特許第5839999号(P5839999)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5839999
(24)【登録日】2015年11月20日
(45)【発行日】2016年1月6日
(54)【発明の名称】通信端末装置
(51)【国際特許分類】
   H04W 28/10 20090101AFI20151210BHJP
   H04W 80/10 20090101ALI20151210BHJP
   H04M 11/00 20060101ALI20151210BHJP
【FI】
   H04W28/10
   H04W80/10
   H04M11/00 302
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-4015(P2012-4015)
(22)【出願日】2012年1月12日
(65)【公開番号】特開2013-143732(P2013-143732A)
(43)【公開日】2013年7月22日
【審査請求日】2014年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092772
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 清孝
(74)【代理人】
【識別番号】100084870
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 香樹
(74)【代理人】
【識別番号】100119688
【弁理士】
【氏名又は名称】田邉 壽二
(72)【発明者】
【氏名】北原 武
(72)【発明者】
【氏名】稗圃 泰彦
【審査官】 石田 紀之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−015273(JP,A)
【文献】 特表2008−538466(JP,A)
【文献】 特表2005−526422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/801
H04M 11/00
H04B 7/24− 7/26
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転送期限の設定されたファイルを所定のブロック単位で間欠転送する無線端末装置において、
ファイルの間欠転送に合わせて通信セッションの確立および切断を制御するセッション制御手段と、
転送対象のファイルを決定する転送対象決定手段と、
転送対象のファイルを前記通信セッションで間欠転送するファイル転送手段と、
前記ファイル転送のスループットを計測するスループット計測手段と、
通信セッションを切断するごとに、間欠転送のバックオフ時間を算出するバックオフ時間算出手段とを具備し、
前記バックオフ時間算出手段は、
ファイルの未転送サイズおよび転送期限までの残時間に基づいて、前記転送期限を約束できるバックオフ時間の暫定値を算出する手段と、
間欠転送のバックオフ時間を、所定の下限時間と前記暫定値との間でランダムに設定する手段とを具備し、
前記セッション制御手段は、確立されたセッションを、前記スループットが基準閾値を下回ると1ブロック分のファイル転送を待って切断し、前記バックオフ時間の経過後に再確立することを特徴とする通信端末装置。
【請求項2】
前記ファイル転送手段は、スループットの実績が所定の閾値以上であれば、ブロック単位のファイル転送を継続することを特徴とする請求項1に記載の通信端末装置。
【請求項3】
前記スループット計測手段は、1ブロック分のファイル転送ごとにスループットを計測することを特徴とする請求項1または2に記載の通信端末装置。
【請求項4】
1ブロック分のファイル転送が完了ごとに転送対象のファイルを決定する転送対象決定手段をさらに具備したことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の通信端末装置。
【請求項5】
前記転送対象決定手段は、転送期限までの残り時間がより少ないファイルを優先的に転送対象として決定することを特徴とする請求項4に記載の通信端末装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は通信端末装置に係り、特に、転送期限の設定されたプログラムファイルやデータファイルのアップロード/ダウンロードを、ネットワークが混雑していない"すき間"の時間帯を利用して期限内に完了する通信端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、Webの閲覧、ストリーミングビデオの送受信、電子メールの送受信、巨大ファイルの送受信など、多種多様なデータトラヒックの送受信が無線式のデータ通信端末で行われている。特許文献1および非特許文献1には、データトラヒックに対するリアルタイム性の要求の程度に着目し、高いリアルタイム性が要求されるデータトラヒックには高い優先順位を設定することで、優先的に無線リソース(時間、周波数、電力)を割り当る技術が開示されている。
【0003】
しかしながら、これらの先行技術では、リアルタイム性を全く要求されないデータトラヒックであっても、低い優先度ではあるが無線リソースが必ず割り当てられるので無線リソースが消費されることになる。このため、無線アクセスネットワークを運用する通信事業者の観点からは、輻輳時にもかかわらずリアルタイム性の要求されない不急のデータトラヒックまでも収容しなければならず、リアルタイム性が要求される他のデータトラヒックに割り当てたい無線リソースが無駄に消費されてしまうことになって好ましくない。
【0004】
このような技術課題に対して、特許文献2では、リアルタイム性の低いトラヒックを転送する端末については、端末自身が無線リソースに余裕のある時間帯を自律分散的に探索して通信を時分割で行う技術が提案されている。
【0005】
また、特許文献3では、リアルタイム性の要求されない不急のデータトラヒックを、無線リソースに余裕のある夜中などの閑散時間帯を利用して時分割で送受信するシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−169363号公報
【特許文献2】特開2010−226342号広報
【特許文献3】特開2011−199592号広報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】"Wireless LAN Medium Access Control(MAC) and Physical Layer (PHY) Specifications Amendment 8:Medium Access Control(MAC) Quality of Service Enhancements," IEEE Std.802.11e,2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ネットワーク上で転送されるファイルには、不急であっても転送期限が設定されているものがある。例えば、医療機関や薬局などで利用される薬価情報などは、その切替日に薬価算出用のコンピュータ等へ適用する必要ある。
【0009】
このような転送期限の設定されたファイルは、その切替日よりも前に十分な余裕をもって告知されるので、前もってダウンロードし、切替日の当日にインストールして利用できるようにしても良い。しかしながら、前もってダウンロードされたファイルの管理や、切替日よりも前に誤ってインストールされてしまうリスク等を考慮すれば、切替日の間際にダウンロードされるようにすることが望ましい。
【0010】
一方、多くの利用者が期限間近にファイルを一斉にダウンロードしようとすると、ネットワークやサーバが輻輳して所望のスループットを得られなくなり、予定していた期限内にファイル転送を完了できなくなる恐れがある。
【0011】
しかしながら、上記の従来技術では、転送期限が設定されているファイルを、無線リソースに余裕がある時間帯での通信のみで期限内に転送することができなかった。
【0012】
本発明の目的は、上記した従来技術の課題を解決し、転送期限の設定されたファイルを、ネットワークが混雑していない"すき間"の時間帯を利用して期限内に転送完了できる無線端末装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明は、転送期限の設定されたファイルをブロック単位で間欠転送する無線端末装置において、以下のような手段を講じた点に特徴がある。
【0014】
(1)ファイルの間欠転送に合わせて通信セッションの確立および切断を制御するセッション制御手段と、転送対象のファイルを決定する転送対象決定手段と、転送対象のファイルを前記通信セッションで間欠転送するファイル転送手段と、ファイル転送のスループットを計測するスループット計測手段と、通信セッションが切断されるごとに、間欠転送のバックオフ時間を算出するバックオフ時間算出手段とを設けた。
【0015】
そして、バックオフ時間算出手段は、ファイルの未転送サイズおよび転送期限までの残時間に基づいて、転送期限までにファイル転送を完了できるバックオフ時間を算出し、セッション制御手段は、確立されたセッションを、スループットが基準閾値を下回ると1ブロック分のファイル転送を待って切断し、バックオフ時間が経過するごとに再確立するようにした。
【0016】
(2)ファイル転送手段は、スループットの実績が所定の閾値以上であれば、ブロック単位のファイル転送を継続するようにした。
【0017】
(3)スループット計測手段は、1ブロック分のファイル転送ごとにスループットを計測するようにした。
【0018】
(4)1ブロック分のファイル転送が完了ごとに転送対象のファイルを決定する転送対象決定手段をさらに設けた。
【0019】
(5)転送対象決定手段は、転送期限までの残り時間がより少ないファイルを優先的に転送対象とするようにした。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、以下のような効果が達成される。
【0021】
(1)転送期限の設定されたファイルを、ネットワークが混雑していない"すき間"の時間帯のみで転送完了できるので、転送期限の間際にトラヒックの集中を発生させることなく、期限内に転送完了できるようになる。また、間欠転送のバックオフ時間は、スループットが低下して通信セッションを切断するごとに動的に算出するので、スループットが混雑度に応じて変動する場合でも、バックオフ時間の長短のみでファイルを転送期限内に転送完了できるようになる。
【0022】
(2)スループットの実績が所定の閾値以上であれば、各ファイルブロックが間欠転送ではなく連続転送されるので、空き帯域の有効利用が可能になる。
【0023】
(3)スループットが1ブロック分のファイル転送ごとに計測されるので、ファイルがブロック単位で間欠送信される場合でも、そのバックオフ時間を正確に算出できるようになる。
【0024】
(4)1ブロック分のファイル転送ごとに転送対象のファイルを決定する転送対象決定手段を設けたので、一のファイルの転送中に、これよりも優先度の高い他の一の転送ファイルが発生すると、当該優先度の高い他の一の転送ファイルの転送を優先させることが可能になる。
【0025】
(5)転送対象決定手段は、転送期限のより近いファイルを優先的に転送するので、効率的なファイル転送が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明によるファイル転送方法を模式的に表現した図である。
図2】本発明が適用される通信システムおよびその通信端末装置の機能ブロック図である。
図3】本発明の一実施形態の動作を示したフローチャートである。
図4】本発明の一実施形態の動作を示したタイムチャートである。
図5】割込要求の処理方法を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明によるファイル転送方法を模式的に表現した図であり、ネットワークが混雑していない"すき間"の時間帯を利用した通信のみで、転送期限が設定されているファイルを期限内に転送完了することができる。
【0028】
転送対象のファイルは、同図(a)に示したように、複数のファイルブロックに等分割されてファイルブロック単位での転送が繰り返され、一日で転送しきれないような大きなサイズのファイルについては、間欠転送が数日間に渡って繰り返される。なお、転送対象のファイルは、転送期限までの残り時間が少ないほど優先度を高く設定され、転送対象のファイルが複数登録されている場合には、優先度高いファイルから順に、そのファイルブロックの転送がシーケンシャルで実行される。
【0029】
また、本発明では各ファイルブロックの転送時に、そのスループットTrが計測され、同図(b)の時刻ts以前のように、当該スループットTrが混雑度の指標となる閾値Tr_thよりも高く、ネットワークが混雑していないと推定されれば、ファイルブロック単位での転送が間欠ではなく連続的に繰り返される。これに対して、時刻ts以降のように、計測されたスループットTrが閾値Tr_thよりも低く、ネットワークが混雑していると推定されれば、トラヒックを時間方向に分散させるべく、所定のバックオフ時間Tbを挟んだ間欠転送が実施される。ただし、このような間欠転送時であっても、ファイル転送を期限内に完了できるように、前記バックオフ時間Tbは、ファイルの未転送量(残量)および転送期限までの残り時間、さらにはファイルブロックのサイズ等に基づいて動的、適応的に最適化される。
【0030】
図2は、本発明が適用される通信システムおよびその通信端末装置1の主要部の構成を示した機能ブロック図であり、ここでは、本発明の説明に不要な構成は図示が省略されている。
【0031】
本発明に係る通信端末装置1は、ネットワーク経由でファイルサーバ2との間に通信セッションを確立し、当該ファイルサーバ2との間で転送ファイルのダウンロードおよびアップロードを前記ファイルブロック単位で実行する。
【0032】
通信端末装置1において、ファイル情報管理部101は、転送対象のファイルに関する情報として、ファイルサイズおよび転送期限、ならびにファイルをブロック単位で分割転送するためのファイルブロックを管理する。ダウンロードファイルのファイル情報は、予めファイルサーバ2へ問い合わせることで取得できる。
【0033】
セッション制御部102は、ファイルサーバ2との間でファイル転送を行うための通信セッションの確立およびその切断を制御する。転送対象決定部103は、転送対象のファイルを、その優先度に基づいて決定する。本実施形態では、転送期限までの残り時間が少ないファイルほど優先度が高く設定されている。
【0034】
スループット計測部104は、ファイル転送時のスループットTrを計測する。バックオフ時間算出部105は、後に詳述するように、ファイルの未転送量および転送期限までの残り時間、さらにはファイルブロックのサイズ等に基づいて、図1(b)の時刻ts以降のように、スループットTrの低下時にファイルブロックを間欠転送する際のバックオフ時間Tbを算出する。
【0035】
ファイル転送部106は、前記セッション制御部102により確立された通信セッションを利用して、前記転送対象決定部103により決定された転送ファイルの各ファイルブロックを転送する。前記セッション制御部102は、確立した通信セッションを、ファイルブロック転送時のスループットTrが閾値Tr_thよりも高ければ維持する一方、閾値Tr_thよりも低ければ、少なくとも1ファイルブロックの転送完了を待って切断し、その後、前記バックオフ時間Tbの経過を待って再確立する。したがって、本発明のファイル転送は、スループットTrが閾値Tr_thよりも高ければ連続転送となり、閾値Tr_thよりも低ければ、前記バックオフ時間Tbを挟んだ間欠転送となる。
【0036】
図3は、本発明の一実施形態の動作を示したフローチャートであり、図4は、そのタイムチャートである。
【0037】
ここでは、通信端末装置1がファイルサーバ2に蓄積されているファイルをダウンロードするファイル転送を例にして説明するが、通信端末装置1に蓄積されているファイルをファイルサーバ2へアップロードするファイル転送の場合も同様である。
【0038】
図4の時刻t1において通信端末装置1が起動されると、ステップS1では、前記セッション制御部102がファイルサーバ2にアクセスすることで通信セッションが確立される。ステップS2では、ダウンロード対象の転送ファイルが、前記転送対象決定部103により決定される。ダウンロード対象の転送ファイルが複数登録されている場合には、その中で優先度の最も高い転送ファイルが今回のダウンロード対象に決定される。
【0039】
ステップS3では、前記決定された転送ファイルから、今回の転送対象となるファイルブロックが選択される。ステップS4では、前記選択された今回の1ファイルブロックの転送が前記ファイル転送部106により開始される。前記スループット計測部104は、当該ファイル転送のスループットTrを計測する。
【0040】
時刻t2において、今回の1ファイルブロック分の転送が完了し、これがステップS5で検知されると、ステップS6へ進んで切断判定が行われる。ステップS6では、前記ファイルブロックをダウンロードした際のスループットTrが所定の閾値Tr_thと比較される。Tr≧Tr_thであれば、ネットワークが混雑していないと推定できるので、通信セッションを維持したままステップS7ヘ進み、新規ファイルの転送が割込要求されたか否かが判定される。
【0041】
割込要求がなければステップS8へ進み、全ての転送ファイルおよびそのファイルブロックの転送が完了したか否かが判定される。最初は完了していないと判定されるのでステップS2へ戻り、ダウンロード対象となる転送ファイルの決定(ステップS2)およびそのファイルブロックの選択(ステップS3)、ならびに当該ファイルブロックの転送(ステップS4)が繰り返される。
【0042】
その後、時刻t3で転送が完了した今回のファイルブロックについて、前記ステップS6において、そのスループットTrが閾値Tr_thを下回ったと判定されるとステップS9へ進む。ステップS9では、前記セッション制御部102により通信セッションが切断される。ステップS10では、次に通信を開始するまでのバックオフ時間Tbが、前記バックオフ時間算出部105により、次式(1)、(2)に基づいて算出される。
【0043】
【数1】
【0044】
上式(1)において、右辺第1項の分子では、複数の転送対象ファイルFi(iはファイル識別子)の各転送期限Tdead(Fi)から現在時刻nowを減じて得られる、転送期限までの残り時間の最小値が算出される。右辺第1項の分母では、現在時刻now以降にダウンロードする必要のあるサイズの総量ΣVrest(Fi)をファイルブロックのサイズdVで除すことにより、必要な間欠転送回数が求められる。したがって、右辺第1項では、転送期限までの残り時間において、1回のブロック転送に許容できる所要時間が求まる。
【0045】
右辺第2項では、スループットの低下を理由にダウンロードを中断するための閾値Tr_thで1ファイルブロックのサイズdVを除すことで、1つのファイルブロック転送に要する所要時間が求まる。本実施形態では、前記閾値Tr_thが、実用上の最低スループットに近い値に設定されているので、前記所要時間は、1つのファイルブロック転送に要する最長時間に近い値となる。
【0046】
そして、上式(1)では右辺第1項から同第2項を減じることで、転送期限を約束できるバックオフ時間Tbの暫定値Tb_tmpが算出される。本実施形態ではさらに、前記暫定値Tb_tmpを次式(2)に適用することで前記バックオフ時間Tbが算出される。
【0047】
【数2】
【0048】
すなわち、別途に設定されたバックオフ時間の下限値Tb_minと前記暫定値Tb_tmpとが比較され、Tb_min>Tb_tmpであれば、バックオフ時間TbはTb_minとTb_min+d(dは別途に定められたレンジ)との間のランダム値として求められる。これに対して、Tb_min>Tb_tmp以外であれば、バックオフ時間TbはTb_minとTb_tmpとの間のランダム値として求められる。
【0049】
図3へ戻り、ステップS11では、以上のようにして算出された今回のバックオフ時間Tbがタイムアウトしたか否かが判定され、図4の時刻t4において、今回のバックオフ時間Tbがタイムアウトすると、ステップS1へ戻って通信セッションが再確立され、前記と同様に、ダウンロード対象となる転送ファイルの決定およびそのファイルブロックの選択、ならびに当該ファイルブロックの転送が再開される。
【0050】
その後も同様に、時刻t5で転送が完了したファイルブロックについて、そのスループットTrが閾値Tr_thを下回っていると判定されるとセッションが切断され、次に通信を開始するまでのバックオフ時間Tbが前記と同様にして算出される。時刻t6において、前記バックオフ時間Tbがタイムアウトすると通信セッションが再確立され、前記と同様に、ダウンロード対象となる転送ファイルの決定およびそのファイルブロックの選択、ならびに当該ファイルブロックの転送が再開される。
【0051】
本実施形態によれば、転送期限の設定されたファイルを、無線リソースに余裕のある"すき間"の時間帯でのみ転送できるので、転送期限の間際にトラヒックの集中を発生させることなく、期限内に転送完了できるようになる。
【0052】
また、スループットの実績が所定の閾値以上であり、無線リソースに十分な余裕があると判断できる場合には、各ファイルブロックが間欠転送ではなく連続転送されるので、空き帯域の有効利用が可能になる。
【0053】
なお、前記ステップS7において、新規ファイルの割込要求が検知されるとステップS2へ戻り、ダウンロード対象の転送ファイルが改めて決定される。このとき、新規ファイルの優先度が前記転送中のファイルの優先度よりも低ければ、実行中のファイル転送が継続される。これに対して、新規ファイルの優先度が前記実行中ファイルの優先度よりも高ければ、図5に示したように、時刻t8において、実行中のファイル転送が中断されて新規ファイルの転送が開始され、時刻t9において、新規ファイルの転送が完了すると、前記中断されたファイル転送が再開される。
【0054】
このときも、図示は省略されているが、新規ファイルの転送中に、ステップS6においてスループットの低下が検知されれば、前記と同様にステップS9へ進んでセッションが切断され、前記バックオフ時間Tbのタイムアウト後にセッションが再確立されてファイル転送が再開されるようになる。
【0055】
このように、本実施形態では1ファイルブロックの転送完了ごとに転送対象のファイルが決定されるので、一のファイルの転送中に、これよりも優先度の高い他の一の転送ファイルが発生すると、当該優先度の高い他の一の転送ファイルの転送を優先させることが可能になる。
【符号の説明】
【0056】
1…通信端末装置,2…ファイルサーバ,101…ファイル情報管理部,102…セッション制御部,103…転送対象決定部,104…スループット計測部,105…バックオフ時間算出部,106…ファイル転送部
図1
図2
図3
図4
図5