【文献】
神谷 秀博,「固定発生源からの浮遊粒子状物質の評価・解析法の国際規格化と研究開発動向」,エアロゾル研究,日本エアロゾル学会,2007年12月20日,Vol. 22, No. 4,pp. 296-301
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような微粒子検知システムにおいては、排気ガスの取り入れや排出、イオンとの混合等を行うため、排気管に装着される検知部の作動に圧縮空気を要する。このため、システムとして、ポンプ等の圧縮空気を生成する圧縮空気源が必要である。ただし、このような圧縮空気源を用いることにより、システム全体が大型化し、コストアップにもなるので、システム専用に圧縮空気源を用いるのであれば、ポンプの中でも特に、小型で低コストのものを用いるのが好ましい。
しかしながら、このような小型のポンプは、能力的に余力がなく、連続駆動を行うと、ポンプの寿命の低下が問題となる。一方、ポンプの駆動を停止させると、検知部に圧縮空気を噴射するための噴射孔を通じて、排気ガスが逆流し、噴射孔に微粒子が堆積して詰まるなどの不具合が生じる虞もある。このため、圧縮空気の供給を停止することなく、ポンプの寿命を延ばすことが望まれる。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、検知部の作動に要する圧縮空気を生成するポンプの寿命を延ばすことができる微粒子検知システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の一態様は、通気管内を流通する被測定ガス中の微粒子の量を検知する微粒子検知システムであって、上記通気管に装着される検知部と、上記検知部の作動に要する圧縮空気を生成するポンプと、上記ポンプで生成された上記圧縮空気を溜め、上記検知部に上記圧縮空気を送るエアータンクと、上記ポンプの駆動を制御するポンプ駆動制御装置と、を備え、
前記検知部は、気中放電によりイオンを生成するイオン源と、前記被測定ガスを取り入れる取入口、及び上記取入口から取り入れた取入ガスを排出する排出口を含み、上記取入ガスが導入される内部空間を構成する空間形成部材と、前記エアータンクから供給された前記圧縮空気を、自身に形成した噴射孔を通じて上記内部空間に向けて噴射する気体噴射源と、を備え、上記空間形成部材は、上記圧縮空気により、上記取入口から上記取入ガスを上記内部空間に導き入れ、上記内部空間内で、上記取入ガスと上記イオンとを混合して、上記取入ガス中の前記微粒子に上記イオンを付着させて帯電微粒子とし、上記圧縮空気及び上記取入ガスとともに、上記排出口から上記帯電微粒子を排出する形態に構成されてなり、上記ポンプ駆動制御装置は、上記ポンプを、間欠駆動する微粒子検知システムである。
【0008】
この微粒子検知システムでは、検知部の作動に要する圧縮空気を生成するポンプのほか、このポンプで生成された圧縮空気を溜めて、検知部に圧縮空気を送るエアータンクを備えている。そして、エアータンクを備えていることにより、ポンプの駆動を制御するポンプ駆動制御装置は、ポンプを間欠駆動している。
これにより、検知部の作動のために、ポンプを常時駆動する必要がなく、ポンプの寿命を延ばすことができる。
しかも、このシステムでは、検知部は、気中放電によりイオンを生成するイオン源のほか、内部空間を構成する空間形成部材と、エアータンクから供給された圧縮空気を、噴射孔を通じて内部空間に向けて噴射する気体噴射源と、を備えている。そして、空間形成部材は、噴射孔を通じて噴射された圧縮空気によって、取入口から内部空間に導き入れた取入ガスとイオンとを混合して、取入ガス中の微粒子にイオンを付着させて帯電微粒子とし、圧縮空気及び取入ガスとともに、排出口から帯電微粒子を排出する形態に構成されている。
これにより、帯電微粒子の量から、適切に微粒子の量を検知することができる。
【0009】
なお、用いるポンプの種類としては、ベーン式ポンプ、ダイアフラムポンプ、ギアポンプ、ピストンポンプなどが挙げられる。システム専用に用いることを考えると、これらの中でも、小型で低コストのものを選択するのが好ましい。
また、イオン源における気中放電の形式としては、例えば、コロナ放電のほか、アーク放電やグロー放電などが挙げられる。また、イオン源をなす電極の形態としては、例えば、2つの電極を互いに対向して配置し、これら間に気中放電を起こさせても、基板上に隣在して2つの電極を配置し、これらの間で気中の沿面放電を生じさせてもよい。
さらに、イオン源及び気体噴射源の構成としては、イオン源を内部空間の外部に配置し、内部空間の外部で生成したイオンを、気体噴射源で圧縮空気と共に噴射孔を通じて内部空間に向けて噴射する構成が挙げられる。また、イオン源を内部空間内に配置し、内部空間内でイオンを生成する一方、気体噴射源から噴射孔を通じて、内部空間に向けて圧縮空気を噴射する構成も挙げられる。
【0010】
さらに、上述の微粒子検知システムであって、前記ポンプ駆動制御装置は、前記エアータンクの圧力変動が許容範囲内となるように、前記ポンプを間欠駆動する微粒子検知システムとすると良い。
【0011】
このシステムでは、ポンプ駆動制御装置は、エアータンクの圧力変動が許容範囲内となるように、ポンプを間欠駆動している。これにより、圧縮空気の供給を止めることなく、許容範囲内の圧力の圧縮空気を用いて、微粒子を継続して検知できる。加えて、エアータンクの圧力変動の許容範囲内で、ポンプの駆動のON/OFF時間を調整することができるので、ポンプの寿命をさらに延ばすことができる。
なお、ポンプ駆動制御装置が、エアータンクの圧力変動が許容範囲内となるように、ポンプを駆動する方法としては、具体的には、例えば、圧力センサを用いてフィードバックによる圧力制御を行う方法が挙げられる。また、検知部での圧縮空気の消費量、ポンプによる圧縮空気の供給量、エアータンクのタンク容量等を考慮して、予め定められた間隔でポンプの駆動をON/OFFする方法も挙げられる。
【0012】
さらに、上述の微粒子検知システムであって、前記ポンプは、モータ駆動のベーン式ポンプである微粒子検知システムとすると良い。
【0013】
このシステムでは、圧縮空気を生成するポンプとして、モータ駆動のベーン式ポンプを用いている。ベーン式ポンプは、小型・軽量・低コストであるため、システム専用のポンプとして用いるのに適している。しかしながら、使用によりベーンの磨耗を生じるほか、駆動に用いるモータの発熱の問題がある。また、モータに安価なブラシ付きDCモータを用いる場合には、これに加えて、ブラシの磨耗の問題も生じる。このため、ポンプを連続駆動すると、ポンプの寿命が著しく低下してしまうおそれがある。
しかるに、このシステムでは、エアータンクを備えることにより、ポンプを間欠駆動して、ポンプの寿命を延ばすことができるので、小型で低コストのモータ駆動のベーン式ポンプを用いることができる。
【0014】
さらに、上述の微粒子検知システムであって、前記ポンプは、最高圧力が100kPa以下、最大流量が20L/min以下の小型ポンプである微粒子検知システムとすると良い。
【0015】
このシステムでは、最高圧力が100kPa以下、最大流量が20L/min以下の小型ポンプを用いている。本システムにおいて、検知部の作動に要する圧縮空気の流量は、具体的には、1〜2L/min程度であることが判っている。このため、最大流量が20L/min以下クラスの小型ポンプであれば、能力的には、検知部に直結して使用することも可能である。しかしながら、前述したように、ポンプを連続駆動した場合には、寿命が短くなるという問題がある。一方、能力的にさらに余力のある大型のポンプやコンプレッサを用いることにより、寿命を延ばすことも考えられるが、システム専用に用いるには大きすぎて、コストも高い。
しかるに、このシステムでは、エアータンクを備えて、ポンプを間欠駆動しているので、小型ポンプの寿命を延ばして、システム専用に用いることができる。
【0020】
さらに、上述の微粒子検知システムであって、前記通気管は、車両の内燃機関の排気管であり、前記被測定ガスは、上記排気管内を流通する排気ガスである微粒子検知システムとすると良い。
【0021】
システムが、車両の内燃機関の排気管に装着され、排気管内の排気ガス中のススなどの微粒子を検知するのに用いられた場合は、例えば、10年以上の長期間に亘って使用されることとなる。このため、特に圧縮空気を生成するポンプの寿命を延ばすことが望まれる。
しかるに、このシステムでは、エアータンクを備えることにより、ポンプを間欠駆動して、ポンプの長寿命化を図っているので、車両に搭載することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本実施形態に係る微粒子検知システム1について、図面を参照して説明する。本実施形態の微粒子検知システム1は、車両AMに搭載したエンジンENG(内燃機関)の排気管EPに装着して、排気管EP内を流れる排気ガスEG中の微粒子S(ススなど)の量を検知する(
図1参照)。このシステム1は、主として、検知部10と、回路部201と、圧縮空気AKを生成するポンプ300と、ポンプ300を駆動するポンプ駆動制御装置301と、エアータンク303とからなる(
図2参照)。
検知部10は、排気管EP(通気管)のうち、取付開口EPOが穿孔された取付部EPTに装着されている。そして、その一部(
図2中、取付部EPTよりも右側(先端側))は取付開口EPOを通じて排気管EP内に配置されており、排気ガスEG(被測定ガス)に接触する。
回路部201は、排気管EP外で、複数の配線材からなるケーブル160を介して検知部10に接続されている。この回路部201は、検知部10を駆動するとともに、後述する信号電流Isを検知する回路を有している。
【0024】
先ず、本システム1のうち、回路部201の電気回路上の構成について説明する。回路部201は、計測制御回路220と、イオン源電源回路210と、補助電極電源回路240とを有している。
このうち、イオン源電源回路210は、第1電位PV1とされる第1出力端211と、第2電位PV2とされる第2出力端212とを有している。第2電位PV2は、具体的には、第1電位PV1に対して、正の高電位とされている。さらに具体的には、第2出力端212からは、第1電位PV1に対し、100kHz程度の正弦波を半波整流した、1〜2kV0-pの正のパルス電圧が出力される。なお、イオン源電源回路210は、その出力電流についてフィードバック制御され、自律的に、その実効値が予め定めた電流値(例えば、5μA)を保つ定電流電源を構成している。
【0025】
一方、補助電極電源回路240は、第1出力端211に導通して第1電位PV1とされる補助第1出力端241と、第3電位PV3とされる補助第2出力端242とを有している。この第3電位PV3は、具体的には、第1電位PV1に対して、正の直流高電位であるが、第2電位PV2のピーク電位(1〜2kV)よりも低い、例えば、DC100〜200Vの電位にされている。
【0026】
さらに、計測制御回路220の一部をなす信号電流検知回路230は、イオン源電源回路210の第1出力端211に接続する信号入力端231と、接地電位PVEに接続する接地入力端232とを有している。この信号電流検知回路230は、信号入力端231と接地入力端232の間を流れる信号電流Isを検知する。
【0027】
加えて、この回路部201において、イオン源電源回路210及び補助電極電源回路240は、第1電位PV1とされる内側回路ケース250に包囲されている。イオン源電源回路210の第1出力端211、補助電極電源回路240の補助第1出力端241、及び、信号電流検知回路230の信号入力端231は、この内側回路ケース250に接続している。
なお、本実施形態では、この内側回路ケース250は、イオン源電源回路210、補助電極電源回路240及び絶縁トランス270の二次側鉄心271Bを収容して包囲すると共に、ケーブル160の第1電位配線165に導通している。
【0028】
一方、絶縁トランス270は、その鉄心271が、一次側コイル272を捲回した一次側鉄心271Aと、電源回路側コイル273及び補助電極電源側コイル274が捲回された二次側鉄心271Bとに、分離して構成されている。このうち、一次側鉄心271Aは、接地電位PVEに導通し、二次側鉄心271Bは、第1電位PV1(イオン源電源回路210の第1出力端211)に導通している。
【0029】
さらに、イオン源電源回路210、補助電極電源回路240、内側回路ケース250、及び、信号電流検知回路230を含む計測制御回路220は、信号電流検知回路230の接地入力端232に導通して接地電位PVEとされる外側回路ケース260に包囲されている。さらに、信号電流検知回路230の接地入力端232の他、絶縁トランス270の一次側鉄心271Aは、この外側回路ケース260に接続している。
なお、本実施形態では、この外側回路ケース260は、内部にイオン源電源回路210、補助電極電源回路240、内側回路ケース250、信号電流検知回路230を含む計測制御回路220及び絶縁トランス270の一次側鉄心271Aを収容して包囲すると共に、ケーブル160の接地電位配線167に導通している。
【0030】
計測制御回路220は、レギュレータ電源PSを内蔵している。なお、このレギュレータ電源PSは、電源配線BCを通じて外部のバッテリBTで駆動される。
また、計測制御回路220は、マイクロプロセッサ100を含み、通信線CCを介して内燃機関を制御する制御ユニットECUと通信可能となっており、前述した信号電流検知回路230の測定結果(信号電流Isの大きさ)、これを微粒子量などに換算した値、あるいは、微粒子量が所定量を超えたか否かなどの信号を、制御ユニットECUに送信可能となっている。これにより、制御ユニットECUで、内燃機関の制御や、フィルタ(図示しない)の不具合警告を発するなどの動作が可能となる。
【0031】
外部からレギュレータ電源PSを通じて計測制御回路220に入力された電力の一部は、絶縁トランス270を介して、イオン源電源回路210及び補助電極電源回路240に分配される。なお、絶縁トランス270においては、計測制御回路220の一部をなす一次側コイル272と、イオン源電源回路210の一部をなす電源回路側コイル273と、補助電極電源回路240の一部をなす補助電極電源側コイル274と、鉄心271(一次側鉄心271A,二次側鉄心271B)とは、互いに絶縁されている。このため、計測制御回路220から、イオン源電源回路210及び補助電極電源回路240に電力を分配できる一方、これら同士間の絶縁を保つことができる。
なお、本実施形態では、絶縁トランス270は、補助電極電源回路240に電力を供給する補助電極絶縁トランスをも兼ねている。
【0032】
次いで、ポンプ300及びエアータンク303について説明する。ポンプ300は、自身の周囲の大気(空気)を取り込んで、清浄な圧縮空気AKを生成する。このポンプ300は、ブラシ付きDCモータにより駆動される小型のベーン式ポンプである。なお、小型のポンプとしては、最高圧力が100kPa以下、最大流量が20L/min以下クラスのものが挙げられる。本実施形態では、ポンプ300として、具体的には、最高圧力が40kPa、最大流量が10L/minのものを選択した。
また、ポンプ300は、連結パイプ302でエアータンク303に接続されており、ポンプ300で生成された圧縮空気AKは、エアータンク303に貯められる。
そして、エアータンク303から、先端部分が外側回路ケース260及び内側回路ケース250内に差し込まれた送気パイプ310を通じて、後述する検知部10のイオン気体噴射源11に向けて、圧縮空気AKが圧送される。
なお、ポンプ300は、ポンプ駆動制御装置301によって、エアータンク303の圧力変動が許容範囲内となるように、間欠駆動されている。具体的には、検知部10での圧縮空気AKの消費量、ポンプ300による圧縮空気AKの供給量、エアータンク303のタンク容量等を考慮して、ポンプ300の駆動のON/OFFの間隔が、5秒−ON/50秒−OFFに予め定められており、ポンプ駆動制御装置301は、この予め定められた間隔で、ポンプ300を間欠駆動している。なお、ポンプ300の駆動のON/OFFの間隔は、エアータンク303の圧力変動の許容範囲内で、自由に調整が可能である。
【0033】
ところで、本システム1において、検知部10の作動に要する圧縮空気AKの流量は、1〜2L/min程度であることが判っている。従って、最大流量が20L/min以下(具体的には、10L/min)のポンプ300を、検知部10に直結して使用することも可能である。しかし、ベーン式ポンプであるポンプ300は、使用によりベーンの磨耗を生じるほか、駆動に用いるモータの発熱や、ブラシの磨耗の問題も生じる。このため、ポンプ300を連続駆動した場合には、寿命が短くなるという問題がある。
そこで、本システム1では、上述の通り、エアータンク303を備えて、ポンプ300を間欠駆動することにより、ポンプ300の寿命を延ばしている。
【0034】
次いで、ケーブル160について説明する(
図2参照)。このケーブル160の中心部分には、銅線からなる第2電位配線161及び補助電位配線162と、樹脂からなる中空のエアパイプ163が配置されている。そして、これらの径方向周囲を、図示しない絶縁体層を挟んで、銅細線を編んだ編組からなる第1電位配線165及び接地電位配線167が包囲している。
【0035】
前述したように、回路部201は、このケーブル160と接続している(
図2参照)。具体的には、イオン源電源回路210の第2出力端212は第2電位PV2とされ、第2電位配線161に接続、導通している。また、補助電極電源回路240の補助第2出力端242は第3電位PV3とされ、補助電位配線162に接続、導通している。さらに、イオン源電源回路210の第1出力端211は第1電位PV1とされ、補助電極電源回路240の補助第1出力端241、信号電流検知回路230の信号入力端231、内側回路ケース250及び第1電位配線165に接続、導通している。加えて、信号電流検知回路230の接地入力端232は、外側回路ケース260及び接地電位配線167に接続、導通して、接地電位PVEとされている。
その他、送気パイプ310は、内側回路ケース250内を通じて、ケーブル160のエアパイプ163に連通されている。
【0036】
次いで、検知部10について説明する(
図2参照)。前述したように、検知部10は、エンジンENG(内燃機関)の排気管EP(通気管)のうち取付開口EPOを有する取付部EPTに装着され、排気ガスEG(被測定ガス)に接触する。この検知部10は、その電気的機能において、大別して、イオン気体噴射源11、微粒子帯電部12、第1導通部材13、針状電極体20及び補助電極体50から構成されている。
【0037】
第1導通部材13は、金属製で円筒状をなし、ケーブル160の先端側で、ケーブル160の第1電位配線165に接続され、この第1電位配線165と導通している。また、ケーブル160のうち、第2電位配線161、補助電位配線162及びエアパイプ163が、第1導通部材13の内部で保持されている。
【0038】
ケーブル160の第2電位配線161の先端側は、第1導通部材13内で、針状電極体20に接続されている。この針状電極体20は、タングステン線からなり、その先端部分が針状に尖った形態とされた針状先端部22を有する。この針状先端部22は、後述するイオン気体噴射源11の2つの電極のうちの1つをなす。
また、ケーブル160の補助電位配線162の先端側は、第1導通部材13内で、補助電極体50に接続されている。この補助電極体50は、ステンレス線からなり、その先端側は、U字状に曲げ返されており、さらにその先の先端部分に、後述する補助電極をなす補助電極部53を有する。
【0039】
一方、第1導通部材13は、ケーブル160の第1電位配線165及び内側回路ケース250を通じて、イオン源電源回路210の第1出力端211に導通し、第1電位PV1とされている。
また、第1導通部材13は、針状電極体20及び補助電極体50のうち、排気管EP外に位置する部位の径方向周囲を包囲している。
【0040】
さらに、第1導通部材13の径方向周囲は、排気管EPに装着されて、これに導通する外装部材14に絶縁された状態で包囲されている。この外装部材14は、ケーブル160に加締め固定されて、ケーブル160の接地電位配線167に導通し、接地電位PVEとされている。
【0041】
また、ケーブル160のエアパイプ163は、第1導通部材13内で、その先端が開放されている。そして、送気パイプ310及びケーブル160のエアパイプ163を通じて、エアータンク303から供給され、エアパイプ163から放出された圧縮空気AKは、さらに先端側(
図2中、右側)の放電空間DS(後述する)に圧送される。
【0042】
さらに、第1導通部材13の先端側(
図2中、右側)には、ノズル部31が嵌め込まれている。このノズル部31は、その中央が先端側に向かう凹形状とされ、その中心には、微細な透孔が形成されて、ノズル31N(噴射孔)となっている。
また、ノズル部31は、第1導通部材13と電気的にも導通して、第1電位PV1とされている。
【0043】
第1導通部材13の先端側にノズル部31が嵌め込まれることで、これらの内部に、放電空間DSが形成される。この放電空間DSでは、針状電極体20の針状先端部22が突出しており、この針状先端部22は、ノズル部31の基端側の面であり凹形状をなす対向面31Tと向き合っている。従って、針状先端部22とノズル部31(対向面31T)との間に高電圧を印加すると、気中放電が生じ、大気中のN
2,O
2等が電離し、正イオン(例えば、N
3+,O
2+。以下、イオンCPともいう)が生成される。また、ケーブル160のエアパイプ163から放出された圧縮空気AKも、この放電空間DSに供給される。このため、ノズル部31のノズル31Nから、圧縮空気AKを起源とする空気ARが、これより先端側の混合領域MX(後述する)に向けて高速で噴射されると共に、圧縮空気AK(空気AR)に混じって、イオンCPも混合領域MXに噴射される。
【0044】
さらに、ノズル部31の先端側(
図2中、右側)には、微粒子帯電部12が構成されている。この微粒子帯電部12の側面には、(排気管EPの下流側に向けて開口する)取入口33Iと排出口43Oが穿孔されている。また、この微粒子帯電部12は、ノズル部31に電気的にも導通して、第1電位PV1とされている。
【0045】
この微粒子帯電部12は、内側に膨出した捕集極42により、内側の空間がスリット状に狭められた形態とされており、これよりも基端側(
図2中、左側)には、ノズル部31との間に円柱状の空間が形成されている。
微粒子帯電部12内の空間のうち、上述の円柱状の空間を、円柱状混合領域MX1とする。また、捕集極42で構成されるスリット状の内部空間を、スリット状混合領域MX2とする。そして、これら円柱状混合領域MX1及びスリット状混合領域MX2を併せて、混合領域MXとする。さらに、捕集極42よりも先端側にも、円柱状の空間が形成されており、排出口43Oに連通する排出路EXをなしている。加えて、捕集極42の基端側には、取入口33Iから混合領域MX(円柱状混合領域MX1)に連通する引き込み路HKが形成されている。なお、微粒子帯電部12が、本発明の「空間形成部材」に相当し、イオン気体噴射源11と隣り合う混合領域MXが、本発明の「内部空間」に相当する。
【0046】
次いで、本実施形態の微粒子検知システム1の各部の電気的機能及び動作について、
図2のほか、
図3をも参照して説明する。なお、この
図3は、本システム1の検知部10の電気的機能及び動作を理解容易のため模式的に示したものである。
針状電極体20は、ケーブル160の第2電位配線161を介して、イオン源電源回路210の第2出力端212に接続、導通している。従って、この針状電極体20は、前述したように、第1電位PV1に対して、100kHz,1〜2kV0-pの正の半波整流パルス電圧である、第2電位PV2とされる。
また、補助電極体50は、ケーブル160の補助電位配線162を介して、補助電極電源回路240の補助第2出力端242に接続、導通している。従って、この補助電極体50は、前述したように、第1電位PV1に対して、100〜200Vの正の直流電位である、第3電位PV3とされる。
さらに、第1導通部材13,ノズル部31,微粒子帯電部12は、ケーブル160の第1電位配線165を介して、イオン源電源回路210の第1出力端211、補助電極電源回路240の補助第1出力端241、これらの回路を囲む内側回路ケース250、及び信号電流検知回路230の信号入力端231に接続、導通している。これらは、第1電位PV1とされる。
加えて、外装部材14は、ケーブル160の接地電位配線167を介して、信号電流検知回路230を含む計測制御回路220を囲む外側回路ケース260及び信号電流検知回路230の接地入力端232に接続、導通している。これらは、排気管EPと同じ、接地電位PVEとされる。
【0047】
従って、前述したように、第1電位PV1とされるノズル部31(対向面31T)と、これよりも正の高電位である第2電位PV2とされる針状先端部22との間では、気中放電、具体的にはコロナ放電が生じる。さらに具体的には、正極となる針状先端部22の周りにコロナが発生する正針コロナPCを生じる。これにより、その雰囲気をなす大気(空気)のN
2,O
2等が電離等して、正のイオンCPが発生する。発生したイオンCPの一部は、放電空間DSに供給された圧縮空気AKを起源とする空気ARと共に、ノズル31Nを通って、混合領域MXに向けて噴射される。
本実施形態では、針状先端部22とノズル部31とが気中放電(コロナ放電)を発生する電極であり、イオン源11に相当する。また、放電空間DSを囲む、ノズル部31、針状先端部22は、イオン源と気体噴射源を兼ねるイオン気体噴射源11をなしている。
【0048】
ノズル部31のノズル31Nを通じて、空気ARが混合領域MX(円柱状混合領域MX1)に噴射されると、この円柱状混合領域MX1の気圧が低下するため、取入口33Iから排気ガスEGが引き込み路HKを通じて、混合領域MX(円柱状混合領域MX1、スリット状混合領域MX2)に取り入れられる。取入排気ガスEGIは、空気ARと混合され、空気ARと共に、排出路EXを経由して、排出口43Oから排出される。
その際、排気ガスEG中に、ススなどの微粒子Sが含まれていた場合、
図3に示すように、この微粒子Sも混合領域MX内に取り入れられる。ところで、噴射された空気ARには、イオンCPが含まれている。このため、取り入れられたススなどの微粒子Sは、イオンCPが付着して、正に帯電した帯電微粒子SCとなり、この状態で、混合領域MX及び排出路EXを通って、排出口43Oから、取入排気ガスEGI及び空気ARと共に排出される。
一方、混合領域MXに噴射されたイオンCPのうち、微粒子Sに付着しなかった浮遊イオンCPFは、補助電極体50の補助電極部53から斥力を受け、第1電位PV1とされた捕集極42をなす微粒子帯電部12に各部に付着し捕捉される。
【0049】
従って、この帯電微粒子SCにより排出された排出イオンCPHの電荷量に対応し、第1電位PV1と接地電位PVEとの間で流れる信号電流Isを信号電流検知回路230で検知することにより、排気ガスEG中の微粒子Sの量が検知できる。
【0050】
本実施形態のシステム1はこのように構成されており、検知部10の作動に要する圧縮空気AKをポンプ300で生成する一方、このポンプ300で生成された圧縮空気AKをエアータンク303に溜めて、エアータンク303から検知部10に圧縮空気AKを圧送している。そして、エアータンク303を備えていることにより、ポンプ駆動制御装置は、ポンプ300を間欠駆動している。
これにより、検知部10の作動のために、ポンプ300を常時駆動する必要がなく、ポンプ300の寿命を延ばすことができる。
【0051】
さらに、本実施形態のシステム1では、ポンプ駆動制御装置301は、検知部10での圧縮空気AKの消費量、ポンプ300による圧縮空気AKの供給量、エアータンク303のタンク容量等を考慮して、ポンプ300の駆動のON/OFFの間隔が、5秒−ON/50秒−OFFに予め定められており、ポンプ駆動制御装置301は、この予め定められた間隔で、ポンプ300を間欠駆動している。これにより、圧縮空気AKの供給を止めることなく、許容範囲内の圧力の圧縮空気AKを用いて、微粒子Sを継続して検知できる。加えて、ポンプ300の駆動のON/OFF時間は、エアータンク303の圧力変動の許容範囲内で、自由に調整することができ、許容範囲内で適切にON/OFF時間を調整することにより、ポンプ300の寿命をさらに延ばすことができる。
【0052】
さらに、本実施形態のシステム1では、圧縮空気AKを生成するポンプ300として、ブラシ付きDCモータにより駆動されるベーン式ポンプを用いている。ベーン式ポンプは、小型・軽量・低コストであるため、システム専用のポンプとして用いるのに適しているが、使用によりベーンの磨耗を生じるほか、駆動に用いるモータの発熱や、ブラシの磨耗の問題も生じる。このため、ポンプを連続駆動すると、ポンプの寿命が著しく低下してしまうおそれがある。
しかるに、本システム1では、エアータンク303を備えることにより、ポンプ300を間欠駆動して、ポンプ300の寿命を延ばすことができるので、小型で低コストのモータ駆動のベーン式ポンプを用いることができる。
【0053】
さらに、本実施形態のシステム1では、ポンプ300として、最高圧力が100kPa以下、最大流量が20L/min以下(具体的には、最高出力が40kPa、最大流量が10L/min)の小型のベーン式ポンプを用いている。本システム1の検知部10の作動に要する圧縮空気AKの流量は、1〜2L/min程度であるので、最大流量が20L/min以下(具体的には、10L/min)のポンプ300は、能力的には、検知部10に直結して使用することも可能である。しかしながら、ポンプを連続駆動した場合には、寿命が短くなるという問題があり、一方、能力的にさらに余力のある大型のポンプやコンプレッサは、システム専用に用いるには大きすぎて、コストも高い。
しかるに、本システム1では、エアータンク303を備えて、ポンプ300を間欠駆動しているので、小型ポンプの寿命を延ばして、システム専用に用いることができる。
【0054】
さらに、本実施形態のシステム1では、検知部10は、混合領域MX(内部空間)を構成する微粒子帯電部12(空間形成部材)と、イオンCPを生成し、混合領域MXに向けて圧縮空気AKを噴射するイオン気体噴射源11と、を備えている。そして、微粒子帯電部12は、ノズル31Nを通じて噴射された圧縮空気AKによって、取入口33Iから混合領域MXに導き入れた取入排気ガスEGI(取入ガス)とイオンCPとを混合して、取入排気ガスEGI中の微粒子SにイオンCPを付着させて帯電微粒子SCとし、圧縮空気AK及び取入排気ガスEGIとともに、排出口43Oから帯電微粒子SCを排出する形態に構成されている。
これにより、帯電微粒子SCの量から、適切に微粒子Sの量を検知することができる。
【0055】
さらに、本実施形態のシステム1では、エアータンク303を備えることにより、ポンプ300を間欠駆動して、ポンプ300の長寿命化を図っているので、例えば、10年以上の長期間に亘って使用される車両AMに搭載することが可能となる。
【0056】
以上において、本発明を実施形態のシステム1に即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、実施形態では、ポンプ300として、モータ駆動のベーン式ポンプを用いたが、ポンプ300としては、このほかに、ダイアフラムポンプ、ギアポンプ、ピストンポンプなどを用いても良い。
また、実施形態では、ポンプ駆動制御装置301は、予め定められた間隔でポンプ300の駆動をON/OFFしたが、これに代えて、例えば、エアータンク303の圧力変動の圧力変動が許容範囲内となるように、圧力センサを用いてフィードバックによる圧力制御を行っても良い。
【0057】
また、実施形態では、混合空間MX(内部空間)の外部の放電空間DSを囲む、ノズル部31、針状先端部22が、イオン源と気体噴射源を兼ねるイオン気体噴射源11をなし、混合空間MXの外部の放電空間DSで生成したイオンCPを、圧縮空気AKと共にノズル31N(噴射孔)を通じて混合領域MXに向けて噴射する構成とした。しかし、イオン源及び気体噴射源の構成はこれに限らない。例えば、イオン源を内部空間内に配置し、内部空間内でイオンを生成する一方、別途設けた気体噴射源から噴射孔を通じて、内部空間に向けて圧縮空気AKを噴射する構成としても良い。