特許第5840974号(P5840974)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5840974
(24)【登録日】2015年11月20日
(45)【発行日】2016年1月6日
(54)【発明の名称】ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/34 20060101AFI20151210BHJP
   F04B 9/14 20060101ALI20151210BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20151210BHJP
【FI】
   B65D47/34 B
   F04B9/14 B
   B65D83/00 K
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-34415(P2012-34415)
(22)【出願日】2012年2月20日
(65)【公開番号】特開2013-169983(P2013-169983A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2014年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】591038668
【氏名又は名称】プレスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087594
【弁理士】
【氏名又は名称】福村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】岡谷 武彦
【審査官】 中野 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−138652(JP,A)
【文献】 特開2011−063289(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0206781(US,A1)
【文献】 特開昭57−135062(JP,A)
【文献】 実開平6−57452(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/34
B65D 83/00
F04B 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ本体と、ピストンと、操作ボタンと、付勢部材と、吸込み弁と、吐出弁とを備えたポンプ装置であり、
前記ポンプ本体は、流動物を貯留する容器本体の装着開口部に装着され、内部に流動物を貯留することができるとともに容器本体と連通する吸引貫通孔を備えるポンプ室を有し、
前記ピストンは、その一端に、ポンプ室に連通する吸引開口部を備えるとともに、他端に、流動物を吐出する吐出開口部を備えた筒状体に形成され、かつ、ポンプ室内の容積を増大又は減少させるようにピストン自身が往復動自在に前記ポンプ室内に挿入され、前記ピストンにおける吐出開口部の近傍にある外周面にはその外周面から突出する凸状部を有し、
前記操作ボタンは、ポンプ本体に装着され、流動物を吐出するノズル開口部と、前記ノズル開口部とピストンの吐出開口部とを連通して前記吐出開口部から前記ノズル開口部へと流動物が流通するように形成された流路と、前記吐出開口部を含む前記ピストンの端部近傍を、ピストンを内管とする二重管になるようにして前記ピストンを収容する筒状部と、前記筒状部における前記吐出開口部近傍の内周面に設けられた、前記凸状部に係合する係合部と、前記ピストンを上下動させるときには前記吐出開口部の端面に接触し、ピストンを上下動させないときには前記吐出開口部の端面とは所定の間隙をもって向かうように配設されたストッパとを有し、
前記付勢部材は、ポンプ本体に対して操作ボタンが上昇する方向に操作ボタンを付勢するように、ポンプ本体と操作ボタンとの間に配置され、
前記吸込み弁はポンプ室内に配置され、前記吐出弁はピストンに配置され、ピストンの往動によりポンプ室内の容積が減少するときには吸込み弁が吸引貫通孔を閉鎖するとともに前記吐出弁がポンプ室内とピストン内とを連通解放し、ピストンの復動によりポンプ室内の容積が増大するときには吸込み弁が吸引貫通孔を解放するとともに前記吐出弁が前記ポンプ室内と前記ピストン内との連通を閉鎖する構造としたこと、
を特徴とするポンプ装置。
【請求項2】
前記ピストンは、吐出開口部を備えた一端部が前記筒状部に挿入され、かつ他端部が前記ポンプ本体に設けられた挿入開口部に往復動可能に装着された筒状の第1ステムと、前記第1ステムの他端部に一端部が挿入され、かつ他端部は前記ポンプ室の内壁を液密に摺動するとともにポンプ室内とポンプ室外とを連通する連通孔を有する円盤体を備え、他端部と一端部との間にある周面であって、前記円盤体近傍の周面に設けられた内外貫通孔を有する筒状の第2ステムとを備え、
前記吐出弁は、前記第2ステムの、前記円盤体近傍の周側面であって、前記内外貫通孔を覆うように配置され、前記ピストンが往動するときには前記連通孔から前記内外貫通孔へと流動物が流通可能にし、前記ピストンが復動するときには前記内外貫通孔から前記連通孔への流動物の流通を不可能にすることを特徴とする前記請求項1に記載のポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ポンプ装置に関し、さらに詳しくは、流動物を吐出した後に液だれを生じることのない、いわゆるバックサクション効果を有するポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、「バックサクション効果によって排出経路に残存する流動体をポンプの貫通路及び/又はシリンダー内に引き込むことができる新規なポンプ」(特許文献1の段落番号0006参照)として、「・・・ベースキャップと、・・・シリンダと、・・・スライダーと、・・・ヘッドとを備えるポンプであって、前記スライダーの貫通路に、・・・弁体を配設し、前記貫通路と弁体との相互間に、該貫通路を閉塞するまでの弁体の動作を遅延させて該弁体からノズルに至るまでに残存する液体を貫通路及び/又はシリンダ内に呼び込む極僅かな隙間を形成してなることを特徴とする液体排出用ポンプ」が記載されている(特許文献1の請求項1を参照。)。
【0003】
この特許文献1には、「押圧ヘッド5を最も押し下げた状態でそれに対する負荷を解除すると、該押圧ヘッド5は弾性部材6の弾性力でもって初期位置に復帰することは先にも述べたとおりであり、このとき、浮遊状態にある弁体7は落下していき、該弁体7が弁座3bに着座するまでの間に弁体7の出側からノズルに至るまでの領域(排出経路)に残存する液体はバックサクション効果によって貫通路3a及び/又はシリンダ2内へと引き込まれることになる。」と記載されている(段落番号0015参照)。特許文献1における前記記載から、特許文献1に記載の液体排出用ポンプは、浮遊していた弁体が落下することによりバックサクション効果を発揮するように仕組まれている。
【0004】
また、別の例として、特許文献2には、「ノズル部内の液の残存を防止することができ、しかも温度変化による液だれをも防止し得るポンプ」(特許文献2の段落番号0009参照)として、「・・・ポンプ本体と、・・・ピストンと、・・・ノズル部と、・・・吸込弁と、・・・吐出弁と、・・・第1のばね部材と、を備え、・・・前記吸込弁に、前記ピストンが拡張方向に移動する際に、吐出弁が完全に閉じるまでの間吸込弁を閉塞状態に保持してノズル部に残存する液体をポンプ室に戻し、さらに、温度変化による容器内の内圧増大に抗して吸込弁を閉塞状態に保持するべく、吸込弁の弁体を弁座に対して付勢する第2のばね部材を設けたことを特徴とするポンプ」が記載されている(特許文献2の請求項1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−137329号公報
【特許文献2】特開平7−96956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、付勢部材による作用を利用することによりバックサクション効果を発揮するポンプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段は、
ポンプ本体と、ピストンと、操作ボタンと、付勢部材と、吸込み弁と、吐出弁とを備えたポンプ装置であり、
前記ポンプ本体は、流動物を貯留する容器本体の装着開口部に装着され、内部に流動物を貯留することができるとともに容器本体と連通する吸引貫通孔を備えるポンプ室を有し、
前記ピストンは、その一端に、ポンプ室に連通する吸引開口部を備えるとともに、他端に、流動物を吐出する吐出開口部を備えた筒状体に形成され、かつ、ポンプ室内の容積を増大又は減少させるようにピストン自身が往復動自在に前記ポンプ室内に挿入され、前記ピストンにおける吐出開口部の近傍にある外周面にはその外周面から突出する凸状部を有し、
前記操作ボタンは、ポンプ本体に装着され、流動物を吐出するノズル開口部と、前記ノズル開口部とピストンの吐出開口部とを連通して前記吐出開口部から前記ノズル開口部へと流動物が流通するように形成された流路と、前記吐出開口部を含む前記ピストンの端部近傍を、ピストンを内管とする二重管になるようにして前記ピストンを収容する内側筒状部と、前記内側筒状部における前記吐出開口部近傍の内周面に設けられた、前記凸状部に係合する係合部と、前記ピストンを上下動させるときには前記吐出開口部の端面に接触し、ピストンを上下動させないときには前記吐出開口部の端面とは所定の間隙をもって向かうように配設されたストッパとを有し、
前記付勢部材は、ポンプ本体に対して操作ボタンが上昇する方向に操作ボタンを付勢するように、ポンプ本体と操作ボタンとの間に配置され、
前記吸込み弁はポンプ室内に配置され、前記吐出弁はピストンに配置され、ピストンの往動によりポンプ室内の容積が減少するときには吸込み弁が吸引貫通孔を閉鎖するとともに前記吐出弁がポンプ室内とピストン内とを連通解放し、ピストンの復動によりポンプ室内の容積が増大するときには吸込み弁が吸引貫通孔を解放するとともに前記吐出弁が前記ポンプ室内と前記ピストン内との連通を閉鎖する構造としたこと、
を特徴とするポンプ装置である。
【0008】
また、この発明の好適な態様であるポンプ装置は、前記ピストンは、吐出開口部を備えた一端部が前記内側筒状部に挿入され、かつ他端部が前記ポンプ本体に設けられた挿入開口部に往復動可能に装着された筒状の第1ステムと、前記第1ステムの他端部に一端部が挿入され、かつ他端部は前記ポンプ室の内壁を液密に摺動するとともにポンプ室内とポンプ室外とを連通する連通孔を有する円盤体を備え、他端部と一端部との間にある周面であって、前記円盤体近傍の周面に設けられた内外貫通孔を有する筒状の第2ステムとを備え、
前記吐出弁は、前記第2ステムの、前記円盤体近傍の周側面であって、前記内外貫通孔を覆うように配置され、前記ピストンが往動するときには前記連通孔から前記内外貫通孔へと流動物が流通可能にし、前記ピストンが復動するときには前記内外貫通孔から前記連通孔への流動物の流通を不可能にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明のポンプ装置は、以下のように作用し、液垂れ防止効果を奏することができる。
【0010】
出荷後に初めて使用するまでのこのポンプ装置においては、容器本体内に流動物が貯留されている。操作ボタンを付勢部材の付勢力に抗して押し下げ、次いで操作ボタンの押し下げ力を解除して操作ボタンを付勢力に従って押し上げるという動作を数回繰り返すと、容器本体内の流動物がポンプ室、ピストンにおける筒状体の内部、及び操作ボタンにおける流路に、流動物が充填される。
【0011】
ポンプ室、筒状体の内部及び前記流路に流動物が充填され、あるいは充満し、しかも付勢部材の付勢力によって押し上げ力を受けている操作ボタンがポンプ本体に係合することによりこれ以上操作ボタンがポンプ本体に対して離れて行くように移動しない状態を初期状態とする。この初期状態においては、付勢部材により操作ボタンがポンプ本体から離れて行くように付勢されているものの、操作ボタンがポンプ本体から離脱しないように係合されているとともに、操作ボタン内のストッパとピストンの吐出開口部上端面とが所定の間隙を維持し、換言すると操作ボタン内のストッパとピストンの吐出開口部上端面とで所定の空間容積が維持され、また、ピストンの外周面に形成された凸状部と内側筒状部の内周面に設けられた係合部とが係合し合っている。
【0012】
この初期状態にあるポンプ装置において、付勢部材の付勢力に抗して操作ボタンを押し下げると、操作ボタンに設けられているストッパがピストンの吐出開口部端面に当接する。
【0013】
ストッパが前記吐出開口部端面に当接した状態のままで、さらに操作ボタンを押し下げるとピストンが下降し、ピストンにおける凸状部と筒状体における係合部との係合が外れ、凸状部と係合部とが離れて行くにつれて、つまりピストンの下降につれてポンプ室内の容積が減少する。ポンプ室内の容積の減少により、吸込み弁が吸引貫通孔を閉鎖するとともに吐出弁がポンプ室内とピストン内とを連通解放する。初期状態においてポンプ室内、筒状体の内部及び前記流路に充填されていた流動物が、操作ボタンの下降に伴うポンプ室内の容積の減少とともに、ノズル開口部から吐出される。
【0014】
操作ボタンを押し下げ切った状態では、ストッパが依然として吐出開口部の端面に接触した状態になっている。
【0015】
操作ボタンを押し下げ切った状態になってから、操作ボタンを押し下げる力を解除する。押し下げ力の解除によって、付勢部材の付勢力によって操作ボタンが上昇を開始する。操作ボタンが上昇する一方、ピストンは付勢部材による付勢力を受けていないので、ピストンはその動きを停止して静止したままでいる。操作ボタンが付勢部材の付勢力により上昇を開始することにより、ストッパが吐出開口部の端面から離脱するとともに、操作ボタンが上昇するに伴って筒状体が上昇する。筒状体が上昇し続けると遂には筒状体における係合部がピストンの凸状部に係合する。
【0016】
係合部と凸状部とが係合した状態になると、ストッパはピストンの吐出開口部の端面から所定の間隙を以て吐出開口部の端面に臨む位置にある。
【0017】
操作ボタンが上昇を開始してから凸状部と係合部とが係合するまでの期間においては、ピストンが動かないのでポンプ室内の容積が増大せずに、操作ボタンを押し下げ切った時のポンプ室内の容積を維持している。したがって、吸込み弁が吸引貫通孔を閉鎖したままである一方、吐出弁はポンプ室内とピストン内とを連通解放したままになっている。
【0018】
下がり切った操作ボタンが上昇を開始し始めると、ポンプ室、ピストンの内部容積及び操作ボタンにおける流路により形成される全体容積が増大する。全体容積の増大は、操作ボタンにおける流路の増大に基づく。全体容積が増大すると、操作ボタンにおける流路の容積増大により流路内が負圧になる。
【0019】
流路内が負圧になると、例えばノズル開口部まで充填されていた流動物が流路の内部に引き込まれることになり、ノズル開口部の外に流動物が溢れ出ることが防止される。つまりノズル開口部からの液垂れが防止される。
【0020】
付勢部材の付勢力により更に操作ボタンが上昇すると、係合部と凸状部とが係合しているので、ピストンが上昇を開始する。ピストンが上昇を開始すると、吐出弁が閉鎖してポンプ室の容積が増大し始める。ポンプ室の容積が増大するとポンプ室内が負圧になるので、吸込み弁が吸引貫通孔を解放するとともに前記吐出弁が前記ポンプ室内と前記ピストン内との連通を閉鎖するので、容器本体内に貯留されている流動物が前記吸引貫通孔を経由してポンプ室内に流入する。
【0021】
操作ボタンが更に上昇して操作ボタンがポンプ本体に係合すると、操作ボタンの上昇が停止して初期状態に戻る。
【0022】
よって、この発明によると、液垂れを防止することのできる、装置構成の簡単なポンプ装置を提供するという技術的効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、この発明の一例であり、かつ、初期状態にあるポンプ装置を示す断面図である。
図2図2は、この発明の一例であるポンプ装置における第1ステムを示す概略断面図である。
図3図3は、この発明の一例であるポンプ装置における操作ボタンを示す概略断面図である。
図4図4は、この発明の一例であり、かつ、操作ボタンが下降し切った状態にあるポンプ装置を示す断面図である。
図5図5は、この発明の一例であるポンプ装置における吐出弁及びその周辺を示す概略部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の流動体吐出ポンプは、容器本体、ポンプ本体、および付勢部材を備えて成る。
【0025】
容器本体は、流動物を貯留することのできる容器である。容器本体は、通常の場合、合成樹脂、及びガラス等で形成される。
【0026】
前記流動物としては、例えば、洗髪剤又は化粧品等の中高粘度を有する流動体を好適例として挙げることができる。なぜならば、容器本体内に収容される流動体の内、吐出に際して液だれを生じ易いのは中高粘度を有する流動体であるからである。ここで、中高粘度を有する流動体として、1万〜10万Pa・s程度の粘度を有する流動体を挙げることができる。また、この発明において、前記流動物は前述した洗髪剤又は化粧品等に限らず、各種の液体、エマルジョン、スラリー等であってもよい。
【0027】
容器本体は装着用開口部を有する。この装着用開口部にポンプ本体が装着され、容器本体内に流動物を補充し、充填するときにはこの装着用開口部からポンプ本体が取り外すことができるようになっている。容器本体にポンプ本体に取り付ける構造には、特に制限がない。
【0028】
ポンプ本体は、ポンプ室を備える。
【0029】
このポンプ室は、ポンプ室と容器本体とが連通する吸引貫通孔を有し、ピストンの動きによりポンプ室の内容積を増減させることにより、吸込み弁と吐出弁とが協同して前記容器本体内に貯留されている流動物を容器本体からポンプ室内に吸込み、ポンプ室内の流動物をポンプ室外に排出する。
【0030】
ポンプ本体は複数の部品からなる組み立て体であっても、一体成型加工により形成された一体物であっても良い。
【0031】
ピストンは、全体として筒状体に形成され、ポンプ室に連通する吸引開口部を有する一端と流動物を吐出する吐出開口部を有する他端とを備え、前記ポンプ室内にある流動物を吸引開口部から筒状体の内部に吸引し、筒状体の内部にある流動物を前記吐出開口部から排出することができるように形成される。このピストンは、ポンプ室に挿入され、ポンプ室内に往復動可能にポンプ本体に装着される。ピストンの一部がポンプ室内に入り込むとポンプ室内の容積が減少し、ポンプ室内に挿入されているピストンがポンプ室から引き抜かれるようにピストンが移動すると、ポンプ室内の容積が増大する。
【0032】
ピストンは、吐出開口部の設けられた端部近傍の外周面に、その外周面から突出する凸状部を有する。この凸状部はピストンの一部であり、ピストンを合成樹脂で形成されているならば、凸状部付きのピストンを一体成型加工により得ることができる。また、凸状部とピストンとを別々に成形した後に凸状部をピストンに装着することにより凸状部を有するピストンを得ることもできる。
【0033】
この凸状部は、操作ボタンにおける係合部と係合することができる構成であればよい。好適な凸状部は、ピストンの外周面であって前記吐出開口部の設けられた端部近傍の外周面に、ピストンの中心軸線を中心にした環状になるように突出する環状凸状部である。この環状凸状部の断面形状、すなわち、ピストンの中心軸線を通る面で環状凸状部を裁断して現れる断面形状は、方形、長方形、三角形、高さの高い正規分布曲線形、高さの低い正規分布曲線形、山型等の何れであっても良い。前記好適な凸状部の他に、ピストンの中心軸線を中心にした環状体には形成されてはいなくて前記係合部と有効に係合することのできる様々な形状をこのポンプ装置の形態に応じて採用することができる。このピストンは、通常の場合、合成樹脂で形成することができる。
【0034】
ピストンは、複数の部材を組み合わせた組み立て体として形成することができ、また一体成型加工により一体物として形成することができる。
【0035】
前記操作ボタンは、装着開口部に装着される。好適には、この操作ボタンは、前記ポンプ本体とともに、装着開口部に装着され、また、装着されることによりこの操作ボタンは前記ポンプ本体と容器本体とに固定される。
【0036】
この操作ボタンは、ノズル開口部と、流路と、内側筒状部と、ストッパとを有し、容器本体の装着開口部に装着され、操作ボタンの軸線方向に沿って往復動させることにより前記ノズル開口部から流動物を吐出することができるように構成される。操作ボタンがポンプ本体に向かっての移動を「往動」と称し、操作ボタンがポンプ本体から離れるような移動を「復動」と称することができる。この操作ボタンは、ポンプ本体に対して往復動可能に形成される。
【0037】
前記ノズル開口部は、流動物を吐出する開口部である。
【0038】
前記流路は、ピストンを装着したポンプ本体とこの操作ボタンとを装着開口部に装着した場合に、ピストンの吐出開口部から前記ノズル開口部まで流動物を流通させる空間である。
【0039】
内側筒状部は、この操作ボタンの一部として一体になっている筒状体である。この内側筒状部は、容器本体の装着開口部に装着されたポンプ本体におけるポンプ室に挿入配置されたピストンのポンプ室側の端部とは反対側の端部に設けられた吐出開口部から、ピストンを内側筒状部内に収容する。つまり、この内側筒状部は、ピストンの一部を収容し、つまり、ピストンの吐出開口部側の端部から所定の軸線長さ分だけピストンの一部を収容する。内側筒状部がピストンを軸線方向におけるどの程度の長さ分だけ収容するかは、このポンプ装置の規模、用途等に応じて適宜に決定される事項である。この内側筒状部がピストンの一部を収容すると、収容されたピストンと内側筒状部とで二重管が形成される。
【0040】
この内側筒状部は、係合部を有する。また、この内側筒状部は、密接内周面を備えることが好ましい。
【0041】
前記密接内周面は、内側筒状部内に収容したピストンの外周面と密に接触することにより、流路内に存在する流動物が内側筒状部の内周面とピストンの外周面との間から内側筒状部の外に漏出するのを防止する。この密接内周面は、通常の場合、ピストンにおける吐出開口を有する一端から、軸線方向に沿った所定の長さまでの内側筒状部の内周面に形成される。さらに言うと、ピストンを収容する内側筒状部の内周面において、ピストンの吐出開口部の端面位置から軸線方向における所定長さまでの内周面が、密接内周面である。前記軸線方向における所定長さは、ポンプ装置の規模及び用途等により適宜に決定される。
【0042】
前記係合部は、ピストンにおける凸状部と係合することができるように形成される。好適な係合部は、内側筒状部の内周面において環状に突出する環状係合部である。もっとも、この係合部は環状係合部に形成されていなくても、前記凸状部に係合できる形態であればよく、内側筒状部の軸線を含む面で切断して現れる断面において方形、長方形、高さの大きな、又は低い正規分布曲線形、山型等の何れであっても良い。
【0043】
この内側筒状部は、通常の場合、合成樹脂で形成される。
【0044】
前記ストッパは、操作ボタンの一部として一体に形成される。容器本体の装着開口部にポンプ本体とこの操作ボタンとが装着されて容器本体とポンプ本体とこの操作ボタンとが一体に結合された状態にポンプ装置が形成された場合に、操作ボタンにおける流路内において、装着されたピストンにおける吐出開口部を有するピストンの一端面に所定の間隙をもって向かい合うように、配置されている。ストッパは、ピストンの、吐出開口部のある一端面に接触して操作ボタンの往動によってピストンの前記一端面に接触しつつピストンを押し下げる機能を有するとともにポンプ装置の初期状態においては、ピストンの吐出開口部のある一端面とストッパのピストンに臨む端面とが所定の間隔を有することにより所定の空間を形成させる機能を有する。
【0045】
なお、このポンプ装置には、人為的な外力又は転倒、落下等により発生する外力によって、この操作ボタンがポンプ本体から離脱しないように適宜の離脱防止手段が組み込まれている。
【0046】
ノズル開口部、流路、内周面に係合部を有する内側筒状部、及びストッパを有する操作ボタンは合成樹脂で一体成型加工により製造されることができる。また、複数の部品を組み立てることにより、ノズル開口部、流路、内周面に係合部を有する内側筒状部、及びストッパを有する組み立て体として操作ボタンを製造することもできる。
【0047】
前記付勢部材は、ポンプ本体から操作ボタンが離れるように付勢する機能を有し、通常は螺旋コイルにより形成される。前記機能を発揮させるためには、前記付勢部材の取り付け状態として、例えばこの付勢部材の一端はポンプ本体に接し、この付勢部材の他端は操作ボタンに接する。この付勢部材による付勢力は操作ボタンがポンプ本体から離れるように作用する。もっとも、このポンプ装置には前記適宜の離脱防止手段が組み込まれているので、この発明に係るポンプ装置においては、この付勢部材による付勢力、又は前記した人為的な外力若しくは転倒、落下等により発生する外力によって操作ボタンがポンプ本体から離脱しないように仕組まれている。
【0048】
前記離脱防止手段は、前記のように付勢部材の付勢力により操作ボタンがポンプ本体から離脱させないようにする機能と、この発明に係るポンプ装置におけるピストンの吐出開口部を含む端面とストッパとが所定の間隙がさらにその間隙寸法以上に拡大することを阻止する機能とを有する。
【0049】
吸込み弁は、ポンプ室内に配置され、ポンプ室に設けられたところの、ポンプ室と容器本体とを連通する吸引貫通孔を開閉する機能を有する限りその形態に制限がない。吐出弁はピストンに設けられ、ピストン内にポンプ室内の流動物を流入させ、またピストン内の流動物をポンプ室内に逆流することを阻止する機能を発揮する。
【0050】
この発明に係るポンプ装置の作用については、発明の効果欄にて説明したとおりである。
【実施例】
【0051】
図1に示されるように、この発明の一実施例であるポンプ装置1は、図示しない容器本体の装着開口部に装着されるポンプ本体2と、操作ボタン3と、ピストン4と、付勢部材であるコイルスプリング5と、吸込み弁6と、吐出弁7とを有する。なお、コイルスプリングは螺旋コイルとも称される。コイルスプリング5は金属製であっても、合成樹脂製であってもよい。
【0052】
この発明においては、容器本体は、筒状に形成されるとともに外周面に雄ネジを有する頸部(図示せず。)と、その頸部の端部に設けられた開口(図示せず。)とを備える装着開口部(図示せず。)を備える。
【0053】
ポンプ本体2は、前記頸部の外周面に設けられた雄ネジに螺合する雌ネジ2Aを有する内周面を備えるとともに一端を開口し、かつ他端を隔絶板2Cで閉鎖してなる筒状部2Bと、前記隔絶板2Cの中央部に開口する挿入開口部2Dを有するとともに筒状部2Bと同じ方向に延在する装着用筒部2Jと、この挿入開口部2Dの軸線を共有し、前記挿入開口部2Dの開口縁辺から筒状部2B内に向かって延在し、前記筒状部2Bの一端開口から突出して形成され、容器本体に連通するように開口する吸引貫通孔2Eを備え、前記隔絶板2Cに当接する環状の装着板2Fを備えてなる円筒体2Gと、前記隔絶板2Cの前記筒状部2Bとは反対側の面における円周縁辺から筒状に立設するとともに、前記隔絶板2Cとは反対側の端部を開口するとともに、前記挿入開口部2Dの軸線に向かって半径方向にせり出してなる環状の縁辺鍔部2Hを備えてなる開口筒部2Iと、を有する。
【0054】
この例においては、合成樹脂を一体成型加工することにより、筒状部2Bと、隔絶板2Cと、開口筒部2Iとを一体に備える外部本体部と、装着板2Fと、吸引貫通孔2Eを有する円筒体2Gとを一体に備える内部本体部とで組み立てられたポンプ本体2が、形成される。
【0055】
このポンプ本体2においては、後述するピストン4と円筒体2Gとで、ポンプ室8となる空間が形成される。
【0056】
吸込み弁6は、前記円筒体2G内に配置される。この吸込み弁6は、一端が半球状に形成された半球体部6Aと、半球体部6Aに連続する円柱部6Bと、円柱部6Bの周側面に設けられた4枚のフィン6Cと、この円柱部6Bの前記半球体部6Aとは反対側の端面に設けられ、かつS字状に形成された弾性体6Dと、この弾性体6Dの一端を結合するとともに連通孔を備える固定部6Eとを有する。この固定部6Eは、円筒体2G内に嵌め込まれて固定されている。この固定部6Eは、前記ピストン4の往復動においてピストン4が更に進行運動するのを阻止してピストン4の下死点を決定する。円筒体2G内で固定的に配置された固定部6Eに弾性体6Dを介して懸垂状態となって取り付けられた半球体部6Aは、前記弾性体6Dの付勢力により、吸引貫通孔2Eを常時閉鎖した状態にしている。
【0057】
半球体部6A、円柱部6B、4枚のフィン6C、弾性体6D及び固定部6Eは、合成樹脂で一体成型加工により製造されることができる。
【0058】
ピストン4は、第1ステム4Aと第2ステム4Bとを有する。
【0059】
第1ステム4Aはほぼ円筒の筒状体に形成され、両端を開口し、一端には円形に開口する吐出開口部4Cを備える。また、この第1ステム4Aは、前記吐出開口部4Cが形成される一端から周側面上で所定の寸法だけ離れた位置に、周側面つまり外周面上で周側面を一巡するように環状に突出する凸状部4Dを有する。
【0060】
図2に示されるように、第1ステム4Aの前記吐出開口部4Cのある端面から、細外径部4E、凸状部4D、細外径部4F及び大外径部4Gがこの順に形成されていて、二つの細外径部4E、4Fは同じ半径寸法Xを有し、大外径部4Gの外径と凸状部4Dにおける最大外径部4Hとは同じ半径寸法Yを有する。凸状部4Dは、図2における上側の細外径部4Eからなだらかに立ち上がって最大外径部4Hに至り、最大外径部4Hからなだらかに下降して細外径部4Fに至るように形成され、凸状部4Dの断面、つまり第1ステム4Aの中心軸線を共有する平面で切断した断面の形状は、山型を呈している。
【0061】
図1に示されるように、第1ステム4Aの他端側が、隔絶板2Cに設けられた挿入開口部2Dに挿入される。
【0062】
図1に示されるように、第1ステム4Aの他端には、すなわち吐出開口部4Cが設けられた一端とは反対側の他端には、第2ステム4Bの一部が挿入されることにより、第2ステム4Bが第1ステム4Aに一体に固着される。
【0063】
第2ステム4Bは、第1ステム4Aに挿入され、しかも開口部を有する先端部と、その先端部と同じ直径を有して延在する中空管状の中央部と、その中央部の前記先端部と反対側に円錐台形状に形成された円錐台形部と、その円錐台形部に連続して形成され、円筒体2Gの内周面に液密に接触する円盤体4Iとを備える。前記中央部の円錐台形部寄りの周面には中央部の内部と外部とを連通する開口部が設けられ、前記円錐台形部の外周面に開口部が設けられるとともに、円盤体4Iの一端面にも中心開口部が設けられ、前記円錐台形部における開口部と円盤体4Iにおける中心開口部とは内部で連通している。図1に示されるように、第2ステム4Bには、前記円盤体4Iの中央部に設けられた中心開口部から第2ステム4Bの外に抜け出て、再び第2ステム4Bの内部空間に至る内部流路4Jが設けられる。前記中央部の周側面には吐出弁7が装着され、他端には円筒体2Gの内周面に液密に接触する円盤体4Iが設けられる。この円盤体4Iと円筒体2Gとで形成される空間によってポンプ室8が形成される。
【0064】
図5に示されるように、吐出弁7は、第2ステム4Bの外径よりも大きな直径である内径と円筒体2Gの内径よりも小さな直径である外径とを有する環状基部7Aと、この環状基部7Aの、中心軸線とは直交する方向において内側に、筒状に立設して形成され、その先端部が第2ステム4Bの外周面に液密に接触する内側環状シール部7Bと、前記環状基部7Aの、中心軸線とは直交する方向において外側に、筒状に立設して形成され、その先端部が円筒体2Gの内周面に液密に接触する第1外側環状シール部7Cと、前記環状基部7Aの、中心軸線とは直交する方向において外側であって、前記外泡環状シール部7Cとは反対側に延在するように筒状に形成され、その先端部が円筒体2Gの内周面に液密に接触する第2外側環状シール部7Dとを備えて形成される。図5に示す例においては、装着用筒部2Jの下端部に、前記第1外側環状シール部7Cの先端部が当接すると、前記環状基部7Aの内側角部7Eが円錐台形部に密着して内部流路4Jが閉塞し、ピストン4が下降して第2ステム4Bの下端部が内側環状シール部7Bの先端部に当接すると、前記環状基部7Aの内側角部7Eが円錐台形部から離れて内部流路4Jが開通する。
【0065】
前記吐出弁7はこの内部流路4Jを開閉するとともに、前記円盤体4Iの中央部に設けられた中心開口部から第2ステム4Bの外に抜け出て、再び第2ステム4Bの内部空間に至る流路を液密にシールする機能を有する。
【0066】
前記操作ボタン3は、ノズル開口部3Aと、流路3Bと、内側筒状部3Cと、ストッパ3Dと、環状鍔部3Eとを有する。
【0067】
この操作ボタン3は、円筒形状をなす外側円筒体3Fと、その外側円筒体3Fの内部に、その外側円筒体3Fの中心軸線と同じ中心軸線を有する円筒体となるように設けられた内側筒状体3Cと、を有する。なお、前記内側筒状体3Cは、この発明における筒状部に対応する。この外側円筒体3Fと内側筒状体3Cとで、二重管構造が形成される。外側円筒体3Fの内周面と内側筒状体3Cの外周面とで環状の空間が形成される。
【0068】
前記外側円筒体3Fは、外側円筒体3Fの一方が開口し、他方は閉鎖されたカップ状となっている。この外側円筒体3Fの開口側の端部は、外側に僅かに張り出して前記縁辺鍔部2Hに係合する環状の鍔部に形成された環状鍔部3Eを、有する。
【0069】
図1に示されるように、前記環状の空間内にコイルスプリング5の一部が配置され、空間内のコイルスプリング5の一端が外側円筒体3Fの天井面に接し、コイルスプリング5の他端が隔絶板2Cの表面に接している。この操作ボタン3は、このコイルスプリング5の付勢力により、ポンプ本体2から離反するように、付勢されている。この操作ボタン3は、縁辺鍔部2Hに環状鍔部3Eが係合しているので、前記コイルスプリング5の付勢力により、開口筒部2Iから飛び出して離脱することはない。
【0070】
図1に示されるように、前記内側筒状体3Cは、外側円筒体3Fにおける開口部、すなわち隔絶板2Cに向かって開口する開口部を有し、また、その開口部とは反対側の端部は天井面(なお、図1に示されるように、開口部が下方に位置する場合を想定すると、開口部とは反対側の端部は上部に位置することとなって、反対側の端部は「天井面」と形容することができる。)となって閉鎖される一方、流路3Bと連通している。
【0071】
図3に示されるように、この内側筒状体3Cは、中心軸線に直交する断面において、軸線方向に沿って一定外径を有する外周面3Gと、第1ステム4Aを挿入する領域において第1ステム4Aの吐出開口部4Cに隣接する細外径部4Eを液密に嵌合することのできる密接内周面3Hと、第1ステム4Aに設けられている凸状部4Dに係合するように内側筒状体3Cの内部に向けて半径方向に突出するように内側筒状体3Cの内周面に環状に設けられた係合部3Iと、この係合部3Iを挟んで設けられた二つの肉薄部3J、3Kとを有する。
【0072】
前記内側筒状体3Cには4個のストッパ3Dが設けられる。4個のストッパ3Dはいずれも天井面と内側筒状体3Cの内周面とから突出するように設けられる。内側筒状体3Cの中心軸線に直交する断面において、4個のストッパ3Dは互いに直角をなすように内側筒状体3Cの内周面から突出し、向き合う2個のストッパ3D,3Dは所定の間隔を有して配置されている。向き合う2個のストッパ3D、3Dは、所定の間隔を有して隔てられた対向面を有する。4個のストッパ3Dにおける前記対向面に隣接し、中心軸線に直交する平面上にある端面は、前記吐出開口部4Cのある第1ステム4Aの端面とは所定の間隔を有して対向するように配置される。4個のストッパ3Dにおける前記対向面に隣接し、中心軸線に直交する平面上にある端面を対向端面3Lと称することがある。図1に示されるように、第1ステム4Aの一端を内側筒状体3Cに嵌合し、操作ボタン3における間隙拡大防止部3Eがポンプ本体2における縁辺鍔部2Hに係合した状態にあるときに、第1ステム4Aの吐出開口部4Cの端面とストッパ3Dの対向端面3Lとの間で形成される内側筒状体3C内の空間を、容積増減空間Qと称することがある。
【0073】
なお、図1において、9で示される部材は、容器本体の装着開口部の端面とポンプ本体2における装着板2Fとの間に介装することにより液密性を高めるパッキンである。
【0074】
この発明に係るポンプ装置の作用について、以下に説明する。
【0075】
(操作ボタン3の下降)
図1に示されるポンプ装置1において、ポンプ室8の内部、ピストン4の内部及び流路3Bに流動物が充填している状態を初期状態とする。前記初期状態であり、しかもポンプ本体2が容器本体の上方に位置する状態にあるポンプ装置1の操作ボタン3を押圧すると、操作ボタン3は、コイルスプリング5の付勢力に抗して、操作ボタン3が下がる。操作ボタン3が下がると、ストッパ3Dの対向端面3Lが第1ステム4Aの吐出開口部4Cの端面に接触する。なおも操作ボタン3を押圧すると、ストッパ3Dの対向端面3Lが第1ステム4Aの吐出開口部4Cの端面に接触したまま、第1ステム4Aが下がる。第1ステム4Aが下がり始めると、ノズル開口部3Aから流動物が、出始める。
【0076】
操作ボタン3をさらに押し続けると、第1ステム4Aと第2ステム4Bとがともに下降する。吐出弁7は、第1ステム4Aと第2ステム4Bの下降開始の初期の頃には、第1ステム4Aと第2ステム4Bとの下降に追随しない。その結果、第1ステム4Aの下降により第1ステム4Aの下端部が内側環状シール部7Bの先端部に当接し、前記環状基部7Aの内側角部7Eが円錐台形部から離れて内部流路4Jが開通して吐出弁7が開いた状態になる。内部流路4Jが開通したまま、さらに第1ステム4A及び第2ステム4Bが下降する。このとき、第2ステム4Bの下端部と内側環状シール部7Bの先端部とが密着し、同時に内側環状シール部7Bの先端部と第2ステム4Bの中央部外周面とも密着しているので、高度のシール性が実現されている。
【0077】
吐出弁7が開いた状態で第1ステム4A及び第2ステム4Bが下降し続けると、ノズル開口部3Aから流動物が、出続ける。第1ステム4A及び第2ステム4Bが下降し続けている間、吸込み弁6の半球体部6Aが、吸引貫通孔3Eを閉鎖している。したがって、ポンプ室8内の流動物が吸引貫通孔3Eを通じて容器本体に逆流することが、ない。
【0078】
操作ボタン3を下降させると遂には円盤体4Iが固定部6Eに当接する。固定部6Eがピストン4の下降を阻止するので、操作ボタン3はこれ以上下降することができなくなる。操作ボタン3が下降し切るまでの期間中に、ノズル開口部3Aから流動物が流出する。図4は、操作ボタン3が下降し切った状態を示している。
【0079】
(操作ボタン3の上昇)
次いで、円盤体4Iが固定部6Eに当接して操作ボタン3がこれ以上下降しない状態に至った後に、操作ボタン3を押し下げる押圧力を解除する。
【0080】
そうすると、コイルスプリング5の付勢力により操作ボタン3と一体になっている内側筒状部3Cが上昇を開始する。内側筒状部3Cが上昇を開始するとき、第1ステム4Aは動くことがない。第1ステム4Aが動かずに静止している状態は、内側筒状部3Cにおける係合部3Iが、第1ステム4Aの凸状部4Dに係合するまで継続する。
【0081】
係合部3Iが凸状部4Dに係合すると、ストッパ3Dの対向端面3Lと第1ステム4Aの吐出開口部4Cのある端面との間に間隙が生じ、流路3B内が負圧になる。流路3B内が負圧になると、ノズル開口部3Aからわずかに出ていた、あるいはノズル開口部3Aから外部に液玉となってノズル開口部3Aから出ていた流動物が、前記負圧により、ノズル開口部3A内に引き込まれる。したがって、ノズル開口部3Aで従来生じていた液垂れがこのノズル装置1では生じることがない。
【0082】
凸状部4Dに係合部3Iが係合すると、コイルスプリング5の付勢力によって上昇しようとする内側筒状部3Cは係合部3Iに凸状部4Dをひっかけて第1ステム4Aを強制的に上昇させる。第1ステム4Aの上昇とともに第2ステム4Bも上昇する。第2ステム4Bの上昇動作に、吐出弁7は追随しない。故に、第2ステム4Bにおける円錐台形部と環状基部7Aの内側角部7Eとが密着して吐出弁7により内部流路7Jが閉塞される。内部流路7Jが閉塞された状態のまま第1ステム4Aと第2ステム4Bとがコイルスプリング5の付勢力により上昇し、吐出弁7も第2ステム4Bと共に上昇する。
【0083】
操作ボタン3の上昇は、コイルスプリング5の付勢力により、縁辺鍔部2Hに環状鍔部3Eが係合するとともに、装着用筒部2Jの下端部に、前記第1外側環状シール部7Cの先端部が当接する迄、継続する。係合部3Iに凸状部4Dが係合してから第1ステム4Aの上昇が開始すると、第2ステム4Bにおける円錐台形部と環状基部7Aの内側角部7Eとが密着して吐出弁7により内部流路7Jが閉塞され、さらに第2ステム4Bが上昇すると、ポンプ室8内の容積が増大するのでポンプ室8内が負圧になる。ポンプ室8内が負圧になると、半球体部6Aが浮き上がって吸引貫通孔2Eが開通状態になる。第1ステム4Aが更に上昇すると、ポンプ本体内に貯留されている流動物が、吸引貫通孔2Eを通じて、ポンプ室8内に流れ込む。操作ボタン3における環状鍔部3Eが縁辺鍔部2Hに係合すると、操作ボタン3はそれ以上上昇することができなくなる。操作ボタン3が上昇し続けている間、ポンプ室8内及び流路3B内が負圧になっているので、ノズル開口部3Aから流動物が吐出することはない。
【0084】
(操作ボタン3の下降)
操作ボタン3が上昇し切ったところで、操作ボタン3に押圧力を懸けて操作ボタン3を下に押し下げると、(操作ボタン3の下降)欄で説明した動作が始まり、ノズル開口部3Aから流動物が吐出される。
【0085】
この発明に係るノズル装置は、操作ボタン内に設けた筒状部(上記例では「内側筒状部」と称する。)に設けた係合部と、ピストンに設けられた凸状部との係合動作を利用することにより、下降し切った操作ボタンによってポンプ室内容積を最小にしてから、付勢部材の付勢力により操作ボタンを上昇させるときに筒状部の上昇だけを実現してピストンの先端部より先の流路内に負圧を生じさせる空間を実現し、この負圧によってノズル開口部に存在する流動物を流路内に引き込むことによりノズル開口部からの液垂れを防止している。
【符号の説明】
【0086】
1 ポンプ装置
2 ポンプ本体
2A 雌ネジ
2B 筒状部
2C 隔絶板
2D 挿入開口部
2E 吸引貫通孔
2F 装着板
2G 円筒体
2H 縁辺鍔部
2I 開口筒部
3 操作ボタン
3A ノズル開口部
3B 流路
3C 内側筒状部
3D ストッパ
3E 環状鍔部
3F 外側円筒体
3G 外周面
3H 密接内周面
3I 係合部
3J 肉薄部
3K 肉薄部
3L 対向端面
4 ピストン
4A 第1ステム
4B 第2ステム
4C 吐出開口部
4D 凸状部
4E 細外径部
4F 細外径部
4G 大外径部
4H 最大外径部
4I 円盤体
4J 吸引開口部
5 コイルスプリング
6 吸込み弁
6A 半球体部
6B 円柱部
6C フィン
6D 弾性体
6E 固定部
7 吐出弁
8 ポンプ室
9 パッキン
図1
図2
図3
図4
図5