【実施例】
【0015】
−実施例1−
図1は、実施例1に係る積層体検査装置101の構成説明図である。
この積層体検査装置101は、例えば10m/minでy方向に走行している補強板付きフラットケーブルCの下面側から補強板付きフラットケーブルCに光を当てるための照明装置1と、補強板付きフラットケーブルCの上面側から補強板付きフラットケーブルCを撮影するカメラ2と、カメラ2で撮影した画像に基づいてマージン及び補強板位置を得る中央制御装置3と、補強板付きフラットケーブルCの窓部c4を検知する上側センサ4と、補強板付きフラットケーブルCの補強板c5の色を検知する下側センサ5と、照明装置1を制御する照明制御装置6とを具備している。
【0016】
照明装置1は、光強度が均一な面光源1aと、面光源1aの光の一部領域を減光する減光板1bとからなる。
【0017】
カメラ2は、xy面を撮影するエリアセンサである。例えば30万画素のエリアセンサである。
上側センサ4および下側センサ5は、反射型フォトセンサである。
【0018】
補強板付きフラットケーブルCは、平行な複数の導体(やダミー線や導波路)c1を絶縁体である下側ラミネートテープc2と上側ラミネートテープc3で挟んだ基本構造である。上側ラミネートテープc3は不連続であり、所定箇所に窓部c4が設けてある。また、窓部c4の部分を補強するための補強板c5が下側ラミネートテープc2に貼り付けてある。
具体例を示すと、補強板付きフラットケーブルCの幅は20mmから60mm、部材c1の数は20本から80本、窓部c4の長さは8mmから30mm、補強板c5の色は「白」か「青」など色付き、補強板c5の長さは10mmから30mm、補強板c5の厚さは色「白」のものが60μm、色「青」のものが250μmなど設計により各種ある。
【0019】
図2は、照明装置1の上面図である。
減光板1bは、十字形のスリット1sを有している。このスリット1sを通る光の強度は面光源1aから出る光の強度であり、これを第1の光強度と呼ぶ。一方、スリット1s部分を除く減光板1bの部分1rを通る光の強度は面光源1aから出る光を減衰させた強度であり、これを第2の光強度と呼ぶ。
【0020】
図3は、照明装置1の上を補強板付きフラットケーブルCの窓部c4が通過している瞬間を示している。
この時、スリット1sを通る光すなわち第1の光強度の光は、窓部c4のy方向長さの中央位置で補強板付きフラットケーブルCの最外側の導体c1の影を作りうるようにx方向の帯状領域で補強板付きフラットケーブルCを透過すると共に補強板c5の影を作りうるように窓部c4のx方向幅の中央付近の導体c1が無い位置でy方向に補強板c5のy方向長さより長い帯状領域で補強板付きフラットケーブルCを透過する。一方、スリット1s部分を除く減光板1bの部分1rを通る光すなわち第2の光強度の光は、補強板付きフラットケーブルCのエッジcEの影を作りうるように窓部c4のy方向外側で且つ窓部c4の近傍で且つ補強板付きフラットケーブルCのエッジ周辺に相当する領域で補強板付きフラットケーブルCを透過する。
【0021】
図4は、カメラ2で得られた画像の具体例である。
スリット1sを通る光すなわち第1の光強度の光は、導体c1の影および補強板c5の影を明確に作っている。このため、導体c1の位置および補強板c5の位置は正確に読み取れる。しかし、窓部c4における補強板付きフラットケーブルCのエッジcEの影は不明確である。これは、補強板付きフラットケーブルCのエッジcEの影を明確に作るのには、第1の光強度が強すぎるからである。
一方、スリット1s部分を除く減光板1bの部分1rを通る光すなわち第2の光強度の光は、補強板付きフラットケーブルCのエッジcEの影を明確に作っている。このため、エッジcEの位置を正確に読み取れる。しかし、導体c1の影および補強板c5の影は不明確である。これは、導体c1の影および補強板c5の影を明確に作るのには、第2の光強度が弱すぎるからである。
従って、導体c1の影および補強板c5の影を明確に作り且つ補強板付きフラットケーブルCのエッジcEの影を明確に作るためには、第1の光強度および第2の光強度の両方が必要である。
【0022】
図5は、中央制御装置3で実行される窓部および補強板の色の検出処理を示すフロー図である。
ステップR1では、上側センサ4の下に窓部c4が来たか否かをチェックし、来たならステップR2へ進む。
ステップR2では、カメラ2による撮影タイミングを設定する。この撮影タイミングは、例えば「(上側センサ4とカメラ2のy方向距離)+(窓部c4のy方向長さの半分)」/「補強板付きフラットケーブルCの走行速度」だけ現時刻から経過後の時刻である。
ステップR3では、下側センサ5により補強板5の色を検知する。補強板5の色は、例えば「白」または「青」の2種類である。
ステップR4では、補強板5の色に応じた照明強度を照明制御装置6に指示する。補強板5の色により透過度が異なるからである。例えば補強板5が「白」ならば「青」のときよりも透過度が高いので低い照明強度を指示し、「青」ならば「白」のときよりも透過度が低いので高い照明強度を指示する。照明制御装置6は、指示に応じて面光源1aの光強度を制御する。
そして、次の窓部c4を処理するため、ステップR1に戻る。
【0023】
図6は、中央制御装置3で実行されるマージン及び補強板位置の検出処理を示すフロー図である。なお、この処理は、
図5の処理と並行して実行される。
ステップS1では、カメラ2による撮影タイミングになったか否かをチェックし、なったならステップS2へ進む。
ステップS2では、カメラ2により撮影し、
図4に示す如き画像を取得する。
【0024】
ステップS3では、画像を解析し、
図7に示す各計測値e11,e12,e13,e14,e21,e22,e23,e24,a1,a2,wを得る。前記各計測値の境界となる座標は、
図4の画像のある範囲、例えば10〜100画素の範囲において、輝度値に関して微分処理し、微分値が発生する座標の連続的に隣接する座標を境界として中央制御装置3で解析することにより得られる。
e11:座標原点Oに近い側のエッジcEの直線y=y1上におけるx座標である。y1は、窓部c4よりも座標原点Oに近い側であって且つエッジcEの影が明確になるであろうと予測される位置のy座標である。
e12:座標原点Oに近い側のエッジcEの直線y=y1上におけるx座標である。y2は、窓部c4よりも座標原点Oから遠い側であって且つエッジcEの影が明確になるであろうと予測される位置のy座標である。
e13:最も座標原点Oに近い導体c1の座標原点Oに近い側の端縁の直線y=y3上におけるx座標である。y3は、窓部c4において導体c1の影が明確になるであろうと予測される位置のy座標である。
e14:最も座標原点Oに近い導体c1の座標原点Oから遠い側の端縁の直線y=y3上におけるx座標である。
e21:座標原点Oから遠い側のエッジcEの直線y=y1上におけるx座標である。
e22:座標原点Oから遠い側のエッジcEの直線y=y2上におけるx座標である。
e23:最も座標原点Oから遠い導体c1の座標原点Oに近い側の端縁の直線y=y3上におけるx座標である。
e24:最も座標原点Oから遠い導体c1の座標原点Oから遠い側の端縁の直線y=y3上におけるx座標である。
a1:座標原点Oに近い側の補強板c5の端縁と座標原点Oに近い側の窓部c4の端縁の直線x=x1上における距離である。x1は、上側ラミネートテープc3の影および補強板c5の影が明確になるであろうと予測される位置のx座標である。
a2:座標原点Oから遠い側の補強板c5の端縁と座標原点Oから遠い側の窓部c4の端縁の直線x=x1上における距離である。
w:窓部c4の直線x=x1上における幅である。
【0025】
ステップS4では、マージンb1,b2を計算する。
b1=(−e11−e12+e13+e14)/2
b2=(−e21−e22+e23+e24)/2
マージンb1,b2の規定値は、例えば2.5mmである。
【0026】
ステップS5では、マージンb1,b2及び計測値a1,a2,wを記憶装置や表示装置やプリンタに出力する。
そして、次の窓部c4を処理するため、ステップS1に戻る。
この場合、カメラのX,Y軸と積層体(C)のX,Y軸をあらかじめ合わせておく必要がる。また各座標は二次元カメラを使用する場合は、例えばe11を求めるためにy1の1点で測定するのではなくy1の近傍のある範囲(10から100画素)での平均値を取ることで測定精度を大幅に改善できる。他の位置も同様に範囲を決めて測定し平均化を図ることが好ましい。
【0027】
図8に示すように、積層体検査装置101により、窓部c4と補強板c5の位置が交互に逆転する補強板付きフラットケーブルC’のマージンおよび補強版位置を検査することも可能である。
この場合、上側センサ4は窓部c4毎に交互に窓部センサとして機能したり補強板センサとして機能し、下側センサ5は上側センサ4が窓部センサとして機能する時は補強板センサとして機能し、上側センサ4が補強板センサとして機能する時は窓部センサとして機能する。
なお、上側ラミネートテープc3と同様に、下側ラミネートテープc2’にも所定箇所に窓部c4が設けてある。
【0028】
実施例1の積層体検査装置101によれば、走行している補強板付きフラットケーブルC,C’のマージンb1,b2及び補強板位置{a1,a2,w}の検出を、1セットのカメラと照明および1つの画像解析装置により行うことが出来る。
【0029】
−実施例2−
図9は、実施例2に係る積層体検査装置102の構成説明図である。
この積層体検査装置102では、発光面の部分によって異なる光強度としうる照明装置1’を用いている点が特徴である。
【0030】
図10に示すように、照明装置1’は多数のLED1cを2次元マトリクス配列したものである。
中央制御装置3’および照明制御装置6’は、
図2の十字形のスリット1sの部分に相当するLED1cを第1の光強度とし、スリット1s以外の部分1rに相当するLED1cを第2の光強度とする。
【0031】
実施例2の積層体検査装置102によれば、発光した光を減光して光強度を調整する場合に比べて、発光電力を節減することが出来る。
【0032】
−実施例3−
図11は、実施例3に係る積層体製造装置における導体積層装置201を示す説明図である。
この導体積層装置201では、下側絶縁テープ供給装置11から下側絶縁テープc2’wが供給され、上側絶縁テープ供給装置12から上側絶縁テープc3wが供給され、それら下側絶縁テープc2’wと上側絶縁テープc3wの間に導体供給装置から平行な複数の導体c1が供給され、加圧や加熱プレスなどにより一体的に積層する積層手段である第1加熱ロール13と第2加熱ロール14で加熱されつつ圧縮され、導体積層テープc’wが形成され、引取手段16により引き出され、導体積層テープ巻取装置15に巻き取られる。
【0033】
図12は、導体積層テープc’wの上面図である。
下側絶縁テープc2’wには、所定箇所に窓部c4wが設けてある。
上側絶縁テープc3wにも、所定箇所に窓部c4wが設けてある。
【0034】
図13は、実施例3に係る積層体製造装置における補強板積層・スリット装置202を示す説明図である。
この補強板積層・スリット装置202では、導体積層テープ供給装置から導体積層テープc’wが供給され、反射型フォトセンサを用いた窓部センサ20により下側絶縁テープc2’wの窓部c4wと上側絶縁テープc3wの窓部c4wが検出され、その検出タイミングと導体積層テープc’wの走行速度とに基づいて第1補強板貼り機21で下側絶縁テープc2’wの窓部c4wに補強板c5wが貼付けにより積層されると共に第2補強板貼り機22で上側絶縁テープc3wの窓部c4wに補強板c5wが貼付けにより積層され、補強板積層テープC’wが形成される。
図14は、補強板積層テープC’wの上面図である。
【0035】
図13に戻り、補強板積層テープC’wは、スリット機23で耳縁部と1本ずつの補強板付きフラットケーブルC’とに切り分けられ、引取手段26により引き出され、積層体巻取装置25に巻き取られる。
図15は、耳縁部Eと補強板付きフラットケーブルC’の上面図である。
耳縁部Eは捨てられる。
補強板付きフラットケーブルC’は、
図8に示したものである。
【0036】
積層体検査装置101は、1本ずつの補強板付きフラットケーブルC’毎に設けられており、各補強板付きフラットケーブルC’のマージン及び補強板位置を検査する。
【0037】
補強板積層機・スリット機制御装置24は、1台の積層体検査装置101での検査結果に基づいて、第1補強板貼り機21での補強板c5wの貼付けタイミングおよび第2補強板貼り機22での補強板c5wの貼付けタイミングおよびスリット機23でのスリット刃位置を制御し、補強板付きフラットケーブルC’のマージン及び補強板位置が一定の品質から外れないように制御する。
スリット機としては、炭酸ガスレーザなどのレーザによりスリットする装置も可能である。この場合は、レーザの照射位置を制御する。
【0038】
各補強板付きフラットケーブルC’は、巻き取り機25にそれぞれ巻き取られる。
【0039】
実施例3の積層体製造装置(=導体積層装置201+補強板積層・スリット装置202)によれば、1セットのカメラ2と照明1および1つの画像解析装置3により、品質を管理しながら補強板付きフラットケーブルC’を製造することが出来る。
【0040】
なお、この後、補強板付きフラットケーブルC,C’は、窓部c4の中央で切断され、実使用される単位に分割される。そして、窓部c4の切断された部分が機器のコネクタに差し込まれる。この時の差し込みを円滑に行えるように且つ導体c1がコネクタの接点に適正に重なるように、マージンおよび補強板位置の管理が必要となる。
【0041】
−実施例4−
窓部c4と窓部c4の間に導体c1しかない補強板付きフラットケーブルC,C’以外にも、例えば窓部c4と窓部c4の間に回路部品を搭載したフレキシブル回路基板にも、補強板付きフラットケーブルC,C’と同様に本発明を適用しうる。
すなわち、補強板付きフラットケーブルC,C’と同様の理由によりマージンおよび補強板位置の管理が必要な積層体の検査および製造にも本発明を適用しうる。
【0042】
−実施例5−
図16は、実施例5に係る照明装置1”の上面図である。
減光板1b”は、四角形のスリット1s”を有している。このスリット1s”を通る光の強度は面光源1aから出る光の強度であり、これが第1の光強度となる。一方、スリット1s”部分を囲む減光板1b”の部分1r”を通る光の強度は面光源1aから出る光を減衰させた強度であり、これが第2の光強度となる。
【0043】
図17は、照明装置1”の上を補強板付きフラットケーブルCの窓部c4が通過している瞬間を示している。
スリット1s”のy方向サイズDyは、スリット1s”を通る光すなわち第1の光強度の光が補強板c5の影を作りうるように、補強板c5のy方向長さAに対して、Dy>Aになっている。
スリット1s”のx方向サイズDxは、スリット1s”を通る光すなわち第1の光強度の光が窓部c4のy方向長さの中央位置で補強板付きフラットケーブルCの最外側の導体c1の影を作りうるように、補強板付きフラットケーブルCの幅Bに対して、Dx≧Bになっている。
減光板1b”のy方向長さLyは、スリット1s”のy方向サイズDyより2mm以上大きい。
減光板1b”のx方向長さLxは、スリット1s”のx方向サイズDxより3mm以上大きい。
【0044】
数値例を示すと、A=8mm〜40mm,B=4mm〜20mm,Dy=10mm〜90mm,Dx=5mm〜90mm,Ly=12mm〜150mm,Lx=8mm〜150mmである。
【0045】
図18に示すように、各計測値e11,e12,e13,e14,e21,e22,e23,e24,a1,a2,wを得る。
図18は、
図7において計測値e11,e21を得るための座標y1を座標y4とし、計測値e12,e22を得るための座標y2を座標y5としている以外は、
図7と同様である。
座標y4,y5は、スリット1s”部分を囲む減光板1b”の部分1r”すなわち第2の光強度の部分に対応するように設定する。
【0046】
図2に示す照明装置1を用いると、
図7に示すように、窓部c4の近傍の座標y1,y2で計測値e11,e21,e12,e22を得られるので、窓部c4の近傍でのエッジcE位置を正確に割り出せる利点がある。しかし、補強板付きフラットケーブルCの幅Bが例えば20mm以下になると、スリット1sを形成するための加工が難しくなり、またスリット1sを幅Bより狭くすることで第1の光強度の光が光量不足となり明確な影が現れにくい、また明確な影となる十分な光量を得るためにできるだけ広いスリット幅にすると補強板付きフラットケーブルCが蛇行した場合、第1の光強度の光が回り込み窓部c4の近傍でのテープエッジcEが正確に検出できない欠点がある。
これに対して、
図16に示す照明装置1”を用いると、
図18に示すように、窓部c4からやや離れた座標y4,y5で計測値e11,e21,e12,e22を得るので、窓部c4の近傍でのエッジcE位置を割り出す正確さが少し下がる欠点がある。しかし、補強板付きフラットケーブルCの幅Bが例えば20mm以下になっても、スリット1s”を容易に形成でき、フラットケーブルCが蛇行しても第1光強度の回り込みの影響が無く安定して検出できる利点がある。
【0047】
−実施例6−
図19の(a)は、実施例6に係る照明装置1−1の上面図である。
図19の(b)は、同正面図である。
この照明装置1−1は、面光源1aに減光板1b−1を取り付けたものである。
減光板1b−1は、光透過性ベース板1s−1に光不透過性部材1r−1,1r−1を取り付けたものである。
【0048】
図20は、照明装置1−1の上を補強板付きフラットケーブルCの窓部c4が通過している瞬間を示している。
【0049】
図21に示すように、実施例5と同様に各計測値e11,e12,e13,e14,e21,e22,e23,e24,a1,a2,wを得る。
計測値e13,e14,e23,e24,a1,a2,wを得るときの光強度は、第1の光強度であり、光不透過性部材1r−1,1r−1の影響を受けない。
一方、計測値e11,e12,e21,e22を得るときの光強度は、第2の光強度であり、光不透過性部材1r−1,1r−1の影響を受け、第1の光強度よりも減衰した光強度となる。
【0050】
図19に示す減光板1b−1は、スリットを設けないため製作しやすく、光不透過性部材1r−1,1r−1の幅Wyを例えば0.5mm以下にすることも可能になる。