(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1に示す制御バルブ1は、燃料電池システムに用いられ、燃料タンク(以下ガス供給源という)から導かれる例えば30〜70MPaの燃料ガス(以下ガスという)を数MPaの所定値に制御して燃料電池(以下ガス供給先という)に供給するものである。なお、制御バルブ1は、燃料ガスとして水素ガスを導くものであるが、これに限らず、他の気体または液体を導く他の装置、設備等における高圧、大流量の流体が流れる回路に設けてもよい。
【0013】
制御バルブ1は、ガスを通過させるシート部22を有するバルブシート20と、このシート部22との間でガスの流れを絞るポペット弁60と、バルブシート20より下流側のガス圧力によってポペット弁60を駆動するピストン40と、ピストン40の背面に設けられ、ポペット弁60を開弁方向に付勢するスプリング11と、このスプリング11の付勢力に対抗してポペット弁60を閉弁方向に付勢するスプリング12と、を備える。
【0014】
制御バルブ1の作動時には、ガス供給源から導かれるガス圧力に応じてピストン40とポペット弁60が
図1の左右方向に移動し、ポペット弁60がシート部22との間でガスの流れを絞ることにより、ガス供給先へと導かれるガス圧力が設定値に調整される。
【0015】
制御バルブ1は、そのケーシングとして、バルブハウジング70とピストンハウジング80と、を備える。バルブハウジング70にはバルブシート20とポペット弁60とスプリング12とが収容される。
【0016】
制御バルブ1は、バルブハウジング70に開口する一次ポート71と、ポペット弁60が介装されるポペット通路30と、ピストン40によって画成される制御圧室45と、バルブハウジング70に開口する二次ポート77と、を備える。
【0017】
ガス供給源から供給されるガスは、図中矢印で示すように、一次ポート71に流入し、通孔72を通って、ポペット通路30に流入する。ポペット通路30を通過するガスは、シート部22とポペット弁60の間で絞られることによってその流量(圧力)が調整される。ポペット通路30を通過して降下するガス圧力が制御圧室45に導かれ、このガス圧力が所定値になるようにピストン40がポペット弁60を駆動する。制御圧室45を通過したガスは、通孔76、二次ポート77を通って、ガス供給先へと導かれる。
【0018】
ポペット通路30は、一次ポート71に連通するポペット上流路31と、シート部22とポペット弁60の間に画成されるポペット絞り流路32と、ポペット絞り流路32の下流側に画成されるポペット下流路33と、ポペット下流路33と制御圧室45とを連通させる連通路34と、を備える。
【0019】
ポペット弁60は、シート部22に対峙するポペット弁体61を有する。一方、バルブシート20は、
図2に示すように、ポペット通路30を画成する部位として、下流側に向けて縮径した円錐台状(線形テーパー状)のシート部22と、円筒状の連通路23と、下流側に向けて拡径した円錐台状(線形テーパー状)の出口部24と、を有する。
【0020】
シート部22とポペット弁体61との間に環状のポペット絞り流路32が画成される。ポペット弁60が
図1、2にて左方向に移動してシート部22から離れることにより、ポペット絞り流路32の流路断面積が拡大する。
【0021】
シート部22の内周面とポペット弁体61の外周面は、それぞれ中心線Oについて同心上に延びる円錐台状(線形テーパー状)に形成される。シート部22及びポペット弁体61の中心線Oを含む縦断面において、シート部22の内周面が沿う2つの仮想線(直線)間の角度は、ポペット弁体61の外周面が沿う2つの仮想線(直線)間の角度より所定の角度差だけ大きく形成される。これにより、閉弁時にポペット弁体61がシート部22の基端に形成されるシートエッジ部27に着座し、密封性が確保される。
【0022】
ポペット弁60は、ポペット弁体61の先端から延びてピストン40に連結されるロッド62を有する。ポペット弁60は、ロッド62を介してピストン40とに連結されており、ピストン40と一体となって移動する。
【0023】
バルブハウジング70には、ポペット上流路31を画成する通路穴73と、その端面75に開口するネジ穴74とが、中心線Oについて同心上に形成される。
【0024】
バルブシート20は、通路穴73に嵌合される円筒状のガイドシリンダ部25と、ネジ穴74の底部に着座する円盤状の仕切部21と、を有して、バルブハウジング70に取り付けられる。
【0025】
ポペット弁60は、ポペット弁体61の基端側に径方向に突出する環状のガイド部63を有する。このガイド部63は、バルブシート20のガイドシリンダ部25に摺動可能に挿入される。ポペット弁60は、ガイド部63を介してバルブシート20の中心線Oについて同心上に支持され、円錐台状のポペット絞り流路32がその周方向について均等な間隙(流路幅)を有する。
【0026】
円筒状のガイドシリンダ部25には、切欠部26が形成される。この切欠部26によってガイド部63の上流側と下流側が連通される。なお、これに限らず、ガイド部63に通孔を形成して、その上流側と下流側が連通される構成としてもよい。
【0027】
ポペット弁60は、ガイド部63から軸方向に突出するガイドピン部64を有する。一方、バルブハウジング70には、ガイドピン部64が摺動可能に挿入されるガイド穴78が形成される。ポペット弁60は、ガイドピン部64がガイド穴78に摺動可能に挿入されることにより、バルブシート20の中心線Oについて同心上に支持される。
【0028】
ポペット通路30を流れるガスは、ポペット弁体61によって圧力が調整され、流速が高められるのに伴って渦流が生じる。
【0029】
これに対処して、バルブシート20にはポペット弁体61によって圧力が調整された流体を整流する流体整流部50が設けられる。
【0030】
流体整流部50は、バルブシート20の端部に設けられ、シート部22と流体整流部50がポペット弁60の軸方向に並ぶように配置される。
【0031】
流体整流部50は、バルブハウジング70のネジ穴74に螺合して取り付けられる。流体整流部50の外周面53には、ネジ穴74に螺合する雄ネジが形成されている。流体整流部50とバルブハウジング70の間にバルブシート20が挟持される。
【0032】
流体整流部50の内周には雌ネジ51が形成され、この雌ネジ51にプラグ90が螺合して組み付けられる。
【0033】
プラグ90は、流体整流部50の雌ネジ51に螺合する円筒部91と、流体整流部50の端面56に当接するフランジ部95とを有する。
【0034】
本発明では流体整流部50とバルブシート20は別体で形成されているが、流体整流部50をバルブシート20に一体に形成する構成としてもよい。
【0035】
ポペット弁60のロッド62は、ポペット弁体61の先端に接続する小径ロッド部65と、この小径ロッド部65から拡径して形成されピストン40に接続する大径ロッド部66と、を有する。大径ロッド部66は、プラグ90の内周面92に摺動可能に挿入される。
【0036】
流体整流部50とポペット弁60の間にポペット下流路33が設けられる。小径ロッド部65とプラグ90の内周面92の間には、環状の間隙13が画成される。プラグ90の外周面93と流体整流部50の内周面52の間には、環状の間隙14が画成される。プラグ90には、間隙13と間隙14を連通する複数の通孔96が形成され、これらによってポペット下流路33が構成される。
【0037】
流体整流部50の筒状端部は、ポペット絞り流路32を通過したガスを連通路34に導入するポペット下流路壁部59を構成している。ポペット下流路壁部59はポペット下流路33を画成し、ポペット下流路壁部59には連通路34が開口している。
【0038】
連通路34は、ポペット下流路33からポペット弁60の径方向(中心線S方向)に延びている。
【0039】
連通路34は、流体整流部50の端面56にプレス加工または切削加工が施されることによって形成される溝57によって整流路を構成する。溝57の深さは任意(例えば0.1〜0.2mm)に設定される。要求される特性に応じて、溝57の形状、深さを変えればよいので、設定が容易に変更できる。なお、溝57はプラグ90の端面97に設けてもよい。
【0040】
図3は、
図2のA−A線に沿う流体整流部50の断面図である。これに示すように、流体整流部50には、3本の溝57が形成される。なお、溝57の本数は、これに限らず、要求される性能に応じて任意に設定される。
【0041】
各溝57は、それぞれの中心線Sが中心線Oを中心とする半径方向に延びるように放射状に形成される。各溝57は、周方向に均等な間隔を持って形成される。
【0042】
溝57の横断面は、扇形に形成される。溝57の中心線Sに直交する開口幅は、中心線Oを中心とする外径方向に向かって次第に大きく形成される。これにより、連通路34の流路断面積は、連通路34の上流側から下流側にかけて次第に大きくなるように構成される。
【0043】
流体整流部50は、断面六角形の内周面52と、断面円形の外周面53と、を有する。溝57は、その一端が内周面52に開口し、その他端が外周面53に開口する。これにより、連通路34は、その一端がポペット下流路33に臨み、その他端が制御圧室45に臨む。
【0044】
流体整流部50の内周面52に開口する溝57の断面積が、連通路34の最小流路断面積となる。この連通路34の最小流路断面積は、ポペット絞り流路32の最大流路断面積より大きくなるように設定される。これにより、ポペット通路30を通過するガスの流れに対して、ポペット絞り流路32が付与する抵抗(圧力損失)が、連通路34が付与する抵抗より大きくなり、ポペット絞り流路32の流路断面積を変えることによって、制御圧室45に導かれるガスの圧力を応答性よく制御することができる。
【0045】
制御圧室45は、流体整流部50とプラグ90のまわりに環状の空間として画成される。ピストン40には、制御圧室45を画成する凹部42が形成される。この凹部42の内側に流体整流部50とプラグ90が配置される。これにより、制御圧室45の容積を十分に確保することと、制御バルブ1の小型化をはかることが両立される。
【0046】
筒状のピストンハウジング80は、バルブハウジング70の一端に締結される。ピストン40は、Oリング41を介してピストンハウジング80に摺動可能に挿入される。
【0047】
ピストンハウジング80の一端にキャップ85が締結される。ピストン40とキャップ85の間にコイル状のスプリング11が圧縮して介装される。
【0048】
ピストン40とキャップ85の間に背圧室46が画成される。この背圧室46には、ポペット弁60を開弁方向に付勢するスプリング11が収容されるとともに、パイロット圧として大気圧が外部から通孔(図示せず)を介して導かれる。
【0049】
以下、制御バルブ1の作動について説明する。
図1、2に矢印で示すように、ガス供給源から一次ポート71に供給されるガスは、ポペット通路30において、ポペット上流路31、ポペット絞り流路32、ポペット下流路33、連通路34、を順に通って、制御圧室45へと導かれ、制御圧室45から、通孔76、二次ポート77を通ってガス供給先へと導かれる。
図1、2において、ガスは、ポペット弁60に沿って右方向に流れ、続いて連通路34及び制御圧室45を折り返し、通孔76を通って左方向に流れる。これにより、一次ポート71と二次ポート77とを共にバルブハウジング70の一端に配置することが可能となり、制御バルブ1の大型化が避けられる。
【0050】
ポペット弁60には、スプリング11、12のバネ力差による付勢力が開弁方向に働くとともに、制御圧室45と背圧室46の圧力差による付勢力が閉弁方向に働く。ポペット弁60は、これらの付勢力とが釣り合う位置に移動し、ポペット絞り流路32の流路断面積が増減することによって、ポペット絞り流路32を通過するガス流に付与される抵抗が変わり、制御圧室45及び二次ポート77の圧力が設定値に保たれる。
【0051】
制御圧室45の圧力が設定値より低下すると、ポペット弁60が
図1において左方向に移動する。これによって、ポペット絞り流路32の流路断面積が拡大し、制御圧室45の圧力が上昇して設定値に近づく。やがてピストン40の凹部42の底面43がプラグ90の端面99に当接することにより、ポペット弁60の移動が規制され、制御バルブ1の開度が最大になる。なお、ピストン40の凹部42の底面43が流体整流部50の端面56に当接しても、両者の間にはガスが流れる流路(図示せず)が確保されている。
【0052】
一方、制御圧室45の圧力が設定値より上昇すると、ポペット弁60が
図1において右方向に移動する。これによって、ポペット絞り流路32の流路断面積が減少し、制御圧室45の圧力が低下して設定値に近づく。やがてポペット弁体61がシート部22に当接することにより、ポペット弁60の移動が規制され、制御バルブ1の開度が最小(零)になり、ガスの流れが止められる。
【0053】
ポペット通路30を流れるガスは、ポペット弁60によって圧力が調整され、ポペット絞り流路32の前後差圧が高い条件では、ポペット絞り流路32の下流側に渦流が生じる。
【0054】
この渦流が生じたガスは、ポペット下流路33から流体整流部50に形成された連通路34に流入することによってその流れが整流される。ポペット絞り流路32の下流側に生じる渦流が整流されることにより、制御バルブ1から騒音が発生することを防止できる。
【0055】
連通路34は、その流路断面積が下流側に向けて次第に大きくなっているため、連通路34を流れるガスの圧力が次第に低下し、ガスの流れを整流する効果が高められるとともに、ガスの流れに付与する抵抗を抑えられる。
【0056】
連通路34が制御圧室45の上流側に設けられるため、ポペット絞り流路32と連通路34がそれぞれガスの流れに付与する抵抗によって制御圧室45の圧力が制御され、連通路34がガスの流れに付与する抵抗によって二次ポート77に導かれるガスの圧力が変動することを抑えられる。
【0057】
(第2実施形態)
次に
図4に示す本発明の第2実施形態を説明する。
図4は、制御バルブ1の断面図である。この制御バルブ1の構成は、第1実施形態と基本的に同じであるため、以下では、第1実施形態と相違する点のみについて説明する。なお、第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付す。
【0058】
制御バルブ1に設けられる流体整流部50は、ポペット下流路33を画成するポペット下流路壁部59と、このポペット下流路壁部59に開口してポペット下流路33と制御圧室45とを連通させる複数の連通路35と、を備え、この連通路35は流体整流部50に形成される複数の孔55によって画成される。
【0059】
各孔55は、その一端がポペット下流路壁部59の内周面に開口し、ポペット下流路33に臨み、他端がポペット下流路壁部59の外周面に開口し、制御圧室45に臨む。
【0060】
各孔55は、それぞれの中心線が中心線Oを中心とする半径方向に延びるように放射状(直線状)に形成される。各孔55は、周方向に均等な間隔を持って形成される。
【0061】
ポペット通路30を流れるガスは、ポペット弁体61によって圧力が調整され、ポペット絞り流路32の下流側に渦流が生じる。この渦流が生じたガスは、ポペット下流路33から連通路35に流入することによって整流される。ポペット絞り流路32の下流側に生じる渦流が整流されることにより、制御バルブ1から騒音が発生することを防止できる。
【0062】
以上の実施形態によれば、以下に示す作用、効果を奏する。
【0063】
(1)バルブシート20にポペット弁60によって圧力が調整された流体を整流する流体整流部50が設けられるため、バルブシート20のシート部22とポペット弁60の間を通過して流体(ガス)に生じる渦流が流体整流部50を通過することにより整流される。これにより、流体の渦流に起因する制御バルブ1の騒音を低減できる。
【0064】
(2)流体整流部50は、バルブシート20の端部に設けられるため、バルブシート20のシート部22に流体整流部50を近づけることが可能となり、バルブシート20のシート部22とポペット弁60の間を通過して流体(ガス)に生じる渦流が流体整流部50によって有効に整流される。
【0065】
(3)ポペット弁60と流体整流部50との間に設けられるポペット下流路33と、流体整流部50の下流側に設けられポペット弁60を駆動するピストン40によって画成される制御圧室45と、を備え、流体整流部50はポペット下流路33と制御圧室45とを連通させる連通路34を備えるため、流体の渦流が制御圧室45に導かれることが抑えられ、制御バルブ1から騒音が発生することを防止できる。そして、連通路34は、制御圧室45の上流側に設けられるため、連通路34が流体の流れに付与する抵抗によって流体供給先へと導かれる流体の圧力が変動することを抑えられる。
【0066】
なお、ポペット弁60を開閉駆動する手段は、流体の圧力によって作動するピストン40に限らず、他のアクチュエータを用いてもよい。
【0067】
(4)流体整流部50に設けられる溝57によって連通路34が形成されるため、連通路34を通過する流体が、溝57に沿うことにより、渦流を整流させることができる。
【0068】
また、連通路35が溝57で形成され、加工が容易であるため、要求される特性に応じて、溝57の形状、深さを変えることによって、設定が容易に変更できる。
【0069】
(5)連通路34の流路断面積が下流側に向けて次第に大きく形成されるため、連通路34を流れる流体の圧力が次第に低下し、流体の流れを整流する効果を高められるとともに、流体の流れに付与する抵抗を抑えられる。
【0070】
(6)連通路34はポペット下流路33からポペット弁60の径方向(中心線S方向)に延びるため、流体の流れ方向がポペット弁60の軸方向から径方向へと変換され、連通路34を折り返すように流体を導くことが可能となる。これにより、ポペット通路30の通路長がポペット弁60の軸方向について大きくなることを抑えられ、制御バルブ1の大型化が避けられる。
【0071】
(7)第2実施形態において、連通路35は、流体整流部50に設けられる孔55によって画成されるため、流体が孔55の内周面に沿って流れることによって整流される。
【0072】
なお、各孔55は、上述した構成に限らず、その内周面を下流側に向けて縮径した円錐台状(線形テーパー状)に形成してもよい。これにより、連通路35の流路断面積が下流側に向けて次第に大きく形成されるため、連通路35を流れる流体の圧力が次第に低下し、流体の流れを整流する効果を高められるとともに、流体の流れに付与する抵抗を抑えられる。
【0073】
本発明は上記の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。