(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5841145
(24)【登録日】2015年11月20日
(45)【発行日】2016年1月13日
(54)【発明の名称】血液サンプルを採取するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/15 20060101AFI20151217BHJP
G01N 1/10 20060101ALI20151217BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20151217BHJP
【FI】
A61B5/14 300
G01N1/10 N
G01N1/00 101K
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-520802(P2013-520802)
(86)(22)【出願日】2011年7月19日
(65)【公表番号】特表2013-538072(P2013-538072A)
(43)【公表日】2013年10月10日
(86)【国際出願番号】US2011044501
(87)【国際公開番号】WO2012012400
(87)【国際公開日】20120126
【審査請求日】2014年4月23日
(31)【優先権主張番号】13/185,139
(32)【優先日】2011年7月18日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/365,388
(32)【優先日】2010年7月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バート ディー.ピーターソン
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン ジー.デービス
(72)【発明者】
【氏名】オースティン ジェイソン マッキノン
【審査官】
冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】
特表平09−504726(JP,A)
【文献】
特開平01−276042(JP,A)
【文献】
特表2005−503538(JP,A)
【文献】
特開昭58−212455(JP,A)
【文献】
特開2003−287479(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0149211(US,A1)
【文献】
特表2011−506042(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06 − 5/22
G01N 1/00 − 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠位開口および該遠位開口よりも大きな近位開口を有する本体であって、前記遠位および近位開口、および、該本体の内面であって前記遠位開口から前記近位開口の間で平坦に形成された内面によって画定されるルーメンをさらに有する本体と、
前記近位開口を塞ぐように配置された疎水性かつ空気透過性の膜と
を備え、それにより、
前記膜の近位に対して前記遠位開口に向けられた押圧力に応じて前記ルーメンの内圧が増大するまで前記ルーメン内の血液を保持するように構成されていることを特徴とするベントプラグ。
【請求項2】
前記膜は、近位に膨らむように偏倚されることを特徴とする請求項1に記載のベントプラグ。
【請求項3】
前記膜が遠位に押下されるときに生じる変位の容積が、少なくとも0.05mLであることを特徴とする請求項2に記載のベントプラグ。
【請求項4】
前記遠位開口は、2.0mm以下の内周を有することを特徴とする請求項1に記載のベントプラグ。
【請求項5】
前記遠位開口は、実質的に円形であり、約0.1mmから約0.6mmの間の直径を有することを特徴とする請求項1に記載のベントプラグ。
【請求項6】
前記遠位開口は、実質的に円形であり、約0.2mmから約0.3mmの間の直径を有することを特徴とする請求項1に記載のベントプラグ。
【請求項7】
少なくとも0.1mLの容積の流体室を、前記膜の遠位で前記ルーメン内に有することを特徴とする請求項1に記載のベントプラグ。
【請求項8】
遠位開口および該遠位開口よりも大きな近位開口を有する本体であって、前記遠位および近位開口、および、該本体の内面であって前記遠位開口から前記近位開口の間で平坦に形成された内面によって画定されるルーメンをさらに有する本体と、
前記ルーメン内の、前記遠位開口および前記近位開口の間の所定部位を横切って配置された疎水性かつ空気透過性の膜であって、前記ルーメンを前記膜の近位にある空気室および前記膜の遠位にある流体室に分割する膜と
を備え、それにより、
前記近位開口において前記空気室に対して前記遠位開口に向けられた押圧力に応じて前記流体室の内圧が増大するまで前記流体室内の血液を保持するように構成されている
ことを特徴とするベントプラグ。
【請求項9】
前記本体は、その近位に圧縮可能な部分を含み、前記圧縮可能な部分は、前記空気室の表面の部分を形成することを特徴とする請求項8に記載のベントプラグ。
【請求項10】
前記遠位開口は、2.0mm以下の内周を有することを特徴とする請求項8に記載のベントプラグ。
【請求項11】
前記遠位開口は、実質的に円形であり、約0.1mmから約0.6mmの間の直径を有することを特徴とする請求項8に記載のベントプラグ。
【請求項12】
前記遠位開口は、実質的に円形であり、約0.2mmから約0.3mmの間の直径を有することを特徴とする請求項8に記載のベントプラグ。
【請求項13】
前記流体室は、少なくとも0.1mLの容積を有することを特徴とする請求項7に記載のベントプラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、血管アクセス装置を用いた空気排出および血液サンプリングに関する。血液サンプリングは、少なくとも1滴の血液を患者から引き抜くことを含む一般的なヘルスケアの行為である。血液サンプルは一般に、入院患者、在宅患者、および救急外来患者から指穿刺、踵穿刺、または静脈穿刺のいずれかによって採られる。血液サンプルは、採取後、1つまたは複数の血液検査レベルを通して分析される。
【背景技術】
【0002】
血液検査では、疾病、ミネラル含有量、薬効、および臓器機能など、患者の生理学的および生化学的状態を判定する。血液検査は、患者の位置から離れた距離にある検査室で行われることも、患者の位置の近くのポイントオブケア(point of care)で行われることもある。ポイントオブケア血液検査の一例は、患者の血糖値の定期検査である。これは、指穿刺による血液の抽出、および診断カートリッジへの機械的採血を含む。その後、診断カートリッジは血液サンプルを分析し、患者の血糖値の読み取り値を臨床医に提供する。血液ガス電解質濃度、リチウム濃度、イオン化カルシウム濃度を分析する他の装置も利用されうる。さらに、いくつかのポイントオブケア装置は、急性冠症候群(ACS)および深部静脈血栓症/肺塞栓症(DVT/PE)のためのマーカを識別する。
【0003】
ポイントオブケア検査および診断の急速な進歩にかかわらず、血液サンプリング技術は比較的変わらないままである。血液サンプルはしばしば、皮下注射器、あるいは針またはカテーテルアセンブリの近位端に結合された真空チューブを使用して引き抜かれる。いくつかの例では、臨床医は、挿入されたカテーテルを通して患者から血液を引き抜くためにカテーテルに挿入された針およびシリンジを使用して、カテーテルアセンブリから血液を採取する。これらの手順では、中間装置として針および真空チューブを利用し、中間装置を通して、一般に検査の前に採取された血液サンプルが引き抜かれる。したがって、これらのプロセスは、装置集約的であり、血液サンプルの取得、準備、および検査のプロセスで多数の装置を利用する。さらに、必要とされる装置ごとに検査プロセスの時間およびコストが追加される。したがって、より効率的な血液サンプリングおよび検査の装置ならびに方法が必要とされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、現在使用可能な血管アクセスシステムおよび方法によって未だ十分に解決されていない当該技術分野の問題および要求に応じてなされたものである。本明細書に説明するように、ベントプラグ(vent plug)は、管外システムの排気をするとともに、また血液サンプルを採取して後で血液サンプルを施与するために使用されうる。したがって、これらのベントプラグは、これらの手順を行うために必要なステップおよび装置の数を減らすことができ、それにより、これらの手順の時間およびコストを減少させることができる。
【0005】
本発明の一態様では、ベントプラグは、遠位端と、近位端と、遠位端および近位端にわたって延在するルーメンとを有する本体を備える。膜がルーメンを横切って配置され、この膜は疎水性かつ空気透過性である。流体室が、膜の遠位でルーメン内に形成される。遠位ルーメン開口は、指が近位ルーメン開口を押圧することに応じてルーメンの内圧が増大するまでルーメン内の血液を保持するように形状および寸法が定められる。
【0006】
実装形態は、以下の特徴の1つまたは複数を含むことができる。膜は、指が近位ルーメン開口を押圧することにより膜を押圧するように、近位ルーメン開口に結合されうる。膜は、近位に膨らむように偏倚されうる。膜が遠位に押下されるときに生じる変位の容積が、少なくとも0.05mLである。膜は、ルーメン内に配置され得、膜は、ルーメンを膜の近位にある空気室と膜の遠位にある流体室とに分割することができる。本体は、その近位に圧縮可能な部分を含むことができる。圧縮可能な部分は、空気室の表面の一部分を形成することができる。遠位ルーメン開口は、2.0mm以下の内周を有することができる。遠位ルーメン開口は、実質的に円形であり、約0.1mmから約0.6mmの間の直径を有することができる。遠位ルーメン開口は、実質的に円形であり、約0.2mmから約0.3mmの間の直径を有することができる。流体室は、少なくとも0.1mLの容積を有することができる。
【0007】
本発明の別の態様では、ベントプラグは、遠位端と、近位端と、遠位端および近位端にわたって延在するルーメンとを有する本体を備える。膜がルーメン内にルーメンの一部分を横切って配置される。膜は、疎水性かつ空気透過性である。膜は、ルーメンを膜の近位にある空気室と膜の遠位にある流体室とに分割する。遠位ルーメン開口は、指が近位ルーメン開口を押圧することに応じてルーメンの内圧が増大するまで流体室内の血液を保持するように形状および寸法が定められる。
【0008】
実装形態は、以下の特徴の1つまたは複数を含むことができる。本体は、その近位端に圧縮可能な部分を含むことができ、圧縮可能な部分は、空気室の表面の部分を形成することができる。遠位ルーメン開口は、2.0mm以下の内周を有することができる。遠位ルーメン開口は、実質的に円形であり、約0.1mmから約0.6mmの間の直径を有することができる。遠位ルーメン開口は、実質的に円形であり、約0.2mmから約0.3mmの間の直径を有することができる。流体室は、少なくとも0.1mLの容積を有することができる。
【0009】
本発明の別の態様では、血液サンプルを採取するための方法が、静脈内注入療法システムのポート内にベントプラグを配置するステップを含む。ベントプラグは、本体を貫通するルーメンを備える本体を有する。膜がルーメンを横切って配置される。この膜は疎水性かつ空気透過性である。ベントプラグの遠位ルーメン開口は、指が近位ルーメン開口を押圧することに応じてルーメンの内圧が増大するまでルーメン内の血液を保持するように形状および寸法が定められる。この方法はまた、静脈内注入療法システムから空気を排出し、少なくとも実質的にベントプラグを血液で満たすステップを含む。この方法はまた、静脈内注入療法システムからベントプラグを取り外すステップを含む。最後に、この方法は、ベントプラグの近位ルーメン開口内へ指を遠位に押圧することによって、ある量の血液をベントプラグから吐出させるステップを含む。
【0010】
この方法の実装形態は、以下の特徴の1つまたは複数を含む。膜は、近位ルーメン開口に結合されることができ、近位に膨らむように偏倚され、ある量の血液を吐出させるステップは、膜を遠位に押下するステップを含むことができる。空気透過性の膜は、ルーメンを膜の近位にある空気室と膜の遠位にある流体室とに分割することができ、ある量の血液を吐出させるステップは、空気室の内圧を増大させるステップを含むことができる。本体は、圧縮可能な近位部分を含むことができ、ある量の血液を吐出させるステップは、本体の圧縮可能な近位部分を圧縮するステップを含むことができる。
【0011】
本発明の上記および他の特徴ならびに利点は、本発明のいくつかの実施形態に組み込まれることが可能であり、以下の説明および添付の特許請求の範囲からより完全に明らかとなり、または以下に記載するような本発明の実施によって理解されうる。本発明は、本明細書に記載のすべての有利な特徴およびすべての利点が本発明の各実施形態に組み込まれることを要求するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の上記および他の特徴ならびに利点を得られる態様が容易に理解されるように、添付の図面に示す本発明の具体的な実施形態を参照することにより、先に簡単に説明した本発明のより詳細な説明を与える。これらの図は、本発明の典型的な実施形態を示すに過ぎず、したがって本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではない。
【0013】
【
図1】いくつかの実施形態によるベントプラグを有する管外システムの斜視図である。
【
図2】いくつかの実施形態によるポート内のベントプラグの斜視図である。
【
図3】いくつかの実施形態による
図2のベントプラグおよびポートの断面図である。
【
図4】いくつかの実施形態によるポートからベントプラグを取り外した後の
図2および
図3のベントプラグの断面図である。
【
図5】いくつかの実施形態による、指でベントプラグを把持し血液滴をベントプラグから吐出させることの斜視図である。
【
図6】いくつかの実施形態による別のベントプラグの断面図である。
【
図7】いくつかの実施形態による、指を用いて血液をベントプラグから吐出させている間の
図6のベントプラグの断面図である。
【
図8】いくつかの実施形態による別のベントプラグの断面図である。
【
図9】いくつかの実施形態による、指を用いて血液をベントプラグから吐出させている間の
図8のベントプラグの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態は、図面を参照することによって理解されうる。図面では、同様の参照番号が同一または機能的に類似の要素を示している。ここで図に概略的に説明され例示されるような本発明の構成要素は、様々な異なる構成で配置され設計されうることは容易に理解されよう。よって、図に表されるような以下のより詳細な説明は、特許請求の範囲に係る本発明の範囲の限定を意図するものではなく、本発明の現在好ましい実施形態を代表的に示すものに過ぎない。
【0015】
ここで、ベントプラグ42が一緒に使用されうる管外システムを示す
図1を参照する。ベントプラグ42は、例示のシステムに限定されず、単純な針からより複雑な管外装置にまでわたる他の管外システムと共に使用されうることは理解されよう。この図から、いくつかの構成では、ベントプラグ42が、患者から診断用血液サンプルを引き抜くために必要な構成要素の数を減らすことができることは明らかである。これは、ベントプラグ42が、血液排出機構および血液採取機構を単一の装置に組み合わせているためである。
【0016】
図1は、ベントプラグ42がアクセスすることができる、Becton,Dickinson and CompanyによるBD NEXIVA(商標)閉鎖静脈(IV)カテーテルシステム(Closed Intravenous(IV) Catheter System)のような管外システム20を示す。管外システム20の例示の実施形態は、カテーテルアセンブリ24を貫通して延びる導入針32に結合された針ハブ26など複数の血管アクセス装置を含む。カテーテルアセンブリ24は、針上抹消IVカテーテル(over−the−needle, peripheral, IV catheter)30に結合されたカテーテルアダプタ28を備え、針上抹消IVカテーテル30はカテーテルアダプタ28から延出する。導入針32は、引き抜かれると、カテーテル30が患者の脈管構造内に挿入され正しく位置付けられるまでカテーテルアセンブリ24内に残される。いくつかの実施形態では、カテーテルアセンブリ24から針先端が取り外された後に針先端を遮蔽するために、1つまたは複数の針先端シールドが針ハブ26に組み込まれている。
【0017】
いくつかの構成では、一体型延長チューブ36が、カテーテルアセンブリ24に結合され、カテーテルアセンブリ24との流体連通を提供する。延長チューブ36はまた、ポート40に結合することができ、ポート40は、延長チューブ36およびカテーテルアセンブリ24を介して患者の脈管系へのアクセスを提供する。ポート40は、単一ポートルアーアダプタ、Yルアーアダプタ、および他の既知のポートなど様々な構成を有することができる。いくつかの例では、延長チューブ36を選択的に閉塞するためにクランプ38が使用される。図に示すように、ベントプラグ42は、ポート40内に挿入されうる。
【0018】
図1は、延長チューブ36上のポート40に結合されたベントプラグ42を示しているが、ベントプラグ42は、患者の脈管構造に流体接続する任意のポート40に結合されうる。このような代替的ポートは、カテーテルアセンブリ24上に、より具体的にはカテーテルアダプタ28上に直接配置されてよい。他の管外システム20では、ポート40は、管外システム20の針、カテーテル、または他の構成要素に結合されうる。
【0019】
いくつかの実施形態では、ベントプラグ42は、そこから血液を採取する前にカテーテルアセンブリ24および延長チューブ36から空気を排出する。カテーテルアセンブリ24が患者の脈管構造と流体連通を確立すると、脈管系の内部血圧により、血液がカテーテルアセンブリ24内へ、延長チューブ36内にまで押し込まれる。いくつかの例では、流体がこのシステムを通って患者に注入される前に、管外システム20から空気を排出するために、この血液がカテーテルアセンブリ24および延長チューブ36を満たせることが望ましい。このプロセスは、空気が患者の脈管構造に注入される可能性を小さくすることができる。そのため、いくつかの実施形態では、ベントプラグ42は、管外システム20内からの空気が通過する空気透過性の膜44を備える。いくつかの実施形態では、膜44は、膜が血液を通過させないように疎水性である。そのような実施形態では、管外システム20に血液が入ってベントプラグ42の膜44までシステムを満たすため、システムに入った血液が空気を膜44から押し出す。この時点で、いくつかの例では、クランプ38が延長チューブ36を閉塞し、その間に、ベントプラグ42が取り外され、流体リザーバに結合されたIVラインのような別個の血管アクセス装置がポート40に結合されて、IV療法プロセスが開始される。
【0020】
上記のように、ベントプラグ42は、空気を通過させるが血液を通過させないために空気透過性と疎水性の両方を有することができる膜44を備える。膜44は、これらの特性を提供する様々な材料および構成要素を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、膜44は、ガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、マイクロファイバ材料、および/または、DuPontによるTYVEK(登録商標)材料などの高密度ポリエチレンファイバで作製された他の合成材料を含む。また、他のそうした材料および構成成分は、いくつかの構成に従って、膜44が疎水性および/または空気透過性であることを可能にするために膜44の層または膜全体44として使用することもできる。
【0021】
図2および
図3に示すように、管外システム20から空気64を排出することに加えて、ベントプラグ42は、血液検査または他の手順に使用されうる血液62のサンプルを採取することができる。
図2は、
図1と同様に延長管36に結合されたポート40の開口70内に挿入されたベントプラグ42の拡大図を示し、
図3は、
図2の装置の断面図を示す。図示のように、ベントプラグ42は、本体50の近位端46と遠位端48の間に延在するルーメン52を有する本体50を備えることができる。本体50は、様々な形状および寸法を有することができる。図に示されるように、本体50はテーパーシリンダを形成するが、他の実施形態では、本体50は他の形状および寸法を有することができる。いくつかの実施形態では、膜44は、図に示されるように、本体50の近位ルーメン開口72に配置および/または結合され、ルーメン52内かつ膜44の遠位に流体室68を作り出す。膜44は、ベントプラグ42の本体50に結合された結合部分44bを有することができる。膜44は、図に示すように、近位に膨らむように偏倚された露出部分44aを有することができる。後述のように血液滴84を流体室から吐出するために十分に流体室の容積を圧縮するために、この露出部分44aは、膜44を膨らんだ位置、すなわち押下前の位置(
図4の要素76)から押下位置(
図4の要素74)へ平均的な成人の指によって押下することを可能にする十分な距離54で、外方に膨らむことが可能である。いくつかの実施形態では、血液滴は、少なくとも0.05mLである。したがって、いくつかの構成では、膜44は、
図4に示すように押下されうるように可撓性がある。
【0022】
排出の際、血液62がベントプラグ42内に押し込まれるにつれて、ルーメン52内の空気64は、1つまたは複数の空気流路56を経て膜44を通過するよう押し出される。このプロセスの間、血液62のサンプルが、流体室68内に採取される。採取される血液の量は、流体室68の寸法によって部分的に制御することができ、したがって、流体室は所望の量の血液を収容するように設計されうる。ほとんどの血液検査では、最小0.1μLの血液が必要とされ、したがって、流体室68は、少なくともその大きさとすることができる。他の実施形態では、流体室68は、最大約10mLの血液を収容するような寸法とされる。他の実施形態では、流体室68は、10mLよりもさらに大きくすることができる。
【0023】
いくつかの実施形態では、ベントプラグ42は、ポート40から引き抜かれるとき、血液流出および血液汚染を防止するために、血液62を保持するように構成されうる。したがって、いくつかの構成では、遠位ルーメン開口58が、血液62を保持するように形状および寸法を定められる。ルーメン52内の血液保持は、遠位ルーメン開口58の内周、血液の表面張力、および血液62に対する遠位ルーメン開口58から流出させる力によって少なくとも部分的に管理される。したがって、遠位ルーメン開口58の内周は、血液62の遠位ルーメン開口58から流出する力が一定の範囲内であるとき、血液62が流体室68内に保持されるが、血液62に対する圧力がその範囲を超えたとき、少なくとも一部の血液が流出することを可能にするように設計されうる。
【0024】
例えば、いくつかの実施形態では、遠位ルーメン開口58が円形である場合、約2.0mm以下の内周および約0.6mm以下の直径60により、ほぼ重力に抗してルーメン52における血液の保持が可能になる。血液62に対する力が重力より大きい場合、いくらかの血液42が遠位ルーメン開口58から流出しうる。同様に、約0.3mmの直径を有する円形の遠位ルーメン開口58は、充満したベントプラグ42の揺さ振り(bumping)、衝撃(jarring)、および移動などの重力より大きい力に抗して、血液62を保持することができる。遠位ルーメン開口58が非常に小さい内周を有する場合、血液62を吐出するために必要な力は非常に大きくなる。
【0025】
図4および
図5に示すように、いくつかの実施形態では、ベントプラグ42は、ポート40から引き抜かれた後、ベントプラグ42から血液62を吐出することができる。特に
図5を参照すると、いくつかの例では、ベントプラグ42内に採取された血液62は、指80が膜44を押圧してルーメン52内の圧力が増大するとき、試験紙または検査用の他の物体上に吐出されうる。このプロセスについては後でより詳細に説明する。血液の吐出を容易にするために、遠位ルーメン開口58は、血液滴84を流体室68から吐出させるために十分な圧力を平均的な成人の指で加えることができるように十分に大きく構成されうる。したがって、いくつかの実施形態では、遠位ルーメン開口58は、遠位ルーメン開口58が円形の開口である場合に約0.1mmの直径に対応する約0.3mm以上の内周を有する。したがって、いくつかの構成では、遠位ルーメン開口58は、約0.3mmから約2.0mmの間の内周を有する。いくつかの構成では、遠位ルーメン開口58は、実質的に円形であり、約0.1mmから約0.6mmの間の直径を有する。他の実施形態では、遠位ルーメン開口58は、非円形である。
【0026】
次に
図4を参照する。
図4は、ポート40から取り外された後のベントプラグ42の断面図を示す。
図3に示すベントプラグ42と同様に、膜44が、ベントプラグ42の本体50の上部に結合される。いくつかの実施形態では、膜44は、本体の内側ルーメン52の内表面に結合される。この結合は、例えば、接着剤または他の留め具64を使用する機械的または化学的なものとすることができる。他の実施形態では、膜44は、ルーメン52内に配置されずに本体50の表面に結合される。
【0027】
いくつかの構成では、膜44は、
図3に示すように、近位に膨らむように偏倚される。膨張部分は、下方82に十分に押圧されたときに1つまたは複数の血液滴84を流体室68から滴下させうるボタンの役割をすることができる。
図4に示すように、膜44の膨張性質は、膜44が指80の下方82への力によって押下位置74に押下されるまで押下前の位置76に膜44を位置付ける。図に示すように、この下方82への力によって、膜44の押下前の位置76と押下位置74の間の変位の容積78にほぼ等しい流体室68の容積の減少がもたらされる。流体室68の容積が減少するに従って、流体室68内の圧力が増大する。いくつかの例では、図に示すように、流体室68内のこの圧力の増大が、1つまたは複数の血液滴84を下方82へ向けて流体室68から吐出させる。血液滴84が吐出された後、指80の圧力が解放され、膜44は、その偏倚した押下前の位置76に戻ることができる。膜44が上方に移動するのに従って、流体室68の容積が拡張して、流体室68の内圧が低下し、その中に空気を引き込む。この新しい空気は、より重い血液62が遠位ルーメン開口58に向かって沈むため、上方に移動することができる。この段階で、ベントプラグ42の膜44は、別の血液滴84を吐出するために再び押下されることが可能である。したがって、上述のように、いくつかの実施形態では、
図4および
図5に示すように、指示に応じて血液滴84を放出するようにベントプラグ42を選択的に動作させることができる。
【0028】
図5は、血液滴84をベントプラグ42から表面上に選択的に放出する動作を示す。図に示されるように、作業者が、1本または複数の指80でベントプラグ42を把持することができる。次いで、膜44を十分に押下することによって、作業者は、1つまたは複数の血液滴84をベントプラグ42から吐出させることができる。いくつかの実施形態では、押下前の位置76と押下位置74の間の変位の容積78は、1つまたは複数の血液滴84または単一の大きな血液滴84の吐出を生じるように設計されうる。さらに、いくつかの実施形態では、膜44は、膜44が完全に押下された場合よりも小さい血液滴84が吐出されるように膜44が部分的にだけ押下されることが可能なように構成される。
【0029】
図5に示すように、いくつかの実施形態では、ベントプラグ42の本体50は、2本以上の指80の間に把持されうるような形状および寸法にされる。したがって、いくつかの構成では、本体50の長さ70は、平均的な人間の親指の幅とほぼ同じかそれより大きい。本体50はまた、2本以上の指80の範囲内で適切に把持されるのに十分な幅を有することもできる。さらに図示されるように、いくつかの実施形態では、本体50は、上部円盤92または類似の構造を備え、膜44はそこから外方に膨らむ。この上部円盤92は、ベントプラグ42をポート40から出すのを促進するため、かつ/または本体50の側面を把持している指80が膜44を偶発的に押下するのを防止するために使用されうる。
【0030】
図6は、ルーメン52内に配置された膜102を有するベントプラグ42を示す。この配置において、膜102は、ルーメン52を、膜102の近位にある空気室114と膜102の遠位にある流体室68とに分割する。
図4および
図5の実施形態と同様に、
図6および
図7のベントプラグ42は、指80が本体50の近位ルーメン開口72に対して下方82に押圧されたとき、1つまたは複数の血液滴84を吐出する能力を有することができる。しかし、
図4および
図5の実施形態とは異なり、
図6および
図7のベントプラグ42は、膜102の移動に応じてではなく、空気が空気室114から膜102を通して流体室58内へ押し込まれるのに伴って、血液62を吐出する。この空気の増加により、流体室内部の内圧を増大し、それにより、1つまたは複数の血液滴が遠位ルーメン開口58から吐出される。
【0031】
いくつかの実施形態では、血液滴84をより効率的に吐出するため、指80が近位ルーメン開口72を覆ってこの開口を封止する。封止または実質的な封止をすると、指80をルーメン52内へより深く(遠位に)押し付けて、空気室114内の空気64を圧縮することができる。いくつかの構成では、近位ルーメン開口72は、より快適性を作業者に提供し、この開口の封止を容易にするために円形にされる。同様に、他の構成では、近位ルーメン開口72は、開口上に配置されたエラストマ材料などのクッションを備える。いくつかの実施形態では、このクッションは、後述するように圧縮可能な部材として機能することができる。
【0032】
図6および
図7に示すように、指80が下方82へ向けて近位ルーメン開口72に押圧されると、空気64が、指80とベントプラグ42の本体50との間の流路108を経て空気室114に入ることができる。指80が近位ルーメン開口72の内表面116をさらに押圧すると、指80は近位ルーメン開口72を少なくとも部分的に封止し、空気室114内の空気64を圧縮することができる。近位ルーメン開口72と膜102の間の距離106は、指80が近位ルーメン開口72に押圧されるとき平均的な成人の指80が膜102に接触しないように十分に離すことができる。空気室114内の空気の圧縮により、空気64を膜102を通して流体室68内に押し込むことができる。この空気が流体室68内に導入されると、それにより、その室内の圧力が増大し、1つまたは複数の血液滴84を遠位ルーメン開口58から吐出させることができる。したがって、いくつかの実施形態では、
図5に示したベントプラグ42と同様に、指示に応じて血液滴84を放出するようにベントプラグ42を選択的に動作させることができる。
【0033】
図8および
図9は、
図6および
図7に示したベントプラグ42の変形形態を示す。図に示されるように、このベントプラグ42は、空気室114の壁の一部を形成する圧縮可能な部分122を備えることができる。この圧縮可能な部分122は、下方(遠位)82への力が加えられると圧縮される1つまたは複数の蛇腹式部材124を備えることができる。他のタイプの圧縮可能な部材は、ばね、エラストマ、または他の同様の部材を含むことができる。圧縮可能な部分122は、本体50の残部と同じ材料で作製されてよく、または別個の材料、例えば、ゴム、シリコーンゴムなどのようなエラストマ材料で作製されてもよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、ベントプラグ42は、指80が近位ルーメン開口72に押圧されると、
図6および
図7のベントプラグ42と同様に動作させられる。指80は、空気室114を封止または実質的に封止し、空気室114の圧縮可能な部分122を圧縮することができる。圧縮可能な部分122は、空気室114のさらなる加圧を可能にして、より多くの空気64を膜102を通すよう押し込むようにし、それに伴って、空気室114の高さを圧縮されていない高さ126から圧縮された高さ128に圧縮する。高さの低下により空気室114がさらに加圧され、これによって、空気64を膜102を通して押し込む力がさらに与えられ、前述のように1つまたは複数の血液滴84が遠位ルーメン開口58から吐出される。
【0035】
上記から本明細書に記載のベントプラグ42の実施形態は、管外システム20の排気をするとともに、血液サンプルを採取して後で血液サンプルを施与するために使用されうることが分かる。したがって、ベントプラグ42のこれらの実施形態は、これらの手順を行うために必要なステップおよび装置の数を減らすことができ、それにより、これらの手順の時間およびコストを減少させることができる。
【0036】
本発明は、本明細書に広く記載されまた特許請求の範囲に記載されるような、その構造、方法、および/または他の本質的特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で実施されうる。説明した実施形態は、すべての点で限定ではなく例示として捉えられるべきである。したがって、本発明の範囲は、以上の説明によってではなく、添付の特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲と等価な意義および範囲に入るすべての変更は、特許請求の範囲の範囲内に包含される。