【実施例】
【0051】
図1に示されるように、この発明の一実施例であるポンプ装置1は、図示しない容器本体の装着開口部に装着されるポンプ本体2と、操作ボタン3と、ピストン4と、付勢部材であるコイルスプリング5と、吸込み弁6と、吐出弁7とを有する。なお、コイルスプリングは螺旋コイルとも称される。コイルスプリング5は金属製であっても、合成樹脂製であってもよい。
【0052】
この発明においては、容器本体は、筒状に形成されるとともに外周面に雄ネジを有する頸部(図示せず。)と、その頸部の端部に設けられた開口(図示せず。)とを備える装着開口部(図示せず。)を備える。
【0053】
ポンプ本体2は、前記頸部の外周面に設けられた雄ネジに螺合する雌ネジ2Aを有する内周面を備えるとともに一端を開口し、かつ他端を隔絶板2Cで閉鎖してなる筒状部2Bと、前記隔絶板2Cの中央部に開口する挿入開口部2Dを有するとともに筒状部2Bと同じ方向に延在する装着用筒部2Jと、この挿入開口部2Dの軸線を共有し、前記挿入開口部2Dの開口縁辺から筒状部2B内に向かって延在し、前記筒状部2Bの一端開口から突出して形成され、容器本体に連通するように開口する吸引貫通孔2Eを備え、前記隔絶板2Cに当接する環状の装着板2Fを備えてなる円筒体2Gと、前記隔絶板2Cの前記筒状部2Bとは反対側の面における円周縁辺から筒状に立設するとともに、前記隔絶板2Cとは反対側の端部を開口するとともに、前記挿入開口部2Dの軸線に向かって半径方向にせり出してなる環状の縁辺鍔部2Hを備えてなる開口筒部2Iと、を有する。
【0054】
この例においては、合成樹脂を一体成型加工することにより、筒状部2Bと、隔絶板2Cと、開口筒部2Iとを一体に備える外部本体部と、装着板2Fと、吸引貫通孔2Eを有する円筒体2Gとを一体に備える内部本体部とで組み立てられたポンプ本体2が、形成される。
【0055】
このポンプ本体2においては、後述するピストン4と円筒体2Gとで、ポンプ室8となる空間が形成される。
【0056】
吸込み弁6は、前記円筒体2G内に配置される。この吸込み弁6は、一端が半球状に形成された半球体部6Aと、半球体部6Aに連続する円柱部6Bと、円柱部6Bの周側面に設けられた4枚のフィン6Cと、この円柱部6Bの前記半球体部6Aとは反対側の端面に設けられ、かつS字状に形成された弾性体6Dと、この弾性体6Dの一端を結合するとともに連通孔を備える固定部6Eとを有する。この固定部6Eは、円筒体2G内に嵌め込まれて固定されている。この固定部6Eは、前記ピストン4の往復動においてピストン4が更に進行運動するのを阻止してピストン4の下死点を決定する。円筒体2G内で固定的に配置された固定部6Eに弾性体6Dを介して懸垂状態となって取り付けられた半球体部6Aは、前記弾性体6Dの付勢力により、吸引貫通孔2Eを常時閉鎖した状態にしている。
【0057】
半球体部6A、円柱部6B、4枚のフィン6C、弾性体6D及び固定部6Eは、合成樹脂で一体成型加工により製造されることができる。
【0058】
ピストン4は、第1ステム4Aと第2ステム4Bとを有する。
【0059】
第1ステム4Aはほぼ円筒の筒状体に形成され、両端を開口し、一端には円形に開口する吐出開口部4Cを備える。また、この第1ステム4Aは、前記吐出開口部4Cが形成される一端から周側面上で所定の寸法だけ離れた位置に、周側面つまり外周面上で周側面を一巡するように環状に突出する凸状部4Dを有する。
【0060】
図2に示されるように、第1ステム4Aの前記吐出開口部4Cのある端面から、細外径部4E、凸状部4D、細外径部4F及び大外径部4Gがこの順に形成されていて、二つの細外径部4E、4Fは同じ半径寸法Xを有し、大外径部4Gの外径と凸状部4Dにおける最大外径部4Hとは同じ半径寸法Yを有する。凸状部4Dは、
図2における上側の細外径部4Eからなだらかに立ち上がって最大外径部4Hに至り、最大外径部4Hからなだらかに下降して細外径部4Fに至るように形成され、凸状部4Dの断面、つまり第1ステム4Aの中心軸線を共有する平面で切断した断面の形状は、山型を呈している。
【0061】
図1に示されるように、第1ステム4Aの他端側が、隔絶板2Cに設けられた挿入開口部2Dに挿入される。
【0062】
図1に示されるように、第1ステム4Aの他端には、すなわち吐出開口部4Cが設けられた一端とは反対側の他端には、第2ステム4Bの一部が挿入されることにより、第2ステム4Bが第1ステム4Aに一体に固着される。
【0063】
第2ステム4Bは、第1ステム4Aに挿入され、しかも開口部を有する先端部と、その先端部と同じ直径を有して延在する中空管状の中央部と、その中央部の前記先端部と反対側に円錐台形状に形成された円錐台形部と、その円錐台形部に連続して形成され、円筒体2Gの内周面に液密に接触する円盤体4Iとを備える。前記中央部の円錐台形部寄りの周面には中央部の内部と外部とを連通する開口部が設けられ、前記円錐台形部の外周面に開口部が設けられるとともに、円盤体4Iの一端面にも中心開口部が設けられ、前記円錐台形部における開口部と円盤体4Iにおける中心開口部とは内部で連通している。
図1に示されるように、第2ステム4Bには、前記円盤体4Iの中央部に設けられた中心開口部から第2ステム4Bの外に抜け出て、再び第2ステム4Bの内部空間に至る内部流路4Jが設けられる。前記中央部の周側面には吐出弁7が装着され、他端には円筒体2Gの内周面に液密に接触する円盤体4Iが設けられる。この円盤体4Iと円筒体2Gとで形成される空間によってポンプ室8が形成される。
【0064】
図5に示されるように、吐出弁7は、第2ステム4Bの外径よりも大きな直径である内径と円筒体2Gの内径よりも小さな直径である外径とを有する環状基部7Aと、この環状基部7Aの、中心軸線とは直交する方向において内側に、筒状に立設して形成され、その先端部が第2ステム4Bの外周面に液密に接触する内側環状シール部7Bと、前記環状基部7Aの、中心軸線とは直交する方向において外側に、筒状に立設して形成され、その先端部が円筒体2Gの内周面に液密に接触する第1外側環状シール部7Cと、前記環状基部7Aの、中心軸線とは直交する方向において外側であって、前記外泡環状シール部7Cとは反対側に延在するように筒状に形成され、その先端部が円筒体2Gの内周面に液密に接触する第2外側環状シール部7Dとを備えて形成される。
図5に示す例においては、装着用筒部2Jの下端部に、前記第1外側環状シール部7Cの先端部が当接すると、前記環状基部7Aの内側角部7Eが円錐台形部に密着して内部流路4Jが閉塞し、ピストン4が下降して第2ステム4Bの下端部が内側環状シール部7Bの先端部に当接すると、前記環状基部7Aの内側角部7Eが円錐台形部から離れて内部流路4Jが開通する。
【0065】
前記吐出弁7はこの内部流路4Jを開閉するとともに、前記円盤体4Iの中央部に設けられた中心開口部から第2ステム4Bの外に抜け出て、再び第2ステム4Bの内部空間に至る流路を液密にシールする機能を有する。
【0066】
前記操作ボタン3は、ノズル開口部3Aと、流路3Bと、内側筒状部3Cと、ストッパ3Dと、環状鍔部3Eとを有する。
【0067】
この操作ボタン3は、円筒形状をなす外側円筒体3Fと、その外側円筒体3Fの内部に、その外側円筒体3Fの中心軸線と同じ中心軸線を有する円筒体となるように設けられた内側筒状体3Cと、を有する。なお、前記内側筒状体3Cは、この発明における筒状部に対応する。この外側円筒体3Fと内側筒状体3Cとで、二重管構造が形成される。外側円筒体3Fの内周面と内側筒状体3Cの外周面とで環状の空間が形成される。
【0068】
前記外側円筒体3Fは、外側円筒体3Fの一方が開口し、他方は閉鎖されたカップ状となっている。この外側円筒体3Fの開口側の端部は、外側に僅かに張り出して前記縁辺鍔部2Hに係合する環状の鍔部に形成された環状鍔部3Eを、有する。
【0069】
図1に示されるように、前記環状の空間内にコイルスプリング5の一部が配置され、空間内のコイルスプリング5の一端が外側円筒体3Fの天井面に接し、コイルスプリング5の他端が隔絶板2Cの表面に接している。この操作ボタン3は、このコイルスプリング5の付勢力により、ポンプ本体2から離反するように、付勢されている。この操作ボタン3は、縁辺鍔部2Hに環状鍔部3Eが係合しているので、前記コイルスプリング5の付勢力により、開口筒部2Iから飛び出して離脱することはない。
【0070】
図1に示されるように、前記内側筒状体3Cは、外側円筒体3Fにおける開口部、すなわち隔絶板2Cに向かって開口する開口部を有し、また、その開口部とは反対側の端部は天井面(なお、
図1に示されるように、開口部が下方に位置する場合を想定すると、開口部とは反対側の端部は上部に位置することとなって、反対側の端部は「天井面」と形容することができる。)となって閉鎖される一方、流路3Bと連通している。
【0071】
図3に示されるように、この内側筒状体3Cは、中心軸線に直交する断面において、軸線方向に沿って一定外径を有する外周面3Gと、第1ステム4Aを挿入する領域において第1ステム4Aの吐出開口部4Cに隣接する細外径部4Eを液密に嵌合することのできる密接内周面3Hと、第1ステム4Aに設けられている凸状部4Dに係合するように内側筒状体3Cの内部に向けて半径方向に突出するように内側筒状体3Cの内周面に環状に設けられた係合部3Iと、この係合部3Iを挟んで設けられた二つの肉薄部3J、3Kとを有する。
【0072】
前記内側筒状体3Cには4個のストッパ3Dが設けられる。4個のストッパ3Dはいずれも天井面と内側筒状体3Cの内周面とから突出するように設けられる。内側筒状体3Cの中心軸線に直交する断面において、4個のストッパ3Dは互いに直角をなすように内側筒状体3Cの内周面から突出し、向き合う2個のストッパ3D,3Dは所定の間隔を有して配置されている。向き合う2個のストッパ3D、3Dは、所定の間隔を有して隔てられた対向面を有する。4個のストッパ3Dにおける前記対向面に隣接し、中心軸線に直交する平面上にある端面は、前記吐出開口部4Cのある第1ステム4Aの端面とは所定の間隔を有して対向するように配置される。4個のストッパ3Dにおける前記対向面に隣接し、中心軸線に直交する平面上にある端面を対向端面3Lと称することがある。
図1に示されるように、第1ステム4Aの一端を内側筒状体3Cに嵌合し、操作ボタン3における間隙拡大防止部3Eがポンプ本体2における縁辺鍔部2Hに係合した状態にあるときに、第1ステム4Aの吐出開口部4Cの端面とストッパ3Dの対向端面3Lとの間で形成される内側筒状体3C内の空間を、容積増減空間Qと称することがある。
【0073】
なお、
図1において、9で示される部材は、容器本体の装着開口部の端面とポンプ本体2における装着板2Fとの間に介装することにより液密性を高めるパッキンである。
【0074】
この発明に係るポンプ装置の作用について、以下に説明する。
【0075】
(操作ボタン3の下降)
図1に示されるポンプ装置1において、ポンプ室8の内部、ピストン4の内部及び流路3Bに流動物が充填している状態を初期状態とする。前記初期状態であり、しかもポンプ本体2が容器本体の上方に位置する状態にあるポンプ装置1の操作ボタン3を押圧すると、操作ボタン3は、コイルスプリング5の付勢力に抗して、操作ボタン3が下がる。操作ボタン3が下がると、ストッパ3Dの対向端面3Lが第1ステム4Aの吐出開口部4Cの端面に接触する。なおも操作ボタン3を押圧すると、ストッパ3Dの対向端面3Lが第1ステム4Aの吐出開口部4Cの端面に接触したまま、第1ステム4Aが下がる。第1ステム4Aが下がり始めると、ノズル開口部3Aから流動物が、出始める。
【0076】
操作ボタン3をさらに押し続けると、第1ステム4Aと第2ステム4Bとがともに下降する。吐出弁7は、第1ステム4Aと第2ステム4Bの下降開始の初期の頃には、第1ステム4Aと第2ステム4Bとの下降に追随しない。その結果、第1ステム4Aの下降により第1ステム4Aの下端部が内側環状シール部7Bの先端部に当接し、前記環状基部7Aの内側角部7Eが円錐台形部から離れて内部流路4Jが開通して吐出弁7が開いた状態になる。内部流路4Jが開通したまま、さらに第1ステム4A及び第2ステム4Bが下降する。このとき、第2ステム4Bの下端部と内側環状シール部7Bの先端部とが密着し、同時に内側環状シール部7Bの先端部と第2ステム4Bの中央部外周面とも密着しているので、高度のシール性が実現されている。
【0077】
吐出弁7が開いた状態で第1ステム4A及び第2ステム4Bが下降し続けると、ノズル開口部3Aから流動物が、出続ける。第1ステム4A及び第2ステム4Bが下降し続けている間、吸込み弁6の半球体部6Aが、吸引貫通孔3Eを閉鎖している。したがって、ポンプ室8内の流動物が吸引貫通孔3Eを通じて容器本体に逆流することが、ない。
【0078】
操作ボタン3を下降させると遂には円盤体4Iが固定部6Eに当接する。固定部6Eがピストン4の下降を阻止するので、操作ボタン3はこれ以上下降することができなくなる。操作ボタン3が下降し切るまでの期間中に、ノズル開口部3Aから流動物が流出する。
図4は、操作ボタン3が下降し切った状態を示している。
【0079】
(操作ボタン3の上昇)
次いで、円盤体4Iが固定部6Eに当接して操作ボタン3がこれ以上下降しない状態に至った後に、操作ボタン3を押し下げる押圧力を解除する。
【0080】
そうすると、コイルスプリング5の付勢力により操作ボタン3と一体になっている内側筒状部3Cが上昇を開始する。内側筒状部3Cが上昇を開始するとき、第1ステム4Aは動くことがない。第1ステム4Aが動かずに静止している状態は、内側筒状部3Cにおける係合部3Iが、第1ステム4Aの凸状部4Dに係合するまで継続する。
【0081】
係合部3Iが凸状部4Dに係合すると、ストッパ3Dの対向端面3Lと第1ステム4Aの吐出開口部4Cのある端面との間に間隙が生じ、流路3B内が負圧になる。流路3B内が負圧になると、ノズル開口部3Aからわずかに出ていた、あるいはノズル開口部3Aから外部に液玉となってノズル開口部3Aから出ていた流動物が、前記負圧により、ノズル開口部3A内に引き込まれる。したがって、ノズル開口部3Aで従来生じていた液垂れがこのノズル装置1では生じることがない。
【0082】
凸状部4Dに係合部3Iが係合すると、コイルスプリング5の付勢力によって上昇しようとする内側筒状部3Cは係合部3Iに凸状部4Dをひっかけて第1ステム4Aを強制的に上昇させる。第1ステム4Aの上昇とともに第2ステム4Bも上昇する。第2ステム4Bの上昇動作に、吐出弁7は追随しない。故に、第2ステム4Bにおける円錐台形部と環状基部7Aの内側角部7Eとが密着して吐出弁7により内部流路7Jが閉塞される。内部流路7Jが閉塞された状態のまま第1ステム4Aと第2ステム4Bとがコイルスプリング5の付勢力により上昇し、吐出弁7も第2ステム4Bと共に上昇する。
【0083】
操作ボタン3の上昇は、コイルスプリング5の付勢力により、縁辺鍔部2Hに環状鍔部3Eが係合するとともに、装着用筒部2Jの下端部に、前記第1外側環状シール部7Cの先端部が当接する迄、継続する。係合部3Iに凸状部4Dが係合してから第1ステム4Aの上昇が開始すると、第2ステム4Bにおける円錐台形部と環状基部7Aの内側角部7Eとが密着して吐出弁7により内部流路7Jが閉塞され、さらに第2ステム4Bが上昇すると、ポンプ室8内の容積が増大するのでポンプ室8内が負圧になる。ポンプ室8内が負圧になると、半球体部6Aが浮き上がって吸引貫通孔2Eが開通状態になる。第1ステム4Aが更に上昇すると、ポンプ本体内に貯留されている流動物が、吸引貫通孔2Eを通じて、ポンプ室8内に流れ込む。操作ボタン3における環状鍔部3Eが縁辺鍔部2Hに係合すると、操作ボタン3はそれ以上上昇することができなくなる。操作ボタン3が上昇し続けている間、ポンプ室8内及び流路3B内が負圧になっているので、ノズル開口部3Aから流動物が吐出することはない。
【0084】
(操作ボタン3の下降)
操作ボタン3が上昇し切ったところで、操作ボタン3に押圧力を懸けて操作ボタン3を下に押し下げると、(操作ボタン3の下降)欄で説明した動作が始まり、ノズル開口部3Aから流動物が吐出される。
【0085】
この発明に係るノズル装置は、操作ボタン内に設けた筒状部(上記例では「内側筒状部」と称する。)に設けた係合部と、ピストンに設けられた凸状部との係合動作を利用することにより、下降し切った操作ボタンによってポンプ室内容積を最小にしてから、付勢部材の付勢力により操作ボタンを上昇させるときに筒状部の上昇だけを実現してピストンの先端部より先の流路内に負圧を生じさせる空間を実現し、この負圧によってノズル開口部に存在する流動物を流路内に引き込むことによりノズル開口部からの液垂れを防止している。