(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アクティブ状態とスリープ状態とを予め設定された周期で繰り返す省電力モードを有するONUと、複数の前記ONUを収容するOLTとで構成されるPONシステムにおいて、
前記OLTは、
前記ONUのアクティブ期間に前記ONUに時刻情報を要求する時刻情報要求フレームを送信して前記ONUから収集した時刻情報と、前記ONUとの間のデータ往復時間と、に基づいて、前記OLTの基準時刻と前記ONUとの間の時刻のズレを複数の前記ONU毎に測定する時刻遅延測定部と、
前記時刻遅延測定部が測定した複数の前記ONU毎の前記時刻のズレをタイムテーブルに記憶して管理する時刻遅延管理部と、
前記ONUとの間で制御フレームを送受信する局側制御フレーム送受信部と、
前記ONUを前記省電力モードに移行させるための省電力制御フレームと、前記ONUの状態を定期的に確認するためのGATEフレームとを送信し、前記ONUからREPORTフレームを受信して前記ONUとの論理接続を管理すると共に、前記GATEフレームを送信する際に、前記タイムテーブルを参照して、前記GATEフレームの送信先の前記ONUの前記時刻のズレを読み出し、当該時刻のズレに応じて前記GATEフレームの送信タイミングを補正する局側制御部と
を有し、
前記ONUは、
前記OLTとの間で前記制御フレームを送受信する加入者側制御フレーム送受信部と、
前記加入者側制御フレーム送受信部が前記省電力制御フレームを受信した場合に、予め設定された周期でアクティブ状態とスリープ状態とを繰り返す前記省電力モードに移行し、前記GATEフレームを受信した場合に、前記OLTに前記REPORTフレームを送信する加入者側制御部と
を有し、
前記OLTは、前記ONUがアクティブ状態の期間に前記GATEフレームを受信できるように、前記タイムテーブルを参照して前記GATEフレームの送信タイミングを補正する
ことを特徴とするPONシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
Ethernet(登録商標)をベースに持つEPON伝送システムは非同期の通信であり、一つの回線を複数の加入者側通信装置で共有し、TDM方式で通信を行うため、上り方向における送信タイミングを精密に制御する必要がある。一方、局側通信装置は、加入者側通信装置の死活を確認するための死活確認フレームを定期的に送信し、加入者側通信装置の状態やリンク接続を監視している。そして、死活確認フレームに対する応答が無い場合、局側通信装置は当該リンクを切断するので、復旧するためにはもう一度リンクを再接続する必要があった。特に省電力機能が動作している装置においては、最も電力を消費する光モジュールなどのインターフェース機能を動作させていない場合が多く、また加入者側通信装置内部のソフトカウンタなどによる時刻を基にアクティブ状態とスリープ状態とを局側通信装置から設定された時間間隔で繰り返すことになる。一方、局側通信装置は、加入者側通信装置に設定した時間間隔を管理して加入者側通信装置がアクティブ状態であるタイミングに合わせて制御フレームを送信する。ところが局側通信装置の時刻と、加入者側通信装置の時刻とにズレが有る場合、例えば、局側通信装置側の時刻では当該加入者側通信装置がアクティブ状態にあるタイミングであっても加入者側通信装置の時刻では時刻のズレによりスリープ状態になっている場合が生じ、制御フレームを受信できないという問題がある。
【0009】
ここで、加入者側通信装置がRTC(Real Time Clock)などのデバイスを備えている場合は単位時間当たりの時刻のズレは微小なので大きな問題は生じないが、RTCが搭載されていない場合はOS(Operation Software)やアプリケーションソフトウェアなどによるソフトカウンタで時刻制御を行う場合、時刻のズレが大きくなるという問題が生じ易い。そして、時刻のズレが大きい場合、局側通信装置から制御フレームを受信できない場合が発生し、最悪の場合は回線断になって再接続処理が働いてしまうことになる。この場合、省電力機能により消費電力を削減しているにも拘わらず、逆に余計な処理が働いて消費電力が上がってしまうという問題がある。
【0010】
上記課題に鑑み、本発明の目的は、省電力機能を有する
ONUの時刻と
OLTの基準時刻との間に時刻のズレが発生した場合でも確実に制御フレームを送受信することができ、リンク断を回避することができる
PONシステムおよび
OLTを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るPONシステムは、アクティブ状態とスリープ状態とを予め設定された周期で繰り返す省電力モードを有するONUと、複数の前記ONUを収容するOLTとで構成されるPONシステムにおいて、前記OLTは、前記ONUのアクティブ期間に前記ONUに時刻情報を要求する時刻情報要求フレームを送信して前記ONUから収集した時刻情報と、前記ONUとの間のデータ往復時間と、に基づいて、
前記OLTの基準時刻と前記ONUとの間の時刻のズレを複数の前記ONU毎に測定する時刻遅延測定部と、前記時刻遅延測定部が測定した複数の前記ONU毎の
前記時刻のズレをタイムテーブルに記憶して管理する時刻遅延管理部と、前記ONUとの間で制御フレームを送受信する局側制御フレーム送受信部と、前記ONUを前記省電力モードに移行させるための省電力制御フレームと、前記ONUの状態を定期的に確認するため
のGATEフレームとを送信し、前記ONUからREPORTフレームを受信して前記ONUとの論理接続を管理すると共に、
前記GATEフレームを送信する際に、前記タイムテーブルを参照して、前記GATEフレームの送信先の前記ONUの前記時刻のズレを読み出し、当該時刻のズレに応じて前記GATEフレームの送信タイミングを補正する局側制御部と
を有し、前記ONUは、前記OLTとの間で
前記制御フレームを送受信する加入者側制御フレーム送受信部と、前記加入者側制御フレーム送受信部が前記省電力制御フレームを受信した場合に、予め設定された周期でアクティブ状態とスリープ状態とを繰り返す
前記省電力モードに移行し、前記GATEフレームを受信した場合に、前記OLTに前記REPORTフレームを送信する加入者側制御部と
を有し、前記OLTは、前記ONUがアクティブ状態の期間に前記GATEフレームを受信できるように、前記タイムテーブルを参照して前記GATEフレームの送信タイミングを補正することを特徴とする。
【0014】
本発明に係るOLTは、アクティブ状態とスリープ状態とを予め設定された周期で繰り返す省電力モードを有するONUと、複数の前記ONUを収容するPONシステムのOLTにおいて、前記ONUのアクティブ期間に前記ONUに時刻情報を要求する時刻情報要求フレームを送信して前記ONUから収集した時刻情報と、前記ONUとの間のデータ往復時間と、に基づいて、
前記OLTの基準時刻と前記ONUとの間の時刻のズレを複数の前記ONU毎に測定する時刻遅延測定部と、前記時刻遅延測定部が測定した複数の前記ONU毎の
前記時刻のズレをタイムテーブルに記憶して管理する時刻遅延管理部と、前記ONUとの間で制御フレームを送受信する局側制御フレーム送受信部と、前記ONUを前記省電力モードに移行させるための省電力制御フレームと、前記ONUの状態を定期的に確認するため
のGATEフレームとを送信し、前記ONUからREPORTフレームを受信して前記ONUとの論理接続を管理すると共に、
前記GATEフレームを送信する際に、前記タイムテーブルを参照して、前記GATEフレームの送信先の前記ONUの前記時刻のズレを読み出し、当該時刻のズレに応じて前記GATEフレームの送信タイミングを補正する局側制御部と
を有し、前記局側制御部は、前記ONUがアクティブ状態の期間に前記GATEフレームを受信できるように、前記タイムテーブルを参照して前記GATEフレームの送信タイミングを補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る
PONシステムおよび
OLTは、省電力機能を有する
ONUの時刻と
OLTの基準時刻との間に時刻のズレが発生した場合でも確実に制御フレームを送受信することができ、リンク断を回避することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る
PONシステムおよび
OLTの実施形態について図面を用いて詳しく説明する。
【0021】
図1は、本実施形態に係る通信システム100の構成例を示す図である。
図1の通信システム100において、局側通信装置(OLT:Opticl Line Terminater)101は、複数の加入者側通信装置(ONU:Optical Network Unit)102をPON回線103で収容する。尚、本実施形態に係る通信システム100の加入者側通信装置102は省電力化のためにスリープ機能を有しており、通常動作状態(アクティブ状態)と、使用していない機能を一時的に停止するスリープ状態とを定期的に切り替えて消費電力を削減する。
【0022】
ここで、以降の説明において、加入者側通信装置102_1、加入者側通信装置102_2および加入者側通信装置102_nに共通の事項を説明する場合は符号末尾の「_符号」を省略して加入者側通信装置102と表記し、特定の加入者側通信装置を示す場合は「_符号」を付加して例えば加入者側通信装置102_1のように表記する。
【0023】
図1において、局側通信装置101は、各加入者側通信装置102への下り信号を時分割多重して送信し、各加入者側通信装置102で自装置宛のフレームを受信して他装置宛のフレームは破棄する。また、加入者側通信装置102から局側通信装置101への上り信号は、局側通信装置101から指示されたタイミングに従ってPON回線103に送信する。局側通信装置101は、各加入者側通信装置102の送信タイミングおよび送信データ量(送信時間に対応する)を管理しており、各加入者側通信装置102が送信するフレームがPON回線103で衝突しないように管理している。
【0024】
一般的なPONシステムでは、加入者側通信装置102がPON回線103に接続されると、局側通信装置101は未登録の加入者側通信装置102を自動的に検出して仮の送信タイミングを通知する。これに応じて加入者側通信装置102から登録要求を受信すると、局側通信装置101はLLID(Logical Link ID:仮想リンク識別子)を発行および通知してリンク確立すると共に、加入者側通信装置102に送信タイミングと送信帯域(送信データ量、送信時間など)を通知する。このようにして、加入者側通信装置102はデータ通信を行うことができる。尚、何らかの理由でリンク断になった場合は、再び上記の接続シーケンスを再実行しなければならない。
【0025】
また、局側通信装置101は、定期的に加入者側通信装置102との間のRTT(Round Trip Time:フレーム往復時間)を測定する。RTT測定は、例えば局側通信装置101から加入者側通信装置102への死活確認フレームの送信時刻、加入者側通信装置102からの応答フレームの受信時刻などの時刻情報を用いて、フレームの往復時間を測定する。さらに、局側通信装置101は、加入者側通信装置102内部のソフトカウンタなどによる現在時刻の情報を要求する制御フレーム(時刻情報要求フレーム)を送信して各加入者側通信装置102の時刻情報を収集する。そして、局側通信装置101は、加入者側通信装置102から収集した時刻情報と、加入者側通信装置102との間のデータ往復時間と、に基づいて、局側通信装置101の基準時刻との時間のズレを計算し、当該時間のズレに応じて死活確認フレームの送信タイミングを補正する。
【0026】
一方、本実施形態に係る通信システム100の加入者側通信装置102がスリープ状態にある場合、特にRTCなどの回路が搭載されていない場合は、ソフトウェアによるカウンタなどでスリープ時刻やウェイクアップ時刻を制御するため、局側通信装置101と加入者側通信装置102との間に時刻のズレが生じ易くなる。最悪のケースでは、例えば加入者側通信装置102がスリープ状態にある場合に局側通信装置101から死活確認(keep alive)を行うための制御フレーム(pingなど)が送信され、スリープ状態にある加入者側通信装置102は応答できずにリンクが切断されてしまうことがある。リンクが切断された場合、加入者側通信装置102と局側通信装置101との間で再接続処理が実行されることになり、省電力機能のために無駄な時間や電力が消費されてしまうという本末転倒の事態が生じる。特に、RTCなどハード的な計時機能を有している場合の時刻のズレは小さいが、OS(Operation System)やアプリケーションソフトウェアで時刻カウントを行っている場合は時刻のズレが大きいので、上記のような問題が生じ易い。
【0027】
そこで、本実施形態に係る通信システム100では、省電力機能を備えた加入者側通信装置102を収容する局側通信装置101は、RTCを搭載しない加入者側通信装置102の時刻のズレを考慮して制御フレームの送信タイミングを補正して送信し、スリープ状態にある加入者側通信装置102に制御フレームを送信しないように制御する。これにより、加入者側通信装置102は、時刻のズレが発生した場合でも制御フレームを確実に受信することができ、回線断を引き起こすことが無くなる。
【0028】
[局側通信装置101の構成例]
次に、局側通信装置101の構成例について
図2を用いて詳しく説明する。
図2において、局側通信装置101は、制御部201として時刻遅延測定部202および時刻遅延管理部203と、タイミング生成部204と、RTT測定部205と、制御フレーム送受信部206と、多重/分割部207とを有する。
【0029】
制御部201は、タイミング生成部204により生成されるタイミングに従って制御フレーム送受信部202を介して加入者側通信装置102との間で制御フレームを送受信する。また、制御部201は、RTT測定部205を介して加入者側通信装置102との間で送受信される制御フレームの往復時間を測定する。また、制御部201は、加入者側通信装置102に時刻情報を要求する時刻情報要求フレームを送信して加入者側通信装置102内のソフトカウンタなどによる現在時刻の情報(タイムスタンプ)を収集する。尚、時刻情報要求フレームは、専用の制御フレームであってもよいし、省電力制御フレームなどを利用してもよい。
【0030】
そして、制御部201の時刻遅延測定部202は、上位に接続される基準時刻装置151(NTP(Network Time Protocol)サーバなど)から取得する基準時刻と、RTT測定部205が測定した加入者側通信装置との間で送受信されるフレームの往復時間と、加入者側通信装置102から取得する加入者側通信装置102側のソフトカウンタなどの時刻情報と、を用いて局側通信装置101の基準時刻に対する加入者側通信装置102の時刻のズレを求める。さらに、時刻遅延管理部203は、時刻遅延測定部202が求めた時刻のズレに応じて加入者側通信装置102に制御フレームを送信するタイムスケジュールを修正し、時刻遅延管理部203内のタイムテーブル251に記憶する。
【0031】
図3は、局側通信装置101側で加入者側通信装置102との間の時刻のズレを求めて加入者側通信装置102の受信タイミングのタイミングスケジュールを修正する例を示している。
図3の例では、5つの加入者側通信装置102にLLID=AからLLID=Eまでの仮想リンク識別子が与えられ、局側通信装置101で管理されている。ここで、LLIDはLogical Link ID(仮想リンク識別子)で、加入者側通信装置102をPON回線103に接続した時に、局側通信装置101から割り当てられる。
【0032】
図3において、局側通信装置101の基準時刻が12時34分40秒(以降、他の時刻についても123440のように表記する)のタイミングで、各加入者側通信装置102の時刻のズレを求め、加入者側通信装置102の受信タイミングスケジュールを修正する。
図3の例では、LLID=Aの加入者側通信装置102から時刻同期制御フレームなどで収集した時刻データは123431で局側通信装置101の基準時刻との差分は9秒である。同様に、LLID=Bの加入者側通信装置102の時刻収集データは123432で基準時刻との差分は8秒、LLID=Cの加入者側通信装置102の時刻収集データは123433で基準時刻との差分は7秒、LLID=Dの加入者側通信装置102の時刻収集データは123434で基準時刻との差分は6秒、LLID=Eの加入者側通信装置102の時刻収集データは123435で基準時刻との差分は5秒、である。
【0033】
一方、RTT測定部205により測定された制御フレームの往復時間から片道の遅延時間を計算する。
図3の例では、LLID=Aの加入者側通信装置102の片道の遅延時間は18秒である。同様に、LLID=Bの加入者側通信装置102の片道の遅延時間は19秒、LLID=Cの加入者側通信装置102の片道の遅延時間は20秒、LLID=Dの加入者側通信装置102の片道の遅延時間は21秒、LLID=Eの加入者側通信装置102の片道の遅延時間は22秒、である。尚、各加入者側通信装置102との間で遅延時間が異なるのは、局側通信装置101との間の距離が異なるからである。
【0034】
ここで、
図3の例では、説明がわかり易いように時刻の単位を秒としたが、実際にはミリ秒(msec)、マイクロ秒(μsec)などの単位で行われている。
【0035】
そして、局側通信装置101の時刻遅延測定部202は、LLID=Aの加入者側通信装置102のソフトカウンタの時刻と局側通信装置101の基準時刻とから時刻のズレを18−9=9秒と算出する。同様に、LLID=Bの加入者側通信装置102の時刻のズレは19−8=11秒、LLID=Cの加入者側通信装置102の時刻のズレは20−7=13秒、LLID=Dの加入者側通信装置102の時刻のズレは21−6=15秒、LLID=Eの加入者側通信装置102の時刻のズレは22−5=17秒、となる。
【0036】
このようにして、局側通信装置101は、各加入者側通信装置102との間の時刻のズレを求め、時刻遅延管理部203のタイムテーブル251で管理されている加入者側通信装置102に設定された制御フレームの受信タイミング(受信タイムスケジュール)を修正する。
図3の例では、LLID=AからLLID=Eの加入者側通信装置102に設定された受信タイムスケジュールが全て123450である場合を示しており、この時刻に対する時刻のズレを修正して、局側通信装置101が管理するLLID=Aの加入者側通信装置102の受信タイムスケジュールを9秒進めて123441とする。同様に、LLID=Bの加入者側通信装置102の修正後の受信タイムスケジュールは11秒進めて123439、LLID=Cの加入者側通信装置102の修正後の受信タイムスケジュールは13秒進めて123437、LLID=Dの加入者側通信装置102の修正後の受信タイムスケジュールは15秒進めて123435、LLID=Eの加入者側通信装置102の修正後の受信タイムスケジュールは17秒進めて123433、となる。
【0037】
[加入者側通信装置102の構成例]
次に、加入者側通信装置102の構成例について
図4を用いて詳しく説明する。
図4において、加入者側通信装置102は、時刻通知部303と、省電力部304とを有する制御部301と、制御フレーム送受信部302とを有する。
【0038】
制御部301は、制御フレーム送受信部302を介して局側通信装置101との間で制御フレームを送受信する。また、制御部301は、局側通信装置101から時刻情報を要求する制御フレームを受信した場合に、時刻通知部303内のソフトカウンタ351から自装置の時刻情報を読み出し、時刻情報を含む制御フレームを制御フレーム送受信部302を介して局側通信装置101に送信する。また、制御部301の省電力部304は、予め設定されたタイミングでスリープ状態とアクティブ状態とを繰り返す制御を行う。尚、加入者側通信装置102がスリープ状態にある場合は、制御フレーム送受信部302の動作が停止する(特に光モジュールがオフになる)ので、局側通信装置101との間で制御フレームを送受信することができない。ここで、加入者側通信装置102の時刻通知部303が局側通信装置101に送信する時刻情報は、制御部301の内部でソフトカウンタ351により処理される時刻情報で、RTCなどのハードウェア回路を持たないものとする。このため、局側通信装置101の基準時刻との間に時刻のズレが生じ易く、局側通信装置101が定期的に送信する制御フレームを受信するタイミングで加入者側通信装置102がスリープ状態にある場合は、当該制御フレームを受信できない。一般に、このような場合は局側通信装置101と当該加入者側通信装置102との間のロジカルリンクが切断されてしまうので、加入者側通信装置102がウェイクアップした時に再び論理接続(ロジカルリンク)を確立するためのシーケンスを実行しなければならず、通信効率が悪くなるという問題が生じる。
【0039】
そこで、本実施形態に係る通信システム100では、局側通信装置101と加入者側通信装置102との間の時刻のズレを測定し、加入者側通信装置102に送信する制御フレームを加入者側通信装置102がウェイクアップしている時間に合わせて局側通信装置101から送信するタイムスケジュールを適切に管理することにより、局側通信装置101と加入者側通信装置102との間における論理接続を切断しないように制御することができる。これは、
図3の例で説明したように、加入者側通信装置102がアクティブ状態にある期間内に死活確認フレームを受信できるように時刻のズレを補正した受信タイムスケジュールに修正することにより実現できる。
[制御フレームのシーケンス例]
次に、本実施形態に係る通信システム100の局側通信装置101と加入者側通信装置102との間で送受信される制御フレームのシーケンス例について説明する。
【0040】
加入者側通信装置102は、常時アクティブ状態にあるノーマルモード(Normal mode)と、アクティブ状態(active)とスリープ状態(sleep)とを定期的に繰り返す省電力モード(Power saving mode)とを有する。
図5において、タイミングTa0に局側通信装置101はノーマルモードにある加入者側通信装置102にSleep Allow(sleep)の制御フレームを送信する。尚、Sleep Allowの制御フレームは、加入者側通信装置102をノーマルモードから省電力モードに移行するためのSleep Allow(sleep)の制御フレームと、加入者側通信装置102を省電力モードからノーマルモードに移行するためのSleep Allow(wake up)の制御フレームとを有する。
【0041】
図5において、タイミングTb0でSleep Allow(sleep)フレームを受信した加入者側通信装置102は、スリープ状態に移行するために、例えば光モジュールを可動状態(power up)から停止状態(power down)に移行する。実際には、Sleep Allow(sleep)フレームを受信したタイミングTb0で直ぐに停止状態にはならず、停止状態にするまでの処理時間Tdを要する。同様に、ウェイクアップ時刻が来て停止状態から可動状態に移行するときも直ぐには可動状態にならず、可動状態にするまでの起動時間Tuを要する。従って、実際に局側通信装置101との間で制御フレームの送受信が可能なアクティブ状態の時間はT1で、それ以外の時間T2はスリープ状態となる。
【0042】
次に、局側通信装置101と加入者側通信装置102との間に時刻のズレが無い理想的な場合のタイミング例について
図6を用いて説明する。尚、
図6において、
図5と同符号のものは同じものを示す。
図6において、加入者側通信装置102は、タイミングTb0でノーマルモードから省電力モードに移行し、Sleep Allow(sleep)に応答するSleep ACKフレームを局側通信装置101に返信する。これにより、局側通信装置101は加入者側通信装置102がスリープ状態に移行したことを確認する。
【0043】
一方、局側通信装置101は、sleep制御とは別のレイヤで加入者側通信装置102の接続を確認するための死活確認フレーム(ここでは、GATEフレーム)を予め設定された間隔TSで加入者側通信装置102に送信する。そして、加入者側通信装置102は、GATEフレームを受信したらREPORTフレームを返信する。このようにして、局側通信装置101は加入者側通信装置102との間のリンク状態を定期的に確認する。そして、REPORTフレームが返されない場合は、局側通信装置101はリンクが切断されたものと判断して当該LLIDを削除する。
図6の例では、局側通信装置101と加入者側通信装置102との間の時刻同期が取れているので、時間間隔TSで定期的に送信されるGATEフレームは、必ず加入者側通信装置102のアクティブ状態の期間T1内で受信され、REPORTフレームが返信される。
【0044】
このように、加入者側通信装置102がアクティブ状態とスリープ状態とを繰り返す省電力モードにある場合でも確実にGATEフレームを受信してREPORTフレームを返信することができる。
【0045】
次に、局側通信装置101と加入者側通信装置102との間に時刻のズレが有る場合のタイミング例について
図7を用いて説明する。尚、
図7において、
図6と同符号のものは同じものを示す。
図7に示した加入者側通信装置102は、省電力モードで動作中である。一方、局側通信装置101は、加入者側通信装置102の死活を確認するためのGATEフレームを予め設定された間隔TSで加入者側通信装置102に送信する。例えば局側通信装置101は、タイミングTa1、Ta2およびTa3の各タイミングで加入者側通信装置102にGATEフレームを送信する。そして、加入者側通信装置102は、GATEフレームを受信したらREPORTフレームを返信する。このようにして、局側通信装置101は加入者側通信装置102との間のリンク状態を定期的に確認している。
【0046】
ここで、局側通信装置101は、GATEフレームで定期的に加入者側通信装置102の死活を確認する周期に加入者側通信装置102がアクティブ状態になっているように、加入者側通信装置102がスリープ状態とアクティブ状態とを繰り返す周期を予め通知して設定しておく。
【0047】
ところが、局側通信装置101の基準時刻と加入者側通信装置102のソフトカウンタによる時刻との間にズレがある場合、局側通信装置101がGATEフレームの送信周期TSと、加入者側通信装置102がスリープ状態とアクティブ状態とを繰り返す周期(T1+T2)とがズレる。
図7の例は、周期(T1+T2)<周期TSの関係にある場合を示しており、タイミングTa1で局側通信装置101が最初のGATEフレームを送信した時点では同期していても、次のGATEフレームをタイミングTa2で送信する時には時刻のズレdTが生じる。尚、
図7の例では、局側通信装置101の基準時刻に対して加入者側通信装置102のソフトカウンタによる時刻が時間dTだけ進むものとする。
【0048】
図7において、タイミングTa2で送信されるGATEフレームは、加入者側通信装置102のアクティブ状態の期間内で受信されるのでREPORTフレームを返信することができるが、次のタイミングTa3で送信されるGATEフレームは、時刻のズレがdTの二倍(2・dT)だけズレているので、加入者側通信装置102はGATEフレームを受信するタイミングでスリープ状態になっている。このため、加入者側通信装置102はREPORTフレームを返信できず、局側通信装置101はリンクが切断されたものとして処理してしまう。そして、リンク切断された加入者側通信装置102は、次に局側通信装置101にフレームを送信する際に、改めてリンク接続シーケンスをやり直さなければならず、局側通信装置101および加入者側通信装置102の双方の負担が増加し、通信効率が低下するという問題が生じる。
【0049】
尚、
図7の例では、周期(T1+T2)<周期TSの関係にある場合を示したが、逆に周期(T1+T2)>周期TSの関係にある場合においても同様の問題が生じる。
【0050】
図8は、周期(T1+T2)>周期TSの関係にある場合の動作シーケンスを示した図で、
図7と同符号のものは同じものを示す。
図8の例では、局側通信装置101の基準時刻に対して加入者側通信装置102のソフトカウンタによる時刻が時間dTだけ遅れるものとする。
【0051】
図8において、時刻同期が取れた最初のタイミングTa1で送信されるGATEフレームは、加入者側通信装置102のアクティブ状態の期間内で受信されるのでREPORTフレームを返信することができる。また、タイミングTa2で送信されるGATEフレームも、加入者側通信装置102のアクティブ状態の期間内で受信されるのでREPORTフレームを返信することができるが、次のタイミングTa3で送信されるGATEフレームは、時刻のズレが二倍のdTだけズレているので、加入者側通信装置102はGATEフレームを受信するタイミングでスリープ状態になっている。このため、加入者側通信装置102はREPORTフレームを返信できず、局側通信装置101はリンクが切断されたものとして処理してしまう。そして、
図7と同様に、リンク切断された加入者側通信装置102は、次に局側通信装置101にフレームを送信する際に、改めてリンク接続シーケンスをやり直さなければならず、局側通信装置101および加入者側通信装置102の双方の負担が増加し、通信効率が低下するという問題が生じる。
【0052】
そこで、本実施形態に係る通信システム100では、局側通信装置101は、加入者側通信装置102との間の時刻のズレを計算して、時刻のズレを補正したタイミングでGATEフレームを送信するので、GATEフレームを受信するタイミングで加入者側通信装置102がスリープ状態になることがなく、確実に加入者側通信装置102の死活を確認することができる。
【0053】
図9は、
図8と同様に、周期(T1+T2)>周期TSの関係にある場合の動作シーケンスを示した図で、
図8と同符号のものは同じものを示す。
図9の例では、局側通信装置101の基準時刻に対して加入者側通信装置102のソフトカウンタによる時刻が時間dTだけ遅れるものとする。
【0054】
図9において、時刻同期が取れた最初のタイミングTa1で送信されるGATEフレームは、加入者側通信装置102のアクティブ状態の期間内で受信されるのでREPORTフレームを返信することができる。また、
図8の例では加入者側通信装置102がスリープ状態とアクティブ状態とを繰り返す周期(T1+T2)がdTだけ遅れるにも拘らず加入者側通信装置102はタイミングTa2でGATEフレームを送信したが、
図9の例では時刻のズレdTを修正したタイミングTa2'でGATEフレームを送信するので、加入者側通信装置102はアクティブ状態の期間内でGATEフレームを受信することができ、REPORTフレームを返信することができる。特に
図8の例で問題が生じた次のGATEフレームについても時刻のズレdTを補正したタイミングTa3'でGATEフレームを送信するので、加入者側通信装置102はアクティブ状態の期間内でGATEフレームを受信することができる。
【0055】
このように、本実施形態に係る通信システム100では、加入者側通信装置102にアクティブ状態の期間T1とスリープ状態の期間T2とを繰り返す周期(T1+T2)と、局側通信装置101の基準時刻との時間のズレを補正してGATEフレームを送信するので、GATEフレームの受信タイミングが加入者側通信装置102がスリープ状態になることがなく、確実に加入者側通信装置102の死活を確認することができる。これにより、加入者側通信装置102が省電力モードに有る場合でも無用にリンク断状態になることがないので、リンクの再接続などで通信効率が低下することなく、加入者側通信装置102の省電力化を実現することができる。
【0056】
尚、本発明に係る
PONシステムおよび
OLTについて、各実施例を挙げて説明してきたが、その精神またはその主要な特徴から逸脱することなく他の多様な形で実施することができる。そのため、上述した実施例はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明は、特許請求の範囲によって示されるものであって、本発明は明細書本文にはなんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内である。