(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年においては、シート装置のホールド性が車両の状況に応じて変動することが望まれている。
しかし、実測横加速度を制御に用いようとすると、その検出結果に敏感に反応してしまい、サイドサポートフレームが頻繁に動作してしまうおそれがあった。
そこで、本発明の課題は、実測横加速度に変わる検出情報から車両の状況に応じてシート装置のホールド性を変動可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、請求項1記載の発明は、
車両に搭載されるシート装置において、
シートクッションフレームと、
前記シートクッションフレームの後端部から起立した状態に配置されたシートバックフレームと、
前記車両の旋回方向を検出する旋回センサと、
前記車両の速度を検出する車速センサと、
前記旋回センサの検出結果及び前記車速センサの検出結果に基づいて、前記シートバックフレームを制御する制御部とを備え、
前記シートバックフレームは、
上下方向に沿うように前記シートバックフレームの両側部に配置された左右のサイドフレームと、
前記左右のサイドフレームに係合し、運転者の姿勢を調整するための調整機構とを備え、
前記制御部は、前記旋回センサの検出結果及び前記車速センサの検出結果から算出される算出横加速度が所定値以上になると、前記調整機構を制御して前記運転者の姿勢を調整することを特徴としている。
【0006】
さらに、請求項1記載の発明は、
前記調整機構は、
前記左右のサイドフレームの間に配置された背板と、
前記車両の進行方向に対して前記背板を揺動させる揺動機構とを備え、
前記制御部は、前記揺動機構を制御して前記背板を揺動させることで、前記運転者の姿勢を調整することを特徴としている。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のシート装置において、
前記旋回センサは、前記車両のステアリングの操舵角度を検出する操舵角センサであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、旋回センサの検出結果及び車速センサの検出結果から算出される算出横加速度が所定値以上になると調整機構が動作して運転者の姿勢が調整されるので、算出横加速度をモニタリングすることで車両の状況を把握しつつ、当該状況に応じてシート装置のホールド性を変動させることができる。
ここで、車両に対する実際の横加速度をリアルタイムに測定した実測横加速度であると操舵修正や路面スリップ等の影響に敏感なため、実測横加速度の検出結果に基づいて調整機構が制御される場合には、調整機構が頻繁に動作してしまい、運転者に負担をあたえることになる。一方、算出横加速度であると、上記した影響を抑制することができるために、調整機構が頻繁に動作することなく、運転者に対する負担も抑制することが可能である。
このように実測横加速度に変えて算出横加速度を用いたとしても、車両の状況に応じてシート装置のホールド性を変動させることができる。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、背板によって運転者をホールドするので、サイドサポートフレームを変動させて運転者をホールドする場合よりも肩に対する圧迫が小さくなり、旋回時における運転者に対するホールド性を維持したまま、ステアリング操作の操作性を高めることが可能となる。
【0010】
請求項3記載の発明によれば、旋回センサが、車両のステアリングの操舵角度を検出する操舵角センサであるので、ステアリング操作に連動して背板を変動させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0013】
図1はシート装置のフレーム構成を示す全体斜視図である。
図1に示すようにシート装置1は、シートクッションフレーム2と、シートクッションフレーム2の後端部に取り付けられたシートバックフレーム3と、シートクッションフレーム2をスライド自在に支持するシートレール4とを備えている。
【0014】
シートバックフレーム3は、図示しないシートパッドを支持するものである。このシートバックフレーム3は、フレーム本体5と、フレーム本体5の内側に配置された背板6と、フレーム本体5の左右の下端に固定された一対の連結部7と、車両の進行方向に対して背板6を揺動させる揺動機構8とを備えている。
【0015】
フレーム本体5は、上下方向に延在する左右一対のサイドフレーム51,52と、一対のサイドフレーム51,52の上端部間で延在する上部フレーム53と、一対のサイドフレーム51,52の下端部間で延在する下部フレーム54とを備えている。
サイドフレーム51,52は、互いに平行に上下方向に延在している。
サイドフレーム51,52の左右の下端部には、それぞれ連結部7が固定されていて、この連結部7が回動自在にシートクッションフレーム2に連結されている。
【0016】
上部フレーム53は、一対のサイドフレーム51,52のそれぞれに連続して形成されている。上部フレーム53には、図示しないヘッドレストを着脱自在に支持するためのヘッドレスト用支持部531が設けられている。
【0017】
背板6は、一対のサイドフレーム51,52の間に配置された正面視略矩形状の板材であり、図示しないシートパッドを介して運転者の背中を支持するものである。
【0018】
揺動機構8は、第一連結部81と、第一駆動源82と、第二連結部83と、第二駆動源84とを備えている。
図2は、第一連結部81及び第一駆動源82の概略構成を示す斜視図である。なお、第二連結部83及び第二駆動源84の具体的構成においては、第一連結部81及び第一駆動源82と同様であるので、対応する部分の符号の上二桁を「81*」から「83*」とすることでその説明は省略する。
【0019】
第一連結部81は、背板6の一側部から外側に向けて延出するワイヤ部811と、一対のサイドフレーム51,52のうち一方のサイドフレーム51に固定されたギア部812と、ギア部812の回転軸813を中心に回動し、前記ワイヤ部811を前後方向に揺動させるリンク部814とを備えている。
第一駆動源82は、ギア部812に接続されていて、当該ギア部812の回転軸813を回転させる。これにより、リンク部814が回動してワイヤ部811が前後方向に揺動して、背板6の一側部も同方向に揺動することになる。
この揺動機構8及び背板6が、本発明に係る運転者の姿勢を調整するための調整機構である。
【0020】
図3は、本実施形態のシート装置の主制御構成を示すブロック図である。
図3に示すように、シート装置1の制御部10には、車両のステアリングの操舵角度を検出する操舵角センサ11と、車両の速度を検出する車速センサ12と、第一駆動源82と、第二駆動源84とが電気的に接続されている。そして、制御部10は、操舵角センサ11の検出結果及び車速センサ12の検出結果に基づいて第一駆動源82及び第二駆動源84を制御するようになっている。
【0021】
以下、制御部10による背板6の姿勢制御について具体的に説明する。
車両100が速度Vで旋回しその際の操舵角度をφとすると、旋回半径Rは以下の式(1)で算出される。そして、算出横加速度Gcは以下の式(2)で算出される。ここで、Aはスタビリティファクタであり、車両固有の係数である。また、Lは車両100のホイールベースの長さである。
【0022】
R=(1+AV
2)/(L/φ)・・・(1)
Gc=V
2/R・・・(2)
【0023】
制御部10は、操舵角センサ11の検出結果と、車速センサの検出結果とを逐次式(1)、式(2)に当てはめて、旋回半径Rと算出横加速度Gcとをリアルタイムに求めている。操舵角度が正の場合は右旋回であり算出横加速度は左に作用する。他方、操舵角度が負の場合は左旋回であり算出横加速度は右に作用する。そして、操舵角度を大きくすると算出横加速度は大きくなり、さらに、車速が速くなると算出横加速度は大きくなる。この算出横加速度が所定値以上になると、制御部10は背板6の姿勢制御を実行する。
所定値としては、例えば右折時においては−0.2G以下とし、左折時としては+0.2G以上としている。算出横加速度が−0.2G以下あるいは0.2G以上であると、一般的に運転者が横加速度を負担に感じてしまうために、この値を閾値としている。
図4は、算出横加速度の閾値を−0.2G以上0.2G以下とした場合の、車速と操舵角度との関係を示すグラフである。車速が40kmで左操舵角度が69degの場合や、車速が30kmで右操舵角度が115degの場合などのように、操舵角センサ11の検出結果と、車速センサの検出結果とが
図4の網掛けされた領域に進入すると、制御部10は算出横加速度が閾値を超えたと判断して背板6の姿勢制御を実行する。
【0024】
そして、背板6の姿勢制御時の制御部10の制御について説明する。
図5は、背板6の姿勢を示す説明図である。なお、
図5の実線部は、背板6が揺動していない状態を示しており、この位置を基準位置とする。
閾値を超えた旋回が右折である場合には、制御部10は、背板6の両側部のうち、旋回方向の内側となる側部(進行方向に向かって右の側部)を基準位置から後方へと移動させて、旋回方向の外側となる側部(進行方向に向かって左側の側部)を基準位置から前方へと移動させるように、第一駆動源82及び第二駆動源84を制御する(
図5の細い二点鎖線参照)。
一方、閾値を超えた旋回が左折である場合には、制御部10は、背板6の両側部のうち、旋回方向の内側となる側部(進行方向に向かって左の側部)を基準位置から後方へと移動させて、旋回方向の外側となる側部(進行方向に向かって右側の側部)を基準位置から前方へと移動させるように、第一駆動源82及び第二駆動源84を制御する(
図5の太いに点鎖線参照)。
【0025】
次いで、本実施形態の作用について説明する。
図6は、直進していた車両100が左折した直後に右折し、その後直進していく経路を示した説明図である。
図7は、
図6の動作中の車速、操舵角度、算出横加速度と、背板6の状態とを示す説明図である。
まず、直進時においては制御部10は背板6が基準位置となるように第一駆動源82及び第二駆動源84を制御している。
そして、ステアリングが操作されて車両100は左折し始める。走行中、制御部10は常に操舵角センサ11の検出結果と、車速センサの検出結果とをモニタリングして、逐次算出横加速度を算出している。例えば、
図6及び
図7に示す(1)地点での車速が40kmで左操舵角度が69degとなり、算出横加速度が0.2Gを超えたとすると、この地点で制御部10は算出横加速度が閾値を超えたと判断して、背板6の両側部のうち、旋回方向の内側となる側部を基準位置から後方へと移動させて、旋回方向の外側となる側部を基準位置から前方へと移動させるように、第一駆動源82及び第二駆動源84を制御する(
図7(1)の背板状態参照)。
【0026】
その後、ステアリングが逆方向に操作されて車両100が右折する。
図6及び
図7に示す(2)地点での車速が30kmで右操舵角度が115degとなり、算出横加速度が−0.2Gを下回ったとすると、この地点で制御部10は算出横加速度が閾値を超えたと判断して、背板6の両側部のうち、旋回方向の内側となる側部を基準位置から後方へと移動させて、旋回方向の外側となる側部を基準位置から前方へと移動させるように、第一駆動源82及び第二駆動源84を制御する(
図7(2)の背板状態参照)。
【0027】
そして、ステアリングが操作されて車両100が直進すると、算出横加速度が閾値を下回るので、制御部10は背板6の両側部がそれぞれ基準位置となるように第一駆動源82及び第二駆動源84を制御する(
図7(3)の背板状態参照)。
【0028】
以上のように、本実施形態によれば、操舵角センサ11の検出結果及び車速センサ12の検出結果から算出される算出横加速度が所定値以上になると揺動機構8が動作して背板6が揺動する。
ここで、
図8は、
図7の場合と同経路を車両1が走行した場合、当該車両1に対する実際の横加速度をリアルタイムに測定した実測横加速度の時間変化を示すグラフである。実測横加速度は、操舵修正や路面スリップ等の影響に敏感なため、点線の円弧で囲んだ部分で閾値(−0.2G)を上回ってしまう。この実測横加速度の検出結果に基づいて揺動機構8が制御される場合には、背板6が頻繁に動作してしまい、運転者に負担をあたえることになる。一方、
図7に示すように算出横加速度であると、上記した影響を抑制することができるために、揺動機構8が頻繁に動作することなく、運転者に対する負担も抑制することが可能である。このように実測横加速度に変えて算出横加速度を用いたとしても車両の状況に応じてシート装置のホールド性を変動させることができる。
【0029】
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0030】
例えば、上記実施形態では、背板6の両側部のそれぞれを前後方向に揺動させる場合を例示して説明したが、背板6の両側部のうち、旋回方向の内側となる側部が、旋回方向の外側となる側部よりも後方に位置するように、制御部10が第一駆動源82及び第二駆動源84の少なくとも一方を制御するようにしてもよい。この場合においても、運転者の姿勢を旋回方向に対して内側へと傾かせることができ、旋回時における運転者に対するホールド性を維持したまま、ステアリング操作の操作性を高めることが可能となる。
【0031】
また、上記実施形態では、運転者の姿勢を調整するための調整機構が、背板6と揺動機構8とを備える場合を例示して説明したが、調整機構は運転者の姿勢を調整するものであればいかなるものでもよい。例えば、一対のサイドフレームのそれぞれに設けられたサイドサポートフレームを動作させることで運転者の姿勢を調整する調整機構などが挙げられる。