(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記乗降室は、その天井に、前記車両が搭載されるパレットが通過可能な孔部を有し、前記光学検知装置は、鉛直方向から見た場合、前記孔部よりも前記車両進入口側に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の機械式駐車場。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0014】
実施の形態に係る機械式駐車場は、乗降室に進入した自動車などの車両を格納棚へ導入する。この機械式駐車場は、乗降室へ進入中の車両を誘導するときおよび停車した車両を入庫するとき、収容領域からの車両のはみ出しがあればそれを検知するはみ出しセンサを有する。このはみ出しセンサは、発せられたレーザ光の反射光を受けるタイプの光学検知装置である。機械式駐車場では、はみ出しセンサは乗降室のなかでノイズ光の想定入射経路を外す位置ないし方向に設けられる。ノイズ光の想定入射経路は、ノイズ光が乗降室に入射する場合にそのノイズ光がとりうる経路を含む。これにより、はみ出しセンサへのノイズ光の影響を低減できる。
【0015】
ノイズ光は、はみ出しセンサから発せられたレーザ光の波長に対応するスペクトル成分を有する光であってもよく、例えば太陽光、車両の灯具から発せられる光、または乗降室の照明器具から発せられる光である。特に太陽光は乗降室が地上に設けられる場合にノイズ光となりうる。
【0016】
太陽光について、通常はみ出しセンサは乗降室の天井近くに設けられ、また太陽光は上方から入射されるので太陽光が直接はみ出しセンサに当たる状況はそう多くない。しかしながら乗降室の一部や乗降室周辺による太陽光の反射を考えると、太陽光の想定入射経路は乗降室の比較的広い範囲にわたる可能性がある。特に乗降室の車両進入口が東向きまたは西向きである場合、一日のなかで車両進入口が太陽に面する時間帯がある。この時間帯に車両進入口の周囲の反射体で反射した太陽光は乗降室の奥まで到達しうる。反射体は例えば車両進入口の扉周囲の側溝のグレーチング、扉の下部の見切り板、扉の前の車路ターンテーブル、乗降室内のデッキ、パレット、および進入中の車両を含む。グレーチング、見切り板、デッキ、は乗降室の一部である。
【0017】
そこで実施の形態に係る機械式駐車場では、はみ出しセンサは、太陽光がそのような反射体によって反射されることを想定した経路を外す位置ないし方向に設けられる。これにより、はみ出しセンサへの太陽光の反射光の影響を低減できる。
【0018】
図1は、実施の形態に係る機械式駐車場10の正面図である。
図2は、2F格納棚14の平面図である。機械式駐車場10は、地上に設けられた建物24のなかに設けられた地上式の機械式駐車場である。機械式駐車場10は、建物24の2階部分、3階部分、4階部分のそれぞれに設けられた2F格納棚14、3F格納棚16、4F格納棚18を備える。建物24の一階部分は商業スペースなどの駐車以外の用途で使用される。
【0019】
機械式駐車場10はさらに、複数のパレット32と、第1移載装置56と、複数の第2移載装置58と、リフトフレーム88と、断面が略矩形の昇降路96の四隅に支柱として設けられた4本のマスト90と、昇降装置94と、左はみ出しセンサ36と、右はみ出しセンサ38と、遮光カバー46と、を備える。左はみ出しセンサ36、右はみ出しセンサ38および遮光カバー46は
図3、
図4、
図5で後述する。
【0020】
パレット32は平板状の部材であり、車両が搭載される上面すなわち車両搭載面は略矩形である。機械式駐車場10は、パレット32を用いたパレット式の駐車場である。このパレット式の機械式駐車場10は、昇降装置94を用いて車両20が搭載された状態のパレット32を昇降させたり、あるいは第1移載装置56や第2移載装置58を使用してパレット32を面方向に移動させたりすることにより、格納棚に車両20を駐車させる構成とされている。
【0021】
2F格納棚14、3F格納棚16、4F格納棚18はそれぞれ10の駐車スペースを含む。それら10の駐車スペースは、平面視した場合に移載方向(x方向)に5行、移載方向と実質的に直交する交差方向(y方向)に2列のマトリクス状に配列される。各駐車スペースはパレット32を収容可能に構成される。駐車スペースはパレットと共に車両20が駐車されうる駐車室内の1駐車領域(駐車の1単位)である。
【0022】
乗降室12は建物24の一階部分に設けられている。乗降室12は昇降路96の下端すなわち地表側に設けられている。乗降室12と昇降路96とはパレット32が通過できる程度の大きさの連通孔26を介して連結されている。昇降路96は鉛直方向(図のz方向)に沿って設けられる。昇降路96は、2F格納棚14、3F格納棚16、4F格納棚18のそれぞれと連通する。したがって、各格納棚と乗降室とは昇降路96によって連結される。
【0023】
平面視した場合に略矩形のリフトフレーム88は、4本のマスト90に昇降自在に支持される。リフトフレーム88の上部には第1移載装置56が搭載される。昇降装置94は乗降室12の床下に設置され、昇降路96に沿ってリフトフレーム88を昇降させる。なお、リフトフレーム88、4本のマスト90、および昇降装置94には、本出願人が先に出願した特開2009−197417号公報や特開2008−261159号公報に記載のリフトフレーム、4本のマスト、昇降装置、をそれぞれ適用することができる。
【0024】
第1移載装置56の上部にはパレット32が搭載される。第1移載装置56は、移載方向にパレット32を移動可能に構成される。第2移載装置58は各駐車スペースに設けられており、駐車スペースをまたいでパレット32を移動させる。駐車スペースと駐車スペースとの間には、駐車スペースをまたいでパレット32が移動する際にそれを支持する転倒防止ローラ38が設置される。なお、第2移載装置58には、例えば本出願人が先に出願した特公平7−29681号公報に記載の搬送装置を適用することができる。
【0025】
図3は、乗降室12の平面図である。
図4は、
図3のA−A線断面透視図である。説明をより明瞭とするため、
図3、
図4ではマスト90、第1移載装置56、リフトフレーム88、昇降装置94の表示は省略する。
図3は乗降室12に車両が進入する前に乗降室12にパレット32が呼び出された状態を示す。乗降室12は平面視で略矩形であり、以下、移載方向を左右方向、交差方向を前後方向とする。前後方向は車両20が外部から乗降室12に進入する方向である。
【0026】
センサフレーム34は左右方向に延在する断面が略矩形の金属製フレームであり、一端が乗降室12の左側の壁に固定され、他端が乗降室12の右側の壁に固定される。センサフレーム34は乗降室12の車両進入口44側かつ天井側に設けられる。
【0027】
左はみ出しセンサ36および右はみ出しセンサ38はセンサフレーム34に取り付けられる。左はみ出しセンサ36は、所定の波長のレーザ光を発する投光部(不図示)と、その波長と同等の波長の光を検知するよう構成された受光部(不図示)と、を備える。投光部によって発せられるレーザ光の経路は、車両20が乗降室12に進入したとき、車両20が収容領域48からはみ出して停車している場合、そのはみ出し個所に当たることを想定して定められる。受光部は、そのはみ出し個所で反射されたレーザ光が戻ったとき、その反射光の経路を想定して設けられる。
【0028】
より具体的には投光部は、yz平面に平行な左検出面50内にレーザ光を発する。投光部はこのレーザ光の経路52をx軸の周りで回転させることによって、左検出面50の全体をレーザ光により走査する。左検出面50はパレット32の左端に沿って設けられる。
【0029】
乗降室12に進入しパレット32上で停車した車両20の一部60が左検出面50からはみ出すすなわち左検出面50を横切る場合を考える。左はみ出しセンサ36の投光部は左検出面50をレーザ光により走査する。そのようなレーザ光の一部は左はみ出しセンサ36から車両20の一部60に至る経路62を進む。経路62を進んだレーザ光は車両20の一部60によって反射される。反射されたレーザ光の一部は経路62とほぼ同じ経路64を進んで左はみ出しセンサ36に戻る。左はみ出しセンサ36の受光部はそのようにして戻ってきた反射光を検知し、左はみ出しセンサ36は不図示の操作盤等の制御装置に検知結果を送信する。操作盤は左はみ出しセンサ36が反射光を検知した場合、乗降室12から格納棚への車両の移動を制限してもよい。
【0030】
左はみ出しセンサ36は投光部と受光部とが一体となった一体型の光学センサである。しかしながら、受光部が、左検出面50からはみ出す車両の一部で反射されるレーザ光の想定される経路上に設けられるのであれば、受光部は投光部と別体とされてもよい。
【0031】
右はみ出しセンサ38は左はみ出しセンサ36と同様に構成される。左はみ出しセンサ36の左検出面50と右はみ出しセンサ38の右検出面64とで挟まれる領域が収容領域48である。言い換えると、収容領域48はパレット32の大きさを基に設定され、左検出面50が収容領域48の左側面を形成するよう左はみ出しセンサ36が位置決めされ、右検出面64が収容領域48の右側面を形成するよう右はみ出しセンサ38が位置決めされる。より確実に車両20のはみ出しを防止するために、収容領域48をパレット32の大きさよりも小さく設定してもよい。
【0032】
乗降室12に窓などの採光部が設けられていないとすると、太陽光は車両進入口44を介して乗降室12に入射することが想定される。そのような太陽光の入射経路は、乗降室12の車両進入口44付近に設けられた側溝66を覆うグレーチング40によって太陽光が反射されることを想定した反射経路68を含む。この反射経路68を進む太陽光は乗降室12の車両進入口44とは反対側に到達しうる。
【0033】
左検出面50からはみ出す車両20の一部60の形状にもよるが、一般に車両20の一部60で反射され経路64を通って左はみ出しセンサ36に戻るレーザ光の強度は低く、例えば反射前のレーザ光の強度よりもかなり低い。したがって、左はみ出しセンサ36の受光部の感度はそのような弱い反射光でも検知できるよう比較的高く設定される。この感度は例えば、受光部が乗降室12の車両進入口44とは反対側に設けられた場合に、その受光部が反射経路68を進む太陽光を検知可能な感度である。
【0034】
左はみ出しセンサ36および右はみ出しセンサ38は太陽光の反射経路68を含む太陽光の想定入射経路を外す位置に設けられる。より具体的には、左はみ出しセンサ36および右はみ出しセンサ38は、乗降室12の車両進入口44側かつ天井側に設けられる。この場合、左はみ出しセンサ36および右はみ出しセンサ38は車両の前照灯から発せられる光の想定入射経路からも外れる。
【0035】
図5は、
図4の矢印Bに対応する側面図である。遮光カバー46は左はみ出しセンサ36と車両進入口44との間に設けられ、左はみ出しセンサ36の車両進入口44側を覆うように配置される。遮光カバー46は左はみ出しセンサ36の車両進入口44側の一部がその内側に収まる箱形の部材であり、金属や不透明樹脂などの遮光材料によって形成される。
遮光カバー46は天井側の面部を有さない代わりに、遮光カバー46および左はみ出しセンサ36は共通のセンサホルダ72に保持される。センサホルダ72はボルト、ナット、プレートなどからなる締結手段によってセンサフレーム34に固定される。
【0036】
遮光カバー46は、グレーチング40によって太陽光が小さな反射角、例えば反射経路68の反射角よりも小さな反射角で反射されることを想定した反射経路70上に設けられており、反射経路70を通ってくる太陽光の反射光を遮る。なお、反射角は光の進行方向と反射面の垂線との間の角度として定義される。また遮光カバー46は、左はみ出しセンサ36の左検出面50と干渉しない位置に設けられている。
遮光カバー46は左面部46aと下面部46bと右面部46cとを有する。左面部46aおよび右面部46cは、左はみ出しセンサ36の脇から進入してくる太陽光の反射光、すなわち前後方向に対して傾いた反射経路を通ってくる太陽光を効果的に遮る。下面部46bは下側からの太陽光の反射光を効果的に遮る。
なお、右はみ出しセンサ38に対しても同様の遮光カバーが設けられる。
【0037】
以上のように構成された機械式駐車場10の動作について説明する。
車両20を機械式駐車場10に入庫する場合、ドライバまたは係員は乗降室12内に呼び出されているパレット32上で車両20を停車させる。ドライバまたは係員は停車後下車し、乗降室12に備え付けの不図示の操作盤に入庫の指示を入力する。ここで左はみ出しセンサ36および右はみ出しセンサ38は、車両20が車両進入口44から進入してからパレット32上で停車するまでの間、および入庫指示があってから実際にパレット32が動き出すまでの間に受光部が反射光を検知した場合、はみ出しを知らせるための信号を操作盤に送信する。操作盤はそのような信号を受信すると、車両誘導案内灯などの表示手段を介してドライバまたは係員にはみ出しを警告する。
【0038】
本実施の形態に係る機械式駐車場10によると、左はみ出しセンサ36および右はみ出しセンサ38の受光部は、はみ出し個所からの反射レーザ光以外のノイズ光の想定入射経路を外す位置に設けられている。したがって、車両20の乗降室12への進入時や停車時にノイズ光が受光部に到達しにくくなるので、左はみ出しセンサ36や右はみ出しセンサ38のはみ出し検知の精度が向上する。
例えば、車両20が収容領域48内に収まっているのにはみ出していると検知される可能性を低減できる。
【0039】
ノイズ光のなかでも太陽光のスペクトルは比較的広く、したがって太陽光が影響を与えうるレーザセンサも比較的多い。そこで本実施の形態に係る機械式駐車場10では、左はみ出しセンサ36および右はみ出しセンサ38は太陽光の想定入射経路を外す位置に設けられる。したがって、はみ出し検知の精度が向上すると共に、左はみ出しセンサ36や右はみ出しセンサ38として採用できるレーザセンサの選択の幅を広げることができる。
【0040】
また、車両進入口44付近の反射体で反射した太陽光は乗降室12の車両進入口44とは反対側の奥にまで到達する可能性がある。そこで本実施の形態に係る機械式駐車場10では、左はみ出しセンサ36および右はみ出しセンサ38はそのような反射を想定した反射経路を外す位置、特に乗降室12の車両進入口44側かつ天井側に設けられている。したがって、乗降室12が車両進入口44付近に反射体を含む場合でもより効果的に太陽光のはみ出しセンサへの影響を回避できる。
【0041】
また、本実施の形態では遮光カバーを設けることにより、太陽光の反射光がはみ出しセンサの受光部に入射するのをより確実に防止できる。
【0042】
以上、実施の形態に係る機械式駐車場10の構成と動作について説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0043】
実施の形態では、左はみ出しセンサ36および右はみ出しセンサ38の受光部はノイズ光の想定入射経路を外す位置に設けられている場合について説明したが、これに限られず、受光部はノイズ光の想定入射経路を外す方向に設けられてもよい。例えば、ノイズ光の想定入射経路上にはみ出しセンサが設けられていても、はみ出しセンサの受光部が反射光を受光可能な角度範囲内にその想定入射経路が入っていなければよい。受光部が想定入射経路を向いていなければよいのである。
【0044】
地表に固定された座標系で見た場合に太陽は動くことを考慮し、左はみ出しセンサ36または右はみ出しセンサ38の受光部は、太陽が所定の期間にわたって動いた場合に太陽光の想定入射経路が画定する範囲を外す位置ないし方向に設けられてもよい。この場合、より効果的に太陽光のはみ出しセンサへの影響を回避できる。
【0045】
実施の形態ではグレーチング40によって太陽光が反射されることを想定したが、これに限られず、例えば見切り板やデッキによって太陽光が反射されることを想定してもよい。
【0046】
実施の形態では、乗降室12が昇降路96の下端に位置する地上式の機械式駐車場10について説明したが、これに限られず、本実施の形態の技術的思想は乗降室が昇降路の上端に位置する場合や、昇降路の中間に乗降室を設ける場合にも適用できる。太陽光の影響を低減する観点からは、乗降室が地上に設けられている場合に適用するのが望ましい。
また、昇降路の四隅に支柱としてマスト90が設置されている例について説明したが、2本のマストを昇降路の両側に設置しても良い。
【0047】
実施の形態では、機械式駐車場10はパレット32を使用して車両20を移動させる場合について説明したが、これに限られず、本実施の形態の技術的思想は乗降室で光学的なセンサによってはみ出し検知が行われる任意の機械式駐車場に適用できる。