特許第5840274号(P5840274)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5840274ストロムライシン1と特異的に反応するモノクローナル抗体
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  • 特許5840274-ストロムライシン1と特異的に反応するモノクローナル抗体 図000011
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5840274
(24)【登録日】2015年11月20日
(45)【発行日】2016年1月6日
(54)【発明の名称】ストロムライシン1と特異的に反応するモノクローナル抗体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/02 20060101AFI20151210BHJP
   C07K 16/40 20060101ALI20151210BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20151210BHJP
   G01N 33/577 20060101ALI20151210BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20151210BHJP
【FI】
   C12N15/00 C
   C07K16/40ZNA
   G01N33/53 D
   G01N33/577 B
   !C12P21/08
【請求項の数】4
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-207193(P2014-207193)
(22)【出願日】2014年10月8日
(62)【分割の表示】特願2010-549427(P2010-549427)の分割
【原出願日】2010年1月21日
(65)【公開番号】特開2015-13898(P2015-13898A)
(43)【公開日】2015年1月22日
【審査請求日】2014年10月8日
(31)【優先権主張番号】特願2009-22768(P2009-22768)
(32)【優先日】2009年2月3日
(33)【優先権主張国】JP
【微生物の受託番号】IPOD  FERM BP-3743
【微生物の受託番号】IPOD  FERM BP-3744
【微生物の受託番号】IPOD  FERM BP-11198
【微生物の受託番号】IPOD  FERM BP-11199
(73)【特許権者】
【識別番号】390010205
【氏名又は名称】協和ファーマケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100126653
【弁理士】
【氏名又は名称】木元 克輔
(72)【発明者】
【氏名】藤本 昇
(72)【発明者】
【氏名】中村 協枝
【審査官】 伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−318449(JP,A)
【文献】 国際公開第92/013096(WO,A1)
【文献】 シグマ総合カタログ, 2004-2005, p.1272右下欄 M6552、及び、シグマモノクローナル抗体M6552の
【文献】 Biochemical and Biophysical Research Communications, 1993, Vol.193, No.1, pp.364-370
【文献】 Hybridoma,1995, Vol.14, No.4, pp.383-390
【文献】 Biochemical Journal, 1988, Vol.253, pp.187-192
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C07K 16/40
PubMed
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マウス由来単クローン性抗ヒトストロムライシン1抗体産生ハイブリドーマ296−29C1(国際寄託番号:FERM BP−11199)又は296−23A8(国際寄託番号:FERM BP−11198)が産生する、モノクローナル抗体。
【請求項2】
請求項1に記載のモノクローナル抗体を用いることを特徴とする、免疫染色法。
【請求項3】
請求項1に記載のモノクローナル抗体を用いて、ストロムライシン1を定量することを特徴とする、ストロムライシン1の免疫学的測定法。
【請求項4】
ストロムライシン1に対する2種類以上のモノクローナル抗体を用いる免疫学的測定法であって、前記モノクローナル抗体のうちの少なくとも1種類が請求項1に記載のモノクローナル抗体である、請求項に記載の免疫学的測定法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストロムライシン1と特異的に反応するモノクローナル抗体並びにそれを用いた免疫染色法及び免疫学的測定法に関する。
【背景技術】
【0002】
血管やリンパ管及び関節軟骨の基底膜や結合組織の構成タンパク、いわゆる細胞外マトリックスの分解には、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)と総称される一群の酵素が関与している。MMPsにはサブグループがあり、ストロムライシン1、2及び3は、ストロムライシン群のサブグループに属する。ストロムライシン1は、プロテオグリカナーゼあるいはMMP−3とも呼ばれ、各種のサイトカインあるいは各種の増殖因子等で刺激された線維芽細胞や腫瘍細胞で産生される物質である。生体内では、慢性関節リウマチ疾患患者の関節局所で産生されるほか、血液中あるいは関節液中に存在する(特許文献1)。従って、患者におけるストロムイシン1の定量が慢性関節リウマチの診断に利用されている。
【0003】
また、ストロムライシン2(MMP−10)は、Mullerらにより遺伝子がクローニングされ、ストロムライシン1と同様な基質特異性を持つ(非特許文献1)。ストロムライシン3(MMP−11)はBassetらにより遺伝子がクローニングされ、癌の進行度に関連していると考えられている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平8−5920号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Mullerら,Biochem.J.,253,187−192,1988
【非特許文献2】Bassetら,Nature,348,699−704,1990
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ストロムライシン1、2及び3は、非常によく似たアミノ酸配列や基質特異性を持っており、ストロムライシン1に対する抗体を作製した場合、ストロムライシン2や3と交差反応する可能性が高い。上記特許文献1ではストロムライシン1に対するモノクローナル抗体が複数得られているが、それらの抗体が、ストロムライシン2や3と交差反応性を有する可能性がある。慢性関節リウマチをより精確に診断するためには、ストロムライシン1をより精度良く定量することが必要である。
【0007】
そこで本発明は、ストロムライシン1をより高感度及びより正確に定量することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、マウス由来単クローン性抗ヒトストロムライシン1抗体産生ハイブリドーマ296−29C1(国際寄託番号:FERM BP−11199)又は296−23A8(国際寄託番号:FERM BP−11198)が産生する、モノクローナル抗体を提供する。上記2種類のハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体は、ストロムライシン1及び血清に対して高い反応性を有している。そのため、上記モノクローナル抗体は、血清中のストロムライシン1の免疫学的測定に利用できる。
【0009】
本発明のモノクローナル抗体は、免疫染色法に用いることができる。本発明のモノクローナル抗体を用いた免疫染色法によれば、ストロムライシン1を特異的に可視化することができる。
【0010】
本発明のモノクローナル抗体は、ストロムライシン1を定量する、ストロムライシン1の免疫学的測定法に使用できる。本発明のモノクローナル抗体を用いた免疫学的測定法によれば、ストロムライシン1を確度良く定量することができる。
【0011】
上記免疫学的測定法は、1種類のモノクローナル抗体を用いる競合型イムノアッセイ、2種類のモノクローナル抗体を用いるサンドイッチ法を代表とするイムノアッセイ、及び2種類以上のモノクローナル抗体を用いる凝集法等による免疫測定法であって、2種類以上のモノクローナル抗体を用いる場合は、使用するモノクローナル抗体のうち少なくとも1種類を本発明のモノクローナル抗体とすることが好ましい。2種類以上のモノクローナル抗体を用いることで、ストロムライシン1に対する特異性がより高くなり、より正確にストロムライシン1を定量することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ストロムライシン1をより高感度及びより精確に定量することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ストロムライシン1ペプチドを分画して得られた各画分のペプチドとモノクローナル抗体との反応性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
一実施形態において、ストロムライシン2及びストロムライシン3と交差反応せず、ストロムライシン1と特異的に反応する、モノクローナル抗体を提供する。本発明のモノクローナル抗体は、ストロムライシン2及びストロムライシン3と交差反応しないため、試料中にストロムライシン2やストロムライシン3が含まれていても、ストロムライシン1のみと特異的に反応することができる。
【0015】
上記モノクローナル抗体は、ストロムライシン2及びストロムライシン3に対する交差反応性がストロムライシン1に対する反応性の5%以下であることが好ましい。このようなモノクローナル抗体は、ストロムライシン1に対してより特異的である。
【0016】
また、一実施形態において、配列番号1の一部のアミノ酸配列からなるペプチドと特異的に反応し、かつ、ストロムライシン1と特異的に反応するモノクローナル抗体であって、該アミノ酸配列は配列番号1の425番〜436番の配列を含み、該ペプチドの長さが12〜20アミノ酸残基である、モノクローナル抗体を提供する。上記モノクローナル抗体は、ストロムライシン2及びストロムライシン3と交差反応しないことが好ましい。配列番号1のアミノ酸配列はストロムライシン1のアミノ酸配列を表し、配列番号1の425番〜436番の配列からなるペプチドは、交差反応性に関与すると考えられる。
【0017】
また、一実施形態において、ストロムライシン1と特異的に反応するモノクローナル抗体であって、ストロムライシン1をリジルエンドペプチダーゼで分解することによりストロムライシン1に対する反応性を消失する、モノクローナル抗体を提供する。上記モノクローナル抗体は、ストロムライシン2及びストロムライシン3と交差反応しないことが好ましい。リジルエンドペプチダーゼの分解により、反応性を消失するモノクローナル抗体は、ストロムライシン1タンパク質の高次構造を認識して反応する可能性がある。
【0018】
上記モノクローナル抗体は、免疫染色法に用いることができる。本発明のストロムライシン2及びストロムライシン3と交差反応しないモノクローナル抗体を用いた免疫染色法によれば、試料中にストロムライシン2やストロムライシン3が含まれていてもそれらは染色されず、ストロムライシン1を特異的に可視化することができる。
【0019】
上記モノクローナル抗体は、ストロムライシン1を定量する、ストロムライシン1の免疫学的測定法に使用できる。本発明のストロムライシン2及びストロムライシン3と交差反応しないモノクローナル抗体を用いた免疫学的測定法によれば、ストロムライシン2及びストロムライシン3が試料中に含まれていてもそれらは検出されないため、ストロムライシン1を確度良く定量することができる。
【0020】
上記免疫学的測定法は、1種類のモノクローナル抗体を用いる競合型イムノアッセイ、2種類のモノクローナル抗体を用いるサンドイッチ法を代表とするイムノアッセイ、及び2種類以上のモノクローナル抗体を用いる凝集法等による免疫測定法であって、2種類以上のモノクローナル抗体を用いる場合は、使用するモノクローナル抗体のうち少なくとも1種類を本発明のモノクローナル抗体とすることが好ましい。2種類以上のモノクローナル抗体を用いることで、ストロムライシン1に対する特異性がより高くなり、より正確にストロムライシン1を定量することができる。
【0021】
本発明で使用されるモノクローナル抗体は、Kohlerら,Nature,256,495,1975等により開示された、ミエローマ細胞を用いての細胞融合技術を利用して得られたモノクローナル抗体であってよい。本発明で使用されるモノクローナル抗体は、次のような工程で作製できる。
1.免疫原性抗原の調製
2.免疫原性抗原による動物の免疫
3.ミエローマ細胞(骨髄腫細胞)の調製
4.抗体産生細胞とミエローマ細胞の細胞融合
5.ハイブリドーマ(融合細胞)の選択及びモノクローン化
6.モノクローナル抗体の製造
7.ストロムライシン2及び3と交差反応しないモノクローナル抗体の選抜
【0022】
1.免疫原性抗原の調製
抗原としては、例えば、正常ヒト皮膚線維芽細胞NB1RGB(RCB222)培養上清より、Obataら,Clin.Chim.Acta,211,59−72,1992の方法に従い精製されて得られたストロムライシン1を用いることができる。こうして得られたストロムライシン1は、さらに免疫原性コンジュゲート等にしてもよいが、そのまま適当なアジュバントと混合して動物を免疫するのに使用できる。
【0023】
また、ストロムライシン1は、それを断片化したものを適当な縮合剤を介して種々の担体タンパク質類と結合させてハプテン−タンパク質の免疫原性コンジュゲートとすることもできる。例えば、天然の細胞から分子クローニングにより得られたDNA配列又は既に知られたゲノム配列から、酵素を使用して又は化学合成によってDNA配列又は修飾DNA配列を得て、それを微生物、動物、植物、若しくは昆虫等で発現させて得られたリコンビナント抗原として用いることができる。また、それらの情報を利用し、ペプチド化学合成法により得られた、ストロムライシン1に特異的なアミノ酸配列を含むペプチド又は改変ペプチドを用いることもできる。担体タンパク質類と結合させる場合は、担体タンパク質類をまず活性化することができる。こうした活性化にあたり活性化結合基を導入することが挙げられる。活性化結合基としては、(1)活性化エステルあるいは活性化カルボキシ基、例えばニトロフェニルエステル基、ペンタフルオロフェニルエステル基、1−ベンゾトリアゾールエステル基、N−スクシンイミドエステル基等、(2)活性化ジチオ基、例えば2−ピリジルジチオ基等が挙げられる。担体タンパク質類としては、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH),牛血清アルブミン(BSA)、卵白アルブミン、グロブリン、ポリリジン等のポリペプチド、細菌菌体成分、例えばBCG等が挙げられる。
【0024】
2.免疫原性抗原による動物の免疫
動物を免疫するには、例えば村松繁ら編,実験生物学講座14,免疫生物学,丸善株式会社,昭和60年、日本生化学会編,続生化学実験講座5,免疫生化学研究法,東京化学同人,1986年、日本生化学会編,新生化学実験講座12,分子免疫学III,抗原・抗体・補体,東京化学同人,1992年等に記載の方法に準じて行うことができる。抗原と共に用いられるアジュバントとしては、例えばフロイント完全アジュバント、リビ(Ribi)アジュバント、百日咳ワクチン、BCG、リピッドA、リポソーム、水酸化アルミニウム、シリカ等が挙げられる。免疫は、例えばBALB/c等のマウスをはじめとする動物を使用して行われる。抗原の投与量は、例えばマウスに対して約1〜400μg/動物で、一般には宿主動物の腹腔内や皮下に注射し、以後1〜4週間おきに、好ましくは1〜2週間ごとに腹腔内、皮下、静脈内あるいは筋肉内に追加免疫を2〜10回程度反復して行う。免疫用のマウスとしてはBALB/c系マウスの他、BALB/c系マウスと他系マウスとのF1マウス等を用いることもできる。必要に応じ、抗体価測定系を調製し、抗体価を測定して動物免疫の程度を確認できる。
【0025】
3.ミエローマ細胞(骨髄腫細胞)の調製
細胞融合に使用される無限増殖可能株(腫瘍細胞株)としては免疫グロブリンを産生しない細胞株から選ぶことができ、例えばP3−NS−1−Ag4−1(NS−1、Kohlerら,Eur.J.Immunol.,6,511〜519,1976)、SP2/0−Ag14(SP2、Shulmanら,Nature,276,269〜270,1978)、マウスミエローマMOPC−21セルライン由来のP3−X63−Ag8−U1(P3U1、Yeltonら,Current topics in Microbiol.and Immunol.,81,1〜7,1978)、P3−X63−Ag8(X63、Kohlerら,Nature,256,495〜497,1975)、P3−X63−Ag8.653(653、Kearneyら,J.Immunol.,123,1548〜1550,1979)等を用いることができる。8−アザグアニン耐性のマウスミエローマ細胞株はダルベッコ変法イーグル培地(DMEM培地)、RPMI−164
0培地等の細胞培地に、例えばペニシリン、アミカシン等の抗生物質、牛胎児血清(FCS)等を加え、さらに8−アザグアニン(例えば5〜45μg/ml)を加えた培地で継代されるが、細胞融合の2〜5日前に正常培地で継代して所要数の細胞株を用意することができる。また使用細胞株は、凍結保存株を約37℃で完全に解凍したのちRPMI−1640培地等の正常培地で3回以上洗浄後、正常培地で培養して所要数の細胞株を用意したものであってもよい。
【0026】
4.抗体産生細胞とミエローマ細胞の細胞融合
上記2.の工程に従い免疫された動物、例えばマウスは最終免疫後、2〜5日後にその脾臓が摘出され、脾細胞懸濁液を得る。脾細胞の他、生体各所のリンパ節細胞を得て、それを細胞融合に使用することもできる。こうして得られた脾細胞懸濁液と上記3.の工程に従い得られたミエローマ細胞株を、例えば最小必須培地(MEM培地)、DMEM培地、RPMI−1640培地等の細胞培地中に置き、細胞融合剤、例えばポリエチレングリコールを添加する。細胞融合剤としては、この他各種当該分野で知られたものを用いることができ、例えば不活性化したセンダイウイルス(HVJ:Hemagglutinating virus of Japan)等が挙げられる。好ましくは、例えば30〜60%のポリエチレングリコールを0.5〜2ml加えることができる。そのようなポリエチレングリコールの分子量は1000〜8000であることが好ましく、さらに分子量が1000〜4000であることが好ましい。融合培地中でのポリエチレングリコールの濃度は、30〜60%となるようにすることが好ましい。必要に応じ、例えばジメチルスルホキシド等を少量加え、融合を促進することもできる。融合に使用する脾細胞(リンパ球):ミエローマ細胞株の割合は、例えば1:1〜20:1とすることが挙げられるが、より好ましくは4:1〜10:1とすることができる。融合反応を1〜10分間行い、次にRPMI−1640培地等の細胞培地を加える。融合反応処理は複数回行うこともできる。融合反応処理後、遠心等により細胞を分離した後選択用培地に移す。
【0027】
5.ハイブリドーマ(融合細胞)の選択及びモノクローン化
選択用培地としては、例えばヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含む、FCS含有MEM培地又はRPMI−1640培地等の培地、いわゆるHAT培地が挙げられる。選択培地交換の方法は、一般的には培養プレートに分注した容量と当容量を翌日加え、その後1〜3日ごとにHAT培地で半量ずつ交換して行うことができるが、適宜これに変更を加えて行うこともできる。また融合後8〜16日目には、アミノプテリンを除いた、いわゆるHT培地で1〜4日ごとに培地交換をすることができる。フィーダーとして、例えばマウス胸腺細胞を使用することができ、それが好ましい場合がある。ハイブリドーマの増殖のさかんな培養ウェルの培養上清を、例えば放射免疫分析(RIA)、酵素免疫分析(ELISA)、蛍光免疫分析(FIA)等の測定系、又は蛍光惹起細胞分離装置(FACS)等で、ストロムライシン1若しくはその断片ペプチド又は標識抗マウス抗体を用いて目的抗体を検出し、スクリーニングしたり分離したりする。次に、目的抗体を産生しているハイブリドーマをクローニングする。クローニングは、寒天培地中でコロニーをピックアップするか、あるいは限界希釈法により行うことができる。限界希釈法でクローニングすることがより好ましい。クローニングは複数回行うことが好ましい。
【0028】
6.モノクローナル抗体の製造
得られたハイブリドーマ株は、FCS含有MEM培地、RPMI−1640培地等の適当な増殖用培地中で培養し、その培地上清から所望のモノクローナル抗体を得ることが出来る。大量の抗体を得るためには、ハイブリドーマを腹水化することが挙げられる。この場合ミエローマ細胞由来の動物と同系の組織適合性動物の腹腔内に各ハイブリドーマを移植し、増殖させるか、例えばヌードマウス等に各ハイブリドーマを移植し、増殖させ、該動物の腹水中に産生されたモノクローナル抗体を回収して得ることが出来る。ハイブリドーマの移植に先立ち、プリスタン(2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン)等の鉱物油を腹腔内投与した後、ハイブリドーマを増殖させ、腹水を採取すればよい。腹水液はそのまま、あるいは従来公知の方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿法等の塩析、セファデックス等によるゲルろ過法、イオン交換クロマトグラフィー法、電気泳動法、透析、限外ろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、高速液体クロマトグラフィー法等により精製してモノクローナル抗体として用いることができる。好ましくは、モノクローナル抗体を含有する腹水は、硫安分画した後、DEAE−セファロースのような陰イオン交換ゲル及びプロテインAカラムのようなアフィニティーカラム等で処理し、精製分離処理できる。特に好ましくは抗原又は抗原断片(例えば合成ペプチド、組換え抗原タンパク質あるいはペプチド等、抗体が特異的に認識する部位)を固定化したアフィニティークロマトグラフィー、プロテインAを固定化したアフィニティークロマトグラフィー等が挙げられる。
【0029】
7.ストロムライシン2及び3と交差反応しない抗体の選抜
6.で得られたストロムライシン1に対するモノクローナル抗体の中から、ストロムライシン2及びストロムライシン3と交差反応しない抗体を選抜する。選抜は、イムノアッセイ、例えば競合型イムノアッセイ又は非競合型イムノアッセイで行うことができ、RIA、ELISA等を用いることができ、B−F分離を行ってもあるいは行わなくてもできる。好ましくは直接吸着法又はサンドイッチ法によるELISAが挙げられる。アッセイは直接法でも間接法でもよい。また間接法の変法、例えばPAP法(ペルオキシダーゼ アンチペルオキシダーゼ法)、ABC法(アビジン ビオチン コンプレックス法)、プロテインA法等を用いることもできる。
【0030】
例えば、直接吸着法によるELISAでは、一定濃度のストロムライシン1を抗原として固相化させる。固相は、後に示す担体を好適に使用することができる。固相化後、抗原抗体反応及び酵素反応に関与しないタンパク質を固相に吸着させてブロッキングすることが好ましい。次に、ストロムライシン1に対するモノクローナル抗体を固相に接触させて、抗原抗体反応を行う。モノクローナル抗体は、酵素で標識されていてもいなくてもよい。反応しなかった余分な抗体は固相を洗浄して除去することができる。モノクローナル抗体に酵素を標識した場合は、酵素の基質を加え、酵素反応の生成物の量を測定する。モノクローナル抗体に酵素を標識していない場合は、モノクローナル抗体と特異的に反応する、酵素で標識済みの抗体(二次抗体)をモノクローナル抗体に作用させる。モノクローナル抗体に結合していない二次抗体を除去し、酵素の基質を加え、酵素反応の生成物の量を測定する。酵素反応生成物の量はストロムライシン1に対する反応性に比例する。
【0031】
次に、ストロムライシン2及びストロムライシン3各々を抗原として、上記直接吸着法によるELISAを実施する。酵素反応の生成物の量を測定する。酵素反応生成物の量は各抗原に対する反応性に比例するので、ストロムライシン1を用いたときの酵素反応生成物の量に対する、ストロムライシン2及び3各々を用いたときの酵素反応生成物の量を各々に対する交差反応性とする。ストロムライシン2及び3に対する交差反応性をそれぞれ測定し、両方に交差反応しないモノクローナル抗体を選抜する。
【0032】
上記直接吸着法のELISAによるアッセイ以外にも、例えば、サンドイッチ法のELISAによっても、本発明の、ストロムライシン2及びストロムライシン3と交差反応せずにストロムライシン1と特異的に反応するモノクローナル抗体を選抜することができる。サンドイッチ法では、2種類のストロムライシン1に対する抗体を用いる。その一方を、6.で得られたストロムライシン1に対するモノクローナル抗体とし、もう一方をストロムライシンと特異的に反応することが既知のモノクローナル抗体とする。ストロムライシンと特異的に反応することが既知のモノクローナル抗体としては、例えば、上記特許文献1に記載の、ストロムライシン1に対するモノクローナル抗体を用いることができる。一方のモノクローナル抗体を固相化する。固相化後、抗原抗体反応及び酵素反応に関与しないタンパク質を固相に吸着させてブロッキングすることが好ましい。次に、抗原として一定濃度のストロムライシン1及びもう一方のモノクローナル抗体を加え、抗原抗体反応を行う。モノクローナル抗体は、酵素等で標識されていてよい。反応しなかった余分な抗体は固相を洗浄して除去することができる。酵素の基質を加え、酵素反応の生成物の量を測定する。酵素反応生成物の量はストロムライシン1に対する反応性に比例する。
【0033】
次に、ストロムライシン2及びストロムライシン3各々を抗原として、上記サンドイッチ法によるELISAを実施する。酵素反応の生成物の量を測定する。酵素反応生成物の量は各抗原に対する反応性に比例するので、ストロムライシン1を用いたときの酵素反応生成物の量に対する、ストロムライシン2及び3各々を用いたときの酵素反応生成物の量を各々に対する交差反応性とする。ストロムライシン2及び3に対する交差反応性をそれぞれ測定し、両方に交差反応しないモノクローナル抗体を選抜する。
【0034】
なお、本明細書でいう抗原と「特異的に反応する」又は「反応性を示す」とは、直接法又はサンドイッチ法のいずれかのELISAによる抗原抗体反応を行なった場合に、例えば、室温で1時間以上又は4℃で一晩抗原抗体反応を行ない、固相を洗浄後、テトラメチルベンジジン(TMB)等の発色剤を用いて酵素標識による発色反応を行ない、その後硫酸により発色反応を停止するという測定条件下で、A450(一次抗体が0ng/mlのときとの差)が0.05以上であることをいう。好ましくは、A450が0.08以上であり、より好ましくは0.1以上である。また、本明細書でいう「ストロムライシン2に対する交差反応性」とは、モノクローナル抗体の、ストロムライシン1に対する反応性を100%としたときのストロムライシン2に対する反応性の大きさのことをいう。「ストロムライシン3に対する交差反応性」も同様とする。交差反応性の大きさは、上記直接吸着法又はサンドイッチ法によるELISAのどちらによって測定してもよい。本明細書でいう「交差反応しない」とは、直接吸着法又はサンドイッチ法のいずれかのELISAによって測定した交差反応性が5%以下のときのことをいう。好ましくは、サンドイッチ法によって測定した交差反応性が5%以下である。本発明のモノクローナル抗体のストロムライシン2及び3に対する交差反応性は好ましくは2.4%以下であり、より好ましくは1.3%以下である。
【0035】
8.ストロムライシン1の反応部位の特定
上記のようにして得られた、ストロムライシン1と特異的に反応し、ストロムライシン2及びストロムライシン3と交差反応しないモノクローナル抗体は、ストロムライシン1の特定の反応部位と反応する。このような反応部位を同定し、この反応部位と反応するモノクローナル抗体を1.〜6.で説明した方法で作製することにより、作製されたモノクローナル抗体の交差反応性を調節することが可能となる。反応部位は、以下のようにして同定することができる。酵素によってストロムライシン1をペプチドに分解する。得られたペプチドをクロマトグラフィー等従来公知の方法によって分画し、7.で得られたモノクローナル抗体と各画分のペプチドとを反応させれば、反応性の高い画分にストロムライシン1の反応部位であるペプチドが含まれている。該反応性の高い画分に含まれるペプチドは、従来公知の方法を用いてさらに精製することができ、公知のアミノ酸配列分析法により、反応部位のアミノ酸配列を決定することができる。
【0036】
9.ストロムライシン1の一部からなるペプチドと反応性を示すモノクローナル抗体の選抜
また、本発明は、配列番号1の一部のアミノ酸配列からなるペプチドと特異的に反応し、かつ、ストロムライシン1と特異的に反応するモノクローナル抗体であって、該アミノ酸配列は配列番号1の425番〜436番の配列を含み、該ペプチドの長さが12〜20アミノ酸残基である、モノクローナル抗体を提供する。配列番号1のアミノ酸配列はストロムライシン1タンパク質のアミノ酸配列である。配列番号1の425番〜436番の配列からなるペプチドは交差反応性に関与すると考えられる。上記モノクローナル抗体は、6.で得られたストロムライシン1に対するモノクローナル抗体の中から、配列番号1の425番〜436番の配列からなるペプチドと反応性を示すモノクローナル抗体を選抜することによって得ることができる。選抜は、7.で示したアッセイ法によってすることができ、例えば、7.に示した直接吸着法によるELISAにおいて、ストロムライシン1の代わりに配列番号1の425番〜436番の配列からなるペプチドを抗原として用いればよい。上記モノクローナル抗体は、ストロムライシン2及びストロムライシン3と交差反応しないことが好ましい。ストロムライシン2及びストロムライシン3と交差反応しないモノクローナル抗体は、7.に示す方法により選抜することができる。
【0037】
10.ストロムライシン1の分解により反応性を消失するモノクローナル抗体の選抜
また、本発明はストロムライシン1に特異的に反応するモノクローナル抗体であって、ストロムライシン1をリジルエンドペプチダーゼで分解することによりストロムライシン1に対する反応性を消失する、モノクローナル抗体を提供する。このようなモノクローナル抗体は、ストロムライシン1タンパク質の二次構造又は三次構造等の立体構造を認識するモノクローナル抗体である。「ストロムライシン1を分解することによりストロムライシン1に対する反応性を消失する」とは、ストロムライシン1分解後の反応性が分解前の反応性より低いことをいう。このようなモノクローナル抗体は、6.で得られたストロムライシン1に対するモノクローナル抗体の中から、以下のようにして選抜することによって得ることができる。酵素によってストロムライシン1をペプチドに分解する。ストロムライシン1と特異的に反応するモノクローナル抗体の、ストロムライシン1に対する反応性を、分解前と分解後で比較し、ストロムライシン1分解後の反応性が分解前の反応性より低いモノクローナル抗体を選抜する。分解後の反応性がより低いものほど、ストロムライシン1の一次構造によらず、ストロムライシン1の立体構造を認識してストロムライシン1と反応するモノクローナル抗体である。好ましくは、分解前のストロムライシン1に対する反応性を100%としたとき、分解後の反応性が10%以下である。反応性は7.に示す方法により直接吸着法又はサンドイッチ法のいずれかのELISAによって測定することができ、好ましくは、直接吸着法のELISAによって測定した分解後の反応性が分解前の反応性の10%以下である。より好ましくは、8.0%以下であり、さらに好ましくは7.3%以下である。
【0038】
こうして得られたモノクローナル抗体は、市販のアイソタイプ特異的抗マウスIg抗体、例えばアイソタイプ特異的ウサギ抗マウスIg抗体等を用いてその抗体構成鎖の重鎖及び軽鎖のタイプについて調べることができる。
【0039】
得られたモノクローナル抗体をコードする塩基配列を決定し、遺伝子組換え技術により抗体を作製することも可能である。さらにこれら抗体をトリプシン、パパイン、ペプシン等の酵素により処理して、場合により還元して得られるFab、Fab’、F(ab’)といった抗体フラグメントにして使用してもよい。標識する抗体としては、IgG画分、例えば抗体含有物を硫安分画した後、DEAE−セファロースのような陰イオン交換ゲルで処理して得られるIgG画分等、更にはペプシン消化後還元して得られる特異的結合部Fab’等を用いることができる。これらの場合の標識の例としては、下記するように酵素(ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼあるいはβ−D−ガラクトシダーゼ等)、化学物質、蛍光物質あるいは放射性同位元素等がある。
【0040】
本発明の、ストロムライシン2及び3と交差反応せず、ストロムライシン1と特異的に反応するモノクローナル抗体を利用して、免疫染色法を行うことができる。本発明の免疫染色法は、本発明のモノクローナル抗体と試料中の抗原とを反応させ抗原抗体複合体を形成させる工程、及び、該抗原抗体複合体を可視化する工程とからなる。抗原抗体複合体は、抗体に予め標識を付与し、抗原抗体反応の後に標識を変化させ、その変化を信号として検知し、可視化することができる。本発明の免疫染色法は、抗原に直接反応する抗体(一次抗体)を標識する直接法でもよいし、標識していない一次抗体を認識する別の抗体(二次抗体)を標識する間接法でもよい。また間接法の変法、例えばPAP法(ペルオキシダーゼ アンチペルオキシダーゼ法)、ABC法(アビジン ビオチン コンプレックス法)、プロテインA法等を用いることもできる。また、試料を電気泳動し、電気泳動したものを膜に転移させ、その膜を免疫染色することもできる。本発明のモノクローナル抗体を用いた免疫染色法によれば、試料中にストロムライシン2やストロムライシン3が混在していても、ストロムライシン1のみから特異的に信号が検出され、ストロムライシン1の存在及び局在を可視化できる。また、本発明のモノクローナル抗体を利用して、免疫細胞染色又は免疫組織染色も行うことができる。
【0041】
本発明のモノクローナル抗体は、免疫学的測定法に利用することができる。本発明の免疫学的測定法は、本発明のモノクローナル抗体と試料中の抗原とを反応させて抗原抗体複合体を形成させる工程、形成された抗原抗体複合体を検知する工程、及び、検知された抗原抗体複合体の量から試料中の抗原の量を測定する工程とからなる。抗原抗体複合体は、抗原抗体複合体の濁度として検知することができ、また、抗体に予め標識を付与し、抗原抗体反応の後に標識を変化させ、その変化を信号として検知することができる。免疫学的測定法は、イムノアッセイ、例えば競合型イムノアッセイ又は非競合型イムノアッセイで行うことができ、RIA、ELISA、凝集法、比濁法、イムノクロマト法、ウェスタンブロット法等を用いることができ、B−F分離を行ってもあるいは行わないでもできる。免疫学的測定法は抗原に直接反応する抗体(一次抗体)を標識する直接法でもよいし、標識していない一次抗体を認識する別の抗体(二次抗体)を標識する間接法でもよい。また間接法の変法、例えばPAP法(ペルオキシダーゼ アンチペルオキシダーゼ法)、ABC法(アビジン ビオチン コンプレックス法)、プロテインA法等を用いることもできる。
【0042】
上記直接法による競合型イムノアッセイに用いるモノクローナル抗体として、本発明のモノクローナル抗体を用いる。サンドイッチ法で2種類のモノクローナル抗体を用いる場合は、少なくとも一方を本発明のモノクローナル抗体とする。もう一方は、ストロムライシン1を認識する抗体であれば特に限定されない。種類が異なるのであれば、2種類とも本発明の、ストロムライシン2及び3と交差反応せず、ストロムライシン1と特異的に反応するモノクローナル抗体を用いてもよい。また、上記2種類のモノクローナル抗体のうちの一方を標識物で標識された可溶性の抗体とし、もう一方を固相化抗体としてもよい。凝集法等による免疫測定法で用いる2種類以上のモノクローナル抗体のうち、少なくとも1種類を本発明のモノクローナル抗体とする。種類が異なるのであれば、全て本発明のモノクローナル抗体を用いてもよい。また、少なくとも1種類が本発明のモノクローナル抗体であれば、3種類以上の抗体を使用してもよい。
【0043】
上記免疫学的測定法では、例えば、既知の濃度のストロムライシン1を含む標準液を用いて濃度標準曲線を作成し、その濃度標準曲線から、試料中のストロムライシン1の濃度を測定し、ストロムライシン1の定量をすることができる。本発明の免疫学的測定法によれば、試料中にストロムライシン2又はストロムライシン3が混在していてもそれらを検出せず、ストロムライシン1を特異的に定量することができる。
【0044】
本発明の免疫染色法及び免疫学的測定法では、酵素等で標識したモノクローナル抗体と、担体に結合された抗体とを順次反応させることもできるし、同時に反応させることもできる。また、本発明のモノクローナル抗体を酵素等で標識して、免疫染色用試薬又は免疫学的測定用試薬としてもよい。凝集法においては、抗原及び2種類以上の非標識モノクローナル抗体を同時又は順次反応させることができる。抗体及び試料を加える順序は選ばれた担体系の型により異なる。担体は例えば、後述するものの中から適宜選定できる。感作されたプラスチック等のビーズを用いた場合には、酵素等で標識したモノクローナル抗体を、測定すべき物質を含む検体試料と共に適当な試験管中に一緒に入れ、その後該感作されたプラスチック等のビーズを加えることにより反応を行うことができる。反応にあたっては至適pH、例えばpH約4〜9に保つように適当な緩衝液中で行うことができる。特に適切な緩衝剤としては、例えばアセテート緩衝剤、クエン酸塩緩衝剤、フォスフェート緩衝剤、トリス緩衝剤、トリエタノールアミン緩衝剤、ボレート緩衝剤、グリシン緩衝剤、炭酸塩緩衝剤、トリス−塩酸緩衝剤等が挙げられる。緩衝剤は互いに任意の割合で混合して用いることができる。抗原抗体反応は約0℃〜60℃の間の温度で行うことが好ましい。
【0045】
本発明の免疫染色法及び免疫学的測定法において、本発明のモノクローナル抗体、その他の抗体、及び抗原とのインキュベーション処理は、平衡に達するまで行うことができるが、抗原抗体反応の平衡が達成されるよりもずっと早い時点で反応を止めることができ、液相又は固相のいずれかにおける濁度や酵素等の標識の存在の程度を測ることができる。測定操作は、自動化された測定装置を用いて行うことが可能であり、比色計、ルミネセンスディテクター、ホトディテクター等を使用して、濁度や、基質が酵素の作用で変換されて生ずる信号を検知して測定することもできる。抗原抗体反応においては、それぞれ用いられる試薬、測定すべき物質、さらには酵素等の標識を安定化したり、抗原抗体反応自体を安定化するように適切な手段を講じたりすることができる。さらに、非特異的な反応を除去し、阻害的に働く影響を減らしたり、あるいは測定反応を活性化したりするため、タンパク質、安定化剤、界面活性化剤、キレート化剤等をインキュベーション溶液中に加えることもできる。当該分野で普通に採用されているか、あるいは当業者に知られている、非特異的結合反応を防ぐためのブロッキング処理を施してもよく、例えば、哺乳動物等の正常血清タンパク質、アルブミン、スキムミルク、乳発酵物質、コラーゲン、ゼラチン等で処理することができる。非特異的結合反応を防ぐ目的である限り、それらの方法は特に限定されず用いることが出来る。例えば洗浄、撹拌、振とう、ろ過あるいは抗原の予備抽出等は、特定の状況のもとで適宜採用される。特定の試薬、緩衝液等の濃度、温度あるいはインキュベーション処理時間等のその他の測定条件は、試料中の抗原の濃度、試料の性質等の要素に従い変えることができる。当業者は通常の実験法を用いながら、各測定に対して有効な最適の条件を適宜選定して、測定を行うことが出来る。
【0046】
抗原あるいは抗体を固相化できる多くの担体が知られており、本発明ではそれらから適宜選んで用いることができる。特に好適に使用されるものとしては、例えばガラス、例えば活性化ガラス、多孔質ガラス、シリカゲル、シリカ−アルミナ、アルミナ、磁化鉄、磁化合金等の無機材料、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリレート、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリアクリルアミド、架橋ポリアクリルアミド、スチレン−メタクリレート共重合体、ポリグリシジルメタクリレート、アクロレイン−エチレングリコールジメタクリレート共重合体等、架橋化アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、デキストラン、アガロース、架橋アガロース、セルロース、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテート等の天然又は変成セルロース、架橋デキストラン、ナイロン等のポリアミド、ポリウレタン、ポリエポキシ樹脂等の有機高分子物質、さらにそれらを乳化重合して得られたもの、細胞、赤血球等で、必要に応じ、シランカップリング剤等で官能性基を導入してあるものが挙げられる。
【0047】
さらに、ろ紙、ビーズ、試験容器の内壁、例えば試験管、タイタープレート、タイターウェル、ガラスセル、合成樹脂製セル等の合成材料からなるセル、ガラス棒、合成材料からなる棒、末端を太くしたりあるいは細くしたりした棒、末端に丸い突起をつけたりあるいは扁平な突起をつけた棒、薄板状にした棒等の固体物質(物体)の表面等が挙げられる。これら担体へは、抗体を結合させることができ、好ましくは本発明で得られるストロムライシン1に対し特異的に結合するモノクローナル抗体を結合させることができる。担体とこれら抗原抗体反応に関与するものとの結合は、吸着等の物理的な手法、あるいは縮合剤等を用いたり、活性化されたもの等を用いたりする化学的な方法、さらには相互の化学的な結合反応を利用した手法等により行うことが出来る。
【0048】
標識としては、酵素、酵素基質、酵素インヒビター、補欠分子類、補酵素、酵素前駆体、アポ酵素、蛍光物質、色素物質、化学ルミネッセンス化合物、発光物質、発色物質、磁気物質、金属粒子、例えば金コロイド等、放射性物質等を挙げることができる。酵素としては、脱水素酵素、還元酵素、酸化酵素等の酸化還元酵素、例えばアミノ基、カルボキシル基、メチル基、アシル基、リン酸基等を転移するのを触媒する転移酵素、例えばエステル結合、グリコシド結合、エーテル結合、ペプチド結合等を加水分解する加水分解酵素、リアーゼ、イソメラーゼ、リガーゼ等を挙げることができる。酵素は複数の酵素を複合的に用いて検知に利用することもできる。例えば酵素的サイクリングを利用することもできる。
【0049】
代表的な酵素標識としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)等のペルオキシダーゼ、大腸菌β−D−ガラクトシダーゼ等のガラクトシダーゼ、マレエートデヒドロゲナーゼ、グルコース−6−フォスフェートデヒドロゲナーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコアミラーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、カタラーゼ、ウシ小腸アルカリホスファターゼ、大腸菌アルカリホスファターゼ等のアルカリホスファターゼ等が挙げられる。アルカリホスファターゼを用いた場合、4−メチルウンベリフェリルフォスフェート等のウンベリフェロン誘導体、ニトロフェニルホスフェート等のリン酸化フェノール誘導体、NADPを利用した酵素的サイクリング系、ルシフェリン誘導体、ジオキセタン誘導体等の基質を使用したりして、生ずる蛍光、発光等により測定できる。ルシフェリン、ルシフェラーゼ系を利用したりすることもできる。カタラーゼを用いた場合、過酸化水素と反応して酸素を生成するので、その酸素を電極等で検知することもできる。電極としてはガラス電極、難溶性塩膜を用いるイオン電極、液膜型電極、高分子膜電極等であることもできる。酵素標識は、ビオチン標識体と酵素標識アビジン(ストレプトアビジン)に置き換えることも可能である。標識は、複数の異なった種類の標識を使用することもできる。こうした場合、複数の測定を連続的に、あるいは非連続的に、そして同時にあるいは別々に行うことを可能にすることもできる。
【0050】
標識を検知するための信号の形成に、4−ヒドロキシフェニル酢酸、1,2−フェニレンジアミン、テトラメチルベンジジン等と西洋ワサビペルオキシダーゼ、ウンベリフェリルガラクトシド、ニトロフェニルガラクトシド等とβ−D−ガラクトシダーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ等の酵素試薬の組み合わせも利用でき、ヒドロキノン、ヒドロキシベンゾキノン、ヒドロキシアントラキノン等のキノール化合物、リポ酸、グルタチオン等のチオール化合物、フェノール誘導体、フェロセン誘導体等を酵素等の作用により形成しうる化合物が使用できる。
【0051】
蛍光物質又は化学ルミネッセンス化合物としては、フルオレセインイソチオシアネート、例えばローダミンBイソチオシアネート、テトラメチルローダミンイソチオシアネート等のローダミン誘導体、ダンシルクロリド、ダンシルフルオリド、フルオレスカミン、フィコビリプロテイン、アクリジニウム塩、ルミフェリン、ルシフェラーゼ、エクォリン等のルミノール、イミダゾール、シュウ酸エステル、希土類キレート化合物、クマリン誘導体等が挙げられる。標識するには、チオール基とマレイミド基の反応、ピリジルジスルフィド基とチオール基の反応、アミノ基とアルデヒド基の反応等を利用して行うことができ、公知の方法あるいは当該分野の当業者が容易になしうる方法、さらにはそれらを修飾した方法の中から適宜選択して適用できる。また免疫原性コンジュゲート作製に使用されることのできる縮合剤、担体との結合に使用されることのできる縮合剤等を用いることができる。
【0052】
縮合剤としては、例えばグルタルアルデヒド、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソチオシアネート、N,N’−ポリメチレンビスヨードアセトアミド、N,N’−エチレンビスマレイミド、エチレングリコールビススクシニミジルスクシネート、ビスジアゾベンジジン、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、N−スクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)、N−スルホスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート、N−スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノベンゾエート、N−スクシンイミジル4−(1−マレイミドフェニル)ブチレート、N−(ε−マレイミドカプロイルオキシ)コハク酸イミド(EMCS)、イミノチオラン、S−アセチルメルカプトコハク酸無水物、メチル−3−(4’−ジチオピリジル)プロピオンイミデート、メチル−4−メルカプトブチリルイミデート、メチル−3−メルカプトプロピオンイミデート、N−スクシンイミジル−S−アセチルメルカプトアセテートが挙げられる。
【0053】
本発明の免疫学的測定方法の対象となる試料としては、あらゆる形態の溶液やコロイド溶液等が挙げられるが、好ましくは生物由来の流体試料、例えば血液、血漿、血清、関節液、脳脊髄液、唾液、羊水、尿、その他の体液、細胞培養液、組織培養液、生検検体、例えば細胞、組織、臓器、腫瘍組織等が挙げられる。上記試料は患者における慢性関節リウマチの検出のために用いることができる。特に好ましくは血漿、血清、関節液等が挙げられる。本発明のモノクローナル抗体を用いた免疫染色法では、生検検体、例えば細胞、組織、臓器、腫瘍組織が好適に用いられる。上記試料に対し、本発明のモノクローナル抗体を慢性関節リウマチのマーカーとして使用し、免疫細胞染色法や免疫組織染色法を行うことができる。上記試料は染色前に必要に応じ固定化することができる。固定化には当該分野で広く使用されているものあるいはそれから誘導されたものを使用できる。例えばペリオデイト−リジン−パラホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、ブアン、ホルマリン、パラホルムアルデヒド、ザンボニー、アクロレイン等が使用できる。またパラフィン等で固定化することもできる。
【0054】
本発明はまた、本発明のモノクローナル抗体を含むことを特徴とする、免疫学的測定用試薬を提供する。上記免疫学的測定用試薬によれば、簡便かつ感度よく、ストロムライシン1を特異的に検出することができる。また、上記試薬は患者における慢性関節リウマチの検出のために用いることができる。
【0055】
本発明はさらに、本発明の免疫染色法又は免疫学的測定法で用いられる前述の物質を1又はそれ以上を充填した1又はそれ以上の容器を含む、医薬又は臨床検査分野あるいは分析測定分野で許容されるパック及びキットにも関する。パック及びキットには、このような(単一あるいは複数の)容器と一緒に、医薬、検査薬又は生物学的産物の製造、使用又は販売を規制する政府機関により指示された形態の注意書(文書)であって、ヒトに関連した製品の製造、使用又は販売に関する該政府機関の承認を示している注意書(添付文書)が添付されていてよい。測定試薬又はキットを本発明の免疫染色法又は免疫学的測定法に適用するにあたっては、特別の条件、操作等の設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えて、本発明の測定対象物質あるいはそれと実質的に同等な活性を有する物質に関連した測定系を構築すればよい。
【実施例】
【0056】
以下、実施例により、本発明によるモノクローナル抗体及びその製造方法並びに該モノクローナル抗体を用いた免疫染色法、さらに該モノクローナル抗体を用いてストロムライシン1を免疫学的に定量する方法について具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの例示に限定されるものではない。
【0057】
(実施例1 抗原及び標準品の作製)
以下のように、Obataら,Clin.Chim.Acta,211,59−72,1992に記載の方法に従って、正常ヒト皮膚線維芽細胞NB1RGB(RCB222)培養上清より、ストロムライシン1を精製した。NB1RGB細胞を、10%ウシ胎児血清、14mM HEPES、1.4g/l NaHCO含有RITC80−7基礎培地(pH7.2)中、5%CO存在下、37℃でコンフルエントまで培養した。細胞を100mlのRITC80−7基礎培地で洗浄後、2g/lラクトアルブミン水解物及び10000U/lインターロイキン1α含有無血清RITC80−7基礎培地300ml中で培養し、その上清を回収した。
【0058】
上記上清を、セファロース4Bカラムに供した。このセファロース4Bカラムには、ストロムライシン1に対するモノクローナル抗体55−3G3(国際寄託番号:FERM BP−3744、寄託日:平成3年6月12日、寄託機関:独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、茨城県つくば市東1−1−1 つくばセンター中央第6)を、マニュアル記載の操作法に従ってCNBr−活性化セファロース(GEヘルスケア社)に予め結合させたものが充填してある。上清を供したカラムを0.1M NaCl、5mM CaCl及び5g/l CHAPS含有30mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)で洗浄し、カラムに結合したタンパク質を3M KSCNで溶出した。次に、0.4M NaCl、10mM CaCl及び0.5g/l Brij 35含有50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)で平衡化したセファデックスG−25カラム(GEヘルスケア社)に、上記溶出液を供した。ボイドボリューム画分を集め、セファデックスG−25カラムを平衡化したのと同じ緩衝液で平衡化したコンカナバリンA−セファロースカラム(GEヘルスケア社)に供し、カラムに結合しなかったタンパク質を集めた。最後に、ウルトロゲルAcA44カラム(PALL社)に、コンカナバリンAカラムに結合しなかったタンパク質画分を供し、クロマト分画した。
【0059】
タンパク質の純度は、ドデシル硫酸ポリアクリルアミドゲル電気泳動により確認した。精製した酵素は均一であり、分子量57kDaを示した。この精製酵素を抗原及び標準品とした。ストロムライシン2はR&D Systems社製のものを、ストロムライシン3はAbcam社製のものを標準品として使用した。
【0060】
(実施例2 モノクローナル抗体の調製)
以下のように、Obataら,Clin.Chim.Acta,211,59−72,1992に記載の方法に従って、実施例1で精製したストロムライシン1を抗原としてモノクローナル抗体を調製した。
【0061】
(a)ストロムライシン1による動物の免疫
実施例1に記載の方法により調製したストロムライシン1を44.6μg、等重量のフロイント完全アジュバントと共に6週齢BALB/c雌マウス2匹に腹腔内投与し初回免疫とした。その後19日目に0.4MNaCl、10mM CaCl及び0.5g/l Brij35含有50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)に溶解した40.4μgのストロムライシン1で追加免疫した。最終免疫として55日目に43.2μgのストロムライシン1で免疫した。最終免疫から3日後にマウス脾臓を取り出し脾臓細胞を調製した。
【0062】
(b)抗体産生細胞とミエローマ細胞の細胞融合
以下の材料及び方法を用いた。
RPMI 1640培地:RPMI 1640(JRH Biosciences製)に24mM重炭酸ナトリウム、1mMピルビン酸ナトリウム、50U/mlペニシリンGカリウム、50μg/ml硫酸ストレプトマイシン及び100μg/ml硫酸アミカシンを加え、ドライアイスでpHを7.2にし、0.22μmミリポアフィルターで除菌ろ過した。
NS−1培地:上記RPMI−1640培地に除菌ろ過したFBS(JRHBiosciences製)を15%(v/v)の濃度に加える。
PEG4000溶液:RPMI−1640培地にポリエチレングリコール4000(PEG4000,Merck and CO.,Inc.製)50%(w/w)無血清溶液を調製した。
【0063】
脾臓細胞と8−アザグアニン耐性ミエローマ細胞SP2(SP2/0−Ag14)との融合は、Oiら,Selected Methods in Cellular Immunology,351−371,W.H.Freeman&Co.,1980の方法に準じて行った。(a)で調製した脾臓細胞(生細胞率100%)とミエローマ細胞(生細胞率100%)とを5:1の割合で融合した。脾臓細胞とミエローマ細胞をそれぞれ前記RPMI−1640培地で洗浄した。次に、それぞれ同じ培地に懸濁させた脾臓細胞3.2×10個とミエローマ細胞6.4×10個を混合した。次に、1000r.p.m.で10分間の遠心分離により細胞を沈殿させ上清を完全に吸引除去した。沈殿した細胞に37℃に加温したPEG4000溶液2.1mlを穏やかに攪拌しながら1分間で滴下し、1分間攪拌し細胞を再懸濁、分散させた。次に37℃に加温したRPMI−1640培地4.2mlを2分間で滴下した。同培地14.7mlを2〜3分間で常に攪拌しながら滴下し、細胞を分散させた。これを1000r.p.m.で7分間遠心分離し上清を完全に吸引除去した。次にこの沈殿細胞に37℃に加温したNS−1培地21mlを速やかに加え、大きい細胞塊を注意深くピペッティングで分散させた。さらに同培地42mlを加えて希釈しポリスチレン製96穴マイクロウェル(岩城硝子製)にウェルあたり6×10個/0.1mlの細胞を加えた。このマイクロウェルを7%CO/93%空気中で温度37℃、湿度100%下で培養した。
【0064】
(c)選択培地によるハイブリドーマの選択的増殖
使用する培地は以下のとおりである。
HAT培地:前記実施例2(b)で述べたNS−1培地にさらにヒポキサンチン(100μM)、アミノプテリン(0.4μM)及びチミジン(16μM)を加えた。
HT培地:アミノプテリンを除去した以外は上記HAT培地と同一組成のものである。
【0065】
前記(b)の培養開始後翌日(1日目)、細胞にピペットでHAT培地2滴(約0.1ml)を加えた。2、3、5及び8日目に培地の半分(約0.1ml)を新しいHAT培地で置き換えた。11日目にハイブリドーマの充分な生育が観察された全ウェルについて、以下(d)に記載のELISAにより陽性ウェルを調べた。
【0066】
(d)細胞融合直後のELISAによる抗ストロムライシン1抗体産生ハイブリドーマの選択
以下のようにして、直接吸着法によるELISAを行った。96穴マイクロウェルプレート(Nunc社)に100ng/ウェルになるように0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)で希釈したストロムライシン1を抗原としてコートした。4℃で一晩以上放置後、コーティング液を吸引し、0.05%Tween20含有PBS(pH7.2)でマイクロウェルプレートを洗浄した。確認したいハイブリドーマの培養上清(一次抗体)を100μl/ウェル加えて、室温で約1時間インキュベート(静置)した。洗浄後、二次抗体としてヤギ抗マウスIg(G+M+A)immunoglobulin−ペルオキシダーゼ(POD)(CAPPEL社)をブロッキング液で1/10000に希釈したものを100μl/ウェル加え、室温で約1時間インキュベート(静置)した。洗浄後、基質である過酸化水素とテトラメチルベンジジン(TMB)を100μl/ウェル加え、室温で約20分反応させ、1M硫酸を100μl/ウェル加えて反応を停止させ、マイクロプレートリーダー(TOSOH、MPR A4)にて測定波長450nmでの吸光度を測定した。ストロムライシン1との反応が陽性を示した16ウェルについて、細胞の凍結及び復元を実施し、限界希釈法によるクローニングを実施した。
【0067】
(e)クローニング
以下の材料及び方法を用いた。
RPMI 1640培地−(2):RPMI1640 MEDIUM(SIGMA R8758)500ml(1本)に、FOETAL BOVINE SERUM (SIGMA F9423)50ml、PENICILLIN−STREPTOMYCIN SOLUTION(SIGMA P0781)2.5mlを添加した。
BriClone含有RPMI 1640培地;RPMI 1640培地−(2)にBriClone(Hybridoma cloning Medium)(NICB社製)を5%になるように添加した。
【0068】
凍結細胞をRPMI 1640培地−(2)中に復元させ、BriClone含有RPMI 1640培地を用いて、96穴マイクロウェルの36ウェル、36ウェル及び24ウェルにウェル当りそれぞれ5個、1個及び0.5個のハイブリドーマを加えた。5日目に全ウェルに約0.1mlのRPMI 1640培地−(2)を追加した。クローニング開始後、11日目から14日目でハイブリドーマの充分な生育が認められ、それらについて下記(f)に記すELISAを行った。テストした全ウェルが陽性でない場合、抗体陽性ウェル中のコロニー数を確認し、ウェル中に1コロニー(ない場合はできるだけコロニー数の少ないウェル)を1〜3個選び、再クローニングを行った。その結果、表1に示すように、ストロムライシン1に対するモノクローナル抗体産生細胞を12クローン得た。
【0069】
(f)クローニング時のELISAによる抗ストロムライシン1抗体産生ハイブリドーマの選択
以下のようにして、直接吸着法によるELISAを行った。直接吸着法によるELISAでは、96穴マイクロウェルプレート(Nunc社)に50ng/ウェルになるように0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)で希釈したストロムライシン1を抗原としてコートした。4℃で一晩以上放置後、コーティング液を吸引し、200μl/ウェルのブロッキング液(1%BSA及び0.1M NaCl含有0.01Mリン酸緩衝液、pH7.0)を用い、室温で1時間以上ブロッキングを行った。0.1%Tween20及び0.1M NaCl含有0.01Mリン酸緩衝液(pH7.0)でマイクロウェルプレートを洗浄後、確認したいハイブリドーマの培養上清(一次抗体)を100μl/ウェル加えて、室温で約1時間インキュベート(静置)した。洗浄後、二次抗体としてヤギ抗マウスIg(G+M+A)immunoglobulin−ペルオキシダーゼ(POD)(CAPPEL社)をブロッキング液で1/3000に希釈したものを100μl/ウェル加え、室温で約1時間インキュベート(静置)した。洗浄後、TMB One Component HRP Microwell Substrate (BioFX社, Product# TMBW−1000−01)を100μl/ウェル加え、室温で約5〜10分反応させた。1M硫酸を100μl/ウェル加えて反応を停止させ、マイクロプレートリーダー(TECAN SPECTRA)にて測定波長450nmでの吸光度を測定した。
【0070】
(実施例3 モノクローナル抗体のサブクラスの同定)
実施例2(d)記載のELISAに従って、以下のようにモノクローナル抗体のサブクラスを同定した。実施例2(d)に記載の、ストロムライシン1をコートした96穴マイクロウェルのブロッキングまでの操作を行った。0.1%Tween20及び0.1M NaCl含有0.01Mリン酸緩衝液(pH7.0)で洗浄後、各モノクローナル抗体産生ハイブリドーマの培養上清を100μl/ウェル加え、室温で約1時間インキュベート(静置)した。洗浄後、アイソタイプ特異的ウサギ抗マウスIg抗体(Mouse MonoAb−ID Kit、Zymed Laboratories社)を50μl/ウェル加え、室温で約1時間インキュベート(静置)した。更に洗浄後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識ヤギ抗ウサギIgG(H+L)抗体をブロッキング液で1/50に希釈した溶液を50μl/ウェル加え、室温で約1時間インキュベート(静置)した。洗浄後、TMB One Component HRP Microwell Substrate (BioFX社、Product#TMBW−1000−01)を100μl/ウェル加えて発色させ、1M硫酸を100μl/ウェル加えて反応を停止させ、測定波長450nmでの吸光度を測定した。その結果、表1に示すように、得られたモノクローナル抗体は、γ1/κが4個、γ2b/κが3個、μ/κが4個、α/κが1個であった。
【0071】
【表1】
【0072】
(実施例4 培養上清を用いたストロムライシン2及び3との反応性)
実施例2で得られた12種類のモノクローナル抗体産生ハイブリドーマの培養上清に対し、抗原としてストロムライシン1の代わりにストロムライシン2又はストロムライシン3を用いて、実施例2(d)の方法に従ってELISAを行った。ストロムライシン1の吸光値を100%としたときの、ストロムライシン2及び3の吸光値の割合を表2に示す。296−29C1、296−12H8、296−7B10の3クローンの抗体は、同培養上清のストロムライシン1に対する反応性を100%とすると、ストロムライシン2に対しての反応性が1%であり、ストロムライシン2と交差反応しなかった。それ以外のクローンの抗体は、ストロムライシン2に対しての反応性が10%〜337%であり、ストロムライシン2との交差反応性が認められた。また、ストロムライシン3に対する反応性は0%〜6%であり、交差反応しないものがほとんどであった。
【0073】
(実施例5 免疫染色)
ストロムライシン1及び2の各抗原をc−PAGEL(アトー社)でそれぞれ電気泳動に供した後、Sequi−Blot PVDF Membrane for Protein Sequencing(厚さ0.2μm)(Bio Rad社)にトランスファーを行った。SDSを除去するために0.1%Tween20及び0.1M NaCl含有0.01Mリン酸緩衝液(pH7.0)で、トランスファーした膜を洗浄した。さらに、1%BSA及び0.1M NaCl含有0.01Mリン酸緩衝液(pH7.0)でブロッキングを行った。この膜を、得られた12種類のモノクローナル抗体産生ハイブリドーマの培養上清中で、4〜8℃で一晩静置した。膜を洗浄後、2次抗体反応として、ヤギ抗マウスIg(G+M+A)immunoglobulin−POD(CAPPEL社)をブロッキング液で1/3000に希釈した溶液中で、室温で約2時間振とうした。膜を洗浄後、基質である過酸化水素とジアミノベンジジン(DAB)を加えて発色を行った。結果を表2に示す。296−29C1、296−12H8、296−7B10の3クローンの抗体は、ストロムライシン1との反応が認められたが、ストロムライシン2との反応が認められなかった。296−21C4、296−21F3、296−21E4、296−33F3、296−33E4、296−23A8、296−24C8、296−30C12、296−31A4の9クローンの抗体は、ストロムライシン1との反応が認められたが、ストロムライシン2とも反応が認められた。
【0074】
【表2】
【0075】
(実施例6 モノクローナル抗体の精製)
表1に示すクローンのうち、296−21C4、296−29C1、296−12H8、296−7B10、296−33F3及び296−23A8を選択し、抗体精製を行った。296−21C4、296−29C1、296−12H8、296−7B10の4種類については、細胞を増殖させ、その細胞をBalb/cマウス5匹の腹腔内に投与し、腹水を採取した。採取した腹水は、硫酸アンモニウム(硫安)分画を行い、DEAEイオン交換クロマトグラフィーにより抗体を精製した。296−33F3については、細胞を増殖させ、その細胞をBalb/cマウス5匹の腹腔内に投与し、腹水を採取した。採取した腹水を、硫安分画により抗体を精製した。296−23A8については、細胞を増殖させ、増殖後、培地を無血清培地(E−RDF培地)に交換し、約1lの培養上清を回収した。回収した培養上清より、硫安分画により抗体を精製した。
【0076】
(実施例7 精製抗体を用いたストロムライシン2及び3との反応性)
実施例2(d)の方法に従って、ELISAにより、実施例6で精製した抗体のストロムライシン2及び3に対する交差反応性を調べた。一次抗体として精製抗体を100ng/ウェル用い、測定波長450nmでの吸光度を測定した。A450(一次抗体が0ng/mlのときとの差)を表3に示す。
【0077】
【表3】
【0078】
296−29C1、296−12H8、296−7B10の3クローンの抗体はストロムライシン2と交差反応しなかった。296−33F3、296−23A8、296−21C4の順に抗体のストロムライシン2に対する交差反応性が強く認められた。公知のモノクローナル抗体55−2A4(国際寄託番号:FERM BP−3743、寄託日:平成3年6月12日、寄託機関:独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、茨城県つくば市東1−1−1 つくばセンター中央第6)は、ストロムライシン2に対する交差反応性が85.1%と高く、ストロムライシン1に対する公知のモノクローナル抗体の中にストロムライシン2と交差反応性を示すものがあることが確認された。ストロムライシン3に対しては、どのクローンの抗体もほとんど反応性が認められなかった。
【0079】
(実施例8 ストロムライシン1の免疫学的測定)
サンドイッチ法のELISAによる免疫学的測定により、ストロムライシン1の定量を行った。96穴マイクロウェルプレート(Nunc社)に、実施例6で得られた精製抗体100μg/ml含有0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)を100μl/ウェル加え、4℃で16時間静置した。抗体溶液を除き、1%BSA、0.1M NaCl及び10mM EDTA含有0.01M リン酸緩衝液(pH7.0)を300μl/ウェル加え、4℃で一晩以上ブロッキングを行い、抗体結合ウェルとした。使用時にウェルを0.1%Tween20及び0.1M NaCl含有0.01Mリン酸緩衝液(pH7.0)(以下、「洗浄液」という)で洗浄した。
【0080】
標準品ストロムライシン1を1000、250、62.5、15.6ng/mlに、また標準品ストロムライシン2及びストロムライシン3を20000、5000、1250、313、78ng/mlになるように、1%BSA及び0.1M NaCl含有0.01Mリン酸緩衝液(pH7.0)(以下、「アッセイbuffer」という)で希釈して標準液とし、ビニルプレートに20μl取った。試料として、ヒト血清も同様にビニルプレートに20μl取った。
【0081】
一方、Obataら,Clin.Chim.Acta,211,59−72,1992に記載の方法に従って、55−2A4のモノクローナル抗体をHRP(ロシュ ダイアグノスティックス社)で標識した。標識抗体をアッセイbufferで1.3μg/mlになるように希釈し、標準液又は試料を加えたウェルに100μlずつ加えた。上記ウェルから100μlを抗体結合ウェルに加えて、4℃で16時間インキュベート(静置)した。洗浄液で抗体結合ウェルを3回洗浄後、TMB One Component HRP Microwell Substrate(BioFX社)を100μl/ウェル加え、25℃で20分間反応させ、1M硫酸を100μl/ウェル加えて反応を停止させ、マイクロプレートリーダー(TECAN SPECTRA)にて測定波長450nmでの吸光度を測定した。各抗体を用いたときのA450(標識抗体が0ng/mlのときとの差)をストロムライシン1については表4に、ストロムライシン2については表5に、血清については表6に示す。
【0082】
【表4】
【0083】
【表5】
【0084】
【表6】
【0085】
選択した各精製抗体で、ストロムライシン1の濃度の標準曲線を描くことができた。しかし、296−21C4及び296−33F3の抗体を用いた場合、他の抗体を用いた場合に比べ吸光度が低く、これらの抗体のストロムライシン1分子上の結合部位が、標識抗体に使用した55−2A4のストロムライシン1分子上の結合部位と同じであるか、又は55−2A4のストロムライシン1分子上の結合部位と近いために、反応性が低いと考えられた。どの抗体も、ストロムライシン1に対する反応性と比較して、ストロムライシン2に対する反応性が低かった(表4及び5)。ストロムライシン2を用いたときの吸光度を各濃度について両対数グラフにプロットし、1000ng/mlのときの吸光度を算出し、ストロムライシン1の1000ng/mlのときの吸光度と比較した(表7)。
【0086】
【表7】
【0087】
1000ng/mlにおける、ストロムライシン2に対する反応性は、ストロムライシン1に対する反応性の0.5%〜26.9%であり、296−21C4の抗体で最も大きな交差反応性を示した。交差反応性が5%以下を許容範囲とすると、296−21C4及び296−33F3の抗体は、サンドイッチ法によるELISAでのストロムライシン1の免疫学的測定に使用できないと考えられた。直接吸着法によるELISAで、ストロムライシン2に対する交差反応性が17.1%であった296−23A8の抗体の場合、サンドイッチ法によるELISAでは2.4%と許容範囲に入っており、サンドイッチ法によるELISAでの免疫学的測定に使用できると考えられた。296−29C1、296−12H8、296−7B10の抗体は、ストロムライシン2に対する交差反応性が低く、サンドイッチ法によるELISAでの免疫学的測定に使用可能と考えられた。一方、血清を試料として用いた場合、296−21C4、296−33F3、296−7B10の抗体では血清に対する反応が認められなかった。また、296−12H8の抗体は、296−29C1や296−23A8の抗体と比べ、血清に対する反応性が低かった。296−29C1(国際寄託番号:FERM BP−11199、寄託日:平成20年12月19日、寄託機関:独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、茨城県つくば市東1−1−1 つくばセンター中央第6)や296−23A8(国際寄託番号:FERM BP−11198、寄託日:平成20年12月19日、寄託機関:独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、茨城県つくば市東1−1−1 つくばセンター中央第6)の抗体は、血清に対しても反応性がよく、血清中のストロムライシン1の免疫学的測定に利用できると考えられる。
【0088】
(実施例9 ストロムライシン1上の反応部位の解析)
以下のようにして、実施例6で得られた精製モノクローナル抗体について、ストロムライシン1分子上の反応部位の解析を行った。
【0089】
(a)ストロムライシン1の分解
エッペンドルフチューブに、0.1M Tris−HCl(pH8.5)34μl及び51μg(17μl)のストロムライシン1を加えた。さらにリジルエンドペプチダーゼ26.1mU(17μl)を加え、反応を開始した。反応は37℃、15分間行なった。反応後、反応液(分解液)をSDS−PAGEに供したところ、リジルエンドペプチダーゼのバンドは確認されたが、ストロムライシン1のバンドは認められず、充分分解されたことが示された。
【0090】
(b)分解後のストロムライシン1に対するモノクローナル抗体の反応性
リジルエンドペプチダーゼによる分解後のストロムライシン1に対する抗体の反応性を直接吸着法のELISAにより調べた。(a)で得られたストロムライシン1の分解液に932μlの0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)を加えた液の一部を0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)で1/100(ストロムライシン1濃度に換算して510ng/ml)に希釈後、96穴マイクロウェルに100μlを加え、4℃で一晩静置してコーティングした。コントロールとして、51μg/mlの分解前のストロムライシン1を同様に510ng/mlになるように希釈してコーティングした。コーティング後、1%BSA及び0.1M NaCl含有0.01Mリン酸緩衝液(pH7.0)(アッセイbuffer)300μlを加え、一晩静置した。使用時にウェルを0.01%Tween20及び0.1M NaCl含有0.01Mリン酸緩衝液(pH7.0)(洗浄液)で洗浄した。
【0091】
一次抗体として、表8に示すモノクローナル抗体を10μg/mlになるようアッセイbufferで希釈し、分解後ストロムライシン1又は分解前ストロムライシン1が結合したウェルに各100μl/ウェル加えて、25℃で1時間インキュベート(静置)した。洗浄液でウェルを洗浄後、二次抗体としてヤギ抗マウスIg(G+M+A)immunoglobulin−POD(CAPPEL社、Cat#55556)をアッセイbufferで1/1000に希釈したものを100μl/ウェル加え、25℃で40分間インキュベート(静置)した。洗浄液でウェルを洗浄後、発色剤を100μl/ウェル加え、25℃で15分間反応させ、1M硫酸を100μl/ウェル加えて反応を停止させ、マイクロプレートリーダー(TECAN SPECTRA)にて測定波長450nmでの吸光度を測定した。A450(一次抗体が0ng/mlのときとの差)及び分解前の反応性に対する分解後の反応性(%)を表8に示す。
結果を表8に示す。
【0092】
【表8】
【0093】
296−33F3及び296−12H8は、リジルエンドペプチダーゼによるストロムライシン1の分解により、その反応性がほとんど消失した。したがって、リジルエンドペプチダーゼによる分解物には反応しないことから、これらの抗体は、スロトムライシン1タンパク質の二次構造及び三次構造等の立体的な構造を認識すると考えられる。また、296−21C4及び296−29C1は、分解後のストロムライシン1に対する反応性が残存しているものの、分解前に比べて大きく低下した。また、296−23A8及び296−7B10は、分解後も高い割合で分解前のストロムライシン1に対する反応性が残存していた。55−2A4については、分解後も分解前のストロムライシン1に対する反応性の80%の反応性が残った。それぞれの抗体で、リジルエンドペプチダーゼによる分解後の反応性が低下することから、少なくとも高次構造を認識していることが示唆された。
【0094】
(c)ストロムライシン1ペプチドのFPLCによる分画
上記反応液に932μlの0.1%TFAを加え、950μlをFPLC(Fast protein liquid chromatography、AKTA explorer、GEヘルスケア社)に供するサンプルとした。カラムはC18Sephasil peptideを用い、溶出は0.1%TFA(A液)と、80%アセトニトリルを含む0.1%TFA(B液)とを用いて、20カラム容量でB液が100%となるようにした。サンプルアプライ後、6mlのA液でカラムを洗浄(1ml/画分)し、その後A液とB液のグラジエント溶液約33.2mlで溶出(0.5ml/画分)した。フラクションはサンプルアプライ後からA1とし、洗浄、溶出画分を連続して採取した。画分はA1〜A12、B1〜B12というように、12画分ずつ番号付けした。
【0095】
(d)FPLC画分に対するモノクローナル抗体の反応性
各FPLC画分に対するモノクローナル抗体の反応性を直接吸着法のELISAにより調べた。96穴マイクロウェルプレート(Nunc社)に各FPLC画分の10倍希釈溶液100μl(0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)で希釈)を加え、4℃で一晩静置した。各ウェルの液を除去し、アッセイbufferを300μl/ウェル加え、4℃で一晩ブロッキングを行いペプチド結合ウェルとした。使用時にウェルを洗浄液で洗浄した。次に、296−29C1及び296−7B10を10μg/mlになるようアッセイbufferで希釈し、ペプチド結合ウェルに各100μl/well加えて、25℃で1時間インキュベート(静置)した。洗浄液でウェルを洗浄後、二次抗体としてヤギ抗マウスIg(G+M+A)immunoglobulin−POD(CAPPEL社、Cat#55556)をアッセイbufferで1/3000に希釈したものを100μl/ウェル加え、25℃で40分間インキュベート(静置)した。洗浄後、発色剤を100μl/ウェル加え、25℃で15分間反応し、1M硫酸を100μl/ウェル加えて反応を停止させ、マイクロプレートリーダー(TECAN SPECTRA)にて測定波長450nmでの吸光度を測定した。各画分の吸光度のグラフを図1に示す。296−29C1及び296−7B10は、FPLC画分C10及びD9(以下それぞれ「Fr.C10」及び「Fr.D9」という)と反応性を示した。2つの画分に反応のピークが認められることから、リジルエンドペプチダーゼの部分分解により、2つの画分に同一の配列が含まれている可能性がある。
【0096】
(e)Fr.C10のN末端アミノ酸配列の同定
296−29C1及び296−7B10が反応したFPLC画分のうち、Fr.D9は測定波長230nmの吸光度が高い第1及び第2のピークの後に続く画分であり、ペプチドの分離が充分ではないと考えられたため、比較的シャープなピークであったFr.C10のN末端アミノ酸配列分析を行った。N末端アミノ酸配列分析は、アプロサイエンスへ外注し、Edman分解法により行なわれた。Fr.C10を50μl使用し、N末端5残基の測定をしたが、各サイクルで複数のアミノ酸が検出され、配列の確定には至らなかった。そこで、検出されたいくつかアミノ酸の中から、検出量および配列等からそのペプチド配列を推定した。その結果、QIAEDである配列が候補に挙げられた。各アミノ酸の検出量は約9pmolであった。ストロムライシン1の全アミノ酸配列(配列番号1)から候補ペプチド配列を照合し、Fr.C10に含まれるペプチドを推定した。ペプチドは、QIAEDFPGIDSK(配列番号1の425番〜436番)であることが推定された。ストロムライシン2の全アミノ酸配列(配列番号2)の中で上記ペプチド配列に相応するアミノ酸配列は、LIADDFPGVEPK(配列番号2の424番〜435番)であり、12個のアミノ酸中7個(58%)のアミノ酸が一致していた。
【0097】
(f)ストロムライシン1ペプチドとモノクローナル抗体との反応性
ペプチドQIAEDFPGIDSKを合成し、モノクローナル抗体との反応性を調べた。ペプチドの合成はInvitrogen社に外注し、95.15%の純度で8mgのペプチドを得た。測定分子量は1318.40であり、理論分子量1319.45とほぼ一致していた。このペプチドを0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)で500ng/mlになるよう希釈後、96穴マイクロウェルに100μlを加え、4℃で一晩静置してコーティングした。洗浄液で洗浄後、表9に示す各モノクローナル抗体をアッセイbufferで6.3μg/mlに希釈し、ペプチドをコーティングしたウェルに100μl/ウェルずつ加えて、25℃で1時間インキュベート(静置)した。後の操作は実施例9(b)に記載の方法と同様に行った。本実施例で得られたペプチドを抗原としたときのA450(一次抗体が0ng/mlのときとの差)を表9に示す。
【0098】
【表9】
【0099】
表9より、ストロムライシン1ペプチドQIAEDFPGIDSKに対して、296−29C1は反応性を示したが、296−7B10は反応性が低かった。Fr.C10のN末端アミノ酸配列分析の結果から、Fr.C10に含まれるペプチドのアミノ酸配列を推定し合成したが、Fr.C10には多数のペプチドが混在しており、ストロムライシン1ペプチドQIAEDFPGIDSKは、296−7B10が反応するペプチドではなかったことが示された。その他、このペプチドには、296−21C4、296−23A8及び55−2A4が反応性を示したが、これらのモノクローナル抗体はストロムライシン2との交差反応性が認められることから、交差反応性の有無は、このペプチドとその他別のペプチドや構造が関与していることが示唆された。
【受託番号】
【0100】
マウス由来単クローン性抗ヒトストロムライシン抗体産生ハイブリドーマ55−3G3(国際寄託番号:FERM BP−3744、寄託日:平成3年6月12日、寄託機関:独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、茨城県つくば市東1−1−1 つくばセンター中央第6)
マウス由来単クローン性抗ヒトストロムライシン抗体産生ハイブリドーマ55−2A4(国際寄託番号:FERM BP−3743、寄託日:平成3年6月12日、寄託機関:独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、茨城県つくば市東1−1−1 つくばセンター中央第6)
マウス由来単クローン性抗ヒトストロムライシン1抗体産生ハイブリドーマ296−29C1(国際寄託番号:FERM BP−11199、寄託日:平成20年12月19日、寄託機関:独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、茨城県つくば市東1−1−1 つくばセンター中央第6)
マウス由来単クローン性抗ヒトストロムライシン1抗体産生ハイブリドーマ296−23A8(国際寄託番号:FERM BP−11198、寄託日:平成20年12月19日、寄託機関:独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、茨城県つくば市東1−1−1 つくばセンター中央第6)
図1
【配列表】
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