【実施例】
【0010】
[実施例1の構成]
図1ないし
図6は、本発明を適用した燃料濾過装置(実施例1)を示したもので、燃料濾過装置に、ダストを重力でフィルタケースの底部に沈降または堆積させる構造、およびチャンバ内に沈降したダストが再び舞い上がるのを抑制する構造を備えている。
【0011】
本実施例の燃料濾過装置1は、例えば自動車等の車両に搭載される内燃機関(エンジン)で使用される燃料を貯蔵する燃料タンクを備え、燃料タンクからエンジンの気筒へ燃料を供給する燃料供給システム(内燃機関の燃料供給装置)に組み込まれている。
燃料供給システムは、燃料タンクから汲み上げた燃料中に含まれる異物を取り除く燃料濾過装置1と、この燃料濾過装置1から吸入した燃料を加圧して高圧化する燃料ポンプ(サプライポンプ)と、このサプライポンプの吐出口から吐出された高圧燃料が導入されるコモンレールと、このコモンレールの各燃料出口から高圧燃料が分配供給される複数のインジェクタとを備え、コモンレールの内部に貯蔵(蓄圧)された高圧燃料を各インジェクタを介してエンジンの各気筒内に噴射供給するように構成されている。
【0012】
サプライポンプは、加圧室に吸入した燃料を加圧するプランジャと、このプランジャを駆動するカム機構と、加圧室の内部に吸入される燃料量を調量して燃料の吐出量を制御する電磁弁とを備えている。
複数のインジェクタは、燃料噴射を行う噴孔を開閉するニードルと、このニードルの開閉動作を制御する電磁弁とをそれぞれ備えている。
サプライポンプの電磁弁および複数のインジェクタの各電磁弁は、エンジン制御ユニット(電子制御装置:以下ECU)によって電子制御されるポンプ駆動回路およびインジェクタ駆動回路を介して、自動車等の車両に搭載されたバッテリに電気的に接続される。
【0013】
燃料濾過装置1は、円筒形状で、フィルタケース2の中心軸線に対して左右対称形状となっており、使用時に燃料濾過装置1の中心軸線方向が、自動車等の車両搭載時における重力方向(以下重力方向)と一致するように設置される。
燃料濾過装置1は、燃料タンクから燃料ポンプへ燃料を導く燃料供給配管の途中に接続される有底円筒状のフィルタケース2と、燃料中に含まれる水滴を分離するフィルタエレメント3と、燃料中に混入したダストを捕集、捕捉するフィルタエレメント4と、ダストを重力により沈降させるチャンバ5と、このチャンバ5に対する燃料の流入方向を制御する燃料方向制御手段とを備えている。
なお、本実施例の燃料方向制御手段の詳細は、後述する。
【0014】
先ず、燃料濾過装置1のフィルタケース2内に収容されるフィルタエレメント3、4よりも下方のチャンバ5に燃料中に含まれるダストを重力により沈降させる方式について説明する。
フィルタケース2は、合成樹脂または金属によって形成されている。このフィルタケース2の中心軸線上には、燃料供給配管を介して燃料タンクに接続する円筒状の燃料導入管(センターパイプ)6が設けられている。このセンターパイプ6の図示下端部には、内部にフィルタエレメント3を収容するフィルタ支持部材7が例えば宙づり状態で固定されている。
フィルタケース2には、燃料供給配管を介して、外部の燃料タンクから燃料を吸い込む(吸入する)ための燃料吸入口を形成する1つの入口(インレット)ポート10が形成されている。
なお、本実施例のフィルタケース2の詳細は、後述する。
【0015】
フィルタエレメント3は、フィルタエレメント4に対して目が粗く、濾過性の低い不織布等の濾過材を円筒状または渦巻き状またはハニカム状または菊花状に成形した第2フィルタ(水分離機構)であり、フィルタ支持部材7の内部(円筒状のフィルタ収容部A)に収容されている。なお、フィルタエレメント3を設けなくても良い。
フィルタエレメント4は、フィルタエレメント3に対して目が細かく、濾過性の高い繊維等の濾過材を円筒状または渦巻き状またはハニカム状または菊花状に成形した第1フィルタ(ダストフィルタ)であり、フィルタケース2の上部(円筒状のフィルタ収容部B)に収容されている。本実施例は、ハニカム型フィルタである。
【0016】
チャンバ5は、フィルタ支持部材7の下方及び周囲に、燃料の流れ方向を変更するケース下部空間11、およびフィルタケース2の底面(ケース底面)上にダストや水滴を堆積または沈殿させるダスト堆積空間12を備えている。
チャンバ5の上方のフィルタ支持部材7の周囲には、円筒状のフィルタ外周空間13が形成されている。フィルタ外周空間13は、フィルタケース2の周壁部とフィルタ支持部材7の外周との間に形成された燃料流路(経路)である。
ここで、センターパイプ6の周囲には、円筒状のフィルタ入口空間(燃料流路)26、フィルタエレメント4および円筒状のフィルタ出口空間(燃料流路)27が形成されている。
【0017】
次に、本実施例のフィルタケース2の詳細を
図1ないし
図6に基づいて説明する。
フィルタケース2は、その中心軸線方向が車両上下方向(重力方向)に一致するように車両に設置される。このフィルタケース2は、例えば2分割された上部ケースと下部ケースとを備え、下部ケース内にフィルタエレメント3、4、チャンバ5および燃料方向制御手段を収容(または形成)した後、上部ケースと下部ケースとの結合部を溶接や溶着等の接合手段によって一体化することで構成される。
なお、上部ケース側に、プライミングポンプを設ける構成を採用しても良い。プライミングポンプは、ダイヤフラムと、このダイヤフラムを上下方向に揺動させるためのノブとを備えており、ノブを把持して手動で揺動させることにより、燃料タンク内の燃料を、燃料濾過装置1内の燃料経路を経由して、燃料噴射装置(サプライポンプ、コモンレール、インジェクタ等)側へ圧送する周知構造の手動式燃料ポンプである。
【0018】
フィルタケース2のインレットポート10は、フィルタケース2の中心軸線上に位置するセンターパイプ6における燃料流方向の上流端で開口している。つまりインレットポート10は、フィルタケース2の天壁中央で開口している。
また、インレットポート10と燃料供給配管との間に、内部に燃料導入流路が形成されたインレットパイプを介在しても良く、また、インレットパイプをフィルタケース2に一体的に形成しても良い。
【0019】
フィルタケース2には、燃料供給配管を介して、外部のサプライポンプの吸入口へ燃料を流出(吐出)させるための燃料吐出口を形成する複数の出口(アウトレット)ポート14が形成されている。なお、複数のアウトレットポート14は、少なくとも2つ以上設けられる。
これらのアウトレットポート14は、センターパイプ6の上流端の周囲を円周方向に取り囲むように所定の間隔で設けられている。つまり複数のアウトレットポート14は、フィルタケース2の天壁周縁で円周方向に所定の間隔で開口している。
また、アウトレットポート14と燃料供給配管との間に、内部に燃料導出流路が形成されたアウトレットパイプを介在しても良く、また、アウトレットパイプをフィルタケース2に一体的に形成しても良い。
【0020】
ここで、センターパイプ6内には、インレットポート10とフィルタ支持部材7の天板中央に設けられる燃料入口15とを連通する燃料導入流路16が形成されている。
フィルタケース2の上部には、フィルタエレメント4を収容するフィルタ収容部Bが設けられている。フィルタエレメント4は、センターパイプ6の周囲を円周方向に取り囲むように設置されている。フィルタエレメント4の中心部には、センターパイプ6が嵌合する貫通孔が形成されている。フィルタエレメント4は、センターパイプ6によって燃料導入流路16と液密的に隔てられている。
また、フィルタケース2の底部には、手動操作が可能なドレンコック(図示せず)が設けられており、フィルタケース2の下部のダスト堆積空間12に溜まった水とダストをフィルタケース2の下方(外部)に排出可能となっている。
【0021】
フィルタケース2の内部の燃料の経路は、先ず、重力方向(車両上下方向)の上方向から下方向へ向かって燃料が流れるように構成されている。その後に、重力方向の下方向から上方向へ向かって燃料が流れるように構成されている。すなわち、フィルタケース2の内部の燃料の経路は、フィルタエレメント3、4の下方のチャンバ5内で、燃料がU字状にターンして流れるように構成されている。
具体的に、チャンバ5の内部を流れる燃料の経路は、フィルタ支持部材7から燃料が流入すると共に、フィルタエレメント4へ燃料を流出するケース下部空間11等により構成されている。すなわち、フィルタ支持部材7からケース下部空間11へ流入した燃料は、先ず重力方向の上方向から下方向(ダスト堆積空間12側)へ向けて流れ、その後に、重力方向の下方向から上方向(フィルタエレメント4側)へ向けて流れる。
チャンバ5は、燃料中の水分を燃料から分離する水分離機能を有している。すなわち、チャンバ5に流入した燃料と水との比重差を利用してケース下部空間11やダスト堆積空間12に水を沈降させることにより、フィルタケース2の底面上に貯留している。
【0022】
次に、本実施例の燃料方向制御手段の詳細を
図1ないし
図6に基づいて説明する。
燃料方向制御手段は、フィルタエレメント3、フィルタ支持部材7、第1、第2燃料経路8、9および経路切替手段を備えている。
フィルタエレメント3は、フィルタ支持部材7のフィルタ収容部A内に収容されている。フィルタエレメント3の中心部には、燃料導入流路16の燃料流方向の下流端に接続する燃料導入流路17が形成されている。
【0023】
フィルタ支持部材7は、円環状の上板と、この上板との間にフィルタ収容部Aを形成する下板と、フィルタ収容部Aの周囲を円周方向に取り囲む円筒状の側板とを備えている。 上板の中央には、センターパイプ6の燃料流方向の下流端に接続する燃料入口15が形成されている。この燃料入口15は、燃料導入流路17の燃料流方向の上流端で開口している。
下板の中央には、流れ方向変更部材を構成する円板状のバッフルプレート18が設けられている。このバッフルプレート18は、燃料導入流路17の燃料流方向の下流端を閉塞している。これにより、燃料導入流路17を流れる燃料の流れ方向が、フィルタケース2の中心軸線方向の流れから放射方向(半径方向外側)への流れに変更される。
したがって、バッフルプレート18によって燃料導入流路17からチャンバ5のダスト堆積空間12へ向けて燃料が直接流出しないようにすることができるので、チャンバ5のダスト堆積空間12に沈降したダストが、フィルタ支持部材7からチャンバ5内に流入した燃料の流れにより再び舞い上がらないようにすることができる。
また、バッフルプレート18の閉塞部19の周囲には、フィルタエレメント3を係止する円環状の係止部20が設けられている。
【0024】
また、下板には、フィルタ支持部材7からチャンバ5へ燃料を流出させるための複数の燃料出口21が形成されている。これらの燃料出口21は、バッフルプレート18の周囲を円周方向に取り囲むように所定の間隔で設けられている。つまり複数の燃料出口21は、フィルタ支持部材7の下板周縁で円周方向に所定の間隔で開口している。なお、複数の燃料出口21は、燃料が通過可能な円形状または多角形状の開口部を有している。
側板には、フィルタ支持部材7からチャンバ5へ燃料を流出させる複数の燃料出口22が形成されている。これらの燃料出口22は、側板の円周方向に所定の間隔(等間隔)で開口している。なお、複数の燃料出口22は、燃料が通過可能な長円形状または楕円形状または多角形状の開口部を有している。この開口部は、円周方向に延びるように設けられている。
【0025】
フィルタ支持部材7の内部を流れる第1燃料経路8は、チャンバ5に対する燃料の流入方向(フィルタ支持部材7からチャンバ5への燃料の流出方向)を、フィルタケース2の重力方向の上方向から下方向のみとする経路である。
第1燃料経路8は、燃料入口15から燃料が導入される燃料導入流路17、フィルタエレメント3、およびチャンバ5へ燃料を流出する複数の燃料出口21等により構成されている。
【0026】
フィルタ支持部材7の内部を流れる第2燃料経路9は、チャンバ5に対する燃料の流入方向(フィルタ支持部材7からチャンバ5への燃料の流出方向)を、フィルタケース2の重力方向の上方向から下方向およびこの下方向以外の方向(横方向)とする経路である。 第2燃料経路9は、燃料入口15から燃料が導入される燃料導入流路17、フィルタエレメント3、およびチャンバ5へ燃料を流出する複数の燃料出口21、22等により構成されている。
燃料方向制御手段においては、複数の燃料出口21からチャンバ5へ流入する燃料が、重力方向の下方向へ向けて流れるように構成されている。
燃料方向制御手段においては、複数の燃料出口22からチャンバ5へ流入する燃料が、重力方向下側以外(
図1において図示左右(横、水平)方向)へ燃料が流れるように構成されている。
【0027】
経路切替手段は、フィルタ支持部材7の側板に設置された複数のフラップ軸受23、各燃料出口22を開閉可能な複数のフラップ24、および各フラップ24を初期位置(燃料出口22を閉じる全閉位置)に戻すフラップ戻し機構25を備え、チャンバ5に流入する燃料流量に基づいて、第1燃料経路8と第2燃料経路9とを切り替える。
複数のフラップ軸受23は、対応した各フラップ24の円周方向の一端部を回転自在に支持する軸支部である。これらのフラップ軸受23は、各燃料出口22の円周方向の一端縁に設けられている。
複数のフラップ24は、円周方向(円弧状)に延びるように開口した各燃料出口22に対応した形状(円弧形状)の可動板である。
フラップ戻し機構25は、各フラップ24を燃料出口22を閉じる側に付勢する板バネ等により構成されている。
【0028】
[実施例1の作用]
次に、本実施例の燃料濾過装置1の作用を
図1ないし
図6に基づいて簡単に説明する。
【0029】
エンジンが起動すると、サプライポンプの動作が開始される。
これにより、燃料タンクに貯蔵されている燃料が、燃料供給配管の燃料流方向の上流端で開口した吸い込み口から吸い込まれて燃料濾過装置1の内部に吸い込まれる。
燃料タンクから燃料供給配管を経て燃料濾過装置1に流入した燃料は、インレットポート10からフィルタエレメント4を迂回して燃料導入流路16に流入する。
燃料導入流路16に流入した燃料は、
図3および
図5に示したように、重力方向の上方向から下方向へ向けて流れて、燃料方向制御手段のフィルタ支持部材7内に流入する。
【0030】
燃料入口15から燃料導入流路17に流入した燃料は、
図3および
図5に示したように、重力方向の上方向から下方向へ向けて流れて、燃料導入流路17の軸線方向に対して垂直な方向(水平方向)に設置されるバッフルプレート18に衝突する。これにより、重力方向の上方向から下方向へと流れてきた燃料は、
図3および
図5に示したように、燃料導入流路17の軸線方向に対して垂直な放射方向への流れに変更される。
これによって、燃料導入流路17からフィルタエレメント3内に燃料が流入する。ここで、フィルタエレメント3を燃料が通過する際に、燃料中に含まれた異物(水滴)が分離除去される。また、粒径の大きい異物がフィルタエレメント3に捕捉される。
【0031】
フィルタエレメント3を通過して複数の燃料出口21からフィルタ支持部材7の下方へ向けて流出した燃料は、フィルタエレメント3の下方のチャンバ5のケース下部空間11内に流入する。ケース下部空間11内に流入した燃料は、各燃料出口21から流出した時点ではフィルタケース2の底面側(重力方向の上方向から下方向)へ向かって流れる。しかし、フィルタケース2の天壁周縁で複数のアウトレットポート14が開口しているので、フィルタケース2の底面の上方のケース下部空間11内で燃料の流れ方向を反転(Uターン、反対方向に変更)して、フィルタ外周空間13に流入する。
フィルタ外周空間13に流入した燃料は、チャンバ5よりも上方に配置されるフィルタエレメント4側へ向かう。つまりケース下部空間11内で流れ方向がUターンした燃料は、
図3および
図5に示したように、重力方向の下方向から上方向へ向けて流れて、フィルタエレメント4内に流入する。ここで、フィルタエレメント4を燃料が通過する際に、燃料中に含まれた粒径の小さい異物(ダスト等)が捕捉および捕集される。
その後、フィルタエレメント4を通過した燃料は、アウトレットポート14を通ってサプライポンプへ送られる。
【0032】
ここで、複数の燃料出口21は常に開放された状態であり、また、複数の燃料出口22は燃料濾過装置1を流れる燃料の流量(またはこの流量に応じて変化する燃料圧力)に対応してフラップ24の開度が変わる。これにより、複数の燃料出口22の開口面積が変更される。
フィルタ支持部材7の内部(フィルタ収容部A)とチャンバ5との間の圧力差が少ない、つまりチャンバ5に流入する燃料流量が所定値以下の時には、フラップ戻し機構25のバネ力が勝ち、各フラップ24が各燃料出口22を閉塞した状態となる(
図3および
図4参照)。
そして、フィルタ支持部材7からチャンバ5に流入する燃料流量が増加し、フィルタ収容部Aとチャンバ5との間の圧力差が増加すると、フラップ戻し機構25のバネ力が負け、各フラップ24が各燃料出口22を開放した状態となる(
図5および
図6参照)。
【0033】
ところで、複数の燃料出口22が開放された状態の時、フィルタエレメント3を通過して複数の燃料出口22からフィルタ支持部材7の側方(フィルタ外周空間13、横方向、半径方向の外側)へ向けて流出した燃料は、
図5に示したように、チャンバ5よりも上方に配置されるフィルタエレメント4側へ流れる。
また、チャンバ5のケース下部空間11内に流入した燃料に含まれる粒径の小さいダストDは、ダスト堆積空間12内に沈降してフィルタケース2の底面上に堆積または沈殿される(
図3および
図5参照)。
【0034】
[実施例1の効果]
本実施例の燃料濾過装置1のチャンバ5よりも重力方向の上方側には、フィルタ支持部材7の内部の燃料の経路を制御する燃料方向制御手段が設けられている。
燃料方向制御手段は、フィルタエレメント3、フィルタ支持部材7、第1、第2燃料経路8、9および経路切替手段(フラップ軸受23、フラップ24、フラップ戻し機構25)を備え、燃料濾過装置1を流れる燃料の流量(またはこの流量に応じて変化する燃料圧力)に対応してフィルタ支持部材7の内部の燃料の経路を制御している。
【0035】
これによって、フィルタ支持部材7の燃料出口21からチャンバ5内に流入する燃料の低流量時には、チャンバ5に対する流入方向が重力方向の下方向のみに設定される。
また、高流量時には、チャンバ5に対する流入方向が重力方向の下方向と水平方向(横方向)とに分配される。
したがって、燃料濾過装置1を通り抜ける燃料の総流量が増加した場合においても、重力方向の下方向へ向かう燃料の流量が所定値以上になることはない。この結果、フィルタ支持部材7よりも下方のダスト堆積空間12において、高流量で燃料が流入した場合に発生する問題、つまりそれまで沈降して堆積または沈殿していたダストDが再び舞い上がることを抑制することができる。
【0036】
以上のように、本実施例の燃料濾過装置1においては、フィルタケース2の底面付近に設けられるチャンバ5のダスト堆積空間12に、ダストDを重力により沈降させると共に、それまで沈降して堆積または沈殿していたダストDが、再び舞い上がることを抑制することにより、チャンバ5よりも燃料流方向の下流側で、且つチャンバ5よりも重力方向の上方側に配置されるフィルタエレメント4で捕捉および捕集されるダスト捕捉量を減らすことができる。これにより、フィルタエレメント4に目詰まりが生じ難くなるので、フィルタエレメント4を長寿命化させることができる。
この結果、燃料濾過装置1の耐久性を向上させることができる。
【0037】
[実施例2の構成]
図7および
図8は、本発明を適用した燃料濾過装置(実施例2)を示したもので、燃料濾過装置に、ダストを重力でフィルタケースの底部に沈降または堆積させる構造、およびチャンバ内に沈降したダストが再び舞い上がるのを抑制する構造を備えている。
ここで、実施例1と同じ符号は、同一の構成または機能を示すものであって、説明を省略する。なお、燃料濾過装置1には、実施例1の燃料方向制御手段が設けられていない。
【0038】
本実施例の燃料濾過装置1は、チャンバ5のダスト堆積空間12に沈降したダストが、フィルタ支持部材7の燃料出口21からチャンバ5内に流入する燃料の流れにより再び舞い上がらないようにダスト堆積空間12の上方にダスト沈降構造物を設置している。
本実施例のフィルタエレメント3は、実施例1と同様に、フィルタ支持部材7の内部空間(フィルタ収容部A)内に収容保持されている。
本実施例のフィルタ支持部材7には、燃料導入流路17の燃料流方向の下流端を閉塞して燃料導入流路17から燃料がチャンバ5のダスト堆積空間12へ向けて流出しないようにするバッフルプレート18、およびフィルタ支持部材7の下方のチャンバ5へ向けて燃料を流出させるための複数の燃料出口21が設けられている。
【0039】
本実施例のダスト沈降構造物は、ダスト堆積空間12に沈降したダストの舞い上がりを抑制する複数の板状部材(板状の第1〜第4円環部31)、およびこれらの第1〜第4円環部31を支持する複数の構造物支持部材(支持部32)を備えている。
第1〜第4円環部31は、チャンバ5のダスト堆積空間12よりも重力方向の上方に設置されている。また、第1〜第4円環部31は、ケース下部空間11とダスト堆積空間12とを分離するように配置されている。また、第1〜第4円環部31は、フィルタケース2の中心軸線を中心にした同心円状に配置されている。また、第1〜第4円環部31は、円環板形状に形成されて、内周(半径方向内径側)ほど、内径および外径が小さくなっている。
【0040】
第1円環部31は、第1〜第4円環部31の中で最も内周側、つまりフィルタケース2の中心軸線寄りに配置されている。この第1円環部31の内部には、ケース下部空間11とダスト堆積空間12とを連通して、フィルタケース2の底面側(ダスト堆積空間12内)へのダストの沈降を可能とする円形状の中央開口33が形成されている。
第2〜第4円環部31は、それぞれ第1〜第3円環部31の周囲を所定の隙間を隔てて円周方向に取り囲むように配置されている。また、第4円環部31は、第1〜第4円環部31の中で最も外周側、つまりフィルタケース2の周壁部34の周壁面寄りに配置されている。
隣接する第1、第2円環部31間、隣接する第2、第3円環部31間、隣接する第3、第4円環部31間には、同様に、フィルタケース2の底面側(ダスト堆積空間12内)へのダストの沈降を可能とする円周開口35がそれぞれ形成されている。
第4円環部31と周壁部34との間には、同様に、フィルタケース2の底面側(ダスト堆積空間12内)へのダストの沈降を可能とする円周開口36が形成されている。
【0041】
第1〜第4円環部31は、重力方向(車両上下方向)に水平にならない範囲で傾きを持つように配置されている。つまり第1〜第4円環部31は、フィルタケース2の中心軸線方向およびこれに垂直な水平方向に対して所定の傾斜角度だけ傾斜している。なお、第1〜第4円環部31の傾斜角度が異なっていても良い。例えば外周(半径方向外径側)ほど、水平方向に対して垂直に近く(傾きが小さく)なるように構成しても良い。
第1〜第4円環部31は、内周(半径方向内径側)ほど、半径方向の隙間が広くなるように配置されている。
なお、第1〜第4円環部31を、重力方向(車両上下方向)において互いに重なる(オーバーラップする)ように配置しても良い。
複数の支持部32は、フィルタケース2の中心軸線を中心にした放射方向に配置されている。これらの支持部32は、フィルタケース2の周壁部34に第1〜第4円環部31を固定する。
【0042】
[実施例2の効果]
従来の燃料濾過装置は、エンジン回転速度が高い条件で、高い流速の燃料が舞い上げた、フィルタケースの底面上に沈降していたダストがフィルタエレメント(ダストフィルタ)に捕集され、フィルタエレメントの寿命低下を招くことがあった。
本実施例の燃料濾過装置1では、ダストが沈降して堆積または沈殿するダスト堆積空間12の上方を部分的に覆うようにダスト沈降構造物(第1〜第4円環部31)を、フィルタケース2の中心軸線を中心にした同心円状に配置したことより、ダスト堆積空間12内での燃料の流動がし難くなる。これにより、エンジン回転速度が高く、流速が高い条件においても、フィルタケース2の底面上に沈殿したダストが燃料の流れによって巻き上がることがない。
したがって、沈殿したダストがフィルタエレメント4まで到達しない。つまりフィルタエレメント4まで舞い上がることがない。
この結果、フィルタエレメント4で捕捉されるダスト捕捉量が少なくなり、燃料濾過装置1の寿命を長期化することが可能となる。
以上のように、本実施例の燃料濾過装置1においては、実施例1と同様な効果を奏する。
【0043】
[実施例3の構成]
図9および
図10は、本発明を適用した燃料濾過装置(実施例3)を示したもので、燃料濾過装置に、ダストを重力でフィルタケースの底部に沈降または堆積させる構造、およびチャンバ内に沈降したダストが再び舞い上がるのを抑制する構造を備えている。
ここで、実施例1及び2と同じ符号は、同一の構成または機能を示すものであって、説明を省略する。
【0044】
本実施例の燃料濾過装置1は、実施例2と同様に、ダスト堆積空間12の上方にダスト沈降構造物を設置している。
本実施例のダスト沈降構造物は、ダスト堆積空間12に沈降したダストの舞い上がりを抑制する複数の板状部材(板状の第1〜第6円筒部41)、およびこれらの第1〜第6円筒部41を支持する複数の構造物支持部材(支持部42)を備えている。
第1〜第6円筒部41は、チャンバ5のダスト堆積空間12よりも重力方向の上方に設置されている。また、第1〜第6円筒部41は、ケース下部空間11とダスト堆積空間12とを分離するように配置されている。また、第1〜第6円筒部41は、フィルタケース2の中心軸線を中心にした同心円状に配置されている。また、第1〜第6円筒部41は、円筒形状に形成されて、フィルタケース2の底面側(重力方向の下方)ほど、および内周(半径方向内径側)ほど、内径および外径が小さくなっている。
【0045】
第1円筒部41は、第1〜第6円筒部41の中で最も内周側、つまりフィルタケース2の中心軸線寄りに配置されている。この第1円筒部41の内部には、ケース下部空間11とダスト堆積空間12とを連通して、フィルタケース2の底面側(ダスト堆積空間12内)へのダストの沈降を可能とする円形状の中央開口43が形成されている。
第2〜第6円筒部41は、それぞれ第1〜第5円筒部41の周囲を所定の隙間を隔てて円周方向に取り囲むように配置されている。また、第6円筒部41は、第1〜第6円筒部41の中で最も外周側、つまりフィルタケース2の周壁部44の周壁面寄りに配置されている。
隣接する第1、第2円筒部41間、隣接する第2、第3円筒部41間、隣接する第3、第4円筒部41間、隣接する第4、第5円筒部41間、隣接する第5、第6円筒部41間には、同様に、フィルタケース2の底面側(ダスト堆積空間12内)へのダストの沈降を可能とする円周開口45がそれぞれ形成されている。
第6円筒部41と周壁部44との間には、同様に、フィルタケース2の底面側(ダスト堆積空間12内)へのダストの沈降を可能とする円周開口46が形成されている。
【0046】
第1〜第6円筒部41は、フィルタケース2の中心軸線方向と平行な方向に延伸されている。また、第1〜第6円筒部41は、外周(半径方向外径側)ほど、高い位置に配置されるように構成されている。例えばケース下部空間11を流れる燃料の流れに沿うように、フィルタケース2の中心側よりも外側の方が高い位置に配置されるように構成する。これにより、燃料が第1〜第6円筒部41に衝突して燃料からダストが分離し易くなる。
なお、第1〜第6円筒部41は、内周(半径方向内径側)ほど、円周開口45が広くなるように配置しても良い。
複数の支持部42は、フィルタケース2の中心軸線を中心にした放射方向に配置されている。これらの支持部42は、フィルタケース2の周壁部44に第1〜第6円筒部41を固定する。
以上のように、本実施例の燃料濾過装置1においては、実施例2と同様な効果を奏する。
【0047】
[実施例4の構成]
図11は、本発明を適用した燃料濾過装置(実施例4)を示したもので、燃料濾過装置に、ダストを重力でフィルタケースの底部に沈降または堆積させる構造、およびチャンバ内に沈降したダストが再び舞い上がるのを抑制する構造を備えている。
ここで、実施例1〜3と同じ符号は、同一の構成または機能を示すものであって、説明を省略する。
【0048】
本実施例の燃料濾過装置1は、実施例2と同様なフィルタ支持部材7の下方にケース下部空間11とダスト堆積空間12が形成されたフィルタケース2を備え、ダスト堆積空間12の上方にダスト沈降構造物を設置している。
本実施例のフィルタケース2は、フィルタエレメント3、4を収容する円筒状の周壁部51、この周壁部51よりも下方に設けられて、燃料中に含まれるダストを沈降させて堆積させる凹部(中央底部)52、およびこの凹部52の開口周縁の周囲を取り囲む円環状の段部(周縁底部)53を備えている。
凹部52は、フィルタケース2の底面中央を凹ませることで設けられており、内部にダスト堆積空間12が形成されている。この凹部52は、フィルタケース2の段部53に対して脱着可能となっている。
段部53は、凹部52の開口周縁側(内周側)ほど底面高さが低くなるように傾斜した円錐面(テーパ面)を有している。
【0049】
本実施例のダスト沈降構造物は、ダスト堆積空間12に沈降したダストの舞い上がりを防止する円板状のバッフルプレート54、およびこのバッフルプレート54を支持する複数の構造物支持部材(支持部55)を備えている。
バッフルプレート54は、凹部52内のダスト堆積空間12を覆うように配置されている。このバッフルプレート54の外周と段部53の円錐面との間には、フィルタケース2の底面側(ダスト堆積空間12内)へのダストの沈降を可能とする円周開口56が形成されている。
本実施例のダスト沈降構造物は、流速の遅いダスト堆積空間12の中心部にダストを堆積させることで、ダストの舞い上がりを防止すると共に、凹部52を脱着可能とすることで、堆積した沈殿物(ダストや水分等)のみが除去可能となる。
以上のように、本実施例の燃料濾過装置1においては、実施例1〜3と同様な効果を奏する。
ここで、本実施例のダスト沈降構造物を、実施例1〜3に示すダスト堆積空間12の上方に配置することで、ダストの舞い上がりを防止する効果をより向上することができる。
【0050】
[実施例5の構成]
図12ないし
図16は、本発明を適用した燃料濾過装置(実施例5)を示したもので、燃料濾過装置に、ダストを遠心力で燃料から分離してフィルタケースの底部に沈降または堆積させる構造、およびチャンバ内に沈降したダストが再び舞い上がるのを抑制する構造を備えている。
ここで、実施例1〜4と同じ符号は、同一の構成または機能を示すものであって、説明を省略する。
【0051】
本実施例の燃料濾過装置1は、
図12および
図14に示したように、内部にフィルタエレメント4を収容するフィルタケース2を備えている。このフィルタケース2は、円筒状の周壁部(径小部)61に対して同心円状に配置された円筒状のフィルタ支持部材62を備えている。
フィルタケース2の上部に設けられる上部ケース63には、図示しないインレットポートが開口したインレットパイプ64が接続されている。また、上部ケース63は、フィルタケース2の上部の周壁部61の周囲を円周方向に取り囲むように設置されている。
フィルタ支持部材62の内部には、フィルタエレメント4を収容するフィルタ収容部Bが設けられている。このフィルタ支持部材62の内部には、フィルタ収容部Bに連通すると共に、フィルタケース2の上部から燃料をエンジンへと流出させる燃料出口流路65が形成されている。この燃料出口流路65は、重力方向の下方の燃料入口(開口部)66から流入した燃料をフィルタ収容部Bを経てフィルタケース2の上部(天壁)中央で開口したアウトレットポート14へ導く流路である。
【0052】
また、フィルタケース2の周壁部61の下部には、周壁部61よりも円筒径の大きい円筒状の周壁部(径大部)67が接続されている。この周壁部67の内部には、フィルタエレメント4の下方にチャンバ5が設けられている。このチャンバ5は、フィルタケース2の底面(ケース底面)上にダストや水滴を堆積または沈殿させるダスト堆積空間12を備えている。
また、フィルタケース2の底部を形成する底部プレート68の中央部には、ダストが流れの淀み点(中央底面の周囲の周辺底面)に沈降し易くなるように球面形状の凸部69が設けられている。
なお、凸部69は、球面形状の底面を有する突起部であって、フィルタケース2の底面形状を半球形状や錐形状とすることも考えられる。
【0053】
また、燃料濾過装置1は、チャンバ5よりも上方に、フィルタケース2に流入する燃料の流れにフィルタケース2の周壁部61の周壁面(円筒内面)に沿うように螺旋状に旋回する旋回流を発生させる旋回流発生手段が設置されている。
旋回流発生手段は、インレットパイプ64内に形成される燃料入口流路71、およびインレットパイプ64からフィルタケース2内に流入した燃料が旋回流になることを促進する旋回流生成室72等により構成されている。
燃料入口流路71は、上部ケース63の周壁部63aの周壁面の接線方向に真っ直ぐに延びるストレート部(直線流路)73、および上部ケース63の周壁部63aの周壁面に沿うように円弧状に湾曲し、フィルタケース2の円周方向に延びる湾曲部(曲線流路)74を有している。
【0054】
ここで、燃料入口流路71から円筒状の仕切り部75に形成される連通部(開口76)を経て旋回流生成室72内に流入した燃料は、フィルタケース2の中央に向かって旋回しながらフィルタケース2の下方に流れる。この旋回流は、フィルタ支持部材62の外周に沿って流れるよう設計される。
フィルタケース2の下方には、フィルタケース2の周壁部61よりも円筒径の大きいダスト堆積空間12が設置されており、燃料中に混入するダストは、旋回流生成室72から旋回しながら図示下方に移動する燃料の流れの中で旋回流の外側へと遠心分離され、燃料の流れがダスト堆積空間12に流入した時点で、更に外側までダストが分離される。
【0055】
その後、燃料は、ダスト堆積空間12の上方に設置された燃料出口流路65の燃料入口66から上方のフィルタエレメント4へと流出されるが、底部プレート68の凸部69の周囲のダスト沈殿空間77まで分離されたダストは、燃料のUターン流れの淀み点に沈降するため、燃料の流れの影響を受けることなく、ダスト沈殿空間77に捕集されたままとなる。
以上で説明したような作動により、燃料の流れで分離できるダストは、フィルタエレメント4での捕集量を少なくすることができるため、その分フィルタエレメント4の長寿命化につながることが期待できる。
以上のように、本実施例の燃料濾過装置1においては、実施例1〜4と同様な効果を奏する。
【0056】
上記で説明したダスト捕集方法によって、燃料濾過装置1のフィルタケース2の底面上にダストが捕集され続けると、いずれは堆積したダストの一部が燃料流れの影響を受け、再浮遊してフィルタエレメント4に捕集される。こうした状況を防ぐべく、フィルタケース2の下部(チャンバ5のダスト堆積空間12)で捕集されたダストは、完全に燃料流れの影響を受けないような構造にすることが望まれる。
そこで、
図13および
図14に示したように、燃料濾過装置1の下部にダスト移動用のキャッチタンク81を設置する構造を説明する。
【0057】
キャッチタンク81は、チャンバ5のダスト堆積空間12およびダスト沈殿空間77の重力方向の下方側に設けられている。このキャッチタンク81の内部には、ダスト堆積空間12およびダスト沈殿空間77に沈降したダストDをチャンバ5に流入する燃料の流れから分離して貯留する内部空間(ダスト貯留室82)が形成されている。
フィルタケース2の底部を形成する底部プレート68には、ダスト堆積空間12およびダスト沈殿空間77とダスト貯留室82とを連通する連通路である開口83が設けられている。また、底部プレート68のダスト貯留室82側には、開閉弁が設けられている。
開閉弁は、燃料の圧力に応じて開閉動作を行う圧力応動弁であって、開口83とこれに連通する開口84を開閉するバルブ85、このバルブ85を往復摺動可能に支持するバルブケース86、およびバルブ85を閉弁側(開口83、84を閉じる側)に付勢するコイルスプリング87等により構成されている。
【0058】
キャッチタンク81とダスト堆積空間12は、開口83、84により連通されているが、通常使用時には、コイルスプリング87に押し付けられたバルブ85により開口83、84は液密的にシールされている。
バルブ85およびコイルスプリング87は、ダスト堆積空間12の燃料圧力が所定値を超えた時(燃料の流量が増加した時、エンジン回転速度が高回転の時)に、コイルスプリング87の付勢力に打ち勝ってバルブ85を押し下げ、開口83、84を開く(開閉弁を開弁する)ように設計されている。
なお、開口83は、ダスト堆積空間12の底面(底部プレート68)に形成されているため、エンジンに対する安定した燃料供給という観点から、エンジンの停止直前または始動直後のみ開くことが望ましい。
【0059】
次に、
図15は、燃料濾過装置1の内部圧力を制御する燃料供給装置を示した図である。
燃料供給装置は、燃料タンク91から燃料を汲み上げるモータ駆動式のフィードポンプ92と、このフィードポンプ92から吸入した燃料中に含まれる異物を取り除く燃料濾過装置1と、この燃料濾過装置1から吸入した燃料を加圧して高圧化するサプライポンプ93と、このサプライポンプ93の吐出口から吐出された高圧燃料が導入されるコモンレール(図示せず)と、このコモンレールの各燃料出口から高圧燃料が分配供給される複数のインジェクタ(図示せず)とを備えている。
【0060】
フィードポンプ92は、燃料タンク91内に設置されるインタンク式の電動フューエルポンプである。このフィードポンプ92の動力源である電動モータは、ECU94によって電子制御されるポンプ駆動回路を介して、自動車等の車両に搭載されたバッテリに電気的に接続される。
ECU94は、エンジンの運転状態(運転状況)を検出するセンサの出力信号が入力するように構成されている。センサとしては、クランク角度センサ(エンジン回転速度センサ)、アクセル開度センサや燃料圧力センサ等の運転状態検出手段が使用される。
燃料濾過装置1とサプライポンプ93とを接続する燃料供給配管の途中には、電磁開閉弁95が設置されている。
電磁開閉弁95は、ECU94によって電子制御される電磁弁駆動回路を介して、自動車等の車両に搭載されたバッテリに電気的に接続される。この電磁開閉弁95は、通電(ON)されると開弁し、通電が停止(OFF)されると閉弁するように構成されている。 フィードポンプ92および電磁開閉弁95は、エンジンの停止直前または始動直後に、燃料濾過装置1の内部圧力(チャンバ5内の燃料圧力)が所定値を超えるように連動して制御される。これにより、燃料濾過装置1のチャンバ5内のダストがキャッチタンク81のダスト貯留室82内に沈降して貯留される。
【0061】
次に、
図16は、燃料濾過装置1の内部圧力を制御する燃料供給装置を示した図である。
燃料供給装置には、サプライポンプ93で生成された高圧燃料の一部を燃料濾過装置1のチャンバ5内に戻すためのリターン配管96、およびこのリターン配管96を開閉する電磁開閉弁97が設置されている。
電磁開閉弁97は、ECU94によって電子制御される電磁弁駆動回路を介して、自動車等の車両に搭載されたバッテリに電気的に接続される。この電磁開閉弁97は、通電(ON)されると開弁し、通電が停止(OFF)されると閉弁するように構成されている。 この燃料供給装置は、燃料のリターンに問題がない時期(例えばエンジンの停止直前)で電磁開閉弁97を開弁して、高圧燃料を燃料濾過装置1のチャンバ5内に戻すように構成されている。
なお、
図13ないし
図16に示した実施例5の構造は、重力でダストを沈降させる方式、遠心力でダストを沈降させる方式の両方において有効である。
以上のように、本実施例の燃料濾過装置1においては、実施例1〜4と同様な効果を奏する。
【0062】
[実施例6の構成]
図17ないし
図20は、本発明を適用した燃料濾過装置1(実施例6)を示したもので、燃料濾過装置に、燃料と水との界面にチャンバ内で重力により沈降したダストを吸着させる構造、およびチャンバ内に沈降したダストが再び舞い上がるのを抑制する構造を備えている。
ここで、実施例1〜5と同じ符号は、同一の構成または機能を示すものであって、説明を省略する。
【0063】
本実施例の燃料濾過装置1は、インレットポート10を有するインレットパイプ101からチャンバ5のダスト堆積空間12までの間に、燃料中の水滴を分離するフィルタエレメント3およびこのフィルタエレメント3を収容するフィルタ支持部材7を有する水分離機構が設置されている。
また、ダスト堆積空間12におけるフィルタケース2の底部上には、予めフィルタケース2の底部より上方に盛り上がるように水Wが入れてある。これにより、チャンバ5のダスト堆積空間12は、フィルタケース2の底面中央を周方向に取り囲むように、燃料以外の液体(水W)を保持する円筒状の液体保持空間を兼ねている。
【0064】
また、燃料濾過装置1は、流路形成部材(バイパスパイプ102)を備えている。
バイパスパイプ102は、フィルタケース2の外壁面との間に、フィルタケース2の外部からフィルタエレメント3、4を迂回してフィルタケース2の底面中央に燃料を導き、フィルタケース2の底面中央から重力方向の上方向のチャンバ5内へ向かって燃料を流出させるバイパス流路103を形成する凹状壁部である。
バイパスパイプ102の燃料流方向の上流端には、インレットポート10付近で開口した燃料入口104が設けられている。また、バイパスパイプ102の燃料流方向の下流端には、チャンバ5のダスト堆積空間12に臨むように開口した燃料出口105が設けられている。燃料出口105は、フィルタケース2の底面中央よりも重力方向の上方で、且つ燃料以外の液体(水W)と燃料との界面よりも重力方向の下方で開口している。
【0065】
インレットパイプ101からフィルタケース2内に燃料が流入する際には、燃料が循環される燃料入口104からバイパス流路103側にも燃料が流れる。
フィルタケース2の底面中央には、燃料出口105がある。この燃料出口105は、少なくともダスト堆積空間12の最底面よりも上方側にあり、沈降したダストDが再度舞い上がることを防止している。
燃料中のダストDは、ダスト堆積空間12の中で重力により沈降し、水Wと接触することにより吸着される。
【0066】
ここで、燃料出口105から流出した燃料により、ダスト堆積空間12に沈降または沈殿している水Wは、
図17および
図19に破線矢印で示したように、凸型の形状となり、更に、半径方向の外周方向(放射方向)への流れが発生する。これにより、燃料と水Wとの界面のダストは、外周方向へ移動し、
図17および
図19に実線矢印で示したように、外周にて図示下方向へ沈降するように動く。
さらに、水Wがあるため、燃料の流量が多いときも、水Wが防護壁となり、燃料の流れによるダストDの舞い上がりを防止できる。
この結果、フィルタエレメント4へ行くダストDの割合を低減させることが可能となり、フィルタエレメント4の寿命を延長することができる。
ここで、燃料・水・ダストの挙動を
図19に示す。また、従来品に対する発明品(実施例6)の効果を
図20に示す。
「ダスト舞い上がり率」とは、「燃料流れにより舞い上がったダスト」/「既に沈降しているダスト」のことである。
以上のように、本実施例の燃料濾過装置1においては、実施例1〜5と同様な効果を奏する。
【0067】
[変形例]
本実施例では、本発明の燃料濾過装置を、ディーゼルエンジン等の内燃機関(エンジン)に燃料を供給する燃料供給装置に組み込まれる燃料濾過装置1に適用したが、本発明の燃料濾過装置を、ガソリンエンジン等の内燃機関(エンジン)に燃料を供給する燃料供給装置に組み込まれる燃料濾過装置(燃料フィルタ)に適用しても良い。
また、燃料濾過装置1を燃料タンク内に設置しても良い。
また、チャンバ5のダスト堆積空間12、このダスト堆積空間12の周囲を取り囲む周壁部、およびダスト堆積空間12の底面を形成する底部プレートにより構成されるダスト保持部(ダスト沈殿部)を、フィルタケース2のフィルタ収容部に対して脱着可能としても良い。
また、燃料濾過装置1で濾過する燃料、つまり燃料タンクから吸入されてエンジン側へ供給される燃料は、ガソリンまたはディーゼル油(軽油)だけでなく、エタノール等のアルコールとガソリンとを混合したアルコール混合燃料、バイオエタノールやエタノール100%燃料を用いても良い。