックの走行位置に関する第2データ及び走行モードに関する第3データを受信する。車両位置検出器23は第2データから各ダンプトラックの走行位置を検出する。走行モード検出器24は第3データから各ダンプトラックの走行モードを検出する。供給余裕度検出器25は第1データから発電所20及び変電所31の供給余裕度を検出する。走行モード指令演算器26は、車両位置検出器23の出力する各ダンプトラックの走行位置、走行モード検出器24の出力する各ダンプトラックの走行モード、供給余裕度検出器25の出力する発電所20及び変電所31の供給余裕度を入力として、各ダンプトラックへの走行モード指令を出力する。データ送信機27は走行モード指令演算器26の出力する走行モード指令を入力として、通信ネットワーク網19を介して各ダンプトラックへ走行モード指令を送信する。
【0036】
次に、第1実施例に係る運行管理システムの処理の手順について説明する。図4は、第1実施例に係る運行管理システムのメイン処理のフローチャートである。図4に示すように、メイン処理が開始されると、S201において、タイマー設定処理が行われる。S201で設定される時間tは、例えば3分である。なお、この時間tは、供給余裕度の判定値A(後述)、ダンプトラックの台数等に応じて、適宜定めることができる。次いで、S202において、タイマー減算処理が行われる。
【0037】
次いで、S203において、t=0であるか否かが判断される。S203でYesの場合、S204にて、次に述べるダンプトラックの運行処理が行われる。そして、1回のダンプトラック運行処理が行われると、再びS201の手前に戻って、S201〜S204の処理が繰り返される。なお、S203でNoの場合、S202の手前に戻り、t=0になるまでタイマー減算処理が繰り返される。この図4から明らかなように、ダンプトラック運行処理は、3分毎に1回のタイミングで定期的に開始される。
【0038】
次に、ダンプトラック運行処理の詳細について説明する。図5は、ダンプトラックの運行処理のフローチャートである。S401では、データ受信機22が発電所20及び変電所31の供給余裕度に関する第1データと、各ダンプトラックの走行位置に関する第2データ及び走行モードに関する第3データを受信する。S401を実行したらS402へ移る。S402では、車両位置検出器23が第2データから各ダンプトラックの走行位置を検出する。S402を実行したらS403へ移る。
【0039】
S403では、走行モード検出器24が第3データから各ダンプトラックの走行モードを検出する。S403を実行したらS404へ移る。S404では、供給余裕度検出器25が第1データから発電所20及び変電所31の供給余裕度を検出する。S404を実行したらS405へ移る。
【0040】
S405では、各ダンプトラックの走行位置から各ダンプトラックへの走行モード指令を演算する。すなわち、架線エリアにいるダンプトラックに対してはトロリーモードでの走行指令を、非架線エリアにいるダンプトラックに対してはディーゼルモードでの走行指令を演算する。S405を実行したらS406へ移る。
【0041】
S406では、発電所20及び変電所31の供給余裕度と判定値(所定値)Aの比較を行い、いずれかの供給余裕度が判定値A未満の場合はS407へ移り、それ以外の場合はS408へ移る。なお、発電所20の供給余裕度と比較する判定値と変電所31の供給余裕度と比較する判定値をそれぞれ個別に設定しても良い。
【0042】
S407では、発電所20及び変電所31の供給余裕度が判定値A以上になるように、トロリーモードで走行中のダンプトラックからディーゼルモードへ切り替えるダンプトラックを選択する処理を行う。ここで、ディーゼルモードへ切り替えるダンプトラックはトロリーモードで走行中のダンプトラックの中で最後尾を走行しているダンプトラックから順番に選択する。これは、トロリーモードで走行するダンプトラックはディーゼルモードで走行するダンプトラックよりも高速走行であるため、ディーゼルモードで走行するダンプトラックがトロリーモードで走行するダンプトラックの走行の妨げにならないようにするためである。S407を実行したらS409へ移る。
【0043】
S408では、発電所20及び変電所31の供給余裕度が判定値A以上を満たす範囲で、ディーゼルモードで走行中のダンプトラックからトロリーモードへ切り替えるダンプトラックを選択する処理を行う。ここで、トロリーモードへ切り替えるダンプトラックは架線エリアをディーゼルモードで走行中のダンプトラックの中で先頭を走行しているダンプトラックから順番に選択する。これは、トロリーモードで走行するダンプトラックはディーゼルモードで走行するダンプトラックよりも高速走行であるため、ディーゼルモードで走行するダンプトラックがトロリーモードで走行するダンプトラックの走行の妨げにならないようにするためである。S408を実行したらS409へ移る。
【0044】
S409では、S405で演算した各ダンプトラックへの走行モード指令をベースにして、S407で選択されたダンプトラックへはディーゼルモードでの走行モード指令となるように、S408で選択されたダンプトラックへはトロリーモードでの走行モード指令となるように走行モード指令を変更する演算を行う。S409を実行したらS410へ移る。
【0045】
S410では、架線エリアへ新規に進入し、ディーゼルモードからトロリーモードへ切り替え前のダンプトラックが有るかどうかを判定する。もし、有る場合はS411へ、無い場合はS412へ移る。
【0046】
S411では、架線エリアへ新規に進入するダンプトラックがディーゼルモードからトロリーモードへ切り替わると発電所20及び変電所31の供給余裕度が判定値A未満になる場合は、ディーゼルモードからトロリーモードへの切り替えを行わずディーゼルモードを継続するように走行モード指令を変更する演算を行う。S411を実行したらS412へ移る。
【0047】
S412では、データ送信機27が各ダンプトラックへの走行モード指令を送信する。S412を実行したら一連の処理を終了する。
【0048】
判定値Aは発電所20の出力変動や負荷32の消費する電力の変動を考慮して設定する。例えば、発電所20の定格出力に対して、発電所20の出力変動が±10%、負荷32の消費電力の変動が±10%であるとすると、過渡的に発電所20の出力が10%減少して負荷32の消費電力が10%増加すると、架線14に供給できる電力が20%減少する可能性があるため、判定値Aは例えば20%に設定する。このように設定することで、発電所20の供給能力を超える電力を架線14が要求することが無くなり、発電所20がトリップするのを防止することができる。
【0049】
以上のようなフローチャートとすることで、発電所20及び変電所31の供給余裕度を判定値A以上に保つことができる。この結果、発電所20及び/又は変電所31がトリップするのを防止することができ、ダンプトラックの稼働率低下を防止することができる。また、発電所20及び変電所31の供給余裕度が判定値A以上を保つ範囲で、トロリーモードで走行するダンプトラックの台数が増えるので、鉱物の運搬量の増大及び低燃費化を図ることができる。
【0050】
図6に、第1実施例に係る運行管理システムによってダンプトラックの運行を管理した場合の運行管理の一例を示す。時刻T1、時刻T2、時刻T3に架線エリアにダンプトラックが一台ずつ進入してそれぞれディーゼルモードからトロリーモードに切り替わることで発電所20の供給余裕度が段階的に下がる。なお、ここでは説明を簡単にする為に、変電所31の供給余裕度に関しては省略する。時刻T4に架線エリアにダンプトラックが更に一台進入する。しかし、そのダンプトラックをディーゼルモードからトロリーモードに切り替えると供給余裕度が判定値Aを下回るので、そのダンプトラックはディーゼルモードのまま架線エリアを走行する。
【0051】
時刻T5に架線エリアをトロリーモードで走行していたダンプトラックが架線エリア外へ抜ける。すると、供給余裕度が大きくなるので、架線エリアをディーゼルモードで走行していたダンプトラックが時刻T6にトロリーモードに切り替わる。時刻T7に何らかの原因で発電所20の供給能力が低下すると、供給余裕度が判定値Aを下回る。すると、架線エリアをトロリーモードで走行しているダンプトラックのなかで最後尾を走行しているダンプトラックが時刻T8にディーゼルモードへ切り替わり、供給余裕度が判定値Aを上回る。
【0052】
以上のように、発電所20の供給余裕度が判定値Aを上回り、かつ、できるだけトロリーモードで走行するダンプトラックの台数が増えるように調整される。
【0053】
続いて、第2実施例に係る運行管理システムについて説明するが、第1実施例と同じ構成については、同一符号を付して、その説明は省略する。図7は、第2実施例に係る運行管理システムの構成を示す。図7に示すように、第2実施例に係る運行管理システムは、データ受信機(データ受信手段)22、車両位置検出器(走行位置検出手段)23、供給余裕度検出器(供給余裕度検出手段)25、走行モード指令演算器(走行モード決定手段)30、電動機出力指令演算器(電動機出力決定手段)28、及びデータ送信機(走行モード指示手段及び電動機出力指示手段)27を備えている。この運行管理システムは、管理局29に設置されており、管理局29に通信ネットワーク網19を介して発電所20、変電所31、ダンプトラック21a〜21eから送信される各種データを受信すると共に、それらの受信データに基づいてダンプトラック21a〜21eの運行を管理している。以下、管理局29がどのようにしてダンプトラックの運行を管理しているかについて、詳細に説明する。
【0054】
データ受信機22は通信ネットワーク網19を介して発電所20及び変電所31の供給余裕度に関する第1データ、及び各ダンプトラックの走行位置に関する第2データを受信する。車両位置検出器23は第2データから各ダンプトラックの走行位置を検出する。供給余裕度検出器25は第1データから発電所20及び変電所31の供給余裕度を検出する。走行モード指令演算器30は車両位置検出器23の出力する各ダンプトラックの走行位置を入力として、各ダンプトラックへの走行モード指令を出力する。電動機出力指令演算器28は車両位置検出器23の出力する各ダンプトラックの走行位置、供給余裕度検出器25の出力する発電所20及び変電所31の供給余裕度を入力として、各ダンプトラックの車輪を駆動する電動機への電動機出力指令(出力指令)を出力する。データ送信機27は走行モード指令演算器30の出力する走行モード指令、電動機出力指令演算器28の出力する各ダンプトラックへの電動機出力指令を入力として、通信ネットワーク網19を介して各ダンプトラックへの走行モード指令、電動機出力指令を送信する。
【0055】
次に、第2実施例に係る運行管理システムの処理の手順について説明する。なお、第2実施例に係る運行管理システムも、第1実施例に係る運行管理システムと同様に、3分毎に1回のタイミングで定期的にダンプトラックの運行管理処理が実行されるようになっている(図4参照)。
【0056】
次に、ダンプトラック運行処理の詳細について説明する。図8は、ダンプトラックの運行処理のフローチャートである。S601では、データ受信機22が発電所20及び変電所31の供給余裕度に関する第1データと各ダンプトラックの走行位置に関する第2データを受信する。S601を実行したらS602へ移る。S602では、車両位置検出器23が第2データから各ダンプトラックの走行位置を検出する。S602を実行したらS603へ移る。S603では、供給余裕度検出器25が第1データから発電所20及び変電所31の供給余裕度を検出する。S603を実行したらS604へ移る。
【0057】
S604では、各ダンプトラックの走行位置から各ダンプトラックへの走行モード指令を演算する。すなわち、架線エリアにいるダンプトラックにはトロリーモードでの走行指令を、非架線エリアにいるダンプトラックにはディーゼルモードでの走行モード指令を演算する。S604を実行したらS605へ移る。
【0058】
S605では、発電所20及び変電所31の供給余裕度と判定値Aの比較を行い、いずれかの供給余裕度が判定値A未満の場合はS606へ移り、それ以外の場合はS607へ移る。なお、発電所20の供給余裕度と比較する判定値と変電所31の供給余裕度と比較する判定値をそれぞれ個別に設定しても良い。
【0059】
S606では、発電所20及び変電所31の供給余裕度が判定値A以上になるように、トロリーモードで走行中のダンプトラックに対して車輪を駆動する電動機への電動機出力指令を変更する演算を行う。ここで、後ろを走行するダンプトラックが前を走行するダンプトラックよりも走行速度が高くならないように電動機出力指令を演算する。これは、後ろを走行するダンプトラックの速度が前を走行するダンプトラックの速度より高くなると前を走行するダンプトラックに追いついてしまって詰まってしまうのを防ぐためである。S606を実行したらS607へ移る。なお、トロリーモードで走行中の複数のダンプトラックの全ての速度を一律に下げるように電動機出力指令を演算するようにしても良い。この場合、走行中のダンプトラックの前後の間隔は保たれるため、鉱山での作業工程を変更しなくても済むといった利点がある。
【0060】
S607では、データ送信機27が各ダンプトラックへの走行モード指令及び電動機出力指令を送信する。S607を実行したら一連の処理を終了する。
【0061】
判定値Aは発電所20の出力変動や負荷32の消費する電力の変動を考慮して設定する。例えば、発電所20の定格出力に対して、発電所20の出力変動が±10%、負荷32の消費電力の変動が±10%であるとすると、過渡的に発電所20の出力が10%減少して負荷32の消費電力が10%増加すると、架線14に供給できる電力が20%減少する可能性があるため、判定値Aは例えば20%に設定する。このように設定することで、発電所20の供給能力を超える電力を架線14が要求することが無くなり、発電所20がトリップするのを防止することができる。
【0062】
以上のようなフローチャートとすることで、発電所20及び変電所31の供給余裕度を判定値A以上に保つことができる。この結果、発電所20及び/又は変電所31がトリップするのを防止することができ、ダンプトラックの稼働率低下を防止することができる。また、発電所20及び変電所31の供給余裕度が判定値A以上を保つ範囲で、トロリーモードで走行するダンプトラックの台数が増えるので、鉱物の運搬量の増大及び低燃費化を図ることができる。
【0063】
図9に、第2実施例に係る運行管理システムによってダンプトラックの運行を管理した場合の運行管理の一例を示す。時刻T1、時刻T2、時刻T3に架線エリアにダンプトラックが一台ずつ進入してそれぞれディーゼルモードからトロリーモードに切り替わることで発電所20の供給余裕度が段階的に下がる。なお、ここでは説明を簡単にする為に、変電所31の供給余裕度に関しては省略する。時刻T4に架線エリアにダンプトラックが更に一台進入してディーゼルモードからトロリーモードに切り替わることで供給余裕度が判定値Aを下回る。すると、架線エリアをトロリーモードで走行しているダンプトラックの車輪を駆動する電動機への電動機出力指令が低減されることで、時刻T5に供給余裕度が判定値Aを上回る。
【0064】
時刻T6に架線エリアをトロリーモードで走行していたダンプトラックが架線エリア外へ抜ける。すると、供給余裕度が大きくなるので、架線エリアをトロリーモードで走行しているダンプトラックの車輪を駆動する電動機への電動機出力指令が回復されることで、時刻T7に供給余裕度が判定値Aを上回る範囲で小さくなる。時刻T8に何らかの原因で発電所20の供給能力が低下すると、供給余裕度が判定値Aを下回る。すると、架線エリアをトロリーモードで走行しているダンプトラックの車輪を駆動する電動機への電動機出力指令が低減されることで、時刻T9に供給余裕度が判定値Aを上回る。
【0065】
以上のように、発電所20の供給余裕度が判定値Aを上回るようにトロリーモードで走行するダンプトラックの車輪を駆動する電動機への電動機出力指令が調整され、できるだけトロリーモードで走行するダンプトラックの台数が増えるように調整される。
【0066】
なお、これまでは各ダンプトラックの走行モード指令の演算や車輪を駆動する電動機への電動機出力指令の演算に、発電所20及び変電所31の供給余裕度が所定の判定値A以上になるようにしていた。しかし、架線14に流せる電力や電流にも制限があることから、架線14が電力あるいは電流を更にどのくらい供給可能であるかを架線14の供給余裕度として検出して、発電所20、変電所31、及び架線14の供給余裕度が所定の判定値A以上になるようにしても良い。また、発電所20の供給余裕度と比較する判定値、変電所31の供給余裕度と比較する判定値、架線14の供給余裕度と比較する判定値をそれぞれ個別に設定しても良い。
【符号の説明】
【0067】
1…ディーゼルエンジン(エンジン)、2…発電機、3…整流器、4…インバータ、5…インバータ、6…電動機、7…電動機、8…減速ギア、9…減速ギア、10…車輪、11…車輪、12…チョッパ、13…回生用抵抗器、14…架線、15…パンタグラフ、16…電磁接触器、17…リアクトル、18…管理局、19…通信ネットワーク網、20…発電所、21a〜21e…ダンプトラック(電気駆動車両)、22…データ受信機(データ受信手段)、23…車両位置検出器(走行位置検出手段)、24…走行モード検出器(走行モード検出手段)、25…電力供給余裕度検出器(供給余裕度検出手段)、26…走行モード指令演算器(走行モード決定手段)、27…データ送信機(走行モード指示手段、電動機出力指示手段)、28…電動機出力指令演算器(電動機出力決定手段)、29…管理局、30…走行モード指令演算器(走行モード決定手段)、31…変電所、32…負荷
図1
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図2