(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
グラフェンが化学気相成長法を採用して成長させたグラフェン、またはエピタキシャル成長法で得られたグラフェン、または析出法で成長させたグラフェン、またはスコッチテープ法で得られたグラフェン、または化学的剥離法で得られたグラフェンである
請求項1に記載の非破壊でグラフェンを転写する方法。
グラフェンの第1基板がPt、Ni、Cu、Co、Ir、Ru、Au、Agの金属またはその合金である導体の1つまたは2種以上の組合せであるか、あるいはSi、SiO2、Al2O3である半導体の1つまたは2種以上の組合せであるか、あるいは導体及び半導体の両者を組み合わせた材料である
請求項1に記載の非破壊でグラフェンを転写する方法。
電解過程で使用する溶液が単一電解質の酸、アルカリまたは塩類の水溶液、あるいは1種以上の電解質の酸、アルカリまたは塩類の水溶液、あるいは単一電解質の酸、アルカリ、塩類と有機物のアルカン、アルケン、アルキン、芳香族炭化水素、アルコール、アルデヒド、カルボン酸、エステルの1種または2種以上との混合溶液、あるいは1種以上の電解質の酸、アルカリまたは塩類と有機物のアルカン、アルケン、アルキン、芳香族炭化水素、アルコール、アルデヒド、カルボン酸、エステルの1種または2種以上との混合溶液であり、第1基板と化学的または電気化学的反応を起こさない溶液を電解液として選択する
請求項1に記載の非破壊でグラフェンを転写する方法。
【背景技術】
【0002】
グラフェンは、単層の炭素原子が緊密に積み重なった二次元の蜂の巣状結晶構造であり、その他の次元数の炭素材料(0次元のフラーレン、1次元のカーボンナノチューブ、3次元のグラファイト)を構成する基本構造のユニットである。グラフェンは、その独特な結晶構造により、非常に優れた電気学的、熱学的及び力学的性能を有していて、例えば室温下でその電子移動度が200,000cm
2/V・s、熱伝導率が5300W/m・kに達し、多機能のナノ電子デバイス、透明導電膜、複合材料、触媒材料、エネルギー貯蔵材料、電界放出材料、ガスセンサー及びガス貯蔵などの分野への幅広い応用が見込まれる。
グラフェンの多くの優れた特性を総合的に利用するため、高品質グラフェンの調製及びグラフェンの特定基板への転写は極めて重要となっている。2004年にイギリスマンチェスター大学の研究グループがスコッチテープ法(または機械的剥離法)を採用し、初めて安定して存在するグラフェンを分離して以来、化学的酸化剥離法、エピタキシャル成長法及び化学気相成長(CVD)法を含む、グラフェンを調製する多くの方法が続々と開発されている。相対的に簡単な調製過程であり、さらに生産量が比較的大きいため、化学的酸化剥離法で得られたグラフェンは、すでに複合材料、フレキシブル透明導電膜及び蓄積電極材料などに幅広く応用されている。
しかし、化学的に剥離したグラフェンの質は比較的悪く、大量の構造的欠陥が存在し、なおかつグラフェンのサイズ及び層数などの構造的特徴を制御するのが難しい。CVD法及びエピタキシャル成長法は、現在、高品質グラフェンの調製を制御することができる主要な方法である。温度、炭素源、圧力などの調製条件を制御することにより、多種の基板材料の表面(金属及び非金属)に高結晶度のグラフェンを成長させるのを実現することができ、さらに一定範囲内でグラフェンの層数及びサイズを制御することができる。グラフェンの特性評価、物理的測定及び応用研究では、通常、調製した基板以外の特定の基板にグラフェンを載せる必要があるため、高品質グラフェンの転写技術の発展は、グラフェン材料の研究、ひいては応用の促進に重要な作用及び意義を有する。
【0003】
現在、開発されているグラフェンの転写技術は、大きく2つに分類することができ、すなわち、基板をエッチングする方法及び直接転写する方法である。原子レベルまたは数ナノメートルの厚さしかないグラフェンは、そのマクロ強度が低く、転写過程において極めて容易に破損するため、第1基板との非破壊分離は、転写過程で克服する必要がある主要な問題である。遷移金属などの表面にCVD法またはエピタキシャル成長法を採用して調製したグラフェンに対して、基板をエッチングする方法により、この問題を解決することができる。
しかし、この方法は金属基板の犠牲を代償とし、転写過程において金属基板材料を損失するため、グラフェンの調製コストが顕著に増加し(特に価格が高い基板に対して)、なおかつ生産工程が煩雑で煩わしく、調製時間が長く、環境汚染が深刻である。さらに、この方法は化学安定性が高い貴金属の基板材料におけるグラフェンの転写、例えばルテニウム(Ru)及び白金(Pt)などに適用されない。
高コストの基板に成長させたグラフェンについては、直接転写する方法を採用することができ、すなわちグラフェンとの結合力が比較的強い転写媒体(例えばテープ、粘着剤など)を利用し、グラフェンを直接基板の表面から剥離する。この方法は基板材料を損失する必要はなく、腐食性及び汚染性を有する化学試薬も採用しない。
しかし、この方法はグラフェンの破損を引き起こしやすいため、高品質グラフェンの非破壊での転写を実現することはできない。総合すると、現在、グラフェンを非破壊で転写する技術(基板材料、グラフェンのいずれも破損しない)を早急に開発する必要があり、これはある程度、高品質グラフェンの発展の将来性を決定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、電解過程において産生される気泡の推進力及びガスのインターカレーション作用を利用し、低コスト、非破壊でグラフェンを転写する新規方法を提供することであり、グラフェンを第1基板から任意のターゲット基板に転写することができ、この転写方法は、グラフェン及びその第1基板のいずれに対しても、いかなる破壊及び損失もなく、なおかつ操作が簡単で、速度が速く、コントロールしやすく、汚染がない。さらに、量産化及び拡大の実現が見込まれるため、低コストで高品質グラフェンを転写する理想的な方法とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は次の通りである。
【0007】
本発明は低コスト、非破壊でグラフェンを転写する新規方法を提供する。この方法はグラフェンを表面に成長させた第1基板か、またはグラフェンを被覆した第1基板を電極とする。グラフェンは第1基板の表面を任意で被覆し、電解過程において、その表面に産生される気泡の推進力及びガスのインターカレーション作用を互いに組み合わせて利用し、グラフェン及び第1基板を非破壊で分離し、さらにグラフェンを非破壊で任意のターゲット基板の表面に結合させる。具体的な工程は以下の通りである。
【0008】
(1)転写媒体層の塗布:グラフェンを成長させた第1基板か、またはグラフェンを被覆した第1基板に転写媒体を1層塗布して、グラフェンが以降の処理で破損するのを防止する。
(2)転写媒体/グラフェン複合層及び第1基板の分離:転写媒体を被覆したグラフェン及び第1基板を電極として溶液中に設置する。電解法によりその表面にガスが産生され、さらに気泡の推進力及びガスのインターカレーション作用を利用し、グラフェン及び第1基板を非破壊で分離する。
(3)転写媒体/グラフェン複合層及びターゲット基板の結合:直接接触するなどの方法を採用し、転写媒体/グラフェン複合層をターゲット基板の表面に移す。
(4)転写媒体の除去:溶媒による溶解または加熱などの方法を採用し、グラフェンの表面を被覆する転写媒体を除去する。
【0009】
本発明において、グラフェンは化学気相成長法を採用して成長させたグラフェン、またはエピタキシャル成長法で得られたグラフェン、または析出方法で成長させたグラフェン、またはスコッチテープ法で得られたグラフェン、化学的剥離法で得られたグラフェン、または組立法で組み立てたグラフェン薄膜である。
【0010】
本発明において、高分子ポリマーを採用して転写媒体層とし、グラフェンを強化、保護して、グラフェンが操作過程で破損するのを防止する。これらの高分子ポリマーは、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレンの1種または2種以上である。転写媒体層の厚さは1nm〜1mmであり、好ましい範囲は20nm〜500μmである。
【0011】
本発明において、転写媒体を被覆したグラフェン及び第1基板は、電解過程において陰極または陽極として使用される。
【0012】
本発明において、グラフェンの第1基板はPt、Ni、Cu、Co、Ir、Ru、Au、Agなどの金属及びその合金などの導体、またはSi、SiO
2、Al
2O
3などの半導体、または両者を組み合わせた材料である。
【0013】
本発明において、電解過程で使用する溶液は単一電解質(酸、アルカリまたは塩類)の水溶液、あるいは1種以上の電解質(酸、アルカリまたは塩類)の水溶液、あるいは単一電解質(酸、アルカリまたは塩類)と有機物(アルカン、アルケン、アルキン、芳香族炭化水素、アルコール、アルデヒド、カルボン酸、エステルの1種または2種以上)との混合溶液、あるいは1種以上の電解質(酸、アルカリ、塩類)と有機物(アルカン、アルケン、アルキン、芳香族炭化水素、アルコール、アルデヒド、カルボン酸、エステルの1種または2種以上)との混合溶液である。特定の操作条件において、第1基板と化学的または電気化学的反応を起こさない溶液を電解液として選択する必要がある。
【0014】
本発明において、電解質の溶液中の濃度は0.01mol/L〜10mol/Lであり、好ましい範囲は0.1mol/L〜4mol/Lである。
【0015】
本発明において、電解過程の操作温度は−10℃〜100℃であり、好ましい範囲は10〜50℃である。
【0016】
本発明において、電解過程で使用する電圧は1〜100ボルトであり、好ましい範囲は2〜20ボルトである。電流は0.01〜100アンペアであり、好ましい範囲は1〜10アンペアである。
【0017】
本発明において、有機溶媒を採用して高分子ポリマーの転写媒体を除去するとき、採用する有機溶媒はアセトン、乳酸エチル、ジクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルムなどのケトン類、塩化アルキル、ハロゲン化アルキル、芳香族炭化水素類の試薬の1種または2種以上である。溶解温度は0〜200℃であり、好ましい範囲は20〜80℃である。
【0018】
本発明において、加熱方法を採用して高分子ポリマーの転写媒体を除去するとき、採用する加熱温度は50℃〜600℃であり、好ましい範囲は100〜350℃である。
【0019】
本発明において、採用するターゲット基板はPt、Ni、Cu、Co、Ir、Ru、Au、Agなどの導体、またはSi、BN、SiO
2、Al
2O
3などの半導体、またはガラス、石英などの絶縁体、ポリエチレンテレフタラートなどの高分子ポリマーなど、任意の材料であり、さらに平面、曲面、グリッド面などの任意の形状の基板である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の特徴及び有益な効果は次の通りである。
【0021】
1.本発明は転写媒体を被覆したグラフェン及び第1基板を採用して電極とし、溶液中に設置する。電解法により、その表面にガスが産生され、気泡の推進力及びガスのインターカレーション作用を利用し、グラフェン及び第1基板を非破壊で分離する。
【0022】
2.本発明は一般的な高分子ポリマーを利用してグラフェンの転写媒体とする。安価で耐久性があり、転写完成後、除去しやすい。
【0023】
3.本発明は定電圧電源または定電流電源を使用する。定電圧モードのとき電圧は通常5ボルトであり、定電流モードのとき電流は通常1アンペアである。電解時間は一般に数分間以内であり、したがって、転写時間が短く、エネルギー消費が低い。
【0024】
4.本発明におけるグラフェン及び第1基板は、電解反応における電極とするのみであり、これに対して腐食作用を有するいかなる化学試薬も電解液として採用しない。したがって、グラフェン及び第1基板のいずれに対しても、いかなるダメージもなく、第1基板は数回、さらには無限に繰り返し使用することができ、コストが最大限低下し、なおかつ環境汚染がない。
【0025】
5.本発明の工程は簡単で、操作は容易であり、基板をエッチングする方法によるグラフェンの転写と比較して、グラフェンの低コスト化、量産化、迅速な転写の実現が見込まれる。
【0026】
総合すると、基板に成長させたグラフェンか、または基板に載せたグラフェンに対し、転写媒体の保護の下、電解過程で産生される気泡の推進力及びガスのインターカレーション作用により、グラフェンを非破壊で基板から移して、任意の基板に転写することができる。この過程において、グラフェン及び基板は、いずれもいかなるダメージもなく、したがって、グラフェンは高品質を保持することができる。基板は数回、さらには無限に繰り返し利用することができ、基板の損失がもたらす転写のコストを顕著に低下させ、特に金属基板に成長させたグラフェンの転写に適している。このほか、この方法の転写速度は速く、環境汚染が少なく、将来、グラフェンの透明導電膜、ナノ電子デバイスなどの分野における規模の応用を実現するために、技術的サポートを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の低コスト、非破壊でグラフェンを転写する方法は、グラフェンを表面に成長させた第1基板か、またはグラフェンを被覆した第1基板を電極とする。グラフェンは第1基板の表面を任意で被覆し、電解過程において、その表面に産生される気泡の推進力及びガスのインターカレーション作用を互いに組み合わせて利用し、グラフェン及び第1基板を非破壊で分離し、さらにグラフェンを非破壊で任意のターゲット基板の表面に結合させる。具体的な工程は以下の通りである。
【0029】
(1)転写媒体層の塗布:グラフェンを成長させた第1基板か、またはグラフェンを被覆した第1基板に転写媒体を1層塗布して、グラフェンが以降の処理で破損するのを防止する。
(2)転写媒体/グラフェン複合層及び第1基板の分離:転写媒体を被覆したグラフェン及び第1基板を電極として溶液中に設置する。電解法によりその表面にガスが産生され、さらに気泡の推進力及びガスのインターカレーション作用を利用し、グラフェン及び第1基板を非破壊で分離する。
(3)転写媒体/グラフェン複合層及びターゲット基板の結合:直接接触するなどの方法を採用し、転写媒体/グラフェン複合層をターゲット基板の表面に移す。
(4)転写媒体の除去:溶媒による溶解または加熱などの方法を採用し、グラフェンの表面を被覆する転写媒体を除去する。
【実施例1】
【0030】
常圧化学気相成長(CVD)法を利用し、金属白金箔にグラフェンを成長させる[「常圧CVD法」は非特許文献1による。グラフェンを成長させた白金箔を冷却した後、スピンコート装置を利用して白金箔の片面にPMMAを1層塗布する(PMMAを乳酸エチルに溶解し、PMMA濃度は4wt.%である)。スピンコートの速度は2000rpmであり、スピンコート時間は1分間である。乾燥機に入れ、180℃で30分間保持し、その後取り出して自然冷却する。転写媒体層の厚さは500〜1000nmである。PMMA/グラフェン/白金箔を陰極として定電流電源の負極と接続し、別の白金板を陽極として電源の正極と接続する。本実施例において、電解液は1mol/LのNaOH水溶液であり、PMMA/グラフェン/白金箔を前記溶液中に完全に浸漬した後、1アンペアの電流を付加し、電圧は8〜16ボルト、操作温度は30〜40℃である。電解過程において、電源の負極と接続したPMMA/グラフェン/白金箔に水素ガス(H
2)が産生され、水素ガスの推力及びインターカレーション作用により、PMMA/グラフェン複合層が白金箔から次第に剥離される。金属白金箔の表面粗度、サイズなどの要素の影響により、剥離に必要な時間は異なり、具体的にPMMA/グラフェン及び白金箔の分離状況に基づいて決定し、一般に1cm×3cmのPMMA/グラフェン/白金箔では、必要な剥離時間は30秒から1分間である。PMMA/グラフェン及び白金箔が完全に分離した後、PMMA/グラフェン及び白金箔をすべてNaOH溶液からすくい取り、精製水中に移す。PMMA/グラフェンを数回、水で長時間洗浄した後、切断したターゲット基板、例えばSi/SiO
2、Si/Al
2O
3、BN、PET、ガラス、銅グリッドなどを利用し、PMMA/グラフェンを水中からすくい取り、低温加熱台または加熱灯下(50〜80℃)で30分間以上保持し、残存する水分を乾燥させ、さらにはPMMA/グラフェンをターゲット基板の表面に固定する。最後にアセトンを利用してPMMAを溶解する。溶解時間は≧10分間である。
【0031】
ターゲット基板に転写したグラフェンについて、光学顕微鏡を利用して表面の層数分布、均一性及び破損の程度を観察し、原子間力顕微鏡を利用してグラフェンの微細なひび、しわなどの細部の情報を観察し、ラマンスペクトルを利用してグラフェンの結晶体の品質を判断する。
【実施例2】
【0032】
実施例1と異なる部分は次の通りである。
【0033】
常圧CVD法を利用して金属白金箔にグラフェンを成長させ、グラフェンを成長させた白金箔を冷却した後、スピンコート装置を利用して白金箔の両面にそれぞれPMMAを1層塗布する(本実施例においては、両面ともにPMMAを塗布する)。スピンコートの速度は2000rpmであり、スピンコート時間は1分間である。乾燥機に入れ、180℃で30分間保持し、その後取り出して自然冷却する。転写媒体層の厚さは500〜1000nmである。PMMA/グラフェン/白金箔を陰極として定電流電源の負極と接続し、別の白金板を陽極として電源の正極と接続する。本実施例において、電解液は濃度が0.1mol/Lから4mol/LのNaOH水溶液であり、PMMA/グラフェン/白金箔を前記溶液中に完全に浸漬した後、1アンペアの電流を付加し(本実施例において、電解電流は0.1アンペアから4アンペアである)、電圧は8〜16ボルト、操作温度は20〜30℃である。電解過程において、電源の負極と接続したPMMA/グラフェン/白金箔に水素ガス(H
2)が産生され、水素ガスの推力及びインターカレーション作用により、PMMA/グラフェン複合層が白金箔から次第に剥離される。PMMA/グラフェン及び白金箔が完全に分離した後(本実施例において、電解時間はそれぞれ30分間から20秒である)、PMMA/グラフェン及び白金箔をすべてNaOH溶液からすくい取り、精製水中に移す。PMMA/グラフェンを数回、水で長時間洗浄した後、シリコンウェハーを利用してPMMA/グラフェンを水中からすくい取って乾燥させ、PMMA/グラフェンをシリコンウェハー表面に固定する。最後にアセトンを利用してPMMAを溶解する。
【0034】
転写完成後のグラフェン/シリコンウェハーについて、光学顕微鏡を利用して表面の層数分布、均一性及び破損の程度を観察し、原子間力顕微鏡を利用してグラフェンの微細なひび、しわなどの細部の情報を観察し、ラマンスペクトルを利用してグラフェンの結晶体の品質を判断する。
【実施例3】
【0035】
実施例1と異なる部分は次の通りである。
【0036】
常圧CVD法を利用して金属白金箔にグラフェンを成長させる。グラフェンを成長させた白金箔を冷却した後、スピンコート装置を利用して白金箔の片面にPMMAを1層塗布する。転写媒体層の厚さは500〜1000nmである。PMMA/グラフェン/白金箔を陰極として定電流電源の負極と接続し、別の白金板を陽極として電源の正極と接続する。電解液は1mol/LのNaOH水溶液であり(本実施例において、電解液はKOH、H
2SO
4、Na
2SO
4など種々のアルカリ、酸または塩溶液に変更することができ、溶液の濃度は0.1mol/Lから5mol/Lである)、PMMA/グラフェン/白金箔を前記溶液中に完全に浸漬した後、1アンペアの電流を付加し(本実施例において、電解電流は0.1アンペアから4アンペアである)、電圧は8〜16ボルト、操作温度は30〜40℃である。電解過程において、電源の負極と接続したPMMA/グラフェン/白金箔に水素ガス(H
2)が産生され、水素ガスの推力及びインターカレーション作用により、PMMA/グラフェン複合層が白金箔から次第に剥離される。PMMA/グラフェン及び白金箔が完全に分離した後(本実施例において、電解時間はそれぞれ60分間〜60秒である)、PMMA/グラフェン及び白金箔をすべてNaOH溶液からすくい取り、精製水中に移す。PMMA/グラフェンを数回、水で長時間洗浄した後、シリコンウェハーを利用してPMMA/グラフェンを水中からすくい取って乾燥させ、PMMA/グラフェンをシリコンウェハー表面に固定する。最後にアセトンを利用してPMMAを溶解する。
【0037】
転写完成後のグラフェン/シリコンウェハーについて、光学顕微鏡を利用して表面の層数分布、均一性及び破損の程度を観察し、原子間力顕微鏡を利用してグラフェンの微細なひび、しわなどの細部の情報を観察し、ラマンスペクトルを利用してグラフェンの結晶体の品質を判断する。
【実施例4】
【0038】
実施例1と異なる部分は次の通りである。
【0039】
常圧CVD法を利用して単結晶金属白金(本実施例において、金属白金箔を種々の規格の白金板または白金箔、単結晶または多結晶に変更することができ、厚さは10μmより厚くてよい)にグラフェンを成長させる。グラフェンを成長させた白金箔を冷却した後、スピンコート装置を利用して白金箔の片面にPMMAを1層塗布する。転写媒体層の厚さは500〜1000nmである。PMMA/グラフェン/白金箔を陰極として定電流電源の負極と接続し、別の白金板を陽極として電源の正極と接続する。本実施例において、電解液は1mol/LのNaOH水溶液であり、PMMA/グラフェン/白金箔を前記溶液中に完全に浸漬した後、1アンペアの電流を付加し、電圧は8〜16ボルト、操作温度は40〜50℃である。電解過程において、電源の負極と接続したPMMA/グラフェン/白金箔に水素ガス(H
2)が産生され、水素ガスの推力及びインターカレーション作用により、PMMA/グラフェン複合層が白金箔から次第に剥離される。PMMA/グラフェン及び白金箔が完全に分離した後、PMMA/グラフェン及び白金箔をすべてNaOH溶液からすくい取り、精製水中に移す。PMMA/グラフェンを数回、水で長時間洗浄した後、シリコンウェハーを利用してPMMA/グラフェンを水中からすくい取って乾燥させ、PMMA/グラフェンをシリコンウェハーの表面に固定する。最後にアセトンを利用してPMMAを溶解する。
【0040】
転写完成後のグラフェン/シリコンウェハーについて、光学顕微鏡を利用して表面の層数分布、均一性及び破損の程度を観察し、原子間力顕微鏡を利用してグラフェンの微細なひび、しわなどの細部の情報を観察し、ラマンスペクトルを利用してグラフェンの結晶体の品質を判断する。
【実施例5】
【0041】
実施例1と異なる部分は次の通りである。
【0042】
種々の方法を利用して種々の金属(本実施例において、白金箔をルテニウム、イリジウム、ニッケル、銅などの金属箔、またはシリコンウェハー上で安定結合したそれらの金属薄膜に変更することができる)にグラフェンを成長させる。グラフェンを成長させた金属箔または金属薄膜を冷却した後、スピンコート装置を利用して、金属箔または金属薄膜の片面にPMMAを1層塗布する。転写媒体層の厚さは500〜1000nmである。PMMA/グラフェン/金属箔または金属薄膜を陰極として定電流電源の負極と接続し、別の白金板を陽極として電源の正極と接続する。電解液は1mol/LのNaOH水溶液であり(本実施例において、電解液を特定の金属を腐食しにくいアルカリ、酸または塩溶液に変更することができる)、PMMA/グラフェン/金属箔または金属薄膜を前記溶液中に完全に浸漬した後、1アンペアの電流を付加し、電圧は8〜16ボルト、操作温度は30〜40℃である。電解過程において、電源の負極と接続したPMMA/グラフェン/白金箔に水素ガス(H
2)が産生され、水素ガスの推力及びインターカレーション作用により、PMMA/グラフェン複合層が白金箔から次第に剥離される。PMMA/グラフェン及び金属箔または金属薄膜が完全に分離した後、PMMA/グラフェン及び金属箔または金属薄膜と安定結合したシリコンウェハーをすべて溶液からすくい取り、精製水中に移す。PMMA/グラフェンを数回、水で長時間洗浄した後、シリコンウェハーを利用してPMMA/グラフェンを水中からすくい取って乾燥させ、PMMA/グラフェンをシリコン表面に固定する。最後にアセトンを利用してPMMAを溶解する。
【0043】
転写完成後のグラフェン/シリコンウェハーについて、光学顕微鏡を利用して表面の層数分布、均一性及び破損の程度を観察し、原子間力顕微鏡を利用してグラフェンの微細なひび、しわなどの細部の情報を観察し、ラマンスペクトルを利用してグラフェンの結晶体の品質を判断する。
【実施例6】
【0044】
実施例1と異なる部分は次の通りである。
【0045】
種々の方法を利用して種々の半導体基板(本実施例において、金属基板をSiCなどの半導体基板に変更することができる)にグラフェンを調製する。グラフェンを成長させた半導体基板を冷却した後、スピンコート装置を利用して半導体基板の片面にPMMAを1層塗布する。転写媒体層の厚さは500〜1000nmである。PMMA/グラフェン/半導体基板を陰極として定電流電源の負極と接続し、別の白金板を陽極として電源の正極と接続する。電解液は1mol/LのH
2SO
4水溶液であり(本実施例において、電解液は基板を腐食しにくい酸または塩溶液に変更することができる)、PMMA/グラフェン/半導体基板を前記溶液中に完全に浸漬した後、1アンペアの電流を付加し、電圧は8〜16ボルト、操作温度は20〜30℃である。電解過程において、電源の負極と接続したPMMA/グラフェン/半導体基板に水素ガス(H
2)が産生され、水素ガスの推力及びインターカレーション作用により、PMMA/グラフェン複合層が半導体基板から次第に剥離される。PMMA/グラフェン及び半導体基板を完全に分離した後、PMMA/グラフェン及び半導体基板をすべて溶液からすくい取り、精製水中に移す。PMMA/グラフェンを数回、水で長時間洗浄した後、シリコンウェハーを利用してPMMA/グラフェンを水中からすくい取って乾燥させ、PMMA/グラフェンをシリコンウェハー表面に固定する。最後にアセトンを利用してPMMAを溶解する。
【0046】
転写完成後のグラフェン/シリコンウェハーについて、光学顕微鏡を利用して表面の層数分布、均一性及び破損の程度を観察し、原子間力顕微鏡を利用してグラフェンの微細なひび、しわなどの細部の情報を観察し、ラマンスペクトルを利用してグラフェンの結晶体の品質を判断する。
【実施例7】
【0047】
実施例1と異なる部分は次の通りである。
【0048】
常圧CVD法を利用して金属白金箔にグラフェンを成長させる。グラフェンを成長させた白金箔を冷却した後、スピンコート装置を利用して白金箔の片面にPMMAを1層塗布し、乾燥させる。転写媒体層の厚さは500〜1000nmである。PMMA/グラフェン/白金箔を陰極として定電流電源の負極と接続し、別の白金板を陽極として電源の正極と接続する。電解液は1mol/LのNaOH水溶液であり、PMMA/グラフェン/白金箔を前記溶液中に部分的に浸漬し(本実施例において、PMMA/グラフェン/白金箔は電解過程で、ゆっくりと溶液に浸漬され、PMMA/グラフェンが白金箔と分離する時間と一致する)、1アンペアの電流を付加し、電圧は8〜16ボルト、操作温度は10〜20℃である。電解過程において、電源の負極と接続したPMMA/グラフェン/白金箔に水素ガス(H
2)が産生され、水素ガスの推力及びインターカレーション作用により、PMMA/グラフェン複合層が白金箔から次第に剥離される。PMMA/グラフェン及び白金箔が完全に分離した後、PMMA/グラフェン及び白金箔をすべてNaOH溶液からすくい取り、精製水中に移す。PMMA/グラフェンを数回、水で長時間洗浄した後、シリコンウェハーを利用してPMMA/グラフェンを水中からすくい取って乾燥させ、PMMA/グラフェンをシリコンウェハーの表面に固定する。最後にアセトンを利用してPMMAを溶解する。
【0049】
転写完成後のグラフェン/シリコンウェハーについて、光学顕微鏡を利用して表面の層数分布、均一性及び破損の程度を観察し、原子間力顕微鏡を利用してグラフェンの微細なひび、しわなどの細部の情報を観察し、ラマンスペクトルを利用してグラフェンの結晶体の品質を判断する。
【実施例8】
【0050】
実施例1と異なる部分は次の通りである。
【0051】
常圧CVD法を利用して金属白金箔にグラフェンを成長させる。グラフェンを成長させた白金箔を冷却した後、スピンコート装置を利用して白金箔の片面に転写媒体を1層塗布し(本実施例において、成膜硬化しやすく、基板との結合力が強く、除去しやすいなどの性質を有するフォトレジスト、PDMS、金属薄膜などを利用して転写媒体とすることができる)、乾燥させる。転写媒体層の厚さは500〜1000nmである。転写媒体/グラフェン/白金箔を陰極として定電流電源の負極と接続し、別の白金板を陽極として電源の正極と接続する。電解液は1mol/LのNaOH水溶液であり(本実施例において、転写媒体を損傷しない電解液を利用する)、転写媒体/グラフェン/白金箔を前記溶液中に部分的に浸漬し、1アンペアの電流を付加し、電圧は8〜16ボルト、操作温度は20〜30℃である。電解過程において、電源の負極と接続した転写媒体/グラフェン/白金箔に水素ガス(H
2)が産生され、水素ガスの推力及びインターカレーション作用により、転写媒体/グラフェン複合層が白金箔から次第に剥離される。転写媒体/グラフェン及び白金箔が完全に分離した後、転写媒体/グラフェン及び白金箔をすべてNaOH溶液からすくい取り、精製水中に移す。転写媒体/グラフェンを数回、水で長時間洗浄した後、シリコンウェハーを利用して転写媒体/グラフェンを水中からすくい取って乾燥させ、転写媒体/グラフェンをシリコンウェハーの表面に固定する。最後に転写媒体を除去する。
【0052】
転写完成後のグラフェン/シリコンウェハーについて、光学顕微鏡を利用して表面の層数分布、均一性及び破損の程度を観察し、原子間力顕微鏡を利用してグラフェンの微細なひび、しわなどの細部の情報を観察し、ラマンスペクトルを利用してグラフェンの結晶体の品質を判断する。
【実施例9】
【0053】
実施例1と異なる部分は次の通りである。
【0054】
常圧CVD法を利用して金属白金箔にグラフェンを成長させる。グラフェンを成長させた白金箔を冷却した後、スピンコート装置を利用して白金箔の片面にPMMAを1層塗布し、乾燥させる。転写媒体層の厚さは500〜1000nmである。PMMA/グラフェン/白金箔を陽極として定電流電源の正極と接続し、別の白金板を陰極として電源の負極と接続する。電解液は1mol/Lの特定の電解液であり(本実施例においては、陽極で酸素ガスを産生しない溶液、例えばNaClまたはHClなどの溶液を使用する)、PMMA/グラフェン/白金箔を前記溶液にすべて浸漬し、1アンペアの電流を付加し、電圧は8〜16ボルト、操作温度は30〜40℃である。電解過程において、電源の正極と接続したPMMA/グラフェン/白金箔に塩素ガス(Cl
2)が産生され、塩素ガスの推力及びインターカレーション作用により、PMMA/グラフェン複合層が白金箔から次第に剥離される。PMMA/グラフェン及び白金箔が完全に分離した後、PMMA/グラフェン及び白金箔をすべて電解溶液からすくい取り、精製水中に移す。PMMA/グラフェンを数回、水で長時間洗浄してきれいにした後、シリコンウェハーを利用してPMMA/グラフェンを水中からすくい取って乾燥させ、PMMA/グラフェンをシリコンウェハーの表面に固定する。最後にアセトンを利用してPMMAを溶解する。
【0055】
転写完成後のグラフェン/シリコンウェハーについて、光学顕微鏡を利用して表面の層数分布、均一性及び破損の程度を観察し、原子間力顕微鏡を利用してグラフェンの微細なひび、しわなどの細部の情報を観察し、ラマンスペクトルを利用してグラフェンの結晶体の品質を判断する。
【実施例10】
【0056】
実施例1と異なる部分は次の通りである。
【0057】
常圧CVD法を利用して金属白金箔にグラフェンを成長させる。グラフェンを成長させた白金箔を冷却した後、スピンコート装置を利用して白金箔の片面にPMMAを1層塗布し、乾燥させる。転写媒体層の厚さは500〜1000nmである。2つのPMMA/グラフェン/白金箔をそれぞれ定電流電源の正極及び負極と接続する。電解液は1mol/Lの特定の電解液であり(本実施例においては、陽極で酸素ガスを産生しない溶液、例えばNaClまたはHClなどの溶液を使用する)、PMMA/グラフェン/白金箔を前記溶液にすべて浸漬し、1アンペアの電流を付加し、電圧は8〜16ボルト、操作温度は50〜60℃である。電解過程において、電源の正、負極と接続したPMMA/グラフェン/白金箔にそれぞれ塩素ガス(Cl
2)及び水素ガス(H
2)が産生され、塩素ガス及び水素ガスの推力及びインターカレーション作用により、PMMA/グラフェン複合層が白金箔から次第に剥離される。PMMA/グラフェン及び白金箔が完全に分離した後、PMMA/グラフェン及び白金箔をすべて電解溶液からすくい取り(本実施例においては、両極ともPMMA/グラフェン及び白金箔が分離する)、精製水中に移す。PMMA/グラフェンを数回、水で長時間洗浄してきれいにした後、シリコンウェハーを利用してPMMA/グラフェンを水中からすくい取って乾燥させ、PMMA/グラフェンをシリコンウェハーの表面に固定する。最後にアセトンを利用してPMMAを溶解する。
【0058】
転写完成後のグラフェン/シリコンウェハーについて、光学顕微鏡を利用して表面の層数分布、均一性及び破損の程度を観察し、原子間力顕微鏡を利用してグラフェンの微細なひび、しわなどの細部の情報を観察し、ラマンスペクトルを利用してグラフェンの結晶体の品質を判断する。
【実施例11】
【0059】
実施例1と異なる部分は次の通りである。
【0060】
常圧CVD法を利用して金属白金箔にグラフェンを成長させる。グラフェンを成長させた白金箔を冷却した後、スピンコート装置を利用して白金箔の片面にPMMAを1層塗布する。転写媒体層の厚さは500〜1000nmである。PMMA/グラフェン/白金箔を陰極として定電流電源の負極と接続し、別の白金板を陽極として電源の正極と接続する。本実施例において、電解液は1mol/LのNaOH水溶液であり、PMMA/グラフェン/白金箔を前記溶液中に完全に浸漬した後、1アンペアの電流を付加し、電圧は8〜16ボルト、操作温度は40〜50℃である。電解過程において、電源の負極と接続したPMMA/グラフェン/白金箔に水素ガス(H
2)が産生され、水素ガスの推力及びインターカレーション作用により、PMMA/グラフェン複合層が白金箔から次第に剥離される。PMMA/グラフェン及び白金箔が完全に分離した後、PMMA/グラフェン及び白金箔をすべてNaOH溶液からすくい取り、精製水中に移す。PMMA/グラフェンを数回、水で長時間洗浄した後、切断したターゲット基板を利用してPMMA/グラフェンを水中からすくい取り(本実施例において、ガラスを採用してターゲット基板とする)、低温加熱台または加熱灯下(50〜80℃)で30分間以上保持し、残存する水分を乾燥させ、再び高温加熱台(100〜180℃)で30分間以上保持し、PMMA/グラフェンをガラスの表面に固定する。最後にアセトンを利用してPMMAを溶解する。溶解時間は10分間より長い。
【0061】
転写完成後のグラフェン/ガラスについて、光学顕微鏡を利用して表面の層数分布、均一性及び破損の程度を観察し、原子間力顕微鏡を利用してグラフェンの微細なひび、しわなどの細部の情報を観察し、ラマンスペクトルを利用してグラフェンの結晶体の品質を判断する。
【実施例12】
【0062】
実施例1と異なる部分は次の通りである。
【0063】
常圧CVD法を利用して金属白金箔にグラフェンを成長させる。グラフェンを成長させた白金箔を冷却した後、スピンコート装置を利用して白金箔の片面にPMMAを1層塗布する。転写媒体層の厚さは500〜1000nmである。PMMA/グラフェン/白金箔を陰極として定電流電源の負極と接続し、別の白金板を陽極として電源の正極と接続する。本実施例において、電解液は1mol/LのNaOH水溶液であり、PMMA/グラフェン/白金箔を前記溶液中に完全に浸漬した後、1アンペアの電流を付加し、電圧は8〜16ボルト、操作温度は40〜50℃である。電解過程において、電源の負極と接続したPMMA/グラフェン/白金箔に水素ガス(H
2)が産生され、水素ガスの推力及びインターカレーション作用により、PMMA/グラフェン複合層が白金箔から次第に剥離される。PMMA/グラフェン及び白金箔が完全に分離した後、PMMA/グラフェン及び白金箔をすべてNaOH溶液からすくい取り、精製水中に移す。PMMA/グラフェンを数回、水で長時間洗浄した後、切断したターゲット基板を利用して、PMMA/グラフェンを水中からすくい取り(本実施例においては、PETを採用してターゲット基板とする)、低温加熱台または加熱灯下(50〜80℃)で30分間以上保持し、残存する水分を乾燥させ、PMMA/グラフェンをPETの表面に固定する。最後にアセトンを利用してPMMAを溶解する。溶解時間は10分間より長い。
【0064】
転写完成後のグラフェン/PETについて、光学顕微鏡を利用して表面の層数分布、均一性及び破損の程度を観察し、原子間力顕微鏡を利用してグラフェンの微細なひび、しわなどの細部の情報を観察し、ラマンスペクトルを利用してグラフェンの結晶体の品質を判断する。
【実施例13】
【0065】
実施例1と異なる部分は次の通りである。
【0066】
常圧CVD法を利用して金属白金箔にグラフェンを成長させる。グラフェンを成長させた白金箔を冷却した後、スピンコート装置を利用して白金箔の片面にPMMAを1層塗布する。転写媒体層の厚さは500〜1000nmである。PMMA/グラフェン/白金箔を陰極として定電流電源の負極と接続し、別の白金板を陽極として電源の正極と接続する。本実施例において、電解液は1mol/LのNaOH水溶液であり、PMMA/グラフェン/白金箔を前記溶液中に完全に浸漬した後、1アンペアの電流を付加し、電圧は8〜16ボルト、操作温度は40〜50℃である。電解過程において、電源の負極と接続したPMMA/グラフェン/白金箔に水素ガス(H
2)が産生され、水素ガスの推力及びインターカレーション作用により、PMMA/グラフェン複合層が白金箔から次第に剥離される。PMMA/グラフェン及び白金箔が完全に分離した後、PMMA/グラフェン及び白金箔をすべてNaOH溶液からすくい取り、精製水中に移す。PMMA/グラフェンを数回、水で長時間洗浄した後、切断したターゲット基板を利用してPMMA/グラフェンを水中からすくい取り(本実施例においては、少数層の立方晶窒化ホウ素/SiO
2/Siを採用してターゲット基板とする)、低温加熱台または加熱灯下(50〜80℃)で30分間以上保持し、残存する水分を乾燥させ、再び高温加熱台(100〜180℃)で30分間以上保持し、PMMA/グラフェンをBNの表面に固定する。最後にアセトンを利用してPMMAを溶解する。溶解時間は10分間より長い。
【0067】
転写完成後のグラフェン/BN/SiO
2/Siについて、光学顕微鏡を利用して表面の層数分布、均一性及び破損の程度を観察し、原子間力顕微鏡を利用してグラフェンの微細なひび、しわなどの細部の情報を観察し、ラマンスペクトルを利用してグラフェンの結晶体の品質を判断する。
【実施例14】
【0068】
実施例1と異なる部分は次の通りである。
【0069】
常圧CVD法を利用して金属白金箔にグラフェンを成長させる。グラフェンを成長させた白金箔を冷却した後、スピンコート装置を利用して白金箔の片面にPMMAを1層塗布する。転写媒体層の厚さは500〜1000nmである。PMMA/グラフェン/白金箔を陰極として定電流電源の負極と接続し、別の白金板を陽極として電源の正極と接続する。本実施例において、電解液は1mol/LのNaOH水溶液であり、PMMA/グラフェン/白金箔を前記溶液中に完全に浸漬した後、1アンペアの電流を付加し、電圧は8〜16ボルト、操作温度は40〜50℃である。電解過程において、電源の負極と接続したPMMA/グラフェン/白金箔に水素ガス(H
2)が産生され、水素ガスの推力及びインターカレーション作用により、PMMA/グラフェン複合層が白金箔から次第に剥離される。PMMA/グラフェン及び白金箔が完全に分離した後、PMMA/グラフェン及び白金箔をすべてNaOH溶液からすくい取り、精製水中に移す。PMMA/グラフェンを数回、水で長時間洗浄した後、切断したターゲット基板を利用して、PMMA/グラフェンを水中からすくい取り(本実施例においては、銅グリッドのレース状支持膜を採用してターゲット基板とし、200メッシュである)、低温加熱台または加熱灯下(50〜80℃)で30分間以上保持し、残存する水分を乾燥させ、再び高温加熱台(100〜180℃)で30分間以上保持し、PMMA/グラフェンを銅グリッドのレース状支持膜の表面に固定する。最後にアセトンを利用してPMMAを溶解する。溶解時間は10分間より長い。
【0070】
転写完成後のグラフェン/銅グリッドのレース状支持膜について、光学顕微鏡を利用して表面の層数分布、均一性及び破損の程度を観察し、原子間力顕微鏡を利用してグラフェンの微細なひび、しわなどの細部の情報を観察し、ラマンスペクトルを利用してグラフェンの結晶体の品質を判断する。
【実施例15】
【0071】
実施例1と異なる部分は次の通りである。
【0072】
常圧CVD法を利用して金属白金箔にグラフェンを成長させる。グラフェンを成長させた白金箔を冷却した後、スピンコート装置を利用して白金箔の片面にPMMAを1層塗布する。転写媒体層の厚さは500〜1000nmである。PMMA/グラフェン/白金箔を陰極として定電流電源の負極と接続し、別の白金板を陽極として電源の正極と接続する。本実施例において、電解液は1mol/LのNaOH水溶液であり、PMMA/グラフェン/白金箔を前記溶液中に完全に浸漬した後、1アンペアの電流を付加し、電圧は8〜16ボルト、操作温度は40〜50℃である。電解過程において、電源の負極と接続したPMMA/グラフェン/白金箔に水素ガス(H
2)が産生され、水素ガスの推力及びインターカレーション作用により、PMMA/グラフェン複合層が白金箔から次第に剥離される。PMMA/グラフェン及び白金箔が完全に分離した後、PMMA/グラフェン及び白金箔をすべてNaOH溶液からすくい取り、精製水中に移す。PMMA/グラフェンを数回、水で長時間洗浄した後、切断したターゲット基板を利用して、PMMA/グラフェンを水中からすくい取り(本実施例において、表面に溝を有するSiO
2/Siを採用してターゲット基板とする)、低温加熱台または加熱灯下(50〜80℃)で30分間以上保持し、残存する水分を乾燥させ、再び高温加熱台(100〜180℃)で30分間以上保持し、PMMA/グラフェンを表面に溝を有するSiO
2/Si基板の表面に固定する。最後にアセトンを利用してPMMAを溶解する。溶解時間は10分間より長い。
【0073】
転写完成後のグラフェン/表面に溝を有するSiO
2/Si基板について、光学顕微鏡を利用して表面の層数分布、均一性及び破損の程度を観察し、原子間力顕微鏡を利用してグラフェンの微細なひび、しわなどの細部の情報を観察し、ラマンスペクトルを利用してグラフェンの結晶体の品質を判断する。
【実施例16】
【0074】
実施例1と異なる部分は次の通りである。
【0075】
常圧CVD法を利用して金属白金箔にグラフェンを成長させる。グラフェンを成長させた白金箔を冷却した後、スピンコート装置を利用して白金箔の片面にPMMAを1層塗布する。転写媒体層の厚さは500〜1000nmである。PMMA/グラフェン/白金箔を陰極として定電流電源の負極と接続し、別の白金板を陽極として電源の正極と接続する。本実施例において、電解液は1mol/LのNaOH水溶液であり、PMMA/グラフェン/白金箔を前記溶液中に完全に浸漬した後、1アンペアの電流を付加し、電圧は8〜16ボルト、操作温度は40〜50℃である。電解過程において、電源の負極と接続したPMMA/グラフェン/白金箔に水素ガス(H
2)が産生され、水素ガスの推力及びインターカレーション作用により、PMMA/グラフェン複合層が白金箔から次第に剥離される。PMMA/グラフェン及び白金箔が完全に分離した後、PMMA/グラフェン及び白金箔をすべてNaOH溶液からすくい取り、精製水中に移す。PMMA/グラフェンを数回、水で長時間洗浄した後、切断した銅金属基板を利用して、PMMA/グラフェンを水中からすくい取り(本実施例において、銀、アルミニウムなど金属基板を採用することができ、厚さは1μm〜1mmである)、低温加熱台または加熱灯下(50〜80℃)で30分間以上保持し、残存する水分を乾燥させ、再び高温加熱台(100〜180℃)で30分間以上保持し、PMMA/グラフェンを銅金属基板の表面に固定する。最後にアセトンを利用してPMMAを溶解する。溶解時間は10分間より長い。
【0076】
転写完成後のグラフェン/銅金属基板について、光学顕微鏡を利用して表面の層数分布、均一性及び破損の程度を観察し、原子間力顕微鏡を利用してグラフェンの微細なひび、しわなどの細部の情報を観察し、ラマンスペクトルを利用してグラフェンの結晶体の品質を判断する。
【0077】
図1に示すのは、非破壊で転写する方法により、白金箔に成長させたグラフェンを転写させるフローチャートである。このうち、(a)は、表面にグラフェンを成長させた白金箔か、またはグラフェンを被覆した白金箔にPMMA層を塗布する。(b)は、PMMA/グラフェン/白金箔を電解槽の陰極とし、別の白金板を利用して陽極とする。(c)は、一定の電流1アンペアを付加した作用下で、電解水から産生された水素ガスの気泡により、PMMA/グラフェンが金属基板の白金箔から次第に剥離される。(d)は、気泡が生じた数十秒後に、PMMA/グラフェン及び金属白金箔が完全に分離される。図中、矢印でPMMA/グラフェンを示す。
【0078】
図2に示すように、(a)はSi/SiO
2基板に転写したグラフェンの光学写真であり、挿入図はグラフェンを成長させた後の単結晶Pt(111)基板(左図)と、これからSi/SiO
2に転写したグラフェン薄膜(右図)である。(b)はSi/SiO
2表面に転写したグラフェンの光学顕微鏡写真であり、グラフェンの大部分が単層であり、小さい部分的な領域が二層及び少数層であることを示す。挿入図は単層グラフェンの境界のTEM写真である。(c)は単層グラフェンのラマンスペクトルの対比であり、すなわちスコッチテープ法で得られたグラフェン、非破壊で転写する方法により、それぞれSi/SiO
2及びSi/Al
2O
3に転写したグラフェンを対比していて、このうち弱いDバンド(ラマン散乱ピーク)は転写後のグラフェンが高い品質を有することを表す。該転写過程が、グラフェンに対していかなる破損及び破壊もないことがわかる。非破壊で転写した後のグラフェン薄膜は明らかな破損がなく、なおかつ比較的高い結晶体の品質を示し、この種の転写方法がグラフェンを傷つけないことを証明する。
【0079】
図3に示すように、(a−b)は金属白金箔に成長させたグラフェン単結晶のSEM図であり、(c−d)はそれぞれ該グラフェン単結晶をSi/SiO
2基板に転写した光学写真である。該転写過程が、グラフェン単結晶に対していかなる破損及び破壊もないことがわかる。
【0080】
図4に示すように、(d)は表面に溝を有するSi/SiO
2基板に転写したグラフェンの光学写真であり、(e)はSi/SiO
2表面のAu電極に転写したグラフェンの光学写真である。この種の転写方法が、溝を有する表面及び電極などの平らでない基板に同様に適用されることがわかる。
【0081】
図5に示すように、(a)はグラフェンを成長させた単結晶Pt(111)表面のAFM図であり、しわはその表面にグラフェンが存在することを表す。(b)はグラフェンを非破壊で転写した後のPt(111)表面のAFM図であり、Pt(111)表面には最初の原子ステップが残るのみであり、グラフェンのしわがなく、なおかつ転写後のPt(111)がその元の外観及び構造を保持していることを示す。非破壊で転写した前後の単結晶白金の表面を対比して、転写後の白金表面にグラフェンが残留しておらず、白金表面の原子ステップも変化していないことがわかり、この種の転写方法が白金基板を傷つけないことを証明する。
【0082】
図6に示すように、(a−d)はそれぞれ多結晶白金の同一位置であり、1回、5回、15回及び100回を超える非破壊の転写を行った後、同様の条件で成長させたグラフェン薄膜のSEM図である。グラフェン構造に明らかな変化がないことがわかり、非破壊で転写した後の基板が繰り返し使用することができることを表す。非破壊で転写した後の多結晶白金に成長させたグラフェン薄膜のSEM図により、1回目、5回目、15回目ひいては100回を超える転写の後、多結晶白金に成長させたグラフェン薄膜に明らかな変化がないことがわかり、転写後の基板が繰り返し使用することができることを証明する。
【0083】
図7に示すように、(a−b)はそれぞれ120分間成長させた後のSEM図であり、(c−d)は180分間成長させた後のSEM図である。白金箔を数回繰り返し使用した後、白金箔はその基板に成長させる作用を依然として保持することができ、成長させた単結晶グラフェン島に明らかな違いはない。この多結晶白金箔の基板は、すでに500回を超える転写を行っている。非破壊で転写した後の多結晶白金に成長させた単結晶グラフェン島の構造について、この白金箔の基板はすでに500回を超える転写を行っていて、数回転写した後の基板に成長させた単結晶グラフェン島の構造と、最初に基板に成長させた単結晶グラフェンに明らかな違いがないことがわかり、数回転写した後の基板を繰り返し使用することができることを証明する。