特許第5840230号(P5840230)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5840230
(24)【登録日】2015年11月20日
(45)【発行日】2016年1月6日
(54)【発明の名称】リニアモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 41/02 20060101AFI20151210BHJP
   H02K 41/03 20060101ALI20151210BHJP
   H02K 9/22 20060101ALI20151210BHJP
【FI】
   H02K41/02 Z
   H02K41/03 A
   H02K9/22 Z
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-553121(P2013-553121)
(86)(22)【出願日】2012年1月10日
(86)【国際出願番号】JP2012050263
(87)【国際公開番号】WO2013105213
(87)【国際公開日】20130718
【審査請求日】2014年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】富士機械製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】山田 修平
(72)【発明者】
【氏名】藤田 政利
(72)【発明者】
【氏名】永田 良
(72)【発明者】
【氏名】井土 武洋
【審査官】 武市 匡紘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−061458(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/040913(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/011614(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 41/00−41/06
H02K 9/00−9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連ねて設けられた複数の磁力発生部材を有する固定子と、
前記固定子の外側に巻回され、前記固定子の軸線方向に連ねて設けられた複数のコイルと、前記各コイルの外周面に沿うように接触して取り付けられた熱伝達部材を有し、前記固定子に移動可能に取り付けられた可動子と、から構成されたリニアモータであって、
互いに対向した一対の当接面が形成され、当該一対の当接面で前記熱伝達部材及び前記コイルを挟んだ状態で収納し、前記熱伝達部材を前記コイルの外周面に圧着させる筐体を有し、
前記熱伝達部材と前記当接面との間には、前記熱伝達部材と前記当接面との間の隙間を埋めるスペーサ部材が挟み込まれているリニアモータ。
【請求項2】
請求項1において、
前記コイルは、円筒形状であるリニアモータ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記スペーサ部材は、弾性を有するリニアモータ。
【請求項4】
請求項1又は請求項2において、
前記スペーサ部材は、挿入方向先端側に向かって徐々に厚さが小さくなる楔状であるリニアモータ。
【請求項5】
請求項1〜請求項のいずれかにおいて、
前記熱伝達部材及びコイルの外周面を囲む樹脂を前記筐体の内部に充填させたリニアモータ。
【請求項6】
請求項1〜請求項のいずれかにおいて、
前記コイルの外周面と前記熱伝達部材との間に、絶縁性及び柔軟性を有する伝熱材料が挟み込まれているリニアモータ。
【請求項7】
請求項1〜請求項のいずれかにおいて、
前記コイルの外周面と前記熱伝達部材との間に、柔軟性を有する伝熱材料及び絶縁性を有する絶縁シートが挟み込まれているリニアモータ。
【請求項8】
請求項1〜請求項のいずれかにおいて、
前記熱伝達部材は、絶縁性を有する絶縁テープで被包され、
前記熱伝達部材を被包する前記絶縁テープと前記コイルの外周面との間には、柔軟性を有する伝熱材料が挟み込まれているリニアモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアモータのコイルを冷却する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から特許文献1に示されるように、電子部品実装装置の装着ヘッドを移動させる移動装置には、リニアモータが用いられている。このようなリニアモータは、ボビンの外周面に巻回された複数のコイルを有する可動子と、ボビンの内部に複数設けられた永久磁石を有する固定子とから構成されている。そして、このリニアモータは、コイルの外周面に沿うように接触して取り付けられた熱伝達部材で、コイルで発生した熱を放熱させることにより、コイルの蓄熱を防止して、コイルの焼損を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2006/040913号公報(図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、各コイルの外周面の形状は、各コイルによって異なることから、コイルの外周面と熱伝達部材の内周面との間に隙間が開いてしまい、コイルから熱伝達部材への熱伝達が十分で無く、コイルの発熱を熱伝達部材によって十分に放熱させることができないという問題があった。このため、コイルの焼損を防止するために、コイルに流す電流量が制限され、移動装置の移動速度が制限されてしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、冷却性能を高めたリニアモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決する請求項1に係るリニアモータの発明は、連ねて設けられた複数の磁力発生部材を有する固定子と、前記固定子の外側に巻回され、前記固定子の軸線方向に連ねて設けられた複数のコイルと、前記各コイルの外周面に沿うように接触して取り付けられた熱伝達部材を有し、前記固定子に移動可能に取り付けられた可動子と、から構成されたリニアモータであって、互いに対向した一対の当接面が形成され、当該一対の当接面で前記熱伝達部材及び前記コイルを挟んだ状態で収納し、前記熱伝達部材を前記コイルの外周面に圧着させる筐体を有し、前記熱伝達部材と前記当接面との間には、前記熱伝達部材と前記当接面との間の隙間を埋めるスペーサ部材が挟み込まれている
【0007】
このように、一対の当接面が熱伝達部材及びコイルを挟むことにより、熱伝達部材がコイルの外周面に圧着される。これにより、コイルの外周面と熱伝達部材の内周面との間に隙間が開いてしまうことを防止することができる。このため、コイルで発生した熱を、熱伝達部材を介して確実に放熱させることができ、リニアモータの冷却性能を向上させることが可能となる。また、熱伝達部材と当接面との間には、熱伝達部材と当接面との間の隙間を埋めるスペーサ部材が挟み込まれている。これにより、一対の当接面で熱伝達部材をコイルの外周面に確実に押圧させることができ、確実に熱伝達部材をコイルに圧着させることができる。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記コイルは、円筒形状である。これにより、磁力発生部材の外周面の断面形状を、円形状とすると、磁力発生部材の周方向の位置によらず、磁力発生部材に対してコイルの距離が均等となり、リニアモータの効率が向上する。
【0010】
請求項に係る発明は、請求項1又は請求項2において、前記スペーサ部材は、弾性を有する。これにより、各コイルの外周面の形状が各コイルによって違ったとしても、各コイルの形状の違いを、弾性を有するスペーサ部材で吸収させることができ、確実に、熱伝達部材をコイルの外周面に圧着させることができる。
【0011】
請求項に係る発明は、請求項1又は請求項2において、前記スペーサ部材は、挿入方向先端側に向かって徐々に厚さが小さくなる楔状である。これにより、楔状のスペーサ部材を当接面と熱伝達部材の間に挿入させることにより、確実に、熱伝達部材をコイルの外周面に圧着させることができる。
【0012】
請求項に係る発明は、請求項1〜請求項において、前記熱伝達部材及びコイルの外周面を囲む樹脂を前記筐体の内部に充填させた。これにより、治具でコイルと当接面とを近接させることにより、熱伝達部材をコイルの外周面に圧着させた後に、筐体の内部に樹脂を充填させると、治具を取り外した後であっても、熱伝達部材がコイルに密着された状態が維持される。また、筐体の内部に樹脂を充填させると、コイル同士の隙間やコイルと熱伝達部材との隙間に、樹脂が充填される。このため、コイルから熱伝達部材への熱伝導性が向上する。
【0013】
請求項に係る発明は、請求項1〜請求項において、前記コイルの外周面と前記熱伝達部材との間に、絶縁性及び柔軟性を有する伝熱材料が挟み込まれている。これにより、伝熱材料は柔軟性を有するので、凹凸状のコイル外周面に伝熱材料が密接する。このため、コイルで発生した熱が、確実に熱伝達部材に伝達される。また、伝熱材料は絶縁性を有するので、熱伝達部材とコイルの外周面との間に絶縁部材を配設する必要が無く、絶縁部材を配設する工程を省略することができるので、製造コストを低減させることができる。
【0014】
請求項に係る発明は、請求項1〜請求項において、前記コイルの外周面と前記熱伝達部材との間に、柔軟性を有する伝熱材料及び絶縁性を有する絶縁シートが挟み込まれている。これにより、コイルと熱伝達部材との間は、絶縁シートで絶縁されているので、伝熱材料は、絶縁性を有する必要が無い。このため、例えば、金属フィラーを分散させた熱伝導グリス等の熱伝導性の高い材料を、伝熱材料として用いることができ、コイルの外周面と熱伝達部材間の熱伝導性を向上させることができる。
【0015】
請求項に係る発明は、請求項1〜請求項において、前記熱伝達部材は、絶縁性を有する絶縁テープで被包され、前記熱伝達部材を被包する前記絶縁テープと前記コイルの外周面との間には、柔軟性を有する伝熱材料が挟み込まれている。これにより、コイルの外周面と熱伝達部材との間は、絶縁テープで絶縁されているので、伝熱材料は、絶縁性を有する必要が無い。このため、例えば、金属フィラーを分散させた熱伝導グリス等の熱伝導性の高い材料を、伝熱材料として用いることができ、コイルの外周面と熱伝達部材間の熱伝導性を向上させることができる。また、平滑な熱伝達部材を絶縁テープが被包しているので、熱伝達部材と絶縁テープとの間に空気が入らないのは勿論のこと、熱伝達部材を被包している絶縁テープもまた平滑なので、絶縁テープと熱伝達部材との間に空気が入らない。このため、コイルの外周面と熱伝達部材間の熱伝導性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態のリニアモータの上面図である。
図2図1のA−A断面図である。
図3図1のB−B断面図である。
図4】可動子の製造工程を表した図であり、ボビンに治具が取り付けられている状態の断面図である。
図5】第2実施形態のリニアモータの断面図である。
図6】第3実施形態のリニアモータの断面図である。
図7】第4実施形態のリニアモータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態のリニアモータの構造の説明)
以下に図1図3を用いて本発明の第1実施形態のリニアモータ100の構造について説明する。なお、本実施形態のリニアモータ100は、電子部品実装装置の装着ヘッドを移動させる移動装置に用いられるが、電子部品実装装置の構成は、上記した特許文献1や特開2010−172070号公報に開示され周知であるので、説明を割愛する。
【0018】
本実施形態のリニアモータ100は、三相のリニアモータであり、図1に示すように、固定子10と、この固定子10に移動可能に取り付けられた可動子20とから構成されている。固定子10は、電子部品実装装置の基台に装架され、可動子20及び図示しないリニアガイドに装着ヘッドが取り付けられて、被移動部材である装着ヘッドが基台に対して予め設定された経路に沿って移動可能となっている。
【0019】
図2に示すように、固定子10は、円筒形状のパイプ12と、このパイプ12の内部に収納された円柱形状の複数の永久磁石11を有している。パイプ12は、各永久磁石11の磁束を透過させる非磁性材料(ステンレス鋼等)により構成されている。永久磁石11は、隣接する永久磁石11のS極どうし、N極どうしが後述のスペーサ(不図示)を挟んで対向するように、パイプ12内に一直線状に連ねて設けられている。なお、隣接する永久磁石11間には、鉄等の磁性体で構成された扁平な円柱形状のスペーサ(不図示)が挟み込まれている。このスペーサは、ヨークとしての役割を果たす。
【0020】
図1図3に示すように、可動子20は、ボビン21、複数のコイル22、筐体29、及び、冷却部材35を有している。ボビン21は、円筒形状の樹脂等の非磁性体であり、その内部に固定子10が挿通されている。複数のコイル22は、ボビン21の外周面に巻回され、ボビン21の軸線方向に所定間隔をおいて複数設けられている。言い換えると、複数のコイル22は、固定子10の外側に巻回され、固定子10の軸線方向に連ねて設けられている。
【0021】
図2に示すように、冷却部材35は、熱伝達部材36と放熱部材37とから構成され、熱伝導性の高いアルミニウムや銅等の金属で構成されている。本実施形態では、熱伝達部材36は、内部が中空であり、その内部に作動液及び網目状のウイックが封入されたヒートパイプである。熱伝達部材36は、各コイル22の外周面に沿うようにそれぞれ接触する断面形状が円弧形状の集熱部36aと、この集熱部36aの一端からコイル22の中心から遠ざかる向き(外側)に延出する放熱部36bとから構成されている。
【0022】
図2に示すように、放熱部36bは集熱部36aの上部(上方又は上端と水平位置を含む)に位置している。これにより、集熱部36aで蒸発した作動液が、確実に放熱部36bに移動し、また、放熱部36bにおいて凝集した作動液がその自重により確実に集熱部36aに戻る。このため、作動液が集熱部36aと放熱部36b間において蒸発と凝集を繰り返して確実に循環するので、コイル22で発生した熱を確実に放熱部材37で放熱させることができる。
【0023】
本実施形態では、図2に示すように、各集熱部36aと各コイル22の間には、絶縁性及び柔軟性を有するシリコン樹脂や熱伝導グリス等の伝熱材料23が挟み込まれている。図2に示す実施形態では、コイル22の外周面が全周に渡って伝熱材料23で被覆されているが、各集熱部36aと各コイル22の間のみに、伝熱材料23が挟み込まれている実施形態であっても差し支え無い。なお、本実施形態では、集熱部36aの内側の曲率半径は、コイル22を被覆した伝熱材料23の曲率半径より僅かに小さくなっている。このため、集熱部36aの内周面が伝熱材料23に確実に密着するようになっている。
【0024】
図1図3に示すように、放熱部36bには、放熱部材37が取り付けられている。本実施形態では、放熱部材37は、放熱部36bと接続する多数のフィン37aを備えている。放熱部材37の端部には、ファン32が設けられ、放熱部材37は図示しないダクトで覆われている。ファン32によって放熱部材37の内部に空気が送風されて放熱部材37が冷却される。
【0025】
図1図2に示すように、筐体29は、互いに対向した一対の当接面29a、29bと、これら当接面29a、29bの下端を接続する接続板29cとから構成されている。図1図2に示すように、コイル22及び熱伝達部材36は、当接面29a、29bによって挟んだ状態で、筐体29内に収納されている。本実施形態では、図2に示すように、集熱部36aと当接面29aとの間には、集熱部36aと当接面29aとの間の隙間を埋める板状のスペーサ部材25が圧入により挟み込まれている。スペーサ部材25は、本実施形態では、弾性(柔軟性)を有するゴムやシリコン樹脂等である。スペーサ部材25の厚さは、集熱部36aと当接面29aとの間の隙間の寸法より大きくなっている。
【0026】
図2に示すように、集熱部36a及びコイル22の外周面を囲むように熱硬化性樹脂39が筐体29の内部に充填されている。熱硬化性樹脂39は、コイル22同士の隙間やコイル22と集熱部36a隙間に充填されている。なお、筐体29の両側には、端末部材28が取り付けられ、両端にあるコイル22の側面が端末部材28に当接している。
【0027】
複数のコイル22は、順番に、U相、V相、W相、U相、V相、W相…とされている。それぞれの相のコイル22に、それぞれ電気角で120°毎に位相がずれた交流電流を流すと、永久磁石11の磁力とコイル22の磁力との相互作用により、可動子20に推力が発生し、可動子20が固定子10に対して移動する。この際に、コイル22が発熱するが、上述のように、コイル22で発生した熱は、冷却部材35によって放熱される。
【0028】
(第1実施形態の可動子の製造方法の説明)
次に、図4を用いて、第1実施形態の可動子20の製造方法について説明する。図4に示すように、コイル22、伝熱材料23、及び冷却部材35を取り付けたボビン21を、筐体29内に収納し、集熱部36aと当接面29aとの間にスペーサ部材25を挟み込ませた後に、治具50をセットする。治具50は、ボビン21内に挿通するロッド51、ロッド51と当接面29aを近接させる近接機構52とから構成されている。
【0029】
本実施形態では、近接機構52は、ロッド51の両端に取り付けられる連結部材53と、当接面29aの外側面と密接するプレート54、及びボルト55から構成されている。プレート54と対向する位置の連結部材53には、ボルト穴53aが形成されている。ボルト穴53aと対向する位置のプレート54には、貫通穴54aが形成されている。
【0030】
ボビン21を筐体29内に収納後に、ボビン21にロッド51を挿通し、ロッド51の両端に連結部材53を取り付け、プレート54を当接面29aに密接させる。そして、貫通穴54aにボルト55を挿通した後に、ボルト55をボルト穴53aに螺着し、ボルト55を締めると、ロッド51とプレート54が近接し、ボビン21と当接面29aがロッド51とプレート54によって圧縮される。すると、当接面29aが僅かにボビン21側に変形し、当接面29aによってスペーサ部材25を介して集熱部36aがコイル22側に押圧され、集熱部36aがコイル22の外周面に被覆された伝熱材料23に圧着する。なお、ロッド51は、端末部材28に形成された貫通穴28aを貫通しているが、貫通穴28aの内径は、ロッド51の外径よりも大きいので、ロッド51の動きが端末部材28によって阻害されない。
【0031】
この状態で、筐体29内に熱硬化性樹脂39を注入して充填し、熱硬化性樹脂39を熱硬化させた後に、治具50を取り外す。可動子20から治具50が取り外された状態であっても、熱硬化した熱硬化性樹脂39によって、集熱部36aが伝熱材料23に密着した状態が維持される。また、各コイル22が強固にボビン21に固定される。
【0032】
なお、以上説明した第1実施形態では、弾性を有するスペーサ部材25を使用しているが、集熱部36aの幅とほぼ同じ幅の剛体のスペーサ部材25を用いても差し支え無い。この実施形態では、厚さの異なるスペーサ部材25を複数種類用意し、各コイル22の外周面と当接面29aとの隙間に応じて、厚さの異なるスペーサ部材25を選択し、当該スペーサ部材25をコイル22の外周面と当接面29aとの間に圧入して、各集熱部36aを伝熱材料23に圧着させる。
【0033】
(第2実施形態のリニアモータの構造の説明)
以下に、図5を用いて、第2実施形態のリニアモータ200の構造について、第1実施形態のリニアモータ100と異なる点について説明する。なお、第2実施形態のリニアモータ200において、第1実施形態のリニアモータ100と同じ構造の部分については、同じ番号を付して、その説明を省略する。
【0034】
図5に示すように、第2実施形態のスペーサ部材26は、剛体であり、挿入方向先端側に向かって徐々に厚さが小さくなる楔状である。筐体29内に熱硬化性樹脂39を注入する前に、楔状のスペーサ部材26を、当接面29aと集熱部36aとの間に挿入により挟み込ませ、集熱部36aを伝熱材料23に圧着させる。なお、集熱部36aの幅と殆ど同じ幅のスペーサ部材26を、各コイル22と当接面29aとの間に挟み込ませると、コイル22の外周形状によらずに、集熱部36aを確実に伝熱材料23に圧着させることができるので、より好ましい。
【0035】
(第3実施形態のリニアモータの構造の説明)
以下に、図6を用いて、第3実施形態のリニアモータ300の構造について、第1実施形態のリニアモータ100と異なる点について説明する。なお、第3実施形態のリニアモータ300において、第1実施形態のリニアモータ100と同じ構造の部分については、同じ番号を付して、その説明を省略する。
【0036】
第3実施形態のリニアモータ300では、コイル22の外周面と集熱部36aとの間に、柔軟性を有する伝熱材料33及び絶縁性を有する絶縁シート34が挟み込まれている。図6に示す実施形態では、コイル22の外周面は、柔軟性を有する伝熱材料33で被覆され、伝熱材料33で被覆されたコイル22全体が、絶縁シート34で被覆されている。なお、本実施形態では、絶縁シート34は、アラミド紙である。
【0037】
(第4実施形態のリニアモータの構造の説明)
以下に、図7を用いて、第4実施形態のリニアモータ400の構造について、第1実施形態のリニアモータ100と異なる点について説明する。なお、第4実施形態のリニアモータ400において、第1実施形態のリニアモータ100と同じ構造の部分については、同じ番号を付して、その説明を省略する。
【0038】
第4実施形態のリニアモータ400では、各集熱部36aは、絶縁性を有する絶縁テープ27で被包され、絶縁テープ27とコイル22の外周面との間には、柔軟性を有する伝熱材料31が挟み込まれている。なお、本実施形態では、絶縁テープ27は、ポリイミドフィルムである。
【0039】
(本実施形態のリニアモータの効果の説明)
以上詳細に説明したように、本実施形態のリニアモータ100〜400によれば、図2図5、及び図6に示すように、集熱部36a(熱伝達部材36)及びコイル22が一対の当接面29a、29bで挟み込まれ、集熱部36aがコイル22の外周面に圧着される。これにより、コイル22の外周面と集熱部36aの内周面との間に隙間が開いてしまうことを防止することができる。このため、コイル22で発生した熱を、熱伝達部材36を介して確実に放熱させることができ、リニアモータ100〜400の冷却性能を向上させることが可能となる。
【0040】
また、図2図5、及び図6に示すように、ボビン21及びコイル22は、円筒形状である。これにより、ボビン21の内部に位置する永久磁石11(磁力発生部材)の外周面の断面形状を、ボビン21の内周面に対応した円形状とすると、永久磁石11の周方向の位置によらず、永久磁石11に対してコイル22の距離が均等となり、リニアモータ100〜400の効率が向上する。
【0041】
また、図2に示すように、集熱部36a(熱伝達部材)と当接面29aとの間には、集熱部36aと当接面29aとの間の隙間を埋めるスペーサ部材25が圧入により挟み込まれている。これにより、一対の当接面29a、29bで集熱部36aをコイル22の外周面に確実に押圧させることができ、確実に集熱部36aをコイル22の外周面に圧着させることができる。
【0042】
また、スペーサ部材25は、柔軟性を有する。これにより、各コイル22の外周面の形状が各コイル22によって違ったとしても、各コイル22の形状の違いを、柔軟性を有するスペーサ部材25で吸収させることができ、確実に、集熱部36aをコイル22の外周面に圧着させることができる。
【0043】
また、図5に示すように、第2実施形態のリニアモータ200のスペーサ部材26は、挿入方向先端側に向かって徐々に厚さが小さくなる楔状である。これにより、楔状のスペーサ部材26を当接面29aと集熱部36a(熱伝達部材)の間に挟み込ませることにより、確実に、集熱部36aをコイル22の外周面に圧着させることができる。
【0044】
また、図2図5、及び図6に示すように、集熱部36a(熱伝達部材)及びコイル22の外周面を囲む熱硬化性樹脂を筐体29の内部に充填させている。これにより、図4に示すように、治具50でボビン21と当接面29aとを近接させることにより、集熱部36aをコイル22の外周面に圧着させた後に、筐体29の内部に熱硬化性樹脂を充填させ、当該熱硬化性樹脂を熱硬化させると、治具50を取り外した後であっても、集熱部36aがコイル22の外周面に密着された状態が維持される。また、筐体29の内部に熱硬化性樹脂を充填させると、コイル22同士の隙間やコイル22と集熱部36aとの隙間に、熱硬化性樹脂が充填される。このため、コイル22から集熱部36aへの熱伝導性が向上する。
【0045】
また、図2に示すように、第1実施形態のリニアモータ100では、集熱部36a(熱伝達部材)とコイル22の外周面との間に、絶縁性及び柔軟性を有する伝熱材料23が挟み込まれている。これにより、伝熱材料23は柔軟性を有するので、凹凸状のコイル22外周面に伝熱材料23が密接する。このため、コイル22で発生した熱が、確実に集熱部36aに伝達される。また、伝熱材料23は絶縁性を有するので、集熱部36aとコイル22の外周面との間に絶縁部材を配設する必要が無く、絶縁部材を配設する工程を省略することができるので、製造コストを低減させることができる。
【0046】
また、図6に示すように、第3実施形態のリニアモータ300では、コイル22の外周面と熱伝達部材36との間に、柔軟性を有する伝熱材料33及び絶縁性を有する絶縁シート34が挟み込まれている。これにより、コイル22と集熱部36aとの間は、絶縁シート34で絶縁されているので、伝熱材料33は、絶縁性を有する必要が無い。このため、例えば、金属フィラーを分散させた熱伝導グリス等の熱伝導性の高い材料を、伝熱材料33として用いることができ、コイルと集熱部36a間の熱伝導性を向上させることができる。
【0047】
また、図7に示すように、第4実施形態のリニアモータ400では、集熱部36a(熱伝達部材)は、絶縁性を有する絶縁テープ27で被包され、集熱部36aを被包する絶縁テープ27とコイル22の外周面との間には、柔軟性を有する伝熱材料31が挟み込まれている。これにより、コイル22の外周面と集熱部36aとの間は、絶縁テープ27で絶縁されているので、伝熱材料31は、絶縁性を有する必要が無い。このため、例えば、金属フィラーを分散させた熱伝導グリス等の熱伝導性の高い材料を、伝熱材料31として用いることができ、コイル22の外周面と集熱部36a間の熱伝導性を向上させることができる。また、平滑な集熱部36aを絶縁テープ27が被包するので、集熱部36aと絶縁テープ27との間に空気が入らないのは勿論のこと、集熱部36aを被包している絶縁テープ27もまた平滑なので、絶縁テープ27と伝熱材料31との間に空気が入らない。このため、コイル22の外周面と集熱部36a間の熱伝導性を向上させることができる。
【0048】
なお、上述した実施形態では、磁力を発生させる磁力発生部材として永久磁石11を用いているが、磁力発生部材として電磁石を用いても差し支え無い。また、以上説明した実施形態では、ボビン21及びコイル22は、円筒形状であるが、角筒形状であっても差し支え無い。この実施形態の場合も、集熱部36aは、コイル22の外周面に対応した形状であり、各コイル22の外周面に沿うように接触する。
【0049】
また、以上説明した実施形態では、固定子10は、円筒形状のパイプ12と、このパイプ12の内部に収納された円柱形状の複数の永久磁石11とから構成されている。しかし、固定子10は、一直線状に連ねて設けられた複数のリング状の永久磁石と、これら複数のリング状の永久磁石を貫通する円柱形状のロッドとから構成されたものであっても差し支え無い。この実施形態の永久磁石は、その外周側がN極とされるとともにその内周側がS極とされたものと、その外周側がS極とされるとともにその内周側がN極とされたものが、磁極が交互に変わるように一直線状に連ねて設けられている。そして、隣接する永久磁石間には、非磁性体で構成されたスペーサが挟み込まれている。
【0050】
当接面29a、29bの対向距離を、集熱部36aとコイル22を併せた幅寸法より僅かに小さくし、冷却部材35が取り付けられたコイル22を当接面29a、29b間に圧入する構造とすれば、集熱部36aをコイル22の外周面や伝熱材料23に密着させることができる。この実施形態の場合には、スペーサ部材25、26は不要である。
【0051】
以上説明した実施形態では、熱硬化性樹脂39を筐体29内に充填させているが、熱硬化性樹脂39の代わりに、2液硬化樹脂や光硬化樹脂等の樹脂を用いても差し支え無い。
【0052】
また、本実施形態のリニアモータ100は、電子部品実装装置の装着ヘッドを移動させる移動装置以外にも、工作機械や移送機器等にも用いることができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0053】
10…固定子、 11…永久磁石(磁力発生部材)、 20…可動子、 21…ボビン、 22…コイル、 23…伝熱材料、 25…スペーサ部材、 26…スペーサ部材、 29…筐体、 29a、29b…当接面、 33…伝熱材料、 34…絶縁シート、 36…熱伝達部材、 100…第1実施形態のリニアモータ、 200…第2実施形態のリニアモータ、 300…第3実施形態のリニアモータ、 400…第4実施形態のリニアモータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7