(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
トナー粒子とキャリア液を含有する液体現像剤であって、トナー粒子が、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物を60モル%以上含有するアルコール成分とフマル酸を10〜60モル%含有するカルボン酸成分とを縮重合させて得られる縮重合系樹脂成分と、スチレン系樹脂成分とを含む複合樹脂を含有してなり、該複合樹脂中の縮重合系樹脂成分のスチレン系樹脂成分に対する重量比が30/70〜95/5である、結着樹脂を含有してなる、液体現像剤。
カルボン酸成分が、炭素数1〜20のアルキル基で置換されたアルキルコハク酸及び炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたアルケニルコハク酸から選ばれた少なくとも1種のコハク酸化合物を5〜35モル%含有してなる、請求項1記載の液体現像剤。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明者らは、ポリエステルを結着樹脂とするトナー粒子を含む液体現像剤の低温定着性の低下について検討した結果、ポリエステルとキャリア液の親和性の低さに原因があるものと推測した。
そこで、ポリエステルをより疎水性にし、キャリア液との親和性が比較的高いスチレン系樹脂をポリエステル中に微分散させた樹脂を検討したところ、かかる課題が大幅に改良できることを見いだし、本発明を完成するに到った。ポリエステルに疎水性を与えるために長鎖アルキルモノマー導入による改良も同時に試みたが、単純にポリエステルを疎水化したのみではそれ程効果が確認できず、スチレン系樹脂と複合化した樹脂に限り大幅な改良を確認することができた。本発明の作用機構の詳細は必ずしも解明されたわけではないが、本発明の結着樹脂を用いたトナー粒子とキャリア液との親和性が高く、1層目のトナー粒子と2層目のトナー粒子の間に存在するキャリア液を介して反発が少なくなり、トナー粒子同士の吸着が促進されたものと考えられる。一方、トナー粒子とキャリアの親和性が強すぎる場合には、1層目のトナー粒子と2層目のトナー粒子の間に存在するキャリア液を介して、2種のトナーが紙上で混じり合ってしまい、にじみ等により発色性の低下を起こしてしまうことが考えられる。従って、本発明の結着樹脂に選択されるモノマーの組み合わせ、その比率等の条件がトナー粒子とキャリア液との親和性において、適度なバランスとすることができたものと推測される。その結果、2層目の層間剥離が生じず、低温定着性及び発色性が優れる液体現像剤が得られる。なお、以上、2色の例として示したがこれに限定されるものではなく、さらに混色の多層であっても同様の効果を示すことは云うまでもない。なお、本発明の液体現像剤は湿式現像剤ともいう。
【0014】
結着樹脂は、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物を含有するアルコール成分とフマル酸を含有するカルボン酸成分とを縮重合させて得られる縮重合系樹脂成分と、スチレン系樹脂成分とを含む複合樹脂を含有するものである。ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物を使用すると、キャリア液との親和性が上がるため混色(多層)の低温定着性が上がる。また、フマル酸を使用することにより単層の低温定着性が向上する。一般的に紙を構成するセルロースの水酸基とポリエステルが有するカルボキシル基との間の相互作用が強いことが知られているが、樹脂中に特定量のフマル酸を含有することにより、複合樹脂としたときの分子構造やフマル酸由来のカルボキシル基により、セルロースの水酸基との相互作用がより強くなるため単層の低温定着性が上がったものと推測される。
【0015】
ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物は、式(I):
【0017】
(式中、RO及びORはオキシプロピレン基であり、x及びyはプロピレンオキサイドの付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の平均値は1〜8である)
で表される化合物が好ましい。
【0018】
ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物の含有量は、トナーの多層の低温定着性及び発色性の向上の観点から、アルコール成分中、60モル%以上であり、好ましくは70モル%以上、より好ましくは95〜100モル%である。
【0019】
ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物以外のアルコール成分としては、脂肪族ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等のビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族ジオール等が挙げられるが、本発明では、トナーの多層の低温定着性及び発色性の向上の観点から、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物以外のビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が好ましい。ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物を含むビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の総含有量は、アルコール成分中、80モル%以上が好ましく、95モル%以上がより好ましい。
【0020】
本発明において、アルコール成分は、3価以上の多価アルコール、好ましくはグリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、より好ましくはグリセリンを含有していてもよい。3価以上の多価アルコールの含有量は、トナーの単層、多層の低温定着性、高温高湿下での帯電安定性と耐熱保存性の観点から、アルコール成分中、10モル%以下が好ましく、5モル%以下がより好ましく、0〜3モル%がさらに好ましい。
【0021】
カルボン酸成分中のフマル酸の含有量は、耐熱保存性の向上の観点から、縮重合系樹脂のカルボン酸成分中(後述する両反応性モノマーを含まない)、60モル%以下であり、好ましくは55モル%以下、より好ましくは53モル%以下であり、トナーの単層、多層の低温定着性及び発色性の向上の観点から、10モル%以上である。従って、フマル酸の含有量は、耐熱保存性の向上の観点、トナーの単層、多層の低温定着性及び発色性の向上の観点から、縮重合系樹脂のカルボン酸成分中(後述する両反応性モノマーを含まない)、10〜60モル%であり、好ましくは10〜55モル%、より好ましくは10〜53モル%である。
【0022】
カルボン酸成分は、さらに、アルキル基で置換されたアルキルコハク酸及びアルケニル基で置換されたアルケニルコハク酸から選ばれた少なくとも1種のコハク酸化合物を含有していることが好ましい。コハク酸化合物を用いると、キャリア液との親和性が増すため多層の低温定着性及び発色性が向上し、且つ熱により側鎖の運動性が向上しやすいため単層の低温定着性も上がる。
【0023】
アルキルコハク酸のアルキル基の炭素数は、1〜20が好ましく、5〜16がより好ましく、9〜14がさらに好ましく、アルキルコハク酸としては、具体的には、ドデシルコハク酸等が挙げられる。
【0024】
アルケニルコハク酸のアルケニル基の炭素数は、2〜20が好ましく、5〜16がより好ましく、9〜14がさらに好ましく、アルケニルコハク酸としては、具体的には、ドデセニルコハク酸等が挙げられる。
【0025】
コハク酸化合物の含有量は、反応性向上の観点から、縮重合系樹脂のカルボン酸成分中(後述する両反応性モノマーを含まない)、好ましくは35モル%以下、より好ましくは30モル%以下、さらに好ましくは25モル%以下であり、単層、多層の低温定着性及び発色性の向上の観点から、5モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましい。従って、コハク酸化合物の含有量は、反応性向上の観点、単層、多層の低温定着性及び発色性の向上の観点から、縮重合系樹脂のカルボン酸成分中(後述する両反応性モノマーを含まない)、5〜35モル%が好ましく、10〜30モル%がより好ましく、10〜25モル%がさらに好ましい。
【0026】
フマル酸及びコハク酸化合物以外のカルボン酸成分としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、ロジン、フマル酸、マレイン酸又はアクリル酸等で変性されたロジン、これらの酸無水物、アルキル(炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜3)エステル等が挙げられるが、本発明では、トナーの耐熱保存性の観点から、芳香族ジカルボン酸化合物が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。なお、カルボン酸化合物とは、特に記載のない限り、カルボン酸、カルボン酸のエステル、カルボン酸の無水物から選ばれた少なくとも1種の化合物をいう。
【0027】
芳香族ジカルボン酸化合物の含有量は、トナーの耐熱保存性、単層、多層の低温定着性、及び発色性の向上の観点から、フマル酸及びコハク酸化合物以外のカルボン酸成分中(後述する両反応性モノマーを含まない)、好ましくは10〜75モル%、より好ましくは30〜70モル%、さらに好ましくは50〜55モル%である。また、芳香族ジカルボン酸化合物の含有量は、トナーの耐熱保存性、単層、多層の低温定着性、及び発色性の向上の観点から、縮重合系樹脂のカルボン酸成分中(後述する両反応性モノマーを含まない)、5〜35モル%が好ましく、10〜30モル%がより好ましく、10〜25モル%がさらに好ましい。
【0028】
本発明において、カルボン酸成分は、樹脂の分子量を上げ、トナーの単層、多層の低温定着性、高温高湿下での帯電安定性と耐熱保存性を高める観点から、3価以上の多価カルボン酸化合物、好ましくはトリメリット酸化合物、より好ましくは無水トリメリット酸を含有していることが望ましい。3価以上の多価カルボン酸化合物の含有量は、縮重合系樹脂のカルボン酸成分中(後述する両反応性モノマーを含まない)、0.1〜30モル%が好ましく、1〜28モル%がより好ましく、5〜25モル%がさらに好ましく、10〜25モル%がさらにより好ましく、15〜20モル%がさらにより好ましい。
【0029】
なお、アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸化合物が、分子量の調整や耐オフセット性向上の観点から、適宜含有されていてもよい。
【0030】
カルボン酸成分(後述する両反応性モノマーを含まない)とアルコール成分のモル比(カルボン酸成分/アルコール成分)は、反応性及び分子量調整の観点から、0.70〜1.5が好ましく、0.75〜1.2がより好ましく、0.8〜1.0がより好ましい。
【0031】
アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合反応は、不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じて、エステル化触媒、エステル化助触媒、重合禁止剤等の存在下、180〜250℃程度の温度で縮重合させて製造することができる。エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等の錫化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられ、エステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。エステル化触媒の使用量は、反応性向上及び経済性の観点から、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100重量部に対して、0.01〜1.5重量部が好ましく、0.1〜10重量部がより好ましい。エステル化助触媒の使用量は、反応性向上及び経済性の観点から、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100重量部に対して、0.001〜0.5重量部が好ましく、0.01〜0.1重量部がより好ましい。
【0032】
縮重合系樹脂としては、トナーの単層、多層の低温定着性の観点から、ポリエステル、ポリエステル・ポリアミド等が挙げられるが、トナーの耐久性及び帯電安定性の観点からは、ポリエステルが好ましい。
【0033】
アミド成分を形成するための原料モノマーとしては、公知の各種ポリアミン、アミノカルボン酸類、アミノアルコール等が挙げられる。
【0034】
なお、ポリエステルは、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステルであってもよい。変性されたポリエステルとしては、例えば、特開平11−133668号公報、特開平10−239903号公報、特開平8−20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステルをいう。
【0035】
一方、スチレン系樹脂の原料モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン化合物が好ましい。
【0036】
スチレン化合物の含有量は、多層の低温定着性及び発色性の向上の観点から、スチレン系樹脂の原料モノマー中、50重量%以上が好ましく、70重量%以上がより好ましく、80重量%以上がさらに好ましい。
【0037】
スチレン化合物以外に用いられ得るスチレン系樹脂の原料モノマーとしては、エチレン、プロピレン等のエチレン性不飽和モノオレフィン類;ブタジエン等のジオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等のエチレン性モノカルボン酸のエステル;ビニルメチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のビニリデンハロゲン化物;N-ビニルピロリドン等のN-ビニル化合物類等が挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及び/またはメタクリル酸を意味する。
【0038】
これらの中では、トナーの単層、多層の低温定着性と耐熱保存性を高める観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数は、上記の観点から、1〜22が好ましく、8〜18がより好ましい。なお、該アルキルエステルの炭素数は、エステルを構成するアルコール成分由来の炭素数を言う。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられ、トナーの単層、多層の低温定着性、発色性の向上及び耐熱保存性を高める観点から、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。「(イソ又はターシャリー)」、「(イソ)」は、これらの基が存在している場合とそうでない場合の双方を含むことを意味し、これらの基が存在していない場合には、ノルマルであることを示す。また、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの双方の場合を含むことを示す。
【0039】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、多層の低温定着性及び発色性の向上の観点から、スチレン系樹脂の原料モノマー中、50重量%以下が好ましく、30重量%以下がより好ましく、20重量%以下がさらに好ましい。
【0040】
なお、スチレン化合物と(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを含む原料モノマーを付加重合させて得られる樹脂をスチレン−(メタ)アクリル樹脂ともいう。
【0041】
スチレン系樹脂の原料モノマーの付加重合反応は、例えば、重合開始剤、架橋剤等の存在下、有機溶媒存在下又は無溶媒下で、常法により行うことができるが、温度条件は、110〜200℃が好ましく、140〜170℃がより好ましい。
【0042】
付加重合反応の際に用いられる有機溶媒としては、キシレン、トルエン、メチルエチルケトン、アセトン等が挙げられる。有機溶媒の使用量は、スチレン系樹脂の原料モノマー100重量部に対して、10〜50重量部程度が好ましい。
【0043】
結着樹脂は、縮重合系樹脂の原料モノマー及びスチレン系樹脂の原料モノマーを重合させることにより得られる複合樹脂を含む。かかる複合樹脂は、例えば、縮重合系樹脂の原料モノマーによる縮重合反応とスチレン系樹脂の原料モノマーによる付加重合反応とを並行して、又は順次、同一反応容器中で行うことにより得ることができる。縮重合反応と付加重合反応の進行及び完結は、時間的に同時である必要はなく、それぞれの反応機構に応じて反応温度及び時間を適当に選択し、反応を進行、完結させればよい。
【0044】
さらに、本発明において、縮重合系樹脂とスチレン系樹脂とを含有する複合樹脂は、トナーの単層、多層の低温定着性、高温高湿下での帯電安定性と耐熱保存性を高める観点から、縮重合系樹脂の原料モノマーとスチレン系樹脂の原料モノマーに加えて、それらのいずれとも反応し得る化合物(両反応性モノマー)を用いて得られるハイブリッド樹脂であることが好ましい。従って、縮重合系樹脂の原料モノマー及びスチレン系樹脂の原料モノマーを重合させて複合樹脂を得る際に、縮重合反応と付加重合反応は、両反応性モノマーの存在下で行うことが好ましい。これにより、複合樹脂は、縮重合系樹脂とスチレン系樹脂とが部分的に両反応性モノマーを介して結合したハイブリッド樹脂となり、縮重合系樹脂成分中にスチレン系樹脂成分がより微細に、かつ均一に分散したものとなる。
【0045】
両反応性モノマーとしては、分子内に、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基、好ましくは水酸基及び/又はカルボキシル基、より好ましくはカルボキシル基と、エチレン性不飽和結合とを有する化合物が好ましく、このような両反応性モノマーを用いることにより、分散相となる樹脂の分散性をより一層向上させることができる。両反応性モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸及び無水マレイン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましいが、反応性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸及びフマル酸がより好ましく、アクリル酸及びフマル酸がより好ましい。
【0046】
両反応性モノマーの使用量は、スチレン系樹脂成分と縮重合系樹脂成分との分散性を高め、トナーの単層、多層の低温定着性及び発色性を向上させる観点、トナーの画像濃度ムラを抑制する観点から、スチレン系樹脂の原料モノマーの合計100重量部に対して、2〜30重量部が好ましく、3〜20重量部がより好ましく、4〜10重量部がさらに好ましく、4〜6重量部がよりさらに好ましい。なお、重合開始剤を使用する場合、重合開始剤は反応後もスチレン系樹脂成分中に残留するため、スチレン系樹脂の原料モノマーの合計には、重合開始剤の重量も含めるものとする。
【0047】
複合樹脂の具体的な製造方法としては、
(i) 縮重合反応を行う工程(A)の後に、付加重合反応を行う工程(B)を行う方法、
(ii) 縮重合反応を行う工程(A)の後に、付加重合反応を行う工程(B)を行い、工程(B)の後に、再度反応温度を上昇させ、必要に応じて架橋剤となる3価以上の縮重合系樹脂の原料モノマーを重合系に添加し、工程(A)の縮重合反応をさらに進める方法、
(iii) 付加重合反応に適した温度条件下で、縮重合反応を行う工程(A)と付加重合反応を行う工程(B)とを並行して行い、反応温度を前記条件下で保持して工程(B)を完結させた後、反応温度を上昇させ、必要に応じて架橋剤となる3価以上の縮重合系樹脂の原料モノマーを重合系に添加し、工程(A)の縮重合反応をさらに進める方法
等が挙げられる。(i)、(ii)の方法において、縮重合反応を行う工程(A)の代わりに、予め重合した縮重合系樹脂を用いてもよい。(iii)の方法において、工程(A)と工程(B)を並行して行う際には、縮重合系樹脂の原料モノマーを含有した混合物中に、スチレン系樹脂の原料モノマーを含有した混合物を滴下して反応させることもできる。この中でも、生産性の観点から、(iii)の方法が好ましい。
【0048】
また、複合樹脂が両反応性モノマーを用いて得られるハイブリッド樹脂である場合、両反応性モノマーは、反応性の観点から、縮重合系樹脂の原料モノマーとともに用いることが好ましい。
【0049】
本発明においては、縮重合系樹脂成分のスチレン系樹脂成分に対する重量比(縮重合系樹脂成分/スチレン系樹脂成分)は、連続相が縮重合系樹脂であり、分散相がスチレン系樹脂であることが好ましいこと、また、トナーの単層、多層の低温定着性及び発色性を向上する観点から、30/70〜95/5であり、好ましくは55/45〜92/8、より好ましくは60/40〜90/10、さらに好ましくは70/30〜85/15である。なお、縮重合系樹脂成分の重量は、用いられる縮重合系樹脂の原料モノマーの重量から、縮重合反応により脱水される反応水の量(計算値)を除いた量であり、両反応性モノマーの量も縮重合系樹脂の原料モノマーの重量に含める。また、スチレン系樹脂成分の重量は、用いられるスチレン系樹脂の原料モノマー(重合開始剤含む)の総量とする。
【0050】
前記複合樹脂の軟化点は、トナーの単層、多層の低温定着性、発色性の向上及び耐熱保存性の向上の観点から、80〜120℃が好ましく、82〜115℃がより好ましく、85〜110℃がさらに好ましく、85〜105℃がさらにより好ましい。複合樹脂の軟化点は、縮重合の反応温度を高めたり、反応時間を長くすることで高めることができる。
【0051】
本発明において、前記複合樹脂は、トナーの単層、多層の低温定着性、発色性の向上及び耐熱保存性の向上の観点から、非晶質樹脂であることが好ましい。樹脂の結晶性は、軟化点と示差走査熱量計(DSC)による吸熱の最高ピーク温度との比、即ち、「軟化点/吸熱の最高ピーク温度」で定義される結晶性指数によって表される。一般に、この結晶性指数が1.4を超えると樹脂は非晶質であり、0.6未満では結晶性が低く非晶質部分が多い。本発明において、「非晶質」の樹脂とは、結晶性指数が1.4を超えるか、0.6未満の樹脂をいう。
【0052】
「吸熱の最高ピーク温度」とは、実施例に記載する測定方法の条件下で観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度のことを指す。最高ピーク温度が軟化点と20℃以内の差であれば、最高ピーク温度を結晶性樹脂の融点とし、軟化点との差が20℃を超えるピークは非晶質ポリエステルのガラス転移に起因するピークとする。
【0053】
前記複合樹脂のガラス転移温度は、トナーの単層、多層の低温定着性、発色性の向上及び耐熱保存性の向上の観点から、45〜65℃が好ましく、48〜63℃がより好ましく、複合樹脂のガラス転移温度は、アルコール成分中、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量を多くしたり、アルキレンオキサイド付加物の全量中におけるプロピレンオキサイド基のモル比を大きくすることで、高めることができる。
【0054】
前記複合樹脂の数平均分子量は、トナーの単層、多層の低温定着性、発色性の向上及び耐熱保存性の向上の観点から、1500〜4000が好ましく、2000〜3800がより好ましく、2200〜3500がさらに好ましい。
【0055】
前記複合樹脂の重量平均分子量は、トナーの単層、多層の低温定着性、発色性の向上及び耐熱保存性の向上の観点から、8000〜35000が好ましく、9000〜30000がより好ましく、9500〜28000がさらに好ましい。
【0056】
複合樹脂の数平均分子量や重量平均分子量は、カルボン酸成分中、3価以上の多価カルボン酸化合物の含有量を多くする等の方法によりカルボキシル基の総モル数/ヒドロキシ基の総モル数の比を高くしたり、エステル反応の反応時間を短くすることで、低くすることができる。
【0057】
前記複合樹脂の酸価は、トナーの単層、多層の低温定着性、発色性の向上及び耐熱保存性の向上の観点から、10〜40mgKOH/gが好ましく、15〜35mgKOH/gがより好ましく、18〜30mgKOH/gがさらに好ましい。複合樹脂の酸価は、原料モノマーにおけるカルボキシル基の総モル数/ヒドロキシ基の総モル数の比を高くすることで高くできる。
【0058】
結着樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、公知の結着樹脂、例えば、ポリエステル、スチレン-アクリル樹脂等のビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等の他の樹脂が併用されていてもよいが、前記複合樹脂の含有量は、結着樹脂中、70重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましく、90重量%以上がさらに好ましく、実質的に100重量%であることがさらに好ましい。
【0059】
本発明の結着樹脂を用いて、低温定着性に優れた液体現像剤用トナー粒子が得られる。
【0060】
本発明のトナー粒子には、さらに、着色剤、離型剤、荷電制御剤、荷電制御樹脂、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、体質顔料、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が適宜含有されていてもよい。
【0061】
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、ジスアゾエロー等が用いることができ、本発明のトナーは、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。着色剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、1〜40重量部が好ましい。
【0062】
荷電制御剤としては、特に限定されないが、負帯電性荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、例えば「ボントロンS-28」(オリエント化学工業社製)、「T-77」(保土谷化学工業社製)、「ボントロンS-34」(オリエント化学工業社製)、「アイゼンスピロンブラックTRH」(保土谷化学工業社製)等;銅フタロシアニン染料;サリチル酸のアルキル誘導体の金属錯体、例えば「ボントロンE-81」、「ボントロンE-84」、「ボントロンE-304」(以上、オリエント化学工業社製)等;ニトロイミダゾール誘導体;ベンジル酸ホウ素錯体、例えば、「LR-147」(日本カーリット社製)等;無金属系荷電調整剤、例えば「ボントロンF-21」、「ボントロンE-89」(以上、オリエント化学工業社製)、「T-8」(保土ヶ谷化学工業社製)、「FCA-2521NJ」、「FCA-2508N」(以上、藤倉化成社製)等が挙げられる。
【0063】
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ボントロンN-01」、「ボントロンN-04」、「ボントロンN-07」(以上、オリエント化学工業社製)、「CHUO CCA-3」(中央合成社製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料;4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンP-51」(オリエント化学工業社製)、「TP-415」(保土谷化学工業社製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPYCHARGEPXVP435」(ヘキスト社製)等が挙げられる。
【0064】
荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、0.1〜8重量部が好ましく、0.5〜7重量部がより好ましい。
【0065】
本発明のトナー粒子は、溶融混練法、乳化転相法、重合法等の従来より公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよいが、生産性や着色剤の分散性の観点から、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。溶融混練法による粉砕トナーの場合、例えば、結着樹脂、着色剤、荷電制御剤等の原料をヘンシェルミキサー等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等で溶融混練し、冷却、粉砕し、5〜20μm程度の体積中位粒径(D
50)に分級することが好ましい。分級した後、湿式粉砕により、下記粒径程度にまで小粒径化することで本発明のトナー粒子が得られる。
【0066】
溶融混練、粉砕し分級した後のトナー粒子の体積中位粒径(D
50)は、5〜15μmが好ましく、印刷後の画像品質向上の観点から、5〜12μmがより好ましく、6〜10μmがさらに好ましい。なお、本明細書において、体積中位粒径(D
50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。
【0067】
湿式粉砕後の本発明のトナー粒子の体積中位粒径(D
50)は、0.1〜3.0μmが好ましく、印刷後の画像品質向上の観点から、0.2〜2.8μmがより好ましく、0.5〜2.6μmがさらに好ましい。
【0068】
本発明の液体現像剤は、本発明のトナー粒子を、適宜分散剤等を用いてキャリア液中に分散させたものである。
【0069】
本発明の液体現像剤中、トナー粒子とキャリア液の重量比(トナー粒子/キャリア液)は、印刷後の画像品質向上の観点から、10/90〜70/30が好ましく、15/85〜55/45がより好ましく、30/70〜50/50重量%がさらに好ましい。分散剤の含有量は、同様の観点から、液体現像剤中、0.3〜10重量%が好ましく、0.5〜5重量%がより好ましい。
【0070】
本発明の液体現像剤に用いるキャリア液は、親油性を有し、化学的に安定して絶縁性を有するものが好ましい。さらに、キャリア液は、画像形成装置中で使用される物質又は装置、特に感光体等の現像プロセス周辺部の部材に対して化学的に不活性である必要がある。
【0071】
キャリア液は、キャリア液の安定性の観点から、カウリブタノール数値(KB値:ASTM D 1133)が30以下、より好ましくは22〜30であるものを使用することが好ましい。
【0072】
キャリア液のアニリン点(JIS K 2256)は、キャリア液の安定性の観点から、60〜95℃であることが好ましく、より好ましくは70〜90℃である。
【0073】
キャリア液の絶縁性は誘電定数と電機抵抗率を指標とすることができる。誘電定数は、5以下が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜3がさらに好ましい。また、電気抵抗率は、10
9Ω・cm以上が好ましく、10
10Ω・cm以上がより好ましく、10
10〜10
16Ω・cmがさらに好ましい。ここで電気抵抗率は、川口電機製作所社製のユニバーサルエレクトロメーターMMA-II-17Dと液体用電極LP-05とを組み合わせて測定することができる。
【0074】
キャリア液の15℃における密度(JIS K 2249)は、トナー粒子と分散剤の安定性の観点から、0.67〜0.9g/cm
3が好ましく、0.70〜0.85g/cm
3がより好ましい。
【0075】
キャリア液の動粘度(ASTM D445)は、現象時に帯電粒子を移動させることができ、また揮発性を十分有し、最終的な画像が形成された媒体から乾燥工程で容易に除去することができる観点から、1〜8が好ましい。
【0076】
キャリア液の蒸留範囲における乾点は、現像剤の常温での乾燥を防止し、かつキャリア液の除去を容易にし、単層、多層の低温定着性を向上させる観点から、160〜320℃が好ましく、170〜250℃がより好ましい。ここで、蒸留範囲における乾点は、ASTM D86によって規定される方法により測定されるものである。
【0077】
本発明において好適なキャリア液としては、分枝状パラフィン溶媒混合物(好ましくはイソパラフィン系炭化水素)、直鎖状パラフィン溶媒混合物、ナフテン系炭化水素等が挙げられ、市販品としては、例えば、表1に示すものが挙げられる。
【0079】
分散剤は、トナー粒子の凝集を抑制する観点及び液体現像剤の粘度を下げる観点から用いられ、金属石鹸、高分子分散剤等が挙げられる。
【0080】
高分子分散剤としては、吸着基として、アミノ基、ピロリドン、イミン、ポリイミン、カルボキシル基、スルホニル基、ヒドロキシル基、カルボニル基、エーテル基、エポキシ基、エステル基、アミド基、又はそれらの塩等を含み、分散基として、炭化水素鎖、ヒドロキシ炭化水素鎖、ポリエステル鎖、ポリアミド鎖等を有するものが挙げられる。分散剤の構造としては、櫛型、ペンダント型、シングル型等が挙げられ、これらの中でも、櫛型が好ましい。
【0081】
トナー粒子をキャリア液中に分散させる湿式粉砕の方法としては、例えば、サンドグラインダー、ボールミル、ペイントシェーカー等を用いて、ガラスビーズ等の存在下での湿式粉砕する方法等が挙げられる。
【0082】
本発明の液体現像剤は、複数層を重ねて定着させる場合にも、良好な低温定着性を有し、層の剥離もないため、定着方式に係らず同等の発色性を維持することができる。従って、本発明の液体現像剤は、フルカラー画像の形成にも好適に用いることができる。
【0083】
本発明の液体現像剤は、オーブン定着、フラッシュ定着、ベルトニップ方式等の非接触定着方式、ロール定着、ベルト定着、フィルム定着の接触定着方式のいずれの定着方式の画像形成装置にも用いることができる。
【実施例】
【0084】
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター(島津製作所、CFT-500D)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
【0085】
〔樹脂の吸熱の最高ピーク温度〕
示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、Q-100)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、室温から降温速度10℃/分で0℃まで冷却しそのまま1分間静止させた。その後、昇温速度50℃/分で測定した。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を吸熱の最高ピーク温度とした。
【0086】
〔樹脂のガラス転移温度〕
示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、Q-100)を用いて、試料を0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却し、昇温速度10℃/分で昇温する。吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
【0087】
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070の方法に基づき測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更した。
【0088】
〔樹脂の数平均分子量及び重量平均分子量〕
以下の方法により、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により分子量分布を測定し、数平均分子量及び重量平均分子量を求める。
(1) 試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mlになるように、トナーをテトラヒドロフランに、溶解させる。次いで、この溶液をポアサイズ2μmのフッ素樹脂フィルター(住友電気工業(株)製、FP-200)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とする。
(2) 分子量測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液としてテトラヒドロフランを、毎分1mlの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させる。そこに試料溶液100μlを注入して測定を行う。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出する。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー社製のA-500(5.0×10
2)、A-1000(1.01×10
3)、A-2500(2.63×10
3)、A-5000(5.97×10
3)、F-1(1.02×10
4)、F-2(1.81×10
4)、F-4(3.97×10
4)、F-10(9.64×10
4)、F-20(1.90×10
5)、F-40(4.27×10
5)、F-80(7.06×10
5)、F-128(1.09×10
6))を標準試料として作成したものを用いる。
測定装置:HLC-8220GPC(東ソー社製)
分析カラム:GMHXL+G3000HXL(東ソー社製)
【0089】
〔トナー粒子の体積中位粒径(D
50)〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製)
アパチャー径:50μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター社製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター社製)
分散液:エマルゲン109P(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:13.6)5%電解液
分散条件:分散液5mlに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mlを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させる。
測定条件:ビーカーに電解液100mlと分散液を加え、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度で、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D
50)を求める。
【0090】
樹脂製造例1〔樹脂A〜J、L〕
表2、3に示すフマル酸及び無水トリメリット酸以外のポリエステルの原料モノマー、2-エチルヘキサン酸錫(II)40g及び没食子酸1gを窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、230℃にて8時間反応を行った後、8.3kPaにて1時間反応させた。
【0091】
170℃に降温し、スチレン系樹脂の原料モノマー、両反応性モノマー及びジクミルパーオキサイドを滴下ロートにより1時間かけて滴下した。170℃に保持したまま1時間付加重合反応を熟成させた後、210℃に昇温し、8.3kPaにて1時間スチレン系樹脂の原料モノマーの除去及び、両反応性モノマーとポリエステル部位の反応を行った。
さらに、210℃にて、無水トリメリット酸、フマル酸及びターシャリブチルカテコール5gを添加し、所望の軟化点に達するまで反応を行い、非晶質ハイブリッド樹脂を得た。
【0092】
樹脂製造例2〔樹脂M〕
表3に示す無水トリメリット酸以外のポリエステルの原料モノマー、2-エチルヘキサン酸錫(II)40g及び没食子酸1gを窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、230℃にて8時間反応を行った後、8.3kPaにて1時間反応させた。
【0093】
170℃に降温し、スチレン系樹脂の原料モノマー、両反応性モノマー及びジクミルパーオキサイドを滴下ロートにより1時間かけて滴下した。170℃に保持したまま1時間付加重合反応を熟成させた後、210℃に昇温し、8.3kPaにて1時間スチレン系樹脂の原料モノマーの除去及び、両反応性モノマーとポリエステル部位の反応を行った。
さらに、210℃にて、無水トリメリット酸及びターシャリブチルカテコール5gを添加し、軟化点が101.8℃に達するまで反応を行い、非晶質ハイブリッド樹脂を得た。
【0094】
樹脂製造例3〔樹脂K〕
表3に示すフマル酸及び無水トリメリット酸以外のポリエステルの原料モノマー、2-エチルヘキサン酸錫(II)40g及び没食子酸1gを窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、230℃にて8時間反応を行った後、8.3kPaにて1時間反応させた。
さらに、210℃にて、無水トリメリット酸、フマル酸及びターシャリブチルカテコール5gを添加し、軟化点が100.4℃に達するまで反応を行い、非晶質ポリエステルを得た。
【0095】
【表2】
【0096】
【表3】
【0097】
実施例1〜10及び比較例1〜3
表4に示す結着樹脂85重量部とシアン顔料「ECB-301」(大日精化社製)15重量部をヘンシェルミキサーで混合後、下記連続式2本ロール型混練機で溶融混練した。
【0098】
ロール外径0.12m、有効ロール長0.8mの連続式二本ロール型混練機を使用した。連続式二本ロール型混練機の運転条件は、高回転側ロール(フロントロール)回転数75r/min、低回転側ロール(バックロール)回転数50r/min、ロール間隙0.0001[m]であった。ロール内の加熱媒体温度及び冷却媒体温度は、高回転ロールの原料投入側が160℃及び混練排出側が100℃であり、低回転ロールの原料投入側が30℃及び混練物排出側が30℃であった。また、混合物の供給速度は4kg/hr、平均滞留時間は約10分間であった。
【0099】
得られた溶融混練物を、冷却ロールで圧延冷却した後、ジェットミル粉砕機及び気流分級機にて粉砕、分級を行い、体積中位粒径(D
50)8μmのトナー粒子を得た。
【0100】
トナー粒子40gと、キャリア液として及びアイソパーH(エクソンモービル社製)60gと、分散剤としてステアリン酸マグネシウム1g及びソルスパース13940(日本ルーブリゾール社製)1.5gと、を混合し、サンドグラインダー(IGARASHI KIKAI SEIZO CO., Ltd.製)により、メディアとして直径1mmのガラスビーズ(150ml)を用いて、ウオータージャケット付き1/8ガロンベッセルにて、冷却水温度20℃、ディスク回転数2000r/minで体積中位粒径2.5μmになるまで湿式グラインディングした。濾過してガラスビーズを取り除き、固形分濃度40重量%になるように適宜キャリア液を添加してシアンの液体現像剤を得た。
【0101】
さらに、シアン顔料の代わりに、イエロー顔料「パリオトールイエローD1155」(BASF社製)15重量部を使用した以外は同様の方法で、イエローの液体現像剤を得た。
【0102】
試験例1〔低温定着性〕
(1) 単層
富士ゼロックス社製のJ紙(A4サイズ、坪量:82g/m
2、紙厚:97μm)に、シアンの液体現像剤を0.1ml滴下し、スピンコーター(エイブル社製)にて4000r/minで30秒間回転させ、薄膜を作製した。
【0103】
用紙上に作製した薄膜を、複写機「AR-505」(シャープ社製)の定着機をオフラインで、90℃から240℃へ5℃ずつ順次定着温度を上昇させながら、200mm/secで定着させた。定着画像に「ユニセフセロハン」(三菱鉛筆社、幅:18mm、JISZ-1522)を貼り付け、30℃に設定した定着ローラーに通過させた後、テープを剥がした。テープを貼る前と剥がした後の光学反射密度を反射濃度計「RD-915」(グレタグマクベス社製)を用いて測定し、両者の比率(剥離後/貼付前)が最初に90%を越える定着ローラーの温度を最低定着温度とし、低温定着性の指標とした。結果を表4に示す。
【0104】
(1) 2層
富士ゼロックス社製のJ紙(A4サイズ、坪量:82g/m
2、紙厚:97μm)に、シアンの液体現像剤を0.1ml滴下し、スピンコーター(エイブル社製)にて4000r/minで30秒間回転させ、薄膜を作製した。
【0105】
次いで、さらにイエローの液体現像剤を0.1ml滴下し、スピンコーター(エイブル社製)にて4000r/minで30秒間回転させ、シアンの薄膜の上に、イエローの薄膜を重ねて作製した。
【0106】
その後、複写機「AR-505」(シャープ社製)の定着機を用い、単層の場合と同様に定着試験を行った。結果を表4に示す。
【0107】
単層及び2層の定着温度の値が低いほど、低温定着性が良好であることを示す。また、2層と単層の定着温度の差が小さいほど、より低い温度で2層の剥離が少ない高品質な印刷が可能であることを示す。
【0108】
試験例2〔発色性〕
富士ゼロックス社製のJ紙(A4サイズ、坪量:82g/m
2、紙厚:97μm)に、シアンの液体現像剤を0.1ml滴下し、スピンコーター(エイブル社製)にて4000r/minで30秒間回転させ、薄膜を作製した。
【0109】
次いで、イエローの液体現像剤を0.1ml滴下し、スピンコーター(エイブル社製)にて4000r/minで30秒間回転させ、シアンの薄膜の上に、イエローの薄膜を重ねて作製した。
【0110】
上記手法でシアンの薄膜の上にイエローの薄膜を重ねた薄膜を2枚作製し、一枚については、試験例1で使用した定着機にて200mm/sec、240℃にてロール定着(接触定着)を行った。
【0111】
もう一枚については、220℃のオーブンに1分間入れてオーブン定着(非接触定着)を行った。
【0112】
各定着画像のL
*a
*b
*を、色彩色差計(グレタグ社製)を用いて測定し、下記式により、色相変化量(ΔE)を算出した。結果を表4に示す。値が小さいほど、定着方法にかかわらず同等の発色性を有し、良好であることを示す。
ΔE=√((a
*1−a
*2)
2+(b
*1−b
*2)
2)
a
*1、b
*1:ロール定着による定着画像の値
a
*2、b
*2:オーブン定着による定着画像の値
【0113】
試験例3〔耐熱保存性〕
液体現像剤10gを、温度55℃/湿度70%の環境下に20ml容のサンプル管(マルエム スクリューNo5)に入れ、開封状態で、24時間保管後再度粒径の測定を行った、保管前後の粒径の比(保管後/保管前)を算出し、耐熱保存性を評価した。結果を表4に示す。値が1に近いほど、凝集等の状態変化が少なく、耐熱保存性が良好であることを示す。1〜1.2であれば、耐熱保存性は、良好な範囲といえる。
【0114】
【表4】
【0115】
以上の結果より、実施例1〜10の液体現像剤は、比較例1〜3のものと対比して、低温定着性に優れ、接触定着と非接触定着での発色性の差も小さいことが分かる。また、実施例1と実施例4の対比から、軟化点と分子量の調整により、耐熱保存性が向上することが分かる。