特許第5840726号(P5840726)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5840726後退可能なシースを有する組織穿刺部閉鎖システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5840726
(24)【登録日】2015年11月20日
(45)【発行日】2016年1月6日
(54)【発明の名称】後退可能なシースを有する組織穿刺部閉鎖システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/12 20060101AFI20151210BHJP
【FI】
   A61B17/12
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-90582(P2014-90582)
(22)【出願日】2014年4月24日
(62)【分割の表示】特願2011-255495(P2011-255495)の分割
【原出願日】2006年4月28日
(65)【公開番号】特開2014-158951(P2014-158951A)
(43)【公開日】2014年9月4日
【審査請求日】2014年5月2日
(31)【優先権主張番号】11/130,895
(32)【優先日】2005年5月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510003656
【氏名又は名称】セイント ジュード メディカル プエルト リコ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ホワイト
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム フィーラー
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ティー フォースバーグ
【審査官】 森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/039387(WO,A2)
【文献】 特開2004−329935(JP,A)
【文献】 特表2007−508114(JP,A)
【文献】 特開2004−216157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 13/00 − 18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部組織壁穿刺に部分的に挿入して封止するための組織穿刺部閉鎖装置において、
この閉鎖装置の前記第1端部から第2端部に延在するフィラメントと、
前記閉鎖装置の前記第2端部で前記フィラメントに取り付けるアンカーであって、組織壁穿刺部に挿入する該アンカーと、
前記アンカーに隣接して前記フィラメントに対して、摺動可能に取り付ける封止プラグと、
前記封止プラグに隣接して配置するタンピング管と、
ハンドルと、
前記内部組織壁穿刺部から前記閉鎖装置を引き抜く際に、前記タンピング管により前記第2端部に向けて前記封止プラグを自動的にタンピングするための、前記ハンドル内で前記タンピング管の移動方向に摺動できる浮動可能な自動駆動機構と
を備えたことを特徴とする、組織穿刺部閉鎖装置。
【請求項2】
請求項1に記載の、内部組織壁穿刺部に部分的に挿入して封止する組織穿刺部閉鎖装置において、
前記浮動可能な自動駆動機構は、前記組織壁穿刺部からの前記閉鎖装置の引き抜きの際に、前記封止プラグにタンピング力を加えるギアボックス組立体を有する構成とした、組織穿刺部閉鎖装置。
【請求項3】
請求項1に記載の、内部組織壁穿刺部に部分的に挿入して封止する組織穿刺部閉鎖装置において、
前記浮動可能な自動駆動機構は、前記組織壁穿刺部からの前記閉鎖装置の引き抜きの際に、前記封止プラグにタンピング力を加えるギアボックス組立体を有する構成とし、
このギアボックス組立体は、
前記フィラメントの一部を巻き付ける第1ギアおよびスプール組立体と、
前記第1ギアにより駆動される第2ギアと、
この第2ギアにより駆動され、かつ前記タンピング管に噛合する第3ギアと
を有する構成とした、組織穿刺部閉鎖装置。
【請求項4】
請求項1に記載の、内部組織壁穿刺部に部分的に挿入して封止する組織穿刺部閉鎖装置において、
前記浮動可能な自動駆動機構は、前記組織壁穿刺部からの前記閉鎖装置の引き抜きの際に、前記封止プラグにタンピング力を加える変換器を有する構成とし、
この変換器は、
前記フィラメントの一部を巻き付ける第1ギアおよびスプール組立体を有する構成とし、
前記アンカーを展開して、前記閉鎖装置を前記組織壁穿刺部から後退させるとき、前記スプールが回転して、前記第1ギアを第1方向に駆動して、この第1ギアは、前記タンピング管を第2方向に駆動する構成とした、組織穿刺部閉鎖装置。
【請求項5】
請求項1に記載の、内部組織壁穿刺部に部分的に挿入して封止する組織穿刺部閉鎖装置において、前記浮動可能な自動駆動機構は、選択的に離脱可能な構成とし、また
第1軸線上に配置し、前記フィラメントの一部を巻き付ける第1ギアおよびスプール組立体と、
この第1ギアに隣接する第2軸線上の第2ギアと、
この第2ギアに隣接する第3軸線上の第3ギアと
を有する構成とし、
前記第1ギア、第2ギアまたは第3ギアのうち1個は、各該軸線に沿って移動可能で、該第1ギア、第2ギアおよび第3ギアと動作可能に係合および分離できる構成とした、組織穿刺部閉鎖装置。
【請求項6】
請求項1に記載の、内部組織壁穿刺部に部分的に挿入して封止する組織穿刺部閉鎖装置において、前記浮動可能な自動駆動機構は、選択的に離脱可能な構成とし、また
第1軸線上に配置し、前記フィラメントの一部を巻き付ける第1ギアおよびスプール組立体と、
前記第1ギアに隣接する第2軸線上の第2ギアと、
この第2ギアに隣接する第3軸線上の第3ギアと、
前記第2軸線上の前記第2ギアを、前記第1ギアおよび第3ギアとの噛合関係に偏倚するバイアス部材と、
前記第2ギアを、該第1ギアおよび第3ギアのうち少なくとも一方と該噛合関係から脱するよう軸線方向に移動させるために、前記バイアス部材に対して選択的に打ち勝つよう前記第2ギアに取り付けたアクチュエータと
を有する構成とした、組織穿刺部閉鎖装置。
【請求項7】
請求項1に記載の、内部組織壁穿刺部に部分的に挿入して封止する組織穿刺部閉鎖装置において、前記浮動可能な自動駆動機構は、選択的に離脱可能な構成とし、また
第1軸線上に配置し、前記フィラメントの一部を巻き付ける第1ギアおよびスプール組立体と、
前記第1ギアと前記スプールとの組立体間に配置した手動操作型のクラッチと
を有する構成とし、
該クラッチは、前記スプールを前記第1ギアに動作可能に連結、および分離する構成とした、組織穿刺部閉鎖装置。
【請求項8】
請求項7に記載の、内部組織壁穿刺部に部分的に挿入して封止する組織穿刺部閉鎖装置において、さらに、
前記第1ギアに隣接する第2軸線上の第2ギアと、
この第2ギアに隣接する第3軸線上の第3ギアと
を備えた、組織穿刺部閉鎖装置。
【請求項9】
請求項4に記載の、経皮切開部からアクセスすることができる内部組織壁内の組織穿刺部に部分的に挿入して封止する組織穿刺部閉鎖装置において、前記浮動可能な自動駆動機構は、さらに、
第2回転軸線を有し、この第2回転軸線に沿って選択的に移動して、前記第1ギアに係合および離脱可能な第2ギアと、
この第2ギアおよび前記タンピング装置に係合する第3ギアと
を有する構成とした、組織穿刺部閉鎖装置。
【請求項10】
医療装置において、
ハンドルと、
このハンドルから突出するキャリア管と、
前記ハンドルから、前記キャリア管に貫通するフィラメントと、
このフィラメントに摺動可能に取り付けた封止プラグと、
この封止プラグの末端側で前記フィラメントに取り付けたアンカーと、
前記ハンドル内に配置した、変位可能なギアボックス組立体と、
前記フィラメントの周りに少なくとも部分的に配置し、また前記ギアボックス組立体から前記キャリア管内に突入するタンピング管と
を備え、前記ギアボックス組立体は、前記医療装置の引き抜きの際に、前記タンピング管の移動方向への前記ギアボックス組立体の変位により、前記タンピング管を進めて前記封止プラグを前記アンカーに向けて圧縮するために自動的に作動する構成とした、医療装置。
【請求項11】
前記ギアボックス組立体は、前記ハンドルに対して第1位置で前記ギアボックス組立体を保持する戻り止めを有する構成として、この戻り止めは、前記ギアボックスと前記ハンドルと間に所定の力が加わる際に解放し得る構成とした、請求項10に記載の医療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に医療装置に関し、とくに、組織壁の穿刺部または切開部を封止する
装置に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の外科的処置が、脈管内または管腔内において、日常的に行われている。例えば、
動脈硬化症等の血管系疾患の治療において、動脈内に器具(例えば、バルーンまたは他の
タイプのカテーテル)を挿入し、動脈内で処置を行うことは、一般的な方法である。この
ような処置は、通常、経皮的な動脈穿刺を必要とし、これにより挿入シースを動脈内に配
置することができ、その後、器具(例えば、カテーテル)をシース内に通し、動脈内の処
置位置に移動することができる。脈管内処置および管腔内処置には、処置が完了し、器具
(および器具と共に使用した挿入シース)を取り外した後に、経皮的穿刺部での出血を止
めるという不可避的な問題が存在する。穿刺部からの出血、とくに大腿動脈穿刺部からの
出血の場合、脈管閉鎖装置、例えば、本明細書に参考として付記する、特許文献1(米国
特許第6,179,963号)、特許文献2(米国特許第第6,090,130号)、特
許文献3(米国特許第第6,045,569号)および関連特許文献等に記載の、装置を
利用して、止血するのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許番号6,179,963号明細書
【特許文献2】米国特許番号6,090,130号明細書
【特許文献3】米国特許番号6,045,569号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許に記載したような代表的な閉鎖装置では、封止プラグを組織穿刺部に配置する
。しかし、封止プラグを良好に配置するには、キャリア管内から封止プラグを手動で排出
させ、タンピング管を用いて組織穿刺部の外表面に詰め込むタンピングの必要がある。し
かし、封止プラグを排出させるとき、挿入シースがキャリア管の拡張を制限してしまうた
め、封止プラグの排出が困難となる可能性がある。さらに、タンピング管を露出させて手
で掴めるようにするために、(タンピング管を内部に配置した)器具シースを取り外すま
で、タンピング処理を開始することができない。ある条件の下では、封止プラグをタンピ
ングする前に装置を取り外してしまうと、組織穿刺部から封止プラグ自体を後退させてし
まい、その後の封止プラグの配置を妨げて、結果的に部分的にしか封止できず、組織穿刺
部から事後出血することになる可能性がある。したがって、封止プラグを組織穿刺部に展
開する機構を改善する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述のおよび他のニーズを満たすものである。とくに、本発明は、内部組織
穿刺部を閉鎖するための医療装置、方法およびシステムを提供する。しかし、従来のシス
テムとは異なり、本発明は、処置シースの後退、および/または封止プラグの自動タンピ
ングを容易にする。さらに、本発明の実施形態によれば、自動タンピングシステムは離脱
可能とし、これにより、閉鎖装置のより完全な後退が容易となり、また閉鎖装置の残りの
部分から封止プラグを容易に分離することができる。
【0006】
多くの実行可能な実施形態の一つとして、本発明は、医療装置を提供する。この医療装
置は、ハンドルと、ハンドルの第1端部から第2端部に延在するフィラメントと、第2端
部でフィラメントに取り付けた封止プラグ組立体と、ハンドルに摺動可能に取り付けた自
動タンピング組立体とを備える。この装置は、ハンドルから延在し、かつ自動タンピング
組立体に固着したキャリア管と、ハンドル内に配置するトラックであって、自動タンピン
グ組立体を摺動可能に取り付ける該トラックとを備える構成とすることができる。
【0007】
医療装置の幾つかの実施形態においては、自動タンピング組立体は、収納戻り止めを有
する構成とする。この収納戻り止めは、初期的にはハンドルと係合することができ、自動
タンピング組立体をハンドルに対して、第1位置に一次的に保持することができる。
【0008】
医療器具の幾つかの実施形態においては、ハンドル内に配置する第1水掻き状トラック
を設ける。第1水掻き状トラックは、第1幅および第2幅を有する。戻り止めは、第1水
掻き状トラック内に挿入することができ、この第1水掻き状トラック内で、第1幅および
第2幅の少なくとも一部を横切る。戻り止めは、第1幅よりも広い第3幅になるようバイ
アスを付与したフィンガを有する構成とすることができる。このフィンガは、第1位置で
は第2幅における、第1水掻き状トラック内に少なくとも部分的に突入することができ、
ハンドルに対して、自動タンピング組立体を一時的にしっかりと保持する。
【0009】
医療装置の幾つかの実施形態においては、自動タンピング組立体は、タンピング管に動
作可能に連結したギアボックスを有する構成とすることができる。
【0010】
医療装置の幾つかの実施形態においては、封止プラグ組立体は、封止プラグおよびアン
カーを有する構成とし、自動タンピング組立体は、タンピング管ラックおよびギアボック
ス組立体を有する構成とする。ギアボックス組立体は、スプール上にフィラメントの一部
を巻き付ける第1ギアおよびスプール組立体を有するものとし、アンカーを組織壁穿刺部
に展開し、そして医療装置を組織壁穿刺部から後退させるとき、スプールが回転して第1
ギアを第1方向に駆動し、この第1ギアがタンピング管ラックを駆動する構成とする。ギ
アボックス組立体は、また、第1ギアにより駆動される第2ギアと、第2ギアにより駆動
される第3ギアとを有する構成とすることもできる。 第3ギアは、アンカーに向かって
タンピング管ラックを直接駆動する構成とすることができる。
【0011】
医療装置の幾つかの実施形態においては、自動タンピング組立体は、ハンドル内で所定
距離に沿って自由に浮動する構成とすることができる。さらに、シースを、固定の向きで
ハンドルに取り付けることができる。自動タンピング管はハンドル内で浮動できるので、
ハンドルおよびシースは、キャリア管および自動タンピング組立体の位置を変えることな
く後退させることができる。
【0012】
本発明の他の実施態様によれば、組織壁穿刺部閉鎖組立体を提供する。この組織壁穿刺
部閉鎖組立体は、処置シースと、部分的に処置シースに挿入した閉鎖装置とを備える。閉
鎖装置は、アンカーと、封止プラグと、ハンドルと、アンカーと封止プラグとの間、およ
びハンドルまで延在するフィラメントと、ハンドル内に配置し、またフィラメントに連結
したギアボックス組立体と、ギアボックス組立体に固定するキャリア管であって、処置シ
ース内に突入し、封止プラグを収容する該キャリア管とを有する構成とし、処置シースお
よびハンドルは、キャリア管のポジションを移動することなく後退可能な構成とする。ギ
アボックス組立体は、ギアボックス戻り止めの釈放の際に、ハンドル内で摺動可能な構成
とする。
【0013】
本発明の他の実施態様によれば、内部組織壁穿刺に部分的に挿入して封止する組織穿刺
部閉鎖装置を提供する。この閉鎖装置は、閉鎖装置の第1端部から第2端部に延在するフ
ィラメントと、閉鎖装置の第2端部でフィラメントに取り付けるアンカーであって、組織
壁穿刺部に挿入する該アンカーと、アンカーと隣接したフィラメントに摺動可能に取り付
ける封止プラグと、内部組織壁穿刺部から閉鎖装置を引き抜く際に、第2端部に向けて封
止プラグを自動的にタンピングまたはシンチングするための浮動可能な自動駆動機構とを
備える。タンピング管は、封止プラグに隣接して配置することができ、浮動可能な自動駆
動機構によってタンピング管を駆動して、封止プラグをタンピングする。浮動可能な自動
駆動機構は、組織壁穿刺部から閉鎖器具を引き抜く際に、封止プラグにタンピング力を加
えるギアボックス組立体を有する構成とすることができる。浮動可能な自動駆動機構は、
また、組織壁穿刺部から閉鎖器具を引き抜く際に、封止プラグにタンピング力を加える変
換器を有する構成とすることができる。この変換器は、フィラメントの一部を巻き付ける
第1ギアおよびスプール組立体を有する構成とし、スプールが回転して第1ギアを第1方
向に駆動し、この第1ギアがタンピング管を第2方向に駆動する構成とする。
【0014】
装置の幾つかの実施形態においては、浮動可能な自動駆動機構は、選択的に離脱可能な
構成とし、第1軸線上に配置し、フィラメントの一部を巻き付ける第1ギアおよびスプー
ル組立体と、第1ギアに隣接する第2軸線上の第2ギアと、第2ギアに隣接する第3軸線
上の第3ギアと、を有する構成とする。第1ギア、第2ギア、または第3ギアのうち1個
は、各々の軸線に沿って移動可能で、第1ギア、第2ギア、および第3ギアと動作可能に
係合および分離できる濃いとする。例えば、第2軸線上の第2ギアを、第1ギアおよび第
3ギアと噛合関係に偏倚するバイアス部材と、さらに第2ギアを、第1ギアおよび第3ギ
アのうち少なくとも一方との噛合関係から脱するよう軸線方向に移動させるため、バイア
ス部材に対して選択的に打ち勝つよう、第2ギアに取り付けたアクチュエータとを有する
構成とする。代案として、第1ギアとスプール組立体との間に配置した、手動操作型のク
ラッチを有し、クラッチは、スプールを第1ギアに動作可能に連結および分離する構成と
する。
【0015】
本発明の他の実施態様は、経皮的切開部からアクセスすることができる内部組織壁穿刺
部に部分的に挿入して封止する組織穿刺部閉鎖装置を提供する。この装置は、ハンドルと
、内部組織壁の末端側に配置するアンカーと、内部組織壁の基端側に配置する封止プラグ
と、フィラメント末端部をアンカーおよび封止プラグに連結および係止し、組織穿刺部の
周りでアンカーおよび封止プラグをともに摺動可能に締め上げるフィラメントであって、
封止プラグを、このフィラメント上にアンカーよりも基端側に摺動可能に配置した該フィ
ラメントと、このフィラメント上に配置して、封止プラグを、アンカーに向けてフィラメ
ントに沿って末端方向に駆動するタンピング装置と、ハンドル内で摺動できるギアボック
ス組立体とを備える。
【0016】
本発明の他の様態は、経皮的切開部からアクセスできる内部組織内の組織穿刺部を封止
する方法を提供する。この方法は、キャリア管を備える該閉鎖装置を、処置シースを経て
組織穿刺部内に挿入するステップと、内部組織壁内にアンカーを展開するステップと、閉
鎖装置のキャリア管を移動することなく組織穿刺部から処置シースを後退させるステップ
と、組織穿刺部に封止プラグを設置するステップとを備える。この方法は、また、閉鎖装
置を処置シースに取り付けるステップと、処置シースと共に閉鎖装置のハンドルを後退さ
せるステップと、閉鎖装置内でキャリア管を自由に浮動させるステップとを含むこともで
きる。方法の幾つかの実施形態は、処置シースおよび閉鎖装置を第1方向に後退させるこ
とで生じる原動力を、第2方向へのタンピング力に自動変換するステップと、を備える。
タンピング力を、封止プラグに連結したフィラメントの周りに摺動可能に配置したラック
に伝達するものとする。
【0017】
幾つかの実施形態においては、この方法は、閉鎖装置を処置シースに取り付けるステッ
プと、処置シースと共に閉鎖装置のハンドルを後退させるステップと、閉鎖装置内でキャ
リア管とギアボックス組立体を自由に浮動させるステップと、処置シースおよび閉鎖装置
を第1方向に後退させることで生じる原動力を、第2方向へのタンピング力に自動変換す
るステップと、このタンピング力を、封止プラグに連結したフィラメントの周りに摺動可
能に配置したラックに伝達するステップと、を備え、さらに、伝達ステップは、フィラメ
ントに取り付けたアンカーを組織穿刺内に展開し、そして組織穿刺部から閉鎖装置を引き
抜くことによって、ギアボックス組立体のスプールからフィラメントを自動的に繰り出す
ステップ、を備える。さらに、伝達ステップは、スプールにおける繰り出しによって、ラ
ックと噛合するギアボックス組立体のギア列を駆動する。方法は、ギアボックス組立体の
少なくとも1つのギアを離脱させることによって、タンピング力を手動で無効化すること
を備えることが出来る。離脱は、少なくとも1つのギアを隣接するギアとの係合接触から
軸線方向に変位するステップを備えることができる。
【0018】
本発明方法の幾つかの様態によれば、処置シースの後退ステップは、キャリア管の末端
部を露出させるステップを備える。封止プラグは、処置シースと共に後退させるキャリア
管から容易に排出することができる。
【0019】
本発明は、経皮的切開からアクセスできる内部組織壁の組織穿刺部を封止する他の方法
もまた、提供する。この方法は、ハンドル、フィラメントの末端方向に、組織穿刺部に配
置する封止プラグを係止および連結したフィラメントと、キャリア管に取り付けた浮動可
能な自動タンピング装置を備える組織穿刺閉鎖装置を準備するステップを備える。この方
法は、処置シースを通して経皮的切開部内に組織穿刺閉鎖装置を挿入するステップと、組
織穿刺内にアンカーを展開するステップと、アンカー、浮動可能な自動タンピング装置、
およびキャリア管の位置を維持しつつ、処置シースおよびハンドルを後退させるステップ
と、浮動可能な自動タンピング装置およびキャリア管を止め部で停止させるステップと、
処置シース、ハンドル、浮動可能な自動タンピング装置、およびキャリア管を一緒に後退
させるステップと、浮動可能な自動タンピング装置の後退に応答して、キャリア管から抜
け出た前記封止プラグをアンカーに向けて自動的にタンピングするステップと、を備える
。この方法はまた、浮動可能な自動タンピング装置を離脱させるステップと、組織穿刺部
閉鎖装置をさらに後退させるステップと、フィラメントを露出させるステップと、フィラ
メントを切断するステップと、アンカーおよび封止プラグを組織穿刺部に残すステップと
を備える。
【0020】
本発明の別の様態では、医療器具で、ハンドルと、ハンドルから突出するキャリア管と
、ハンドルからキャリア管に貫通するフィラメントと、フィラメントに摺動可能に取り付
けた封止プラグと、この封止プラグの末端側でフィラメントに取り付けたアンカーと、ハ
ンドル内に配置した変位可能なギアボックス組立体と、フィラメントの周りに少なくとも
部分的に配置し、ギアボックス組立体からキャリア管に突入するたタンピング管ラックと
、を備える医療装置を提供する。ギアボックス組立体は、ハンドルに対して第1位置でギ
アボックス組立体を保持する戻り止めを有する構成とすることができ、この戻り止めは、
ギアボックスとハンドルと間に所定の力が加わる際に釈放し得る構成とする。
【0021】
本発明のさらなる利点および新規な特徴を、以下の記載で説明するが、当業者は、これ
らの記載を読むまたは本発明を実施することによって、理解できるであろう。本発明の利
点は、特許請求の範囲に詳述した手段によって達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】従来技術による、組織閉鎖装置の一部断面とする側面図である。
図2】従来技術による、図1の組織閉鎖装置を動脈に係合させた状態を示す側面図である。
図3】従来技術による、図1の組織閉鎖装置を動脈から引き抜いて、コラーゲンスポンジを配置する状態を示す、側面図である。
図4】従来技術による、図1の組織閉鎖装置でコラーゲンスポンジをタンピングしている状態を示す側面図である。
図5A】本発明の一実施例による、自動タンピングまたは駆動機構を有する組織穿刺部閉鎖装置の分解斜視図である。
図5B】本発明の一実施例による図5Aの組織閉鎖装置を、処置シース内に挿入し、動脈に係合させた第1位置における状態を示す、側面図である。
図5C図5Bの部分詳細図である。
図5D】本発明の一実施例による図5Aの組織閉鎖装置の、動脈と係合し、処置シースを後退させた第2位置における状態を示す側面図である。
図5E図5Dの部分詳細図である。
図5F】本発明の一実施例による図5Aの組織閉鎖装置の、動脈と係合し、封止プラグをタンピングしている第3位置における状態を示す側面図である。
図5G図5Fの部分詳細図である。
図6】本発明の一実施例による図5Aの駆動機構の、明確にするためにキャリア管を取り外した状態での分解斜視図である。
図7】本発明の一実施例による、図6の駆動機構の縦断面図である。
図8】本発明の一実施例による、図5Aの駆動機構およびハンドルの一部の拡大斜視図である。
図9】本発明の他の実施例による、自動タンピング駆動機構を有する組織穿刺部閉鎖装置の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
添付図面は、本発明の種々の実施例を説明するものであり、明細書の一部である。図示
した実施例は、本発明の例に過ぎず、発明の範囲を限定するものではない。
【0024】
図面全体にわたって、同一の符号は、類似の要素を示すものであり、必ずしも同一の要
素を示しているわけではない。
【0025】
上記のように、血管処置は、世界中で行われており、穿刺部を経て動脈に到達(アクセ
ス)することが必要となる。多くの場合、動脈は、大腿動脈である。処置完了後に穿刺部
を閉鎖するために、多くの場合、閉鎖装置を用いて、穿刺部を、アンカーと封止プラグと
の間に挟み込む。しかし、時として封止プラグは封止装置から排出させることが困難であ
り、動脈切開部の外側位置に対して適切に着座しないことがよくある。動脈切開部に対し
てプラグ適切に着座しない場合、設置後出血を起こす可能性がある。本発明は、封止プラ
グの排出、および封止プラグの適切な配置を容易にする方法および装置を記載する。以下
に示し、記述する脈管器具は、処置シースおよび穿刺部封止装置を有するが、本明細書に
記載する原理の用途は、以下に説明する特定の装置に限定されない。本明細書に記載する
原理は、任意の医療機器に使用することができる。したがって、以下の説明は、主に動脈
処置および脈管閉鎖装置のいくつかの実施態様を説明することを目的とするが、本発明方
法および装置は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0026】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用する、用語「タンピングする」また
は「タンピング」は、1回または連続して、突き(ブロー)、タップ、または滑らかで安
定した圧力を、ただし過剰な力でなく加えることによって詰め込むことを意味するために
広く使用する。「係合する」および「係合可能な」はまた、2個の装置(デバイス)間を
相互連結する、噛合する、または接触することを意味するために広く使用している。同様
に、「離脱する」または「離脱可能な」は、相互連結、噛合、または接触を解除する、ま
たは解除可能であることを意味する。「スプール」は、なにか他のもの(例えば、フィラ
メント、縫合糸等)を少なくとも部分的に巻き付けるシリンダまたはその他の装置である
。「管」は、通路を有する細長い装置である。通路は、閉鎖型、または開放型(例えばト
ラフ)にすることができる。「管腔(ルーメン)」は、身体の器官内、特に血管内におけ
る空間または空洞に関する。「摺動可能に取り付ける」は、適当な支持体に対して移動可
能であることを意味する。「戻り止め」は、機構の一部の動きを、少なくとも一時的にロ
ックする、キャッチまたはレバーである。「浮動性」は、少なくとも任意の初期ホルダに
打ち勝った後に、少なくとも1個の自由度に従って自由に動くことが可能であることを意
味する。「浮動性」の動きは、必ずしも無制限である必要はなく、特定範囲内のみにおけ
る自由な動きとすることができる。「変換する」は、ある形態の力または他の入力エネル
ギーを、他の形態または他の方向の出力エネルギーまたは力に変換することを意味する。
用語「もたらす」は、結果を生み出すこと、成果を得ること、または果たすことを意味す
る。単語「含む」および「有する」は、特許請求の範囲を含め、本明細書で使用している
ように、単語「備える」と同様の意味を持つ。
【0027】
つぎに、図面、とくに図1〜4に、従来技術の脈管穿刺部閉鎖装置100を示す。脈管
穿刺部閉鎖装置100は、キャリア管102を有し、このキャリア管102内にフィラメ
ントまたは縫合糸104が少なくとも部分的に貫通する。閉鎖装置100はまた、第1端
部すなわち基端部106と、第2端部すなわち末端部107とを有する。キャリア管10
2の第2端部すなわち末端部107の外部にアンカー108を設ける。このアンカーは、
細長く硬質な薄型の部材であり、中央部に形成した眼口部(アイ)109を有する。アン
カー108は、一般的に、生体再吸収可能なポリマーで形成する。
【0028】
縫合糸104を、アンカー108に通して、コラーゲンパッド110に戻す。コラーゲ
ンパッド110は、ランダムに配向する繊維状材料を、化学的手段によって互いに結合し
て構成することができる。縫合糸104が末端方向にキャリア管102から抜け出るとき
、コラーゲンパッド110を縫合糸104に摺動可能に取り付け、縫合糸をアンカー10
8に通過させてキャリア管102に再び進入させるとき、コラーゲンパッド110の基端
部側に確実に引き結びノット(滑りノット)を形成し、閉鎖装置100を適切に配置して
アンカー108を展開するとき(図4参照)、コラーゲンパッド110の締め上げ(シン
チング)を容易にする。キャリア管102は、一般的に、内部に配置したタンピング管1
12を有する。タンピング管112を、縫合糸104に摺動可能に取り付けて、術者(オ
ペレータ)が使用することで、適切な時点でコラーゲンパッド110をアンカー108に
向けてタンピングして、経皮的組織穿刺部を封止することができる。
【0029】
アンカー108を動脈内に展開する前には、アンカー108の眼口部109は、キャリ
ア管102の末端部107の外側に休止する。アンカー108は、キャリア管102の末
端部107上に配置したバイパス管114によって、キャリア管102と同一平面上とな
る所定位置に一時的に固定することができる。
【0030】
アンカー108およびキャリア管102が同一平面上に配置する構成により、アンカー
108を、図2〜4に示すような挿入シース116等の処置シース内に挿入することがで
き、最終的には、動脈の穿刺部118内に挿入することができる。図2〜4に示すように
、挿入シース116は、経皮的切開部119を通して動脈128内に挿入する。しかし、
バイパス管114(図1参照)は、過大ヘッド112を有しており、バイパス114が挿
入シース116の内部通路を通過するのを妨げる。従って、穿刺部閉鎖装置100を挿入
シース116に挿入する際に、過大ヘッド120は、挿入シース116の表面122に圧
着する。さらに、穿刺部閉鎖装置100を挿入した結果、キャリア管102(図1)とバ
イパス管114との間で滑り運動が生じ、アンカー108をバイパス管114(図1)か
ら放出する。アンカー108は、バイパス管114から排出された後も、挿入シース11
6によって動作が制限され、図1に示す同一平面上の状態に留まる。
【0031】
挿入シース116は、その第2端部すなわち末端部126に単一折り曲げ部124を有
する。単一折り曲げ部124は、アンカー108に対して一方向弁として機能する。単一
折り曲げ部124は、挿入シース116の一部を塑性変形させたものであり、アンカー1
08が挿入シース116の末端部126から押し出されるときに、弾性的に曲げられる。
一般的に、アンカー108が挿入シース116の末端部126を通過し、動脈128に入
った後、アンカー108は、もはやキャリア管102に対して同一平面上の位置に拘束さ
れず、図2に示す位置に回転して展開する。
【0032】
次に図3〜4を参照すると、アンカー108を展開することにより、穿刺部閉鎖装置1
00および挿入シース116を一緒に引き出すことができ、コラーゲンパッド110をキ
ャリア管102から切開路119内に配置するとともに、タンピング管112を露出する
図4に示すように完全に露出したタンピング管112により、コラーゲンパッド110
を手動でタンピングして、アンカー108およびコラーゲンパッド110をともに締め上
げ(シンチングし)、縫合糸104の自己締め付け引き結びノットにより所定位置に保持
する。このように、組織穿刺部をアンカー108とコラーゲンパッド110との間に挟み
込むことにより、組織穿刺部118を封止する。この後、縫合糸104を切断して、切開
路119を閉鎖することができる。縫合糸104、アンカー108、およびコラーゲンパ
ッド110は、一般的に再吸収性材料で形成するため、所定位置に留まって穿刺部118
を治癒する。
【0033】
しかし、上述の代表的な組織穿刺部閉鎖装置100を使用する場合、コラーゲンパッド
110の排出およびタンピングが困難である。コラーゲンパッド110をキャリア管から
排出する際に、挿入シース116は変形を阻止しようとする。また、タンピング管112
を露出して手で掴めるようにするために挿入シース116を患者の皮膚表面より上の位置
に取り外すまで、タンピングを開始することができない。一定の条件の下で、コラーゲン
パッド110のタンピングに先立つシース116の取り外しによって、コラーゲンパッド
110を組織穿刺118から後退させ、コラーゲンパッド110と穿刺部118との間に
好ましくない間隙120を生ずることがある。この間隙120は、図4に示すように、タ
ンピング後も残る可能性があり、また時として、部分的封止しか生ぜず、組織穿刺部11
8から出血することがあり得る。
【0034】
従って、本明細書は、閉鎖装置に対して処置シースを後退させ、封止プラグを排出する
前に閉鎖装置の末端部を露出させることができる組織穿刺部閉鎖装置のような医療装置を
記載する。閉鎖装置は、さらに、組織穿刺部位からの組織穿刺部閉鎖装置の引き抜きの際
に、組織穿刺部に向けて封止プラグを自動的に駆動する。封止プラグを自動的に駆動する
ための機構は、選択的に離脱可能にすることができる。
【0035】
上記の通り、皮膚の切開部を経てアクセス可能な内部組織壁の組織穿刺部を封止するた
めに使用する組織穿刺部閉鎖装置の一般的な構造および機能は、当業界でよく知られてい
る。本明細書に記載の実施原理を含む閉鎖装置の用途としては、生体を2個の内部部分に
分断する、経皮的な組織穿刺部または組織切開部の閉鎖、例えば血管、管路または管腔(
ルーメン)、胆嚢、肝臓、心臓等における穿刺部または切開部の閉鎖がある。
【0036】
以下に、図5A〜5B参照して、医療装置、例えば組織壁穿刺部閉鎖装置200を、本
発明の一実施例に従って示す。閉鎖装置200を、図5Aに分解斜視図として示す。図5
B〜5Gは、組み立てて、処置シース216を通して管腔232内に挿入した閉鎖装置2
00を示す。閉鎖装置200は、血管(例えば、動脈)穿刺部を即座に止血するように設
計したので、血管内処置、例えば血管造影剤注射、心臓カテーテル、バルーン血管形成、
および他のアテローム硬化性動脈再疎通等に関連して使用する場合、閉鎖装置200は、
とくに有用である。しかし、以下の好ましい実施例の説明では、動脈経皮的穿刺部の封止
を目的としているが、この装置は、よりいっそう広範囲な用途があり、他の組織壁におけ
る穿刺部または切開部を封止するためにも使用することができることを理解されたい。こ
のように、本明細書に示す経皮的な動脈穿刺部の封止は、本発明の閉鎖装置200の、あ
る特定の一用途を単に例示しただけのものである。
【0037】
閉鎖装置200は、第1端部すなわち基端部206、および第2端部すなわち末端部2
07を有する。キャリア管202は、基端部206から末端部207まで延在し、末端部
207に出口213を有する。末端部207は、スリット209を設けることができる。
【0038】
キャリア管202は、プラスチック材、または他の材料で形成することができ、処置シ
ース216(図5B)に挿入するよう設計する。処置シース216(図5B)は、組織層
230における経皮的切開部219(図5B)から、管腔232内に挿入するよう設計す
る。図5B〜5Gによると、管腔232は、大腿動脈228の内側部分を構成する。
【0039】
キャリア管202の末端部207には、アンカー208および封止プラグ210(図5
B)が存在する。この実施例のアンカー208は、細長く硬い薄型の部材であり、動脈2
28(図5B)の内側で穿刺部218(図5B)に連続する動脈壁234(図5B)に着
座する。アンカー208は、好ましくは生体再吸収可能なポリマーで形成する。封止プラ
グ210(図5B)は、コラーゲン等の非止血に対する生体再吸収可能な材料で形成した
、圧縮可能なスポンジ、発泡体、または繊維性マットにより構成し、組織穿刺部218の
封止を容易にする、任意の形状に構成することができる。
【0040】
封止プラグ210およびアンカー208を、生体再吸収可能なフィラメントまたは縫合
糸204で互いに連結する。アンカー208、封止プラグ210、および縫合糸204は
、以下、集合的に「閉鎖素子」と称する。図5Aに示すように、アンカー208を、初期
的に、キャリア管202の末端部207の外側に隣接させて配置するとともに、封止プラ
グ210(図5B)を、初期的にはキャリア管202内に配置する。アンカー208は、
図5Aにおいては、管腔232内に挿入し易くなるように、キャリア管202に沿ってロ
ープロファイル(低丈)形態となるように休止した状態を示し、図5B〜5Gに、アンカ
ー208の第1表面236が動脈壁234に衝合して展開した状態を示す。縫合糸204
は、閉鎖装置200の第1端部206からキャリア管202を通って末端方向に延在する
。縫合糸204は、封止プラグ210の1個またはそれ以上の孔に通し、アンカー208
の眼口部に通して、キャリア管202の方に基端部に向かって封止プラグ210まで逆戻
りさせる。このとき、縫合糸204は、封止プラグ210において、再び1個または一連
の孔に通すのが好ましい。縫合糸204は、さらに、自身の周りに通過させ、自己締め付
け引き結びノット(スリップノット)を形成することもできる。このようにして、キャリ
ア管202をアンカー208および封止プラグ210から引き抜くとき、縫合糸204は
、アンカー208と封止プラグ210とをプーリ状に連結し、アンカー208と、封止プ
ラグ210とを共に締め上げる(シンチングする)ことができる。アンカー208および
封止プラグ210は、アンカーとプラグとを共に挟み込んで係止し、組織穿刺部218を
封止する。
【0041】
キャリア管202は、封止プラグ210を縫合糸204に沿ってアンカー208の方向
に進めるタンピング装置、例えばタンピング管212(図5C)に収容することができる
。タンピング管212は、好ましくは、部分的にキャリア管202内にあり、また封止プ
ラグ208の基端側に配置する。しかし、タンピング管212は、さらに閉鎖装置200
のハンドル252(図5A)に貫通する。タンピング管212は、剛性または可撓性のあ
る、任意の適切な材料で形成することができる、細長い管状のラック、または細長い半管
状のラックとすると好適である。例えば、一実施例によれば、タンピング管212は、ポ
リウレタンで形成する。縫合糸204は、タンピング管212の少なくとも一部分に貫通
する。例えば、図5A〜5Gに示すように、縫合糸204は、タンピング管212に沿っ
て、第1端部206と第2端部207との間に延在する。しかし、縫合糸204は、タン
ピング管212とは直接連結しない。したがって、縫合糸204およびタンピング管21
2は、互いに相対摺動する。
【0042】
図5A〜5Gの実施例によると、縫合糸204を、自動タンピング組立体に取り付ける
。自動タンピング組立体は、自動駆動機構630または他の変換器(トランスデューサ)
、およびタンピング管212を有することができる。自動駆動機構630は、閉鎖装置2
00の第1端部206におけるハウジングまたはハンドル252内に配置する。自動駆動
機構630の実施例を、以下に、図6〜9につき詳細に説明する。タンピング管212は
、ギア歯に係合するラックを有するものとすることができる(以下により詳しく述べる)
【0043】
実際、(上記閉鎖素子を有する)閉鎖装置200のキャリア管202は、既に動脈22
8内に挿入した挿入シース216内に挿入する(図5B〜5C参照)。閉鎖装置200お
よび関連する閉鎖素子を処置シース216内に挿入し、アンカー208を処置シース21
6に貫通させて末端部から抜き出し、動脈管腔232内に挿入する。図5Aにつき上述し
たように、アンカー208は、初期的にはキャリア管と同一平面上に配置した状態にし、
経皮的切開部219(図5B)から管腔232内にアンカー208を挿入し易くする。
【0044】
しかし、アンカー208が処置シースの末端部から抜け出た後、アンカー208は、図
5B〜5Cに示す位置に展開または回転しようとする。閉鎖装置200は、さらに、挿入
シース216から部分的に引き出し、これにより、アンカー208は挿入シース216の
末端部に引っ掛かり、図5B〜5Cに示す位置に回転する。しかし、閉鎖装置200には
、バイアスを付与した1対のフィンガ215を設け、これらフィンガ215は、処置シー
ス216に形成した整合する1対の窪み217でロックを生ずるように収容されるものと
する。バイアスを付与したフィンガ215と、これらフィンガに整合する窪み217との
ロック構成によれば、処置シース216に対するハンドル252の位置を固定するので好
ましい。
【0045】
アンカー208の展開に続いて、ハンドル252および挿入シース216を共にロック
して、単一ユニットとして引き抜く。ハンドル252の引き抜きにより、アンカー208
は、動脈228内で動脈壁234に対して自らを係留する。アンカー208が穿刺部21
8で動脈228内に係留した状態で、さらにハンドル252および挿入シース216を後
退させると、キャリア管202の末端部207から封止プラグ210を排出しようとし、
それによって、切開部または穿刺路219内にプラグ210を配置する。キャリア管20
2のスリット209(図5A参照)によって、キャリア管の末端部207は、撓むまたは
開くことができ、封止プラグ210の排出が容易になる。しかし、キャリア管202の末
端部207におけるスリット209(図5A)は、キャリア管202と同軸状の処置シー
ス216が存在することにより、開くことまたは撓むことを阻止される可能性がある。従
って、本発明の原理によれば、ハンドル252および挿入シース216の後退により、挿
入シース216をキャリア管202に対して、図5D〜5Eに示す第2位置に後退させる
【0046】
図5D〜5Eにつき説明すると、ハンドル252および処置シース216を後退させる
とき、キャリア管202の末端部207は、(切開路219内で)露出する。キャリア管
202は、ハンドル252および処置シース216を所定距離だけ後退させるまでは、穿
刺部218に対して位置を保持する。ハンドル252/処置シース216とキャリア管2
02との相対運動は、自動駆動機構630とハンドル252との間の摺動可能な取り付け
構成によって容易となる。
【0047】
図5B図5Gの全体で示すように、(キャリア管202に取り付けた)自動駆動機構
630は、ハンドル252および処置シース216を後退させる際に、自由に浮動または
変位することができ、ハンドル252に対して摺動する。しかし、自動駆動機構630は
、初期的には、図5Bおよび図8に示すように、ハンドル252に対して、第1位置に保
持する。例えば、図8に示すように、自動駆動機構630は、トラックに摺動可能に取り
付けた収容戻り止め255のような一時的なホルダを有するものとすることができる。ト
ラックは、水掻き状トラック253として図8に示す。この水掻き状トラック253を、
ハンドル252に配置する。水掻き状トラック253は、第1幅W1と、第2幅W2とを
有するものとすることができる。収容戻り止め225は、突出部259を設けた指状突起
257を有し、この突出部259により、第1幅W1よりも広く、第2幅W2よりも狭い
、第3幅W3に偏倚される。指状突起257は、第2幅W2を有する水掻き状トラック2
53内に少なくとも部分的に突出し、自動駆動機構630を図5Bおよび図8に示す第1
位置に少なくとも一時的に保持し、ハンドル252内での尚早の摺動を阻止する。
【0048】
指状突起257は、図5Bおよび図8に示す第1位置で自動駆動機構630を保持する
か、または一時的にロックしようとするが、所定の十分な力がハンドル252と自動駆動
機構630との間に加わるとき、指状突起257は釈放される。例えば、アンカー208
の展開に伴って、使用者がハンドル252に後退力を加えると、指状突起257は内側に
転向し、水掻き状トラック253の第1幅W1の部分に向けて末端方向に摺動する。指状
突起の突出部259が第1幅W1に入ると、収容戻り止め255は「釈放」されて、自動
駆動機構630およびハンドル252間の摺動に対して極めて僅かな抵抗を与える。した
がって、ハンドル252を後退させることで、(ハンドル252に固着した)処置シース
216を後退するが、自動駆動機構630およびキャリア管202は、ハンドル252に
対して摺動するため、穿刺部218に対して適切な位置に留まる。自動駆動機構630が
止め部261(図5D参照)に到達するまで、自動駆動機構630は、ハンドル252に
対して所定距離だけ摺動することができる。所定距離は、キャリア管202内でスリット
209(図5A参照)を完全に露出できるほど、十分長いことが好ましい。
【0049】
自動駆動機構630が止め部261(図5D参照)に到達すると、ハンドル252を後
退させることによって、さらにキャリア管202も同様に引き抜き、図5F〜5Gに示す
ように、自動的に封止プラグを排出してタンピングする。封止プラグ210の配置に続く
、個別の手動タンピング操作を必要とする従来の閉鎖装置とは異なり、本発明の閉鎖装置
200は、自動的に封止プラグ210のタンピングを行う。キャリア管202を引き抜く
間に封止プラグ210をタンピングし、このようにしない場合には封止プラグ210と大
腿動脈228の穿刺部218との間に生じる可能性がある間隙を少なくする、または排除
する。
【0050】
さらに、縫合糸204に張力を加える、すなわち穿刺路219から離れる方向に縫合糸
204を引っ張ることで、縫合糸204は、(スリップノット等により)アンカー208
および封止プラグ210を共に締め上げてロックすることができ、アンカー208と封止
プラグ210との間に動脈壁234を挟み込む。タンピング管212により加わる力、お
よびフィラメント204によるアンカー208および封止プラグ210の締め上げは、封
止プラグ210を穿刺路219内で半径方向外方に変形させ、図5F〜5Gに示すように
、組織穿刺部218の基端側におけるアンカーとして機能する。
【0051】
タンピング管212は、自動駆動機構630によって、封止プラグ210に向けて自動
的に駆動される。自動駆動機構630の一実施例を、図6に詳しく示す。自動駆動機構6
30は、ギアボックス組立体629を有するものとすることができ、ギアボックス組立体
629は、選択的に離脱することができる。図6の実施例によると、自動駆動組立体63
0が止め部261に一旦接触すると、閉鎖装置200のさらなる後退によって、封止プラ
ブ210のタンピングを自動的に行う(図5F参照)。
【0052】
図6のギアボックス組立体629によれば、縫合糸204を、第1ギアおよびスプール
組立体631のスプール632に連結し、また部分的にスプール632の周りに巻き付け
る。第1ギアおよびスプール組立体631は、第1軸635上に配置したスプール632
および第1ギア636を有する。図6の実施例においては、第1ギア636をスプール6
32に連結し、これによって第1ギア636およびスプール632が一緒に回転する。組
織穿刺部218から閉鎖装置200(図5F)を引き抜くことにより(ただし、アンカー
208(図5F)を展開して、かつギアボックス組立体629が止め部261に接触した
ものとして、)縫合糸204がスプール632から繰り出される。縫合線204が繰り出
されるとき、スプール632は回転し、直線タンピング力に変換するねじり原動力(トル
ク)を生ずる。
【0053】
スプール632により生ずるねじり原動力は、図6の実施例によるギアボックス組立体
629によって、直線タンピング力に変換する。ギアボックス組立体629は、スプール
632と同軸状に配置した第1ギア636を有する。図6に示すように、第1ギア636
は、第2ギア642に隣接して配置することができる。第2ギア642は、組み立てた際
、第1ギア636と噛合する。第2ギア642は、第2軸線640上に配置する。第2ギ
ア642は、二段式ギアとすることができ、図示のように、各段は、隣接の異なるギアに
噛合する。第1ギア636および第2ギア642は、摩擦係合、または図示した噛合ギア
歯により互いに噛合することができる。第2ギア642は、第3軸線645上の第3ギア
643に隣接して配置する。組み立てた際、第2ギア642は、第3ギア643に係合し
て、この第3ギア643を駆動する。
【0054】
タンピング管212は、第3ギア643とガイド646との間に配置する。タンピング
管212は、図示のような歯を有し、第3ギア643の歯に噛合させるのが好ましい。凹
状ホルダ647により、タンピング管212を支持することができる。スプール632が
回転するとき、スプール632がタンピング管212を駆動し、これにより封止プラグを
タンピングする(図5F参照)。代案として、タンピング管212は、ハウジング252
内に突入させず、その代わり別個のラックを第3ギア643に噛合させることができる。
この別個のラックが、タンピング管212を駆動する。
【0055】
タンピング管212は、半管状で、縫合糸204の軸線に沿って、縫合糸204の周り
に部分的に配置することが好ましい。タンピング管212の半管状の形状は、一般的にU
字状断面であり、縫合糸204が出入りすることができる開放チャネルまたはトラフ64
8とする。開放チャネル648によって、スプール632が巻き付けまたは繰り出しを行
うとき、縫合糸およびタンピング管212は合流することが可能となる。縫合糸204お
よびタンピング管212は、互いに固着していないため、互いに自由に摺動することがで
きる。したがって、アンカー208を展開した状態で(図5D参照)、ギアボックス組立
体629が止め部261(図5F参照)に圧着するまで第1方向に閉鎖装置200を後退
させるとき(図5F参照)、縫合糸204がスプール632から繰り出され、これにより
ギアボックス組立体629を駆動する。ギアボックス組立体629は、第2方向、つまり
反対方向にタンピング管212を駆動し、タンピング管は、封止プラグ210をタンピン
グする(図5F参照)。
【0056】
場合によっては、閉鎖装置200(図5F参照)を引き抜く線速度に対して、タンピン
グ管212の線速度を増大させることが望ましい場合がある。タンピング管212の線速
度を増大させることによって、閉鎖装置200を反対方向に引き抜く際(図5F参照)に
、封止プラグ(図5F)をアンカー208(図5F)に向かって押圧することをいっそう
確実なものとする。したがって、幾つかの実施例においては、ギアボックス組立体629
は、1:1以上の総ギア比を有するものとすることができる。例えば、ある実施例では、
ギア比をおよそ1.5:1〜3.0:1の間の範囲にし、また他の実施例では、ギア比を
約2.1:1とする。
【0057】
しかし、過剰な速度は、場合によっては、封止プラグ(図5F参照)を組織穿刺部21
8(図5F参照)から動脈232(図5F参照)の管腔232(図5F参照)内に押し入
れる可能性があるため、タンピング管212の線速度は、閉鎖装置の引き抜き線速度より
も極端に大きくすべきではないことに注意されたい。同様に、アンカー208(図5F
照)に対する対向力が不十分である場合、アンカー208(図5F)が動脈228(図5
F)内から不適切に抜けてしまう可能性がある。したがって、幾つかの用途においては、
引き抜き力は、およそ2.5ポンド(1134g)を超過すべきではない。
【0058】
本明細書の恩恵を受ける当業者にとって、図6に示すギアボックス組立体629の構造
は、事実上例示的なものであり、これに限定するものではないことは明らかであろう。閉
鎖装置(図5F参照)から縫合糸204を後退させることによって生じる原動力を伝達し
て、タンピング管212を介して封止プラグ210(図5F参照)に自動駆動力を与える
ために、(単一ギアを含む)任意のギア構造を使用することができる。
【0059】
上記したように、ギアボックス組立体629は、選択的に離脱することができる。した
がって、スプール632、第1ギア636、第2ギア642、第3ギア643のうち1個
またはそれ以上は、隣接のギアと離脱する、または隣接のギアを手動で不作動にするよう
に、移動することができる。例えば、第1ギア636、第2ギア642、第3ギア643
のうち1個またはそれ以上は、各々の軸線に沿って移動可能にし、隣接のギアから離脱す
ることができるようにする。図6に示すように、ばね649のようなバイアス部材を、第
2軸線640上に配置して、第2ギア642を、第1ギア636および第3ギア643に
噛合する関係となるよう偏倚する。しかし、第2ギア642は、第2ギア642に連結し
たアクチュエータ651を操作することによって、第2軸線640に沿って動かすことが
できる。したがって、(ギアボックス629の摺動によって止め部261に到達し、それ
によってアクチュエータ651がハンドル252のアクセス孔253に整列した後に)ア
クチュエータ651に、第2ギア642に対して側面から力を加えて、ばね649により
生ずるバイアス力に打ち勝って、第2ギア642を第1ギア636および第3ギア643
のうち少なくとも一方との噛合関係、または接触関係から逸脱するよう軸線方向に移動ま
たは変位させる。図6の実施例においては、第2ギア642の軸線方向移動により、この
第2ギア642を第1ギア636から離脱させることのみを行う。ギアボックス組立体6
29の離脱は、タンピング管212を駆動することなく、閉鎖装置200(図5F)を後
退させ、縫合糸204をスプール632から繰り出すことが可能となる。この離脱の利点
を、以下に閉鎖装置200の動作につき説明する。
【0060】
しかし、図6〜7に示すように、タンピング管212は、図示する第1ラック位置で、
第2ギア642と連動することができ、アクチュエータ651の時期尚早な作動を阻止す
る。この連動関係のジオメトリ(構成配置)は、図7に明示する。第2ギア642は、環
状溝655を設けた第2ギアハブ653を有する。タンピング管212を第1ラック位置
の環状溝655に配置して、アクチュエータ651をロックする。タンピング管は、凹状
ホルダ647に載置する。したがって、タンピング管212が環状溝655に位置する限
り、アクチュエータ651を押すことができない。タンピング管212が環状溝655に
位置する状態では、アクチュエータに加える力は第2ギア642に伝達されるが、第2ギ
ア642の軸線方向への動きは、環状溝655に位置し、また凹状ホルダ647によって
支持されたラックによって阻止される。それでもなお、閉鎖装置200(図5F参照)を
後退させることにより、結果的にギアボックス629のギアが回転して、タンピング管2
12の直線移動を生ずる。封止プラグ210(図5F参照)の効果的なタンピングが生じ
るのに十分な第2タンピング位置までタンピング管212を所定距離移動したとき、タン
ピング管212は、環状溝655からも抜け出る移動を生ずる(図5F参照)。したがっ
て、アクチュエータ651のロックはもはや解除され、一旦タンピング管が所定距離だけ
直線的に移動した後には、第2ギア642は離脱することができる。
【0061】
図5A〜8の実施例の動作は、以下の通りである。図5Bに示すように、閉鎖装置20
0のハンドル252を穿刺路219から後退させるとき、戻り止め255が釈放される。
自動タンピング機構630およびキャリア管202は、動かずに残るため、ハンドル25
2に対して浮動する。ハンドル252を引き抜く際に処置シース216は後退し、キャリ
ア管202の末端部207が露出する。自動タンピング機構630が最終的に止め部26
1に接触して、さらに後退させることで、自動タンピング機構630およびキャリア管2
02も同様に後退する。自動タンピング機構630が後退するとき、アンカー208に通
した縫合糸204はスプール632から繰り出され、スプール632を回転させる。スプ
ール632は、スプール632と第1ギア636との間の同軸連結により回転するとき、
第1ギア636を駆動する。第1ギア636が回転するとき、第1ギア636が第2ギア
642を駆動する。第2ギア642は第3ギア643を駆動し、第3ギア643はタンピ
ング管212を駆動する。タンピング管212は、封止プラグ210をタンピングする。
したがって、閉鎖装置200を穿刺路219から後退させると、処置シースが後退し(図
5D〜5E参照)、封止プラグ210が自動的にタンピングされる(図5F〜5G参照)
。この封止プラグ210は、個別の手動タンピング手順では生じ得る隙間が、アンカー2
08に対して生じることなしに、動脈を十分に封止する可能性が高い。
【0062】
さらに、封止プラグ210を十分にタンピングしたとき、選択的離脱可能なギアボック
ス組立体629を離脱させることができ、追加のタンピングをすることなく、閉鎖装置2
00を後退させることができる。封止プラグ210を完全にタンピングした状態では、縫
合糸204の、組織層230の外側に延在してオペレータに露出する部分がほとんどない
か、まったくないようにすることができる。したがって、オペレータにとって、閉鎖装置
200の残りの部分から封止プラグ210およびアンカー208を分離するのが困難にな
ることがある。さらに、使用可能な、選択的離脱可能なギアボックス組立体629で後退
させ過ぎてしまうと、封止プラグ210を動脈228内に過剰タンピングしてしまう可能
性がある。したがって、アクセス孔253からアクチュエータ651を操作し、選択的離
脱可能なギアボックス組立体629を無効化することは、有利である。アクチュエータ6
51を操作することによって、縫合線204は、タンピング管212を駆動することなく
スプール632から完全に繰り出すことが可能となる。スプール632の繰り出しによっ
て、縫合糸204が十分な長さ露出するため、術者(オペレータ)は、容易に縫合糸20
4を切断して、封止プラグ210およびアンカー208を、閉鎖装置200の残りの部分
から分離することができる。
【0063】
つぎに図9を参照して、選択的離脱可能な自動駆動機構930の他の実施例を示す。図
9の選択的離脱可能な自動駆動機構930は、閉鎖装置200(図5A参照)内で、図6
に示す選択的離脱可能ギアボックス組立体629に代替させることができる。図6の実施
例と同様に、図9の選択的離脱可能自動駆動機構930は、第1ギアおよびスプール組立
体931のスプール932の周りに少なくとも部分的に巻き付ける縫合糸204を有する
。第1ギアおよびスプール組立体931は、第1軸線935上に配置したスプール932
および第1ギア936の両方を有する。しかし、図9の実施例においては、第1ギア93
6とスプール932との間に、手動で操作するクラッチを形成する。このクラッチを使用
して、第1ギア936を、スプール932に対して選択的に連結および分離を行う。この
クラッチは、図9に示すように、複数の釈放フィンガ961を有する。釈放フィンガ96
1は、ほぼ円を描くように配列する。釈放フィンガ961の第1構成コンポーネント96
3は、第1ギア936から片持ち状に設け、第1ギア936に直交する方向に突出させる
。第1構成コンポーネント963の突起965は、半径方向外方突出し、スプール932
の整合溝967に収容する。釈放フィンガ961の第2構成コンポーネント969は、第
1構成コンポーネント963および第1ギア936に直交する方向に円弧状をなす。各釈
放フィンガ961の第2構成コンポーネント969は、スプール932の中央孔971に
突入する。アクチュエータボタン951を、各釈放フィンガ961の第2構成コンポーネ
ント969上に嵌合して接触する。
【0064】
第1ギア936の突起965が、スプール932の整合溝967と嵌合することによっ
て、第1ギア936およびスプール932が、同じ角速度で一緒に回転する。しかし、ア
クチュエータボタン951を押し込むとき、アクチュエータボタンは第2構成コンポーネ
ント969の円弧に沿って摺動し、釈放フィンガ961の各々を半径方向内方に押す。釈
放フィンガ961の半径方向内方への変位により、突起965は整合溝967から少なく
とも部分的に外れ、第1ギア936に対してスプール932が独立して回転することを可
能とする。したがって、図5A〜8につき説明した構成と同様に、封止プラグ210をア
ンカー208に向けて駆動した後で、選択的離脱可能な自動駆動機構930を離脱させ、
または無効化し、縫合糸204を、さらにタンピングすることなしに、安全に繰り出すこ
とができる。このとき、術者(オペレータ)が切断し易いように、縫合糸204は露出す
る。
【0065】
選択的離脱可能な自動駆動機構930の残りのコンポーネントは、図6の実施例と同様
なものにすることができる。スプール932が与えるねじり原動力の、直線タンピング力
への変換は、ギア列934によって達成する。ギア列934は、第1ギア936、第2ギ
ア942および第3ギア943を有するものとすることができる。図示するように、第2
ギア942は、第3ギア943に噛合してこの第3ギア943を駆動し、第3ギア943
はタンピング管212、またはその他の封止プラグ駆動装置を駆動する。しかし、図9
第2ギア942は、タンピング管212と連動する環状溝を含まない。
【0066】
上述した記載は、発明の例示的実施例を示し、説明するためだけに示した。本発明は、
上述の実施形態に限定することを目的としたものではない。上述の教示から、多くの変更
および改変が考えられる。本発明の範囲は、特許請求の範囲の請求項によって定義される
ものとする。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図6
図7
図8
図9