(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5839863
(24)【登録日】2015年11月20日
(45)【発行日】2016年1月6日
(54)【発明の名称】降圧スイッチングレギュレータおよびその制御回路ならびにそれを用いた電子機器
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20151210BHJP
H02M 7/21 20060101ALI20151210BHJP
【FI】
H02M3/155 H
H02M7/21 A
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-153242(P2011-153242)
(22)【出願日】2011年7月11日
(65)【公開番号】特開2013-21816(P2013-21816A)
(43)【公開日】2013年1月31日
【審査請求日】2014年7月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】安藤 弘明
(72)【発明者】
【氏名】山本 勲
【審査官】
安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−149067(JP,A)
【文献】
特開2011−083160(JP,A)
【文献】
特開2011−109812(JP,A)
【文献】
特開2006−340421(JP,A)
【文献】
特開2007−020352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
H02M 7/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同期整流型の降圧スイッチングレギュレータの制御回路であって、
通常モードにおいてアクティブとなり、前記スイッチングレギュレータの出力電圧に応じたフィードバック電圧が目標値に近づくようにデューティ比が調節される第1パルス信号を生成する第1コントローラと、
軽負荷モードにおいてアクティブとなり、前記スイッチングレギュレータのスイッチングトランジスタおよび同期整流トランジスタを間欠的にスイッチングさせる第2パルス信号を生成する第2コントローラと、
通常モードにおいて前記第1パルス信号にもとづいて、軽負荷モードにおいて前記第2パルス信号にもとづいて、前記スイッチングトランジスタおよび前記同期整流トランジスタを駆動するドライバと、
前記スイッチングトランジスタのオン期間において前記スイッチングトランジスタに流れる電流を所定の第1しきい値電流と比較し、前記スイッチングトランジスタに流れる電流が前記第1しきい値電流を超えるとアサートされる比較信号を生成する軽負荷検出コンパレータと、
を備え、
前記比較信号がアサートされるとき通常モードに、前記比較信号がアサートされないとき、前記軽負荷モードに設定され、
前記軽負荷モードにおいて、前記第2コントローラは、(1)前記スイッチングトランジスタをオンし、その後前記スイッチングトランジスタに流れる電流が所定の第2しきい値電流に達すると前記スイッチングトランジスタをオフし、(2)続いて前記同期整流トランジスタをオンし、前記同期整流トランジスタに流れる電流がゼロとなると前記同期整流トランジスタをオフし、(3)その後、前記スイッチングトランジスタおよび前記同期整流トランジスタを両方オフするように前記第2パルス信号を生成することを特徴とする制御回路。
【請求項2】
前記軽負荷検出コンパレータは、
前記スイッチングトランジスタのオン期間における前記スイッチングトランジスタの電圧降下を、前記第1しきい値電流に応じたしきい値電圧と比較することを特徴とする請求項1に記載の制御回路。
【請求項3】
前記降圧スイッチングレギュレータの入力電圧よりも前記第1しきい値電流に応じた電位差低いしきい値電圧を生成するしきい値電圧生成回路をさらに備え、
前記軽負荷検出コンパレータは、前記スイッチングトランジスタのオン期間における前記スイッチングトランジスタと前記同期整流トランジスタの接続点の電位を、前記しきい値電圧と比較することを特徴とする請求項1に記載の制御回路。
【請求項4】
前記しきい値電圧生成回路は、
前記スイッチングトランジスタと同型の第1トランジスタであって、その第1端子が前記降圧スイッチングレギュレータの入力端子と接続され、その制御端子に、前記スイッチングトランジスタのオン状態における前記スイッチングトランジスタの制御端子の電位が印加された第1トランジスタと、
前記第1トランジスタの第2端子に接続され、前記第1しきい値電流に対応する基準電流を生成する電流源と、
を含み、前記スイッチングトランジスタの前記第2端子の電位を、前記しきい値電圧として出力することを特徴とする請求項3に記載の制御回路。
【請求項5】
前記通常モードと前記軽負荷モードに応じて、前記しきい値電流にはヒステリシスが設定されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の制御回路。
【請求項6】
前記第2コントローラは、
前記スイッチングトランジスタのオン期間において前記スイッチングトランジスタに流れる電流が所定の第2しきい値電流を超えるとアサートされる第1比較信号を生成する第1コンパレータと、
前記同期整流トランジスタのオン期間において前記同期整流トランジスタに流れる電流が所定の第3しきい値より低くなるとアサートされる第2比較信号を生成する第2コンパレータと、
前記スイッチングレギュレータの出力電圧に応じたフィードバック電圧が前記目標値より低くなるとアサートされる第3比較信号を生成する第3コンパレータと、
を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の制御回路。
【請求項7】
前記制御回路は、1つの半導体基板上に一体集積化されることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の制御回路。
【請求項8】
入力端子と接地端子の間に順に直列に設けられたスイッチングトランジスタおよび同期整流トランジスタと、
前記スイッチングトランジスタと前記同期整流トランジスタの接続点と出力端子の間に設けられたインダクタと、
前記出力端子と接地端子の間に設けられた出力キャパシタと、
前記スイッチングトランジスタおよび前記同期整流トランジスタを駆動する請求項1から7のいずれかに記載の制御回路と、
を備えることを特徴とする降圧スイッチングレギュレータ。
【請求項9】
電池電圧を出力する電池と、
前記電池電圧を降圧して負荷に供給する請求項8に記載の降圧スイッチングレギュレータと、
を備えることを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、降圧スイッチングレギュレータに関し、特に同期整流型のスイッチングレギュレータの制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant)、ノート型パーソナルコンピュータなどのさまざまな電子機器に、デジタル信号処理を行うマイコンが搭載されている。こうしたマイコンの駆動に必要とされる電源電圧は、半導体製造プロセスの微細化に伴って低下しており、1.5V以下の低電圧で動作するものがある。一方、こうした電子機器にはリチウムイオン電池などの電池が電源として搭載される。リチウムイオン電池から出力される電圧は、3V〜4V程度であり、この電圧をそのままマイコンに供給したのでは、無駄な電力消費が発生するため、降圧型のスイッチングレギュレータを用いて電池電圧を降圧し、定電圧化してマイコンに供給するのが一般的である。
【0003】
降圧型のスイッチングレギュレータは、整流用のダイオードを用いる方式(以下、ダイオード整流方式という)と、ダイオードの代わりに、整流用トランジスタを用いる方式(以下、同期整流型という)が存在する。前者の場合、負荷に流れる負荷電流が低いときに高効率が得られるという利点を有するが、制御回路の外部に、インダクタ、出力キャパシタに加えてダイオードが必要となるため、回路面積が大きくなる。後者の場合、負荷に供給する電流が小さいときの効率は、前者に比べて劣るが、ダイオードの代わりにトランジスタを用いるため、LSIの内部に集積化することができ、周辺部品を含めた回路面積としては小型化が可能となる。携帯電話などの電子機器において、小型化が要求される場合には、整流用トランジスタを用いたスイッチングレギュレータ(以下、同期整流型スイッチングレギュレータという)が用いられることが多い。
【0004】
図1(a)、(b)はそれぞれ、同期整流型スイッチングレギュレータの重負荷および軽負荷時の電流の時間波形を示す図である。同図において、I
Lは、インダクタに流れる電流を、I
OUTは負荷電流を表しており、インダクタに流れる電流I
Lの時間平均値が負荷電流I
OUTとなる。
図1(a)に示すように、重負荷時においては、負荷電流I
OUTが大きいため、インダクタに流れる電流I
Lは正の値をとり続ける。ところが、
図1(b)に示すように、軽負荷時において負荷電流I
OUTが減少すると、インダクタに流れる電流I
Lが斜線部のように負となり、インダクタに流れる電流I
Lの向きが反転する。その結果、同期整流型では、軽負荷時において、インダクタから同期整流トランジスタを介して接地に対して電流が流れることになる。この電流は、負荷に供給されないため、電力を無駄に消費していることになる。
【0005】
この問題を解決するために、重負荷時と軽負荷時で、スイッチングレギュレータの制御方式を切りかえる回路が提案されている。具体的には、インダクタ電流I
Lが正であるときは重負荷と判定し、インダクタ電流I
Lが負となったことを検出すると軽負荷と判定して動作モードを切りかえる。
【0006】
図2は、本発明者らが検討した比較技術に係るスイッチングレギュレータの構成を示す回路図である。降圧スイッチングレギュレータ2rは、制御回路100rおよび出力回路102を備える。出力回路102は、スイッチングトランジスタM1、同期整流トランジスタM2、インダクタL1、出力キャパシタC1を含む。
【0007】
制御回路100rは、スイッチングトランジスタM1および同期整流トランジスタM2のオン、オフ状態を制御することにより、負荷6に供給される出力電圧V
OUTを目標値付近に安定化させる。
【0008】
制御回路100は、第1コントローラ10と、第2コントローラ20、ドライバ30、軽負荷検出コンパレータ40rを備える。抵抗R1、R2によって、降圧スイッチングレギュレータ2rの出力電圧V
OUTが分圧され、フィードバック電圧V
FBが生成される。制御回路100は、負荷6に流れる負荷電流I
OUTがある程度大きな重負荷状態において、第1のモード(通常モード)で動作し、負荷電流I
OUTがゼロに近くなる軽負荷状態において、第2のモード(軽負荷モード)で動作する。
【0009】
通常モードにおいて、第1コントローラ10がアクティブとなり、フィードバック電圧V
FBが所定の基準電圧V
REFと一致するようにデューティ比が調節されるパルス幅変調(PWM)信号S
PWMを生成する。ドライバ30は、PWM信号S
PWMにもとづいて、スイッチングトランジスタM1および同期整流トランジスタM2を相補的にスイッチングする。
【0010】
軽負荷モードにおいては第2コントローラ20がアクティブとなる。第2コントローラ20は、スイッチングトランジスタM1をある期間オンし、続いて同期整流トランジスタM2をある期間オンし、その後、スイッチングトランジスタM1および同期整流トランジスタM2を両方オフしてLX端子をハイインピーダンスとする。これにより、出力電圧V
OUTがわずかに上昇する。軽負荷モードでは、スイッチングトランジスタM1および同期整流トランジスタM2のスイッチングが停止するため、回路の消費電力が低減される。
【0011】
軽負荷検出コンパレータ40rは、重負荷状態から軽負荷状態への遷移を検出するために設けられる。重負荷状態においてインダクタ電流I
Lが正のとき、電流I
M2は同期整流トランジスタM2をソースからドレインに向かって流れる。軽負荷状態となると、インダクタ電流I
Lが負となり、電流I
M2は、同期整流トランジスタM2をドレインからソースに向かって流れる。
【0012】
軽負荷検出コンパレータ40rは、重負荷状態において、同期整流トランジスタM2のオン期間に、同期整流トランジスタM2に流れる電流I
M2を監視し、電流I
M2に応じた検出信号を所定のしきい値と比較することにより、軽負荷状態を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2004−32875号公報
【特許文献2】特開2002−252971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
降圧スイッチングレギュレータ2rの通常モードにおけるスイッチングトランジスタM1と同期整流トランジスタM2のデューティ比は、入力電圧V
INと出力電圧V
OUTに応じて制御される。具体的には、デューティ比T
ON/T
Pは、V
OUT/V
INで与えられる。T
ONはスイッチングトランジスタM1のオン時間、T
Pはスイッチングの周期である。
【0015】
したがって入力電圧V
INが低下して出力電圧V
OUTに近づくにしたがい、デューティ比が100%に近づいていき、同期整流トランジスタM2のオン時間が短くなる。上述のように軽負荷検出コンパレータ40rは、同期整流トランジスタM2のオン時間における電流I
M2をしきい値と比較する。ここで軽負荷検出コンパレータ40rの応答速度は有限であり、同期整流トランジスタM2のオン時間が軽負荷検出コンパレータ40rの応答時間より短くなると、軽負荷を検出できなくなる。これは、出力電流I
OUTが非常に小さいにもかかわらず通常モードで動作し続け、消費電力が大きくなることを意味する。
【0016】
なお、以上の考察を、本発明の分野における共通の一般知識の範囲として捉えてはならない。さらに言えば上記考察自体が、本出願人がはじめて想到したものである。
【0017】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、同期整流型の降圧スイッチングレギュレータにおいて、軽負荷状態を確実に検出可能な制御回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明のある態様は、同期整流型の降圧スイッチングレギュレータの制御回路に関する。この制御回路は、通常モードにおいてアクティブとなり、スイッチングレギュレータの出力電圧に応じたフィードバック電圧が目標値に近づくようにデューティ比が調節される第1パルス信号を生成する第1コントローラと、軽負荷モードにおいてアクティブとなり、スイッチングレギュレータのスイッチングトランジスタおよび同期整流トランジスタを間欠的にスイッチングさせる第2パルス信号を生成する第2コントローラと、通常モードにおいて第1パルス信号にもとづいて、軽負荷モードにおいて第2パルス信号にもとづいて、スイッチングトランジスタおよび同期整流トランジスタを駆動するドライバと、スイッチングトランジスタのオン期間においてスイッチングトランジスタに流れる検出電流を所定の第1しきい値電流と比較し、検出電流が第1しきい値電流を超えるとアサートされる比較信号を生成する軽負荷検出コンパレータと、を備える。制御回路は、比較信号がアサートされると通常モードに、比較信号がアサートされないとき、軽負荷モードに設定される。
【0019】
入力電圧が低下して出力電圧に近づくと、スイッチングトランジスタのオン時間が長くなる。この態様によると、スイッチングトランジスタのオン期間にスイッチングトランジスタに流れる電流に応じて、軽負荷状態を検出するため、入力電圧が低くても、十分な検出期間が確保できるため、軽負荷状態を確実に検出できる。
【0020】
軽負荷検出コンパレータは、スイッチングトランジスタのオン期間におけるスイッチングトランジスタの電圧降下を、第1しきい値電流に応じたしきい値電圧と比較してもよい。
【0021】
制御回路は、降圧スイッチングレギュレータの入力電圧よりも第1しきい値電流に応じた電位差低いしきい値電圧を生成するしきい値電圧生成回路をさらに備えてもよい。軽負荷検出コンパレータは、スイッチングトランジスタのオン期間におけるスイッチングトランジスタと同期整流トランジスタの接続点の電位を、しきい値電圧と比較してもよい。
【0022】
しきい値電圧生成回路は、スイッチングトランジスタと同型の第1トランジスタであって、その第1端子が降圧スイッチングレギュレータの入力端子と接続され、その制御端子に、スイッチングトランジスタのオン状態におけるスイッチングトランジスタの制御端子の電位が印加された第1トランジスタと、第1トランジスタの第2端子に接続され、第1しきい値電流に対応する基準電流を生成する電流源と、を含み、スイッチングトランジスタの第2端子の電位を、しきい値電圧として出力してもよい。
【0023】
通常モードと軽負荷モードに応じて、しきい値電流にはヒステリシスが設定されてもよい。
この場合、スイッチングトランジスタに流れる電流がしきい値電流付近で変動する場合に、通常モードと軽負荷モードを交互に行き来する発振を抑制できる。
【0024】
軽負荷モードにおいて、第2コントローラは、(1)スイッチングトランジスタをオンし、その後スイッチングトランジスタに流れる電流が所定の第2しきい値電流に達するとスイッチングトランジスタをオフし、(2)続いて同期整流トランジスタをオンし、同期整流トランジスタに流れる電流がゼロとなると同期整流トランジスタをオフし、(3)その後、スイッチングトランジスタおよび同期整流トランジスタを両方オフするように第2パルス信号を生成してもよい。
【0025】
制御回路は、1つの半導体基板上に一体集積化されてもよい。
「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。
【0026】
本発明の別の態様は、降圧スイッチングレギュレータに関する。降圧スイッチングレギュレータは、入力端子と接地端子の間に順に直列に設けられたスイッチングトランジスタおよび同期整流トランジスタと、スイッチングトランジスタと同期整流トランジスタの接続点と出力端子の間に設けられたインダクタと、出力端子と接地端子の間に設けられた出力キャパシタと、スイッチングトランジスタおよび同期整流トランジスタを駆動する上述のいずれかの制御回路と、を備える。
【0027】
本発明の別の態様は、電子機器に関する。電子機器は、電池電圧を出力する電池と、電池電圧を降圧して負荷に供給する上述の降圧スイッチングレギュレータと、を備える。
【0028】
なお、以上の構成要素の任意の組合せや本発明の構成要素や表現を方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る降圧スイッチングレギュレータによれば、軽負荷状態を確実に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1(a)、(b)はそれぞれ、同期整流型スイッチングレギュレータの重負荷および軽負荷時の電流の時間波形を示す図である。
【
図2】本発明者らが検討した比較技術に係るスイッチングレギュレータの構成を示す回路図である。
【
図3】実施の形態に係る同期整流型の降圧スイッチングレギュレータを搭載した電子機器の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4(a)〜(h)は、
図3の降圧型スイッチングレギュレータの動作を示す波形図である。
【
図5】通常モード(I)と軽負荷モード(II)の効率を示す図である。
【
図6】
図3の制御回路の一部の具体的な構成例を示す回路図である。
【
図7】軽負荷検出コンパレータの具体的な構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図3は、実施の形態に係る同期整流型の降圧スイッチングレギュレータ2を搭載した電子機器1の構成を示すブロック図である。電子機器1は、たとえば携帯電話端末やデジタルカメラ、ポータブルオーディオプレイヤであって、降圧型スイッチングレギュレータ2、電池4および負荷6を備える。
【0032】
電池4は、たとえばリチウムイオン電池であり、3〜4V程度の電池電圧V
BATを出力する。降圧型スイッチングレギュレータ2の入力端子P1には、電池電圧V
BAT(入力電圧V
INともいう)が入力される。降圧型スイッチングレギュレータ2は、入力電圧V
INを所定の電圧レベルに降圧し、出力端子P2に接続される負荷6に供給する。負荷6は、たとえば1.5V程度の電源電圧で動作するマイクロプロセッサなどを含む。
【0033】
降圧スイッチングレギュレータ2は、制御回路100および出力回路102を備える。出力回路102は、スイッチングトランジスタM1、同期整流トランジスタM2、インダクタL1、出力キャパシタC1を含む。スイッチングトランジスタM1および同期整流トランジスタM2は、入力端子INと接地端子GNDの間に順に接続される。スイッチングトランジスタM1と同期整流トランジスタM2の接続点は、スイッチング端子LXと接続される。本実施の形態においてスイッチングトランジスタM1はPチャンネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、同期整流トランジスタM2はNチャンネルMOSFETであるが、別のトランジスタで構成してもよい。
【0034】
制御回路100は、ひとつの半導体基板に集積化された機能IC(Integrated Circuit)であり、スイッチングトランジスタM1、同期整流トランジスタM2は、この制御回路100に内蔵される。
【0035】
出力キャパシタC1は、出力端子P2と接地の間に設けられる。インダクタL1は、出力キャパシタC1の一端と制御回路100のスイッチング端子LXの間に設けられる。制御回路100は、インダクタL1の一端には、スイッチング端子LXに生ずるスイッチング電圧V
LXが印加される。
【0036】
制御回路100は、第1コントローラ10、第2コントローラ20、ドライバ30、軽負荷検出コンパレータ40を備える。制御回路100は、通常モードと軽負荷モードが切りかえ可能に構成される。負荷電流I
OUTがある程度大きな状態では、制御回路100は通常モードに設定され、負荷電流I
OUTが小さい軽負荷状態では、軽負荷モードに設定される。
【0037】
第1コントローラ10は、通常モードにおいてアクティブとなり、スイッチングレギュレータ2の出力電圧V
OUTに応じたフィードバック電圧V
FBが目標値V
REFに近づくようにデューティ比が調節される第1パルス信号S
PWMを生成する。第1コントローラ10の構成は特に限定されず、ヒステリシス制御、オン時間固定方式、オフ時間固定式、電圧モード、ピーク電流モード、平均電流モードをはじめとする公知の変調器を用いて構成できる。
【0038】
第2コントローラ20は、軽負荷モードにおいてアクティブとなり、フィードバック電圧V
FBが目標値V
REFに近づくように、スイッチングレギュレータ2のスイッチングトランジスタM1および同期整流トランジスタM2を間欠的にスイッチングさせるための第2パルス信号S
PFMを生成する。第2コントローラ20の構成も特に限定されるものではなく、同期整流型の降圧スイッチングレギュレータにおいて、軽負荷時においてスイッチング周波数を低下させることが可能な変調器を用いて構成できる。
【0039】
ドライバ30は、(1)通常モードにおいて第1パルス信号S
PWMにもとづいて、(2)軽負荷モードにおいて第2パルス信号S
PFMにもとづいて、スイッチングトランジスタM1および同期整流トランジスタM2を駆動する。
【0040】
軽負荷検出コンパレータ40は、スイッチングトランジスタM1のオン期間T
ONにおいてスイッチングトランジスタM1に流れる検出電流I
M1を所定の第1しきい値電流I
TH1と比較し、検出電流I
M1が第1しきい値電流I
TH1を超えるとアサート(たとえばハイレベル)される比較信号S1を生成する。
【0041】
制御回路100は、比較信号S1がアサート(ハイレベル)されるとき、言い換えれば検出電流I
M1がしきい値電流I
TH1を超えるとき、通常モードに設定される。反対に比較信号S1がアサートされないネゲートの状態において、言い換えれば検出電流I
M1がしきい値電流I
TH1を超えないときに、軽負荷モードに設定される。
【0042】
以上が制御回路100の構成である。続いてその動作を説明する。
図4(a)〜(h)は、
図3の降圧型スイッチングレギュレータ2の動作を示す波形図である。
図4(a)は、通常モードにおける第1パルス信号S
PWMを示す。
図4(b)は、異なる3つの負荷電流に対応するインダクタ電流I
L1〜I
L3を示す。インダクタ電流I
Liの平均値が負荷電流I
OUTとなる。
図4(c)、(d)は、インダクタ電流I
L1に対応する検出電流I
M1および比較信号S1
1を、
図4(e)、(f)は、インダクタ電流I
L2に対応する検出電流I
M2および比較信号S1
2を、
図4(g)、(h)は、インダクタ電流I
L3に対応する検出電流I
M3および比較信号S1
3を示す。
【0043】
図4(c)、(e)に示すように、負荷電流I
OUTがある程度大きい場合、第1パルス信号S
PWMの各周期において、検出電流I
M1はしきい値電流I
TH1を超える。したがって
図4(d)、(f)に示すように、毎サイクル、比較信号S1はアサートされ、制御回路100は通常モードに設定される。
【0044】
図4(g)に示すように、負荷電流I
OUTが小さくなると、すなわち軽負荷状態となると、検出電流I
M1はしきい値電流I
TH1より低くなる。その結果、各サイクルにおいて比較信号S1がアサートされなくなり、制御回路100は、軽負荷モードに移行する。
【0045】
軽負荷モードに移行すると、第2パルス信号S
PFMによりスイッチングトランジスタM1、同期整流トランジスタM2が駆動される。その結果、軽負荷モードでは、通常モードに比べてスイッチングトランジスタM1、同期整流トランジスタM2のスイッチングの周波数が低下し、効率が改善される。
【0046】
軽負荷モードにおいても軽負荷検出コンパレータ40による検出電流I
M1の監視は継続される。そして、検出電流I
M1がしきい値電流I
TH1を超えると、比較信号S1がアサートされ、通常モードに移行する。
【0047】
以上が制御回路100の基本動作である。
この制御回路100によれば、同期整流トランジスタM2に流れる電流ではなく、スイッチングトランジスタM1に流れる電流に応じて、軽負荷の判定を行うことができる。これには、以下の利点がある。
【0048】
(第1の利点)
比較技術に関連して説明したように、降圧スイッチングレギュレータ2の通常モードにおけるスイッチングトランジスタM1と同期整流トランジスタM2のデューティ比は、入力電圧V
INと出力電圧V
OUTに応じて制御される。具体的には、デューティ比T
ON/T
Pは、V
OUT/V
INで与えられる。
【0049】
同期整流トランジスタM2に流れる電流I
M2にもとづいて軽負荷を判定する比較技術では、入力電圧V
INが低下して出力電圧V
OUTに近づくにしたがい、デューティ比が100%に近づいていき、同期整流トランジスタM2のオン時間が短くなり、軽負荷を検出できなくなるおそれがあった。
【0050】
これに対して、
図3の制御回路100によれば、入力電圧V
INが低下するに従いスイッチングトランジスタM1のオン時間T
ONが長くなるため、スイッチング周期T
Pにおける検出期間が長くなり、軽負荷を確実に検出することができる。
【0051】
なお、
図3の制御回路100では、入力電圧V
INが高くなるほど検出期間は短くなり、検出期間がコンパレータの応答時間よりも短くなる可能性がある。したがって入力電圧V
INが高いときには、検出電流I
M1がしきい値電流I
TH1を超えたことが検出できなくなり、比較信号S1がアサートされなくなるが、この場合、制御回路100は、軽負荷モードに移行することになるため、軽負荷であるにも関わらず通常モードで動作することを防止できる。
【0052】
(第2の利点)
また、
図3の制御回路100では、しきい値電流I
TH1を任意に設定できるという利点がある。
図5は、通常モード(I)と軽負荷モード(II)の効率を示す図である。横軸が負荷電流I
OUTを、縦軸が効率を示す。負荷電流I
OUTがあるしきい値Iaより大きな領域では、通常モードの方が高効率であり、負荷電流I
OUTがしきい値Iaより小さな領域では、軽負荷モードの方が高効率である。ここで、通常モードおよび軽負荷モードの効率はそれぞれ、出力電圧V
OUTの目標値、入力電圧V
IN、インダクタL1のインダクタンスや出力キャパシタC1の容量値、通常モードにおけるスイッチング周波数などに応じて変化するため、2つの曲線が交差する点におけるしきい値Iaも変化しうる。
【0053】
比較技術では、同期整流トランジスタM2に流れる検出電流I
M2がゼロとなると、すなわち、インダクタ電流I
Lが反転すると軽負荷モードとなる。したがって、比較技術では、
図4に示されるしきい値Iaから大きく離れた点で、負荷電流I
OUTで軽負荷モードと通常モードが切りかわるおそれがある。
【0054】
これに対して、
図3の制御回路100では、しきい値電流I
TH1を最適化することにより、
図4に示すしきい値Iaに近い負荷電流I
OUTにおいて、軽負荷モードと通常モードを切りかえることが可能となり、従来よりも効率を高めることができる。
【0055】
なお、通常モードにおけるしきい値電流I
TH1と、軽負荷モードにおけるしきい値電流I
TH1を異なる値に設定してもよい。具体的には、通常モードにおけるしきい値電流I
TH1を、軽負荷モードにおけるしきい値電流I
TH1より低い値とし、しきい値電流I
TH1にヒステリシスをもたせることが好ましい。しきい値電流I
TH1にヒステリシスをもたせることにより、スイッチングトランジスタM1に流れる検出電流I
M1がしきい値電流I
TH1付近で変動する場合に、通常モードと軽負荷モードを交互に行き来する発振を抑制できる。
【0056】
続いて、制御回路100の具体的な構成例を説明する。
【0057】
図6は、
図3の制御回路100の一部の具体的な構成例を示す回路図である。
図6の第1コントローラ10は、ヒステリシス制御の変調器であり、ヒステリシスコンパレータ12を含む。ヒステリシスコンパレータ12は、出力電圧V
OUTに応じたフィードバック電圧V
FBを、ヒステリシスを有するしきい値電圧V
REFと比較し、第1パルス信号S
PWMを生成する。
【0058】
第2コントローラ20は、第1コンパレータ22、第2コンパレータ24、第3コンパレータ26、ロジック部28を含む。第1コンパレータ22は、スイッチングトランジスタM1がオン期間において、スイッチングトランジスタM1に流れる検出電流I
M1を、第2しきい値電流I
TH2と比較し、I
M1>I
TH2となるとアサート(ハイレベル)となる比較信号S2を生成する。
【0059】
第2コンパレータ24は、同期整流トランジスタM2のオン期間において、同期整流トランジスタM2に流れる検出電流I
M2を所定の第3しきい値電流I
TH3と比較し、検出電流I
M2が第3しきい値電流I
TH3まで低下するとアサート(ハイレベル)される比較信号S3を生成する。
【0060】
第3しきい値電流I
TH3は、好ましくはゼロである。これにより、スイッチングトランジスタM1のオン期間においてインダクタL1に蓄えられたエネルギーを効率的に出力キャパシタC1に供給できる。
【0061】
第3コンパレータ26は、出力電圧V
OUTに応じたフィードバック電圧V
FBを基準電圧V
REFと比較し、V
FBがV
REFより低くなるとアサートされる比較信号S4を生成する。
【0062】
ロジック部28は、軽負荷モードに移行すると、第2パルス信号S
PFMを第1レベル(たとえばハイレベル)としてスイッチングトランジスタM1をオン、同期整流トランジスタM2をオフする。そして比較信号S2がアサートされると、第2パルス信号S
PFMを第2レベル(たとえばローレベル)として、スイッチングトランジスタM1をオフ、同期整流トランジスタM2をオンする。続いて比較信号S3がアサートされると、ハイインピーダンス信号Hi−Zをアサート(たとえばハイレベル)する。ハイインピーダンス信号Hi−Zがアサートされると、ドライバ30は、スイッチングトランジスタM1と同期整流トランジスタM2を両方オフし、スイッチング端子LXをハイインピーダンス状態とする。その後、比較信号S4がアサートされると、ロジック部28はスイッチングトランジスタM1をオンする。なお第2コントローラ20の構成や動作は、
図6のそれには限定されない。
【0063】
図7は、軽負荷検出コンパレータ40の具体的な構成例を示す回路図である。
スイッチングトランジスタM1には、検出電流I
M1に比例した電圧降下ΔV
M1(=I
M1×R
ON1)が発生する。R
ON1は、スイッチングトランジスタM1のオン抵抗である。軽負荷検出コンパレータ40は、スイッチングトランジスタM1のオン期間におけるスイッチングトランジスタM1の電圧降下ΔV
M1を、第1しきい値電流I
TH1に応じたしきい値電圧ΔV
TH1と比較する。
【0064】
しきい値電圧生成回路42は、しきい値電圧V
TH1を生成する。しきい値電圧V
TH1は、入力電圧V
INよりも、電位差ΔV
TH1分低い電圧である。
V
TH1=V
IN−ΔV
TH1 …(1)
【0065】
しきい値電圧生成回路42は、スイッチングトランジスタM1と同型の、すなわちPチャンネルMOSFETの第1トランジスタM3と、電流源46を含む。電流源46は、しきい値電流I
TH1に比例した定電流I
Cを生成する。第1トランジスタM3の第1端子(ソース)は入力端子INと接続され、その第2端子(ドレイン)には電流源46が接続される。また、第1トランジスタM1の制御端子(ゲート)には、スイッチングトランジスタM1のオン状態においてスイッチングトランジスタM1のゲートに印加される電圧レベル、すなわち接地電圧(0V)が印加される。しきい値電圧生成回路42は、第1トランジスタM3と電流源46の接続点の電位を、しきい値電圧V
TH1として出力する。
【0066】
しきい値電圧生成回路42が生成するしきい値電圧V
TH1は、式(2)で与えられる。
V
TH1=V
IN−R
ON3・I
C …(2)
ΔV
TH1=R
ON3×I
C …(3)
【0067】
スイッチング端子LXの電位V
LXは、式(4)で与えられる。
V
LX=V
IN−ΔV
M1=V
IN−R
ON1×I
M1 …(4)
【0068】
電圧コンパレータ44は、しきい値電圧V
TH1と、スイッチング端子LXの電位V
LXを比較することにより、比較信号S1を生成する。したがって、式(5)を満たすように定電流ICを設定することにより、検出電流I
M1を、しきい値電流I
TH1と比較することができる
I
C=I
TH1×R
ON1/R
ON3 …(5)
スイッチングトランジスタM1のトランジスタサイズが第1トランジスタM3のそれのN倍であるとき、R
ON1/R
ON3=1/Nであるから、I
C=I
TH1/Nとしてもよい。
【0069】
なお、電流検出および比較の方法は、
図7には限定されず、別の方法で行ってもよい。たとえばスイッチングトランジスタM1と直列に検出抵抗を設け、その電圧降下をしきい値と比較してもよい。あるいは、スイッチングトランジスタM1に対して、ゲートおよびソースが共通となるように検出用トランジスタを接続し、検出用トランジスタに流れる電流を、しきい値電流I
TH1と比較してもよい。
【0070】
なお、
図7の軽負荷検出コンパレータ40と同様の回路によって、第2コントローラ20の第1コンパレータ22を構成してもよい。
【0071】
上記実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0072】
実施の形態では、制御回路100を含む降圧スイッチングレギュレータ2により駆動される負荷回路としてマイコンを例に説明したが、これには限定されず、負荷電流が減少し、軽負荷状態で動作するさまざまな負荷回路に対して、駆動電圧を供給することができる。
【0073】
実施の形態では、制御回路100がひとつのLSIに一体集積化される場合について説明したが、これには限定されず、一部の構成要素がLSIの外部にディスクリート素子あるいはチップ部品として設けられ、あるいは複数のLSIにより構成されてもよい。
【0074】
また、本実施の形態において、各信号のハイレベル、ローレベルの論理値の設定は一例であって、インバータなどによって適宜反転させることにより自由に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0075】
1…電子機器、2…降圧型スイッチングレギュレータ、4…電池、6…負荷、100…制御回路、102…出力回路、P1…入力端子、P2…出力端子、LX…スイッチング端子、C1…出力キャパシタ、L1…インダクタ、M1…スイッチングトランジスタ、M2…同期整流トランジスタ、10…第1コントローラ、12…ヒステリシスコンパレータ、20…第2コントローラ、22…第1コンパレータ、24…第2コンパレータ、26…ロジック部、30…ドライバ、40…軽負荷検出コンパレータ、42…しきい値電圧生成回路、44…電圧コンパレータ。