(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
調査対象である製品又はアッセン部品からなる部品集合体が含有化学物質を規制する制度の規制対象となるか否かの判断材料を提供するために、前記部品集合体を構成する各部品の含有化学物質の情報を調査の結果得られた場合に回収し、前記各部品のうち含有化学物質の情報を回収できた部品である回収部品の含有化学物質情報を使用して前記部品集合体が規制対象となるか否かの評価を支援する含有化学物質収集情報の評価システムにおいて、
データを記憶する記憶部、演算処理をする処理部、データ又は信号を入出力する入出力部及びその入出力部に接続された表示手段を備え、
前記処理部に、
前記部品集合体を構成する部品が前記回収部品であるか否かの情報と、前記各部品の重量の情報と、前記回収部品ごとの含有化学物質の重量とを記述した集計データを作成する集計データ作成手段と、
前記回収部品の重量の合計重量mと、前記部品集合体の総重量Mとの重量比である重量回収率R=m/Mを演算する重量回収率演算手段と、
前記集計データを参照し、前記部品集合体の総重量Mに対する回収部品中の規制対象化学物質の合計重量xとの重量比r=x/Mを演算すると共に、前記規制対象化学物質の合計重量含有量が規制対象の閾値となる場合の含有率である重量含有率閾値Sに対する前記重量比rの比率である閾値占有率P=r/Sを演算する閾値占有率演算手段と、
Φ={(1−R)/R}×{P/(1−P)}
の演算により指標値Φを求める指標値演算手段と、
前記Φの数値に応じて、リスクの高さの程度を示すためのリスクレベル判定手段とを備えると共に、
前記表示手段として、前記リスクレベル判定手段により求められたリスクレベルを表示するものを備えたことを特徴とする含有化学物質収集情報の評価システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、部品の含有化学物質情報が部品製造メーカーの企業秘密であるか、あるいはサプライチェーンの段階数が多かったり、サプライチェーンが海外まで拡がっていたり、複雑化しているなどの理由ですべての部品の含有化学物質情報を回収できないことがある。含有化学物質情報を回収できない未回収部品が存在し、データが不足している状態で部品集合体の含有化学物質含有率が閾値を上回るかどうかについての可能性を評価しなくてはならない場合がある。
【0007】
そのような未回収部品が存在するときに、特許文献1に開示されている含有化学物質管理システムを用いて、部品集合体の規制対象の含有化学物質の含有率を判断しようとしても、不明な部分が残っているために規制対象になるか否かを断定することは困難である。
【0008】
また、調査開始から判断するまでを短期間に行わなければならない場合もある。例えば、REACH規則においては、届出期限が残り半年という状態で調査開始となることもあることから、そのときの調査のための期間を3~4か月程度という短期間に設定せざるを得ず、その上、建設機械の部品数は千を超える程に多数であるため、すべての部品の含有化学物質情報を入手できない場合が多い。その上、規制に達するかの基準が重量パーセントであるにもかかわらず、建設機械の部品は、それぞれの部品間の重量差は非常に大きく、重量の大きな部品が一つ欠けていることで製品の化学物質の含有率が大きく変動するおそれもある。このような場合に単に未回収部品を表示するだけでは、ユーザーにとっては、規制対象になる可能性がわからないという課題が生じていた。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑み、含有化学物質情報が未回収の部品が存在していても製品又はアッセン部品がREACH規則等の規制対象であるか否かの判定について、規制対象になるリスクがどの程度あるのかを提示して、届出の漏れ等の規制を遵守できない不具合を減らすことができ、容易でかつ確度の高い含有化学物質収集情報の評価システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
調査対象である製品又はアッセン部品からなる部品集合体が含有化学物質を規制する制度の規制対象となるか否かの判断材料を提供するために、前記部品集合体を構成する各部品の含有化学物質の情報を調査の結果得られた場合に回収し、前記各部品のうち含有化学物質の情報を回収できた部品である回収部品の含有化学物質情報を使用して前記部品集合体が規制対象となるか否かの評価を支援する含有化学物質収集情報の評価システムにおいて、
データを記憶する記憶部、演算処理をする処理部、データ又は信号を入出力する入出力部及びその入出力部に接続された表示手段を備え、
前記処理部に、
前記部品集合体を構成する部品が前記回収部品であるか否かの情報と、前記各部品の重量の情報と、前記回収部品ごとの含有化学物質の重量とを記述した集計データを作成する集計データ作成手段と、
前記回収部品の重量の合計重量mと、前記部品集合体の総重量Mとの重量比である重量回収率R=m/Mを演算する重量回収率演算手段と、
前記集計データを参照し、前記部品集合体の総重量Mに対する回収部品中の規制対象化学物質の合計重量xとの重量比r=x/Mを演算すると共に、前記規制対象化学物質の合計重量含有量が規制対象の閾値となる場合の含有率である重量含有率閾値Sに対する前記重量比rの比率である閾値占有率P=r/Sを演算する閾値占有率演算手段と、
Φ={(1−R)/R}×{P/(1−P)}
の演算により指標値Φを求める指標値演算手段と、
前記Φの数値に応じて、リスクの高さの程度を示すためのリスクレベル判定手段とを備えると共に、
前記表示手段として、前記リスクレベル判定手段により求められたリスクレベルを表示するものを備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項2の含有化学物質収集情報の評価システムは、
請求項1に記載の含有化学物質収集情報の評価システムにおいて、
前記処理部に、
前記集計データを参照し、前記部品集合体の調査部品数nと回収部品数n1の数量比である図番回収率N=n1/nを演算する図番回収率演算手段をさらに備え、
前記指標値Φを演算する指標値演算手段として、
前記指標値Φを演算する前記演算式の代わりに、
Φ={(1−N)/N}
1/2×{(1−R)/R}
1/2×{P/(1−P)}
の演算により指標値Φを求める指標値演算手段を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項3の含有化学物質収集情報の評価システムは、
請求項2記載の含有化学物質収集情報の評価システムにおいて、
前記処理部に、前記集計データを参照し、回収した部品のうち規制対象の化学物質が含まれている部品の数Lをカウントする手段をさらに備え、
前記指標値Φを演算する指標値演算手段として、
前記指標値Φを演算する前記演算式の代わりに、
Φ={(1−N)/N}
1/2×{(1−R)/R}
1/2×{P/(1−P)}×{1+(1/L)
1/2}
の演算により指標値Φを求める指標値演算手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明においては、重量回収率に関する項と閾値占有率に関する項を乗じてリスクの大きさを示す指標値Φを求め、この指標値Φに応じて部品集合体が規制対象であるリスク(可能性)の程度をレベルごとに分けて表示手段により段階的に表示する。このため、重量回収率と閾値占有率に基づいて部品集合体が規制対象となるリスクの高低をわかりやすくかつ確度を高くしてユーザーに伝達することが可能となると共に、部品集合体が規制対象化学物質として届出るべきものであるか否かの判断を容易化することが可能になる。
【0014】
請求項2の発明は、図番回収率に関する項と重量回収率に関する項の幾何平均に閾値占有率に関する項を乗じて指標値Φを求め、指標値Φに応じて部品集合体が規制対象であるリスクの程度をレベルごとに分けて段階的に表示するものである。このように、指標値Φを求める式は、図番回収率に関する項と重量回収率に関する項の幾何平均をとっていることから、一方の値が突出していても指標値Φが極端な値をとりにくくなり、より確度の高いリスク判定が行なえる。
【0015】
請求項3の発明は、指標値Φに回収部品のうち規制対象の化学物質を含有する部品の数Lを加味した補正項を加え、その数Lが小さいときには指標値Φを大きくしてリスクを高く補正するものである。そのため規制対象の化学物質を含有する部品の数Lの少ないときにはよりリスクが高くなる傾向を反映することが可能となり、部品集合体が規制対象であるかについてさらに確度の高いリスク判定を行なうことが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明の含有化学物質収集情報の評価システムの一実施形態を示すブロック図である。
図1の含有化学物質収集情報の評価システムは、データを記憶する記憶部101と、演算処理を行う処理部102と、データや信号を入出力する入出力部103と、入出力部103に接続された表示手段114とを備える。
【0018】
記憶部101には、調査対象である製品又はアッセン部品である部品集合体の後述する部品構成情報(BOM情報)が蓄積されている部品構成情報蓄積部104と、後述のデータを記憶しておく集計データ蓄積部105と、規制の対象となる化学物質の情報が格納された規制物質情報蓄積部106とを備える。
【0019】
ここで、部品構成情報となるBOM(Bills of Material)情報とは、例えば、製品を頂点に製品を構成するアッセン部品、そのアッセン部品を構成する部品というように、階層分けやツリー状に表現可能な情報である。この部品構成情報における構成品のうち、データ上、これ以上細分化できない末端の部品を調査対象にする。その末端の部品を特定するための図番号を末端図番という。末端の部品であるかどうかはデータ作成者が定義することができる。
【0020】
処理部102には、部品構成情報蓄積部104の構成部品の情報(BOM情報)を参照し、その情報を把握して、調査が必要な部品の末端図番を特定する部品構成情報把握手段108と、部品構成情報把握手段108で定義した図番について回収情報をリスト化する集計データ作成手段109と、集計データ蓄積部105のデータを参照して、重量回収率Rを演算する重量回収率演算手段110と、閾値占有率Pを演算する閾値占有率演算手段111と、指標値Φを演算する指標値演算手段112と、指標値Φに応じてリスクレベルをクラス分けするリスクレベル判定手段113とが備えられる。
【0021】
入出力部103には、システムの入出力に使用される機器が接続される。入出力部103に接続される機器には、キーボード、マウス、ディスプレイなど外部周辺機器の他、イントラネットやインターネットなどのネットワークとそのネットワークを介して本システムに接続される情報処理端末も含まれる。
【0022】
図2は、この実施の形態の含有化学物質収集情報の評価システムの処理の一例を説明するフローチャートである。このフローチャートでは、構成部品情報(BOM情報)、部品の含有化学物質情報と規制対象物質データに基づいて、作成された集計データに基づいて指標値Φを演算してリスクレベルを判定してユーザへ提示するまでの処理を説明している。
【0023】
図2のフローチャートに示すように、部品構成情報把握処理201において、部品構成情報蓄積部104の部品構成情報(BOM情報)を参照して、化学物質含有情報の回収が必要な部品の図番(末端図番)を部品構成情報把握手段108で定義して、定義した図番について回収情報をリスト化した集計データを集計データ蓄積部105に記憶する。
【0024】
図3は本システムの調査対象である部品集合体の製品Aについての部品構成情報の一例であり、
図4はその製品Aの部品構成情報を図形で表した構成図である。製品Aは、部品Bと、アッセン部品Cと、アッセン部品Dとからなり、更にアッセン部品Cは1個の部品Eと、2個の部品F(
図3において、製品Aおよびアッセン部品C,Dについては個数および重量の小計を括弧つきで示す。)からなり、一方、2個のアッセン部品Dには2個の部品Gと、4個の部品Hが含まれることを意味している。図番は、製品、アッセン部品や部品を特定する固有の番号であり、例えば製品Aの図番はa100で示される。
【0025】
図2に示す部品構成情報把握処理201においては、
図3の部品構成情報から化学物質含有情報の調査が必要な部品である調査対象部品の図番(末端図番)のみを選んで、
図5の調査対象テーブルに示すように部品B,E,F,G,Hのみのテーブルを作成する。
【0026】
次に、部品B,E,F,G,Hに関する部品含有化学物質情報208を調査するための調査対象部品出力及び調査依頼202を行う。この調査対象部品出力及び調査依頼202は、調査対象部品を表示装置等に出力するとともに、その出力された調査対象部品を明示した調査依頼を外部に対して行う。詳しくは、調査依頼は本システムが電子メール等のネットワークを介した連絡手段により、ユーザーと取引のある調査対象部品を製造した部品製造メーカー等へ調査依頼の連絡をする。そして、その調査依頼に対する回答である部品含有化学物質情報208を本システムが受付ける。尚、調査対象部品出力のみを本システムが行い、調査依頼及び調査の受付を本システムのユーザーが行って本システムに部品含有化学物質情報208を伝達してもよいし、ユーザー自身が調査対象部品の含有化学物質情報を自己で調査してもよい。
【0027】
部品含有
化学物質情報208の伝達は、必要なデータが入力されれば形式は問わず、例えば、JAMAシートやIMDSなど既存のツールを用いることができる。
【0028】
図6は、回収された部品含有化学物質情報208の一例である。
図6(A)は、部品B(図番:a210)の質量と、部品Bが含有する化学物質と、その含有化学物質の含有重量が記述されている。化学物質は、名称で特定してもよいが、CAS.NoやNODE IDのように化学物質を特定する番号を用いてもよい。
【0029】
ここで、回収された含有化学物質が非対象化学物質であるか対象化学物質であるかは、規制物質
情報蓄積部106の規制化学物質情報を参照する。部品含有化学物質情報208には規制対象となる化学物質の情報が記憶されており、例えば、対象となる法規制がREACH規則であればSVHC(高懸念物質=対象化学物質)の情報が記憶されている。なお、
図6において非対象化学物質については、重量の記載を省略している。
【0030】
図2における集計データ作成203の処理について説明する。集計データ作成203の処理において作成される
図7の集計データは、
図6の部品含有化学物質情報208に基づいて集計データ作成手段109によって作成されたものである。また、含有化学物質が規制対象含有化学物質であるかどうかは規制物質情報蓄積部106を参照する。集計データには、
図6の調査対象となる部品について規制対象含有化学物質が無いときには規制対象含有化学物質が無いという情報及び規制対象含有化学物質があるときはその化学物質名並びに含有量が含まれる。例えば、
図6(A)の部品Bについては、規制対象化学物質がないため、
図7の集計データにおいて部品Bは規制対象化学物質は無と記述される。また、
図6(B)の部品Eについては規制対象化学物質を「対象化学物質A」と「対象化学物質B」の二種類を含有しているため、
図7の集計データにおいては、部品Eに関する情報を含有化学物質一種類ごとに2行に亘って記述している。部品Hについては、部品含有化学物質情報が回収できなかったため(
図6(A)から
図6(D)に部品Hについての情報が存在しないため)、
図7の集計データにおいては未回収部品であることを示す「不明」の表記がされる。作成された集計データは、集計データ蓄積部105に記憶する。
【0031】
次に
図2に示す重量回収率演算204について説明する。重量回収率演算204では、集計データ蓄積部105の情報を参照して重量回収率演算手段110による演算を行う。表1は、各記号の説明をする表である。重量回収率Rは、回収部品の合計重量mを総重量Mで割ったものである。回収部品とは、
図7における部品B,E,F,Gのことであり、その合計重量m=960(g)であり、総重量は、部品B,E,F,G,Hの重量の合計M=1000(g)であるので、本実施の形態においては、
重量回収率R=960/1000=0.96
である。
【0032】
次に
図2に示す閾値占有率演算205について説明する。閾値占有率演算205では、集計データ蓄積部105の情報を参照して閾値占有率演算手段111による演算を行う。この演算においては、まず前記部品集合体の総重量Mに対する回収部品中の規制対象化学物質の合計重量xとの重量比r=x/Mを求める。そして、前記規制対象化学物質の合計重量含有量が規制対象の閾値となる場合の含有率である重量含有率閾値Sに対する前記重量比rの比率である閾値占有率P=r/Sを演算する。
【0033】
図7に示すように、回収部品中の規制対象化学物質の合計重量xは、「対象化学物質A」について部品Eの0.2(g)と部品F(0.3(g)×2=)0.6(g)の合計であるので、0.8(g)である。総重量Mは1000(g)である。閾値SはREACH規制であるものとして含有率0.001であるので、1000(g)×0.001=1(g)である。従って、
閾値占有率P=r/S=(x/M)/S=x/(M×S)=0.8/(1000×0.001)=0.8
となる。
【0034】
一方、「対象化学物質B」の合計重量xは、部品Eに含まれる0.2(g)である。従って、
閾値占有率P=x/(M×S)=0.2/(1000×0.001)=0.2
となる。
【0035】
次に
図2に示す指標値Φの計算206について説明する。表1に示すように指標値Φの式は、
Φ={(1−R)/R}×{P/(1−P)}
である。
ここで、重量回収率R=0.96、対象化学物質Aについて閾値占有率P=0.8であるので、対象化学物質Aについての指標値Φは、
指標値Φ={(1−0.96)/0.96}×{0.8/(1−0.8)}=0.17
となる。指標値Φの計算は、指標値演算手段112によって行われる。
【0036】
一方、対象化学物質Bについては、重量回収率R=0.96、対象化学物質Bについての閾値占有率P=0.2であるので、
指標値Φ={(1−0.96)/0.96}×{0.2/(1−0.2)}=0.01
となる。
【0037】
次に
図2に示すリスクレベル判定207について説明する。このリスクレベル判定207は、リスクレベル判定手段113によって
図8のリスクレベルテーブルに従って行なわれる。このリスクレベルは、指標値Φを数段階のレベルに分け、リスクの度合を数値で表示するものである。この例ではこのレベルを5段階に分けた例を示している。
図8に示すように、レベル1は、「対象化学物質の含有量が閾値を超える可能性が無い」と判定した場合のリスクは極めて低いことを意味する。同様にリスクレベル2はこのリスクが低いことを意味する。同様に、リスクレベル3はリスクが高いとも低いともいえない、リスクレベル4はリスクが高い、リスクレベル5はリスクが極めて高いことを意味する。尚、
図8において、指標値Φ<0である場合には、対象化学物質の含有率が閾値を超えている状態であるためそのことを表示している。
図8に基づいてリスクレベルについて判定すると、対象化学物質Aについては、指標値Φ=0.17であるので、レベル2である。一方、対象化学物質Bについては、指標値Φ=0.01であるので、レベル1となる。
【0038】
このように、本実施の形態の評価システムによれば、判定されたレベルを参考に、調査した部品集合体が規制対象となる可能性を容易かつ確実に判断することができる。そしてユーザーは、その結果を参考にして部品集合体をどう扱うか方針を立てることができる。例えば、レベル3,4,5の場合(又はレベル4,5)は、その部品集合体を規制対象であると扱って、例えばREACH規則に規定されたSVHCを規定以上含む旨の届出をする。また、例えばレベル1,2(又はレベル1,2,3)の場合は、その部品集合体を規制対象でないと扱う。あるいはレベル2,3,4の場合は、部品集合体を規制対象となるともならないともいえないと判断し、別途調査を行ったりするなどの行動をとることができる。このため、リスクの可能性が少ないものについて判断できれば対応が迅速に行なえる。
【0039】
図9は、
図2に示すリスクレベル判定207によってレベルが判定された結果をディスプレイなどの表示手段114により表示(209)した場合の表示の一例を示す図である。結果表示は、調査対象の部品集合体である製品Aのリスクレベルをユーザーに伝達できればよく、この表示例ではユーザーが一目で判断できるようにレベルを◎等の記号で表現しているが、数字やアルファベットなどの別の記号でもよいとともに、リスクレベルに応じて色彩を変える方法や、反転表示する方法など文字以外の方法で表現してもよい。また、表示に伴ってリスクレベルに応じた音声を出力してユーザーに注意を促すようにしてもよい。また、表示手段には、ディスプレイの他、ネットワーク上に接続されたネットワーク端末の表示画面やプリンターなどの印刷装置なども含まれる。
【0040】
次に本発明の他の実施の形態を
図11ないし
図15により、集計データが前記の実施の形態と同じ
図3〜
図7のデータである場合について説明する。前述の実施の形態にかかわる含有化学物質の評価システムと名称及び機能が同等のものについては同じ符号を用いる。この実施の形態においては、重量回収率Rと閾値占有率Pに加えて、図番回収率Nを演算する。図番回収率Nは、調査対象である部品集合体において含有化学物質の調査を要する部品の個数nに対する実際に含有化学物質の情報を回収できた部品の個数n1の割合(=n1/n)である。このような図番回収率Nを含めて、指標値Φを下記の式から求める。
指標値Φ={(1−N)/N}
1/2×{(1−R)/R}
1/2×{P/(1−P)}
【0041】
図10は、本実施の形態の含有化学物質評価システムのブロック図であり、処理部102に図番回収率Nを演算する図番回収率演算手段115を有する。
【0042】
図11は、本実施の形態の含有化学物質評価システムの処理を説明するフローチャートである。この
図11のフローチャートは、前述のフローチャートと同様に部品構成情報把握処理201、集計データ作成処理203、重量回収率演算処理204、及び閾値占有率演算処理205を行うことに加えて図番回収率演算210を行った後に指標値Φ演算処理206、リスクレベル判定207を行ない、表示209を行う。重量回収率演算処理204、及び閾値占有率演算処理205及び図番回収率演算210の順序は、変更してもよいし、同時に処理してもよい。
【0043】
図番回収率演算処理210は、図番回収率演算手段115によって集計データ蓄積部105に記憶されている
図7の集計データを参照して行なう。ここで、
図7の集計データを参照すると、含有化学物質の情報を回収できた部品は、部品B,E,F,Gの4個であるので、回収部品数n1=4である。また、部品集合体の調査を行う部品は部品B,E,F,G,Hの5個であるので、部品集合体の調査を行う部品数n=5である。よって
図番回収率N=4/5=0.8
である。
【0044】
また、重量回収率R=0.96、対象化学物質Aについて閾値占有率P=0.8、対象化学物質Bについて閾値占有率P=0.2であるので、対象化学物質Aに関する指標値Φは、
指標値Φ={(1−N)/N}
1/2×{(1−R)/R}
1/2×{P/(1−P)}
={(1−0.8)/0.8}
1/2×{(1−0.96)/0.96}
1/2×{0.8/(1−0.8)}
=0.41
対象化学物質Bに関する指標値Φは、
指標値Φ={(1−0.8)/0.8}
1/2×{(1−0.96)/0.96}
1/2×{0.2/(1−0.2)}
=0.03
となる。
【0045】
この実施の形態においては、リスクレベル判定処理207は、リスクレベル判定手段113によって
図12のリスクレベルテーブルに従って行い、指標値Φに応じて対応するリスクレベルを判定する。対象化学物質Aに関する指標値Φは0.41であったので、対象化学物質Aについてのリスクレベルはレベル2となる。一方、対象化学物質Bに関する指標値Φは0.03であったので、対象化学物質Bについてのリスクレベルはレベル1となる。
【0046】
図13に本実施の形態における含有化学物質評価システムの結果表示であって、表示手段114によって表示される表示内容の一例を示す。
【0047】
また、
図14は前記のように図番回収率N=80%において、指標値Φを種々に変化させた場合(Φ=0.2,0.5,1.0,2.0)における重量回収率R(横軸)の変化に対する閾値占有率P(縦軸)の変化を示す図である。各指標値Φで描かれる曲線で仕切られる領域は、それぞれ、レベル1〜5に分けられる。すなわち、指標値Φ=0.2未満がリスクレベル1、指標値Φ=0.2以上、0.5未満がリスクレベル2、指標値Φ=0.5以上、1.0未満がリスクレベル3、指標値Φ=1.0以上、2.0未満がリスクレベル4、指標値Φ=2.0以上がリスクレベル5である。前記の
図7ように部品含有化学物質が回収された場合における対象化学物質A、Bは、
図14の点A,Bでそれぞれ表示される。すなわち、対象化学物質Aは、重量回収率Rは0.96で閾値占有率Pは0.8であり、レベル2の領域にプロットされ、対象化学物質Bについては、重量回収率Rは0.96で閾値占有率Pは0.2であり、レベル1の領域にプロットされる。
【0048】
このような表示は少なくとも部品集合体のリスクレベルをユーザーに提示できればよいので、この表示形式に限らず、変更してもよい。ここで、図番回収率、重量回収率、及び閾値占有率の表示は必須ではないが、同時に表示すれば回収状況の進捗も同時に把握できるため、よりユーザーにとってはわかりやすくなる。このようにグラフで視覚的に表現することで、より評価の状況をイメージが湧きやすいようにわかりやすく表現することができる。
【0049】
本実施の形態は、図番回収率と重量回収率の両方を加味してリスクレベルを評価するため、より多くの視点でリスクを評価することができる。また、指標値Φの式は、図番回収率に関する項と重量回収率に関する項の幾何平均をとっていることから、一方の値が突出していても指標値Φが極端な値をとりにくくなり、より確度の高いリスク判定が行なえる。
【0050】
次に本発明のさらに他の実施の形態を
図15、
図16により説明する。この実施の形態は、重量回収率Rと、閾値占有率Pと、図番回収率N以外に、回収した部品のうち、規制対象化学物質を含む部品数Lを求め、この数Lを加味して指標値Φを下記の式から求めるものである。
指標値Φ={(1−N)/N}
1/2×{(1−R)/R}
1/2×{P/(1−P)}×{1+(1/L)
1/2}
【0051】
上記の式において、指標値Φの「{1+(1/L)
1/2}」の項は、補正項として働き、規制対象含有化学物質を含む回収部品数が少ないほどリスクを高く評価することとなる。
【0052】
図15は、本実施の形態の含有化学物質評価システムのブロック図であり、処理部102には、回収した部品のうち規制対象の化学物質が含まれている部品の数Lを演算する演算手段である規制対象化学物質回収部品数カウント手段116を有する。
【0053】
図16は、本実施の形態の含有化学物質評価システムの操作、動作を説明するフローチャートである。本実施の形態は、前記実施の形態と同様に部品構成情報把握処理201、集計データ作成処理203、重量回収率演算処理204、閾値占有率演算処理205及び図番回収率演算210を行うことに加えて、規制対象化学物質を含む部品のうち、回収された部品のカウント処理211を行なう。そしてこの部品数Lをカウントした後に指標値Φの演算処理206を行ない、リスクレベル判定処理207を行い、表示
209を行う。
【0054】
図7の集計データを例にとると、規制対象化学物質A又はBが含まれている部品は、部品E,Fの2個であるので、規制対象化学物質回収部品数Lは2である。
【0055】
図7の集計データの例の場合、対象化学物質Aについて指標値Φは、
指標値Φ={(1−N)/N}
1/2×{(1−R)/R}
1/2×{P/(1−P)}×{1+(1/L)
1/2}
={(1−0.8)/0.8}
1/2×{(1−0.96)/0.96}
1/2×{0.8/(1−0.8)}×{1+(1/2)
1/2}
=0.70
一方、対象化学物質Bについて指標値Φは、
指標値Φ={(1−N)/N}
1/2×{(1−R)/R}
1/2×{P/(1−P)}×{1+(1/L)
1/2}
={(1−0.8)/0.8}
1/2×{(1−0.96)/0.96}
1/2×{0.2/(1−0.2)}×{1+(1/2)
1/2}
=0.04
である。
【0056】
この実施の形態においては、リスクレベル判定処理207はリスクレベル判定手段113により
図12のリスクレベルテーブルに従って行い、指標値Φに応じて対応するリスクレベルを判定する。対象化学物質Aに関する指標値Φは0.70であったので、対象化学物質Aについてのリスクレベルはレベル3となる。一方、対象化学物質Bに関する指標値Φは0.04であったので、対象化学物質Bについてのリスクレベルはレベル1となる。このレベル判定の結果は、
図17の形式で表示することができる。また、
図14のようにグラフ中にリスクレベルを表示してもよい。ここで、図番回収率、重量回収率、及び閾値占有率の表示は必須ではないが、同時に表示すれば回収状況の進捗も同時に把握できるため、よりユーザーにとってはわかりやすくなる。
【0057】
本実施の形態によれば、規制対象化学物質を含む
回収部品数Lの少ないときにはよりリスクが高くなる傾向を反映することが可能となり、部品集合体が規制対象であるかの判断の確度をさらに高めることが可能になる。
【0058】
本発明はREACH規則以外に含有率が問題となる含有化学物質規制に適用することができる。また、リスクベル(5段階)とΦの値との関係は、
図8や
図12に限定されるものではなく、対象とする製品、機種、アッセン部品、部品等により、適宜、数値を選定することができる。その他、本発明を実施する場合、上記発明の実施の形態に限らず本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更、付加が可能である。
【表1】