(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前側に作業装置が取付けられる車体と、該車体の前側に設けられたキャブと、前記車体の後側に設けられたカウンタウエイトと、前記キャブと該カウンタウエイトとの間に位置して左,右方向に延在する横置き状態で前記車体上に搭載されたエンジンと、該エンジンの左,右方向の一側に取付けられ回転することにより外部から冷却風を導入する冷却ファンと、該冷却ファンと対面して設けられ冷却風によって流体を冷却する熱交換装置と、前記エンジンの前側位置に前記車体の左,右方向に延びて立設された横仕切部材と、前記キャブの後面部と該横仕切部材との間を前,後方向に延びて立設された縦仕切部材と、前記キャブ、カウンタウエイト、熱交換装置および縦仕切部材によって囲まれたユーティリティ空間部に配置され前記エンジンが吸込む空気を清浄化するエアクリーナ装置と、該エアクリーナ装置と前記エンジンとの間を前記縦仕切部材を貫通して接続する吸気配管とを備えてなり、
前記縦仕切部材は、前記吸気配管を上,下方向から挟む位置で下仕切カバーと上仕切カバーとに分割し、
前記下仕切カバーと上仕切カバーのうち少なくとも一方の仕切カバーは、前記横仕切部材に対して着脱可能に取付ける構成としてなる建設機械において、
前記下仕切カバーと前記上仕切カバーとは、柔軟な弾性材料を用いて板状に形成してなる弾性板体と、強度をもった金属板からなり該弾性板体の厚さ方向に重ねて設けられた強度板体とにより構成し、
前記上仕切カバーの前記強度板体には、その下側に位置して前記上仕切カバーの前記弾性板体よりも下側に突出した挟持部を設け、
該挟持部は、前記下仕切カバーの前記強度板体との間で前記下仕切カバーの前記弾性板体を挟んで保持する構成としたことを特徴とする建設機械。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1によるものでは、縦仕切部材に丸孔状の配管挿通孔を設け、この配管挿通孔に吸気配管を挿通させることで、縦仕切部材に吸気配管を貫通させる構成としている。この場合、丸孔状の配管挿通孔は、吸気配管の周囲に密着して熱や騒音の漏れを防止することができる。
【0009】
しかし、吸気配管を配管挿通孔に挿通させる構造では、吸気配管を長さ方向の途中で分割し、分割した配管を配管挿通孔に挿通させた後に、残りの配管と接続して1本の吸気配管を組立てなくてはならない。従って、吸気配管によってエアクリーナ装置とエンジンとの間を接続する場合、吸気配管の組立作業に手間を要してしまい、エンジン周りの組立作業性が低下するという問題がある。
【0010】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、吸気配管と縦仕切部材とを容易に取付けることができ、エンジン周りの部材を組立てるときの作業性を向上できるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による建設機械は、前側に作業装置が取付けられる車体と、該車体の前側に設けられたキャブと、前記車体の後側に設けられたカウンタウエイトと、前記キャブと該カウンタウエイトとの間に位置して左,右方向に延在する横置き状態で前記車体上に搭載されたエンジンと、該エンジンの左,右方向の一側に取付けられ回転することにより外部から冷却風を導入する冷却ファンと、該冷却ファンと対面して設けられ冷却風によって流体を冷却する熱交換装置と、前記エンジンの前側位置に前記車体の左,右方向に延びて立設された横仕切部材と、前記キャブの後面部と該横仕切部材との間を前,後方向に延びて立設された縦仕切部材と、前記キャブ、カウンタウエイト、熱交換装置および縦仕切部材によって囲まれたユーティリティ空間部に配置され前記エンジンが吸込む空気を清浄化するエアクリーナ装置と、該エアクリーナ装置と前記エンジンとの間を前記縦仕切部材を貫通して接続する吸気配管とを備えてな
り、前記縦仕切部材は、前記吸気配管を上,下方向から挟む位置で下仕切カバーと上仕切カバーとに分割し、前記下仕切カバーと上仕切カバーのうち少なくとも一方の仕切カバーは、前記横仕切部材に対して着脱可能に取付ける構成としてなる。
【0012】
そして、上述した課題を解決するために、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、
前記下仕切カバーと前記上仕切カバーとは、柔軟な弾性材料を用いて板状に形成してなる弾性板体と、強度をもった金属板からなり該弾性板体の厚さ方向に重ねて設けられた強度板体とにより構成し、前記上仕切カバーの前記強度板体には、その下側に位置して前記上仕切カバーの前記弾性板体よりも下側に突出した挟持部を設け、該挟持部は、前記下仕切カバーの前記強度板体との間で前記下仕切カバーの前記弾性板体を挟んで保持する構成としたことにある。
【0014】
請求項
2の発明は、前記キャブの前記後面部は、下側部位を前側に配置し、上側部位を該下側部位よりも後側に配置することにより湾曲面として形成し、前記後面部の下側部位には、前記下仕切カバーとの間に電装品を収容する電装品ボックスを設ける構成としたことにある。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、縦仕切部材は、吸気配管を上,下方向から挟む位置で下仕切カバーと上仕切カバーとに分割した上で、この下仕切カバーと上仕切カバーとは、少なくとも一方を横仕切部材に対して着脱可能に取付ける構成としている。
【0016】
従って、エアクリーナ装置とエンジンとの間を吸気配管によって接続する場合には、予め1本の配管として組立てられた吸気配管、または1本の配管からなる吸気配管を用いてエアクリーナ装置とエンジンとの間を接続する。このように、吸気配管を取付けた状態でも、吸気配管の位置で分割した縦仕切部材は、例えば吸気配管の下側に下仕切カバーを配置して横仕切部材に取付け、吸気配管の上側に上仕切カバーを配置して横仕切部材に取付ける。これにより、下仕切カバーと上仕切カバーによって吸気配管を上,下方向から挟むことができ、縦仕切部材は、吸気配管を貫通させた状態でキャブと横仕切部材との間に配置することができる。
【0017】
この結果、吸気配管をエアクリーナ装置とエンジンとの間に取付ける場合には、車体に取付ける現場で複数の配管から吸気配管を組立てる必要がなくなるから、吸気配管と縦仕切部材とを容易に取付けることができ、エンジン周りの部材を組立てるときの作業性を向上することができる。また、下仕切カバーと上仕切カバーによって吸気配管を上,下方向から挟む構造では、各仕切カバーを吸気配管の周囲に密着させることができるから、仕切部材として十分な密閉性を得ることができる。
【0018】
しかも、柔軟な弾性材料からなる弾性板体は、変形することでキャブ、横仕切部材、吸気配管等に密着して密閉性を高めることができる。強度をもった金属板からなる強度板体は、弾性板体の厚さ方向に重ねることにより、弾性板体が撚れたり、折れたりするのを防止でき、弾性板体の基本形状を保持することができる。これにより、縦仕切部材の組立作業性を向上できる上に、弾性板体をキャブ、横仕切部材、吸気配管等に確実に密着させることができる。
さらに、上仕切カバーの強度板体の下側には、該上仕切カバーの弾性板体よりも下側に突出して挟持部を設けているから、下仕切カバーの弾性板体を挟持部と下仕切カバーの強度板体との間に挟んで保持することができる。従って、吸気配管の下側に位置することで手が届き難い下仕切カバーの弾性板体が、取付作業時に吸気配管に接触して捲れた場合でも、各強度板体で挟むことにより、この捲れた部分を正規の形状に戻すことができ、組立作業性、密閉性等を向上することができる。
【0019】
請求項
2の発明によれば、キャブの後面部は、下側部位を前側に配置し、上側部位を該下側部位よりも後側に配置することにより湾曲面として形成しているから、後面部の下側部位を窪ませて、この下側部位の後側に空間部を形成することができる。ここで、小型の建設機械では、キャブが小さい上に、昨今の電装品の多用化によって、全部の電装品をキャブ内に収容できなくなっている。そこで、キャブを形成する後面部の下側部位に、下仕切カバーとの間の空間部を利用して電装品を収容した電装品ボックスを設けることができる。
【0020】
一方、後面部の下側部位の後側には、下仕切カバーを取外すことによりスペースを確保できるから、この下側部位に設けた電装品ボックスを取外すことができ、電装品の点検作業、修理作業等を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態に係る建設機械の代表例として、エンジンを搭載したクローラ式の油圧ショベルを例に挙げ、
図1ないし
図12に従って詳細に説明する。
【0023】
図1において、1は建設機械としてのクローラ式の小型の油圧ショベルを示している。この油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載され、該下部走行体2と共に車体を形成する上部旋回体3と、該上部旋回体3の前,後方向の前側に俯仰動可能に設けられ土砂の掘削作業等を行う作業装置4とにより大略構成されている。
【0024】
ここで、油圧ショベル1は、上部旋回体3が下部走行体2の車幅内にほぼ収まる小旋回機として構成されている。
図2に示す如く、この場合の上部旋回体3は、少なくとも後側が下部走行体2の車幅内にほぼ収まるように略円形状をなし、全体としてコンパクトに形成されている。
【0025】
5は上部旋回体3の支持構造体を形成する旋回フレームである。
図4、
図5に示す如く、この旋回フレーム5は、前,後方向に延びる厚肉な鋼板等からなる底板5Aと、該底板5A上に立設され、左,右方向に所定の間隔をもって前,後方向に延びた左縦板5B、右縦板5Cと、該各縦板5B,5Cの外側に間隔をもって配置され、前,後方向に延びた左サイドフレーム5D,右サイドフレーム5Eと、前記底板5A、各縦板5B,5Cから左,右方向に張出し、その先端部に前記左,右のサイドフレーム5D,5Eを支持する複数本の張出しビーム5Fとにより構成されている。
図2に示すように、各縦板5B,5Cの前側には、作業装置4が俯仰動可能に取付けられ、後側には後述のエンジン8等が搭載されている。
【0026】
6は旋回フレーム5の左前側に搭載されたキャブである(
図1ないし
図3参照)。このキャブ6は、フロア部材6Aの周囲を覆う前面部6B、後面部6C、左側面部6D、右側面部6Eと、これらの上側を覆う天面部6Fとによりボックス状に形成され、左側面部6Dには、乗降するときに開,閉するドア6Gが設けられている。キャブ6は、オペレータが搭乗するもので、フロア部材6A上にはオペレータが着座する運転席が設けられ、該運転席の周囲には、走行用の操作レバー、作業用の操作レバー(いずれも図示せず)等が配設されている。
【0027】
前述したように、小型の油圧ショベル1は、小さい旋回半径で旋回動作できるように、上部旋回体3を小径に形成している。このために、キャブ6は、オペレータが搭乗して作業するのに必要な空間を確保しつつ、小さなスペースに設置できることが望まれている。そこで、
図3等に示すように、キャブ6の後面部6Cは、小さなスペースに設置できるように下側部位6C1が前側寄りに配置され、室内空間を大きく確保できるように上側部位6C2が後側寄りに配置され、これにより、後面部6Cは全体として「く」字形状の湾曲面として形成されている。さらに、
図7に示すように、後面部6Cの下側部位6C1には、例えば4個のねじ座6Hが長方形状に配置され、該各ねじ座6Hには、後述する電装品17を取付けるためのボルト18が螺着される。
【0028】
7は旋回フレーム5の後部に取付けられたカウンタウエイトである(
図2参照)。このカウンタウエイト7は、作業装置4との重量バランスをとるもので、円弧状をした重量物として形成されている。カウンタウエイト7は、旋回動作時でも上部旋回体3の後側が下部走行体2の車幅内にほぼ収まるように、旋回中心に近い位置に配置されている。
【0029】
8は旋回フレーム5の後側に設けられたエンジンで、該エンジン8は、キャブ6とカウンタウエイト7との間に配置され、左,右方向に延在する横置き状態で搭載されている。エンジン8の左,右方向の一側となる左側には冷却ファン8Aが設けられ、該冷却ファン8Aは、エンジン8を動力源として回転駆動されることにより、外気を冷却風として導入し、後述する熱交換装置11のラジエータ11B、オイルクーラ11C、インタクーラ11Dに供給するものである。
【0030】
一方、エンジン8の前側に設けられた排気マニホールド8Bには、排気ガスを利用してエンジン8の各気筒内に空気を強制的に送り込むための過給機8Cが設けられている。この過給機8Cの給気口には、後述の吸気配管15が接続されている。さらに、エンジン8の内部には、冷却水が流通するウォータジャケット(図示せず)が設けられ、このウォータジャケットは熱交換装置11のラジエータ11Bに接続されている。
【0031】
9はエンジン8の右側に設けられた油圧ポンプである。この油圧ポンプ9は、エンジン8によって駆動されることにより、後述の作動油タンク29から供給される作動油を昇圧(加圧)して吐出するものである。また、各種アクチュエータを駆動して戻される作動油は、後述する熱交換装置11のオイルクーラ11Cによって冷却された後に作動油タンク29に戻される。
【0032】
10はキャブ6の後側から側方に亘って旋回フレーム5に設けられた外装カバーである。この外装カバー10は、旋回フレーム5上に搭載されたエンジン8、油圧ポンプ9、熱交換装置11等を覆うものである。また、外装カバー10は、エンジン8の冷却ファン8Aが回転駆動されたときに、冷却風の流れ方向の上流側、即ち、左,右方向の外側となる左側に位置する側面ドア10Aから外気を冷却風として流入させ、各部を冷却して暖まった冷却風を下流側の側面ドア(図示せず)から外部に流出させるものである。側面ドア10Aは、後述するユーティリティ空間部28の左側を開閉可能に覆っている。
【0033】
11はエンジン8の冷却ファン8Aに対面するように旋回フレーム5の後側に設けられた熱交換装置を示している。この熱交換装置11は、温度上昇した各種の流体を冷却風により冷却するものである。
図4等に示すように、熱交換装置11は、前,後方向が横幅方向となるように配置された箱形状の支持枠体11Aと、該支持枠体11A内に取付けられたラジエータ11B、オイルクーラ11C、インタクーラ11D等とにより構成されている。支持枠体11Aには、ラジエータ11B、オイルクーラ11C、インタクーラ11Dの上流側を覆うように防塵ネット12が設けられている。
【0034】
ここで、ラジエータ11Bは、エンジン8を冷却して温度上昇したエンジン冷却水を冷却するもので、エンジン8のウォータジャケットに接続されている。オイルクーラ11Cは、各種アクチュエータから戻されて温度上昇した作動油を冷却するものである。さらに、インタクーラ11Dは、エンジン8の過給機8Cで温度上昇した吸気を冷却してエンジン8側に向け供給するものである。
【0035】
13はエンジン8の前側位置に旋回フレーム5の左,右方向に延びて立設された横仕切部材を示している。
図2、
図4に示すように、この横仕切部材13は、エンジン8の前側から熱交換装置11の前側を覆う構成となっている。これにより、エンジン8、熱交換装置11が発生する熱、エンジン8が発生する騒音が前側から外部に漏れるのを防止している。一方、作動油等の油液がエンジン8の排気マニホールド8B、過給機8C等に付着するのを防止している。
【0036】
図4に示すように、横仕切部材13は、エンジン8の軸方向の中間部から熱交換装置11の前側まで左側に延びた左側仕切板13Aと、エンジン8の軸方向の中間部から油圧ポンプ9の前側まで右側に延びた右側仕切板13Bとにより大略構成されている。また、
図5に示すように、左側仕切板13Aの右側寄りには、後述する吸気配管15を挿通させるための挿通孔13Cが形成されている。
【0037】
ここで、
図6に示すように、キャブ6の後方に位置する左側仕切板13Aには、後述する縦仕切部材21を着脱可能に取付ける構成となっている。そこで、左側仕切板13Aの上側位置には、挿通孔13Cの左側近傍に位置して例えば2個のねじ穴13Dが縦並びに設けられている。この2個のねじ穴13Dは、縦仕切部材21の上仕切カバー25を取付けるためのボルト18を螺着するものである。
【0038】
一方、左側仕切板13Aの下側位置には、ねじ穴13Dの下方に位置して例えば2個の取付ブラケット13Eが縦並びに突設されている。この2個の取付ブラケット13Eには、縦仕切部材21の下仕切カバー22がボルト18を用いて取付けられる。取付ブラケット13Eは、左側仕切板13Aから突出して設けているから、該取付ブラケット13Eに下仕切カバー22を取付ける場合、左,右方向の外側から真直ぐに手を伸ばすだけでボルト18を取付けることができる。即ち、外装カバー10の側面ドア10Aを開くだけで、ボルト18を容易に締付けたり、緩めたりすることができる。
【0039】
14は熱交換装置11よりも冷却風の上流側となる後述のユーティリティ空間部28に配置されたエアクリーナ装置を示している。このエアクリーナ装置14は、エンジン8が吸込む空気を清浄化するもので、塵埃等の異物を遠心力を利用して除去する遠心分離型のエアクリーナとして構成されている。このエアクリーナ装置14は、冷却風の流れ方向の上流側に配置することにより、その空気の吸込口14Aは、外部から流入したばかりの冷えた空気を吸込んで、エンジン8側に供給することができる。
【0040】
15はエアクリーナ装置14とエンジン8との間を接続する吸気配管である。この吸気配管15は、後述の縦仕切部材21を左,右方向に貫通して設けられている。吸気配管15は、複数本の管体、例えば金属配管、弾性をもった樹脂配管等を形状に応じて適宜に接続することにより、所望の曲がりをもった1本の配管として組立てられている。ここで、本実施の形態による吸気配管15は、後述の理由によって予め1本の配管として組立てておくことができ、組立現場では、エアクリーナ装置14とエンジン8に対して容易に接続することができる。
【0041】
吸気配管15は、空気の流通方向の上流側となる一端部15Aがエアクリーナ装置14に接続され、下流側の他端部15Bがエンジン8の過給機8Cの吸込口に接続されている。さらに、吸気配管15の中間部15Cは、横仕切部材13の左側仕切板13Aの前側に間隔をもった状態で、左,右方向に延びるようように配管固定具16を用いて固定されている。
【0042】
17はキャブ6の後面部6Cに設けられた電装品で、該電装品17は、例えば種々の動作部等を制御するコントローラ等からなっている。電装品17には、左,右方向から挟むようにブラケット17A,17Bが取付けられ、該各ブラケット17A,17Bに挿通したボルト18をキャブ6に設けた各ねじ座6Hに螺着することにより、電装品17は、後面部6Cの下側部位6C1に取付けることができる。なお、19は電装品17の下側の空間部を埋めるために設けられた縦長な長方形状の閉塞部材で、該閉塞部材19は、例えばウレタン系樹脂を用いた発泡材等により形成されている。
【0043】
20は電装品17を収容した状態で後面部6Cに設けられた電装品ボックスである。この電装品ボックス20は、電装品17と一緒に各ブラケット17A,17B、閉塞部材19を収容するもので、上面板20A、左側面板20B、右側面板20Cおよび背面板20Dにより前側と下側が開口したボックス体として形成されている。電装品ボックス20は、前記背面板20Dに挿通したボルト18を電装品17の各ブラケット17A,17Bに螺着することにより、取付け、取外し可能に取付けられている。この場合、電装品ボックス20は、
図12に示すように、後述の下仕切カバー22を取外すことにより形成されたスペースを利用して、後側に取外すことができる。
【0044】
21はキャブ6と横仕切部材13との間を前,後方向に延びて立設された縦仕切部材を示している。この縦仕切部材21は、熱交換装置11を通過して温度上昇した冷却風がキャブ6と横仕切部材13との間を通って熱交換装置11の上流側に流れ、温度上昇した冷却風がエアクリーナ装置14や熱交換装置11に供給されないように、冷却風の逆流を阻止するものである。また、縦仕切部材21は、キャブ6と横仕切部材13との間を仕切ることにより、これらの縦仕切部材21、キャブ6、カウンタウエイト7、熱交換装置11によって後述のユーティリティ空間部28を形成することができる。ここで、縦仕切部材21は、吸気配管15を上,下方向から挟む位置で2部材に分割され、下側が後述の下仕切カバー22となり、上側が上仕切カバー25となっている。
【0045】
22は縦仕切部材21の下側部分を構成する下仕切カバーで、該下仕切カバー22は、吸気配管15よりも下側でキャブ6と横仕切部材13との間を仕切るものである。
図8ないし
図10に示すように、下仕切カバー22は、柔軟な弾性材料を用いて板状に形成してなる弾性板体23と、強度をもった金属板からなり該弾性板体23の厚さ方向に重ねて設けられた強度板体24とにより構成されている。
【0046】
弾性板体23は、柔軟な弾性材料、具体的には、押圧したときに変形することができる柔軟性と、押圧した部材に対し反発して密着する弾性力とをもった材料、例えばウレタン系樹脂、スチレン系樹脂等の各種の発泡材、或いはウレタン系樹脂、シリコン系樹脂等の各種のゴム材、好ましくはウレタン系樹脂を用いた発泡材、ゴム材からなり、十分に変形することができる所定の厚さ寸法をもった板状体として形成されている。弾性板体23は、前側が傾斜した台形状の上板部23Aと、該上板部23Aから下側に延びた長方形状の中間板部23Bと、該中間板部23Bの下端部を左側に屈曲して延びた下板部23Cとにより形成されている。上板部23Aの下側で中間板部23Bと下板部23Cの前側は、ボックス当接部23Dとなり、該ボックス当接部23Dは、適度に弾性変形しつつ電装品ボックス20の外面に当接するものである。
【0047】
上板部23Aは、吸気配管15の下側に当接するものであり、その上側には吸気配管15が嵌まる円弧状の配管用切欠部23A1が形成されている。また、中間板部23Bには、横仕切部材13の取付ブラケット13Eを避けるように2個のブラケット用切欠部23B1が上,下方向に間隔をもって形成されている。
【0048】
強度板体24は、例えば所定の形状に切り出された金属板を折り曲げることにより形成されている。具体的には、強度板体24は、上側に位置する上板部24Aと、該上板部24Aから下側に延びた長方形状の中間板部24Bと、該中間板部24Bの下端から屈曲して左側に延びた台形状の下板部24Cとにより形成されている。上板部24Aには、上側に開口する切欠溝からなる配管逃げ部24A1が形成されている。中間板部24Bには、横仕切部材13の取付ブラケット13Eに対応するように2個のボルト挿通孔24B1が上,下方向に間隔をもって形成されている。
【0049】
このように構成された下仕切カバー22は、強度板体24の上板部24A、中間板部24Bの右面に、弾性板体23の上板部23A、中間板部23Bを両面テープ、接着剤等を用いて固着し、強度板体24の下板部24Cの下面に弾性板体23の下板部23Cを固着する。組立てた下仕切カバー22は、弾性板体23の上板部23Aの配管用切欠部23A1を弾性変形させつつ吸気配管15に下側から押付け、この状態で、強度板体24のボルト挿通孔24B1にボルト18を挿通し、このボルト18を横仕切部材13の取付ブラケット13Eに螺着する。これにより、下仕切カバー22は、横仕切部材13に対して取付け、取外し可能に取付けることができ、取付けた状態では、吸気配管15の下側で、キャブ6の後面部6Cと横仕切部材13との間を気密に閉塞することができる。
【0050】
25は縦仕切部材21の上側部分を構成する上仕切カバーで、該上仕切カバー25は、吸気配管15よりも上側でキャブ6と横仕切部材13との間を仕切るものである。上仕切カバー25は、前述した下仕切カバー22とほぼ同様に、弾性板体26と、該弾性板体26の厚さ方向に重ねて設けられた強度板体27とにより構成されている。
【0051】
弾性板体26は、前述した弾性板体23と同様の発泡材、ゴム材からなり、十分に変形することができる所定の厚さ寸法をもった板状体として形成されている。
【0052】
弾性板体26は、キャブ6の後面部6Cの下側部位6C1の上側寄りに対応するものであるから、後面部6Cに対向する前側部位が傾斜した三角形状のスペースに対応して形成されている。即ち、弾性板体26は、三角形状の上側弾性部材26Aと台形状の下側弾性部材26Bとにより形成されている。また、下側弾性部材26Bは、吸気配管15の上側に当接するものであり、その下側には吸気配管15が嵌まる円弧状の切欠部26B1が形成されている。
【0053】
強度板体27は、前述した下仕切カバー22の強度板体24とほぼ同様に、例えば所定の形状に切り出された金属板を折り曲げることにより形成されている。具体的には、強度板体27は、上側に位置して略三角形状に形成された上板部27Aと、該上板部27Aの下端を右側に直角に折り曲げて形成された折曲げ板部27Bと、該折曲げ板部27Bの先端から屈曲して下側に延びた下板部27Cと、前記上板部27Aから横仕切部材13に沿うように右側に直角に折り曲げられた取付板部27Dとにより形成されている。下板部27Cには、下側に開口する切欠溝からなる配管逃げ部27C1が形成され、該配管逃げ部27C1の両側は、下側弾性部材26Bを越えて下側に延びた挟持部27C2となっている。取付板部27Dには、横仕切部材13のねじ穴13Dに対応するように2個のボルト挿通孔27D1が縦並びに形成されている。
【0054】
このように構成された上仕切カバー25は、強度板体27の上板部27Aの右面に弾性板体26の上側弾性部材26Aを両面テープ、接着剤等を用いて固着し、下板部27Cの左面に弾性板体26の下側弾性部材26Bを固着する。組立てた上仕切カバー25は、下側弾性部材26Bの切欠部26B1を弾性変形させつつ吸気配管15に上側から押付け、この状態で、取付板部27Dのボルト挿通孔27D1にボルト18を挿通し、このボルト18を横仕切部材13のねじ穴13Dに螺着する。これにより、上仕切カバー25は、横仕切部材13に対して取付け、取外し可能に取付けることができ、取付けた状態では、吸気配管15の上側で、キャブ6の後面部6Cと横仕切部材13との間を気密に閉塞することができる。
【0055】
ここで、縦仕切部材21は、下仕切カバー22との間に吸気配管15を挟んだ状態で上仕切カバー25を取付けることにより、吸気配管15を左,右方向に貫通させつつ、キャブ6の後面部6Cと横仕切部材13との間を遮蔽することができ、エンジン8から熱気が逆流するのを防止することができる。しかも、下仕切カバー22は、上仕切カバー25とは別に、単独で着脱することができるから、エアクリーナ装置14とエンジン8との間を吸気配管15によって接続した後からでも、キャブ6と横仕切部材13との間を閉塞することができる。一方で、
図12に示すように、下仕切カバー22を取外した状態では、電装品ボックス20の後側にスペースを形成でき、このスペースを利用して電装品ボックス20を取外すことができる。
【0056】
下仕切カバー22を取付ける場合には、弾性板体23の上板部23Aが吸気配管15に接触し、弾性板体23の一部が強度板体24から捲れることがある。このときに、上仕切カバー25の強度板体27に下側に突出して設けた下板部27Cの挟持部27C2は、下仕切カバー22の強度板体24との間に下仕切カバー22の弾性板体23の上端部を挟んで保持することができる。これにより、弾性板体23の捲れを修正することができる。
【0057】
さらに、下仕切カバー22、上仕切カバー25の強度板体24,27は、その大部分をエンジン8と反対側の左,右方向の左側に位置して弾性板体23,26に重ねて設ける構成としている。従って、エンジン8側から逆流してくる熱風に対し、その反対側に設けた強度板体24,27によって弾性板体23,26を確実に支えることができる。
【0058】
28は熱交換装置11よりも冷却風の流れ方向の上流側に設けられたユーティリティ空間部である。このユーティリティ空間部28は、キャブ6の後面部6C、カウンタウエイト7の前面、熱交換装置11および縦仕切部材21によって囲まれた空間部として形成されている。このユーティリティ空間部28には、前述したエアクリーナ装置14、電装品ボックス20(電装品17)が配設されている。
【0059】
29は油圧ポンプ9の前側に位置して旋回フレーム5上に設けられた作動油タンク(
図2参照)で、該作動油タンク29は、油圧ポンプ9に供給する作動油を貯えるものである。なお、30は作動油タンク29の側方に設けられた燃料タンクを示している。
【0060】
本実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、この油圧ショベル1の動作について説明する。
【0061】
まず、オペレータは、キャブ6に搭乗して運転席に着座する。この状態で走行用のレバーを操作することにより、下部走行体2を駆動して油圧ショベル1を前進または後退させることができる。また、運転席に着座したオペレータは、作業用のレバーを操作することにより、作業装置4等を動作させて土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0062】
このように油圧ショベル1を稼動しているときには、エンジン8の冷却ファン8Aにより外装カバー10の側面ドア10A等から外部の空気が導入され、この空気を冷却風として熱交換装置11のラジエータ11B、オイルクーラ11C、インタクーラ11Dに供給することにより、それぞれを流れる流体を冷却することができる。
【0063】
かくして、本実施の形態によれば、キャブ6の後面部6Cと横仕切部材13との間を前,後方向に延びて立設された縦仕切部材21を、左,右方向に延びる吸気配管15を上,下方向から挟む位置で下仕切カバー22と上仕切カバー25とに分割し、この下仕切カバー22と上仕切カバー25とは、横仕切部材13に対し別々に着脱可能に取付ける構成としている。
【0064】
従って、エアクリーナ装置14とエンジン8との間を吸気配管15によって接続する場合には、予め1本の配管として組立てられた吸気配管15を用いてエアクリーナ装置14とエンジン8との間を接続することができる。この状態で、キャブ6と横仕切部材13との間に縦仕切部材21を配置する場合には、吸気配管15の下側に下仕切カバー22を配置して横仕切部材13に取付け、吸気配管15の上側に上仕切カバー25を配置して横仕切部材13に取付ける。これにより、下仕切カバー22と上仕切カバー25によって吸気配管15を上,下方向から挟むことができ、縦仕切部材21は、吸気配管15を貫通させた状態でキャブ6と横仕切部材13との間に配置することができる。
【0065】
この結果、吸気配管15をエアクリーナ装置14とエンジン8との間に取付ける場合には、全体の組立現場で複数の配管から吸気配管15を組立てる必要がなくなるから、吸気配管15、縦仕切部材21を容易に取付けることができ、エンジン8周りにおける組立作業性を向上することができる。しかも、下仕切カバー22と上仕切カバー25によって吸気配管15を上,下方向から挟む構造では、各仕切カバー22,25の弾性板体23,26を吸気配管15の周囲に密着させることができるから、仕切部材として十分な密閉性を得ることができる。
【0066】
縦仕切部材21を構成する下仕切カバー22と上仕切カバー25とは、柔軟な弾性材料を用いて板状に形成してなる弾性板体23,26と、強度をもった金属板からなり該弾性板体23,26の厚さ方向に重ねて設けられた強度板体24,27とにより構成している。従って、弾性板体23,26は、変形することでキャブ6の後面部6C、横仕切部材13、吸気配管15等に密着して密閉性を高めることができる。しかも、強度をもった金属板からなる強度板体24,27は、弾性板体23,26の厚さ方向に重ねることにより、該弾性板体23,26が撚れたり、曲がったりするのを防止して弾性板体23,26の基本形状を保持することができる。これにより、縦仕切部材21の組立作業性を向上できる上に、弾性板体23,26をキャブ6、横仕切部材13、吸気配管15等に確実に密着させることができる。
【0067】
キャブ6の後面部6Cは、その下側部位6C1を前側に配置し、上側部位6C2を該下側部位6C1よりも後側に配置することにより「く」字形状の湾曲面として形成しているから、後面部6Cの下側部位6C1を窪ませて、この下側部位6C1の後側にユーティリティ空間部28を形成することができる。これにより、小型の油圧ショベル1のようにキャブ6が小さく、電装品17をキャブ6内に収容することが困難になった場合でも、キャブ6を形成する後面部6Cの下側部位6C1に、下仕切カバー22との間の空間部を利用して電装品17を収容した電装品ボックス20を設けることができる。
【0068】
一方、後面部6Cの下側部位6C1の後側には、下仕切カバー22を取外すことによりスペースを確保できるから、この下側部位6C1に設けた電装品ボックス20を取外すことができ、電装品17の点検作業、修理作業等を行うことができる。
【0069】
さらに、上仕切カバー25の強度板体27の下板部27Cには、弾性板体26の下側弾性部材26Bよりも下側に突出して挟持部27C2を設けているから、下仕切カバー22の弾性板体23の上板部23Aを挟持部27C2と下仕切カバー22の強度板体24の上板部24Aとの間に挟んで保持することができる。従って、吸気配管15の下側に位置することで手が届き難い下仕切カバー22の弾性板体23が、取付作業時に吸気配管15に接触して捲れた場合でも、各強度板体24,27で挟むことにより、この捲れた部分を正規の形状に戻すことができ、組立作業性、密閉性等を向上することができる。
【0070】
なお、実施の形態では、キャブ6の後面部6Cに電装品17を取付け、前側と下側が開口した電装品ボックス20によって電装品17を収容する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば
図13に示す第1の変形例のように、6面体からなる閉塞された電装品ボックス41内に電装品17を収容し、この電装品ボックス41をキャブ6の後面部6Cに取付ける構成としてもよい。
【0071】
また、実施の形態では、縦仕切部材21の下仕切カバー22と上仕切カバー25とは、横仕切部材13に対し別々に着脱可能に取付けた場合を例示した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば
図13に示す第2の変形例のように、縦仕切部材21′の下仕切カバー22′を横仕切部材13に対して一体的に固着し、上仕切カバー25′だけを着脱可能とする構成としてもよい。一方、上仕切カバー25′を横仕切部材13に対して一体的に固着し、下仕切カバー22′だけを着脱可能とすることもできる。
【0072】
また、実施の形態では、吸気配管15を金属配管、樹脂配管等の複数本の管体を適宜に接続することにより、所望の曲がりをもった1本の配管として組立てるものとした場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、1本の配管を適宜に曲げることにより吸気配管15を形成してもよい。
【0073】
一方、実施の形態では、旋回フレーム5の左側に、キャブ6、熱交換装置11、エアクリーナ装置14、吸気配管15、電装品ボックス20、縦仕切部材21等を配置した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、旋回フレームの右側に、キャブ、熱交換装置、エアクリーナ装置、吸気配管、電装品ボックス、縦仕切部材等を配置する構成としてもよい。
【0074】
さらに、実施の形態では、建設機械としてクローラ式の油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばホイール式の下部走行体を備えた油圧ショベルに適用してもよい。さらに、例えば油圧クレーン等のエンジンを備えた他の建設機械にも広く適用できるものである。