特許第5840669号(P5840669)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5840669
(24)【登録日】2015年11月20日
(45)【発行日】2016年1月6日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20151210BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20151210BHJP
【FI】
   H02M3/28 Y
   H05K9/00 K
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-259810(P2013-259810)
(22)【出願日】2013年12月17日
(65)【公開番号】特開2015-119519(P2015-119519A)
(43)【公開日】2015年6月25日
【審査請求日】2015年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社日本自動車部品総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹本 悠城
(72)【発明者】
【氏名】大岡 信治
【審査官】 松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−187860(JP,A)
【文献】 特開2013−138562(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3142501(JP,U)
【文献】 特開2009−177998(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0124819(US,A1)
【文献】 特開2003−282348(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換回路(10)と、
該電力変換回路(10)を構成する電子部品を収容し、グランドに接続された金属製のケース(4)と、
上記電力変換回路(10)を外部機器に電気接続するための外部端子(2)と、
上記ケース(4)と上記外部端子(2)との間の電流経路上に設けられた複数のコンデンサ(3)とを備え、
上記外部端子(2)と上記ケース(4)と上記複数のコンデンサ(3)とによって、交流電流が流れるループ(L)を形成してあり、
該ループ(L)内には、上記電力変換回路(10)の一部から発生した交流磁界の磁束(Φ)がそれぞれ貫く、第1領域(S1)と第2領域(S2)との2つの領域があり、
上記磁束(Φ)が、上記2つの領域(S1,S2)のうち一方の上記領域を、上記ループ(L)よりも上記交流磁界の発生源(7)に近い側である近傍側から、上記ループ(L)よりも上記発生源(7)から遠い側である遠方側へ貫き、他方の上記領域を上記遠方側から上記近傍側へ貫くよう構成され、
上記ループ(L)内に、上記磁束(Φ)を部分的に遮蔽し、上記第1領域(S1)と上記第2領域(S2)とをそれぞれ貫く上記磁束(Φ)の量の差を低減させる磁束遮蔽部(5)を設けてあることを特徴とする電力変換装置(1)。
【請求項2】
上記磁束遮蔽部(5)は、上記ケース(4)と一体化していることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換回路と、コンデンサとを備える電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば直流電圧を昇圧したり降圧したりする電力変換装置として、ノイズ電流を除去するためのフィルタ回路を備えるものがある(下記特許文献1参照)。フィルタ回路は、電力変換装置のケース内に設けられ、入力端子や出力端子に電気接続している。上記電力変換装置では、フィルタ回路を用いることにより、外部機器から装置内へ伝わるノイズ電流を除去したり、装置内から発生し外部機器へ伝わるノイズ電流を除去したりする。フィルタ回路は、コンデンサと、コイルと、これらを繋ぐ配線とから構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−135175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記電力変換装置は、フィルタ回路を構成する配線やコンデンサから、新たにノイズ電流が発生することがある。すなわち、電力変換装置内には交流電流が流れる部位があり、この部位の周囲に交流磁界が発生する。交流磁界が配線等に鎖交すると、新たにノイズ電流(誘導ノイズ電流)が誘起され、これが上記入力端子や出力端子等の外部端子に混入して、外部機器に伝わってしまう場合がある。そのため、装置内で交流磁界が生じても、大きな誘導ノイズ電流が外部端子に混入しにくい電力変換装置が望まれている。
【0005】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、大きな誘導ノイズ電流が外部端子に混入しにくい電力変換装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、電力変換回路と、
該電力変換回路を構成する電子部品を収容し、グランドに接続された金属製のケースと、
上記電力変換回路を外部機器に電気接続するための外部端子と、
上記ケースと上記外部端子との間の電流経路上に設けられた複数のコンデンサとを備え、
上記外部端子と上記ケースと上記複数のコンデンサとによって、交流電流が流れるループを形成してあり、
該ループ内には、上記電力変換回路の一部から発生した交流磁界の磁束がそれぞれ貫く、第1領域と第2領域との2つの領域があり、
上記磁束が、上記2つの領域のうち一方の上記領域を、上記ループよりも上記交流磁界の発生源に近い側である近傍側から、上記ループよりも上記発生源から遠い側である遠方側へ貫き、他方の上記領域を上記遠方側から上記近傍側へ貫くよう構成され、
上記ループ内に、上記磁束を部分的に遮蔽し、上記第1領域と上記第2領域とをそれぞれ貫く上記磁束の量の差を低減させる磁束遮蔽部を設けてあることを特徴とする電力変換装置。
【発明の効果】
【0007】
上記電力変換装置においては、外部端子とケースと複数のコンデンサとによって、交流電流が流れるループを形成してある。そして、交流磁界の磁束が、ループ内の上記2つの領域のうち、一方の領域を上記近傍側から上記遠方側へ貫き、他方の領域を上記遠方側から上記近傍側へ貫くよう構成してある。つまり、磁束が、2つの領域をそれぞれ逆向きに貫くよう構成してある。
磁束がループ内の上記一方の領域を貫くと、ループに誘導ノイズ電流が発生し、磁束が上記他方の領域を貫くと、ループに別の誘導ノイズ電流が発生する。磁束は、2つの領域をそれぞれ逆向きに貫くため、上記2つの誘導ノイズ電流は、ループを互いに逆向きに流れる。そのため、これら2つの誘導ノイズ電流は互いに打ち消し合い、弱め合う。したがって、外部端子に大きな誘導ノイズ電流が混入することを抑制できる。
【0008】
また、上記電力変換装置においては、ループ内に上記磁束遮蔽部を設けてある。この磁束遮蔽部によって、第1領域と第2領域とをそれぞれ貫く磁束の量の差を低減させている。したがって、第1領域を貫く磁束によって発生した誘導ノイズ電流の強さと、第2領域を貫く磁束によって発生した誘導ノイズ電流の強さとを、殆ど等しくすることができる。そのため、打ち消し合わせた後に残る誘導ノイズ電流の強さを小さくすることができ、外部端子に大きな誘導ノイズ電流が混入することを効果的に抑制することができる。
【0009】
以上のごとく、本例によれば、大きな誘導ノイズ電流が外部端子に混入しにくい電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1における、電力変換装置の平面図。
図2図1の要部拡大図。
図3図2のIII-III断面図。
図4】実施例1における、交流磁界と誘導ノイズ電流との関係を説明するための図。
図5図2のV-V断面図。
図6】実施例1における、ケース及びダイオードモジュールの平面図。
図7図5のVII-VII断面図。
図8図5のVIII-VIII断面図。
図9】実施例1における、電力変換装置の回路図。
図10】実施例1における、磁束遮蔽部を別部材にした電力変換装置の断面図。
図11】実施例2における、電力変換装置の断面図。
図12図11のXII-XII断面図。
図13】比較例における、電力変換装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記電力変換装置は、電気自動車やハイブリッド車等の車両に搭載するための、車両用電力変換装置とすることができる。
【実施例】
【0012】
(実施例1)
上記電力変換装置に係る実施例について、図1図9を用いて説明する。図1図2に示すごとく、本例の電力変換装置1は、電力変換回路10と、金属製のケース4と、外部端子2と、複数のコンデンサ3(3a,3b)とを備える。ケース4は、電力変換回路10を構成する電子部品を収容しており、グランドに接続されている。外部端子2は、電力変換回路10を外部機器に電気接続するために設けられている。また、コンデンサ3は、ケース4と外部端子2との間の電流経路上に設けられている。
【0013】
図3に示すごとく、本例では、外部端子2とケース4と複数のコンデンサ3とによって、交流電流が流れるループLを形成してある。また、電力変換回路10の一部(発生部7)から交流磁界が発生している。ループL内には、交流磁界の磁束Φがそれぞれ貫く、第1領域S1と第2領域S2との2つの領域がある。
【0014】
図4に示すごとく、磁束Φが、2つの領域S1,S2のうち一方の領域を、ループLよりも交流磁界の発生源7に近い側である近傍側INから、ループLよりも発生源7から遠い側である遠方側OUTへ貫き、他方の領域を遠方側OUTから近傍側INへ貫くよう構成されている。
また、本例では図3に示すごとく、ループL内に磁束遮蔽部5を設けてある。磁束遮蔽部5は、ループL内において磁束Φを部分的に遮蔽し、第1領域S1と第2領域S2とをそれぞれ貫く磁束Φの量の差を低減している。
【0015】
本例の電力変換装置1は、ハイブリッド車や電気自動車等に搭載するための、車両用電力変換装置である。また、本例の電力変換回路10は降圧回路(図9参照)である。この降圧回路を用いて、高圧直流電源8の直流電圧を降圧し、低圧直流電源80を充電するよう構成してある。
【0016】
図1に示すごとく、本例の電力変換装置1は、外部端子2として、出力端子2aと、入力端子2bとを備える。本例では、これら2つの外部端子2(2a,2b)のうちの、出力端子2aにコンデンサ3a,3bを接続し、ループLを構成してある。
【0017】
図1図3に示すごとく、本例ではコンデンサ3を、プリント基板14に固定している。そして、ケース4の底面48から突出する2本の支柱41,42によって、プリント基板14を支持している。プリント基板14は、ボルト8によって支柱41,42に固定されている。また、外部端子2は、プリント基板14上に載置されている。
【0018】
図2に示すごとく、コンデンサ3a,3bの一方の電極31は、配線6を介して、外部端子2に接続している。配線6は、プリント基板14の表面にパターン形成したものである。また、コンデンサ3の他方の電極32は、配線6と、ボルト8とを介して、支柱41,42に電気接続している。配線6は直線状に延びている。2個のコンデンサ3a,3bと、配線6と、外部端子2と、ボルト8と、支柱41,42と、ケース4とによって、上記ループLが形成されている。
【0019】
本例では、コンデンサ3a,3bとフィルタコイル18とによって、フィルタ回路11を構成してある。このフィルタ回路11によって、電力変換回路10内において発生した伝導ノイズ電流を除去し、出力端子2aに伝導ノイズ電流が混入しないようにしている。
なお、上記フィルタコイル18は、軟磁性体からなるフィルタ用コア180によって、外部端子2aの一部を取り囲むことによって構成してある。
【0020】
図2に示すごとく、フィルタ回路11の近傍には、交流磁界Hの発生源7が存在している。本例では、後述するダイオードモジュール15の出力端子151から、交流磁界Hが発生している。
【0021】
図3に示すごとく、ダイオードモジュール15の出力端子151には、交流電流iが、ケース4の底面48の法線方向(Z方向)に流れている。図2に示すごとく、交流磁界Hは、Z方向に流れる交流電流iを中心とした円筒状になる。
【0022】
上述したように、磁束Φは、2つの領域S1,S2(図4参照)のうち一方の領域を、上記近傍側INから上記遠方側OUTへ貫く。また、磁束Φは、他方の領域を、上記遠方側OUTから上記近傍側INへ貫く。つまり、磁束Φは常に、2つの領域S1,S2をそれぞれ互いに逆向きに貫く。そのため、ループLに発生する第1誘導ノイズ電流I1と第2誘導ノイズ電流I2とは、互いに向きが逆になる。
【0023】
ある瞬間において、磁束Φは図4に示すようにループLを貫く。第1領域S1を貫く磁束ΦのX方向(外部端子2の突出方向)成分Φx1は、上記遠方側OUTから上記近傍側INに向かっている。この成分Φx1の時間的変化を妨げるように、ループLに第1誘導ノイズ電流I1が発生する。
【0024】
また、第2領域S2を貫く磁束ΦのX方向成分Φx2は、上記近傍側INから上記遠方側OUTへ向かっている。この成分Φx2の時間的変化を妨げるように、ループLに第2誘導ノイズ電流I2が発生する。
【0025】
交流磁界Hは交互に向きが変わるが、このように向きが変わっても、磁束ΦのX方向成分Φx1と、磁束ΦのX方向成分Φx2とは、常に互いに反対側を向く。そのため、上記2つの誘導ノイズ電流I1,I2は、常に互いに逆向きに流れる。したがって、この2つの誘導ノイズ電流I1,I2は互いに打ち消し合う。
【0026】
図2に示すごとく、本例の導線6は、X方向とZ方向との双方に直交する方向(Y方向)に直線状に延びている。また、Z方向から見たときに、交流磁界の発生源7から一方のボルト8aまでの距離r1は、発生源7から他方のボルト8bまでの距離r2よりも短い。
【0027】
そのため、仮に上記磁束遮蔽部5(図3参照)を設けなかったとすると、図13に示すごとく、第2領域S2の方が第1領域S1よりも面積が大きくなる。したがって、第2領域S2を貫く磁束Φの方が、第1領域S1を貫く磁束Φよりも多くなる。その結果、上記第1誘導ノイズ電流I1よりも第2誘導ノイズ電流I2の方が多く流れることになる。そのため、第2誘導ノイズ電流I2が第1誘導ノイズ電流I1によって完全に打ち消されなくなり、外部端子92に誘導ノイズ電流が混入しやすくなる。
【0028】
このような問題を抑制するため、本例では図3図6に示すごとく、ループL内に磁束遮蔽部5を設けている。これにより、ループL内における磁束Φを部分的に遮蔽し、各領域S1,S2を貫く磁束Φの量の差を少なくしている。すなわち、2つの領域S1,S2をそれぞれ貫く磁束Φの量を均等化している。そのため、2つの誘導ノイズ電流I1,I2の大きさが略等しくなり、打ち消し合って殆ど誘導ノイズ電流が残らなくなる。したがって、外部端子2に誘導ノイズ電流I1,I2が混入しにくくなる。
【0029】
なお、本例では、磁束遮蔽部5を金属によって構成してある。磁束遮蔽部5は、ケース4と一体的に形成されている。ケース4及び磁束遮蔽部5はアルミニウム製であり、ダイカストによって製造したものである。ケース4をダイカストによって製造するときに、磁束遮蔽部5も同時に形成される。また、磁束遮蔽部5は、図6に示すごとく、板状に形成されている。
【0030】
一方、図9に示すごとく、本例の電力変換回路10は、MOSモジュール16と、トランス13と、ダイオードモジュール15と、チョークコイル12と、平滑コンデンサ17と、プリント基板14(制御回路)とを備える。MOSモジュール16は高圧直流電源8に接続している。MOSモジュール16は4個のMOS素子160を内蔵している。これら4個のMOS素子160によって、Hブリッジ回路を構成してある。
【0031】
MOSモジュール16の出力端子はトランス13の一次コイル130aに接続している。このトランス13によって、高圧直流電源8の電圧を降圧している。トランス13の二次コイル130bの出力端子138は、ダイオードモジュール15に接続している。また、トランス13のセンタータップ139はケース4、すなわちグランドに接続してある。
【0032】
ダイオードモジュール15には2個のダイオード150が設けられている。この2個のダイオード150を使って、トランス13の出力電圧を整流している。ダイオードモジュール15の出力端子151は、チョークコイル12に接続している。また、チョークコイル12の出力端子126は、平滑コンデンサ17及びフィルタコイル18に接続している。上記チョークコイル12と平滑コンデンサ17は、上記ダイオードモジュール15によって整流した波形を平滑化するために設けられている。
【0033】
上述したように、本例では、フィルタコイル18と2個のコンデンサ3a,3bとによってフィルタ回路11を構成してある。コンデンサ3a,3bの一方の電極31は外部端子2(出力端子2a)に接続し、他方の電極32はケース4に接続している。電力変換回路10ではMOS素子160をスイッチング動作させているため、この動作に伴って、電力変換回路10内に伝導ノイズ電流が発生する。この伝導ノイズ電流が出力端子2aを通って外部に出ないように、フィルタ回路11を使って除去している。
【0034】
一方、図5図7に示すごとく、本例では、ケース4の底面48にダイオードモジュール15を載置し、このダイオードモジュール15上にチョークコイル12を載置してある。チョークコイル12は、軟磁性体からなるコア121と、該コア121内に配された巻線部120とからなる。チョークコイル12の入力端子125は、図7に示すごとく、巻線部120からX方向に突出し、その先端部125aがZ方向に折り曲げられている。
【0035】
また、図6図7に示すごとく、ダイオードモジュール15の出力端子151は、封止部159からX方向に突出し、その先端部151aがZ方向に折り曲げられている。図7に示すごとく、ダイオードモジュール15の出力端子151の先端部151aと、チョークコイル12の入力端子125の先端部125aとを重ね合わせ、溶接してある。
【0036】
このように、ダイオードモジュール15の出力端子151はZ方向に延びているため、ダイオードモジュール15の出力電流(交流電流i)はZ方向に流れる。この出力端子151の周囲に、交流磁界Hが発生する。
【0037】
また、図5図8に示すごとく、チョークコイル12の出力端子126は、巻線部120からX方向に延出している。この出力端子126に、外部端子2aを重ね合わせて溶接してある。
【0038】
本例の作用効果について説明する。図2図3に示すごとく、本例においては、外部端子2とケース4と複数のコンデンサ3a,3bとによって、交流電流が流れるループLを形成してある。そして、交流磁界の磁束Φが、ループL内の2つの領域S1,S2のうち、一方の領域を近傍側INから遠方側OUTへ貫き、他方の領域を遠方側OUTから近傍側INへ貫くよう構成してある。つまり、磁束Φが、2つの領域S1,S2をそれぞれ逆向きに貫くよう構成してある。
磁束Φが第1領域S1を貫くと、ループLに誘導ノイズ電流I1が発生し、磁束Φが第2領域S2を貫くと、ループLに誘導ノイズ電流I2が発生する。磁束Φは、2つの領域S1,S2をそれぞれ逆向きに貫くため、2つの誘導ノイズ電流I1,I2は、ループLを互いに逆向きに流れる。そのため、これら2つの誘導ノイズ電流I1,I2は互いに打ち消し合い、弱め合う。したがって、外部端子2に大きな誘導ノイズ電流が混入することを抑制できる。
【0039】
また、本例では、ループL内に磁束遮蔽部5を設けてある。この磁束遮蔽部5によって、第1領域S1と第2領域S2とをそれぞれ貫く磁束の量の差を低減させている。したがって、2つの誘導ノイズ電流I1,I2の強さを殆ど等しくすることができる。そのため、打消し合わせた後に残る誘導ノイズ電流の強さを小さくすることができ、外部端子2に大きな誘導ノイズ電流が混入することを効果的に抑制することができる。
【0040】
仮に磁束遮蔽部5を設けなかったとすると、図13に示すごとく、2つの領域S1,S2をそれぞれ貫く磁束Φの量が互いに異なるため、2つの誘導ノイズ電流I1,I2の強さが大きく異なることになる。そのため、外部端子92に大きな誘導ノイズ電流が混入しやすくなる。磁束遮蔽部5を設けることなく、この問題を解決しようとすると、例えば支柱41,42の位置を変更する必要が生じる。そのため、電力変換装置1の、レイアウトの設計自由度が低下しやすくなる。これに対して、本例のように磁束遮蔽部5を形成すれば、支柱41,42の位置を変更する必要がなくなる。そのため、レイアウトの設計自由度を高めることができる。
【0041】
また、本例では、磁束遮蔽部5をケース4と一体化している。そのため、磁束遮蔽部5を別部品にする必要がなくなり、部品点数を減らすことが可能になる。したがって、電力変換装置1の製造コストを低減することができる。
【0042】
また、本例では、出力端子2aにループLを設けている。出力端子2aは、ノイズ電流の混入を特に抑制することが望まれている。そのため、本例のように、出力端子2aにループLを設け、出力端子2aに誘導ノイズ電流が混入しにくくした場合の効果は大きい。
【0043】
また、図3に示すごとく、本例では、交流磁界Hの発生源となる交流電流iは、ケース4の底面48の法線方向(Z方向)に流れている。そして、底面48からZ方向に2本の支柱41,42が突出し、2本の支柱41,42がループLの一部をなしている。
そのため、ループLに誘導ノイズ電流I1,I2が、互いに反対向きに流れるように2つ発生しやすくなる。すなわち、上記構成にすると、ループLを含む平面P(図4参照)が、Z方向に平行になる。また、交流磁界Hは、Z方向に流れる交流電流iを中心として円筒状になる。そのため、この円筒状の交流磁界Hの磁束Φが、ループL内の2つの領域S1,S2をそれぞれ貫きやすくなる。したがってループLに、互いに反対向きに流れる2つの誘導ノイズ電流I1,I2を発生させやすくなり、これら2つの誘導ノイズ電流I1,I2を互いに打消し合わせて弱めることができる。
【0044】
また、本例では図2図3に示すごとく、プリント基板14にコンデンサ3a,3bを固定している。そのため、コンデンサ3a,3bをしっかり固定できると共に、プリント基板14にパターン形成した配線6を使って、コンデンサ3a,3bを外部端子2やケース4に容易に電気接続することができる。
【0045】
また、本例では、支柱41,42を使ってプリント基板14を支持しており、かつ、この支柱41,42自体が、ループLの一部をなしている。つまり、プリント基板14を支持する支柱と、ループLを構成する支柱とが別々になっていない。そのため、電力変換装置1の構造を簡素にすることができる。また、支柱41,42を用いると、プリント基板14を底面48から離れた位置に固定できる。そのため、ループLの面積を大きくすることができ、磁束Φが、ループL内の2つの領域S1,S2をそれぞれ貫きやすくなる。
【0046】
以上のごとく、本例によれば、大きな誘導ノイズ電流が外部端子に混入しにくい電力変換装置を提供することができる。
【0047】
なお、本例では、上述したように、磁束遮蔽部5をケース4と一体化しているが、本例はこれに限るものではない。例えば図10に示すごとく、磁束遮蔽部5を、ケース4とは別部材にしてもよい。そして、ボルト50を用いて、磁束遮蔽部5をケース4に締結するようにしてもよい。
【0048】
また、本例では、2つの外部端子2(出力端子2aおよび入力端子2b)のうち、出力端子2aのみにコンデンサ3を接続し、ループLを形成したが、本例はこれに限るものではない。例えば、入力端子2bにループLを形成してもよく、また、入力端子2bと出力端子2aとの双方にループLを形成してもよい。
【0049】
また、上述したように、本例のケース4はグランドに接続されている。ここで「グランドに接続されている」には、基準電位としての大地に接続する場合だけでなく、基準電位となる他の部材、例えば車両のボディ等に接続する場合が含まれる。
【0050】
(実施例2)
本例は、磁束遮蔽部5の形状を変更した例である。図11図12に示すごとく、本例では、磁束遮蔽部5が支柱42と連結している。また、実施例1と同様に、本例では、ケース4をダイカストによって製造している。
【0051】
このようにすると、磁束遮蔽部5と支柱42とが連結しているため、ダイカストを行ってケース4を製造するときに、金型内の空間における、磁束遮蔽部5及び支柱42を形成するための部分を、溶融金属が流れやすくなる。そのため、磁束遮蔽部5及び支柱42を容易に形成することができる。
【0052】
その他は、実施例1と同様である。また、本例に関する図面に用いた符号のうち、実施例1において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、実施例1と同様の構成要素等を表す。
【符号の説明】
【0053】
1 電力変換装置
10 電力変換回路
2 外部端子
3 コンデンサ
4 ケース
5 磁束遮蔽部
L ループ
S1 第1領域
S2 第2領域
Φ 磁束
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13