【実施例】
【0012】
(実施例1)
上記電力変換装置に係る実施例について、
図1〜
図9を用いて説明する。
図1、
図2に示すごとく、本例の電力変換装置1は、電力変換回路10と、金属製のケース4と、外部端子2と、複数のコンデンサ3(3a,3b)とを備える。ケース4は、電力変換回路10を構成する電子部品を収容しており、グランドに接続されている。外部端子2は、電力変換回路10を外部機器に電気接続するために設けられている。また、コンデンサ3は、ケース4と外部端子2との間の電流経路上に設けられている。
【0013】
図3に示すごとく、本例では、外部端子2とケース4と複数のコンデンサ3とによって、交流電流が流れるループLを形成してある。また、電力変換回路10の一部(発生部7)から交流磁界が発生している。ループL内には、交流磁界の磁束Φがそれぞれ貫く、第1領域S1と第2領域S2との2つの領域がある。
【0014】
図4に示すごとく、磁束Φが、2つの領域S1,S2のうち一方の領域を、ループLよりも交流磁界の発生源7に近い側である近傍側INから、ループLよりも発生源7から遠い側である遠方側OUTへ貫き、他方の領域を遠方側OUTから近傍側INへ貫くよう構成されている。
また、本例では
図3に示すごとく、ループL内に磁束遮蔽部5を設けてある。磁束遮蔽部5は、ループL内において磁束Φを部分的に遮蔽し、第1領域S1と第2領域S2とをそれぞれ貫く磁束Φの量の差を低減している。
【0015】
本例の電力変換装置1は、ハイブリッド車や電気自動車等に搭載するための、車両用電力変換装置である。また、本例の電力変換回路10は降圧回路(
図9参照)である。この降圧回路を用いて、高圧直流電源8の直流電圧を降圧し、低圧直流電源80を充電するよう構成してある。
【0016】
図1に示すごとく、本例の電力変換装置1は、外部端子2として、出力端子2aと、入力端子2bとを備える。本例では、これら2つの外部端子2(2a,2b)のうちの、出力端子2aにコンデンサ3a,3bを接続し、ループLを構成してある。
【0017】
図1、
図3に示すごとく、本例ではコンデンサ3を、プリント基板14に固定している。そして、ケース4の底面48から突出する2本の支柱41,42によって、プリント基板14を支持している。プリント基板14は、ボルト8によって支柱41,42に固定されている。また、外部端子2は、プリント基板14上に載置されている。
【0018】
図2に示すごとく、コンデンサ3a,3bの一方の電極31は、配線6を介して、外部端子2に接続している。配線6は、プリント基板14の表面にパターン形成したものである。また、コンデンサ3の他方の電極32は、配線6と、ボルト8とを介して、支柱41,42に電気接続している。配線6は直線状に延びている。2個のコンデンサ3a,3bと、配線6と、外部端子2と、ボルト8と、支柱41,42と、ケース4とによって、上記ループLが形成されている。
【0019】
本例では、コンデンサ3a,3bとフィルタコイル18とによって、フィルタ回路11を構成してある。このフィルタ回路11によって、電力変換回路10内において発生した伝導ノイズ電流を除去し、出力端子2aに伝導ノイズ電流が混入しないようにしている。
なお、上記フィルタコイル18は、軟磁性体からなるフィルタ用コア180によって、外部端子2aの一部を取り囲むことによって構成してある。
【0020】
図2に示すごとく、フィルタ回路11の近傍には、交流磁界Hの発生源7が存在している。本例では、後述するダイオードモジュール15の出力端子151から、交流磁界Hが発生している。
【0021】
図3に示すごとく、ダイオードモジュール15の出力端子151には、交流電流iが、ケース4の底面48の法線方向(Z方向)に流れている。
図2に示すごとく、交流磁界Hは、Z方向に流れる交流電流iを中心とした円筒状になる。
【0022】
上述したように、磁束Φは、2つの領域S1,S2(
図4参照)のうち一方の領域を、上記近傍側INから上記遠方側OUTへ貫く。また、磁束Φは、他方の領域を、上記遠方側OUTから上記近傍側INへ貫く。つまり、磁束Φは常に、2つの領域S1,S2をそれぞれ互いに逆向きに貫く。そのため、ループLに発生する第1誘導ノイズ電流I1と第2誘導ノイズ電流I2とは、互いに向きが逆になる。
【0023】
ある瞬間において、磁束Φは
図4に示すようにループLを貫く。第1領域S1を貫く磁束Φ
1のX方向(外部端子2の突出方向)成分Φ
x1は、上記遠方側OUTから上記近傍側INに向かっている。この成分Φ
x1の時間的変化を妨げるように、ループLに第1誘導ノイズ電流I1が発生する。
【0024】
また、第2領域S2を貫く磁束Φ
2のX方向成分Φ
x2は、上記近傍側INから上記遠方側OUTへ向かっている。この成分Φ
x2の時間的変化を妨げるように、ループLに第2誘導ノイズ電流I2が発生する。
【0025】
交流磁界Hは交互に向きが変わるが、このように向きが変わっても、磁束Φ
1のX方向成分Φ
x1と、磁束Φ
2のX方向成分Φ
x2とは、常に互いに反対側を向く。そのため、上記2つの誘導ノイズ電流I1,I2は、常に互いに逆向きに流れる。したがって、この2つの誘導ノイズ電流I1,I2は互いに打ち消し合う。
【0026】
図2に示すごとく、本例の導線6は、X方向とZ方向との双方に直交する方向(Y方向)に直線状に延びている。また、Z方向から見たときに、交流磁界の発生源7から一方のボルト8aまでの距離r1は、発生源7から他方のボルト8bまでの距離r2よりも短い。
【0027】
そのため、仮に上記磁束遮蔽部5(
図3参照)を設けなかったとすると、
図13に示すごとく、第2領域S2の方が第1領域S1よりも面積が大きくなる。したがって、第2領域S2を貫く磁束Φの方が、第1領域S1を貫く磁束Φよりも多くなる。その結果、上記第1誘導ノイズ電流I1よりも第2誘導ノイズ電流I2の方が多く流れることになる。そのため、第2誘導ノイズ電流I2が第1誘導ノイズ電流I1によって完全に打ち消されなくなり、外部端子92に誘導ノイズ電流が混入しやすくなる。
【0028】
このような問題を抑制するため、本例では
図3、
図6に示すごとく、ループL内に磁束遮蔽部5を設けている。これにより、ループL内における磁束Φを部分的に遮蔽し、各領域S1,S2を貫く磁束Φの量の差を少なくしている。すなわち、2つの領域S1,S2をそれぞれ貫く磁束Φの量を均等化している。そのため、2つの誘導ノイズ電流I1,I2の大きさが略等しくなり、打ち消し合って殆ど誘導ノイズ電流が残らなくなる。したがって、外部端子2に誘導ノイズ電流I1,I2が混入しにくくなる。
【0029】
なお、本例では、磁束遮蔽部5を金属によって構成してある。磁束遮蔽部5は、ケース4と一体的に形成されている。ケース4及び磁束遮蔽部5はアルミニウム製であり、ダイカストによって製造したものである。ケース4をダイカストによって製造するときに、磁束遮蔽部5も同時に形成される。また、磁束遮蔽部5は、
図6に示すごとく、板状に形成されている。
【0030】
一方、
図9に示すごとく、本例の電力変換回路10は、MOSモジュール16と、トランス13と、ダイオードモジュール15と、チョークコイル12と、平滑コンデンサ17と、プリント基板14(制御回路)とを備える。MOSモジュール16は高圧直流電源8に接続している。MOSモジュール16は4個のMOS素子160を内蔵している。これら4個のMOS素子160によって、Hブリッジ回路を構成してある。
【0031】
MOSモジュール16の出力端子はトランス13の一次コイル130aに接続している。このトランス13によって、高圧直流電源8の電圧を降圧している。トランス13の二次コイル130bの出力端子138は、ダイオードモジュール15に接続している。また、トランス13のセンタータップ139はケース4、すなわちグランドに接続してある。
【0032】
ダイオードモジュール15には2個のダイオード150が設けられている。この2個のダイオード150を使って、トランス13の出力電圧を整流している。ダイオードモジュール15の出力端子151は、チョークコイル12に接続している。また、チョークコイル12の出力端子126は、平滑コンデンサ17及びフィルタコイル18に接続している。上記チョークコイル12と平滑コンデンサ17は、上記ダイオードモジュール15によって整流した波形を平滑化するために設けられている。
【0033】
上述したように、本例では、フィルタコイル18と2個のコンデンサ3a,3bとによってフィルタ回路11を構成してある。コンデンサ3a,3bの一方の電極31は外部端子2(出力端子2a)に接続し、他方の電極32はケース4に接続している。電力変換回路10ではMOS素子160をスイッチング動作させているため、この動作に伴って、電力変換回路10内に伝導ノイズ電流が発生する。この伝導ノイズ電流が出力端子2aを通って外部に出ないように、フィルタ回路11を使って除去している。
【0034】
一方、
図5、
図7に示すごとく、本例では、ケース4の底面48にダイオードモジュール15を載置し、このダイオードモジュール15上にチョークコイル12を載置してある。チョークコイル12は、軟磁性体からなるコア121と、該コア121内に配された巻線部120とからなる。チョークコイル12の入力端子125は、
図7に示すごとく、巻線部120からX方向に突出し、その先端部125aがZ方向に折り曲げられている。
【0035】
また、
図6、
図7に示すごとく、ダイオードモジュール15の出力端子151は、封止部159からX方向に突出し、その先端部151aがZ方向に折り曲げられている。
図7に示すごとく、ダイオードモジュール15の出力端子151の先端部151aと、チョークコイル12の入力端子125の先端部125aとを重ね合わせ、溶接してある。
【0036】
このように、ダイオードモジュール15の出力端子151はZ方向に延びているため、ダイオードモジュール15の出力電流(交流電流i)はZ方向に流れる。この出力端子151の周囲に、交流磁界Hが発生する。
【0037】
また、
図5、
図8に示すごとく、チョークコイル12の出力端子126は、巻線部120からX方向に延出している。この出力端子126に、外部端子2aを重ね合わせて溶接してある。
【0038】
本例の作用効果について説明する。
図2、
図3に示すごとく、本例においては、外部端子2とケース4と複数のコンデンサ3a,3bとによって、交流電流が流れるループLを形成してある。そして、交流磁界の磁束Φが、ループL内の2つの領域S1,S2のうち、一方の領域を近傍側INから遠方側OUTへ貫き、他方の領域を遠方側OUTから近傍側INへ貫くよう構成してある。つまり、磁束Φが、2つの領域S1,S2をそれぞれ逆向きに貫くよう構成してある。
磁束Φが第1領域S1を貫くと、ループLに誘導ノイズ電流I1が発生し、磁束Φが第2領域S2を貫くと、ループLに誘導ノイズ電流I2が発生する。磁束Φは、2つの領域S1,S2をそれぞれ逆向きに貫くため、2つの誘導ノイズ電流I1,I2は、ループLを互いに逆向きに流れる。そのため、これら2つの誘導ノイズ電流I1,I2は互いに打ち消し合い、弱め合う。したがって、外部端子2に大きな誘導ノイズ電流が混入することを抑制できる。
【0039】
また、本例では、ループL内に磁束遮蔽部5を設けてある。この磁束遮蔽部5によって、第1領域S1と第2領域S2とをそれぞれ貫く磁束の量の差を低減させている。したがって、2つの誘導ノイズ電流I1,I2の強さを殆ど等しくすることができる。そのため、打消し合わせた後に残る誘導ノイズ電流の強さを小さくすることができ、外部端子2に大きな誘導ノイズ電流が混入することを効果的に抑制することができる。
【0040】
仮に磁束遮蔽部5を設けなかったとすると、
図13に示すごとく、2つの領域S1,S2をそれぞれ貫く磁束Φの量が互いに異なるため、2つの誘導ノイズ電流I1,I2の強さが大きく異なることになる。そのため、外部端子92に大きな誘導ノイズ電流が混入しやすくなる。磁束遮蔽部5を設けることなく、この問題を解決しようとすると、例えば支柱41,42の位置を変更する必要が生じる。そのため、電力変換装置1の、レイアウトの設計自由度が低下しやすくなる。これに対して、本例のように磁束遮蔽部5を形成すれば、支柱41,42の位置を変更する必要がなくなる。そのため、レイアウトの設計自由度を高めることができる。
【0041】
また、本例では、磁束遮蔽部5をケース4と一体化している。そのため、磁束遮蔽部5を別部品にする必要がなくなり、部品点数を減らすことが可能になる。したがって、電力変換装置1の製造コストを低減することができる。
【0042】
また、本例では、出力端子2aにループLを設けている。出力端子2aは、ノイズ電流の混入を特に抑制することが望まれている。そのため、本例のように、出力端子2aにループLを設け、出力端子2aに誘導ノイズ電流が混入しにくくした場合の効果は大きい。
【0043】
また、
図3に示すごとく、本例では、交流磁界Hの発生源となる交流電流iは、ケース4の底面48の法線方向(Z方向)に流れている。そして、底面48からZ方向に2本の支柱41,42が突出し、2本の支柱41,42がループLの一部をなしている。
そのため、ループLに誘導ノイズ電流I1,I2が、互いに反対向きに流れるように2つ発生しやすくなる。すなわち、上記構成にすると、ループLを含む平面P(
図4参照)が、Z方向に平行になる。また、交流磁界Hは、Z方向に流れる交流電流iを中心として円筒状になる。そのため、この円筒状の交流磁界Hの磁束Φが、ループL内の2つの領域S1,S2をそれぞれ貫きやすくなる。したがってループLに、互いに反対向きに流れる2つの誘導ノイズ電流I1,I2を発生させやすくなり、これら2つの誘導ノイズ電流I1,I2を互いに打消し合わせて弱めることができる。
【0044】
また、本例では
図2、
図3に示すごとく、プリント基板14にコンデンサ3a,3bを固定している。そのため、コンデンサ3a,3bをしっかり固定できると共に、プリント基板14にパターン形成した配線6を使って、コンデンサ3a,3bを外部端子2やケース4に容易に電気接続することができる。
【0045】
また、本例では、支柱41,42を使ってプリント基板14を支持しており、かつ、この支柱41,42自体が、ループLの一部をなしている。つまり、プリント基板14を支持する支柱と、ループLを構成する支柱とが別々になっていない。そのため、電力変換装置1の構造を簡素にすることができる。また、支柱41,42を用いると、プリント基板14を底面48から離れた位置に固定できる。そのため、ループLの面積を大きくすることができ、磁束Φが、ループL内の2つの領域S1,S2をそれぞれ貫きやすくなる。
【0046】
以上のごとく、本例によれば、大きな誘導ノイズ電流が外部端子に混入しにくい電力変換装置を提供することができる。
【0047】
なお、本例では、上述したように、磁束遮蔽部5をケース4と一体化しているが、本例はこれに限るものではない。例えば
図10に示すごとく、磁束遮蔽部5を、ケース4とは別部材にしてもよい。そして、ボルト50を用いて、磁束遮蔽部5をケース4に締結するようにしてもよい。
【0048】
また、本例では、2つの外部端子2(出力端子2aおよび入力端子2b)のうち、出力端子2aのみにコンデンサ3を接続し、ループLを形成したが、本例はこれに限るものではない。例えば、入力端子2bにループLを形成してもよく、また、入力端子2bと出力端子2aとの双方にループLを形成してもよい。
【0049】
また、上述したように、本例のケース4はグランドに接続されている。ここで「グランドに接続されている」には、基準電位としての大地に接続する場合だけでなく、基準電位となる他の部材、例えば車両のボディ等に接続する場合が含まれる。
【0050】
(実施例2)
本例は、磁束遮蔽部5の形状を変更した例である。
図11、
図12に示すごとく、本例では、磁束遮蔽部5が支柱42と連結している。また、実施例1と同様に、本例では、ケース4をダイカストによって製造している。
【0051】
このようにすると、磁束遮蔽部5と支柱42とが連結しているため、ダイカストを行ってケース4を製造するときに、金型内の空間における、磁束遮蔽部5及び支柱42を形成するための部分を、溶融金属が流れやすくなる。そのため、磁束遮蔽部5及び支柱42を容易に形成することができる。
【0052】
その他は、実施例1と同様である。また、本例に関する図面に用いた符号のうち、実施例1において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、実施例1と同様の構成要素等を表す。