特許第5840051号(P5840051)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5840051
(24)【登録日】2015年11月20日
(45)【発行日】2016年1月6日
(54)【発明の名称】静電荷像現像用イエロートナー
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/087 20060101AFI20151210BHJP
   G03G 9/09 20060101ALI20151210BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20151210BHJP
   C08G 63/66 20060101ALI20151210BHJP
   C09B 29/33 20060101ALN20151210BHJP
【FI】
   G03G9/08 331
   G03G9/08 361
   G03G9/08 381
   C08L67/00
   C08G63/66
   !C09B29/33 A
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-74316(P2012-74316)
(22)【出願日】2012年3月28日
(65)【公開番号】特開2013-205607(P2013-205607A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2014年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】芦沢 健
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 省伍
(72)【発明者】
【氏名】久保 貴史
(72)【発明者】
【氏名】平井 規晋
【審査官】 高松 大
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−069533(JP,A)
【文献】 特開2003−241436(JP,A)
【文献】 特開2009−301026(JP,A)
【文献】 特開2005−099581(JP,A)
【文献】 特開2008−291243(JP,A)
【文献】 特開2008−291244(JP,A)
【文献】 特開2009−197110(JP,A)
【文献】 特開2008−303237(JP,A)
【文献】 特開2009−263509(JP,A)
【文献】 特開2009−286741(JP,A)
【文献】 特表2011−520005(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/057233(WO,A1)
【文献】 特開2013−024985(JP,A)
【文献】 特開2012−107228(JP,A)
【文献】 特開2012−214680(JP,A)
【文献】 特開2012−207193(JP,A)
【文献】 特開2013−095783(JP,A)
【文献】 特開2013−097059(JP,A)
【文献】 特開2007−304276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/087
G03G 9/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂と着色剤を含有してなる静電荷像現像用イエロートナーであって、前記結着樹脂がフラン環を有するポリエステルAを含有し、前記着色剤がピグメント・イエロー74を含有し、該ピグメント・イエロー74の含有量が結着樹脂100重量部に対して4〜10重量部であり、前記フラン環を有するポリエステルAが、原料モノマーとして少なくとも2,5-フランジカルボン酸を含むカルボン酸成分とアルコール成分との縮重合体であるポリエステルである、静電荷像現像用イエロートナー。
【請求項2】
2,5-フランジカルボン酸の量が、結着樹脂中のすべてのポリエステルのカルボン酸成分とアルコール成分との合計量中、15〜80モル%である、請求項記載の静電荷像現像用イエロートナー。
【請求項3】
結着樹脂が、軟化点が125〜160℃であるポリエステルHと、軟化点が90〜125℃であるポリエステルLを含有してなり、ポリエステルHとポリエステルLの軟化点の差が10℃以上であり、ポリエステルH及びポリエステルLの少なくともいずれか一方がフラン環を有するポリエステルAである、請求項1又は2記載の静電荷像現像用イエロートナー。
【請求項4】
フラン環を有するポリエステルAの含有量が、結着樹脂中、30重量%以上である、請求項1〜いずれか記載の静電荷像現像用イエロートナー。
【請求項5】
少なくとも結着樹脂と着色剤とを含有する静電荷像現像用イエロートナーの製造方法であって、結着樹脂と着色剤とを含む成分を、オープンロール型混練機を用いて溶融混練して溶融混練物を得る工程を含み、前記結着樹脂がフラン環を有するポリエステルAを含有し、前記着色剤がピグメント・イエロー74を含有し、該ピグメント・イエロー74の含有量が結着樹脂100重量部に対して4〜10重量部であり、前記フラン環を有するポリエステルAが、原料モノマーとして少なくとも2,5-フランジカルボン酸を含むカルボン酸成分とアルコール成分との縮重合体であるポリエステルである、静電荷像現像用イエロートナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられる静電荷像現像用イエロートナー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリント・オン・デマンド市場が成長しているなか、電子写真技術に対する高画質化への要求はますます高まりつつある。特に、電子写真方式の印刷でオフセット印刷並みに高画質を得るには色域の拡張が必須である。
【0003】
例えば、イエロー顔料としてモノアゾ系の化合物が知られており、モノアゾ系イエロー顔料は着色力に優れ、カラートナーに利用することが望まれるが、該顔料の一次粒子径が小さい為に凝集性が強い性質を有する。このため、結着樹脂中での顔料分散に問題が生じ易い。
【0004】
そこで、特定の結着樹脂とワックスを用いることで、モノアゾ系イエロー顔料を使用したイエロートナーが良好なOHP透明性と色再現範囲が広いことが開示されている(特許文献1参照)。
【0005】
一方で、環境負荷低減の観点よりバイオマス原料の使用が近年、望まれている。
【0006】
例えば、フラン構造を有し、還元粘度(ηsp/C)が0.48dL/g以上、末端酸価が200μeq/g未満であることを特徴とする熱可塑性樹脂が耐熱性、機械物性、耐候性に優れることが開示されている(特許文献2参照)。
【0007】
また、特定のフラン環の構造単位を有するポリエステル樹脂が耐衝撃性に優れ、成形品製造用材料に好適であることが開示されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−170934号公報
【特許文献2】特開2008−291243号公報
【特許文献3】特開2009−197110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献2に記載の樹脂は、フィルム用途や射出成形品の用途を主として使用するものであるため結晶性が高く、トナー用結着樹脂には適していない。また、特許文献3に記載の樹脂も、成形品用組成物であるため結晶性が高く、トナー用結着樹脂には適していない。
【0010】
また、特許文献1に記載のトナーでは、色域の拡張は未だ不十分である。
【0011】
本発明の課題は、色域の拡張に大きく影響する彩度に優れ、且つ環境負荷が少ない、静電荷像現像用イエロートナー及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、
〔1〕 結着樹脂と着色剤を含有してなる静電荷像現像用イエロートナーであって、前記結着樹脂がフラン環を有するポリエステルAを含有し、前記着色剤がピグメント・イエロー74を含有し、該ピグメント・イエロー74の含有量が結着樹脂100重量部に対して4〜10重量部である、静電荷像現像用イエロートナー、並びに
〔2〕 少なくとも結着樹脂と着色剤とを含有する静電荷像現像用イエロートナーの製造方法であって、結着樹脂と着色剤とを含む成分を、オープンロール型混練機を用いて溶融混練して溶融混練物を得る工程を含み、前記結着樹脂がフラン環を有するポリエステルAを含有し、前記着色剤がピグメント・イエロー74を含有し、該ピグメント・イエロー74の含有量が結着樹脂100重量部に対して4〜10重量部である、静電荷像現像用イエロートナーの製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の静電荷像現像用イエロートナーは、電子写真画像形成装置による印刷物の彩度が高いという効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の静電荷像現像用イエロートナーは、少なくとも結着樹脂と着色剤を含有するイエロートナーであって、結着樹脂がフラン環を有するポリエステルを含有し、着色剤が特定量のピグメント・イエロー74を含有している点に特徴を有する。
【0015】
電子写真画像形成装置による印刷物の彩度を高くするという効果を奏する理由は定かではないが、以下のように考えられる。
結着樹脂が有するフラン環とモノアゾ系顔料中の極性基との相互作用により、結着樹脂と顔料の親和性が向上する。その結果、一次粒子径が小さい顔料が結着樹脂中に均一に分散し、印刷物の彩度が向上するものと考えられる。
【0016】
<結着樹脂>
本発明のトナーに用いる結着樹脂は、フラン環を有するポリエステルAを含有する。
ポリエステルAは、原料モノマーとして少なくともフラン環を有するカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分及び/又はフラン環を有するアルコールを含むアルコール成分を用い、カルボン酸成分とアルコール成分とを縮重合させて得られるポリエステルが好ましく、フラン環としては、式(Ia)又は(Ib):
【0017】
【化1】
【0018】
で表される構造が好ましい。
【0019】
フラン環を有するカルボン酸化合物としては、2,5-フランジカルボン酸、2,4-フランジカルボン酸、2,3-フランジカルボン酸、3,4-フランジカルボン酸等のフランジカルボン酸化合物(本明細書中、カルボン酸化合物はカルボン酸、カルボン酸と炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜3のアルコールとのエステル及び酸無水物を含む);2-フランカルボン酸、3-フランカルボン酸等のフランカルボン酸化合物;5-ヒドロキシメチル-フラン-2-カルボン酸等のヒドロキシフランカルボン酸化合物;フルフリル酢酸化合物、3-カルボキシ-4-メチル-5-プロピル-2-フランプロピオネート等のカルボン酸化合物(本明細書中、ヒドロキシカルボン酸化合物はカルボン酸化合物に含める)等が挙げられる。
【0020】
これらの中では、印字物の彩度を向上させる観点、トナーの耐久性を向上させる観点及びトナーの低温定着性と耐熱保存性を向上させる観点から、フランジカルボン酸化合物、フランカルボン酸化合物及びヒドロキシフランカルボン酸化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましく、フランジカルボン酸化合物がより好ましく、2,5-フランジカルボン酸がより好ましい。
【0021】
フラン環を有するアルコールとしては、ジヒドロキシフラン等のフランジアルコール;5-ヒドロキシメチルフルフリルアルコール等のヒドロキシメチルフルフリルアルコール;フルフリルアルコール;5-ヒドロキシメチルフルフラール等が挙げられる。
【0022】
式(Ia)で表されるフラン環を有するカルボン酸化合物として、2,5-フランジカルボン酸、2,4-フランジカルボン酸、2,3-フランジカルボン酸、3,4-フランジカルボン酸等のフランジカルボン酸化合物;5-ヒドロキシメチル-フラン-2-カルボン酸等のヒドロキシフランカルボン酸化合物等のカルボン酸化合物等が挙げられる。
【0023】
式(Ia)で表されるフラン環を有するアルコールとして、5-ヒドロキシメチルフルフリルアルコール等のヒドロキシメチルフルフリルアルコール;ジヒドロキシフラン等のフランジアルコール;5-ヒドロキシメチルフルフラール等が挙げられる。
【0024】
式(Ib)で表されるフラン環を有するカルボン酸化合物として、2-フランカルボン酸、3-フランカルボン酸等のフランカルボン酸化合物;フルフリル酢酸化合物等が挙げられる。
【0025】
式(Ib)で表されるフラン環を有するアルコールとして、フルフリルアルコール等が挙げられる。
【0026】
上記のカルボン酸化合物及びアルコールの中では、印字物の彩度を向上させる観点、トナーの耐久性を向上させる観点及びトナーの低温定着性と耐熱保存性を向上させる観点から、式(Ia)で表されるフラン環を有するカルボン酸化合物とアルコールとが好ましく、フランジカルボン酸化合物及びフランジアルコールがより好ましく、フランジカルボン酸化合物がさらに好ましい。
【0027】
フラン環を有するカルボン酸化合物とフラン環を有するアルコールとの合計量は、印字物の彩度を向上させる観点、トナーの耐久性を向上させる観点及びトナーの低温定着性と耐熱保存性を向上させる観点から、ポリエステルAのカルボン酸成分とアルコール成分との合計量中、好ましくは10〜100モル%、より好ましくは20〜90モル%、さらに好ましくは20〜80モル%、よりさらに好ましくは30〜70モル%、よりさらに好ましくは40〜50モル%である。
【0028】
さらに、フラン環を有するカルボン酸化合物の含有量は、印字物の彩度を向上させる観点、トナーの耐久性を向上させる観点及びトナーの低温定着性と耐熱保存性を向上させる観点から、ポリエステルAのカルボン酸成分中、好ましくは10〜100モル%、より好ましくは20〜100モル%、さらに好ましくは30〜100モル%、よりさらに好ましくは60〜100モル%、よりさらに好ましくは90〜100モル%であり、実質的に100モル%がよりさらに好ましい。
【0029】
フランジカルボン酸化合物の含有量は、同様の観点から、ポリエステルAのカルボン酸成分中、好ましくは10〜100モル%、より好ましくは20〜100モル%、さらに好ましくは30〜100モル%、よりさらに好ましくは60〜100モル%、よりさらに好ましくは90〜100モル%であり、実質的に100モル%がよりさらに好ましい。
【0030】
フラン環を有するカルボン酸化合物を用いる場合は、フラン環を有するアルコールを用いなくてもよい。フラン環を有するアルコールを用いる場合、フラン環を有するアルコールの含有量は、印字物の彩度を向上させる観点、トナーの耐久性を向上させる観点及びトナーの低温定着性と耐熱保存性を向上させる観点から、ポリエステルAのアルコール成分中、好ましくは10〜100モル%、より好ましくは20〜90モル%、さらに好ましくは20〜80モル%、よりさらに好ましくは20〜60モル%である。
【0031】
なお、結着樹脂が複数のポリエステルAを含有する場合、上記のフラン環を有するカルボン酸化合物とフラン環を有するアルコールとの合計量、フラン環を有するカルボン酸化合物の含有量、フランジカルボン酸化合物の含有量及びフラン環を有するアルコールの含有量は、各ポリエステルAにおけるそれぞれの化合物の含有量と各ポリエステルAの重量分率の積の和によって求める。
【0032】
フラン環を有するアルコール以外のアルコール成分としては、トナーの低温定着性を向上させる観点から、脂肪族ジオールが好ましい。脂肪族ジオールの炭素数は、トナーの低温定着性を向上させる観点から、2〜10が好ましく、3〜8がより好ましく、3〜4がさらに好ましい。
【0033】
脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ブテンジオール、ネオペンチルグリコール、2,3-ブタンジオール、2,3-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2,3-ヘキサンジオール、3,4-ヘキサンジオール、2,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール等が挙げられる。
【0034】
これらの中で、フラン環とともに、樹脂の運動性をさらに低下させることで、トナーの耐熱保存性を向上させる観点から、第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールが好ましい。かかる脂肪族ジオールは、低温定着性と耐熱保存性の観点から、炭素数は、3〜8が好ましく、3〜6がより好ましく、3〜4がさらに好ましく、具体的な好適例としては、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、2,3-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール等が挙げられ、トナーの耐熱保存性を向上させる観点から、1,2-プロパンジオール及び2,3−ブタンジオールが好ましい。
【0035】
脂肪族ジオールの含有量は、トナーの低温定着性を向上させる観点から、フラン環を有するアルコール以外のアルコール成分中、好ましくは20〜100モル%、より好ましくは50〜100モル%であり、さらに好ましくは70〜100モル%であり、実質的に100モル%がよりさらに好ましい。
【0036】
第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールの含有量は、トナーの低温定着性と耐熱保存性を向上させる観点から、フラン環を有するアルコール以外のアルコール成分中、好ましくは20〜100モル%、より好ましくは50〜100モル%、さらに好ましくは70〜100モル%であり、実質的に100モル%がよりさらに好ましい。
【0037】
脂肪族ジオールの含有量は、トナーの低温定着性を向上させる観点から、アルコール成分中、好ましくは20〜100モル%、より好ましくは50〜100モル%であり、さらに好ましくは70〜100モル%であり、実質的に100モル%がよりさらに好ましい。
【0038】
第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールの含有量は、トナーの低温定着性と耐熱保存性を向上させる観点から、アルコール成分中、好ましくは20〜100モル%、より好ましくは50〜100モル%、さらに好ましくは70〜100モル%であり、実質的に100モル%がよりさらに好ましい。
【0039】
これら以外のアルコール成分としては、トナーの耐熱保存性を向上させる観点から、芳香族アルコールが挙げられる。
【0040】
芳香族アルコールとしては、トナーの耐熱保存性を向上させる観点から、式(II):
【0041】
【化2】
【0042】
(式中、R1O及びOR1はオキシアルキレン基であり、R1はエチレン及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の平均値は1〜16が好ましく、1〜8がより好ましく、1.5〜4がさらに好ましい)
で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が挙げられる。
【0043】
式(II)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の具体例としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシプロピレン付加物、及び2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシエチレン付加物等のビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0044】
本発明において、アルコール成分は、トナーの耐久性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、3価以上の多価アルコール、好ましくはグリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、より好ましくはグリセリンを含有していることが好ましい。3価以上の多価アルコールの含有量は、トナーの耐久性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、アルコール成分中、1〜35モル%が好ましく、10〜30モル%がより好ましく、20〜25モル%がさらに好ましい。
【0045】
フラン環を有するカルボン酸化合物以外のカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸化合物、脂肪族ジカルボン酸化合物及び3価以上の多価カルボン酸化合物を含有してもよい。本発明においては、カルボン酸、酸無水物、アルキル(炭素数1〜6)エステル等の誘導体等を含め、総称してカルボン酸化合物という。
【0046】
芳香族ジカルボン酸化合物としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、これらの酸無水物、アルキル(炭素数1〜6)エステル等が挙げられる。
【0047】
脂肪族ジカルボン酸化合物としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、これらの酸無水物、アルキル(炭素数1〜6)エステル等が挙げられる。
【0048】
3価以上の多価カルボン酸化合物としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、これらの酸無水物、アルキル(炭素数1〜6)エステル等が挙げられる。
【0049】
アルコール成分にはフラン環を有さない1価のアルコールが、カルボン酸成分にはフラン環を有さない1価のカルボン酸化合物が、ポリエステルの軟化点を調整する観点から、適宜含有されていてもよい。
【0050】
ポリエステルAにおけるカルボン酸成分とアルコール成分との当量比(COOH基/OH基)は、ポリエステルAの酸価を低減する観点から、0.70〜1.10が好ましく、0.75〜1.00がさらに好ましい。
【0051】
アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合反応は、不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じて、エステル化触媒、エステル化助触媒、重合禁止剤等の存在下、180〜250℃程度の温度で縮重合させて製造することができる。エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等の錫化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられ、エステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。エステル化触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100重量部に対して、0.01〜1.5重量部が好ましく、0.1〜1.0重量部がより好ましい。エステル化助触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100重量部に対して、0.001〜0.5重量部が好ましく、0.01〜0.1重量部がより好ましい。
【0052】
ポリエステルAの軟化点は、トナーの低温定着性、耐高温オフセット性及び耐久性を向上させる観点から、90〜155℃が好ましい。
【0053】
結着樹脂が複数のポリエステルAを含有する場合は、各ポリエステルAの軟化点と各ポリエステルAの重量分率の積の和が上記範囲となることが好ましい。
【0054】
ポリエステルAの軟化点は、アルコール成分やカルボン酸成分の種類や組成比、触媒量等の調整、反応温度や反応時間、反応圧力等の反応条件の選択によって制御することができる。
【0055】
ポリエステルAのガラス転移温度は、トナーの低温定着性、耐熱保存性及び耐久性を向上させる観点から、50〜85℃が好ましく、60〜75℃が好ましい。
【0056】
ポリエステルAのガラス転移温度は、アルコール成分やカルボン酸成分の種類や組成比等によって制御することができる。
【0057】
結着樹脂が複数のポリエステルAを含有する場合は、各ポリエステルAのガラス転移温度と各ポリエステルAの重量分率の積の和が上記範囲内となることが好ましい。
【0058】
ポリエステルAの酸価は、トナーの帯電安定性、耐熱保存性、耐高温オフセット性及び耐久性を向上させる観点から、30mgKOH/g以下が好ましく、25mgKOH/g以下がより好ましい。
【0059】
ポリエステルAの酸価は、アルコール成分やカルボン酸成分の種類や組成比、触媒量等の調整、反応温度や反応時間、反応圧力等の反応条件の選択によって制御することができる。
【0060】
本発明に用いる結着樹脂は、トナーの低温定着性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、軟化点の異なる2種以上のポリエステルを含有することが好ましい。
【0061】
軟化点が高い方のポリエステルHと軟化点が低い方のポリエステルLの軟化点の差は、トナーの低温定着性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、10℃以上が好ましく、20〜60℃がより好ましく、30〜50℃がさらに好ましい。
【0062】
ポリエステルHの軟化点は、トナーの低温定着性、耐高温オフセット性及び耐久性を向上させる観点から、125〜160℃が好ましく、135〜155℃がより好ましい。
【0063】
ポリエステルLの軟化点は、トナーの低温定着性、耐高温オフセット性及び耐熱保存性を向上させる観点から、90〜125℃が好ましく、90〜110℃がより好ましい。
【0064】
結着樹脂中、複数のポリエステルL、複数のポリエステルHを含有してもよい。結着樹脂が複数のポリエステルL、複数のポリエステルHを含有する場合、ポリエステルLの軟化点及びポリエステルHの軟化点は、各ポリエステルの軟化点と各ポリエステルの重量分率の積の和が上記範囲となることが好ましい。
【0065】
ポリエステルの軟化点は、アルコール成分やカルボン酸成分の種類や組成比、触媒量等の調整、反応温度や反応時間、反応圧力等の反応条件の選択によって制御することができる。
【0066】
ポリエステルH及びポリエステルLの合計の含有量は、トナーの低温定着性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、結着樹脂中、80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましく、95重量%以上がさらに好ましく、実質的に100重量%であることがよりさらに好ましい。
【0067】
本発明に用いる結着樹脂において、印字物の彩度を向上させる観点及びトナーの耐久性を向上させる観点から、ポリエステルH及びポリエステルLの少なくともいずれか一方がポリエステルAであるのが好ましく、ポリエステルL及びポリエステルHがポリエステルAであることがより好ましい。
【0068】
ポリエステルA以外のポリエステルとしては、特に限定はされない。
【0069】
ポリエステルA以外のポリエステルのアルコール成分の好ましい態様は、ポリエステルAのフラン環を有するアルコール以外のアルコール成分と同様であり、脂肪族ジオールが好ましく、第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールがより好ましい。
【0070】
また、トナーの低温定着性、耐高温オフセット性及び耐久性を向上させる観点から、3価以上の多価アルコールを含有していることが好ましく、グリセリンを含有していることがより好ましい。
【0071】
脂肪族ジオール、第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオール及び3価以上の多価アルコールのアルコール成分中の好ましい含有量は、ポリエステルAで述べた態様と同様である。
【0072】
また、ポリエステルA以外のポリエステルのカルボン酸成分としては、トナーの帯電安定性、耐熱保存性及び耐久性を向上させる観点から、芳香族カルボン酸化合物が好ましく、具体的には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、これらの酸無水物、アルキル(炭素数1〜6)エステル等が挙げられる。
【0073】
芳香族カルボン酸化合物のカルボン酸成分中の含有量は、トナーの帯電安定性、耐熱保存性及び耐久性を向上させる観点から、20〜100モル%、より好ましくは50〜100モル%、さらに好ましくは80〜100モル%であり、実質的に100モル%がよりさらに好ましい。
【0074】
ポリエステルAの含有量は、印字物の彩度を向上させる観点及びトナーの耐久性を向上させる観点から、結着樹脂中、30重量%以上が好ましく、50重量%以上がより好ましく、80重量%以上がさらに好ましく、実質的に100重量%がよりさらに好ましい。
【0075】
また、結着樹脂中のすべてのポリエステルのカルボン酸成分とアルコール成分との合計量中の、フラン環を有するカルボン酸化合物とフラン環を有するアルコールとの合計量は、印字物の彩度を向上させる観点及びトナーの耐久性を向上させる観点から、15モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、30モル%以上がさらに好ましく、40モル%以上がより好ましい。また、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点から、80モル%以下が好ましく、70モル%以下がより好ましく、60モル%以下がさらに好ましく、50モル%以下がよりさらに好ましい。これらの観点を総合すると、15〜80モル%が好ましく、20〜70モル%がより好ましく、30〜60モル%がさらに好ましく、40〜50モル%がよりさらに好ましい。
【0076】
結着樹脂は、本発明の効果が損なわれない範囲において、ポリエステルA及びポリエステルA以外のポリエステルの他に、他の樹脂を含有していてもよいが、ポリエステルA及びポリエステルA以外のポリエステルの合計含有量は、印字物の彩度を向上させる観点及びトナーの低温定着性、耐熱保存性及び耐久性を向上させる観点から、結着樹脂中、80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましく、95重量%以上がさらに好ましく、実質的に100重量%であることがよりさらに好ましい。他の結着樹脂としては、ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等が挙げられる。
【0077】
なお、本発明において、ポリエステルは、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステルであってもよい。変性されたポリエステルとしては、例えば、特開平11−133668号公報、特開平10−239903号公報、特開平8−20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステルをいう。
【0078】
<着色剤>
本発明のトナーの着色剤は、印字物の彩度を向上させる観点及びトナーの耐久性を向上させる観点から、ピグメント・イエロー(C.I.Pigment Yellow)74(以下、PY-74と記載する)を含有する。
【0079】
本発明の効果を損なわない範囲で、他の着色剤を含有してもよいが、着色剤中のPY-74の含有量は、印字物の彩度を向上させる観点及びトナーの耐久性を向上させる観点から、90重量%以上が好ましく、95重量%以上がより好ましく、実質的に100重量%がさらに好ましい。
【0080】
トナー中のPY-74の含有量は、印字物の彩度を向上させる観点から、結着樹脂100重量部に対して、4重量部以上であり、5重量部以上が好ましく、また、同様の観点から、10重量部以下であり、9重量部以下が好ましく、8重量部以下がより好ましい。これらの観点を総合すると、トナー中のPY-74の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、4〜10重量部であり、4〜9重量部が好ましく、5〜8重量部がより好ましい。さらに、トナーの耐久性を向上させる観点から、5〜7重量部がさらに好ましく、5〜6重量部がよりさらに好ましい。
【0081】
本発明のトナーは、結着樹脂及び着色剤以外に、離型剤、荷電制御剤等を含有していてもよい。
【0082】
<離型剤>
離型剤としては、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレンポリエチレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス及びそれらの酸化物、カルナウバワックス、モンタンワックス、サゾールワックス及びそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス、脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を混合して用いられていてもよい。
【0083】
離型剤の融点は、トナーの低温定着性と耐高温オフセット性を向上させる観点から、60〜160℃が好ましく、60〜150℃がより好ましい。
【0084】
離型剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、トナーの耐熱保存性を向上させる観点から、10重量部以下が好ましく、8重量部以下がより好ましく、7重量部以下がさらに好ましい。また、トナーの低温定着性と耐高温オフセット性を向上させる観点から、0.5重量部以上が好ましく、1.0重量部以上がより好ましく、1.5重量部以上がさらに好ましい。したがって、これらの観点を総合すると、離型剤の含有量は、0.5〜10重量部が好ましく、1.0〜8重量部より好ましく、1.5〜7重量部がさらに好ましい。また、トナーをオイルレス定着させる観点から、2.0重量部以上が好ましく、2.5重量部以上がより好ましく、3.0重量部以上がさらに好ましい。したがって、これらの観点を総合すると、離型剤の含有量は、2.0〜10重量部が好ましく、2.5〜8重量部より好ましく、3.0〜7重量部がさらに好ましい。
【0085】
<荷電制御剤>
荷電制御剤として、負帯電性荷電制御剤、正帯電性荷電制御剤のいずれも用いることができる。
【0086】
負帯電性荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、例えば「ボントロンS-28」(オリエント化学工業社製)、「T-77」(保土谷化学工業社製)、「ボントロンS-34」(オリエント化学工業社製)、「アイゼンスピロンブラックTRH」(保土谷化学工業社製)等;銅フタロシアニン染料;サリチル酸のアルキル誘導体の金属錯体、例えば「ボントロンE-81」、「ボントロンE-84」、「ボントロンE-304」(以上、オリエント化学工業社製)等;ニトロイミダゾール誘導体;ベンジル酸ホウ素錯体、例えば、「LR-147」(日本カーリット社製)等;無金属系荷電調整剤、例えば「ボントロンF-21」、「ボントロンE-89」(以上、オリエント化学工業社製)、「T-8」(保土ヶ谷化学工業社製)、「FCA-2521NJ」、「FCA-2508N」(以上、藤倉化成社製)等が挙げられる。
【0087】
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ボントロンN-01」、「ボントロンN-04」、「ボントロンN-07」(以上、オリエント化学工業社製)、「CHUO CCA-3」(中央合成社製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料;4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンP-51」(オリエント化学工業社製)、「TP-415」(保土谷化学工業社製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PXVP435」(クラリアント社製)等が挙げられる。
【0088】
トナー中の荷電制御剤の含有量は、トナーの帯電安定性を向上させる観点から、結着樹脂100重量部に対して、0.5〜5重量部が好ましく、1〜3重量部がより好ましい。
【0089】
<他の成分>
本発明の製造方法により得られるトナーは、さらに、トナー中に、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、体質顔料、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤を適宜含有していてもよい。
【0090】
<トナー製造方法>
本発明のトナーは、溶融混練法、乳化凝集法、重合法等の従来より公知のいずれの方法によって得られたトナーであってもよいが、生産性や着色剤の分散性を向上させる観点から、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。従って、本発明のトナーの製造方法は、結着樹脂と着色剤とを含む成分を、溶融混練して溶融混練物を得る工程を含む方法が好ましく、具体的には、結着樹脂、着色剤、荷電制御剤、離型剤等の成分をヘンシェルミキサー等の混合機で均一に混合した後、溶融混練し、冷却後、粉砕、分級を行ってトナーを製造することができる。一方、トナーの小粒径化の観点からは、重合法や乳化凝集法等によるトナーが好ましい。
【0091】
トナー成分の溶融混練は、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて行うことができる。混練の繰り返しや分散助剤の使用をしなくても、結着樹脂に着色剤等のトナー成分を効率よく高分散させることができる観点から、ロールの軸方向に沿って設けられた供給口と混練物排出口を備えたオープンロール型混練機を用いることが好ましい。
【0092】
トナー成分は、予めヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等を用いて均一に混合した後、オープンロール型混練機に供することが好ましく、1箇所の供給口から混練機に供給してもよく、複数の供給口から分割して混練機に供給してもよいが、操作の簡便性及び装置の簡略化の観点からは、1箇所の供給口から混練機に供給することが好ましい。
【0093】
オープンロール型混練機とは、混練部が密閉されておらず開放されているものをいい、混練の際に発生する混練熱を容易に放熱することができる。また、オープンロール型混練機は、少なくとも2本のロールを備えた混練機であることが望ましく、本発明に用いられるオープンロール型混練機は、周速度の異なる2本のロール、即ち、周速度の高い高回転側ロールと周速度の低い低回転側ロールとの2本のロールを備えた混練機である。本発明においては、着色剤等のトナー成分の結着樹脂への分散性を向上させる観点から、高回転側ロールは加熱ロール、低回転側ロールは冷却ロールであることが望ましい。
【0094】
ロールの温度は、例えば、ロール内部に通す熱媒体の温度により調整することができ、各ロールには、ロール内部を2以上に分割して温度の異なる熱媒体を通じてもよい。
【0095】
高回転側ロールの原料投入側端部温度は100〜160℃が好ましく、低回転側ロールの原料投入側端部温度は30〜100℃が好ましい。
【0096】
高回転側ロールは、原料投入側端部と混練物排出側端部の設定温度の差が、混練物のロールからの脱離防止の観点から、20〜60℃であることが好ましく、20〜50℃であることがより好ましく、30〜50℃であることがさらに好ましい。低回転側ロールは、原料投入側端部と混練物排出側端部の設定温度の差が、着色剤等のトナー成分の結着樹脂への分散性を向上させる観点から、0〜50℃であることが好ましく、0〜40℃であることがより好ましく、0〜20℃であることがさらに好ましい。
【0097】
高回転側ロールの周速度は、2〜100m/分であることが好ましく、10〜75m/分がより好ましく、25〜50m/分であることがさらに好ましい。低回転側ロールの周速度は1〜90m/分が好ましく、5〜60m/分がより好ましく、15〜30m/分がさらに好ましい。また、2本のロールの周速度の比(低回転側ロール/高回転側ロール)は、1/10〜9/10が好ましく、3/10〜8/10がより好ましい。
【0098】
ロールの構造、大きさ、材料等は特に限定されず、ロール表面も、平滑、波型、凸凹型等のいずれであってもよいが、混練シェアを高めるために、各ロールの表面には複数の螺旋状の溝が刻んであることが好ましい。
【0099】
粉砕工程は、多段階に分けて行ってもよい。例えば、溶融混練物を、1〜5mm程度に粗粉砕した後、さらに所望の粒径に微粉砕してもよい。
【0100】
粉砕工程に用いられる粉砕機は特に限定されないが、例えば、粗粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、ハンマーミル、アトマイザー、ロートプレックス等が挙げられる。また、微粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、衝突板式ジェットミル、流動層式ジェットミル、回転型機械ミル等が挙げられる。粉砕効率の観点から流動層式ジェットミルを用いることが望ましい。
【0101】
分級工程に用いられる分級機としては、風力分級機、慣性式分級機、篩式分級機等が挙げられる。分級工程の際、粉砕が不十分で除去された粉砕物は再度粉砕工程に供してもよい。
【0102】
<外添処理工程>
本発明のトナーの製造方法において、粉砕、分級工程後、得られたトナー粒子(トナー母粒子)をさらに外添剤と混合する工程を含むことが好ましい。
【0103】
外添剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化亜鉛等の無機微粒子や、メラミン系樹脂微粒子、ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子等の有機微粒子が挙げられる。なかでも、シリカを併用することが好ましく、平均粒子径が20nm未満のシリカと20nm以上のシリカを、90/10〜10/90の重量比で併用することがさらに好ましい。
【0104】
トナー母粒子と外添剤との混合には、回転羽根等の攪拌具を備えた混合機を用いることが好ましく、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の高速混合機が好ましく、ヘンシェルミキサーがより好ましい。
【0105】
<トナーの体積中位粒径>
トナーの体積中位粒径(D50)は、トナーの画像品質を向上させる観点から、3〜15μmが好ましく、4〜12μmがより好ましく、6〜9μmがさらに好ましい。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。また、トナーが外添剤で処理されている場合には、トナー母粒子の体積中位粒径とする。
【0106】
本発明のトナーは、そのまま一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して用いられる二成分現像用トナーとして、それぞれ一成分現像方式又は二成分現像方式の画像形成装置に用いることができる。
【実施例】
【0107】
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター(島津製作所社製、CFT-500D)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
【0108】
〔樹脂のガラス転移温度〕
示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、Q-100)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却した。次に試料を昇温速度10℃/分で昇温し測定した。吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
【0109】
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070の方法により測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
【0110】
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、DSC Q20)を用いて昇温速度10℃/分で200℃まで昇温し、その温度から降温速度5℃/分で-10℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で180℃まで昇温し、そこで得られた融解吸熱カーブから観察される吸熱の最高ピーク温度を離型剤の融点とする。
【0111】
〔外添剤の平均粒子径〕
一次粒子の平均粒子径を下記式より求める。
平均粒子径(nm)=6/(ρ×比表面積(m2/g))×1000
式中、ρは外添剤の真比重であり、シリカの真比重は2.2である。比表面積は、窒素吸着法により求められたBET比表面積である。疎水化処理された外添剤の場合は、疎水化処理前の原体の比表面積とする。なお、上記式は、粒子径Rの球と仮定して、
比表面積=S×(1/m)
m(粒子の重さ)=4/3×π×(R/2)3×真比重
S(表面積)=4π(R/2)2
から得られる式である。
【0112】
〔トナーの体積中位粒径(D50)〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製)
アパチャー径:100μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター社製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター社製)
分散液:エマルゲン109P(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:13.6)を5重量%の濃度となるよう前記電解液に溶解させる。
分散条件:前記分散液5mlに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、前記電解液25mlを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
測定条件:前記電解液100mlに、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、前記試料分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
【0113】
[樹脂製造例]
表1に示す原料モノマー及びエステル化触媒・助触媒を、温度計、ステンレス製攪拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した5リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、180℃まで昇温した後、210℃まで5時間かけて昇温を行った。その後210℃にて反応率が95%以上に到達したのを確認し、40kPaにて表1に記載の軟化点に達するまで反応を行って、樹脂L−1、L−2、H−1、H−2を得た。なお、反応率とは、生成反応水量/理論生成水量×100の値をいう。
【0114】
【表1】
【0115】
[トナー製造例]
実施例1〜7及び比較例1〜6
表2に示す所定量の結着樹脂及び所定量の着色剤と、負帯電性荷電制御剤「ボントロン E-84」(オリエント化学工業社製)1.0重量部及び離型剤「HNP-9」(日本精鑞社製、パラフィンワックス、融点:75℃)3.0重量部を、ヘンシェルミキサーを用いて1分間混合後、以下に示す条件で溶融混練した。
【0116】
連続式二本オープンロール型混練機「ニーデックス」(三井鉱山社製、ロール外径:14cm、有効ロール長:80cm)を使用した。連続式二本オープンロール型混練機の運転条件は、高回転側ロール(フロントロール)周速度32.4m/分、低回転側ロール(バックロール)周速度21.7m/分、ロール間隙0.1mmであった。ロール内の加熱媒体温度及び冷却媒体温度は、高回転側ロールの原料投入側が135℃及び混練物排出側が90℃であり、低回転側ロールの原料投入側が35℃及び混練物排出側が35℃であった。また、原料混合物の供給速度は4kg/時間、平均滞留時間は約6分間であった。
【0117】
混練物を冷却後、ロートプレックス(東亜機械社製)を用いて平均粒子径1mmに粗粉砕した。得られた粗粉砕物を流動層式ジェットミル粉砕機AFG-200(アルピネ社製)にて微粉砕し、ロータ式分級機TTSP-100(アルピネ社製)にて分級して、体積中位粒径(D50)が7.0μmのトナー母粒子を得た。
【0118】
得られたトナー母粒子100重量部と、疎水性シリカ「R972」(日本アエロジル社製、平均粒子径:16nm)1.0重量部及び疎水性シリカ「NAX50」(日本アエロジル社製、平均粒子径:30nm)1.0重量部をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)にて2100r/分(周速度29m/秒)で3分間混合して、トナーを得た。
【0119】
実施例8
樹脂L−120重量部、樹脂H−1 80重量部、着色剤PY-74 5重量部、負帯電性荷電制御剤「ボントロン E-84」(オリエント化学工業社製)1.0重量部及び離型剤「HNP-9」(日本精鑞社製、融点:75℃)3.0重量部を、ヘンシェルミキサーを用いて1分間混合後、以下に示す条件で溶融混練した。
【0120】
同方向回転二軸押出機PCM-30(池貝鉄工社製)を使用して、バレル設定温度 100℃、軸回転数 200r/分(軸の回転の周速 0.30m/秒)にて、混合物供給速度 10kg/hrの条件で溶融混練を行い、混練物を得た。
【0121】
粉砕及び分級を実施例1と同様に行い、体積中位粒径(D50)が7.0μmのトナー母粒子を得た。
【0122】
得られたトナー母粒子100重量部と、疎水性シリカ「R972」(日本アエロジル社製、平均粒子径:16nm)1.0重量部及び疎水性シリカ「NAX50」(日本アエロジル社製、平均粒子径:30nm)1.0重量部をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)にて2100r/分(周速度29m/秒)で3分間混合して、トナーを得た。
【0123】
〔試験例1:彩度〕
現像バイアスを変えられる様に改造した、沖データ社製のカラープリンター「Oki Microline 5400」のイエロートナーカートリッジにトナーを充填し、トナー付着量が5g/m2になるようバイアスを調整して、J紙「富士ゼロックス社製、80g/m2」にベタ画像を印刷し、未定着のイエローベタ画像を得た。オイルレス定着方式の「Microline3010」(沖データ社製)を改造した外部定着装置(定着ロールの回転速度を600rpmに設定)にて未定着画像の定着を行った。画像を印字していないJ紙5枚の上に定着を行ったベタ画像サンプルを置き、色彩計「SPM50」(グレタグ社製)を用いて、測定光D50、視野角2°の設定にてa*値及びb*値を測定した。a*値及びb*値から下記の式にて彩度C*を算出した。値が大きいほど、彩度に優れる。結果を表2に示す。
【0124】
*=√((a*)2+(b*)2)
【0125】
〔試験例2:耐久性〕
現像ローラと接触している感光体の筒部分を取り除いた、沖データ社製のカラープリンター「Oki Microline 5400」のイエロートナーカートリッジにトナーを充填し、室温の条件下で、70r/分(36ppm相当)の回転速度で現像ローラを回転させ、現像ローラ上のトナーに現像ブレードとの摩擦ストレスを与える耐久性試験を行った、連続的に現像ローラの回転を行い、現像ローラ表面上にスジ発生を目視にて観察し、スジが発生するまでの時間を測定した。なお、スジとは、現像ローラの回転により現像ブレードに融着が発生して、トナー搬送が行なわれずに、現像ローラ上にトナーが存在しない状態である。スジ発生までの時間が長いほど、耐久性に優れる。
【0126】
【表2】
【0127】
表2から明らかなように、実施例1〜7のトナーは、比較例1〜6のトナーよりも、彩度に優れる。
【0128】
【表3】
【0129】
表3から明らかなように、PY-74を用いたトナーは、PY-74以外のイエロー顔料を用いたトナーよりも耐久性にも優れる。
【0130】
【表4】
【0131】
表4において、PY-74の含有量が特定の範囲であると、さらに耐久性に優れることがわかる。
【0132】
【表5】
【0133】
表5において、結着樹脂中のフラン環モノマー量が多いほど、さらに耐久性に優れることがわかる。
【0134】
【表6】
【0135】
表6において、溶融混練工程において、連続式オープンロール型混練機を用いて溶融混練すると、さらに耐久性に優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明の静電荷像現像用イエロートナーは、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像等に好適に用いられるものである。