【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、下記の実施例は例示のために示すものであって、いかなる意味においても、本発明を限定的に解釈するものとして使用してはならない。
【0042】
実施例中、カーボンナノチューブの合成と各種物性評価は以下の方法で行った。
【0043】
[触媒調製例1]
約24.6gのクエン酸鉄(III)アンモニウム(和光純薬工業社製)をイオン交換水6.2kgに溶解した。この溶液に、酸化マグネシウム(岩谷社製 MJ−30)を約1000g加え、撹拌機で60分間激しく撹拌処理した後に、懸濁液を10Lのオートクレーブ容器中に導入した。この時、洗い込み液としてイオン交換水0.5kgを使用した。密閉した状態で160℃に加熱し6時間保持した。その後オートクレーブ容器を放冷し、容器からスラリー状の白濁物質を取り出し、過剰の水分を吸引濾過により濾別し、濾取物中に少量含まれる水分は120℃の乾燥機中で加熱乾燥した。得られた固形分は篩い上で、乳鉢で細粒化しながら、20〜32メッシュ(0.5〜0.85mm)の範囲の粒径を回収した。左記の顆粒状の触媒体を電気炉中に導入し、大気下600℃で3時間加熱した。かさ密度は0.32g/mLであった。また、濾液をエネルギー分散型X線分析装置(EDX)により分析したところ鉄は検出されなかった。このことから、添加したクエン酸鉄(III)アンモニウムは全量酸化マグネシウムに担持されたことが確認できた。さらに触媒体のEDX分析結果から、触媒体に含まれる鉄含有量は0.39wt%であった。
【0044】
[カーボンナノチューブ含有組成物製造例1]
図6に示した装置を用いてカーボンナノチューブの合成を行った。反応器603は内径75mm、長さは1100mmの円筒形石英管である。中央部に石英焼結板602を具備し、石英管下方部には、不活性ガスおよび原料ガス供給ラインである混合ガス導入管608、上部には廃ガス管606を具備する。さらに、反応器を任意温度に保持できるように、反応器の円周を取り囲む加熱器として3台の電気炉601を具備する。また反応管内の温度を検知するために温度計605を具備する。
【0045】
触媒調整例1で調製した固体触媒体132gをとり、鉛直方向に設置した反応器の中央部の石英焼結板上に導入することで触媒層604を形成した。反応管内温度が約860℃になるまで、触媒体層を加熱しながら、反応器底部から反応器上部方向へ向けてマスフローコントローラー607を用いて窒素ガスを16.5L/minで供給し、触媒体層を通過するように流通させた。その後、窒素ガスを供給しながら、さらにマスフローコントローラー607を用いてメタンガスを0.78L/minで60分間導入して触媒体層を通過するように通気し、反応させた。この際の固体触媒体の重量をメタンの流量で割った接触時間(W/F)は、169min・g/L、メタンを含むガスの線速が6.55cm/secであった。メタンガスの導入を止め、窒素ガスを16.5L/min通気させながら、石英反応管を室温まで冷却した。
【0046】
加熱を停止させ室温まで放置し、室温になってから反応器から触媒体とカーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブ含有組成物を取り出した。
【0047】
上記のようにして得たカーボンナノチューブ含有組成物が付着した触媒担体を約130g用いて4.8Nの塩酸水溶液2000mL中で1時間撹拌することで触媒金属である鉄とその担体であるMgOを溶解した。得られた黒色懸濁液は濾過した後、濾取物は再度4.8Nの塩酸水溶液400mLに投入し脱MgO処理をし、濾取した。この操作を2回繰り返した(脱MgO処理)。その後、イオン交換水で濾取物の懸濁液が中性となるまで水洗後、水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ含有組成物を保存した。このとき水を含んだウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物全体の重量は82gあった(カーボンナノチューブ含有組成物濃度:3.0wt%)。
【0048】
カーボンナノチューブ含有組成物の一部を120℃で一晩乾燥させた後、約1mgの試料を熱重量分析装置(島津製作所製 TGA−60)に設置し、空気中を50mL/minの流量で10℃/分の昇温速度にて室温から900℃まで昇温した。そのときの重量変化を測定し、重量減少曲線を時間で微分することにより微分熱重量曲線(DTG)(x軸を温度(℃)、y軸をDTG(mg/min))とした。高温側の燃焼ピークは622℃であり、高温側の重量減少は13.5%であった。低温側の燃焼ピークは530℃であり、低温側の重量減少は72.8%であった。変曲点は600℃であった(
図1)。TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.16であった。なお、
図1はこの粗カーボンナノチューブ含有組成物の熱重量分析の結果である。
【0049】
[ラマン分光分析によるカーボンナノチューブの性状評価]
共鳴ラマン分光計(ホリバ ジョバンイボン製 INF−300)に粉末試料を設置し、633nmのレーザー波長を用いて測定を行った。測定に際しては3箇所、別の場所にて分析を行い、G/D比はその相加平均で表した。
【0050】
[高分解能透過型電子顕微鏡写真]
カーボンナノチューブ組成物約0.5mgをエタノール約2mLに入れて、約15分間超音波バスを用いて分散処理を行った。分散した試料をグリッド上に滴下して乾燥した。この様に試料の塗布されたグリッドを透過型電子顕微鏡(日本電子製 JEM−2100)に設置し、測定を行った。測定倍率はそれぞれ5万倍から50万倍で行い、カーボンナノチューブの外径分布および層数分布の観察は40万倍で行った。加速電圧は120kVである。
【0051】
[実施例1:硝酸処理+アンモニア処理]
カーボンナノチューブ含有組成物製造例1で得られたウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物の乾燥重量分に対して、約300倍の重量の濃硝酸(和光純薬工業社製 1級 Assay60〜61%)を添加した。その後、約140℃±4℃に加熱したオイルバスで25時間攪拌しながら加熱還流した。加熱還流後、室温まで放冷し、カーボンナノチューブ含有組成物を含む硝酸溶液をイオン交換水で3倍に希釈して、ミリポア社製オムニポアメンブレンフィルター(フィルタータイプ:1.0μmJA)をしいた内径90mmろか器を用いて吸引濾過した。イオン交換水で濾取物の懸濁液が中性となるまで水洗後、水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ組成物を得た。得られたカーボンナノチューブ含有組成物の含むウェットケークを28%アンモニア水溶液(和光純薬)300mLに添加し、室温下で1時間撹拌した。その後、該溶液をミリポア社製オムニポアメンブレンフィルター(フィルタータイプ:1.0μmJA)をしいた内径90mmろか器を用いて吸引濾過した。その後メンブレンフィルター上のウェットケークが中性付近になるまでイオン交換水で洗浄した。水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ含有組成物を保存した。このとき水を含んだウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物全体の重量は10.6gあった(カーボンナノチューブ含有組成物濃度:3.2wt%)。回収率は13.4%であった。
【0052】
得られたカーボンナノチューブ含有組成物のウェットケークの一部を120℃で一晩乾燥させた後、約1mgの試料を熱重量分析装置(島津製作所製 TGA−60)に設置し、空気中を50mL/minの流量で10℃/分の昇温速度にて室温から900℃まで昇温した。そのときの重量変化を測定し、重量減少曲線を時間で微分することにより微分熱重量曲線(DTG)(x軸を温度(℃)、y軸をDTG(mg/min))とした。高温側の燃焼ピークは757℃であり、高温側の重量減少は79.6%であった。低温側の燃焼ピークは532℃であり、低温側の重量減少は8.3%であった。変曲点は603℃であった(
図2)。TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.90であった。なお、
図2は上記酸化反応後アルカリ処理した後のカーボンナノチューブ含有組成物の熱重量分析の結果である。
図4は、酸化反応後アルカリ処理した後のカーボンナノチューブ含有組成物の透過型電子顕微鏡による観察写真である。またカーボンナノチューブ組成物の波長633nmによるラマン分光分析の結果、G/D比は52であった。ウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物を乾燥重量20mgとなるように取り出し、上述した方法でCNTのバルク膜を作製した後に体積抵抗値を測定した。その結果、1.6X10
−3Ω・cmであった。
【0053】
また、アルカリ処理後のろ液から回収した試料を透過型電子顕微鏡で観察した。その結果を
図3に示す。
【0054】
[実施例2:硝酸処理+アンモニア処理+硝酸ドープ]
実施例1と同様の操作でアンモニア処理まで行って得られた、水を含んだウェット状態のままのカーボンナノチューブ含有組成物を乾燥重量として0.34g取り出し、60%硝酸水溶液(和光純薬工業社製 1級 Assay60〜61%)0.3L中に添加した。室温で24時間撹拌した後にミリポア社製オムニポアメンブレンフィルター(フィルタータイプ:1.0μmJA)をしいた内径90mmろか器を用いて吸引濾過した。その後メンブレンフィルター上のウェットケークが中性付近になるまでイオン交換水で洗浄した。水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ含有組成物を保存した。このとき水を含んだウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物全体の重量は10.9gあった(カーボンナノチューブ含有組成物濃度:3.0wt%)。硝酸水溶液に添加する前、すなわちアンモニア水溶液によるアルカリ処理後からの回収率は96.2%であった。
【0055】
得られたカーボンナノチューブ含有組成物のウェットケークの一部を120℃で一晩乾燥させた後、約1mgの試料を熱重量分析装置(島津製作所製 TGA-60)に設置し、空気中を50mL/minの流量で10℃/分の昇温速度にて室温から900℃まで昇温した。そのときの重量変化を測定し、重量減少曲線を時間で微分することにより微分熱重量曲線(DTG)(x軸を温度(℃)、y軸をDTG(mg/min))とした。高温側の燃焼ピークは755℃であり、高温側の重量減少は81.8%であった。低温側の燃焼ピークは530℃であり、低温側の重量減少は6.7%であった。変曲点は586℃であった。TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.92であった。またカーボンナノチューブ組成物の波長633nmによるラマン分光分析の結果、G/D比は52であった。ウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物を乾燥重量20mgとなるように取り出し、上述した方法でCNTのバルク膜を作製した後に体積抵抗値を測定した。その結果、3.2X10
−4Ω・cmであった。
【0056】
[実施例3:硝酸処理時間+アンモニア処理]
実施例1と同様の操作で硝酸処理時間を12時間として反応を行った。その結果、水を含んだウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物全体の重量は14.1gあった(カーボンナノチューブ含有組成物濃度:2.9wt%)。回収率は15.9%であった。
【0057】
得られたカーボンナノチューブ含有組成物のウェットケークの一部を120℃で一晩乾燥させた後、約1mgの試料を熱重量分析装置(島津製作所製 TGA−60)に設置し、空気中を50mL/minの流量で10℃/分の昇温速度にて室温から900℃まで昇温した。そのときの重量変化を測定し、重量減少曲線を時間で微分することにより微分熱重量曲線(DTG)(x軸を温度(℃)、y軸をDTG(mg/min))とした。高温側の燃焼ピークは748℃であり、高温側の重量減少は62.4%であった。低温側の燃焼ピークは564℃であり、低温側の重量減少は12.9%であった。変曲点は622℃であった。TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.83であった。またカーボンナノチューブ組成物の波長633nmによるラマン分光分析の結果、G/D比は30であった。
【0058】
また上記の操作を実施後、実施例2と同様の操作で硝酸ドープし、ろ過後メンブレンフィルター上のウェットケークが中性付近になるまでイオン交換水で洗浄した。その後、ウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物を乾燥重量20mgとなるように取り出し、上述した方法でCNTのバルク膜を作製した後に体積抵抗値を測定した。その結果、3.4X10
−4Ω・cmであった。
【0059】
[
比較例5:硝酸処理濃度50%+アンモニア処理]
実施例1と同様の操作で硝酸濃度を50%となるようにイオン交換水で希釈し、反応時間50時間で加熱還流を行った。その結果、水を含んだウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物全体の重量は8.0gあった(カーボンナノチューブ含有組成物濃度:3.6wt%)。回収率は10%であった。
【0060】
得られたカーボンナノチューブ含有組成物のウェットケークの一部を120℃で一晩乾燥させた後、約1mgの試料を熱重量分析装置(島津製作所製 TGA−60)に設置し、空気中を50mL/minの流量で10℃/分の昇温速度にて室温から900℃まで昇温した。そのときの重量変化を測定し、重量減少曲線を時間で微分することにより微分熱重量曲線(DTG)(x軸を温度(℃)、y軸をDTG(mg/min))とした。高温側の燃焼ピークは743℃であり、高温側の重量減少は83.2%であった。低温側の燃焼ピークは509℃であり、低温側の重量減少は6.5%であった。変曲点は570℃であった。TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.93であった。またカーボンナノチューブ組成物の波長633nmによるラマン分光分析の結果、G/D比は38であった。
【0061】
[比較例1:硝酸処理のみ、反応時間25時間]
カーボンナノチューブ含有組成物製造例1で得られたウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物の乾燥重量分に対して、約300倍の重量の濃硝酸(和光純薬工業社製 1級 Assay60〜61%)を添加した。その後、約140℃±4℃に加熱したオイルバスで25時間攪拌しながら加熱還流した。加熱還流後、室温まで放冷し、カーボンナノチューブ含有組成物を含む硝酸溶液をイオン交換水で3倍に希釈して、ミリポア社製オムニポアメンブレンフィルター(フィルタータイプ:1.0μmJA)をしいた内径90mmろか器を用いて吸引濾過した。イオン交換水で濾取物の懸濁液が中性となるまで水洗後、水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ組成物を保存した。このとき水を含んだウェット状態のカーボンナノチューブ組成物全体の重量は3.351gあった(カーボンナノチューブ含有組成物濃度:5.29wt%)。回収率は13.1%であった。
【0062】
得られたカーボンナノチューブ含有組成物のウェットケークの一部を120℃で一晩乾燥させた後、約1mgの試料を熱重量分析装置(島津製作所製 TGA−60)に設置し、空気中を50mL/minの流量で10℃/分の昇温速度にて室温から900℃まで昇温した。そのときの重量変化を測定し、重量減少曲線を時間で微分することにより微分熱重量曲線(DTG)(x軸を温度(℃)、y軸をDTG(mg/min))とした。熱重量分析を行った結果、TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.79であった。DTG曲線から高温側の燃焼ピークは725℃であり、低温側の燃焼ピークは452℃であった。また、カーボンナノチューブ組成物の波長633nmによるラマン分光分析の結果、G/D比は79であった。
【0063】
またウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物を乾燥重量20mgとなるように取り出し、上述した方法でCNTのバルク膜を作製した後に体積抵抗値を測定した。その結果、3.9X10
−4Ω・cmであった。
【0064】
[比較例2:硝酸処理のみ、硝酸濃度50%、反応時間50時間]
比較例1と同様の操作で硝酸濃度を50%となるようにイオン交換水で希釈し、反応時間50時間で加熱還流を行った。その結果、水を含んだウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物全体の重量は3.3gあった(カーボンナノチューブ含有組成物濃度:7.4wt%)。回収率は10%であった。
【0065】
得られたカーボンナノチューブ含有組成物のウェットケークの一部を120℃で一晩乾燥させた後、約1mgの試料を熱重量分析装置(島津製作所製 TGA−60)に設置し、空気中を50mL/minの流量で10℃/分の昇温速度にて室温から900℃まで昇温した。そのときの重量変化を測定し、重量減少曲線を時間で微分することにより微分熱重量曲線(DTG)(x軸を温度(℃)、y軸をDTG(mg/min))とした。高温側の燃焼ピークは757℃であり、高温側の重量減少は67.7%であった。低温側の燃焼ピークは434℃であり、低温側の重量減少は12.9%であった。変曲点は495℃であった。TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.84であった。またカーボンナノチューブ組成物の波長633nmによるラマン分光分析の結果、G/D比は48であった。
【0066】
[比較例3:硝酸処理温度+水酸化ナトリウム処理]
カーボンナノチューブ含有組成物製造例1で得られたウェットケーク32.5g(固形濃度3.1wt%)と60%硝酸水溶液(和光純薬工業社製 1級 Assay60〜61%)1Lを2Lナス型フラスコに添加し、85±4℃に加熱したオイルバス中で加熱還流を48時間行った。該反応液を室温まで放冷後、遠心分離機(トミー工業株式会社製 微量高速冷却遠心機 MX−300)で遠心分離(10,000G,30分)を行い、沈殿物を回収した後に0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液に添加し、室温下で1時間撹拌した。該溶液をミリポア社製オムニポアメンブレンフィルター(フィルタータイプ:1.0μmJA)をしいた内径90mmろか器を用いて吸引濾過した。その後メンブレンフィルター上のウェットケークが中性付近になるまでイオン交換水で洗浄した。水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ含有組成物を保存した。このとき水を含んだウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物全体の重量は9.6gあった(カーボンナノチューブ含有組成物濃度:9.2wt%)。回収率は88%であった。
【0067】
得られたカーボンナノチューブ含有組成物のウェットケークの一部を120℃で一晩乾燥させた後、約1mgの試料を熱重量分析装置(島津製作所製 TGA−60)に設置し、空気中を50mL/minの流量で10℃/分の昇温速度にて室温から900℃まで昇温した。そのときの重量変化を測定し、重量減少曲線を時間で微分することにより微分熱重量曲線(DTG)(x軸を温度(℃)、y軸をDTG(mg/min))とした。高温側の燃焼ピークは489℃であり、高温側の重量減少は13.6%であった。低温側の燃焼ピークは404℃であり、低温側の重量減少は65.8%であった。変曲点は443℃であった(
図7)。TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.17であった。なお、
図7は得られたカーボンナノチューブ含有組成物の熱重量分析の結果である。またカーボンナノチューブ組成物の波長633nmによるラマン分光分析の結果、G/D比は17であった。
【0068】
[比較例4:硝酸処理温度+水酸化ナトリウム処理}
実施例1と同様の操作でアンモニア水溶液の代わりに0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液を用いた。その結果、水を含んだウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物全体の重量は3.7gあった(カーボンナノチューブ含有組成物濃度:3.3wt%)。回収率は13.5%であった。
【0069】
得られたカーボンナノチューブ含有組成物のウェットケークの一部を120℃で一晩乾燥させた後、約1mgの試料を熱重量分析装置(島津製作所製 TGA−60)に設置し、空気中を50mL/minの流量で10℃/分の昇温速度にて室温から900℃まで昇温した。そのときの重量変化を測定し、重量減少曲線を時間で微分することにより微分熱重量曲線(DTG)(x軸を温度(℃)、y軸をDTG(mg/min))とした。高温側の燃焼ピークは591℃であり、高温側の重量減少は67.7%であった。低温側の燃焼ピークは348℃であり、低温側の重量減少は20.3%であった。変曲点は443℃であった(
図8)。TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.77であった。なお、
図8は得られたカーボンナノチューブ含有組成物の熱重量分析の結果である。またカーボンナノチューブ組成物の波長633nmによるラマン分光分析の結果、G/D比は45であった。
【0070】
上記の結果より、土類金属イオンや希土類金属イオンを持つアルカリ溶液を用いた場合では、水に溶解しない程度に一部官能基化された(例えばカルボン酸)カーボンナノチューブ含有組成物と土類金属や希土類金属などの金属イオンが塩を形成していると考えられる。そのため加熱されていく過程で金属イオンが着火剤のような働きをして燃焼を開始してしまい、結果として耐熱性が低下したと推察される。
【0071】
また実施例1と比較例1を比べた場合、収量等の点からほとんど違いはないが、TG(H)/(TG(L)+TG(H))の値が実施例1のほうが大きい。そのため実施例2で示したように硝酸を用いたドーピングを行うと体積抵抗値は比較例1よりも小さい値を示す結果となった。同様に実施例3で示したように酸化反応の時間を短縮して、アンモニアによるアルカリ処理を行うと回収率は増加し、TG(H)/(TG(L)+TG(H))も大きくなる。更に硝酸によるドーピングを行うと比較例1よりも低い体積抵抗値を示す。