(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0018】
なお、特に説明しない限り、本願において「軸方向」とは、ホーゼル孔の軸方向を意味し、「半径方向」とは、ホーゼル孔の半径方向を意味する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態であるゴルフクラブ2を示す。
図1は、ゴルフクラブ2のヘッド近傍のみを示している。
図2は、ゴルフクラブ2の分解図である。
図3は、ゴルフクラブ2の断面図である。
図3は、スリーブ8の中心軸線に沿った断面図である。
【0020】
ゴルフクラブ2は、ヘッド4、シャフト6、スリーブ8及びネジ10を有する。シャフト6の先端に、スリーブ8が固定されている。シャフト6の後端には、図示されないグリップが取り付けられている。互いに固定されたシャフト6とスリーブ8とにより、シャフト−スリーブ組み立て体12が形成されている。
【0021】
ゴルフクラブ2は更に、中間部材14と、ワッシャー16とを有する。
【0022】
ヘッド4は、ヘッド本体18と、係合部材20とを有する。ヘッド本体18は、スリーブ8を挿入するためのホーゼル孔22と、ネジ10を挿通するための通孔24とを有する。通孔24は、ホーゼル孔22の底部を貫通し、ソールに至る。ヘッド本体18は、中空部を有している。
【0023】
図3が示すように、ヘッド本体18は、フランジ25を有する。結合状態において、フランジ25は、スリーブ8の下側(ソール側)に位置する。フランジ25の内径は、ワッシャー16の外径d2よりも大きい。
【0024】
なお、ヘッド4のタイプは限定されない。本実施形態のヘッド4は、ウッド型ゴルフクラブである。ヘッド4は、ユーティリティ型ヘッド、ハイブリッド型ヘッド、アイアン型ヘッド、パターヘッド等であってもよい。また、シャフト6は限定されず、汎用のカーボンシャフトやスチールシャフトなどが用いられうる。
【0025】
ネジ10を締めることにより、シャフト−スリーブ組み立て体12がヘッド4に固定される。この固定された状態が、本願において、結合状態とも称される。ネジ10を緩めることにより、シャフト−スリーブ組み立て体12がヘッド4から外れる。このように、ヘッド2では、ヘッド4とシャフト6とが互いに着脱可能である。
図4は、シャフト−スリーブ組み立て体12がヘッド4から分離された状態を示す断面図である。シャフト−スリーブ組み立て体12がヘッド4から外された状態が、本願において、分離状態とも称される。
【0026】
図5は、スリーブ8の側面図及び底面図である。
図5の上側が側面図であり、
図5の下側が底面図である。
図6は、スリーブ8の斜視図である。
図7は、
図5のF7−F7線に沿った断面図である。
図8は、
図5のF8−F8線に沿った断面図である。
【0027】
スリーブ8は、上部26と、中間部28と、下部30とを有する。上部26と中間部28との境界には、段差面29が存在する。またスリーブ8は、シャフト孔32とネジ孔34とを有する。シャフト孔32は、上部26及び中間部28の内側に位置する。シャフト孔32は、一方側(上側)に開口している。ネジ孔34は、他方側(下側)に開口している。ネジ孔34は、下部30の内側に位置する。
【0028】
上記結合状態において、上部26は露出する。上記結合状態では、段差面29が、ヘッド4のホーゼル端面36に当接している。上部26の下端の外径は、
図1が示すように、ホーゼル端面36の外径に略等しい。上記結合状態において、上部26は、フェラルのような外観を呈する。上記結合状態において、中間部28及び下部30は、ホーゼル孔22の内側に位置する。
【0029】
スリーブ8の中間部28の外面は、円周面40と、凹み面42とを有する。凹み面42は、溝である。凹み面42は、スリーブ8の軸方向に沿って延在している。凹み面42は、中間部28の長手方向の全体に亘って延在している。
【0030】
上記結合状態では、円周面40が、ホーゼル孔22に接触している。円周面40の全体がホーゼル孔22に接触している。この接触は、ホーゼル孔22によるスリーブ8の保持を担保している。一方、上記結合状態において、凹み面42は、ホーゼル孔22に接触していない。凹み面42は、スリーブ8の軽量化に寄与する。
【0031】
スリーブ8の下部30の外面は、回転防止部44を形成している。回転防止部44の断面形状は、非円形である。回転防止部44は、複数の凸部t1を有する。凸部t1は、半径方向外側に向かって突出している。凸部t1は、周方向において等間隔で配置されている。本実施形態において、凸部t1は、周方向において30°おきに配置されている。
【0032】
図8が示すように、シャフト孔32の軸線h1は、スリーブ8の円周面40の軸線z1に対して傾斜している。この傾斜角度θ1は、軸線h1と軸線z1との成す角度の最大値である。上記結合状態において、軸線z1は、ホーゼル孔22の軸線e1に等しい。シャフト孔32の軸線h1は、シャフト6の軸線s1に等しい。
【0033】
図9は、係合部材20の側面図及び底面図である。係合部材20は、全体として、チューブ状である。係合部材20の外面は、ネジ部48と非ネジ部50とを有する。ネジ部48は雄ネジである。非ネジ部50は円周面である。係合部材20の外面の全体がネジ部であってもよい。
【0034】
係合部材20の内面の断面形状は、非円形である。係合部材20の内面の断面形状は、スリーブ8の回転防止部44の外面の断面形状に対応している。係合部材20の内面には、複数の凹部r1が設けられている。凹部r1の形状は、前述した凸部t1の形状に対応している。凹部r1は、周方向において等間隔で設けられている。凹部r1は周方向において30°おきに設けられている。
【0035】
係合部材20の内面は、回転防止部51を形成している。回転防止部51は、スリーブ8の回転防止部44と係合し、スリーブ8の回転を防止する。
【0036】
図10は、ワッシャー16の側面図及び底面図である。ワッシャー16は、周方向の1箇所が途切れた円環状の部材である。
【0037】
図11は、中間部材14の側面図、底面図及び断面図である。
図11の上側が側面図であり、
図11の中央が底面図であり、
図11の下側が断面図である。中間部材14は、環状の部材である。中間部材14の外周面54は、円周面である。中間部材14の内周面56は、ネジ部である。内周面56は、雌ネジである。
【0038】
図12は、ネジ10の側面図及び平面図である。ネジ10は、頭部58と軸部60とを有する。軸部60は、ネジ部62と、非ネジ部64とを有する。非ネジ部64は、ネジ部62よりも、頭部58側に位置する。
【0039】
頭部58は、レンチ用の凹部66を有する。凹部66に適合したレンチ(専用レンチ等)を用いることにより、ネジ10が軸回転されうる。この軸回転により、スリーブ8の着脱が可能である。
【0040】
スリーブ8の抜け止めは、ネジ結合により達成される。
図3が示すように、スリーブ8のネジ孔34は、ネジ10のネジ部62とネジ結合している。このネジ結合により、スリーブ8の抜けが防止される。このネジ結合に起因する軸力が、ホーゼル端面36と段差面29との間の圧力と釣り合っている。この軸力を担保するため、上記結合状態において、ネジ10の先端とネジ孔34の底面との間には、隙間K1が存在している(
図3参照)。
【0041】
図13は、
図3のF13−F13線に沿った断面図である。
図13が示すように、スリーブ8の回転防止部44と、係合部材20の回転防止部51とが係合している。この係合により、係合部材20に対するスリーブ8の回転が防止されている。
【0042】
係合部材20は、ヘッド本体18に固定されている。
【0043】
係合部材20の固定方法は限定されず、溶接、接着、嵌め込み、ネジ結合及びそれらの組み合わせが例示される。本実施形態では、係合部材20の固定方法として、ネジ結合が採用されている。
図4が示すように、ホーゼル孔22には、ネジ部70が設けられている。このネジ部70は、雌ネジである。このネジ部70と、係合部材20のネジ部48とが、ネジ結合している。
【0044】
係合部材20とスリーブ8との係合では、わずかな不具合も許されない。僅かなガタ付きであっても、クラブとしての商品価値は失われる。係合部材20の位置決めには、高い精度が要求される。ホーゼル孔22にネジ部70を設け、このネジ部70に係合部材20のネジ部48をネジ結合することにより、係合部材20の位置決めの精度が向上する。即ち、係合部材20の軸方向位置の誤差は少なく、且つ、係合部材20の軸線の向きの誤差も少ない。
【0045】
好ましくは、ホーゼル孔22のネジ部70と係合部材20のネジ部48とのネジ結合は、打球時にボールからヘッドに付与される力によって、締まるように構成されている。この構成により、打球に起因する緩みは生じない。
【0046】
係合部材20の固定では、上記ネジ結合に加えて、溶接が採用されている。即ち、ネジ結合と溶接とが併用されている。
図3及び
図4の断面図では示されていないが、係合部材20とヘッド本体18との境界面の少なくとも一部は、溶接されている。この溶接は、上記ネジ結合の部分を含んでいてもよいし、含んでいなくても良い。ネジ結合と溶接との併用は、係合部材20の固定を確実とする。ネジ結合と溶接との併用は、ネジ結合の緩みを防止する。ネジ結合と溶接との併用は、ヘッド本体18に対する係合部材20の固着強度を高める。
【0047】
溶接が採用される場合、溶接の種類は限定されない。溶接の種類として、レーザー溶接、アーク溶接、ガス溶接及びテルミット溶接が例示される。
【0048】
本実施形態では、ホーゼル外面72からの加熱により、係合部材20とヘッド本体18とが溶接されている。この方法は、ホーゼル孔22の奥に位置する係合部材20を溶接するのに適している。本実施形態では、レーザー溶接が採用されている。本実施形態では、ホーゼル外面72にレーザーを照射して、係合部材20とヘッド本体18とが溶接されている。また、レーザー溶接は、加熱範囲が局所的であるため、係合部材20及びホーゼル孔22の変形を抑制しうる。よって、係合部材20及びホーゼル孔22の高い寸法精度が維持されやすく、係合部材20の位置の精度も維持されやすい。
【0049】
ヘッド内部に位置するホーゼル外面72に加熱跡が残ったとしても、完成後のヘッドにおいて、この加熱跡は見えない。よって、ヘッドの外観を良くする目的でこの加熱跡を修復する必要はない。修復が不要であることは、ヘッドの生産性を向上させうる。
【0050】
図14は、フェースの一部を切り欠いたヘッド4の斜視図である。
図14に示すように、ヘッド内部に位置するホーゼル外面72にレーザーが照射されて、係合部材20とヘッド本体18とが溶接されている。ヘッド本体18は複数の部材よりなるが、これらの複数の部材の全てが接合される前に、係合部材20とヘッド本体18との溶接がなされる。
【0051】
係合部材20とスリーブ8との係合では、わずかな不具合も許されない。係合部材20がヘッド本体18とは別体とされることにより、係合部材20の加工方法の自由度が高まる。このため、係合部材20は、高い寸法精度で加工されうる。よって、係合部材20とスリーブ8との係合の精度が向上する。
【0052】
前述のように、係合部材20がヘッド本体18とは別体であることにより、係合部材20の寸法精度は高い。したがって、係合部材20の下面74(
図4参照)は、軸方向に対して、高い精度で、垂直となりやすい。下面74の配向精度の高さに起因して、上記結合状態における軸力は、係合部材20の周方向において均等に分散しやすい。この均等な分散は、係合部材20の固着強度を高めうる。
【0053】
上記結合状態において、係合部材20は、ネジ10からの軸力を受けている。
図3が示すように、ネジ10に起因する軸力は、中間部材14を介して、係合部材20に伝達されている。係合部材20が、ネジ10からの軸力を受け止めている。確実に固定された係合部材20は、ネジ10からの軸力に耐えうる。
【0054】
中間部材14がヘッド本体18とは別体であることにより、中間部材14の加工方法の自由度が高まる。このため、中間部材14は、高い寸法精度で加工されうる。精度の高い係合部材20と、精度の高い中間部材14との組み合わせにより、上記結合状態における中間部材14の位置及び姿勢は、高い精度で安定する。よって、上記結合状態において、中間部材14の下面80(
図3参照)は、軸方向に対して、高い精度で、垂直となりやすい。下面80の配向精度の高さに起因して、上記結合状態における軸力は、係合部材20の周方向において均等に分散しやすい。この均等な分散は、係合部材20の固着強度を高めうる。
【0055】
前述のように、中間部材14がヘッド本体18とは別体であることにより、中間部材14の加工方法の自由度が高まる。よって、中間部材14の内周面56に設けられたネジ部が、精度良く加工形成される。精度のよいネジ部56は、ネジ10との噛み合いを容易とする。
【0056】
前述したように、
図4は、ヘッド4とシャフト−スリーブ組み立て体12とを分離した状態(以下、分離状態ともいう)を示す。この分離状態において、ネジ10はヘッド4から脱落しない。この脱落防止は、中間部材14によって達成されている。
【0057】
図3が示すように、上記結合状態では、中間部材14とネジ10とはネジ結合していない。上記結合状態において、中間部材14の内側に位置しているのは、ネジ10の非ネジ部64である。非ネジ部64の外径は、中間部材14の内周面56の内径d7(
図11参照)よりも小さい。内径d7は、ネジ山の先端を基準にして測定される。上記結合状態において、中間部材14は、ネジ10とスリーブ8とのネジ結合に影響しない。中間部材14は、ネジ10とスリーブ8とのネジ結合を邪魔することがない。
【0058】
一方、
図4が示すように、上記分離状態では、中間部材14とネジ10とがネジ結合している。即ち、上記分離状態において、上記ネジ10が上記中間部材14にネジ結合していることが許容されている。
【0059】
スリーブ8とネジ10とのネジ結合を緩める過程において、中間部材14のネジ部とネジ10のネジ部62とがネジ結合しうる。スリーブ8とネジ10とのネジ結合を緩める過程において、中間部材14のネジ部とネジ部62とのネジ結合は自然に(自動的に)起こる。そして、スリーブ8からネジ10が完全に外れた状態においても、中間部材14とネジ10とのネジ結合が維持されうる(
図4参照)。したがって、ネジ10の脱落が防止される。
【0060】
このように、ゴルフクラブ2は、上記結合状態において上記ネジ10が上記中間部材14にネジ結合できないように構成されている。更にゴルフクラブ2は、上記結合状態から上記分離状態に移行する過程において、上記ネジ10が上記中間部材14にネジ結合するように構成されている。
【0061】
図4が示すように、中間部材14の外径d1は、フランジ25の内径よりも大きい。即ち中間部材14は、フランジ25の内側を通過することができない外形寸法を有している。したがって、中間部材14とネジ結合しているネジ10は、脱落しない。
【0062】
中間部材14の外径d1は、係合部材20の凹部r1の底面によって画定される内径d4(
図9参照)よりも大きい。
【0063】
図4において符号Dで示されるのは、係合部材20の下端面とフランジ25の上端面との間の軸方向長さである。この長さDは、中間部材14の厚みCよりも大きい。よって、係合部材20の下端面とフランジ25の上端面との間には隙間が存在する。この隙間の軸方向幅K2は、差(D−C)である。
【0064】
上記結合状態においては、ネジ10に起因する軸力が、中間部材14を、係合部材20の下端面に押しつけている(
図3参照)。一方、上記分離状態では、重力に起因して、中間部材14は、フランジ25の上端面に当接しうる(
図4参照)。
【0065】
中間部材14は、ヘッド本体18に固定されていない。中間部材14は、非固定状態にある。中間部材14は、係合部材20とフランジ25との間を軸方向に移動しうる。
【0066】
非固定状態(フリー)の中間部材14は、寸法誤差を吸収しやすい。 非固定状態の中間部材14は、上記結合状態から上記分離状態に移行する際におけるネジ同士の噛み合いを容易とする。非固定状態の中間部材14は、ネジ10と中間部材14とのネジ結合を容易とする。中間部材14の移動の自由度の観点から、上記差(D−C)は、0.2mm以上が好ましく、0.3mm以上がより好ましく、0.5mm以上が更に好ましい。ホーゼル孔22を短くしてホーゼル部を軽量とする観点から、上記差(D−C)は、1.0mm以下が好ましく、0.8mm以下がより好ましい。
【0067】
中間部材14が半径方向に移動しうる場合、寸法誤差の吸収性が向上し、ネジ同士の噛み合いが容易とされうる。この観点から、中間部材14が半径方向に移動することを許容しうる空間が存在していてもよい。即ち、中間部材14が半径方向に移動しうるとの観点から、中間部材14の外径d1が、その中間部材14が存在しうる位置におけるホーゼル孔22の内径d5(
図4参照)よりも小さくされてもよい。中間部材14の移動の自由度を高める観点から、差(d5−d1)は、0.1mm以上が好ましく、0.2mm以上がより好ましく、0.3mm以上が更に好ましい。差(d5−d1)が過大である場合、中間部材14が過剰に動き、かえってネジ同士の噛み合いが悪くなることがある。この観点から、差(d5−d1)は、1.5mm以下が好ましく、1.0mm以下がより好ましい。なお
図3及び
図4は、内径d5と外径d1とが同一であるように描かれている。
【0068】
上記結合状態において、フランジ25には、軸力が作用していない。フランジ25は、脱落防止用突出部として機能している。この脱落防止用突出部の形状は限定されない。この脱落防止用突出部は、中間部材14の下側(ソール側)に配置される。
【0069】
図9において符号Aで示されるのは、係合部材20に設けられたネジ部48の軸方向長さである。係合部材20の位置決め効果及び係合部材20の固着強度の観点から、長さAは、1.5mm以上が好ましく、2mm以上がより好ましく、3mm以上が更に好ましい。ネジ部48を加工する工程のコストを抑制する観点から、長さAは、5mm以下が好ましく、4.5mm以下がより好ましく、4mm以下が更に好ましい。
【0070】
図9において符号Bで示されるのは、係合部材20の軸方向長さである。係合部材20とスリーブ8との接触面積を広げて、回転防止効果を高める観点から、長さBは、5mm以上が好ましく、6mm以上がより好ましく、7mm以上が更に好ましい。係合部材20を軽くして、ヘッド4の重心位置の設計自由度を高める観点から、長さBは、12mm以下が好ましく、11mm以下がより好ましく、10mm以下が更に好ましい。
【0071】
図11において符号Cで示されるのは、中間部材14の厚みである。軸力に起因する変形を抑制する観点から、厚みCは、0.8mm以上が好ましく、1mm以上がより好ましく、1.2mm以上が更に好ましい。中間部材14を軽くして、ヘッド4の重心位置の設計自由度を高める観点から、厚みCは、1.8mm以下が好ましく、1.6mm以下がより好ましく、1.4mm以下が更に好ましい。
【0072】
図12において符号d6で示されるのは、ネジ頭部58の最大径である。係合部材20への軸力の伝達を確実とする観点から、最大径d6は、フランジ25の内径よりも小さいのが好ましい。換言すれば、ネジ10は、フランジ25の内側を通過しうるのが好ましい。
【0073】
中間部材14の変形を防ぐ観点から、係合部材20の内径d4(
図9参照)とワッシャー16の外径d2(
図10参照)との差(d4−d2)は、0.5mm以下が好ましく、0.3mm以下がより好ましく、0.1mm以下が更に好ましい。差(d4−d2)は、0mm又はマイナスの値であってもよい。
【0074】
ヘッド本体の材質は限定されない。好ましい材質として、金属、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)及びそれらの組み合わせが例示され、より好ましくは、金属である。この金属として、チタン合金、ステンレス鋼、アルミニウム合金、マグネシウム合金及びそれらの組み合わせが例示される。ヘッド本体を構成する各部材の製造方法は限定されず、鍛造、鋳造、プレス、NC加工及びこれらの組み合わせが例示される。
【0075】
シャフトの材質は、限定されない。シャフトの材質として、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)や金属が例示される。いわゆるカーボンシャフトやスチールシャフトが好適に用いられうる。また、シャフトの構造は、限定されない。
【0076】
スリーブの材質は限定されない。好ましい材質として、チタン合金、ステンレス鋼、アルミニウム合金、マグネシウム合金及び樹脂が例示される。強度及び軽量性の観点から、例えばアルミニウム合金及びチタン合金がより好適である。樹脂としては、機械的強度に優れたものが好ましく、例えば、エンジニアリングプラスチック又はスーパーエンジニアリングプラスチックと称されている樹脂が好ましい。
【0077】
係合部材の材質は限定されない。好ましい材質として、チタン合金、ステンレス鋼、アルミニウム合金、マグネシウム合金及び樹脂が例示される。樹脂としては、機械的強度に優れたものが好ましく、例えば、エンジニアリングプラスチック又はスーパーエンジニアリングプラスチックと称されている樹脂が好ましい。
【0078】
ネジの材質は限定されない。好ましい材質として、チタン合金、ステンレス鋼、アルミニウム合金、マグネシウム合金、エンジニアリングプラスチック及びスーパーエンジニアリングプラスチックが例示される。
【実施例】
【0079】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0080】
[実施例1]
前述したゴルフクラブ2と同じゴルフクラブを作製した。先ず、圧延材をプレス加工して得た第1部材(フェース部材)と、鋳造により得た第2部材とをそれぞれ作製した。この第2部材のフェース部には開口が存在していた。次に、上記第2部材のホーゼル孔の内部に、ネジ部(雌ネジ)を形成した。このネジの形成は、NC加工によりなされた。よって、このネジ部は、高精度で形成された。
【0081】
別途、シャフト(カーボンシャフト)、スリーブ、中間部材、ワッシャー、ネジ及び係合部材を、それぞれ作製した。スリーブの材質はアルミ合金とされ、スリーブの重量は5gであった。係合部材の材質は6−4チタン(Ti−6Al−4V)とされ、係合部材の重量は1.5gであった。ネジの材質は6−4チタン(Ti−6Al−4V)とされ、ネジの重量は1.0gであった。
【0082】
中間部材を上記第2部材のホーゼル孔に入れた。次いで、係合部材を上記第2部材のホーゼル孔に入れ、このホーゼル孔の雌ネジに、係合部材の雄ネジをネジ結合させた。次に、ホーゼル外面からレーザーを照射し、係合部材とホーゼル孔とを溶接した。レーザーの照射は、上記開口を利用してなされた。次に、上記第1部材(フェース部材)を、上記第2部材の開口に溶接して、ヘッドを得た。ヘッドの重量は180gであった。なお、上記第1部材及び上記第2部材の材質は、6−4チタン(Ti−6Al−4V)であった。
【0083】
上記シャフトと上記スリーブとを接着して、シャフト−スリーブ組み立て体を得た。このシャフト−スリーブ組み立て体を、上記ヘッド本体の上記ホーゼル孔に挿入した。また、上記ワッシャーが通された上記ネジを、ソールの通孔に挿入し、シャフト−スリーブ組み立て体のスリーブとネジとをネジ結合させた。このネジ結合を完了させて、ゴルフクラブを得た。
【0084】
この実施例1において、ネジ部の長さA(
図9参照)は3mmとされた。ホーゼル孔の内部の雌ネジの軸方向長さも、3mmとされた。係合部材の長さB(
図9参照)は7.5mmとされた。
【0085】
[実施例2]
ネジ部の長さA(
図9参照)が7.5mmとされ、ホーゼル孔の内部の雌ネジの軸方向長さも7.5mmとされた他は実施例1と同様にして、実施例2のゴルフクラブを得た。
【0086】
[実施例3]
中間部材が溶接によってホーゼル孔に固定された他は実施例1と同様にして、実施例3のゴルフクラブを得た。
【0087】
[実施例4]
図15は、実施例4の断面図である。この実施例4は、中間部材を有さない。
図15が示すように、この実施例4のヘッド本体18は、中間部材の代わりに、フランジ90を有する。このフランジ90の内周面には、ネジ部92が設けられている。このネジ部92は、雌ネジである。このネジ部92の仕様は、上記中間部材14の内周面56のネジ部の仕様と同じである。その他は実施例1と同様にして、実施例4のゴルフクラブを得た。
【0088】
[比較例1]
係合部材にネジ部は設けられず、係合部材は溶接のみによってヘッド本体に固定された。その他は実施例4と同様にして、比較例1のゴルフクラブを得た。
【0089】
[比較例2]
係合部材にネジ部は設けられず、係合部材は溶接のみによってヘッド本体に固定された。その他は実施例1と同様にして、比較例2のゴルフクラブを得た。
【0090】
実施例及び比較例の仕様と評価結果が、下記の表1に示される。評価方法は、以下の通りである。
【0091】
[係合部材の固着強度]
シャフト−スリーブ組み立て体及びネジが取り外されたヘッドを、専用治具に固定した。次に、金属棒を用い、中間部材に軸方向上向きの力を加えた。この力は、中間部材を介して、係合部材に伝達された。上向きとは、ホーゼル端面側に向かう力を意味する。力を徐々に大きくし、係合部材の固定が外れた瞬間の力を測定した。この力が、下記の表1に示される。表1のデータは、5個のデータの平均値であり、100の位を四捨五入した値である。
【0092】
[耐久性]
上記ゴルフクラブをスイングロボットにセットし、54m/sのヘッドスピードで打球させた。ボールは、市販の2ピースボールを用いた。1000回の打球毎に係合部材の固着状態をチェックした。係合部材が外れたときの打球回数が、下記の表1に示される。
【0093】
[脱落防止機構の不良率]
ネジとシャフト−スリーブ組み立て体との結合を緩め、シャフト−スリーブ組み立て体を外す作業を行った。この作業の過程において、中間部材(又はフランジ)の雌ネジとネジとが円滑に噛み合わなかった場合が、不良と判定された。20個のヘッドについて試験を行い、不良率を算出した。この不良率が、下記の表1に示される。
【0094】
【表1】
【0095】
表1に示されるように、溶接のみによって固定されている場合の固着強度及び耐久性は、溶接及びネジ止めが用いられた場合よりも低い。
【0096】
比較例1では、中間部材の代わりにフランジが設けられた。このフランジは、ヘッド本体と一体であり、移動の自由はない。よって、このフランジは、非固定の中間部材と比較して、ネジ10との円滑なネジ結合ができない確率が高い。またヘッド本体の内部に位置するフランジへのネジ加工はやりにくい。このため、フランジの内周面のネジ部に不良が発生する確率が高い。以上より、比較例1の「脱落防止機構の不良率」は、実施例よりも高い。
【0097】
実施例3では、中間部材が固定されている。固定された中間部材は、非固定の中間部材と比較して、ネジ10との円滑なネジ結合ができない確率が高い。また、中間部材を溶接する際に、中間部材が熱により変形しうる。この熱変形により、中間部材のネジ部が変形しうる。これらの理由から、実施例3では、実施例1、2と比較して、「脱落防止機構の不良率」が高い。
【0098】
表1が示すように、本発明の優位性は明らかである。