(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1の実施の形態>
〔射撃訓練装置1の制御構成〕
以下で、本発明の第1の実施の形態に係る射撃訓練装置1について、図面を参照して詳しく説明する。
射撃訓練装置1は、電波の送受信を用いた射撃シミュレーションにより、射撃訓練を行うための装置である。
図1を参照して説明すると、射撃訓練装置1は、入出力部10と、アプリケーション部20と、記憶部30と、火器通信方式判定部40と、制御部50と、デジタル信号処理部60と、コンバータ部70と、RF部80と、アンテナ部85と、バス100とを備えている。
アンテナ部85以外の各部は、バス100を介して接続されている。また、アンテナ部85は、RF部80に接続されている。
【0011】
入出力部10は、他の各種周辺機器と接続するI/O(Input/Output)インターフェイスと制御用のマイコン(Micro Controller)等を含む部位である。また、入出力部10は、GPU(Graphics Processor)やサウンドプロセッサ等も含む。
入出力部10に接続する周辺機器としては、例えば、射撃シミュレーションの状態を表す表示部、情報入力部、音声入出力部、外部記録媒体、位置報知部、測定機器、電源、電池等を用いる。表示部としては、火器のトリガー(発射の指示)やスコープの情報、文字や画像等を出力する、LED(Light Emitting Diode)、有機EL(Organic Electro Luminescence)ディスプレイパネル、液晶ディスプレイパネル等を用いる。また、情報入力部としては、射撃訓練装置1のユーザー(使用者、訓練者)からの指示の入力を行う、スイッチ、ボタン、キーボード、タッチパッド等のポインティングデバイス、電子マネーや会員証等の情報が記憶されたRF(Radio Frequency)−ID(Identification)の入出力インターフェイス等を用いる。入出力部10に接続するスイッチとしては、トリガーのスイッチ、通信方式切り換えスイッチ、通信スイッチ、電源スイッチ等を含む。また、音声入出力部としては、音声入力用のマイク、音声出力用のスピーカ、アンプ等を用いることができ、射撃訓練装置1同士、他の機器、射撃訓練の管理部(図示せず)等との間で音声による無線通信も行うことができる。また、入出力部10は、位置報知部として、GPS(Global Positioning System)やジャイロセンサや加速度センサ等を、専用インターフェイスや汎用インターフェイス等にて接続し、位置情報を入力することができる。位置報知部を入出力部10に接続することで、射撃訓練装置1の位置(座標)や向きや砲塔の仰角等の位置情報を送信することが可能である。また、測定機器としては、電波出力や内部状態のチェックを行うような検査機器等を接続できる。また、電源、電池としては、電源部90の補助的に用いる予備バッテリー等を直接接続できる。
また、入出力部10は、OS(Operating System)等におけるユーザーインターフェイスに関する表示や音声出力等を行うこともできる。この際、入出力部10は、射撃シミュレーションの各種火器に応じた周波数指示や変調方式や電波型式等(以下、通信方式という。)の変更を行うための画面を表示し、音声出力する。そして、入出力部10は、この画面でのユーザーによる通信方式の選択を検知する。また、入出力部10は、情報入力部から、火器のトリガーのスイッチの押下等をトリガー指示(火器発射情報)として検知する。さらに、入出力部10は、情報の送受信を行う通信の指示も入力することができる。
また、入出力部10は、外部データを入出力するための、USB(Universal Serial Bus)、LAN(Local Area Network)、HDMI(High−Definition Multimedia Interface)、専用インターフェイス等の接続部位も備える。これにより、入出力部10は、従来機材2(
図5)のように、従来のレーザを送受信する射撃訓練システムの装置を接続することもできる。また、入出力部10は、従来機材2からのトリガー情報についても送受信することができる。さらに、入出力部10に、銃や野砲等を模した火器機材(図示せず)を接続し、この火器器材のトリガーやスコープを接続することもできる。つまり、接続された火器機材に対して、トリガー情報や残弾数の情報等を入出力することもできる。
【0012】
アプリケーション部20は、受信した情報を人間が解読可能な文字情報や音声情報等へ変換し、入出力部10に出力する部位である。
アプリケーション部20は、入出力部10が検知した通信方式の指示を、制御部50に指示する。また、この指示について、記憶部30への記録や読み出しを行う。
さらに、アプリケーション部20は、入出力部10から、制御部50、記憶部30、及びデジタル信号処理部60へのインターフェイスの変換を行う。加えて、アプリケーション部20は、逆に、制御部50、記憶部30、デジタル信号処理部60から、入出力部10へのインターフェイス変換も行う。
また、アプリケーション部20は、入出力部10から入力された、火器のトリガー情報、スコープの情報、位置情報等の表示を行う。また、アプリケーション部20は、文字情報や音声情報や図形情報等の情報を、相手の射撃訓練装置1に送信するためのユーザーインターフェイスの変換等も行う。
また、アプリケーション部20は、入出力部10に接続されたUSBメモリやCD−ROM、又はRF部80により受信された情報を用いて、記憶部30に記憶された各プログラムやデータの書き換えを行うこともできる。この書き換えにおいて、新しい通信方式のインストールをすることもできる。
【0013】
記憶部30(記憶手段)は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ等の記憶媒体を用いた記憶部位である。
記憶部30は、各部の制御用プログラム、初期化プログラム、通信方式に対応したソフトウェア、及び各種データを記憶している。このうち、各種データとしては、射撃シミュレーションで使用する例えば残段数、位置、損害等の訓練情報、射撃シミュレーション以外の情報通信における通信方式の設定情報、各種デバイスとの接続・設定情報等を記憶、保存している。これらの情報は、設定を行う際に制御部50に送信することができる。この接続・設定情報としては、従来機材2(
図5)のデータやソフトウェアも含ませることができる。
特に、記憶部30は、後述する
図3に示すような、様々な火器の設定に応じた情報である火器情報テーブルを記憶している。この火器情報テーブルは、火器種類の通信方式や通常の通信モードにおける設定情報を記憶している。この火器情報テーブルには、火器の種類及び特性に係る送信情報も記憶している。火器の発射時に、この送信情報が送信される。
また、記憶部30は、射撃訓練に係る各種情報を記憶している。この情報としては、射撃訓練装置1の各火器の種類、ID、残弾の数、防御の設定等を記憶する。
また、記憶部30は、入出力部10にデータ書き換え端末(図示せず)を接続しデータの書き換え情報の受信すると、各プログラムやデータの書き換えが可能である。また、CD−ROM等の光学媒体やUSBメモリ等から、各プログラムやデータを書き換えることもできる。
【0014】
火器通信方式判定部40は、入出力部10により入力された情報に基づいて火器の種類に応じた通信方式を判定する部位である。この通信方式としては、アンテナの指向性や偏波、RF部におけるレベル、変復調等を変更可能である。
火器通信方式判定部40は、この通信方式の判定に際しては、入出力部10から入力された通信に関する情報をアプリケーション部20より受け取り、通信の方式を判定する。
【0015】
制御部50(制御手段)は、各部を制御し、通信方式のソフトウェアの変更を行うGPP(General Purpose Processor)、CPU(Central Processing Unit)、GPU、DSP等である。
制御部50は、各部を制御し、デジタル信号処理部60とRF部80とアンテナ部85とに係るソフトウェアを、火器通信方式判定部40により判定された火器の通信方式に対応したソフトウェアへ変更する。つまり、制御部50によりソフトウェアを変更することにより、様々な模擬すべき火器種類に応じた通信方式に対応することが可能である。
すなわち、制御部50は、記憶部30に記憶された火器の設定に応じた情報を読みだし、アプリケーション部20とデジタル信号処理部60とRF部80とアンテナ部85等の設定を変更することができる。
また、制御部50は、制御部50以外の部位の電源制御を行う。たとえば、制御部50は、入出力部10の電源スイッチや他の機器(図示せず)からの電源オフの信号を受信すると、制御部50以外のモジュールの電源をオフにするように、各部位に指示する。その後、制御部50は、オフの準備完了の情報を各部位から受け、各部位の電源をオフにするように電源部90を制御する。制御部50自体は、低消費電流のCMOS回路やLSI回路等によって待機モードとなる。逆に、制御部50は、電源オンの信号を受け取ると、各部位の電源をオンにするよう、電源部90に指示する。
【0016】
デジタル信号処理部60は、無線変調のデジタル信号処理を行うDSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application−Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field−programmable Gate Array)等である。
デジタル信号処理部60は、制御部50からの通信方式の指示を受け、アプリケーション部20から受け取った情報を、指定された通信方式に係る変復調方式に変復調させる機能を備えている。
この際、デジタル信号処理部60は、ソフトウェアの変更により、様々な変復調方式を実現することが可能である。このソフトウェアの変更時には、DSPの場合は信号処理プログラムがフラッシュメモリやRAMに書き込まれ、FPGAの場合は回路情報がSRAM(Static RAM)やフラッシュメモリ等に書き込まれる。
【0017】
コンバータ部70は、アナログ信号をデジタル信号へ変換するA/D(Analog to Digital)コンバータ及びデジタル信号をアナログ信号へ変換するD/A(Digital to Analog)コンバータを備える部位である。
コンバータ部70は、送受信される無線データのデジタル信号とアナログの電波信号との間で、それぞれの変換の処理を行う。すなわち、コンバータ部70は、デジタル信号処理部60とアプリケーション部20との間で信号変換をするために用いる。
【0018】
RF部80(送信手段)は、RFモジュール等の電波送受信を行う部位である。RF部80は、コンバータ部70により変換されたアナログ信号の周波数変換や増幅等を行う。また、RF部80は、アンテナ切換回路83を備える。
具体的には、RF部80は、火器の種類に応じた通信方式毎に設定された周波数や出力態様により無線通信を行う。このため、RF部80は、RAMを備えており、周波数や出力レベル等を変更することができる。
このような周波数や出力態様は、制御部50により設定される。たとえば、火器に応じて、周波数や出力レベルやアンテナ角度を変更することで、情報の伝達範囲を限定したり、可変としたりすることが可能である。また受信に関しても所定の周波数や範囲に応じて、受信モードを設定することができる。また、RF部80で用いる電波としては、指向性の制御に優れたミリ波等を用いることができる。
また、RF部80は、同調回路と周波数変換回路を備えている。同調回路は、受信及び送信時に、制御部50からの周波数の指定信号を受け、その周波数に応じた整合を行うことで、帯域ろ波を行う。また、周波数変換回路は、同調回路からデジタル信号処理部60へ信号を送信する。周波数変換回路は、受信時には、同調回路からの受信周波数を、デジタル信号処理部60への中間周波数にする周波数変換を行う。また、周波数変換回路は、送信時には、デジタル信号処理部からの中間周波数を変換し、同調回路への送信周波数に波数変換を行う。
【0019】
アンテナ切換回路83(アンテナ変更手段)は、送受信時における、各通信方式における設定周波数等の特性に対応したアンテナへの切り換えを行う回路である。
アンテナ切換回路83は、どのアンテナを選択したのかを記憶するRAM等と、マイコン(Micro controller)等の制御部を備える。また、アンテナ部85は、複数の特性を有するアンテナを、火器機材の種類に応じた指向性や偏波に変更できる。
アンテナ切換回路83は、下記で説明するアンテナ部85がアダプティブアレイアンテナの場合、アダプティブアレイの動作を制御できる。
【0020】
アンテナ部85(送信手段、受信手段)は、RF部80により処理された無線信号を送受信するアンテナの部位である。また、アンテナ部85は、他の射撃訓練装置1や従来機材2(
図5)や目標3からの通信を受信することができる。
アンテナ部85は、例えば、複数の特性を有するアンテナであり、このアンテナの特性を変更することができる。この特性の変更としては、アンテナ部85は、アンテナ切換回路83により、少なくとも指向性を動的に変更することができる。また、アンテナ部85は、模擬すべき火器の放射角を示す情報又は当該放射角に応じた電波を送信できるように、特性を変更することもできる。
これにより、直線的に攻撃する火器と、散弾的に広範囲を攻撃する火器の特性を模擬することができる。
【0021】
以下では、アンテナ部85が、アダプティブアレイアンテナである例について説明する。このアダプティブアレーアンテナとしては、平面アンテナ(マイクロストリップ、パッチアンテナ)及びレンズアンテナを用いることができる。
これらのアダプディブアレイアンテナは、立体アンテナと違い製造が容易であり、コストが低く、実装の面積を少なくすることができる。また、平面アンテナは、アンテナの立体構造による障害を防ぐことができる。さらに、アダプディブアレイアンテナは、アレー化することにより、指向性を高めることができる。
加えて、アダプディブアレイアンテナは、用いる通信方式に対応する周波数、利得、帯域等の高周波特性により、配置及び各アンテナの形状について、最適なものを選択することができる。
【0022】
なお、送受信する情報を無線通信する際に暗号化が必要である場合には、例えば、アプリケーション部20、デジタル信号処理部60、又はRF部80のいずれか又は複数の部位で暗号化を行うことができる。
また、RF部80とアンテナ部85とは複数備えることができ、複数の通信方式による通信に対応することができる。
また、アンテナ部85は、アダプティブアレイアンテナ以外の複数の特性を有するアンテナを用いて実現することもできる。この際、アンテナ部85は、必ずしも複数のアンテナを用いずに、例えば、同一のアンテナのコイルの巻き方等を変更することで、複数の特性に切り換えられるように構成してもよい。
【0023】
電源部90は、各構成部の電源供給を行うスイッチング電源とリレー素子等を備えた部位である。
電源部90の制御は、制御部50から行われる。この制御として、電源部90は、制御部50からの信号により、部位毎に電源の供給と停止を行うことができる。
【0024】
バス100は、各部へのデータを送受信する信号線(バス)である。このバスとしては、制御部50と記憶部30の間で接続するのに用いるメモリコントローラ用の高速のバスと、各部と周辺機器との間で接続するのに用いる比較的低速のバスとを、それぞれ用いるようにしてもよい。
また、バス100にて、電源部90や入出力部に接続された電源、バッテリー等からの電力を直接供給するように構成することができる。
【0025】
なお、アプリケーション部20と、デジタル信号処理部60と、RF部80と、火器通信方式判定部40とは、一部又は全ての機能について、コンピュータのようなハードウェア資源がソフトウェアを実行することで構成することもできる。すなわち、記憶部30に記憶されている制御用プログラムを制御部50が実行し、各部位が対応するソフトウェアを実行することで実現することができる。
逆に、各部をASIC等のハードウェアを用いて構成してもよい。この場合でも、必要に応じて、模擬すべき火器に対応する各通信方式について、それぞれハードウェアを用意しておき、これらのハードウェアを切り換えて用いるように構成できる。
【0026】
〔本発明の第1の実施の形態に係る射撃訓練処理〕
次に、
図2〜
図5を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る射撃訓練装置の制御方法の具体的な処理について説明する。
本実施形態の射撃訓練装置1においては、様々な火器種類の通信方式に対応した複数のプログラム(ソフトウェア)が、記憶部30のRAMやハードディスク等に記憶されている。
制御部50は、火器の種別や、通信に使用するか否かに応じて、通信方式を変更し、指向性、利得、帯域に対応するアンテナの特性等を制御する。
この通信方式の変更の際、制御部50が記憶部30から1つの通信方式に対応したソフトウェア(プログラム)を読みだし、アプリケーション部20、デジタル信号処理部60、RF部80等を書き換えるよう制御する。すると、各部位のDSP等が、書き換えられた通信方式で電波の送受信を行う。これにより、射撃シミュレーションと、データ通信や音声通信とを射撃訓練装置1で行い、効率的な射撃訓練を行うことができる。
以下で、
図2のフローチャートを参照して、本実施形態の射撃訓練処理について詳しく説明する。
【0027】
まず、ステップS100において、制御部50は、電源供給指示処理を行う。
この処理においては、まず、電源オンの信号を入出力部10から取得した後、制御部50が記憶部30に記憶された初期化プログラムを実行する。
この初期化プログラムの実行時に、制御部50は、電源部90に各部への電源供給の指示を行い、その後、起動した各部をチェックする。
【0028】
次に、ステップS101において、制御部50は、待機状態処理を行う。
具体的には、制御部50は、アプリケーション部20に待機状態の表示を行うように指示して、待機状態になる。
これにより、アプリケーション部20は、使用可能な通信方式や火器等を表示部に表示する。
また、入出力部10は、ユーザーからの指示、他の機器からの情報を検知するまで待つ。入出力部10は、ユーザーからの指示があった場合、制御部50に報知する。
【0029】
次に、ステップS102において、制御部50は、入出力部10からのユーザーの指示を受信すると、射撃シミュレーションか情報通信を行うのか判定する。
具体的には、入出力部10は、入力した信号が、射撃訓練の射撃シミュレーションに関連する指示の場合、Yesと判断する。逆に、通信に関連する指示の場合、Noと判断する。
Yesの場合、制御部50は、処理をステップS103に進める。
Noの場合、制御部50は、処理をステップS108に進める。
【0030】
ステップS103において、ユーザーが射撃シミュレーションに関連する指示を行ったことを検知した場合、制御部50は、火器設定処理を行う。
具体的には、まず、入出力部10は、ユーザーが情報入力部から指示を行ったことを検知した場合、この指示情報を制御部50に送信する。
この際、制御部50は、アプリケーション部20により、火器のトリガー情報、スコープの情報、位置情報、文字情報、音声情報、図形情報等の変更された情報についても取得する。
制御部50は、入出力部10から、指示情報として、ユーザーが選択した模擬すべき火器の情報を取得する。また、制御部50は、入出力部10からの指示情報を記憶部30に記憶し、又は入出力部10に出力する。
【0031】
また、制御部50は、火器通信方式判定部40を用いて、入出力部10から指定された、ユーザーが選択した模擬すべき火器に対応する通信方式を選択し、各部を設定する。また、制御部50は、アプリケーション部20を用いて、入出力部10のユーザーインターフェイスにより、選択された火器や残弾等を表示部に表示する。
さらに、制御部50は、選択された通信方式について、コンバータ部70、デジタル信号処理部60、RF部80、及びアンテナ部85のソフトウェアを切り換えたり、RAMの内容を書き換える等の処理を行う。この切り換えや書き換えについては、制御部50は、各部について、受信/送信の別、アンテナ切り換え、同調、周波数変換、デジタル信号処理等に係る情報を送信して指示する。この際、制御部50は、受信状態に応じて、周波数指示、変調方式、電波型式、アンテナの指向性や偏波、送信電力等についても変更するよう指示する。
より具体的に説明すると、制御部50は、模擬すべき火器の飛距離や特性によって、例えば、通信方式を変更し、アンテナ部85のアンテナの特性及び/又は送信出力を変化させその火力に合わせる。この際、アンテナ部85のアダプティブアレイアンテナのアンテナの使用数や出力等を変更することで、複数の特性を変更し、情報通信の状態を維持することができる。
アンテナの特性の変更及び送信出力の変化により、到達する電波の有効範囲や特性を変化させることができる。これによって、直線的に攻撃する火器や、散弾等の広範囲に攻撃する火器の模擬が可能である。またこれらの変更により、射撃シミュレーション時の火器の発射の送受信だけでなく、音声やデータ等の情報通信を、射撃訓練装置1同士や他の機器との間で実現することができる。さらに、レーダとして使用できる。
また、周波数や偏波を変更することで、模擬すべき火器と、データ通信とを区別でき、混線を防ぎ、複数の機器が同時に通信可能とすることができる。
【0032】
図3を参照して、制御部50が、火器通信方式判定部40を用いて、記憶部30から読み出された火器情報テーブルにより、各部の設定を変更する際の処理内容についてより詳しく説明する。
記憶部30の火器情報テーブルには、各種火器の射撃シミュレーションや情報通信のための通信方式として、送受信の周波数、変調方式、電波型式等が記憶されている。
このため、制御部50は、例えば、火器の種類が「A」のライフル銃等の直線モードで使用する火器であった場合、火器情報テーブルの「No.1」にあたる設定を読みだし、各部を変更するよう制御する。具体的には、制御部50は、アンテナ切換回路83に対し、アンテナ部85を「X個」に切り換えるよう指示する。この上で、制御部50は、コンバータ部70、デジタル信号処理部60、及びRF部80に対して、受信/送信を「送信」、周波数を「L(Hz)」、出力レベルは「1W」、変調方式を「R」とするように、ソフトウェアを書き換える等により制御する。
また、散弾銃に相当する散弾モードの場合、制御部50は、火器情報テーブルの「No.2」にあたる設定を読み出し、アンテナを「Y個」、受信/送信を「送信」、周波数を「M(Hz)」、出力レベルを「1W」、変調方式を「S」と変更する。
また、制御部50は、より射程距離の長い銃の場合、例えば直線モードは「No.3」、散弾モードは「No.4」にあたる設定を読み出して変更する。これらの場合は、電波の出力が大きくなる。
さらに、ユーザーの持つ射撃訓練装置1が、目標3(
図5)と同様の標的となるように用いることも可能である。この場合は、制御部50は、受信モードとなる火器情報テーブルの「No.5」の設定を読み出し、広範囲からのトリガー情報を受信するよう、各設定を切り換える。
また、他の射撃訓練装置1、従来機材2(
図5)、目標3、及び他の機器(図示せず)から火器の変更を指示された場合にも、制御部50は、記憶部30から対応する情報を読み出して変更する。また、制御部50は、当該情報を用いて、各部のソフトウェアを変更するよう指示する。
なお、制御部50は、射撃訓練装置1を電波を用いたレーダとして用いる場合、機器間の距離を測定するような通信方式に変更することもできる。
また、火器の種類同じ、例えば「A」であっても、火器の放射角が異なるアンテナを選択、変更することができるよう、火器情報テーブルに別々のデータを記憶することもできる。これにより、APFSDS(Armor Piercing Fin Stabilized Discarding Sabot)弾頭のように、放射角との関係で被害状況が大きく変化する弾頭についても射撃シミュレーションできる。
【0033】
ここで、
図4を参照して、アンテナ部85の各アンテナの使用例を示す。このように、使用する火器の飛距離によってアンテナの指向性及び送信出力を変化させ、火力に合わせることができる。また、通信やレーダにも用いることができる。
図4(a)は、直線モードで使用した例である。このように、アンテナ部85のアンテナ数やアンテナの特性を選択することで、電波を直線的にあまり広がらないように送信することができる。この場合でも、出力を可変として到達距離等を調整できる。また、向きの異なるアンテナを選択することで、送信の向きを変化させられる。
図4(b)は、アンテナの指向性を変化させ、範囲を広げた使用例を示す。アダプティブアレイの場合には、送信するアンテナの素子の位置や数を変化させることで、電波の干渉等により、電波のビームの方向を変化させられる。
このように、アダプティブアレーアンテナのビーム及びアンプの送信出力を変化させることにより、火器の有効範囲を変化させることができる。また、散弾等の広範囲に攻撃する火器の模擬が可能である。また、これらの変更は、射撃シミュレーション時に火器のトリガー情報の送受信で用いるだけでなく、音声、データ等の情報通信においても有効にすることができる。
また、
図4(c)は、移動している標的に対して、電波のビームを変化させ、移動物を追随した場合の例である。このように、アンテナのビームを可変することによって、移動物である目標3に追随し、通信状態を維持することができる。このような追随は、レーダとして用いる場合にも有効である。
【0034】
ステップS104において、制御部50は、入出力部10から、トリガー情報を受信したか否かについて判定する。つまり、制御部50は、他の射撃訓練装置1や他の機器からの火器のトリガー情報を受信したか否かについて判定する。この判定については、デジタル信号処理部60から受信した情報が、トリガー情報であるか否かについて、制御部50が判定する。また、この際に、従来機材2(
図4)からのトリガー情報を受信することもできる。
Yes、すなわちトリガー情報を受信した場合、制御部50は、処理をステップS105に進める。
No、すなわちトリガー情報を受信しなかった場合、制御部50は、処理をステップS106に進める。
【0035】
ステップS105において、トリガー情報を受信した場合、制御部50は、被害表示処理を行う。
具体的には、制御部50は、まず、被害状況の値を算出する。この算出は、受信したトリガー情報の電波の受信レベル、位置情報やレーダにより求めた受信側と送信側との距離と方向、受信側と送信側に設定されている火器及び防御の設定等を基にして算出する。たとえば、直線モードの場合、当たった向きが正面方向の場合は被害を少なくし、横向きの場合には高めるといった算出を行うことができる。また、散弾モードの場合は、散弾の散布の中心からの距離等により、被害状況を変化させることができる。
制御部50は、被害状況の値に従って、「小破〜大破」「照準故障」「戦闘不能」といった状態を、入出力部10に接続された表示部に表示する。また、音声入出力部のスピーカ等の出力デバイスに爆発音や被害状況の音声等を出力することもできる。
さらに、制御部50は、被害状況の値について、他の射撃訓練装置1、他の機器、射撃訓練の管理部等に送信することもできる。この際に通信方式や特性の異なるアンテナに特性を切り換えて送信することも可能である。
【0036】
ステップS106において、制御部50は、入出力部10からトリガー指示を検知したか、又は従来機材2(
図4)からトリガー情報を送信したかについて判定する。
Yesの場合、制御部50は、処理をステップS107に進める。
Noの場合、制御部50は、射撃訓練処理を終了し、待機状態に戻す。
【0037】
ステップS107において、トリガー指示を検知した又はトリガー情報を送信した場合、制御部50は、トリガー処理を行う。
具体的には、制御部50は、トリガー指示やトリガー情報に、模擬すべき火器の放射角が含まれていた場合には、当該放射角に従ったアンテナに切り換えるように、アンテナ切換回路83に指示する。この上で、制御部50は、トリガー情報を送信するように各部に指示する。このトリガー情報としては、射撃訓練装置1にて使用している火器の種類やIDやスコープの情報、位置情報等を用いることができる。このトリガー情報は、アプリケーション部20により設定された情報についても用いることができる。
デジタル信号処理部60とコンバータ部70とは、トリガー情報を、特定の通信方式の信号へ変換する。
この上で、RF部80は、アンテナ部85の切り換えられたアンテナから、設定された周波数、変調方式、出力レベルにてトリガー情報を出力する。
また、具体的には、制御部50は、記憶部30の残弾の数を減少させ、表示部に残弾表示等を行う。
さらに、その後、制御部50は、トリガーの受信についての情報を、他の機器から受信して、この結果を表示するようにしてもよい。
その後、制御部50は、射撃訓練処理を終了し、待機状態に戻す。
【0038】
ステップS108において、射撃シミュレーションではなく情報通信を行う場合、制御部50は、通信方式設定処理を行う。
具体的には、制御部50は、まず、ユーザーの通信方式設定等の指示を、アプリケーション部20を介して受信する。
その後、制御部50は、上述の火器設定処理と同様に各部について、通信方式を設定するように指示する。
これにより、デジタル信号処理部60、コンバータ部70、RF部80は、情報通信するために必要な変調処理等を行う。制御部50は、アンテナ切換回路83に、選択された通信方式に対応する特性を有するアンテナ部85のアンテナに特性を切り換えて送受信するよう指示する。
【0039】
次に、ステップS109において、制御部50は、送受信処理を行う。
具体的には、制御部50は、例えば、電波として、ミリ波を用いた通信方式による情報通信を行うことができる。この情報通信としては、データ通信、音声通信等の通信を行うことができる。
データ通信としては、記憶部30に記憶された各種データやプログラム等を送信したり書き換えたりすることができる。この各種データとしては、地図や訓練の指示書や音声指令等のデータ等も含む。
また音声通信としては、入出力部10に接続された音声入出力部のマイクやスピーカ等を用いて、訓練の指示や報告等を行うことができる。
以上により、制御部50は、射撃訓練処理を終了して、待機状態に戻す。その後、制御部50は、入出力部10のユーザーからの指示を検知して、また射撃シミュレーションや情報通信を行う。
【0040】
ここで、
図5を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る射撃訓練システムXの構成例について説明する。
この射撃訓練システムXは、例えば、射撃訓練装置1、従来機材2、目標3、及び射撃訓練の管理部の無線装置(図示せず)を含んで構成することができる。
射撃訓練の際に、射撃訓練システムXは、射撃訓練装置1と他の機器とが射撃シミュレーションや情報通信を行う。
まず、射撃訓練装置1は、電波によりトリガー情報を送受信することで射撃シミュレーションを行う。ここで、射撃訓練装置1は、制御部50にて通信方式を設定することにより、通信の可能エリアを模擬すべき火器の特性に合わせて変化させることができる。これにより射撃による火器の種類による散弾の幅、角度等も、火器に応じて調節可能である。この調整は、アンテナ部85の複数の特性を有するアンテナのうち、電波の指向性を特性を切り換えることで変更できる。さらに、出力レベルを調整することにより、実際の火力の飛距離を設定でき、より実践に近い火器のシミュレーションが行える。
また、射撃訓練装置1は、射撃シミュレーションだけではなく、データ通信や音声通信を行うことができる。データ通信においては、無線LAN等で用いられているアドホック通信機能を備えることができる。これにより、射撃訓練装置1を複数台用意し、基地局を有することなく、人員間や車両間の通信ネットワークを構成することが可能となる。
また、射撃訓練装置1は、従来機材2や外部機器のGPS等を入出力部10に接続することもできる。従来機材2は、従来の射撃シミュレーション機材である、レーザダイオードによる射撃送信装置や受信装置等である。これにより、従来機材2を用いて、射撃シミュレーションを行うことが可能である。このような構成の場合、記憶部30に記憶された従来機材2のデータやソフトウェアを制御部50により実行させ、他の機器との間で統合させて射撃シミュレーションを行うこともできる。
また、射撃訓練装置1の記憶部30には、新規の火器のデータやソフトウェアを追加することができる。これにより、新規の火器の性能で、射撃シミュレーションを行うことが可能になる。また、記憶部30に電波の通信方式をインストールすることによって、通信方式を追加、変更可能である。
また、射撃訓練装置1は、電波を送受信するため、記憶部30の設定やソフトウェア等を用いて、例えば、ミリ波等のレーダとしても活用可能である。このレーダは、例えば、所定範囲内にいる目標3を検知できる。すなわち、目標3は、他の射撃訓練装置1、従来機材2、障害物、攻撃目標となる車両や人員等の標的等である。このレーダの機能により、所定範囲内において、検知された目標3との間の距離、速度、方向等が測定可能である。
【0041】
以上のように構成することで、以下のような効果を得ることができる。
まず、従来の光学レーザを用いた射撃シミュレーションシステムにおいては、レーザダイオードの回路を用いていた。このようなレーザでは送受信の範囲が限定されるため、広範囲で稼働させるためにはレーザを物理的に可動とし、レーザ範囲を広げる必要があった。さらに、従来の光学レーザは、出力を可変するには、光軸、レーザパターン等を光学的に調節する必要があり、手間がかかっていた。
これに対して、本発明の第1の実施の形態に係る射撃訓練装置1は、電波を使用した無線装置である。このため、従来の光学レーザと異なり光学系の調整がいらないため、効率的に出力や範囲を可変することができ、評価調整における工数を削減できる。
また、本実施形態の射撃訓練装置1は、有効範囲を送信出力で容易に調整でき、様々な火力の機器の模擬が可能である。
また、本実施形態の射撃訓練装置1は、電波の出力、アンテナの指向性、偏波を調節することによって、幅、距離、威力等の火力が異なる火器のシミュレーションをするよう、容易に調整できる。そのため、火力の異なる機材を設計、評価する手間を大幅に削減できる。また、特性の異なる火器を用いる場合でソフトウェアだけで対応できない場合でも、アンテナ部85を変更するだけで容易に対応できる。
また、本実施形態の射撃訓練装置1は、アンテナ部85の指向性等を調節することによって、火力の角度や方向等も調整できる。このため、送信機自体を移動させる必要がなくなるため、設備費用を抑えることができる。
【0042】
また、従来の射撃訓練システムに係る光学レーザでは、送信機と受信機が機材が別になり、送受信ができない。このため、装備の場所を二つ用意するため、広いスペースを確保する必要があった。
これに対して、本発明の第1の実施の形態に係る射撃訓練装置1は、電波の送受信により射撃シミュレーションを行うため、送信機と受信機を別に用意する必要がなくなる。
また、従来の射撃シミュレーションでは、射撃における不安定な状況下で火器発射情報を確実に受信するため、光学レーザの送受信の容量(ビットレート)を大きくすることはできなかった。
これに対して、本発明の第1の実施の形態に係る射撃訓練装置1は、送受信の安定性が高い電波を用いるため、送受信の容量を大きくすることができる。つまり、容量が多いデータを送受信することができ、使用用途を広げることができる。
特に、本発明の第1の実施の形態に係る射撃訓練装置1は、ソフトウェアを変更し、複数の特性を有するアンテナを変更して使用することができる。このため、射撃シミュレーションだけではなく、通信も行うことができる。よって、射撃訓練に利用する他に、音声通信やデータ通信により人員間でのデータネットワークを構築することが可能となる。この際に、高速大容量通信を、人員間で構築可能である。よって、映像、音声等を含む各種データを、人員間で共有が可能であり、訓練を効率化できる。
また、本実施形態の射撃訓練装置1は、目標範囲内にいる車両や人員等の標的に対してミリ波(無線)を送信する際に、アンテナ部85のアンテナを切り換える等により、アンテナの指向性及び偏波を変化させながらミリ波信号を送信することができる。これにより、移動物、例えば高速で移動する車両に対しても通信状態を維持することが可能である。
【0043】
また、本発明の第1の実施の形態に係る射撃訓練装置1は、電波送受信をレーダとして用いることにより、レーダで検知された物体の距離や速度、方向等が測定可能であり、より射撃シミュレーションにおける精度を向上することが可能である。
目標の距離や方向等を検知し、送信する火力に反映させることができる。このように、レーダとしての機能を有することにより、
また、本実施形態の射撃訓練装置1は、従来機材との接続が可能である。これにより、従来機材から本装置に容易に移行することができる。よって、効率よくシミュレーション環境を構築することが可能でありコストを低減できる。
【0044】
また、本発明の第1の実施の形態に係る射撃訓練装置1は、前記制御部は、前記電波の出力を変更して、前記模擬すべき火器の射撃の到達距離を変更することを特徴とする。
また、本発明の第1の実施の形態に係る射撃訓練装置1は、前記複数の特性を有するアンテナは、アダプティブアレイアンテナであることを特徴とする。
また、本発明の第1の実施の形態に係る射撃訓練装置1は、電波としてミリ波を用いることを特徴とする。
また、本発明の第1の実施の形態に係る射撃訓練装置1は、ミリ波を用いた送受信による射撃訓練システムにおいて、火器送信部及び受信部にミリ波回路を用いることを特徴とする。これにより、従来のレーザダイオードで不可能な特性を実現する。
また、本発明の第1の実施の形態に係る射撃訓練装置1は、ミリ波帯におけるアダプティブアレーアンテナを用い、アンテナの指向性、偏波、利得を調整することを特徴とする。これにより、射撃シミュレーションにおける火器の威力、範囲等の調整を容易にすることができる。
また、本発明の第1の実施の形態に係る射撃訓練装置1は、射撃シミュレーション以外の場合には、ミリ波における情報通信を行い、ネットワークの構築を行うことを特徴とする。このため、ミリ波の特徴である、高速大容量のデータ通信、音声通信等の通信を行うことができる。
また、本発明の第1の実施の形態に係る射撃訓練装置1は、レーザダイオードを用いた従来機材との接続インターフェイスを備え、設定のソフトウェアを変更することを特徴とする。これによって、従来機材の使用が可能である。
また、本発明の第1の実施の形態に係る射撃訓練装置1は、設定のソフトウェアにより、ミリ波レーダとして使用し、目標までの距離、方向、速度の測定することを特徴とする。
【0045】
<第2の実施の形態>
〔射撃訓練装置5の制御構成〕
次に、本発明の第2の実施の形態に係る射撃訓練装置5について、図面を参照して詳しく説明する。
射撃訓練装置5は、第1の実施形態の射撃訓練装置1と同様に、電波の送受信により射撃訓練を行うための装置である。射撃訓練装置5では、標的の画像データや着弾位置のデータを相互に共有し、射撃の精度向上を可能にする。
図7を参照すると、射撃訓練装置5は、入出力部10と、画像取得部11(画像取得手段)と、表示部12(表示手段)と、アプリケーション部25と、記憶部35と、火器通信方式判定部40と、制御部55と、デジタル信号処理部65と、コンバータ部70と、RF部80と、アンテナ部85と、バス100とを備えている。このうち、符号が同じものは、射撃訓練装置1と同様の構成部位であることを示す。
【0046】
より詳細に説明すると、射撃訓練装置5の入出力部10は、第1の実施の形態と同様に、機材間の接続のためのインターフェイスの役割をする。また、射撃訓練装置5の入出力部10は、ユーザーからの各種火器や受信の通信方式設定等の指示を制御部55等に送信する。
すなわち、本発明の第2の実施の形態に係る射撃訓練装置5の入出力部10は、一例として、射撃シミュレーションの状態を表すディスプレイやキーボード、射撃に使用するカメラやスコープ等と接続する。このため、本実施形態の入出力部10は、画像取得部11と、表示部12とを接続している。
また入出力部10は、拡張インターフェイスとして、外部記録媒体、測定機器、電源、電池等と接続することが可能である。
【0047】
画像取得部11は、画像入力を行う機材であるCCD(Charge Coupled Device Image Sensor)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサを備えたカメラやスコープ等と、この制御装置であるDSPやGPU等を含む部位である。画像取得部11は、射撃訓練に用いるガンマ線〜可視光〜暗視用赤外線等の静止画像データや動画像データを取得する。また、画像取得部11は、これらの撮像した画像データを符号化し、保存し、他の部位に送信することができる。画像取得部11のカメラは、主に、射撃時に発射側では標的側の画像を撮像して取得し、標的側側では発射側の画像と着弾位置の画像を撮像して取得することができる。
より具体的には、画像取得部11は、射撃訓練装置5に装着されるスコープ及びカメラにおける画像の取得を行い、そのデータをアプリケーション部25に送信する。
また、これらの静止画像データ及び動画像データ等については、制御部55がデータの処理を行って表示部12に表示することができる。また、制御部55は、これらの静止画像データ及び動画像データ等を、コンバータ部70、デジタル信号処理部65、RF部80、アンテナ部85による各処理を介して、他の射撃訓練装置5に、無線で送信することができる。
【0048】
表示部12は、第1の実施の形態の入出力部10に接続された表示部と同様の有機ELディスプレイパネル、液晶ディスプレイパネル、デジタルスコープ、プロジェクタ、HMD(Head Mounted Display)等の表示手段である。
表示部12は、画像取得部11のカメラやスコープ等で取得した静止画像や動画像に加え、各種情報等を表示する。また、表示部12は、標的の画像を表示するだけでなく、他の機材から取得して復号化された静止画像や動画像等も表示できる。すなわち、他の射撃訓練装置5が送信した静止画像データ及び動画データが受信できた場合、制御部55がこれを復号化して、表示部12に表示することができる。
また、表示部12は、現在の火器の種類や通信方式、残弾数等の情報を表示することができる。
さらに、表示部12は、射撃訓練装置5の機材の設定情報、現在の被害状況、射撃時の画像、発射炎等の効果画像、標的からの着弾位置画像等の情報も表示可能である。
【0049】
アプリケーション部25は、第1の実施の形態のアプリケーション部20と同様の機能を備えるプログラム等の部位である。これに加えて、アプリケーション部25は、受信した他の射撃訓練装置5からの情報を認識可能な文字情報や音声情報等に復号化・変換し、入出力部10に出力する。
また、アプリケーション部25は、他の射撃訓練装置5等の受信側の機器に、各種情報を送信するためのユーザーインターフェイスの変換を行う。
この情報としては、入出力部10から入力された、火器のトリガー情報や命中情報、画像取得部11のカメラ及びスコープの画像情報を用いる。これに加えて、GPS等からの位置情報、キーボード等から入力したり音声認識を行って入力した文字情報、マイク等で取得した音声情報、地図やサイン等の図形情報のような情報を用いることもできる。
アプリケーション部25は、制御部55がハードウェア資源を用いて実行することで実現できる。
【0050】
記憶部35は、第1の実施の形態の記憶部30と同様のRAM、HDD、フラッシュメモリ等の記憶媒体を用いた記憶機能を備える部位である。これに加えて、記憶部35は、射撃訓練装置5の画像取得部11で取得した画像データ及び動画データの記録が可能である。
すなわち、記憶部35は、射撃シミュレーションで使用する各種情報、射撃シミュレーション以外の情報通信における通信方式の設定情報、各種デバイスとの接続・設定情報等を記憶している。また、静止画像や動画像の画像データ、残弾数、位置、損害等の情報も記憶している。記憶部35は、これらの情報を、設定を行う際に、制御部55に送信することができる。
これに加えて、記憶部35は、受信した他の射撃訓練装置5からの画像データや動画データ等も記録することができる。
記憶部35に記憶された各種情報は、入出力部10からのデータ書き換え端末(図示せず)と接続することで、変更可能である。また、射撃訓練装置5のデータ通信の際に、データ書き換えの情報の受信によって、記憶部35の記憶媒体内のデータの書き換えが可能である。
射撃訓練装置5は、記憶部35に記憶されたこれらのデータを必要時に取り出し、表示部12で表示を行ったり、他の機材に送信したりすることができる。
【0051】
制御部55は、第1の実施の形態の制御部50と同様の制御機能を備える部位である。制御部55は、アプリケーション部25を用いて、受信したデータ更新の情報や入出力部10からUSBメモリ等のフラッシュメモリディスク、CD−ROM等光学ディスク等の外部記録媒体を接続し、データの読み出し等を行い、通信方式のインストール等を行う。
また、制御部55は、入出力部10からのユーザーの指示に従い、記憶部35から各種情報を取り出し、コンバータ部70のAD/DAコンバータ等に各種情報を送信し、各種情報を無線データに変換する処理を行う。また、制御部55は、コンバータ部70からデータを受信し、入出力部10に出力する。
【0052】
デジタル信号処理部65は、第1の実施の形態のデジタル信号処理部60と同様の制御機能を備える部位である。
これに加えて、デジタル信号処理部65は、画像取得部11のカメラ及びスコープ等から取得した静止画像や動画像や音声等のデータについて、電波で送受信するために最適化するための信号処理を行う。
たとえば、デジタル信号処理部65は、ネットワークでストリーミング送信するため、JPEG、MPEG2、H.264等の形式に画像データを符号化する処理等を行うことができる。
なお、制御部55が符号化の処理を行う構成を用いることもできる。
【0053】
アンテナ部85は、第1の実施の形態のアンテナ部85と同様の部位である。第2の実施の形態において、アンテナ部85は、無線信号を送受信し、火器機材の種類に応じた指向性や偏波に変更できるアダプティブアレーアンテナを用いることが好ましい。
また、アンテナ部85は、RF部80により処理された信号を無線送信し、他の射撃訓練装置5からの通信を受信することができる。
【0054】
〔本発明の第2の実施の形態に係る射撃訓練処理〕
上述した従来技術1のような従来の射撃訓練システムは、レーザの通信容量が小さいため、拡張性に乏しかった。すなわち、従来技術1の赤外線レーザはデータの容量が限られており、データの送信内容は限定されていた。このため、音声通信やデータ通信を行うために用いることが困難であった。
また、従来技術1は、データの送受信に関しては一方向な通信であり、送信部からの情報しか得ることができないという問題があった。つまり、従来技術1のような従来の機材は、送信のみが行え、受信の結果である着弾位置の判定情報及び画像等の情報が受信できない。このため、相互に情報の共有が行えなかった。
このように、従来技術1では、どの場所を狙ったか、またはどの場所に命中したかといった、送信部および受信部の射撃の画像情報を相互に共有することはできなかった。
そこで、本発明の第2の実施の形態にあっては、第1の実施の形態に係る射撃訓練装置の機能に加え、情報通信を行い、相互に画像等の情報の共有が行えるようにした。
【0055】
次に、
図8と
図9を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る射撃訓練装置の制御方法の具体的な処理について説明する。
この第2の実施の形態に係る射撃訓練処理においては、第1の実施の形態の処理と同様の処理に加えて画像データの送受信を行う。具体的には、射撃時に、発射側の射撃訓練装置5から、命中した標的側の射撃訓練装置5に、射撃情報をトリガー情報に含めて送信する。この射撃情報としては、模擬すべき火器の火器情報に加えて、画像データを含めて送信することができる。
また、命中した標的側の射撃訓練装置5からは、命中した箇所の情報及び画像データを送信する。これにより、標的への命中精度及び、着弾効果を向上するための修正が可能となる。
【0056】
図8のフローチャートを参照すると、本発明の第2の実施の形態に係る射撃訓練処理においては、ステップS200は第1の実施の形態に係る射撃訓練処理のステップS100(
図2)と、ステップS201はステップS101と、ステップS202はステップS102と、ステップS203はステップS103と、ステップS204はステップS104と、ステップS205はステップS105と、ステップS206はステップS106と、ステップS207はステップS107と、ステップS208はステップS108と、ステップS209はステップS109と、それぞれ同様の処理を行う。
これに加えて、第2の実施の形態においては、トリガー情報を送信する際に、画像の送信に関するステップS210の処理を行う。
また、トリガー情報を受信して被害算出表示処理を行った後に、画像の受信に関するステップS211の処理を行う。
これらの処理は、発射側と標的側の射撃訓練装置5の制御部55が、アプリケーション部25を用いて、ハードウェア資源を用いて各部を制御することで実現する。
以下で、この本実施形態の射撃訓練処理のステップS210とステップS211について、より詳しく説明する。
【0057】
ステップS210において、トリガー指示があった場合、制御部55は、被害情報送信処理を行う。
図9の具体的な運用例を参照して説明すると、この処理では、発射側の射撃訓練装置5における射撃情報を、トリガー情報に含めて標的側に送信する。この射撃情報としては、火器情報テーブルの情報を用いる。これに加えて、射撃情報には、射撃時に発射側の画像取得部11のカメラ又はスコープで撮影された標的側の画像データ及び着弾位置に係る画像データ、送信側の射撃訓練装置5の位置情報や着弾位置に係る位置情報等を含ませることができる。
そして、標的側の射撃訓練装置5は、トリガー情報に含まれた画像等の射撃情報を受信して表示する。
【0058】
より具体的に説明すると、まず、画像取得部11のカメラ又はスコープは、射撃時には、標的側の静止画像や動画像、及び/又は標準をつけた箇所の着弾位置の静止画像や動画像等を撮像している。
また、入出力部10に接続されたGPSは、位置情報を受信している。
【0059】
ここで、ステップS204において、発射側の制御部55は、射撃時おいてユーザーのトリガー指示(火器発射情報)を入出力部10で検知する。
すると、発射側の制御部55は、トリガー情報に画像データ、位置情報、火器の種類等の射撃情報を含める処理を行う。
この際、制御部55は、画像取得部11のカメラ又はスコープにて、狙った標的を撮影し、画像データを作成して、射撃情報に含める。
【0060】
その後、ステップS207において、制御部55は、第1の実施の形態と同様に、アンテナ部85からミリ波等を用いてトリガー情報を標的側に送信する。
すなわち、発射側の射撃時に、火器の種類、位置情報、画像データ等の射撃情報を含むトリガー情報を送信する。
【0061】
また、ステップS211において、トリガー情報を受信し、被害算出表示処理を行った後、標的側の制御部55は、命中情報表示処理を行う。
この処理では、命中時において、標的側の制御部55が、発射側の射撃情報を標的側の表示部12に表示させる。さらに、標的側の制御部55は、命中時における発射側の射撃情報を用いて、標的側から見た発射側の画像を撮像する。加えて、標的側の制御部55は、着弾した箇所の標的側の画像を撮像することもできる。
そして、標的側の制御部55は、標的側で撮像した画像を含む命中情報を作成して送信する。その後、命中情報を受信した発射側の制御部55は、発射側の表示部12に命中情報を表示させる。
このようにトリガー情報と命中情報の表示を行うことで、発射側と標的側で相互に画像を比較することが可能になり、射撃の精度向上が期待できる。
【0062】
より具体的に説明すると、まず、被害算出により命中と判定された場合、標的側の制御部55は、発射側の火器の種類、位置情報、画像データ等の射撃情報を基に、画像取得部11のカメラ等を制御する。
具体的には、標的側の制御部55は、射撃情報から座標等を算出し、標的側から見た発射側の画像を撮像するため、画像取得部11のカメラ等に角度を変更しズーム等を行うよう指示する。
これにより、画像取得部11のカメラ等は、発射側の射撃訓練装置5を撮像し、受信側から見た発射側の静止画像データや動画像データを作成する。
【0063】
次に、標的側の制御部55は、命中時における発射側の火器の種類、位置情報、画像データ等の射撃情報を、標的側の表示部12に表示する。
また、標的側の制御部55は、被害算出表示処理で検出された命中箇所や被害状況についての被害画像を作成する。標的側の制御部55は、この被害画像として、例えば、画像取得部11のカメラ等で標的側の命中箇所を撮像し、静止画像データや動画像データとして取得する。
また、標的側の制御部55は、GPU等を用いて三次元CG(Computer Graphics)でレンダリング等を行って被害画像を作成してもよい。この際に、標的側の射撃訓練装置5の武器に係る撮像した画像やモデル画像に対して、命中箇所に「ヒットマーク」を描画し、破断箇所等を描画することもできる。
また、標的側の制御部55は、被害画像に、被害状況の文字や図形情報を重ね合わせて作成して表示するように構成することもできる。
これに加えて、標的側の制御部55は、標的側の表示部12の別ウィンドウや別ディスプレイ等に、受信側から見た発射側の画像を表示する。
【0064】
この上で、標的側の制御部55は、命中情報を作成して、発射側に送信する。この命中情報には、命中時における標的側の命中/着弾箇所の静止画像や動画像の画像データ、被害情報等を含ませることができる。
この画像データは、上述の被害画像の画像データを用いることができる。さらに、この被害画像に、被害状況の文字や図形情報をさらに加えることもできる。
加えて、標的側の制御部55は、この命中情報に、画像以外にも、被害の大きさ、受信側の位置情報等のデータも含ませることができる。
この命中情報の送信は、標的側の制御部55は、トリガー情報の送信と同様にアンテナ部85から送信する。この際、標的側の制御部55は、より発射側の機材で受信しやすいような出力とアンテナの向き等で送信することが好ましい。
【0065】
ここで、発射側の制御部55は、命中情報を受信すると、発射側の表示部12に表示する。
ここでは、発射側の制御部55は、命中時において受信側から発射側に送信された命中情報から、受信側の命中箇所や被害状況、画像データ等を復号化する。
そして、発射側の制御部55は、受信した命中情報を用いて、命中時における標的側の命中箇所や被害状況、画像データ等の情報を、GPU等を用いて発射側の表示部12に表示する。
これにより、発射側にて射撃の状況が分かりやすくなり、火器のシミュレーションを行う際の精度を向上させることができる。
以上により、本発明の第2の実施の形態に係る射撃訓練処理を終了する。
【0066】
以上のように構成することで、以下のような効果を得ることができる。
本発明の第2の実施の形態に係る射撃訓練装置5は、ミリ波の高速大容量のデータ通信を用いて、送信側の画像取得部11のカメラ又はスコープで撮影された標的側の画像データ/着弾位置の画像データ、位置情報等の射撃情報を送信することができる。これにより、着弾位置の把握、射撃の修正を行うことができる。すなわち、射撃時に射撃で使用したカメラやスコープからの静止画像や動画像、位置情報等のデータ等を射撃時に送信することが可能であり、受信側の射撃訓練装置5で確認が可能である。
また、受信側の射撃訓練装置5は、命中時に、命中した箇所、被害の大きさ、受信側の位置情報等の命中情報を、送信側の射撃訓練装置5に送信が可能である。
すなわち、射撃訓練装置5は、ミリ波等を用いて、データ通信速度及び伝送量に優れた通信を行い、発射側及び標的側で各種情報を共有することができる。この各種情報としては、射撃時における標的の画像データや着弾位置のデータを相互に共有可能である。つまり、どの場所を狙ったか、又はどの場所に命中したかについて発射側及び標的側で確認できる。これにより、発射側及び標的側で、射撃精度の向上が効率的に行える。
さらに、発射側の射撃時のトリガー情報に含めて射撃情報を送信し、命中した際にのみ標的側から命中情報を送信するため、射撃に関連する場合のみ射撃の情報が共有するため、電波の帯域を圧迫せず、多数の射撃訓練装置を用いた際でも電波の干渉等を起こしにくく訓練を行える。
【0067】
また、本発明の射撃訓練装置5は、射撃に関する射撃情報を表示する表示部12を備え、火器の種類と位置情報とを射撃情報として含ませるトリガー情報を用い、表示部12にアンテナ部85で受信したトリガー情報を表示することを特徴とする。
また、本発明の射撃訓練装置5は、撮像された画像データを取得する画像取得部11を備え、トリガー情報は、画像取得部11で取得した標的側の画像データを含み、表示部12は、前記画像データを表示することを特徴とする。
また、本発明の射撃訓練装置5は、制御部55は、トリガー情報を解析し、前記無線信号を送信した発射側の射撃訓練装置5又は標的側の射撃訓練装置5の命中箇所を、画像取得部11にて撮像し、この撮像された被害画像を含む命中情報を作成し、アンテナ部85から受信した被害画像を送信手段から送信することを特徴とする。
【0068】
なお、上記実施の形態の構成及び動作は例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実行することができることは言うまでもない。