特許第5840487号(P5840487)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5840487日影領域検索装置、及び日影領域検索方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5840487
(24)【登録日】2015年11月20日
(45)【発行日】2016年1月6日
(54)【発明の名称】日影領域検索装置、及び日影領域検索方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 17/50 20060101AFI20151210BHJP
   G06T 11/60 20060101ALI20151210BHJP
【FI】
   G06F17/50 680B
   G06F17/50 612A
   G06T11/60 300
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-288185(P2011-288185)
(22)【出願日】2011年12月28日
(65)【公開番号】特開2013-137652(P2013-137652A)
(43)【公開日】2013年7月11日
【審査請求日】2014年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135771
【氏名又は名称】株式会社パスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100093986
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 雅男
(74)【代理人】
【識別番号】100128864
【弁理士】
【氏名又は名称】川岡 秀男
(72)【発明者】
【氏名】小澤 淳眞
【審査官】 合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−249521(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0125275(US,A1)
【文献】 特開2011−128711(JP,A)
【文献】 特開2002−129852(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/106582(WO,A1)
【文献】 山野 高志, 吉川 眞,高密度DSMを用いた都市景観分析,地理情報システム学会講演論文集,日本,地理情報システム学会,2004年 9月30日,第13巻,pages 277-280
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 17/50
G06T 11/60
IEEE Xplore
CiNii
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の建物を含む街並の3次元モデルが格納され、モデル空間内の各建物に対するIDを参照可能なデータベースと、
前記データベースの3次元モデル空間内に太陽位置情報から得られた日照方向ベクトルを設定し、該日照方向ベクトルの始点を建物の適宜箇所に順次設定する日照ベクトル設定部と、
前記日照方向ベクトルによる日影領域を検索する日影検索部と、
前記日影検索部における日影領域の検索時に該日影領域に日影原因建物のIDを対応付けて登録する登録部と、
を有し、
かつ、前記登録部は、日影原因建物のIDを日影領域のピクセル毎に対応づけて登録する日影領域検索装置。
【請求項2】
前記3次元モデルは、数値表層モデルとして形成され、
前記日影検索部は、前記数値表層モデルの表層ピクセルを始点とする日照方向ベクトルに対応する表層ピクセル単位に影領域を検索する請求項1記載の日影領域検索装置。
【請求項3】
前記日影検索部は、地表面に投影した日照方向ベクトルの始点から終点方向に順次判定対象ピクセルを移動させ、該判定対象ピクセルの標高が当該ピクセル位置における日照方向ベクトルの標高に比して低い場合に日影ピクセルとしてベクトル始点が属する建物の建物IDとともに出力し、
判定対象ピクセルの標高が当該ピクセル位置における日照方向ベクトルの標高に比して高い場合には、当該日照方向ベクトルによる影検索を終了する請求項2記載の日影領域検索装置。
【請求項4】
前記日照ベクトル設定部は、他の表層ピクセルを始点とする日照方向ベクトルにより日影ピクセルとして判定された影判定済みピクセルを始点ピクセル候補から除外するとともに、
日影検索部は、前記影判定済みピクセルを判定対象ピクセルから除外する請求項2または3記載の日影領域検索装置。
【請求項5】
前記日照ベクトル設定部は、標高値の高い順に日照方向ベクトルの始点を選択する請求項1から4のいずれかに記載の日影領域検索装置。
【請求項6】
建物と日影領域を表示した影付き画像を生成する影付き画像生成部と、
影付き画像内の影領域を該影領域の原因となる建物に対応させて格納した影建物リンクデータと、
影付き画像中の影領域が指示された際に該影領域に対応する建物を影建物リンクデータから検索し、検索建物を当該日影領域に対する日影原因建物として画像中で識別可能に表示する識別表示部と、
を有する請求項1から5のいずれかに記載の日影領域検索装置。
【請求項7】
コンピュータにより実施される日影領域検索方法であって、
前記コンピュータが、
与えられた太陽位置情報をもとに実空間に対応する複数の建物を含む3次元モデル空間内に日照方向を示す日照方向ベクトルを日照ベクトル設定部により設定し、
前記日照方向ベクトルを前記3次元モデルに照射して形成される日影領域を該日影領域のピクセル毎に対応づけられた日影原因建物の特定情報とともに登録部により順次記憶するという各処理を実行し、
日影領域により日影原因建物を特定可能とした日影領域検索方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日影領域検索装置、及び日影領域検索方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
3次元モデルを使用した日影領域検索装置としては、特許文献1に記載のものが知られている。この従来例において、システムは、地図情報データベースと、地図情報データベースから生成した建物の立体形状に対して所定の方向から太陽光を照射して日影を発生させる日影生成手段とを有し、特定建物に対する周辺建物からの日影をシミュレート可能に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−265833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来例においては、
対象建物の日影形成範囲のみを目的とするために、日影を形成している建物を特定することはできないために、得られた結果を有効利用できないという問題がある。
【0005】
すなわち、例えば、都市計画等において、日影領域の原因となる建物を特定しようとする場合、上記従来例においては、日影、および建物が表示された3D画像を目視して感覚的に決定する必要があり、正確性、迅速性に劣るという欠点がある。
【0006】
本発明は、以上の欠点を解決すべくなされたものであって、使い勝手の良好な日影領域検索装置の提供を目的とする。また、本発明の他の目的は、上記日影領域検索装置に採用可能な日影領域検索方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば上記目的は、
複数の建物を含む街並の3次元モデルが格納され、モデル空間内の各建物に対するIDを参照可能なデータベース1と、
前記データベース1の3次元モデル空間内に太陽位置情報から得られた日照方向ベクトル2を設定し、該日照方向ベクトル2の始点を建物の適宜箇所に順次設定する日照ベクトル設定部3と、
前記日照方向ベクトル2による日影領域を検索する日影検索部4と、
前記日影検索部4における日影領域の検索時に該日影領域に日影要因建物のIDを対応付けて登録する登録部5と、
を有し、
かつ、前記登録部5は、日影原因建物のIDを日影領域のピクセル毎に対応づけて登録する日影領域検索装置を提供することにより達成される。
【0008】
本発明における日影領域検索は、3次元データ空間内の建物モデルに日照方向ベクトル2を照射することによる日影領域探索と同時に、日影領域の原因となる建物の特定がなされ、日影領域と建物IDとが関連付けて登録される。
【0009】
この結果、必要に応じて日影領域を指定してその原因となっている建物を例えば、色違いにして識別可能に表示することが可能になり、使い勝手を良好にすることができる。
【0010】
また、日影領域検索装置は、
前記3次元モデルは、数値表層モデルとして形成され、
前記日影検索部4は、前記数値表層モデルの表層ピクセルを始点とする日照方向ベクトル2に対応する表層ピクセル単位で日影領域を検索するように構成することができる。
【0011】
3次元モデルとして数値表層モデルを使用した場合には、別途立体を面情報で構成したサーフェイスモデル等の3次元形状モデルを生成する必要がなく、さらに影領域の境界を決定する3次元形状モデルの端点を求めることも不要になるために、処理効率が向上する。
【0012】
3次元モデルに数値表層モデルを使用する場合、日影領域検索装置は、
前記日影検索部4は、地表面に投影した日照方向ベクトル2の始点から終点方向に順次判定対象ピクセルを移動させ、該判定対象ピクセルの標高が日照方向ベクトル2に比して低い場合に日影ピクセルとしてベクトル始点が属する建物の建物IDとともに出力し、
判定対象ピクセルの標高が日照方向ベクトル2に比して高い場合には、当該日照方向ベクトル2による日影領域検索を終了するように構成することができる。
【0013】
日影検索部4における日影領域の検索は、地表面に投影した日照方向ベクトル2の始点から日照方向ベクトル2の終点方向に判定対象ピクセルを順次移動させながら、各々の判定対象ピクセルに対して日影となるか否かを判定することにより行われる。特定の日照方向ベクトル2に対する判定処理は、判定対象ピクセルが、DTM(数値地形モデル:Digital Terrain Model)等によって地表面であることが検出されるまで続けることも可能であるが、判定対象ピクセルの標高が日照方向ベクトル2に比して高い場合、すなわち、特定の日照方向ベクトル2に対して日向であることが検出されることを探索の終了条件とすると、探索終了判定に複雑な処理が不要となるために、全体の処理効率を高めることができる。
【0014】
さらに、日影領域検索装置は、
前記日照ベクトル設定部3は、他の表層ピクセルを始点とする日照方向ベクトル2により日影ピクセルとして判定された影判定済みピクセルを始点ピクセル候補から除外するとともに、
日影検索部4は、前記影判定済みピクセルを判定対象ピクセルから除外するように構成することができる。
【0015】
本発明によれば、適宜の表層ピクセルを始点とする日照方向ベクトル2によって一旦日影ピクセルと判定された表層ピクセルは、判定対象ピクセル、および日照方向ベクトル2の始点ピクセル候補から除外されて、再び判定、探索始点とならないために、処理効率を高めることができる。
【0016】
この場合、前記日照ベクトル設定部3は、標高値の高い順に日照方向ベクトル2の始点を選択するように日影領域検索装置を構成すると、日照方向ベクトル2の始点の標高が高ければ高いほど日影領域は広くなり、この結果、除外される判定対象ピクセル、および日照方向ベクトル2の始点ピクセル候補が多くなるために、より処理効率が向上する。
【0017】
また、日影領域検索装置は、
建物と日影領域を表示した影付き画像を生成する影付き画像生成部6と、
影付き画像内の日影領域を該影領域の原因となる建物に対応させて格納した影建物リンクデータ7と、
影付き画像中の影領域がポインティングデバイスにより指定された際に該日影領域に対応する建物を影建物リンクデータ7から検索する建物検索部と、
建物検索部において検索された建物を画像中で識別可能に表示する識別表示部8と、
を有して構成することができる。
【0018】
本発明において、影建物リンクデータ7には登録部5において登録された日影領域と日影原因建物のIDが相互に関連して格納されており、画像生成部により生成された日影付き画像が表示されるディスプレイ装置上で日影領域をマウス等のポインティング手段により指定すると、建物検索部は上記日影領域に対応する建物を影建物リンクデータ7から検索し、識別表示部8は、検索された建物に対し、色彩の変更等の利用者による識別可能な変更を加える。
【0019】
この結果、本発明によれば、利用者が画像中の影領域をクリック、あるいはカーソルによる指示操作等のポインティング操作をするだけで、日影原因建物を容易に目視することが可能になり、利用範囲が拡大する。
【0020】
以上の日影領域検索装置の実行には、
コンピュータにより実施される日影領域検索方法であって、
前記コンピュータが、
与えられた太陽位置情報をもとに実空間に対応する複数の建物を含む3次元モデル空間内に日照方向を示す日照方向ベクトル2を日照ベクトル設定部により設定し、
前記日照方向ベクトル2を前記3次元モデルに照射して形成される日影領域を該日影領域のピクセル毎に対応づけられた日影原因建物の特定情報とともに登録部により順次記憶するという各処理を実行し、
日影領域により日影原因建物を特定可能とした日影領域検索方法が使用できる。
なお、本発明によれば、
街並の3次元モデルが格納され、モデル空間内の建物に対するIDを参照可能なデータベース1と、
前記データベース1の3次元モデル空間内に太陽位置情報から得られた日照方向ベクトル2を設定し、該日照方向ベクトル2の始点を建物の適宜箇所に順次設定する日照ベクトル設定部3と、
前記日照方向ベクトル2による日影領域を検索する日影検索部4と、
前記日影検索部4における日影領域の検索時に該日影領域に日影要因建物のIDを対応付けて登録する登録部5と、
を有する日影領域検索装置や、あるいは、
与えられた太陽位置情報をもとに実空間に対応する3次元モデル空間内に日照方向を示す日照方向ベクトル2を設定し、
該日照方向ベクトル2を前記3次元モデルに照射して形成される日影領域を日影原因建物の特定情報とともに順次記憶し、
日影領域により日影原因建物を特定可能とした日影領域検索方法を提供することも可能である。

【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、日影領域に対応して日影原因建物を特定できるために、使い勝手を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明を示すブロック図である。
図2】本発明の動作を示す図で、(a)は数値表層モデルを示す平面図、(b)は影ピクセルの判定方法を示す説明図である。
図3】影付き画像を示す図である。
図4】データベースのデータ構造を示す図で、(a)は日影データ、(b)は影建物リンクデータ、(c)は(a)、(b)から導かれた影建物リンクデータである。
図5】本発明の動作を示すフローチャートで、(a)は本発明の実施の形態のフローチャート、(b)は(a)の変形例を示すフローチャートである。
図6図5(a)の他の変形例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1に示すように、日影領域検索装置は、制御部9と、制御部9により制御されて動作する建物照合部10、日照ベクトル設定部3、日影検索部4、登録部5、影付き画像生成部6、建物検索部11、識別表示部8、およびデータベース1を有する。
【0024】
データベース1は、建物13、道路14等の地物を数値表層モデルとして格納した3次元データ1aと、建物13のポリゴンデータを建物13の名称、ID等に関連付けて格納した建物データ1bと、後述する日影検索部4において検索された日影領域の位置を示す日影データ1cと、上記日影データ1cを日影原因建物13と関係付ける影建物リンクデータ7とを有する。
【0025】
数値表層モデル(以下、「DSM:Digital Surface Model」)は、図2(a)に示すように、データ格納範囲を
多数の矩形メッシュに分割し、各メッシュ(ピクセル12)に標高データを割り当てて構成される。なお、図2(a)においてメッシュは見やすさを重視して大きなメッシュサイズで示されており、さらに、図中点線で対応する建物13、道路14等を示す。
【0026】
日影データ1cは、後述するように、日影検索部4において”日影”判定されたDSM(1a)のメッシュ12の中心座標を経緯度で表記したもので、例えば、図4(a)に示すように、各日影ピクセルに対して振り当てられたピクセルIDとともに格納される。
【0027】
影建物リンクデータ7は、日影ピクセルと、日影の原因となった建物13とを対応させて登録したもので、図4(b)に示すように、日影ピクセルのピクセルIDと、建物IDとを対応させて構成することができる。この場合、影建物リンクデータ7と日影データ1cとから、図4(c)に示すように、日影ピクセル位置と建物IDとを対応させたテーブルを生成することができる。
【0028】
建物照合部10は、DSM(1a)上のピクセル12が属する建物13を特定するもので、例えば、DSMレイヤ上に建物ポリゴンレイヤを重ねることにより、建物13を特定することができる。
【0029】
日照ベクトル設定部3は、方向演算部3aと始点設定部3bとを有しており、方向演算部3aは、利用者が図外の入力手段により入力した日付、時間等から割り出した太陽位置から太陽光の方向を演算して方向ベクトル(日照方向ベクトル2)を生成し、始点設定部3bは、日照方向ベクトル2の始点となるDSM(1a)上のピクセル12を決定する。後述するように、始点設定部3bは、建物照合部10により選択された建物13毎に順次始点を決定するように設計したり、あるいは建物13との関係を無視してDSM(1a)上のピクセル12を配列に沿って順次決定したり、さらには、一旦ピクセル12を標高値でソートした後、標高値の高いピクセル12から順次始点ピクセル12として指定するように構成することもできる。
【0030】
日影検索部4は、上記日照ベクトル設定部3において設定したピクセル12を始点とする日照方向ベクトル2により評価対象ピクセル12が日影になるか否かを判定する。評価方法は、図2(b)に示すように、まず、日照方向ベクトル2に平面視において重合するピクセル12、すなわち地表面に投影した日照方向ベクトルの始点から終点方向に沿って隣接するピクセル12を評価対象ピクセル12として指定した後、該評価対象ピクセル12の標高と同一平面位置における日照方向ベクトル2の標高とを比較し、日照方向ベクトル2が高い場合には”日影”と判定し、同じまたは低い場合には”日向”と判定する。図2(b)に、日照方向ベクトル2による判定結果を、”日影”と判定された日影ピクセルにハッチングを施して示す。
【0031】
また、日影検索部4における評価対象ピクセル12は、日照方向ベクトル2の始点に隣接するピクセル12から順次日照方向ベクトル2の終点に向けて、すなわち、図2(b)において左から右に順次選択される。さらに、本例において、同一の日照方向ベクトル2に対する日影検索部4の検索処理は、図2(b)に示すように、日向ピクセルの検出によって終了する。
【0032】
登録部5は、評価対象ピクセル12が日影検索部4により日影ピクセルと判定された際、当該日影ピクセルと、日照方向ベクトル2の始点が属する建物IDとを関連付けて影建物リンクデータ7に登録する。
【0033】
影付き画像生成部6は、上記建物データ1b、および日影データ1c等を使用して利用者のディスプレイに表示するためのインタラクティブマップを生成する。図3に影付き画像を示し、画像中の日影領域をクリックすると後述する建物検索部11と通信して日影原因となっている建物13が特定される。
【0034】
建物検索部11は、上記影付き画像の日影ピクセルがクリック等により指示された際に影建物リンクデータ7を検索して対応する建物13を検索し、識別表示部8は検索された建物13の表示色等を識別可能に表示させる。
【0035】
以上のように構成される日影領域検索装置の動作を説明する。図5に示すように、日影領域検索装置は、日影領域検索に際し、日照ベクトル設定部3における日照方向ベクトル2の始点設定を実行する(ステップSa1)。上述したように、日照方向ベクトル2を生成した後、当該日照方向ベクトル2をDSM(1a)上の適宜のピクセル12上に始点を配置させることにより行われ、次いで、日影検索部4において日照方向ベクトル2の始点に隣接するピクセル12に対する日影判定を実行する(ステップSa2)。
【0036】
ステップSa2において、判定対象が”日向ピクセル”と判定されると(ステップSa3)、始点ピクセル12を移動して(ステップSa4)隣接ピクセル12があるか否か、すなわち、未調査ピクセル12があるか否かを判定する(ステップSa5)。ステップSa5で未調査ピクセル12がない場合、全ピクセル12に対する調査が終了したため制御を終了し、未調査ピクセル12がある場合には、ステップSa2を実行して移動後の始点ピクセル12に隣接するピクセル12を判定対象ピクセル12として日影判定を実行する。
【0037】
これに対し、ステップSa3において判定対象ピクセル12が日影ピクセルと判定された場合、建物照合部10において当該日影ピクセルが属する建物13を検索して建物IDを取得し(ステップSa31)、次いで、登録部5において影建物リンクデータ7に建物-日影ピクセル関係を登録し(ステップSa32)、さらに判定対象ピクセル12を日照方向ベクトル2の終点側に1ピクセル移動させた後(ステップSa33)、ステップSa3による日影判定ステップに移動する。
【0038】
以上の動作により、図3に示すように、各日影領域には、日影原因建物13が割り当てられる。図3において、a(A)は日影領域aに属するピクセル12は建物Aによって形成されることを、c(A,C,D)は日影領域cに属するピクセル12は、建物A、C、Dにより形成されることを各々示す。
【0039】
図5(b)に図5(a)の変形例を示す。この変形例は、建物13単位で日照方向ベクトル2の始点を決定していく場合を示すもので、まず、処理に際して建物13が選択され(ステップSb1)、次いで、当該建物13内のピクセル12を始点とする日照方向ベクトル2に対する日影判定が上述した図5(a)と同様の手順で実行される(ステップSb3、Sb4、Sb5)。
【0040】
ステップSb4で判定対象ピクセル12が”日影ピクセル”と判定された場合には、建物-日影ピクセル関係を登録した後(ステップSb41)、判定対象ピクセル12を日照方向ベクトル2の終点側に1ピクセル移動させ(ステップSb42)、ステップSb4に復帰する。
【0041】
一方、ステップSb4において”日向ピクセル”と判定された場合には、始点ピクセル12を移動させ(ステップSb5)、建物13内に未調査ピクセル12がなくなるまでステップSb3、Sb4、Sb5を繰り返す。
【0042】
以上のようにして建物13内の未調査ピクセル12がなくなるまで建物13内のピクセル12を始点とする日照方向ベクトル2による判定が行われると(ステップSb6、Sb7)、他の建物13に対してSb1以下の処理が行われ、全建物13に対する調査が終了するとステップ処理が終了する。
【0043】
図6図5(a)の他の変形例を示す。この変形例は、処理の高速化を目的とした変形で、処理に際してまずDSM(1a)上の全ピクセル12を標高で降順ソートする(ステップSc1)。この後、日照ベクトルの始点が“日影”判定済みであるか否かを判定し(ステップSc2)、判定済みでない場合、日照ベクトルの始点を設定する(ステップSc3)。次いで、判定対象ピクセル12を移動し(ステップSc4)、判定対象ピクセル12が“日影”判定済みであるか否かを判定し(ステップSc5)、判定済みである場合、ステップSc4を再び実行する。
【0044】
一方、ステップSc5で判定対象ピクセル12が“日影”判定済みでない場合、“日影”判定を行い(ステップSc6)、“日影”と判定された場合には建物IDを取得した後(ステップSc61)、建物-日影ピクセル関係を登録し(ステップSc62),この後、ステップSc4以下を実行する。
【0045】
これに対し、ステップSc6で“日影”と判定されなかった場合、始点ピクセル12を移動し(ステップSc7)、全ピクセルに対して判定が終了している場合には(ステップSc8)、処理を終了し、未だ全ピクセルに対する判定が終了していない場合にはステップSc2からの処理を繰り返す。
【0046】
本実施例によれば、標高が高い、すなわち日影を多く生成するピクセル12から順に処理するため、処理の早い段階で日影ピクセルを除外し、処理を高速化することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 データベース 2 日照方向ベクトル
3 日照ベクトル設定部
4 日影検索部
5 登録部
6 影付き画像生成部
7 影建物リンクデータ
8 識別表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6